(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145333
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
E03F 5/22 20060101AFI20241004BHJP
F04B 49/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E03F5/22
F04B49/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057635
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛正
(72)【発明者】
【氏名】植田 省吾
(72)【発明者】
【氏名】臼井 健一
【テーマコード(参考)】
2D063
3H145
【Fターム(参考)】
2D063DC05
2D063DC06
3H145AA06
3H145AA14
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA28
3H145CA14
3H145CA25
3H145DA47
3H145EA15
3H145EA34
3H145EA42
(57)【要約】
【課題】精度良く機器の状態に関する情報を出力することが可能なプログラム等を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係るプログラムは、第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、所定期間における第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する処理をコンピュータに実行させる。また、前記第1統計データ及び前記第2統計データに基づき、前記機器の状態に関する情報を出力する
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、
所定期間における第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記第1統計データ及び前記第2統計データに基づき、前記機器の状態に関する情報を出力する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記機器は、ポンプシステム装置であり、
前記運転情報は、前記ポンプシステム装置に設けられるポンプの単位時間あたりの運転時間である
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記第1統計データと前記第2統計データとの相関に基づき、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力する
請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第1統計データと前記第2統計データとの差分に基づく第3統計データを生成する
請求項3に記載のプログラム。
【請求項6】
前記第3統計データに基づき、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力する
請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記ポンプシステム装置が設けられる地域における降水量に基づく、前記第1時間軸及び前記第2時間軸を基準とした第4統計データを生成する
請求項5に記載のプログラム。
【請求項8】
前記第3統計データと前記第4統計データとの相関に基づき、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力する
請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記第1統計データと前記第2統計データとの相関、前記第3統計データ、及び前記第3統計データと前記第4統計データとの相関に基づき、降水に伴って前記ポンプシステム装置に流入する侵入水に関する情報を含む状態に関する情報を出力する
請求項7に記載のプログラム。
【請求項10】
前記第1統計データと前記第2統計データとの相関係数、前記第3統計データと前記第4統計データとの相関係数、または前記第2統計データと前記第3統計データとに基づく運転時間増加比のうち少なくとも二つ以上を入力した場合に、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力するように学習された学習モデルに前記第1統計データと前記第2統計データとの相関係数、前記第3統計データと前記第4統計データとの相関係数、または前記第2統計データと前記第3統計データとに基づく運転時間増加比のうち少なくとも二つを入力し、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力する
請求項7に記載のプログラム。
【請求項11】
前記第1時間軸及び前記第2時間軸の単位は、分、時、日、曜日、月、または年を含む
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項12】
前記ポンプシステム装置の状態に関する情報に基づく注意情報を出力する
請求項4または8に記載のプログラム。
【請求項13】
汚水用管路によって互いに接続される複数の前記ポンプシステム装置に流入する侵入水に関する情報に基づき、前記汚水用管路において侵入水が発生している箇所を推定する
請求項9に記載のプログラム。
【請求項14】
第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、
所定期間における複数の前記第1統計データを含む第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する
情報処理方法。
【請求項15】
第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、
所定期間における複数の前記第1統計データを含む第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する
処理部
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚水と雨水を別の管に流す分流式下水道と汚水と雨水を同じ管に流す合流式下水道が使用されている。分流式下水道において、汚水は汚水用管路に、雨水は雨水用管路に流される。排水経路に異常が起きた場合、汚水用管路に接続されるポンプシステム装置に、本来は流れない水(侵入水)が流入することがあるとともに、雨水用管路に接続されるポンプシステム装置に、本来流れるはずの雨水が流れてこないこともある。合流式下水道の場合は、雨水の流入は当然のことながら上流側での流入量に対して下流側の流入量が多すぎたり少なすぎたりすることが起きうる。例えば、特許文献1に記載のマンホール(ポンプシステム装置)の監視装置は、超音波水位センサによってマンホール内の水位を計測することにより流量を算出し、算出した流量に基づいて異常を通知する。
ここで、ポンプシステム装置とは、排水経路上に設けられ流入管から流入した排水をポンプにより吐出管から吐出する装置であり、マンホールに一時的に貯留した排水をポンプで排出するものがよく知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の監視装置は、機器の状態に関する情報を出力する精度が低い。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、精度良く機器の状態に関する情報を出力することが可能なプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、所定期間における第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する処理をコンピュータに実行させる。
【0007】
本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、所定期間における複数の前記第1統計データを含む第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する。
【0008】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、所定期間における複数の前記第1統計データを含む第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する処理部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態に係るプログラムにあっては、精度良く機器の状態に関する情報を出力することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る情報処理システムの構成例を示す模式図である。
