(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145325
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】地震エネルギー吸収装置およびその地震エネルギー吸収装置を使用したコンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20241004BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E04H9/02 321F
F16F7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057619
(22)【出願日】2023-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和4年7月20日(水)に日本建築学会大会(北海道)学術講演梗概集にて本願発明の内容を公開。 (2)令和4年9月5日(月)~8日(木)開催の日本建築学会大会(北海道)において9月8日(木)に本願発明の内容を発表。
(71)【出願人】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】横山 眞一
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 亮
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 景子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亨
(72)【発明者】
【氏名】田口 朝康
(72)【発明者】
【氏名】山下 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】島崎 和司
(72)【発明者】
【氏名】白井 佑樹
【テーマコード(参考)】
2E139
3J066
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC26
2E139AD03
2E139BA06
2E139BC01
2E139BD23
3J066BA03
3J066BB01
3J066BC05
3J066BG05
(57)【要約】
【課題】大掛かりな施工を要せず、地震発生時のエネルギーを確実に吸収する。
【解決手段】架構骨組であるRC梁に固定されるRC梁固定部11aと非構造壁に固定される非構造壁固定部11bとの間に変形部11cを有しており、RC梁固定部11aと非構造壁固定部11bとを合わせて3箇所以上有し、かつ、変形部11cを2箇所以上有しており、RC梁固定部11aにはRC梁に埋設されてエネルギー吸収装置本体11とRC梁とを接合する架構骨組接合部材12が設けられ、非構造壁固定部11bには非構造壁に埋設されエネルギー吸収装置本体11と非構造壁とを接合する非構造壁接合部材13が設けられ、変形部11cは、貫通孔11c2を形成するようエネルギー吸収装置本体11の短手方向でかつ外側に向かって膨らむように湾曲した湾曲部11c1を有することにより、RC梁固定部11aおよび非構造壁固定部11bよりも強度を弱体化させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の架構骨組と非構造壁との間のスリット部に設置する地震エネルギー吸収装置であって、
前記スリット部に設置され、前記架構骨組に固定される架構骨組固定部と前記非構造壁に固定される非構造壁固定部との間に変形部を有しており、前記架構骨組固定部と前記非構造壁固定部とを合わせて3箇所以上有し、かつ、前記変形部を2箇所以上有するエネルギー吸収装置本体と、
前記架構骨組固定部に突出して設けられ、前記架構骨組に埋設されて前記エネルギー吸収装置本体と前記架構骨組とを接合する架構骨組接合部材と、
前記非構造壁固定部における前記架構骨組接合部材の反対側から突出して設けられ、前記非構造壁に埋設されて前記エネルギー吸収装置本体と前記非構造壁とを接合する非構造壁接合部材とを備え、
前記変形部は、貫通孔を形成するように前記エネルギー吸収装置本体の短手方向でかつ外側に向かって膨らむように湾曲した湾曲部を有することにより、前記架構骨組固定部および前記非構造壁固定部よりも強度を弱体化させたことを特徴とする地震エネルギー吸収装置。
【請求項2】
請求項1記載地震エネルギー吸収装置において、
