(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145327
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】太陽光パネル付植物栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/20 20060101AFI20241004BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A01G9/20 B
A01G7/00 601B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057622
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】519290851
【氏名又は名称】根岸 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】根岸 大輔
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
【Fターム(参考)】
2B022DA05
2B029KB01
2B029KB05
2B029KB10
(57)【要約】
【課題】両面発電型太陽光パネルの下で、両面発電の効果を高めながら、陰性植物を育てることが可能な植物栽培システムを提供する。
【解決手段】太陽光パネルと、太陽光パネルを設置面に対して傾斜させて保持するフレーム部と、太陽光パネルの下方に配置された陰性植物を栽培するための栽培容器と、栽培容器の蓋と、から成り、太陽光パネルは、両面に発電する受光領域を備えた両面発電型太陽光パネルであり、蓋は、少なくとも栽培容器に装着した際の上面に光反射性を有する反射面を有し、反射面は、太陽光パネルに覆われていない領域から入った光を太陽光パネルの裏面側の受光領域に向けて反射する手段を採る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネル付植物栽培システムであって、
太陽光パネルと、該太陽光パネルを設置面に対して傾斜させて保持する架台と、該太陽光パネルの下方に配置された陰性植物を栽培するための栽培容器と、該栽培容器の蓋と、から成り、
該太陽光パネルは、両面に発電のための受光領域を備えた両面発電型太陽光パネルであり、
該蓋は、少なくとも栽培容器に装着した際の上面に、光反射性を有する反射面を有し、
該反射面は、該太陽光パネルの周囲から入った光を、該太陽光パネルの裏面側の受光領域に向けて反射することを特徴とする太陽光パネル付植物栽培システム。
【請求項2】
前記反射面は、前記蓋の素材または反射塗料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光パネル付植物栽培システム。
【請求項3】
前記蓋に、断熱材が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光パネル付植物栽培システム。
【請求項4】
前記蓋の表面に複数の孔が開き、光の一部が前記栽培容器内に入射可能であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光パネル付植物栽培システム。
【請求項5】
前記栽培容器の側面外周に反射面があり、且つ、断熱材が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光パネル付植物栽培システム。
【請求項6】
栽培する植物が苔であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の太陽光パネル付植物栽培システム。
【請求項7】
前記栽培容器の培地が、白砂であることを特徴とする請求項6に記載の太陽光パネル付植物栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネル付植物栽培システムに関し、詳しくは、両面発電型の太陽光パネルの下で行う植物栽培において、発電と栽培を効率よく行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電パネルにおいて、両面発電型を用いる際、地面に、反射シート等を敷き、パネルの裏側からの光量を大きくすることが行われている。
また、営農を継続しながら、太陽光発電を行うソーラーシェアリングの取り組みも進められている。
ソーラーシェアリングの一方法として、両面発電型太陽光パネルの下で、陰性植物を栽培することが考えられる。
その際、太陽光パネルの発電効率の点では、パネルの下方にも多くの光が入り、その光を反射させ、反射光をパネルの裏面で受けて、発電効率を向上させることが望ましい。