【
図2】情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】制御装置及びポンプシステム装置の構成を示す斜視図である。
【
図5】制御装置等の構成例を示すブロック図である。
【
図6】運転情報テーブルの一例を示す説明図である。
【
図7】第1統計データ及び第1統計データグラフを示す説明図である。
【
図8】第2統計データ及び第2統計データグラフを示す説明図である。
【
図9】第3統計データ及び第3統計データグラフを示す説明図である。
【
図10】第4統計データ及び第4統計データグラフを示す説明図である。
【
図11】状態判定テーブルの一例を示す説明図である。
【
図12】状態情報テーブルの一例を示す説明図である。
【
図14】分析結果表示画面の一例を示す説明図である。
【
図15】実施形態1に係る情報処理装置及び端末の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】実施形態1に係る情報処理装置の分析処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】実施形態2に係る情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図19】実施形態2に係る情報処理装置の分析処理の一例を示すフローチャートである。
【
図20】実施形態3に係る情報処理システムの構成例を示す模式図である。
【
図21】実施形態3に係る情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図22】実施形態3に係る運転情報テーブルの一例を示す説明図である。
【
図24】実施形態3に係る分析指示画面の一例を示す説明図である。
【
図25】推定結果表示画面の一例を示す説明図である。
【
図26】実施形態3に係る情報処理装置及び端末の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図27】実施形態3に係る情報処理装置の分析処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の概要)
(1)本発明の一態様に係るプログラムは、第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、所定期間における第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する処理をコンピュータに実行させる。
【0012】
本発明の一態様にあっては、各時間における機器の運転情報と、所定期間における運転情報の平均とに基づき、精度良く機器の状態に関する情報を出力することが可能である。例えば、第1時間軸に曜日、第2時間軸に時刻を設定した場合、指定された週の特定の曜日及び特定の時刻(格子時点)における運転情報が第1統計データに含まれる。第2統計データには、所定期間(例えば3ヶ月間)における複数の第1統計データの各格子点(各曜日各時刻)における運転情報の平均が含まれる。第1統計データと第2統計データの差異に基づいて、精度良く機器の状態に関する情報を出力することが可能である。
【0013】
(2)本発明の一態様に係るプログラムは、前記第1統計データ及び前記第2統計データに基づき、前記機器の状態に関する情報を出力する。
【0014】
本発明の一態様にあっては、機器の状態に関する情報は、例えば、機器が正常状態であるかまたは異常状態であるか、あるいは機器が異常状態である場合の原因に関する情報を含む。第1統計データと第2統計データの差異に基づいて、機器が正常状態であるかまたは異常状態であるか、あるいは機器が異常状態である場合の原因に関する情報を出力することが可能である。
【0015】
(3)本発明の一態様に係るプログラムは、前記機器は、ポンプシステム装置であり、前記運転情報は、前記ポンプシステム装置に設けられるポンプの単位時間あたりの運転時間である。
【0016】
本発明の一態様にあっては、ポンプは、ポンプシステム装置に流れる水量が多いほど、単位時間あたりの運転時間が長くなる。ポンプの単位時間あたりの運転時間に基づいて、ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力することが可能である。
【0017】
(4)本発明の一態様に係るプログラムは、前記第1統計データと前記第2統計データとの相関に基づき、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力する。
【0018】
本発明の一態様にあっては、例えば、第1統計データと第2統計データとの相関が弱い場合、ポンプシステム装置が異常状態である情報を出力することが可能である。
【0019】
(5)本発明の一態様に係るプログラムは、前記第1統計データと前記第2統計データとの差分に基づく第3統計データを生成する。
【0020】
本発明の一態様にあっては、第1統計データと第2統計データとにおける運転時間の差分を容易に把握することが可能である。なお、本態様に係る第3統計データは、各格子時点において第1統計データの値から第2統計データの運転時間の値を減算することによって生成され、減算された値が負の値である格子時点については、切り上げて0の値が格納される。これにより、第1統計データの運転時間が第2統計データの平均運転時間を上回っている格子時点について、運転時間の差を容易に把握することが可能である。
【0021】
(6)本発明の一態様に係るプログラムは、前記第3統計データに基づき、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力する。
【0022】
本発明の一態様にあっては、ポンプシステム装置の異常状態が軽微であるか重大であるかを含む情報を出力することが可能である。
【0023】
(7)本発明の一態様に係るプログラムは、前記ポンプシステム装置が設けられる地域における降水量に基づく、前記第1時間軸及び前記第2時間軸を基準とした第4統計データを生成する。
【0024】
本発明の一態様にあっては、ポンプシステム装置が設けられる地域の降水量を可視化することが可能である。例えば、降水量が多い格子時点において、第3統計データの差分運転時間の値が大きい場合、降水に伴う侵入水が原因となりポンプシステム装置が異常状態である情報を出力することが可能である。
【0025】
(8)本発明の一態様に係るプログラムは、前記第3統計データと前記第4統計データとの相関に基づき、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力する。
【0026】
本発明の一態様にあっては、例えば、第3統計データと第4統計データとの相関が強いとき、すなわち降水量が多い格子時点において、第1統計データの運転時間が第2統計データの運転時間を大きく上回っている場合、運転時間の増加と降水量について相関があると判定し、降水に伴う侵入水が原因となりポンプシステム装置が異常状態である情報を出力することが可能である。
【0027】
(9)本発明の一態様に係るプログラムは、前記第1統計データと前記第2統計データとの相関、前記第3統計データ、及び前記第3統計データと前記第4統計データとの相関に基づき、降水に伴って前記ポンプシステム装置に流入する侵入水に関する情報を含む状態に関する情報を出力する。
【0028】
本発明の一態様にあっては、例えば、第1統計データと第2統計データとの相関が弱く、第3統計データと第4統計データとの相関が強い場合、降水に伴う侵入水が原因となり汚水用管路に接続されるポンプシステム装置が異常状態である情報を出力することが可能であり、また雨水用管路に接続されるポンプシステム装置が正常状態である情報を出力することが可能である。また、第3統計データに基づき、ポンプシステム装置の異常状態に対する侵入水の影響度の大小を出力することが可能である。
【0029】
(10)本発明の一態様に係るプログラムは、前記第1統計データと前記第2統計データとの相関係数、前記第3統計データと前記第4統計データとの相関係数、または前記第2統計データと前記第3統計データとに基づく運転時間増加比のうち少なくとも二つ以上を入力した場合に、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力するように学習された学習モデルに前記第1統計データと前記第2統計データとの相関係数、前記第3統計データと前記第4統計データとの相関係数、または前記第2統計データと前記第3統計データとに基づく運転時間増加比のうち少なくとも二つを入力し、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報を出力する。