前記エネルギー吸収装置本体における前記架構骨組固定部と前記変形部との間、および前記非構造壁固定部と前記変形部との間には、短手方向の幅がそれぞれ前記架構骨組固定部および前記変形部の幅、および前記非構造壁固定部および前記変形部の幅よりも小さくなるように凹んだくびれ部が設けられていることを特徴とする地震エネルギー吸収装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載地震エネルギー吸収装置を架構骨組である梁材とその上方に設けた非構造壁との間のスリット部に設けたことを特徴とするコンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の架構骨組と非構造壁との間のスリット部に設置する地震エネルギー吸収装置およびその地震エネルギー吸収装置を使用したコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等のコンクリート構造物(鉄筋コンクリート構造物も含む。)では、地震発生時の倒壊を防止するため柱や壁の境界部分に層間変位に対する力学的な不連続部となるスリット部を形成しており、近年は、そのスリット部に構造スリット材と称される緩衝材を設置する工法が普及している。このようなコンクリート構造物は、スリット部に設けた構造スリット材を介して柱や壁が分離していることから、地震発生時の剪断力の伝達をスリット部によって遮断し、また構造スリット材によって吸収緩和することで、コンクリート構造物の剪断および脆性破壊を回避するようにしている。
【0003】
そのため、このようなコンクリート構造物のスリット部に設置する制振構造体として、スリット部を経由して架構骨組と非構造壁とを互いに繋ぐ制振構造体が架構骨組と非構造壁とに交換可能に設置されたことにより、又は、スリット部を経由して架構骨組に取り付けられた複数個の非構造壁を互いに繋ぐ制振構造体が複数個の非構造壁に交換可能に設置することにより、地震発生により制振構造体が変形等した場合、地震後に交換可能に構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1に記載された地震エネルギー吸収装置は、架構骨組と非構造壁との間に交換可能に設置する構造を採用し、非構造壁に非構造壁側筋が挿脱自在に収容する収容部を設けているので、非構造壁に収容部として大きな空間を確保しなければならず、大掛かりな施工が必要であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、大掛かりな施工を要せず、地震発生時のエネルギーを確実に吸収することができる地震エネルギー吸収装置およびその地震エネルギー吸収装置を使用したコンクリート構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するため、本発明に係る地震エネルギー吸収装置は、コンクリート構造物の架構骨組と非構造壁との間のスリット部に設置する地震エネルギー吸収装置であって、前記スリット部に設置され、前記架構骨組に固定される架構骨組固定部と前記非構造壁に固定される非構造壁固定部との間に変形部を有しており、前記架構骨組固定部と前記非構造壁固定部とを合わせて3箇所以上有し、かつ、前記変形部を2箇所以上有するエネルギー吸収装置本体と、前記架構骨組固定部に突出して設けられ、前記架構骨組に埋設されて前記エネルギー吸収装置本体と前記架構骨組とを接合する架構骨組接合部材と、前記非構造壁固定部における前記架構骨組接合部材の反対側から突出して設けられ、前記非構造壁に埋設されて前記エネルギー吸収装置本体と前記非構造壁とを接合する非構造壁接合部材とを備え、前記変形部は、貫通孔を形成するように前記エネルギー吸収装置本体の短手方向でかつ外側に向かって膨らむように湾曲した湾曲部を有することにより、前記架構骨組固定部および前記非構造壁固定部よりも強度を弱体化させたことを特徴とする。
また、本発明に係る地震エネルギー吸収装置では、前記エネルギー吸収装置本体における前記架構骨組固定部と前記変形部との間、および前記非構造壁固定部と前記変形部との間には、短手方向の幅がそれぞれ前記架構骨組固定部および前記変形部の幅、および前記非構造壁固定部および前記変形部の幅よりも小さくなるように凹んだくびれ部が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るコンクリート構造物では、上述のいずれかに記載された地震エネルギー吸収装置を架構骨組である梁材とその上方に設けた非構造壁との間のスリット部に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る地震エネルギー吸収装置は、スリット