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特開2024-145326逆シフト反応用触媒および混合ガスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145326
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】逆シフト反応用触媒および混合ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/78 20060101AFI20241004BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20241004BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20241004BHJP
   B01J 23/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B01J23/78 M
C01B32/40
B01J37/08
B01J23/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057620
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】福岡 葵
(72)【発明者】
【氏名】今井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】三浦 啓一
(72)【発明者】
【氏名】中西 博
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC22
4G146JC24
4G146JC27
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA15
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA15A
4G169BA15B
4G169BA15C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169CB81
4G169CC40
4G169DA06
4G169FB29
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】材料の入手や製造を容易にすることを可能にする逆シフト反応用触媒および混合ガスの製造方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素および水素から一酸化炭素および水蒸気を生成させるために用いられる逆シフト反応用触媒15であって、カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含む。また、前記逆シフト反応用触媒15は、セメントクリンカ、水和固化したセメントクリンカ、セメントペースト、モルタル、コンクリートのうち、少なくとも1種以上を含む混合物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素および水素から一酸化炭素および水蒸気を生成させるために用いられる逆シフト反応用触媒であって、
カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含むことを特徴とする逆シフト反応用触媒。
【請求項2】
前記逆シフト反応用触媒は、セメントクリンカ、水和固化したセメントクリンカ、セメントペースト、モルタル、コンクリートのうち、少なくとも1種以上を含む混合物であることを特徴とする請求項1に記載の逆シフト反応用触媒。
【請求項3】
前記混合物は、多数の微細孔を有する多孔体であることを特徴とすることを特徴とする請求項2に記載の逆シフト反応用触媒。
【請求項4】
融点が700℃以上の材料を主原料とする構造体の表面上に、前記混合物が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の逆シフト反応用触媒。
【請求項5】
触媒層を加熱する工程と、
二酸化炭素および水素を含む原料ガスを加熱された前記触媒層に通し、逆シフト反応により前記原料ガスから一酸化炭素および水蒸気を含む混合ガスを生成する工程と、を含み、
前記触媒層には、請求項1に記載の逆シフト反応用触媒を用いることを特徴とする混合ガスの製造方法。
【請求項6】
前記原料ガスは、H/COモル比が0.25以上9.85以下であることを特徴とする請求項5に記載の混合ガスの製造方法。
【請求項7】
前記触媒層を加熱する工程において、前記触媒層を500℃以上1200℃以下に加熱することを特徴とする請求項5または6に記載の混合ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆シフト反応用触媒および混合ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化ガスとして環境に悪影響を及ぼす二酸化炭素の削減・固定化は、世界的な急務である。それを受けて、各所において、CO排出削減技術、CO分離・回収技術、CO有用資源化技術、CO固定化技術など、多様な技術が実用化に向けて研究開発なされている。