【0030】
本発明の一態様にあっては、第1統計データ、第2統計データ、第3統計データ及び第4統計データに基づいて、精度良くポンプシステム装置の状態に関する情報を出力することが可能である。
【0031】
(11)本発明の一態様に係るプログラムは、前記第1時間軸及び前記第2時間軸の単位は、分、時、日、曜日、月、または年を含む。
【0032】
本発明の一態様にあっては、複数の期間長についての第1統計データ、第2統計データ、第3統計データ、または第4統計データを生成することができ、精度良く機器の状態に関する情報を出力することが可能である。
【0033】
(12)本発明の一態様に係るプログラムは、前記ポンプシステム装置の状態に関する情報に基づく注意情報を出力する。
【0034】
本発明の一態様にあっては、ポンプシステム装置が異常状態である場合、異常状態を解消するための情報または指示などを含む注意情報を出力し、異常状態の解消を促すことが可能である。
【0035】
(13)本発明の一態様に係るプログラムは、汚水用管路によって互いに接続される複数の前記ポンプシステム装置に流入する侵入水に関する情報に基づき、前記汚水用管路において侵入水が発生している箇所を推定する。
【0036】
本発明の一態様にあっては、侵入水による異常が生じているポンプシステム装置と異常が生じていないポンプシステム装置との、汚水用管路における接続の関係(系統)に基づき、汚水用管路において侵入水が発生している箇所を推定することが可能である。これにより、侵入水が発生しており、補修の必要がある箇所の候補を絞り込むことができ、汚水用管路またはポンプシステム装置の保守作業に係る労力を低減することが可能である。
【0037】
(14)本発明の一態様に係る情報処理方法は、第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、所定期間における複数の前記第1統計データを含む第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する。
【0038】
本発明の一態様にあっては、精度良く機器の状態に関する情報を出力することが可能である。
【0039】
(15)本発明の一態様に係る情報処理装置は、第1時間軸、及び前記第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸を基準とした機器の運転情報に基づく第1統計データを生成し、所定期間における複数の前記第1統計データを含む第1統計データ群の平均に基づく第2統計データを生成する
処理部
を備える。
【0040】
本発明の一態様にあっては、精度良く機器の状態に関する情報を出力することが可能である。
【0041】
以下、本発明を実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0042】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る情報処理システムの構成例を示す模式図である。情報処理システム100においては、情報管理会社の情報処理装置1、使用者の端末2、及びポンプシステム装置4の制御装置3がインターネット等のネットワークNを介して接続されている、機器としてのポンプシステム装置4は、下水道における汚水用管路6(流入管43及び吐出管45(
図4参照))に接続され、ポンプ41を備える。制御装置3は、ポンプ41の運転情報を計測する。情報処理装置1、端末2及び制御装置3はそれぞれネットワークNを介して情報の送受信を行う。また、情報処理装置1は、ネットワークNを介して、気象サーバ5から、ポンプシステム装置4が設けられる地域の降水量を含む気象データを取得する。
【0043】
本実施形態に係る運転情報は、単位時間(例えば1時間)あたりのポンプ41の運転時間である。なお、運転情報は、ポンプ41の運転の状況に関する情報であればよく、例えばポンプ41の運転回数、運転電流、吐出水量、貯留槽44(
図4参照)における水位変動量、またはこれらのうちの複数の情報を含むものであってもよい。
【0044】
情報処理装置1は、例えばサーバコンピュータである。情報処理装置1は、制御装置3からポンプ41の運転の運転情報を取得し、運転情報に基づいて各種統計データ(第1統計データ、第2統計データ、第3統計データ及び第4統計データ)及び該統計データに基づいて特定された、ポンプシステム装置4の状態に関する情報(状態情報)を端末2へ送信(出力)する。情報処理装置1は、複数のサーバ装置またはコンピュータによりその機能が実現されるもの、またはブロックチェーン上のノードに対応するものでもよい。また、情報処理装置1は端末2と一体に構成されるものであってもよい。
【0045】
端末2は、表示機能を備える情報端末装置であり、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等である。端末2の使用者は、例えばポンプシステム装置4の管理者(例えば地方自治体の担当者、設備維持管理者等)であり、使用者は端末2を用いてポンプ41の運転情報を監視する。なお、端末2は情報処理装置1による機能の一部または全部を実現するものでもよく、情報処理装置1と一体に構成されるものであってもよい。端末2は、情報処理装置1に分析(各種統計データの生成、及び状態情報及び注意情報の出力)の指示を送信し、情報処理装置1から受信(取得)した分析結果(各種統計データ、状態情報、及び注意情報)を使用者に対して表示する。
【0046】
図2は、情報処理装置1の構成例を示すブロック図である。情報処理装置1は、装置全体を制御する制御部10、記憶部11、及び通信部12を備える。情報処理装置1は、1又は複数のサーバで構成することができる。情報処理装置1は複数台で分散処理してもよい。1台の大型コンピュータに仮想的に生成される複数のサーバコンピュータ(インスタンス)の内の1つであってもよい。
【0047】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成することができる。制御部10はGPU(Graphics Processing Unit)を含んで構成してもよい。制御部10は、後述するプログラムを読み出して、各種の処理を実行する。
【0048】
記憶部11は大容量メモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリを含む。記憶部11は、制御部10が処理を実行するために必要なプログラム111(プログラム製品)と、運転情報テーブル112と、状態判定テーブル113と、状態情報テーブル114とを記憶している。運転情報テーブル112、状態判定テーブル113、及び状態情報テーブル114の詳細については後述する。なお記憶部11は、複数の記憶装置により構成されてもよく、情報処理装置1に接続された外部記憶装置であってもよい。
【0049】
記憶部11に記憶されるプログラム111は、プログラム111を読み取り可能に記録した記録媒体11aにより提供されてもよい。記録媒体11aは、例えば、USBメモリ、SDカード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)等の可搬型のメモリである。記録媒体11aに記録されるプログラム111は、図に示していない読取装置を用いて記録媒体11aから読み取られ、記憶部11にインストールされる。また、記憶部11に記憶されるプログラム111は、通信部12を介した通信により提供されてもよい。プログラム111は、情報処理装置1の制御部10によって実行されるが、端末2の端末制御部20(
図3参照)または制御装置3の装置制御部30(
図5参照)によって実行されてもよい。
【0050】
図3は、端末2の構成例を示すブロック図である。端末2は、端末制御部20、記憶部21、通信部22、表示部23、及び操作部24を備える。
【0051】
端末制御部20は、CPU又はGPU等のプロセッサと、メモリ等を含む。端末制御部20は、プロセッサ、メモリ、記憶部21、及び通信部22を集積した1つのハードウェア(SoC:System On a Chip)として構成されていてもよい。端末制御部20は、記憶部21に記憶されているプログラム211に基づき、各構成部を制御して処理を実行する。
【0052】
記憶部21は、例えばハードディスク又はSSD等の不揮発性メモリを含む。記憶部21は、プログラム211を含む端末制御部20が参照するプログラム及びデータを記憶する。
【0053】
通信部22は、ネットワークNを介した情報処理装置1との通信を実現する通信インタフェースである。
【0054】