部に設置されるエネルギー吸収装置本体は、架構骨組に固定される架構骨組固定部と非構造壁に固定される非構造壁固定部との間に変形部を有しており、架構骨組固定部と非構造壁固定部とを合わせて3箇所以上有し、かつ、変形部を2箇所以上有しており、架構骨組固定部には架構骨組に埋設されてエネルギー吸収装置本体と架構骨組とを接合する架構骨組接合部材が設けられ、非構造壁固定部には非構造壁に埋設されてエネルギー吸収装置本体と非構造壁とを接合する非構造壁接合部材が設けられ、変形部は、貫通孔を形成するようにエネルギー吸収装置本体の短手方向でかつ外側に向かって膨らむように湾曲した湾曲部を有することにより、架構骨組固定部および非構造壁固定部よりも強度を弱体化させている。
そのため、大掛かりな施工を要せず、地震等が発生してエネルギー吸収装置本体の長手方向にせん断力が作用した場合、変形部はエネルギー吸収装置本体の長手方向に伸縮して地震発生時のエネルギーを確実に吸収することができる。特に、本発明においては、変形部のエネルギー吸収の際に、引張変形と圧縮変形とで差が生じないように、架構骨組固定部と非構造壁に固定される非構造壁固定部との間に設けられた2箇所の変形部は、地震等が発生した際、前記変形部の一方側が引張変形、もう一方側が圧縮変形というように対になって変形し地震発生時のエネルギー吸収するため、より安定した性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置をスリット部に設置した状態を簡略化して示す要部切欠正面図、要部切欠側面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置の斜視図である。
【
図3】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置の平面図、A部分の要部拡大平面図である。
【
図4】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置の正面図、側面図である。
【
図5】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置の設置手順を示す説明図である。
【
図6】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置の設置手順を示す説明図である。
【
図7】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置における変形部が引張変形した状態と、圧縮変形した状態の一例を示す平面図である。
【
図8】本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置における変形部が回転しながら変形した状態を示す図である。
【
図9】(a)~(c)それぞれ、本発明に係る実施形態2,3,4の地震エネルギー吸収装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る地震エネルギー吸収装置およびその地震エネルギー吸収装置を使用したコンクリート構造物の実施形態について説明する。尚、下記に説明する実施形態は、あくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の創作の範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
<実施形態の地震エネルギー吸収装置1の構成>
本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置1は、例えば、
図1(a),(b)に示すように、鉄筋コンクリート(以下、RCと略す場合がある。)構造物2の架構骨組であるRC梁21と非構造壁22との間に設けたスリット部に設置して地震発生時のエネルギーを吸収する部材であって、
図2および
図3に示すようにエネルギー吸収装置本体11と、架構骨組接合部材12と、非構造壁接合部材13とを有して構成される。尚、
図1において、符号の23はRC梁21と非構造壁22との間のスリット部に設けられる合成樹脂等で形成された周知の構造スリット材である。
【0012】
(エネルギー吸収装置本体11)
エネルギー吸収装置本体11は、所定の厚さを有する鋼板を所定形状に形成して地震発生時のエネルギーを吸収する部材で、
図2~