一方、陰性植物の栽培については、パネルの下方への光が少ない方が好ましい。そのため、両面発電型太陽光パネルの下で、両面発電の効果を高めながら、陰性植物を育てることは難しかった。
そこで、両面発電型パネル下で、陰性植物を栽培する際にも、太陽光パネルの発電効率を向上させる技術が求められていた。
【0003】
このような問題に対して、従来からも様々な技術が提案されている。例えば、ソーラーシェアリングについての技術(特許文献1参照)が提案され、公知技術となっている。より詳しくは、太陽光パネルに両面受光型太陽電池を採用し、農地面や農作物、シート状部材等で反射した光を発電に利用するものである。
【0004】
また、特定の波長の光を活用する太陽光発電システムを備えた農園芸用施設についての技術(特許文献2参照)が提案され、公知技術となっている。より詳しくは、農園芸用施設であって、両面発電型モジュールを有する太陽光発電システムで、波長500~600ナノメートルの光を反射する部材を有し、太陽光発電システムの採光部分を透過した光の一部は部材に入射し、反射された波長500~600ナノメートルの光の一部は、両面発電型モジュールに入射し、部材を透過した光の一部は、施設内部に入射するものである。
【0005】
しかしながら、上記いずれの先行技術も、陰性植物を栽培する際の発電効率の向上について記載が無く、上記問題点の解決には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5960332号公報
【特許文献2】特開2015-204755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、両面発電型太陽光パネルの下で、両面発電の効果を高めながら、陰性植物を育てることが可能な植物栽培システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、太陽光パネルと、太陽光パネルを設置面に対して傾斜させて保持するフレーム部と、太陽光パネルの下方に配置された陰性植物を栽培するための栽培容器と、栽培容器の蓋と、から成り、太陽光パネルは、両面に発電する受光領域を備えた両面発電型太陽光パネルであり、蓋は、少なくとも栽培容器に装着した際の上面に、光反射性を有する反射面を有し、反射面は、太陽光パネルの周囲から入った光を、太陽光パネルの裏面側の受光領域に向けて反射する手段を採用する。
【0009】
また、本発明は、反射面が、蓋の素材または反射塗料で構成されている手段と採る。
【0010】
さらに、本発明は、蓋に断熱材が塗布されている手段を採る。
【0011】
またさらに、本発明は、蓋の表面に複数の孔が開き、光の一部が栽培容器内に入射可能である手段を採る。
【0012】
さらにまた、本発明は、植物栽培容器の外周に反射面があり、且つ、断熱材が塗布されている手段を採る。
【0013】
またさらに、本発明は、栽培する植物が、苔である手段を採る。
【0014】
そしてまた、本発明は、栽培容器の培地が、白砂であることを手段とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムによれば、両面発電型太陽光パネルの裏面側で、陰性植物を栽培する際に、陰性植物にとって余剰な光量を太陽光パネルの裏面へ照射し、陰性植物にとって適切な光量を、陰性植物に与えることができるので、発電と植物栽培を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムの実施形態を示す全体図である。
【
図2】本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける栽培容器等を示す分解図である。
【
図3】本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける栽培容器内の光の動きを示す断面図である。
【
図4】本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける栽培容器の固定方法を示す説明図である。
【
図5】本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける野菜の栽培を示す断面図である。
【
図6】本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける散水例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムは、太陽光パネルの下方で陰性植物を栽培する際にも、両面発電型パネルの性能を十分に発揮することができることを最大の特徴とする。
以下、本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムの実施形態を、図面に基づいて説明する。