表示部23は、液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを含む。端末制御部20は、表示部23に、端末制御部20からの指示に従って運転状況の一覧表を含む各種の画像を表示する。操作部24は、ユーザの操作を受け付けるインタフェースであり、例えば物理ボタン、マウス、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス、スピーカ及びマイクロフォン等を含む。操作部24は、ユーザからの操作入力を受け付け、操作内容に応じた制御信号を端末制御部20へ送出する。
【0055】
図4は、制御装置3及びポンプシステム装置4の構成を示す斜視図である。制御装置3は、例えばポンプシステム装置4の近傍に設けられた制御盤300の内部に設置されている。制御装置3は、ポンプ41、及び水位計42,46夫々と電気的に接続されており、ポンプ41の運転時間に関する運転情報、並びにポンプシステム装置4の水位に関する情報を取得する。また、制御装置3は、例えば、ポンプ41の駆動装置412における電流を測定する電流計(不図示)、吐出圧力を測定する圧力計(不図示)、または吐出量を測定する流量計(不図示)等の測定機器と電気的に接続され、ポンプ41の運転電流、吐出圧力または吐出水量を含む運転情報を取得してもよい。制御装置3は、取得した運転情報を情報処理装置1へ送信する。
【0056】
本実施形態において、ポンプシステム装置4は、
図4に示すようにマンホール内にポンプを備えたポンプシステム装置であるが、これに限定するものではなく、宅地内に設置した排水槽内にポンプを備えたポンプシステム装置でもよいし、ポンプを流入管、吐出管に直接接続したポンプシステム装置でもよい。またポンプシステム装置4は、汚水用に限定するものではなく、雨水を排水するポンプシステム装置でもよい。またポンプ41は貯留槽44の中にある水中ポンプであるが、ポンプの一部または全部が貯留槽の外に設置された陸上設置型のポンプであってもよい。
【0057】
ポンプシステム装置4は、流入管43から流入した汚水を貯留する貯留槽44と、貯留槽44に貯留された汚水を吐出管45に向けて圧送する2台の前記ポンプ41,41と、貯留槽44に貯留された汚水の水位を計測する前記水位計42,46とを備えている。ポンプシステム装置4に流入する汚水が流れる流入管43と、ポンプ41によって吐出される汚水が流れる吐出管45とは、分流式下水道における汚水用管路6を構成する。
【0058】
ポンプ41は、ポンプ本体411と、ポンプ本体411の上部に配置されたモータ等の駆動装置412とを備えている。通常は、2台のポンプ41,41が交互に運転され、例えば異常高水位が発生した場合は汚水の圧送量を増やすために2台のポンプ41,41が同時に運転される。制御装置3は、各ポンプ41における駆動装置412の駆動が開始した時から停止するまでに運転した時間を取得し、1時間あたりのポンプ41の運転時間を積算し、運転情報として記憶する。制御装置3は、2台のポンプ41が同時に両方とも運転した場合、のべ運転時間を積算して運転情報を取得する。例えば、2台のポンプ41が100秒間、同時に両方とも運転した場合、制御装置3は、1時間あたりの運転時間に200秒を積算し、運転情報とする。なお、制御装置3は、2台のポンプ41のうち少なくとも一方のポンプ41が運転した時間を運転情報として取得してもよい。
【0059】
なお、ポンプシステム装置4に設置されるポンプ41は2台に限定されるものではない。ポンプシステム装置4に設置されるポンプ41は1台であってもよく、又は3台以上のポンプ41が設置されていてもよい。また、ポンプ41、または、貯留槽44内の圧送配管には、噴出機構となる槽内撹拌装置(不図示)を設けてもよい。槽内撹拌装置により、ポンプ41の噴出水で貯留槽44内に強力な撹拌渦を作り出し、沈殿物の堆積、油脂類の固着、スカムの発生を抑制し、省メンテナンス化を実現できる。
【0060】
水位計42は、例えば気泡式や投込圧力式等の水位計である。気泡式の水位計42は、貯留槽44の底部に設置された空気吐出部421、空気ポンプ(不図示)、空気ポンプと空気吐出部421とを接続するエアチューブ422、圧力センサ、及びコントローラ(不図示)を有する。水位計42は、貯留槽44に貯留される汚水の水位を検出する。さらに、貯留槽44内には、予備の水位計として、貯留槽44内における異常高水位を検出するための水位計46が設置されている。水位計46は、所定の水位を検知できるものであればよく、例えばフロート式水位計であってもよい。水位計42,46により検出された水位の情報は、制御装置3に送信される。
【0061】
制御装置3は、水位計42,46から検出された水位を受信する。貯留槽44内の水位が所定の駆動水位以上となった場合、制御装置3は一方のポンプ41の駆動装置412を駆動させる。ポンプ41の駆動により、貯留槽44内の汚水が吐出管45へ送られ、貯留槽44の水位が下降する。貯留槽44内の水位が所定の停止水位となった場合、制御装置3は、ポンプ41の駆動装置412を停止させる。これにより、ポンプ41による汚水の排水が終了する。その後、流入管43を介して外部から流入する汚水が再び貯留槽44に貯留され、水位が上昇すると、制御装置3は他方のポンプ41の駆動装置412を駆動させる。他方のポンプ41における同様の処理により、貯留槽44内の汚水が排出され水位が停止水位以下となった場合、制御装置3は、他方のポンプ41の駆動装置412を停止させる。ポンプシステム装置4ではこのような一連の処理が繰り返される。
【0062】
図5は、制御装置3等の構成例を示すブロック図である。制御装置3は、装置制御部30、記憶部31、通信部32及び入出力部33を備える。
【0063】
装置制御部30は、一又は複数のCPU、GPU等を用いたプロセッサであり、内蔵するROM又はRAM等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。記憶部31は、装置制御部30が参照する情報を記憶する記憶装置である。通信部32は、ネットワークNを介した情報処理装置1との通信を実現する通信インタフェースである。装置制御部30は、通信部32を介して運転情報を情報処理装置1へ送信する。
【0064】
入出力部33は、ポンプシステム装置4のポンプ41の駆動装置412、水位計42,46、駆動装置412と接続される入出力インタフェースである。装置制御部30は、入出力部33を介して水位計42又は水位計46から水位を示す信号を取得する。装置制御部30は、入出力部33を介してポンプ41の駆動装置412へ駆動の制御信号を出力する。装置制御部30は、駆動装置412に制御信号を出力した時間をポンプ41が運転した時間として取得し、1時間あたりのポンプ41の運転時間を積算して、運転情報として記憶部11に記憶させる。また、装置制御部30は、記憶部11に記憶した運転情報を定期的にまたは逐次的に、情報処理装置1に送信する。なお、装置制御部30はポンプ41が運転する毎に運転した時間を情報処理装置1に送信し、情報処理装置1の制御部10が1時間あたりのポンプ41の運転時間を積算してもよい。
【0065】
図6は、運転情報テーブル112の一例を示す説明図である。運転情報テーブル112には、各時刻における1時間あたりのポンプ41の運転時間が逐次記録される。運転情報テーブル112の管理項目(フィールド)は、年フィールド、月フィールド、日フィールド、曜日フィールド、時刻フィールド、及び運転時間フィールドを含む。年フィールド、月フィールド、日フィールド、及び曜日フィールドには、ポンプ41の運転時間が記録された日の年月日及び曜日が格納される。時刻フィールドには、ポンプ41の運転時間が記録された時刻(時台)が格納される。運転時間フィールドには、ポンプ41の1時間あたりの運転時間が格納される。なお、運転時間フィールドには、時刻フィールドに格納されている時刻の時台においてポンプ41が運転した時間(秒)が格納される。例えば、時刻フィールドに格納されている時刻が1時台である場合、運転時間フィールドには1時0分から1時59分まで(2時0分前まで)にポンプ41が運転した時間が格納される。情報処理装置1の制御部10は、例えば一時間ごとにポンプ41の運転時間を制御装置3から取得し、運転情報テーブル112にレコードを追加してポンプ41の運転時間を記録する。なお、制御部10は例えば、一日に一回、一週間に一回または一か月に一回など、定期的に制御装置3から1時間あたりのポンプ41の運転時間を取得し、運転情報テーブル112に記録してもよい。また、制御部10は、端末2において使用者が運転情報の取得を指示する入力を行った場合に制御装置3から1時間あたりのポンプ41の運転時間を取得し、運転情報テーブル112に記録してもよい。
【0066】
図7は、第1統計データ及び第1統計データグラフを示す説明図である。