図4等に示すようにRC梁21に埋設して固定される架構骨組接合部材12が設けられたRC梁固定部11aと、非構造壁22に埋設して固定される架構骨組接合部材13が設けられた非構造壁固定部11bと、RC梁固定部11aと非構造壁固定部11bとの間で地震発生時に変形して地震エネルギーを吸収する変形部11cとを有している。詳細には、非構造壁固定部11bはRC梁固定部11aの両側に設け、変形部11cはRC梁固定部11aと非構造壁固定部11bとの間に設けている。
【0013】
RC梁固定部11aは、短手方向の幅がW1で、エネルギー吸収装置本体11の長手方向中央に設けられており、RC梁固定部11aには、RC梁21に埋設されてエネルギー吸収装置本体11とRC梁21とを接合する頭付きスタッドボルト等の架構骨組接合部材12が一定間隔を空けて2本設けられている。
【0014】
非構造壁固定部11bは、RC梁固定部11aと同様に短手方向の幅がW1であり、エネルギー吸収装置本体11の長手方向両端に、かつ、RC梁固定部11aの両側に変形部11cおよびくびれ部11dを介して設けられ、非構造壁固定部11bには、RC梁固定部11aとは反対側に延び、非構造壁22に埋設されエネルギー吸収装置本体11と非構造壁22とを接合する頭付きスタッドボルト等の非構造壁接合部材13が一定間隔を空けて2本設けられている。
【0015】
変形部11cは、RC梁固定部11aと非構造壁固定部11bとの間にくびれ部11dを介して設けられるもので、エネルギー吸収装置本体11の短手方向でかつ面内で外側に向かって膨らむように湾曲して貫通孔11c2を形成する一対の湾曲部11c1,11c1をエネルギー吸収装置本体11の長手方向に2つ連続して設けて構成されており、RC梁固定部11aと非構造壁固定部11bよりも強度を弱体化させている。
【0016】
一対の湾曲部11c1,11c1の外周面最大幅W2は非構造壁固定部11bおよびRC梁固定部11aの短手方向の幅W1よりも大きく、つまり、W2>W1としている。
【0017】
また、RC梁固定部11aと変形部11cとの間、および非構造壁固定部11bと変形部11cとの間に設けられたくびれ部11dは、それぞれ、
図3(b)に示すようにRC梁固定部11aおよび非構造壁固定部11bの短手方向の幅W1と、変形部11cの外周面幅W2よりも小さい幅W3(<W1)で凹むように形成されている。
【0018】
(架構骨組接合部材12)
架構骨組接合部材12は、エネルギー吸収装置本体11のRC梁固定部11aに頭付きスタッドが一定間隔を空けて2本ずつ設けられ、RC梁21に埋設されてエネルギー吸収装置本体11とRC梁21とを接合する。
【0019】
(非構造壁接合部材13)
非構造壁接合部材13は、エネルギー吸収装置本体11の非構造壁固定部11b,11bそれぞれに頭付きスタッドが一定間隔を空けて2本ずつ設けられ、非構造壁22に埋設されてエネルギー吸収装置本体11と非構造壁22とを接合する。
【0020】
<実施形態の地震エネルギー吸収装置1の取付け手順>
次に、以上のように構成された実施形態の地震エネルギー吸収装置1の取付け手順について説明する。
【0021】
まず、
図5(a)に示すようにRC梁21の構築用の鉄筋を組み(図示せず)、打設するための型枠31の所定位置に
図5(b)に示すように、予めエネルギー吸収装置本体11のRC梁固定部11aに架構骨組接合部材12を接合して、かつ、非構造壁固定部11b,11bそれぞれに非構造壁接合部材13を接合した地震エネルギー吸収装置1を取付け、その後、型枠31にコンクリートを流し込み打設してRC梁21を構築する。これにより、地震エネルギー吸収装置1は架構骨組接合部材12がRC梁21に埋設して固定されることになる。
【0022】
次に、
図6(a)に示すようにRC梁21上であって地震エネルギー吸収装置1の周囲のスリット部に、樹脂製等の周知の構造スリット材23を設置すると共に、RC梁21の上に非構造壁22の構築用の鉄筋(図示せず。)や型枠33(
図6(b)参照。)等を設置し、その後、
図6(b)に示すように型枠33で囲まれた空間であって構造スリット材23の上に非構造壁22構築用のコンクリートを流し込み非構造壁22を構築する。これにより、架構骨組接合部材13が非構造壁22に埋設し、地震エネルギー吸収装置1が固定されることになる。
【0023】
<実施形態の地震エネルギー吸収装置1の変形動作>
次に、以上のように構成された実施形態の地震エネルギー吸収装置1の動作について説明する。
【0024】
実施形態の地震エネルギー吸収装置1は、RC梁21と非構造壁22との間のスリット部に地震エネルギー吸収装置本体11が設置されて、RC梁固定部11aの2本の架構骨組接合部材12,12がRC梁21に埋設されて固定され、非構造壁固定部11b,11bそれぞれの2本の非構造壁接合部材13,13が非構造壁22に埋設されて、さらに、構造スリット材23と共に設けられる。