なお、以下に示される太陽光パネル付植物栽培システムの全体構成及び各部構成は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、即ち、同一の作用効果を発揮できる形状や寸法等の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0018】
図1から
図6に従って、本発明を説明する。
図1は、本発明の全体斜視図を示す。
図2は、本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける栽培容器の内部を説明する分解図である。
図3は、本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける栽培容器内の光の動きを示す断面図であり、(a)は通常の種苔を栽培する際の栽培容器内の光の流れを示す図、(b)は白砂を培地とする種苔を栽培する際の栽培容器内の光の流れを示す図である。
図4は、本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける栽培容器の固定方法を示す図であり、(a)は容器と蓋を挟持部で固定する構造を示す図、(b)は容器を固定ピンで固定する構造を示す図、(c)は固定バンドで容器を固定する構造を示す図である。
図5は、本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける野菜の栽培を示す断面図である。
図6(a)は、本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムにおける散水例を示す斜視図であり、(b)は散水パイプと太陽光パネルの位置関係を示す図である。
【0019】
太陽光パネル付植物栽培システム1は、太陽光発電と、植物の栽培を同時に行うシステムであり、立体的に土地を活用することで農業と太陽光発電の両方を行う、所謂ソーラーシェアリングのためにシステムである。
太陽光パネル付植物栽培システム1は、主に、太陽光パネル10と架台20と栽培容器30と蓋40とから構成される。
本発明は、太陽光パネルの下で、陰性植物を栽培するものである。
太陽光パネルの下で、通常の陽性植物を育てようとした場合、パネルにより植物への直射日光が半減してしまうことは、デメリットである。
しかし、陰性植物の場合は、程度の違いはあるが、日陰での生育が適している。そのため、太陽光パネルで直射日光を遮ることは、陰性植物にとって生育の条件を整える方向にあり、デメリットとならない。
また、苔などの生育には、適度な湿度が必要である。太陽光パネルによって、太陽光が遮断され、周りよりも若干暗い環境をつくることができるので、適当な環境を創出することができる。
【0020】
太陽光パネル10は、太陽光により発電するパネルである。太陽光パネル10は、両面に発電する受光領域を備えた両面発電型太陽光パネルである。
両面発電型のパネルには、複数の種類がある。
例えば、裏表から強化ガラスで覆われ、強化ガラスの透光性を有するパネル基板と、パネル基板に接続され両面に発電領域を備えた両面受光型太陽電池を有するものがある。この種類では、隣り合う両面受光型太陽電池の間が空いており、透光性のあるパネル基板で接続されているので、一定量の太陽光を通すことができる。
また、単純に、裏表の両面に太陽電池を貼り付けた方式もある。
本発明は、いずれの方式にも適用することができる。
両面発電型太陽光パネルの場合、パネルの裏面側の光量が大きいほど良い。それに対して、陰性植物にとって一定量以上の光量は、生育の妨げになる。そのため、単純に、両面発電型太陽光パネルの下で陰性植物を栽培すると、相対的に非効率になってしまう。
【0021】
太陽光パネル10は、架台20の上に設置される。太陽光パネル10は、架台20によって、設置面に対して傾斜させて設置される。傾斜角度は、発電効率等から決められる。
両面受光型太陽電池は、表面、裏面の両面に発電する受光領域を備えており、太陽からの直射日光以外に、地面等からの反射光によっても発電することができる。そのため、設置面である地面に、光を反射するシート等を敷くことで、裏面側への光量を多くし、発電量を増やす技術が知られている。
本実施形態では、栽培容器30、蓋40からの反射を多くすることで、発電量を増やすことができる。
【0022】
架台20は、太陽光パネル10を保持、固定する台である。架台20は、太陽光パネル10を、設置面である地面に対して傾斜させて保持する。
設置場所は、屋外の障害物の無い土地となることが多いので、風雨の影響を受けやすい。従って、太陽光パネル10が飛ばされたり、破損することが無いよう、十分な強度、安定性が必要である。