【0003】
二酸化炭素を有効利用する方法として、例えば、二酸化炭素および水素からメタネーション反応によりメタンを生成し、ドライリフォーミング反応によってメタンおよび二酸化炭素から一酸化炭素を生成し、ブドワール反応により一酸化炭素から固体炭素を析出する方法が知られている。また、二酸化炭素から一酸化炭素を生成する方法としては、二酸化炭素および水素から一酸化炭素を生成する逆シフト反応も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-194534号公報
【特許文献2】特開2017-217629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
逆シフト反応は、メタネーション反応およびドライリフォーミング反応による2段階触媒反応と比較して1段階の触媒反応で二酸化炭素から一酸化炭素を生成する。しかしながら、逆シフト反応は平衡反応であり、副反応であるメタネーション反応が生じやすい。そのため、効率的に逆シフト反応を生じさせる触媒の研究および開発が進んでいる(例えば、特許文献1および2を参照)。
【0006】
特許文献1に記載の触媒は、アルカリ土類金属とTi,Al,Zr,Fe,WおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分との複合酸化物を合成し、合成した複合酸化物に二酸化炭素を吸収させて炭酸塩を生成させることで製造される。
【0007】
特許文献2に記載の触媒は、酸化マグネシウム粒子と、酸化マグネシウム粒子の表面に存在する酸化カルシウムとを含有し、該酸化カルシウムの含有量が、Ca換算で0.005質量%~1.5質量%である触媒用担体に対して、ルテニウム及びロジウムの少なくとも一方の金属が担持されていることを特徴とする。
【0008】
特許文献1および2に記載の触媒は、材料の入手が困難であったり、製造方法が複雑であったりする。また、逆シフト反応用触媒として、新たに合成する必要がある。そのため、より材料の入手や製造が容易な触媒が求められている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、材料の入手や製造を容易にすることを可能にする逆シフト反応用触媒および混合ガスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の逆シフト反応用触媒は、二酸化炭素および水素から一酸化炭素および水蒸気を生成させるために用いられる逆シフト反応用触媒であって、カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含むことを特徴とする。
【0011】
このように、カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含む触媒であれば、逆シフト反応用触媒として用いることができる。カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートはセメントクリンカやセメントペースト、モルタル、コンクリート等に含まれていることから、材料の入手や製造を容易にできる。
【0012】
(2)また、上記(1)記載の逆シフト反応用触媒において、前記逆シフト反応用触媒は、セメントクリンカ、水和固化したセメントクリンカ、セメントペースト、モルタル、コンクリートのうち、少なくとも1種以上を含む混合物であることを特徴とする。
【0013】
そのため、当初の目的に使われずに余ったセメントクリンカやセメントペースト、モルタル、建築廃棄物として回収される廃コンクリートなどを、逆シフト反応用触媒として利用することができる。
【0014】
(3)また、上記(2)記載の逆シフト反応用触媒において、前記混合物は、多数の微細孔を有する多孔体であることを特徴とする。これにより、混合物の比表面積が大きくなり、触媒の活性度を高められる。
【0015】
(4)また、上記(2)または(3)に記載の逆シフト反応用触媒において、融点が700℃以上の材料を主原料とする構造体の表面上に、前記混合物が形成されていることを特徴とする。
【0016】
これにより、混合物が構造体の表面に成形されることにより、構造体表面に触媒が形成される。
【0017】
(5)また、本発明の混合ガスの製造方法は、触媒層を加熱する工程と、二酸化炭素および水素を含む原料ガスを加熱された前記触媒層に通し、逆シフト反応により前記原料ガスから一酸化炭素および水蒸気を含む混合ガスを生成する工程と、を含み、前記触媒層には、上記(1)~(4)のいずれかに記載の逆シフト反応用触媒を用いることを特徴とする。
【0018】
これにより、材料の入手や製造が容易な逆シフト反応用触媒を用いて、一酸化炭素および水蒸気を含む混合ガスを製造することができる。
【0019】
(6)また、上記(5)に記載の混合ガスの製造方法において、前記原料ガスは、H/COモル比が0.25以上9.85以下であることを特徴とする。これにより、原料ガスから安定的に一酸化炭素を生成できる。