図7に示す例においては、第1統計データには、第1時間軸は曜日を単位とし、第2時間軸は時刻を単位とする、一週間のポンプ41の1時間あたりの運転時間が含まれる。すなわち、第1統計データは、第1時間軸(曜日)、及び第1時間軸とは異なるスケールの第2時間軸(時刻)を基準とし、ポンプ41(機器)の運転情報(1時間あたりの運転時間)に基づいて生成される。なお、第1時間軸及び第2時間軸の単位は、分、時(時刻)、日(日付)、曜日、月、または年であってもよい。本例においては、対象期間を2021年8月8日~2021年8月14日とした第1統計データを示す。情報処理装置1の制御部10は、運転情報テーブルから、2021年8月8日~2021年8月14日のポンプ41の運転時間が格納されたレコードを読み出し、第1統計データを生成する。このとき、曜日フィールドは第1統計データグラフの第1時間軸に割り当てられ、時刻フィールドは第1統計データグラフの第2時間軸に割り当てられる。また、運転時間フィールドは、第1統計データの第1時間軸及び第2時間軸に直交する第3軸に割り当てられる。
【0067】
情報処理装置1の制御部10は、第1時間軸の単位(曜日)及び第2時間軸の単位(時刻)によって特定される時点(格子時点)において、ポンプ41の運転時間をプロットすることにより、第1統計データグラフを作成する。例えば、第1時間軸:日曜日、第2時間軸:0時の格子時点において、第3軸(運転時間):230秒となるようにプロットされる。制御部10は、各格子時点においてプロットを行い、第1統計データグラフを作成する。第1統計データグラフは、一週間における運転時間分布を示す。
【0068】
図8は、第2統計データ及び第2統計データグラフを示す説明図である。第2統計データは、第1時間軸及び第2時間軸の単位が第1統計データと同様であり、第3軸に所定期間における各曜日各時刻の運転時間の平均値が割り当てられているデータである。すなわち、第2統計データは所定期間における各週の第1統計データを含む第1統計データ群の平均に基づいて生成される。本例においては、2021年4月~2021年7月における4か月間の第1統計データ群の平均に基づいて第2統計データが生成される。情報処理装置1の制御部10は、運転情報テーブル112から、2021年4月~2021年7月のポンプ41の運転時間が格納されたレコードを読み出し、曜日及び時刻が共通するレコードの運転時間フィールドに格納されている値の平均値を該曜日時刻の平均運転時間(第3軸)とする。なお、第2統計データは、第1統計データ群の各格子時点における中央値または最頻値などの代表値に基づいて生成されるものであってもよい。
【0069】
情報処理装置1の制御部10は、第1時間軸の単位(曜日)及び第2時間軸の単位(時刻)によって特定される時点(格子時点)において、ポンプ41の平均運転時間をプロットすることにより、第2統計データグラフを作成する。例えば、第1時間軸:日曜日、第2時間軸:0時の格子時点において、第3軸(平均運転時間):316秒となるようにプロットされる。制御部10は、各格子時点においてプロットを行い、第2統計データグラフを作成する。第2統計データグラフは、所定期間における、曜日及び時刻ごとの第1統計データ群の平均を示す。
【0070】
図9は、第3統計データ及び第3統計データグラフを示す説明図である。第3統計データは、第3統計データは、第1時間軸及び第2時間軸の単位が第1統計データと同様であり、第3軸に、各格子時点における第1統計データにおける運転時間と第2統計データにおける平均運転時間の差分(差分運転時間)が割り当てられているデータである。すなわち、第3統計データは、第1統計データと第2統計データとの差分に基づいて生成される。情報処理装置1の制御部10は、第1統計データ及び第2統計データから、第1時間軸(曜日)及び第2時間軸(時刻)をキーとして各レコードを読み出し、曜日及び時刻が一致するレコードについて、第1統計データの運転時間から第2統計データの平均運転時間を減算し、第3統計データの各格子時点における差分運転時間(第3軸)を算出する。なお、第1統計データの運転時間から第2統計データの平均運転時間を減算した値が負の数値である場合、差分運転時間は0とされる。
【0071】
情報処理装置1の制御部10は、第1時間軸の単位(曜日)及び第2時間軸の単位(時刻)によって特定される時点(格子時点)において、ポンプ41の差分運転時間をプロットすることにより、第2統計データグラフを作成する。例えば、第1時間軸:月曜日、第2時間軸:0時の格子時点において、第3軸(差分運転時間):41秒となるようにプロットされる。制御部10は、各格子時点においてプロットを行い、第3統計データグラフを作成する。第3統計データグラフは、対象期間における、曜日及び時刻ごとの第1統計データと第2統計データとの差分を示す。
【0072】
図10は、第4統計データ及び第4統計データグラフを示す説明図である。第4統計データは、第1時間軸及び第2時間軸の単位が第1統計データと同様であり、第3軸に、ポンプシステム装置4が設けられる地域の1時間あたりの降水量が割り当てられているデータである。すなわち、第4統計データは、ポンプシステム装置4が設けられる地域における降水量に基づいて生成される。情報処理装置1の制御部10は、第1統計データにおける対象期間の、例えばポンプシステム装置4の近傍にあるアメダス(登録商標)において観測された各時刻の降水量を、気象サーバ5から取得し、第4統計データの第3軸(降水量)に割り当てる。なお、制御部10は、降水量の履歴が記録された記録媒体から読み込むことによって降水量を取得してもよい。
【0073】
情報処理装置1の制御部10は、第1時間軸の単位(曜日)及び第2時間軸の単位(時刻)によって特定される時点(格子時点)において、ポンプシステム装置4が設けられる地域の降水量をプロットすることにより、第2統計データグラフを作成する。例えば、第1時間軸:木曜日、第2時間軸:10時の格子時点において、第3軸(降水量):34mm/hとなるようにプロットされる。制御部10は、各格子時点においてプロットを行い、第4統計データグラフを作成する。第4統計データグラフは、対象期間における、曜日及び時刻ごとの、ポンプシステム装置4が設けられる地域の降水量を示す。第4統計データグラフの降水量は、気象サーバ5から取得した値をそのまま用いてもよいし、少量の雨量の場合(例えば、降水量5mm/h以下または10mm/h以下など)は、降水量をカウントしない(降水量を0mmとする)処理を行ってもよい。
【0074】
情報処理装置1の制御部10は、第1統計データの各格子時点における運転時間と第2統計データの各格子時点における平均運転時間との相関係数(第1相関係数)、第3統計データの各格子時点における差分運転時間と第4統計データの各格子時点における降水量との相関係数(第2相関係数)、及び第2統計データの各格子時点における平均運転時間の平均値に対する第3統計データの各格子時点における差分運転時間の比の平均値(運転時間増加比)を算出する。情報処理装置1の制御部10は、算出した第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比に基づき、状態判定テーブル113(
図11参照)を参照して、ポンプシステム装置4の状態に関する情報(状態情報)及び注意情報(
図12参照)に紐づくアドバイスコードを特定する。
【0075】
以下、第1相関係数の算出方法について説明する。第1相関係数は、特定の週における各曜日各時刻(各格子時点)の運転時間と、所定期間における各曜日各時間(各格子時点)の平均運転時間との相関係数である。第1統計データに含まれる各格子時点の運転時間をw(wi)とし、第2統計データに含まれる各格子時点の平均運転時間をx(xi)とする。ここで、iは各格子時点の番号である。各格子時点には、時系列順に番号が割り振られている。本実施形態においては、第1時間軸が曜日であり、第2時間軸が時刻であるため、168個の格子時点が存在する。例えば、日曜日0時の格子時点の番号は1であり、日曜日23時の格子時点の番号は24であり、月曜日0時の格子時点の番号は、25である。また、土曜日23時の格子時点の番号は168である。なお、第1統計データ及び第2統計データにおける格子時点の番号は対応している。第1統計データ及び第2統計データにおける同格子時点のwi及びxiを対応させたデータを変数データ(wi,xi)とする。すなわち、変数データ(wi,xi)の総数nは168である。第1相関係数は、変数データの共分散を、wの標準偏差及びxの標準偏差で除算した値である。すなわち、第1相関係数は、以下の数1によって示される。なお、以下の式においてwaはすべてのwiの平均値を示し、xaはすべてのxiの平均値を示す。
【0076】
【0077】
以下、第2相関係数の算出方法について説明する。第2相関係数は特定の週における各格子時点の差分運転時間と、降水量との相関係数である。第3統計データに含まれる各格子時点の差分運転時間をy(yi)とし、第4統計データに含まれる各格子時点の降水量をz(zi)とする。なお、第3統計データ及び第4統計データにおける格子時点の番号は対応している。第3統計データ及び第4統計データにおける同格子時点のyi及びziを対応させたデータを変数データ(yi,zi)とする。第2相関係数は、変数データの共分散を、yの標準偏差及びzの標準偏差で除算した値である。すなわち、第2相関係数は、以下の数2によって示される。なお、以下の式においてyaはすべてのyiの平均値を示し、zaはすべてのziの平均値を示す。なお、情報処理装置1の制御部10は、降水量が所定量以上である格子時点における変数データに基づいて第2相関係数を算出してもよい。