架台20は、杭21、支柱22、縦フレーム23、横フレーム24から成る。
杭21は、架台20を設置面である地面に打ち込むことで、基礎となる部分である。杭21の頭の部分は、フランジ状で、支柱をねじ止めするための孔が複数開いている。
支柱22は、太陽光パネル10を所定の高さで、所定の傾きにするための支えである。支柱22の下側端部を、杭21のフランジ部分によってねじ止めする。支柱22は、太陽光パネル10の重量、強風等に十分耐える強度を持つ。
【0023】
支柱22の長さは、特に限定するものではないが、太陽光パネル10の下で、農作業を行う作業者が立って作業を行うことができる程度の長さであることが好適である。そのような高さとすることで、作業者がパネルに頭をぶつけることが無く、屈んだりしゃがんで作業を行う必要も無くなる。
また、支柱22を高くすることによって、光が周りからパネルの下に入り易くなるため、ある程度明るさが必要な苔等も栽培しやすくなる。
それに対して、支柱22の高さを低くすると、周囲からの光が入りにくくなり、栽培できる苔等が限られてしまう。また、太陽の光でパネルが温められた際、パネルからの輻射熱によって、栽培容器30が加熱されてしまうことが考えられる。
【0024】
縦フレーム23は、支柱22間に渡され、梁となる部分である。太陽光パネル10を斜めに配置するため、短めの支柱22と長めの支柱22との間に渡される。縦フレーム23の角度は、例えば、10度程度である。
2つの縦フレーム23の間に、水平に横フレーム24を配置する。配置する太陽光パネル10の大きさにもよるが、本実施形態では、5枚の太陽光パネル10を載せるために、6本の横フレーム24を用いしている。
横フレーム24の径が大きいと、太陽光パネル10を設置した際、横フレーム24と裏面側受光領域12とが重なってしまうので、適切な径である必要がある。
2つの横フレーム24の間に太陽光パネル10を金具等によって、固定する。
【0025】
蓋40は、種苔Tを藩種した栽培容器30の上部を覆い、種苔Tに対して遮光し、太陽光パネル10に対して反射光62を与えるものである。
蓋40は、トレーを伏せた形状であり、天面と側面を持つ。材質は、合成樹脂等である。天面は、栽培容器30の底面とほぼ同じ大きさ形状である。天面には、通気性、通水性のある孔が複数開いている。下端の縁は、栽培容器30と接続可能である。
蓋40の天面の孔の数と大きさは、栽培容器30を太陽光パネル10の下に配置した状態で、栽培容器30内の種苔Tに対して、適切な光量となるよう、決められる。
蓋40を栽培容器30に装着した際の上面、即ち蓋40の表側の面には、反射面42が設けられている。
反射面42は、光反射性を有する反射面である。蓋40の素材自体が光沢を持ち、高い光反射率を持ってもいいし、光反射性を高める塗料を蓋40の表面に塗布してもよく、あるいは、アルミ箔等を貼り付けても良い。塗布する塗料としては、例えば、様々な大きさの炭酸カルシウム粒子を用いた塗料を用いることで、高い反射率を得ることができる。
反射面42をもつことによって、太陽光パネル10の周りから入った散乱光61が、反射面42で反射して、その反射光62が太陽光パネル10の裏面側の受光領域に入射し、太陽光パネル10の発電効率を向上させることができる。
【0026】
また、蓋40の外側には、断熱部43が設けられている。反射面42が塗料の場合は、蓋40と反射面42との間に、断熱部43の層を設ける。
断熱部43は、外部との熱の流通を遮断するものである。例えば、断熱塗料を塗ることで、断熱性を向上させている。断熱塗料としては、シリコン変性アクリルエマルジョン樹脂に、赤外線を反射させる遮熱顔料と、熱伝導率を低減させる有機無機ハイブリッドバルーンを使用したものなどがある。赤外線を反射させることで、太陽光等で熱せられたパネルからの熱線も遮断することができる。
通常、栽培容器30及び蓋40は、室内に置かれ、温度管理されている場合が多い。本実施形態では、栽培容器30及び蓋40は、屋外に設置されるので、栽培容器30内の温度変化を軽減するために断熱部34は有効である。
【0027】
また、反射効率を上げるために、蓋40の内側にも反射面を設けても良い。蓋40内に入った光が、蓋40内で反射し、一部が蓋40から出ることで、パネルへの光量が増加するからである。
【0028】
栽培容器30は、太陽光パネル10の下で陰性植物を栽培するための容器である。
栽培容器30の形状は、トレー状であり、底面と側面を持つ。材質は、合成樹脂等である。底面は、正方形又は長方形状である。底面、側面には、通気性、通水性のある孔が複数開いている。複数段の重ね合わせが可能であり、上端の縁は、蓋40と接続可能である。
栽培容器30の底面は、生育基盤材35が配置できるよう、平坦である。
生育基盤材35とは、種苔T等が正常に生育できる状態の地盤のことで、根系が生育できる十分な深さと広がりが必要であり、物理的には透水性が良好で、適度な硬度と保水性が必要である。