【0025】
地震等が発生し、RC梁21と非構造壁22との間に剪断力等が作用すると、エネルギー吸収装置本体11において変形部11cの一対の湾曲部11c1,11c1が、
図7(a)に示すように引張変形したり、
図7(b)に示すように圧縮変形して地震エネルギーを吸収する。
【0026】
また、エネルギー吸収装置本体11の短手方向等、長手方向と平行方向に対し角度をなす方向等に剪断力が作用した場合には、湾曲部11c1,11c1が伸縮するだけでなく
図8に示すように回転して地震エネルギーを吸収する。
【0027】
<実施形態の地震エネルギー吸収装置1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置1は、RC梁21に架構骨組接合部材12を埋設して固定されるRC梁固定部11aと非構造壁22に非構造壁接合部材13を埋設して固定される非構造壁固定部11bとの間に変形部11cを備えたエネルギー吸収装置本体11を有しており、変形部11cは、貫通孔11c2を形成するようにエネルギー吸収装置本体11の短手方向でかつ外側に向かって膨らむように湾曲し、エネルギー吸収装置本体11の湾曲部11c1,11c1を有することにより、RC梁固定部11aおよび非構造壁固定部11bよりも強度を弱体化させている。
【0028】
そのため、上述の特許文献1とは異なり大掛かりな施工を要せずに簡単な施工で本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置1をスリット部に設けることが可能となり、地震発生時のエネルギーを確実に吸収することができる。
【0029】
また、本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置1では、エネルギー吸収装置本体11におけるRC梁固定部11aと変形部11cとの間、および非構造壁固定部11bと変形部11cとの間には、短手方向の幅がそれぞれRC梁固定部11aおよび非構造壁固定部11bの幅W1、および変形部11cの外周面幅W2よりも小さくなるように凹んだ幅W3(<W1<W2)を有するくびれ部11dを設けている。
【0030】
そのため、地震発生時のせん断力によって実施形態の地震エネルギー吸収装置1の変形部11cが伸縮等して地震エネルギーを吸収する際、強度が弱い変形部11cおよびくびれ部11dが変形するので、RC梁固定部11aおよび非構造壁固定部11bは変形し難くなり、くびれ部11d,11d間の変形部11cが確実に変形して地震エネルギーを吸収することができると共に、くびれ部11dが変形して地震エネルギーを吸収することができる。
【0031】
また、本発明に係る実施形態の地震エネルギー吸収装置1は、RC梁固定11a及び非構造壁固定部11bに、それぞれRC梁21側、非構造壁22側に接合する頭付きスタッドボルト等の架構骨組接合部材12と非構造壁接合部材13が一定間隔を空けて2本設けられている。
【0032】
そのため、地震発生時にRC梁固定11a及び非構造壁固定部11bの回転をより抑制することができ、回転の影響を受けずに、変形部11cが地震エネルギーを吸収することができる。
【0033】
<実施形態2の地震エネルギー吸収装置1’>
図9(a)は、本発明に係る実施の形態の実施形態2の地震エネルギー吸収装置1の平面図である。
実施形態2の地震エネルギー吸収装置1’は、変形部11cの一対の湾曲部11c1’,11c1’の外周面間の最大幅W2を、RC梁固定部11a’および非構造壁固定部11b’の短手方向の幅W1と同じ、つまり、W2=W1としている。
【0034】
そのため、上記実施形態1の地震エネルギー吸収装置1と同様の効果が得られると共に、鋼板から実施形態2の地震エネルギー吸収装置1’を製造する際、非構造壁固定部11b’およびRC梁固定部11a’の短手方向における変形部11c’の食み出しが無いので、製造時の無駄を防止することでき、製造コストを低減することができる。
【0035】
<実施形態3の地震エネルギー吸収装置1”>
図9(b)は、本発明に係る実施の形態の実施形態3の地震エネルギー吸収装置1の平面図である。
実施形態3の地震エネルギー吸収装置1”は、
図9(b)に示すように変形部11cの幅である一対の湾曲部11c1”,11c1”の外周面間の最大幅W2は非構造壁固定部11b”およびRC梁固定部11a”の短手方向の幅W1と同じ、つまり、W2=W1とし、かつ、実施形態1や
図9(a)に示す実施形態2の場合とは異なり、変形部11c”には、1組の湾曲部11c1”,11c1”によって貫通孔11c2”を1つだけ設けている。