【0078】
【0079】
以下、運転時間増加比の算出方法について説明する。運転時間増加比は、第2統計データの各格子時点における平均運転時間の平均値に対する第3統計データの各格子時点における差分運転時間の比の平均値である。運転時間増加比は、変数データ(xa,yi)について、以下の数3によって示される。なお、情報処理装置1の制御部10は、第4統計データにおいて降水量が所定量以上である格子時点における変数データに基づいて運転時間増加比を算出してもよい。
【0080】
【0081】
図11は、状態判定テーブル113の一例を示す説明図である。状態判定テーブル113の管理項目(フィールド)は、第1相関係数フィールド、第2相関係数フィールド、運転時間増加比フィールド、及びアドバイスコードフィールドを含む。第1相関係数フィールドには、アドバイスコードを特定するための第1相関係数の値の範囲が格納される。本実施形態において、第1相関係数は0.6以上である場合と0.6未満である場合の二つに分類される。第2相関係数フィールドには、アドバイスコードを特定するための第2相関係数の値の範囲が格納される。本実施形態において、第2相関係数は0.6以上である場合と、0.3以上0.6未満である場合と、0.3未満である場合の三つに分類される。運転時間増加比フィールドには、アドバイスコードを特定するための運転時間増加比の値の範囲が格納される。本実施形態において、運転時間増加比は0.5以上である場合と0.5未満である場合の二つに分類される。アドバイスコードフィールドには、第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比に対して特定されるアドバイスコードが格納される。アドバイスコードは、状態情報テーブル114に格納されているポンプシステム装置4の状態に関する情報(状態情報)、及び注意情報に紐づけられており(
図12参照)、制御部10は、特定したアドバイスコードをキーとして状態情報テーブル114を参照し、状態情報、及び注意情報を特定する。すなわち、状態情報は、第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比に基づいて特定され、注意情報は状態情報に基づいて特定される。
【0082】
図12は、状態情報テーブル114の一例を示す説明図である。状態情報テーブル114の管理項目(フィールド)は、アドバイスコードフィールドと、状態情報フィールドと、注意情報フィールドとを含む。アドバイスコードフィールドには、状態判定テーブル113を参照して特定されるアドバイスコードが格納される。状態情報フィールドには、ポンプシステム装置4の状態に関する情報(状態情報)が格納される。状態情報は、例えば、平均運転時間と運転時間の差異、運転時間増加と降水量との相関、平均運転時間より運転時間が長い程度、及び降水によってポンプシステム装置4に流入する侵入水の可能性に関する情報を含む。なお、状態情報テーブル114には、ポンプ41に関する情報が記録されてもよい。注意情報フィールドには、ポンプシステム装置4に対して、異常状態を解消するための情報または指示、すなわちトラブルシューティングに関する情報が格納される。注意情報に格納される情報は、例えば、ポンプシステム装置4に接続する流入管43の損害状況の確認の指示、またはポンプシステム装置4に接続する流入管43または雨水用管路の接続の確認の指示などが含まれる。すなわち、情報処理装置1の制御部10は、状態判定テーブル113及び状態情報テーブル114を参照し、第1相関係数(第1統計データと第2統計データとの相関)、第2相関係数(第3統計データと第4統計データとの相関)、及び第2統計データと第3統計データとに基づく運転時間増加比に基づき、降水に伴ってポンプシステム装置に流入する侵入水に関する情報を含む状態情報、及び状態情報に基づく注意情報を出力する。なお、制御部10は、第3統計データ及び第2統計データに基づいて算出される運転時間増加比に代えて、第3統計データのみに基づいて状態情報を出力してもよい。
【0083】
図13は、分析指示画面の一例を示す説明図である。端末2の端末制御部20は、表示部23に分析指示画面を表示させる。端末制御部20は、分析指示画面において入力された期間についての分析の指示を情報処理装置1に送信する。分析の指示を受信した情報処理装置1は、入力された期間について各種統計データの生成、及び状態情報及び注意情報の特定を行い、生成した各種統計データ、及び特定した状態情報及び注意情報を端末2に出力する。
【0084】
分析指示画面には、分析を指示する期間の単位を入力する期間単位入力欄231、分析を指示する期間を入力する期間入力欄232、第1時間軸の単位を入力する第1時間軸欄233、及び第2時間軸欄234が表示される。本実施形態において、端末2は、複数の期間についての分析の指示の入力を受け付けることが可能である。
図13に示す画面おいては、3つの期間(分析期間1~3)について分析の指示の入力を受け付ける。使用者は、例えば、任意の週間、月間、及び年間を単位とした複数の各種統計データの生成、及び状態情報及び注意情報の出力の指示を入力することが可能である。使用者は、操作部24により各入力欄への入力を行うことが可能である。また、分析指示画面には、分析開始ボタンが表示される、分析開始ボタン235がクリックされた場合、端末2の端末制御部20は、入力された期間についての分析の指示を情報処理装置1に送信(出力)する。
【0085】
図14は、分析結果表示画面の一例を示す説明図である。端末2から分析の指示を受信(取得)した情報処理装置1の制御部10は、入力された各期間について各種統計データの生成、及び状態情報及び注意情報の特定を実行し、生成した各種統計データ、及び特定した状態情報及び注意情報を端末2に送信(出力)する。端末2の端末制御部20は、受信(取得)した各種統計データのグラフ、状態情報、及び注意情報を表示部23に表示させる。分析指示画面には、統計データグラフ表示欄236、及び情報表示欄237が含まれる。
【0086】
図14に示す例において、統計データグラフ表示欄236には、一週間を期間の単位とする各種統計データ(分析結果1)、月を期間の単位とする各種統計データ(分析結果2)、年を期間の単位とする各種統計データ(分析結果3)のグラフが表示される。分析結果1においては、第1時間軸は曜日であり、第2時間軸は時刻である。分析結果2においては、第1時間軸は日(日付)であり、第2時間軸は時刻である。分析結果3においては、第1時間軸は日(日付)であり、第2時間軸は月である。
図14に示す例においては、期間の単位が年である分析結果3について、第2統計データ、第3統計データ、状態情報、及び注意情報の表示が省略されているが、表示されてもよい。また、各分析結果における第1時間軸または第2時間軸は、時(時刻)、日(日付)、曜日、または月に限られず、分または年などであってもよい。本実施形態において表示される各種統計データのグラフは、ワイヤーフレームグラフによって示されるが、これに限られず、棒グラフまたはヒートマップグラフなどによって示されてもよい。
【0087】
図14に示す例において、分析指示画面には、週間に係る情報表示欄237と、月間に係る情報表示欄237が含まれる。週間に係る情報表示欄237には、分析期間が週間である分析結果1に係る状態情報及び注意情報が表示される。月間に係る情報表示欄237には、分析期間が月間である分析結果2に係る状態情報及び注意情報が表示される。
【0088】
図15は、実施形態1に係る情報処理装置1及び端末2の処理の一例を示すフローチャートである。端末2の端末制御部20は、表示部23に分析指示画面を表示させる(S1)。端末制御部20は、操作部24に、分析される期間の入力を受け付ける(S2)。端末制御部20は、情報処理装置1に、入力された期間についての分析の指示を送信(出力)する(S3)。情報処理装置1の制御部10は、端末2から分析の指示を受信(取得)する(S4)。制御部10は、分析処理を実行する(S5)。
【0089】
図16は、実施形態1に係る情報処理装置の分析処理の一例を示すフローチャートである。情報処理装置1の制御部10は、入力された期間についての各種統計データ(第1統計データ、第2統計データ、第3統計データ、及び第4統計データ)を生成する(S501)。制御部10は、各種統計データのグラフを作成する(S502)。制御部10は、第1統計データ及び第2統計データに基づき、第1相関係数を算出する(S503)。制御部10は、第3統計データ及び第4統計データに基づき、第2相関係数を算出する(S504)。制御部10は、第2統計データ及び第3統計データに基づき、運転時間増加比を算出する(S505)。制御部10は、状態判定テーブル113を参照し、第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比に基づいてアドバイスコードを特定する(S506)。制御部10は、状態情報テーブル114を参照し、S506において特定したアドバイスコードに基づいて、端末2に出力する状態情報、及び注意情報を特定する(S507)。