生育基盤材35の上に、種苔Tを藩種する。
栽培容器30の外側の面には、反射面33が設けられている。該反射面33は、蓋40に設けられた反射面42と同等の性能及び効果を持ち、高い反射率を得ることができる。
また、栽培容器30の外側には、断熱部34が設けられている。断熱部34は、蓋40に設けられた断熱部43と同等の性能及び効果を持ち、外部との熱の流通を遮断するものである。蓋40の断熱部43と同様、栽培容器30内の温度変化を軽減するために有効である。
【0029】
また、反射効率を上げるために、栽培容器30の内側にも反射面を設けても良い。栽培容器30内に入った光が、栽培容器30内で反射し、一部が栽培容器30から出ることで、パネルへの光量を増やすことができるからである。
【0030】
太陽光パネル10の下における栽培容器30を配置した後の余ったスペースに、蓋40のみを敷き詰めても良い。蓋40を敷き詰めることで、栽培容器30の無い場所の反射効率を向上させることができる。また、地面を蓋40で覆うことになるので、無用な雑草の発生を防ぐことができる。
【0031】
また、栽培容器30を配置する前に、太陽光パネル10の下に、反射シートを敷いても良い。反射シートによって、栽培容器30の無い場所の反射効率を向上させることができる。また、反射シートで反射された光が、栽培容器30の側面に当たった場合、側面に光反射性があることで、光の一部が太陽光パネル10に照射し、パネルへの光量を増やすことができる
【0032】
なお、
図1では、栽培容器30について、起立した側面を有する直方体の形状としたが、
図4のように、薄皿型の形状でも良い。薄皿型の形状の場合、側面に孔は設けない。
【0033】
栽培容器30による種苔Tの栽培の手順を、
図2に沿って説明する。
種苔Tを手で揉みほぐしたり、ふるいに押し当てたりして細かく分散させる。栽培容器30に、厚さ3cm程度の生育基盤材35を敷く。生育基盤材35の上に、種苔Tを藩種する。このとき、種苔Tが重ならないように、ブロック単位で間隔を開けて均等に蒔く。
必要に応じて上から砂をまいて、種苔T同士のすき間を埋め、適宜散水する。
遮光のため、上から蓋40を被せる。
栽培容器30は、種苔Tの数によって複数段重ね合わせて培養する。
このようにして、栽培容器30と蓋40によって、閉じられつつ通気性のある空間で、種苔Tを栽培することができる。
【0034】
太陽光パネル付植物栽培システム1における光の進み方について、
図1に沿って説明する。
太陽光パネル10は、架台20のよって地面に対して斜めに設置され、太陽光パネル10の下には、種苔Tを培養する栽培容器30が配置され、栽培容器30の上は、蓋40で覆われている。
複数の架台20があり、架台20と架台20との間は、太陽光60を効率的に太陽光パネル10に当てるために、間隔が空いている。
太陽光60は、太陽光パネル10の表面に照射される。太陽光パネル10の表面側受光領域11によって、発電が行われる。太陽光パネル10の下には、太陽光60が直接照射されないが、太陽光パネル10の周囲から入った光である散乱光61が入る。
散乱光61は、各蓋40にも照射され、蓋40の表面側の反射面42によって反射される。反射面42からの反射光62は、太陽光パネル10の裏面側受光領域12に向けて照射される。
そのため、裏面側への反射光の分、太陽光パネル10の発電効率は向上する。
反射光62の量は、反射面42の反射率に依存するので、反射面42の反射率は高いほど良い。
また、反射光62の量は、太陽光パネル10の下の栽培容器30の配置面積に依存するので、より多くの面積を栽培容器30で埋めると好適である。
反射光62の量は、散乱光61の量にも依存する。そのため、支柱22の高さを高くして、太陽光パネル10の周囲から入る散乱光61の量を高めると好適である。
【0035】
本実施形態では、太陽光パネル10の高さが高く、作業者が立って作業できる場合について説明しているが、本発明は、太陽光パネル10の高さが低い、ソーラーシェアリングを行わない太陽光パネルについても適用可能である。
太陽光パネル10の高さが低い一般的なシステムにおいて、栽培容器30、蓋40を用いて陰性植物の栽培を行う際、特有のメリットがある。
支柱22の高さが短くなることによって、安定性が増すため、支柱22自体の強度を下げることができる。
また、太陽光パネル10の高さが低くなることから、霜がつきにくくなる。
さらに、比較的明るさの必要がない植物に適した環境とすることができる。
【0036】
栽培容器30、蓋40での光の進み方を
図3に沿って説明する。
図3(a)は、栽培容器30で種苔Tを培養する様子の断面図である。栽培容器30に、生育基盤材35が敷かれ、その上に種苔Tが置かれている。栽培容器30の上部は、蓋40で覆われている。また、栽培容器30に隣接して、蓋40のみを配置している。