【0036】
そのため、上記実施形態1の地震エネルギー吸収装置1と同様の効果が得られると共に、上記実施形態2の場合と同様に鋼板から実施形態3の地震エネルギー吸収装置1”を製造する際、非構造壁固定部11b”およびRC梁固定部11a”の短手方向における変形部11c”の食み出しが無いので、製造時の無駄を防止することでき、製造コストを低減することができる。また、変形部11c”に貫通孔11c2”を1つだけ設けているため、容易に製造することが可能となり、この点でも製造コストを低減することができる。
【0037】
<実施形態4の地震エネルギー吸収装置1”’>
図9(c)は、本発明に係る実施の形態の実施形態4の地震エネルギー吸収装置1の平面図である。
実施形態4の地震エネルギー吸収装置1”’は、
図9(c)に示すように変形部11c”’の幅である一対の湾曲部11c1”’,11c1”’の外周面間の最大幅W2を、非構造壁固定部11b”’およびRC梁固定部11a”’の短手方向の幅W1よりも大きく、つまりW2>W1とし、貫通孔11c2”’の形状は、上記実施形態1や実施形態2,3とは異なり、円形ではなく長丸形状とし、3組の湾曲部11c1”’,11c1”’を連続して設けて貫通孔11c2”’を3つ設けると共に、非構造壁固定部11b”’と変形部11c”’との間、およびRC梁固定部11a”’と変形部11c”’との間にはくびれ部を設けずに省略している。
【0038】
そのため、実施形態4の地震エネルギー吸収装置1”’によれば、上記実施形態1の地震エネルギー吸収装置1と同様の効果を得ることができる。
【0039】
地震による必要変形量は建物ごとに異なる。変形を大きくしたい場合、変形部を大きくする方法もあるが、
図9の(a)や(c)のように貫通孔部を複数設ける方法もある。
【0040】
尚、上記実施形態1~4の説明では、架構骨組接合部材12および非構造壁接合部材13として軸部12a,13aおよび頭部12b,13bを有する頭付きスタッドボルトをRC梁固定部11a,11a’,11a”,11a”’や非構造壁固定部11b,11b’,11b”,11b”’に一定間隔を空け溶接等し立設して説明したが、本発明では、これに限らず、例えば、RC梁固定部11a,11a’,11a”,11a”’や非構造壁固定部11b,11b’,11b”,11b”’に雌ネジ孔を設けておき、ボルト等の雄ネジ部をその雌ネジ孔に螺合して架構骨組接合部材12および非構造壁接合部材13としても勿論良い。また、コンクリート中に埋設され回転を抑制する機構であればよく、十字断面の板状部材等でも良い。
【0041】
また、上記実施形態1~4の説明では、地震エネルギー吸収装置1,1’,1”,1”’には、RC梁固定部11a,11a’,11a”,11a”’の両側に非構造壁固定部11b,11b’,11b”,11b”’を設け、RC梁固定部11a,11a’,11a”,11a”’と非構造壁固定部11b,11b’,11b”,11b”’との間に変形部11c,11c’,11c”,11c”’を設けて説明したが、本発明では、これに限らず、非構造壁固定部11b,11b’,11b”,11b”’の両側にRC梁固定部11a,11a’,11a”,11a”’を設け、それらの間に変形部11c,11c’,11c”,11c”’を設けても良いし、さらにはRC梁固定部11a,11a’,11a”,11a”’と非構造壁固定部11b,11b’,11b”,11b”’とをそれぞれ2箇所以上設け、それらの間に変形部11c,11c’,11c”,11c”’を設けることにより3箇所以上の変形部11c,11c’,11c”,11c”’を設けるように構成しても勿論良い。
【0042】
また、上記実施形態1~4の説明では、
図1等に示すようにRC梁21と非構造壁22との間のスリット部に地震エネルギー吸収装置1,1’,1”,1”’を1つのみ設けるものして説明したが、本発明ではこれに限らず、スリット部の長手方向(
図1の左右方向)に地震エネルギー吸収装置1,1’,1”,1”’を複数並べて設けても良いし、短手方向(
図1の表裏方向)に地震エネルギー吸収装置1,1’,1”,1”’を複数並べて設けても勿論良い。
【符号の説明】
【0043】
1…地震エネルギー吸収装置
11…エネルギー吸収装置本体
11a…RC梁固定部
11b…非構造壁固定部
11c…変形部
11c1…湾曲部
11c2…貫通孔
11d…くびれ部
12…架構骨組接合部材
12a…軸部
12b…頭部
13…非構造壁接合部材
13a…軸部
13b…頭部
2…コンクリート構造物
21,21‘…RC梁
22…非構造壁
23…構造スリット材
31,33…型枠