【0090】
以下、
図15に戻って説明を行う。情報処理装置1の制御部10は、分析処理において作成された各種統計データのグラフ、及び特定した状態情報、及び注意情報を端末2に送信(出力)し(S6)、処理を終了する。端末2の端末制御部20は、各種統計データのグラフ、状態情報、及び注意情報を受信(取得)する(S7)。端末制御部20は、受信した各種統計データのグラフ、状態情報、及び注意情報を表示部23に表示させ(S8)、処理を終了する。なお、情報処理装置1の制御部10は、各種統計データ、第1相関係数、第2相関係数、または運転時間増加比を端末2に送信してもよく、端末2の端末制御部20は、受信した各種統計データ、第1相関係数、第2相関係数、または運転時間増加比を表示部23に表示させてもよい。
【0091】
以上の構成及び処理によれば、ポンプシステム装置4に設けられるポンプ41の単位時間あたりの運転時間、及びポンプシステム装置4が設けられる地域の降水量に基づき、精度良く機器(ポンプシステム装置4)の状態に関する情報を出力することが可能である。なお、情報処理装置1の制御部10は、第1相関係数に基づいて、第2相関係数に基づいて、または第1相関係数及び第2相関係数に基づいてアクセスコード、ポンプシステム装置4の状態に関する情報(状態情報)、または注意情報を特定してもよい。
【0092】
(実施形態2)
実施形態2に係る情報処理装置1は、学習モデルによってアドバイスコードを特定する。以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。
【0093】
図17は、実施形態2に係る情報処理装置1の構成例を示すブロック図である。実施形態2に係る情報処理装置1の記憶部11は、学習モデル115を記憶している。学習モデル115は、第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比が入力された場合に、状態情報テーブル114に記録されている各アドバイスコードの出力すべき確度を出力するモデルである。情報処理装置1の制御部10は、学習モデル115によって出力された確度が最も高いアドバイスコードに基づき、状態情報テーブル114を参照してポンプシステム装置4の状態に関する情報(状態情報)及び注意情報を出力する。
【0094】
図18は、学習モデル115の一例を示す説明図である。学習モデル115は、例えばニューラルネットワークを用いた機械学習により生成されている。ただし機械学習はニューラルネットワーク以外の手法により行われてもよい。例えば、LSTM(Long Short Term Memory)、Transformer、SVM(Support Vector Machine)、決定木又はk近傍法等の種々の機械学習の方法が採用され得る。
【0095】
学習モデル115に含まれる入力層は、第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比を含む入力データの入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された入力データを中間層に受け渡す。中間層は、入力データの特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した特徴量を出力層に受け渡す。出力層は、各アドバイスコードの確度を出力するニューロンを有し、中間層から出力された特徴量に基づいて、各アドバイスコードの確度を出力する。なお、入力データには、第1相関係数、第2相関係数、または運転時間増加比のうち少なくとも二つが含まれる態様であってもよい。また、入力データには、第1統計データ、第2統計データ、第3統計データ、または第4統計データが含まれてもよい。
【0096】
情報処理装置1の制御部10は、学習モデル115によって出力された確度が最も高いアドバイスコードに基づき、状態情報テーブル114を参照して状態情報及び注意情報を特定する。
図18に示す例においては、アドバイスコード:AC001の確度が最も高いため、制御部10は状態情報テーブル114のアドバイスコードフィールドにAC001が格納されているレコードを読み出し、状態情報及び注意情報を特定する。
【0097】
本実施形態に係る学習モデル115は、第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比を含む入力データと、各アドバイスコードの確度のラベルとを紐づけた訓練データを用いて学習される。情報処理装置1の制御部10は、例えば、入力データに対してアドバイスコードAC001を特定するべきである場合、アドバイスコードAC001の確度が1であり、他のアドバイスコードの確度が0であるラベルを入力データに紐づけて作成された訓練データを学習モデル115に入力し、学習モデル115を学習させる。学習モデル115は、ラベルと同値の確度を出力するように各層におけるバイアス及び各層間における重みを調整し、学習される。なお、学習モデル115は、情報処理装置1とは異なるコンピュータによって学習されてもよい。
【0098】
図19は、実施形態2に係る情報処理装置の分析処理の一例を示すフローチャートである。S511~S515は
図16におけるS501~S505と同様の処理である。情報処理装置1の制御部10は、第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比を学習モデル115に入力し(S516)、各アドバイスコードの確度を出力する(S517)。制御部10は、確度が最も高いアドバイスコードを特定する(S518)。制御部10は、S518において特定したアドバイスコードに基づき、状態情報テーブル114を参照して状態情報、及び注意情報を特定する(S519)。なお、分析処理の他の情報処理装置1及び端末2の処理は、
図15に示す処理と同様である。
【0099】
実施形態2において、学習モデル115には第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比が入力されたが、これに限られない。学習モデル115は、例えばCNN(Convolutional Neural Network)、またはVision Transformer等の画像の特徴量抽出を行うモデルであってもよい。この場合、情報処理装置1の制御部10は、学習モデル115に各種統計データのグラフの画像を入力し、各アドバイスコードの確度を出力してもよい。また、学習モデル115には、各種統計データのグラフを上方から投影し、運転時間または降水量に応じて色分けされたヒートマップ図が入力されてもよい。
【0100】
(実施形態3)
実施形態3に係る情報処理装置1は、複数のポンプシステム装置4のポンプ41について分析を行い、分析結果に基づき、侵入水が流入管43に流入していると疑われる箇所に関する情報を出力する。以下では、実施形態3について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付し、その構成部の説明を省略する。また、本実施形態においては、ポンプシステム装置4がマンホールに設けられるマンホール装置である場合について例示しており、以下の説明及び
図20~
図27における各マンホール装置は各ポンプシステム装置を示している。
【0101】
図20は、実施形態3に係る情報処理システム100の構成例を示す模式図である。実施形態3に係る情報処理システム100は、複数のマンホール装置(ポンプシステム装置)4(4a~4f)を備える。本実施形態において、マンホール装置4の個数は6個であるが、2個以上5個以下、または7個以上であってもよい。それぞれのマンホール装置4は、例えば排水処理施設に汚水を流す汚水用管路6の途中に設けられている。汚水用管路6は複数の系統に分岐しており、各系統の、排水処理施設から最も遠いマンホール装置4は最上流のマンホール装置となり、排水処理施設に最も近いマンホール装置4は、最下流のマンホール装置4となる。すなわち、各系統において、複数のマンホール装置4は汚水用管路6を介して直列に接続されており、上流から下流に向かって汚水が流れる。また、任意のマンホール装置4に接続する流入管43は、該マンホール装置4の一つ上流側に位置するマンホール装置4の吐出管に接続されている。なお、任意のマンホール装置4に接続する流入管43と、該マンホール装置4の一つ上流側に位置するマンホール装置4の吐出管45とは、同一管によって構成されてもよい。