栽培容器30と蓋40の表側には、熱を遮断する断熱部34、断熱部43が塗布してあり、その上に光反射性を有する反射面33、反射面42が形成されている。
散乱光61は、主に蓋40の上部から降り注ぐ。一部は、蓋40の天面孔41を通して、栽培容器30内に入り、種苔Tに注がれる。天面孔41の大きさと量を変えることで、種苔Tに対して、適切な光量を与えることができる。
蓋40の天面孔41以外の部分に当たった散乱光61は、反射面42によって反射される。反射光62は、太陽光パネル10の裏面の受光領域に照射される。
また、栽培容器30に隣接した蓋40によって反射した光は栽培容器30の側面で再反射し、太陽光パネル10の発電効率を上げることができる。
【0037】
このように、本実施形態によれば、太陽光パネルの裏面側で、苔などを含む陰性植物を栽培する際にも、両面発電型パネルの性能を十分発揮させることができるものである。
【0038】
図3(b)に沿って、栽培容器30内の培地を変えることで、反射光62の量を増やす例を説明する。
苔の種類によっては、培地として、砂を用いることができるものがある。培地を白砂37とすることによって、栽培容器30内に入った散乱光61の一部を反射光62とすることができる。
このように、培地の反射率を上げることによって、太陽光パネル10の発電効率を上げることができる。
【0039】
また、培養する種苔Tが、比較的明るさを好む品種の場合には、蓋40の天面孔41を大きくしたり、蓋40を用いず栽培容器30の上部を開放したりしても良い。
そうすることで、白砂37により発生する反射光62の量が増え、太陽光パネル10の発電効率を、さらに上げることができる。
【0040】
本実施形態の対応としては、陰性植物であれば、当然に苔に限らず、果物や野菜でもよい。
野菜としては、みつば、パセリ、ニラ、せり、クレソン等がある。
図5に示すように、栽培容器30に培養土36を入れ、蓋40をすることで、種苔Tの場合と同様に、植物を栽培しつつ、太陽光パネル10の発電効率を向上させることができる。
野菜等の場合、栽培容器30を用いず、太陽光パネル10の下の地面を耕し、路地栽培とすることが考えられる。しかし、陰性植物への光量は、太陽光パネル10の影の位置との関係で大きく変わる。そのため、栽培容器30を用いた方が、適切な位置に栽培容器30を移動、配置し、適当な光量を植物に与えることができる。
【0041】
通常、苔などの培養は、室内で行われる。そのため、屋外で培養する場合は、風により蓋40が外れたり、栽培容器30自体が吹き飛ばされたりする可能性もあるので、これを防ぐ必要がある。
図4に沿って、栽培容器30、蓋40の固定方法を説明する。
図4(a)は、栽培容器30に対して、蓋40が外れることを防ぐ方法である。
栽培容器30、蓋40の側面に、突出部を設け、両方の突出部を挟持部70で挟むことで、蓋40が栽培容器30に対して外れることを防ぐものである。
挟持部70は、両方の突出部を強固に挟むものであり、例えば、スプリングクランプ(角材やパイプなどで板材やビニール、シート等を挟み込み固定する部材)やクリップ等などが考えられる。
挟持部70は、栽培容器30の表側に配置されるので、栽培容器30や蓋40と同様に、光反射性が高いとよい。例えば、白色や銀色であると光を反射しやすく好適である。
【0042】
図4(b)は、栽培容器30を、ピンを用いて地面に固定する方法である。固定ピン71を栽培容器30の底面の底面孔32に刺すことで、栽培容器30を地面に固定する。固定ピン71は、栽培容器30の底面の4隅に配置すると好適である。
固定ピン71で固定することによって、栽培容器30自体が風で吹き飛ばされることを防ぐことができる。
【0043】
図4(c)は、栽培容器30を、バンドを用いて地面に固定する方法である。複数の栽培容器30をまとめて、固定バンド72で地面に固定する。固定バンド72の端部は、固定ピン71にて、地面に固定する。
固定バンド72は、ハウスバンド(ビニールハウスのフィルムのバタつきを押えるバンド)のように、強度・耐久性のあるものが好適である。
固定バンド72は、蓋40の表側に配置されるので、栽培容器30や蓋40と同様に、光反射性が高いとよい。例えば、白色や銀色であると光を反射しやすく好適である。
【0044】
図6に沿って、栽培容器30への散水構造について説明する。
本実施形態での陰性植物である苔などは、湿気、水分量が重要である。そのために、定期的に散水するとよい。
散水の構成として、ホースを張り巡らし、ホースに開けた小さな孔から、散水することが考えられる。
しかし、不用意にホースを巡らせると、太陽光パネル10の裏面側の受光領域に係り、発電効率を下げることになる。そこで、発電効率を下げない構造とした。