【0020】
(7)また、上記(5)または(6)に記載の混合ガスの製造方法において、前記触媒層を加熱する工程において、前記触媒層を500℃以上1200℃以下に加熱することを特徴とする。これにより、シフト反応やメタネーション反応を抑制し、効率よく一酸化炭素を生成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、材料の入手や製造を容易にすることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】混合ガスの製造に用いられる反応器の概略図である。
図2】ガス流路の一例を示す概略図である。
図3】各試料における実験条件および測定結果を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
[混合ガスの製造方法]
(原理)
本発明の混合ガスの製造方法は、以下の式1に示すように、二酸化炭素および水素を含む原料ガスから一酸化炭素および水蒸気を含む混合ガスを生成させる逆シフト反応を用いる。
CO+H→CO+2HO …(式1)
【0024】
上述した通り、逆シフト反応は平衡反応である。低温域において式2に示す正反応のシフト反応が有利であり、高温域において逆シフト反応が有利である。そのため、混合ガスを生成するためには高温下で逆シフト反応を進行させる必要がある。
CO+2HO→H+CO …(式2)
【0025】
また、逆シフト反応の副反応として、式3に示すメタネーション反応が生じてしまうおそれがあり、メタネーション反応が生じるとメタンが生成されて一酸化炭素濃度が低下してしまう。そのため、高温下で逆シフト反応用触媒によりメタネーション反応を抑制し、逆シフト反応のみ進行させることが求められている。
CO+4H→CH+2HO …(式3)
【0026】
(装置構成)
図1は混合ガスの製造に用いられる反応器10の概略図である。反応器10は、供給される原料ガスと、逆シフト反応を活性化させる触媒とを接触させ、式1の通り、原料ガスから一酸化炭素および水蒸気を生成する。反応器10は、ガス流通反応管13および逆シフト反応用触媒15を備えている。ガス流通反応管13には、逆シフト反応用触媒15が充填されている。ガス流通反応管13は、加熱炉により500~1200℃に加熱できる。反応器10は、例えば、固定式のガス流通管である常圧流通式反応器が用いられる。
【0027】
原料ガスは、二酸化炭素および水素が含まれていればよく、プロセス排ガスであってもよい。プロセス排ガスとは、例えばセメントクリンカ焼成過程、生石灰製造過程、火力発電所、廃棄物焼却処理施設、陶磁器などの焼成設備や製鉄所、化学プラントから排出される二酸化炭素を含む排ガスを指す。
【0028】
逆シフト反応を活性化させる触媒は、二酸化炭素および水素から一酸化炭素および水蒸気を生成可能なものとして、カルシウムアルミノフェライト(CAF)、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネート(CA)のうち、少なくとも一種を含むものであればよい。逆シフト反応用触媒15の詳細は後述する。
【0029】
(逆シフト反応用触媒の充填)
逆シフト反応用触媒15の充填について説明する。図2は、混合ガスの製造に用いられるガス流路の一例を示す概略図である。ガス流通反応管の内壁面13aで形成される流路に逆シフト反応用触媒15および石英ウール17が充填されている。石英ウール17を流路の前後に充填することで、逆シフト反応用触媒15を固定することが好ましい。
【0030】
(混合ガスの製造方法)
次に、混合ガスの製造方法について説明する。まず、原料ガスを反応器10に供給し、反応器10のガス流通反応管に原料ガスを流通させる。このとき、原料ガスはCOのモル比に対するHのモル比の比率(H/CO)が0.25以上9.85以下となるよう調整される。この比率は、より好ましくは0.3以上9.5以下であり、さらに好ましくは0.6以上2.6以下である。H/COが5以上だと、CO転換率を高めることができる。また、H/COが0.3以上9.5以下だと、製造される混合ガス中のCO組成割合をより高められる。H/COが0.6以上2.6以下だと、混合ガス中のCO組成割合をさらに高めることができる。ガス流通反応管のなかには加熱炉によって500~1200℃に加熱された触媒が充填されており、逆シフト反応を活性化させる触媒と原料ガスが接触し、原料ガスから一酸化炭素および水蒸気を含む混合ガスが生成される。加熱炉によって500℃以上に触媒が加熱されるからシフト反応やメタネーション反応を抑制でき、1200℃以下であるから触媒が加熱により劣化してしまうことを抑制する。加熱炉によって加熱される触媒の温度は、より好ましくは700~1000℃であり、さらに好ましくは800~1000℃である。
【0031】
(逆シフト反応用触媒の構成)