散水パイプ50は、散水のためのホースであり、所々に小さな孔である散水孔51が設けられ、散水パイプ50自体がシャワーとなるような散水装置となっている。
散水パイプ50は、横フレーム24に沿って、固定される。
横フレーム24の直下にパイプ固定部52を設け、散水パイプ50を横フレーム24の真下で、パイプ固定部52によって、保持する構造である。散水パイプ50を一筆書きのように、すべての横フレーム24の直下に設置する。パイプ固定部52は、各横フレーム24に3つ程度設置し、散水パイプ50が大きく垂れ下がらないように保持する。
散水パイプ50には、散水孔51が適宜設けられているので、
図6(a)に示すように、太陽光パネル10の下全体に散水することができる。
図6(b)に示すように、散水パイプ50は、横フレーム24の直下にパイプ固定部52を用いて保持されているので、太陽光パネル10の裏面側からの光を受光領域に入射させることを、妨げることがない。
このように、この散水構造は、両面発電型太陽光パネルにおいて、パネル下の植物への散水のための散水管が、パネルの裏面受光領域に重なることなく、両面発電型太陽光パネルの発電効率に寄与するものである。
【0045】
以上のように、本発明によれば、両面発電型太陽光パネルの下方で、陰性植物を栽培する際に、陰性植物にとって余剰な光量を太陽光パネルの裏面へ照射し得ると共に、陰性植物にとって適切な光量を陰性植物に与えることが可能であって、発電と植物栽培を効率よく行うことができ、両面発電型パネルの性能を十分発揮することができる。
【0046】
また、栽培容器30、蓋40の内側に、光反射性を有する反射面を持つことによって、容器内に入った光の一部を容器外に放射することができるので、太陽光パネルの発電効率をより向上させることができる。
【0047】
さらに、栽培容器30、蓋40に断熱部があることから、パネルからの輻射熱を遮り、栽培容器30内の温度を維持しやすいので、苔の培養を効果的に行うことができる。
【0048】
またさらに、培土に白砂を用いることによって、栽培容器30内に入った光も反射光として活用することができるので、効果的に発電することができる。
【0049】
さらにまた、栽培容器30、蓋40を適宜固定することで、栽培容器が風で飛ばされることを回避できる。その際、固定具の表面を光反射性の高い状態とすることで、発電効率を更に向上させることができる。
【0050】
またさらに、散水構造を工夫することによって、散水構造による太陽光パネルに対する反射光の影響を低減でき、太陽光パネルの発電効率を向上させることができる。
【0051】
またさらに、太陽光パネルの下に、栽培容器30及び蓋40を敷き詰めることで、パネルの下を全て光反射性の高い面とすることができ、太陽光パネルの発電効率を向上させることができると共に、防草効果を得ることができる。
また、栽培容器30の側面に光反射性を有する反射面33を持つことによって、栽培容器30の横に置かれた蓋40で反射した光を栽培容器30の側面で更に反射させ、反射光を増やし、太陽光パネルの発電効率を向上させることができる。
【0052】
さらにまた、太陽光パネルの下に、反射シートを敷き、その上に、光反射性を有する反射面33,42を持つ栽培容器30及び蓋40を配置することによって、栽培容器30及び蓋40の配置位置に関わらず、反射光を増やすことができる。
また、栽培容器30の側面に光反射性を有する反射面33を持つことによって、反射シートで反射した光を栽培容器30の側面で更に反射させ、反射光を増やし、太陽光パネルの発電効率を向上させることができる。
【0053】
そしてまた、太陽光パネル内に、透光性のある領域を持つことによって、表面で発電に使用されない光を、栽培容器30及び蓋40まで到達させ、その反射光を裏面の発電領域に照射することによって、発電効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る太陽光パネル付植物栽培システムは、太陽光パネルの下方で陰性植物を栽培する際にも、両面発電型パネルの性能を十分発揮することができる技術であって、既存の太陽光発電施設にも応用することが可能な技術であり、産業上の利用可能性は大きいと解する。
【符号の説明】
【0055】
1 太陽光パネル付植物栽培システム
10 太陽光パネル
11 表面側受光領域
12 裏面側受光領域
20 架台
21 杭
22 支柱
23 縦フレーム
24 横フレーム
30 栽培容器
31 側面孔
32 底面孔
33 反射面
34 断熱部
35 生育基盤材
36 培養土
37 白砂
40 蓋
41 天面孔
42 反射面
43 断熱部
50 散水パイプ
51 散水孔
52 パイプ固定部
60 太陽光
61 散乱光
62 反射光
70 挟持部
71 固定ピン
72 固定バンド
T 種苔
P 野菜
W 水