逆シフト反応用触媒15は、二酸化炭素および水素から一酸化炭素および水蒸気を生成させるために用いられる触媒であって、カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含む。逆シフト反応用触媒15は、カルシウムアルミノフェライト自体、ケイ酸カルシウム水和物自体およびアルミネート自体のうち少なくとも1つであってもよい。もしくは、カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含む混合物を含んでもよい。カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートは水和固化したものであってもよい。
【0032】
逆シフト反応用触媒15は、触媒全体に対して、カルシウムアルミノフェライトを5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上を満たすように含んでいればよい。また、逆シフト反応用触媒15は、カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネート以外の物質を含んでいてもよく、炭酸塩が含まれていることが好ましい。カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含む混合物としては、セメントクリンカ、水和固化したセメントクリンカ、セメントペースト、モルタル、コンクリートが挙げられる。なお、コンクリートは建築廃棄物として回収される廃コンクリートであってもよい。廃コンクリートは、空気中の二酸化炭素を吸収して、炭酸塩である炭酸カルシウム(CaCO)を形成していると考えられる。カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含む混合物は、ガスとの接触機会を増やすことができるため、空隙率が高いものが好ましい。そのため、緻密なセメントクリンカや水和固化したセメントクリンカよりも、水和固化したセメントペーストやモルタル、コンクリートが好ましい。セメントの種類についてはどのような種類であってもよい。
【0033】
また、水和固化したセメントクリンカ、セメントペースト、モルタル、コンクリートのうち少なくとも1種以上を加熱処理して多孔体にしたものを、カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含む混合物として用いてもよい。なお、材料を多孔体にする加熱処理は、複数の細孔を有する多孔体になるように加熱すればよく、800℃以上、30分以上で行なうことが好ましい。
【0034】
逆シフト反応用触媒15は、様々な形状とすることができる。逆シフト反応用触媒15の形状としては、特に限定されないが、球状、ペレット状、円柱状、直方体状、筒状、破砕片状、ハニカム状、粉末状、粒状、螺旋状等が挙げられる。触媒の容積が少なくて済むことから螺旋状がより好ましい。また、逆シフト反応用触媒15は粉末状であってもよいが、ガスが詰まらず、風で飛ばないようにする観点から粉末状より粒状が好ましい。また、球状、破砕片状、粉末状、粒状などの場合、粒度範囲が2~5mmであることが好ましい。粒度範囲が2mm以上であるからガスの通りがよくなり、5mm以下であるから原料ガスとの接触面積が広くなり触媒活性が向上する。
【0035】
粒度調整は、所望の粒度範囲になるように、粉砕物を分級することが好ましい。分級は、篩を用いた方法が最も簡便であり、好ましい。ただし、分級は、篩を用いた方法に限定されず、乾式、湿式の何れでもよい。
【0036】
また、構造体の表面上に、カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含む混合物が形成されたものを、逆シフト反応用触媒15としてもよい。構造体は、加熱炉による加熱に耐えうる材料が主原料である必要があり、少なくとも融点が500℃以上であることが求められる。融点が500℃以上の材料としては、鉄鋼、銅、チタン、ニッケル等が挙げられ、材料費が抑えられることからステンレスが好ましい。なお、構造体の主原料は、触媒が加熱される温度に合わせて選定されることが好ましく、加熱温度が1000℃の場合には融点が1000℃以上の材料を構造体の主原料とすることが好ましい。
【0037】
また、螺旋状の逆シフト反応用触媒15を作製する場合、板状の構造体を螺旋状に成形し、カルシウムアルミノフェライト自体、ケイ酸カルシウム水和物自体およびアルミネート自体もしくはカルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種を含む混合物の粉砕物を水に溶かしたものを塗布して水和固化させることで簡便に作製できる。構造体の表面上に水和固化によりアルミノフェライトを含む混合物を形成させることで、螺旋状だけでなく、所望の形状の逆シフト反応用触媒を容易に作製できる。
【0038】
[実施例]
(1.カルシウムアルミノフェライト触媒の作製)
CaCO、Al(OH)、Feを乳鉢に入れ、エタノールを用いて湿式混合した。このとき、CaCO、Al(OH)、Feはモル比でCaCO:Al(OH):Fe=4:2:1の比率となるように乳鉢に入れた。湿式混合後に12時間程度乾燥させ、成型した。成型物に対して電気炉を用いて1350℃で2時間焼成を行い、冷却後にボールミルで粉砕した後に再び成型した。電気炉による焼成を合計3回行うまで、焼成、粉砕および成型までを繰り返し行った。3回目の電気炉による焼成を終えて冷却した後に、ボールミルで粉砕して、粒度が2~5mmとなるように篩を用いて分級することでカルシウムアルミノフェライト(CAF)触媒を得た。
【0039】
カルシウムアルミノフェライト触媒の原料であるCaCO、Al(OH)、Feは、以下のものを使用した。
CaCO :関東化学株式会社製試薬
Al(OH) :関東化学株式会社製試薬
Fe :富士フイルム和光純薬株式会社製試薬
【0040】
(2.カルシウムアルミノフェライト触媒以外の触媒試料の調整)
また、セメントクリンカ中に含まれるアルミネート(CA)およびケイ酸カルシウム水和物を比較例として用いた。アルミネート(CA)およびケイ酸カルシウム水和物は以下のものを使用した。
A :関東化学株式会社製特級試薬CaCOおよびAlをモル比でCaCO:Al=6:4の比率となるよう調合した原料をボールミルにより粉砕し、ペレット状に加圧成形し、電気炉にて1350℃で3時間焼成した後、大気中で冷却した。冷却後、粉砕および成型をしたのち、同条件にて再焼成を2回繰り返し、合計3回焼成を実施することでアルミネート(CA)触媒を得た。
ケイ酸カルシウム水和物:ゾノトライト(太平洋マテリアル株式会社製品「エースライト」)
【0041】
また、普通セメントペースト(アルミナ混合)として、既知の方法で作製された普通セメントペーストに対してアルミナを混合した後に固めたものを使用した。配合は質量比でセメント:水:アルミナ=58:29:13とした。早強セメントクリンカは、既知の方法で作成されたものを使用した。廃コンクリートは、建築廃棄物として回収されるものを使用した。
【0042】
(3.逆シフト反応処理)
いずれの触媒試料においても、ボールミルで粉砕して、粒度が2~5mmとなるように篩を用いて分級し、直径φ8mmの石英管に3.027g充填した。流路内の触媒試料の前後に石英ウールを7.7cmの間隔で充填した。いずれの触媒試料も充填度が0.782g/cmとなるように充填した。
【0043】
各触媒試料を用いて逆シフト反応処理を実施した。図3は、逆シフト反応処理における各種条件と、反応器の出口ガスの組成を示している。入口ガスは、マスフローコントローラーを用いて、水素および二酸化炭素の流入量をそれぞれ調整した。出口ガスは湿式ガスメーターを用いて流出量を計測し、ガスクロマトグラフGC-2014(島津製作所製)を用いて、水素、二酸化炭素、メタンおよび一酸化炭素を定量分析した。
【0044】
(4.触媒の性能評価)
各触媒試料の性能評価としては、出口ガスの組成比において一酸化炭素(CO)濃度が1%未満を不合格とし、1%以上のものを合格とし、10%以上のものを良好とし、20%以上のものを非常に良好と評価した。図3に示すように、比較例1では一酸化炭素濃度が0%であった。
【0045】
これに対して、実施例1~20のいずれにおいても一酸化炭素濃度が1%以上であり、実施例5~11、13~15、17~20のいずれにおいては一酸化炭素濃度が10%以上であった。また、実施例10~12ではCO転換率が90%以上であり、実施例12ではCO転換率が100%であった。また、比較例1および実施例1~20のいずれにおいてもメタン濃度が0%であった。このことから、500℃以上で触媒を加熱することでメタネーション反応を抑制できることが確認できた。
【0046】
実施例1~20のいずれにおいても一酸化炭素濃度が1%以上であったことから、カルシウムアルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種が逆シフト反応用触媒として働いて、メタネーション反応を抑制して逆シフト反応を促進させることで一酸化炭素を生成することが確認できた。また、セメントクリンカに含まれるアルミネートおよびケイ酸カルシウム水和物よりも、カルシウムアルミノフェライトを触媒として用いた方が出口ガスにおける一酸化炭素濃度が高かったことから、カルシウムアルミノフェライトが逆シフト反応用触媒として適した物質といえる。
【0047】
また、アルミナを混合した普通セメントペーストを用いた実施例13、14や、早強クリンカを用いた実施例15、廃コンクリートを用いた実施例16~20であっても、逆シフト反応用触媒として十分な性能を示したことから、アルミノフェライト、ケイ酸カルシウム水和物およびアルミネートのうち、少なくとも一種が含まれていれば、製造方法や不純物の含有に関係なく逆シフト反応用触媒として用いることができることが確認できた。
【0048】
また、電気炉温度800℃以上であり、H/COモル比が0.6~2.6である実施例6~8、14、18~20では、一酸化炭素濃度が20%以上であり、良好な結果を得られた。しかしながら、電気炉温度が850℃であり、モル比が2.6である実施例15では、良好な結果が得られなかった。これはセメントクリンカが緻密でありガスとの接触が少ないことから、他の触媒と比べて活性度が低かったと考えられる。
【符号の説明】
【0049】
10 反応器
13 ガス流通反応管
13a 内壁面
15 逆シフト反応用触媒
17 石英ウール
図1
図2
図3