【0102】
実施形態3に係る情報処理装置1は、任意のマンホール装置4に侵入水が流れていると判定された場合、該マンホール装置4と同じ系統の上流側に位置する他のマンホール装置4に侵入水が流れているか否かを判定する。情報処理装置1は、各マンホール装置4に係る判定結果(侵入水に関する情報)に基づいて、汚水用管路6において侵入水が発生している箇所を推定し、推定した侵入水の発生箇所に関する情報を端末2に出力する。
【0103】
図21は、実施形態3に係る情報処理装置1の構成例を示すブロック図である。実施形態3に係る情報処理装置1の記憶部11は、系統テーブル116を記憶している。系統テーブル116の詳細については後述する・
【0104】
図22は、実施形態3に係る運転情報テーブル112の一例を示す説明図である。実施形態3に係る運転情報テーブル112の管理項目(フィールド)は、複数の運転時間フィールド(運転時間(4a)~運転時間(4f))を含む。各運転時間フィールドには、年月日及び時刻における、各マンホール装置4が備えるポンプ41の運転時間が格納される。例えば、運転時間(4a)フィールドには、マンホール装置4aが備えるポンプ41の一時間あたりの運転時間が格納され、運転時間(4f)には、マンホール装置4fが備えるポンプ41の一時間あたりの運転時間が格納される。
【0105】
図23は、系統テーブル116の一例を示す説明図である。系統テーブル116の管理項目(フィールド)は、系統名フィールドと、複数のマンホール装置フィールドとを含む。系統名フィールドには、汚水用管路6の各系統の系統名が格納される。マンホール装置フィールドには、各系統に含まれるマンホール装置4の番号(符号)が格納される。なお、複数のマンホール装置フィールドには、
図23に示す左側から右側に向かって、各系統において汚水が流れる順にマンホール装置4の番号が格納される。すなわち、一番左のマンホール装置フィールドには、最上流のマンホール装置4の番号が格納され、一番右のマンホール装置フィールドには、最下流のマンホール装置4の番号が格納される。
【0106】
図24は、実施形態3に係る分析指示画面の一例を示す説明図である。実施形態3に係る分析指示画面には、分析対象のマンホール装置4を入力する、分析対象入力欄238が表示される。使用者は、分析(各種統計データの生成、マンホール装置4の状態に関する情報(状態情報)及び注意情報の出力)の対象となるマンホール装置4の番号を分析対象入力欄238に入力することが可能である。端末2の端末制御部20は、情報処理装置1に分析の指示を送信する際、分析対象入力欄238に入力されたマンホール装置4の番号についても送信(出力)する。本実施形態においては、分析対象入力欄238に、マンホール装置4fが入力された場合について、以下の説明を行う。
【0107】
情報処理装置1の制御部10は、端末2から分析の指示を受信(取得)すると、分析対象入力欄238に入力されたマンホール装置4fについて、実施形態1と同様に、各種統計データの生成、各種統計データのグラフの作成、第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比の算出、及びマンホール装置4fの状態に関する情報及び注意情報の特定を行う。なお、制御部10は、第1統計データ及び第2統計データを生成する際、運転情報テーブル112の運転時間(4f)フィールドに格納されているマンホール装置4fのポンプ41の運転時間を読み出す。
【0108】
また、情報処理装置1の制御部10は、第1相関係数及び第2相関係数に基づいて、マンホール装置4fへの侵入水の流入の有無を判定する。制御部10は、例えば、第1相関係数が0.6未満かつ第2相関係数が0.3以上である場合、マンホール装置4fへの侵入水の流入有りと判定し、それ以外の場合は侵入水の流入無しと判定する。
【0109】
情報処理装置1の制御部10は、マンホール装置4fへの侵入水有りと判定した場合、系統テーブル116を参照し、マンホール装置4fが含まれる系統の、マンホール装置4fより上流側に位置するマンホール装置4について、侵入水の有無を判定する。本実施形態においては、制御部10は、マンホール装置4fの上流側に位置するマンホール装置4a~4eについて侵入水の有無を判定する。制御部10は、各マンホール装置4の運転時間を運転情報テーブル112から読み出し、各マンホール装置4における各種統計データを生成する。また、制御部10は、各マンホール装置4の各種統計データに基づいて第1相関係数及び第2相関係数を算出し、算出した第1相関係数及び第2相関係数に基づいて、各マンホール装置4への侵入水の有無を判定する。制御部10は、各マンホール装置4の判定結果に基づき、汚水用管路6における侵入水の発生箇所の推定を行い、推定結果を端末2に送信(出力)する。
【0110】
図25は、推定結果表示画面の一例を示す説明図である。端末2の端末制御部20は、表示部23に
図14に示す分析結果画面を表示後、推定結果画面を表示する。なお、分析結果表示画面及び推定結果表示画面は、表示部23において切り替え表示が可能であってもよい。推定結果表示画面においては、各マンホール装置4への侵入水の有無の判定結果が含まれる判定結果表示欄239、汚水用管路6における侵入水が発生していると推定される箇所の主候補及び副候補のリスト23A、及び汚水用管路6の系統及びマンホール装置4の接続関係を示す模式
図23Bが表示される。なお、模式
図23B上には、主候補及び副候補となる箇所が表示される。
図25に示す例においては、主候補である汚水用管路6上の箇所は実線によって囲まれて示され、副候補である汚水用管路6上の箇所は破線によって囲まれて示される。
【0111】
情報処理装置1の制御部10は、例えば、分析対象となったマンホール装置4が含まれる系統における上流側の他のマンホール装置4に侵入水有りと判定した場合、侵入水有りと判定されたマンホール装置4のうち、最も上流側に位置するマンホール装置4のさらに上流側の汚水用管路6を、侵入水が発生している箇所の主候補とし、主候補が含まれる系統の、分析対象となったマンホール装置4の上流側に接続されている汚水用管路6を副候補とする。
図25に示す例においては、制御部10は、マンホール装置4bにおいて侵入水有りと判定し、マンホール装置4aにおいて侵入水無しと判定したため、マンホール装置4aとマンホール装置4bとの間の汚水用管路6を主候補とし、マンホール装置4bとマンホール装置4fとの間の汚水用管路6を副候補とする。また、制御部10は、分析対象となったマンホール装置4と、該マンホール装置4の一つ上流側であり、侵入水無しと判定されたマンホール装置4との間の汚水用管路6を副候補とする。
図25に示す例においては、制御部10は、マンホール装置4d及び4eにおいて侵入水無しと判定したため、マンホール装置4dとマンホール装置4fとの間の汚水用管路6及びマンホール装置4eとマンホール装置4fとの間の汚水用管路6を副候補とする。なお、主候補となる条件に合致する汚水用管路6が無い場合、副候補となる条件に合致する汚水用管路6を主候補としてもよい。
【0112】
図26は、実施形態3における情報処理装置1及び端末2の処理の一例を示すフローチャートである。端末2の端末制御部20は、表示部23に分析指示画面を表示させる(S11)。端末制御部20は、操作部24に、分析される期間及び分析対象となるマンホール装置4の入力を受け付ける(S12)。端末制御部20は、情報処理装置1に、入力された期間及び分析対象についての分析の指示を送信(出力)する(S13)。情報処理装置1の制御部10は、端末2から分析の指示を受信(取得)する(S14)。制御部10は、分析対象として入力されたマンホール装置4について分析処理を実行する(S15)。
【0113】
図27は、実施形態3に係る情報処理装置の分析処理の一例を示すフローチャートである。情報処理装置1の制御部10は、分析対象となったマンホール装置4の、入力された期間についての各種統計データ(第1統計データ、第2統計データ、第3統計データ、及び第4統計データ)を生成する(S1501)。制御部10は、各種統計データのグラフを作成する(S1502)。制御部10は、第1統計データ及び第2統計データに基づき、第1相関係数を算出する(S1503)。制御部10は、第3統計データ及び第4統計データに基づき、第2相関係数を算出する(S1504)。制御部10は、第2統計データ及び第3統計データに基づき、運転時間増加比を算出する(S1505)。制御部10は、第1相関係数及び第2相関係数に基づき、分析対象となったマンホール装置4への侵入水の流入が有るか否かを判定する(S1506)。制御部10は、S1506において、例えば第1相関係数が0.6未満であり、かつ第2相関係数が0.3以上である場合、侵入水の流入が有る(侵入水有り)と判定し、それ以外の場合は侵入水の流入が無い(侵入水無し)と判定する。制御部10は、侵入水無し(S1506:NO)と判定した場合、処理をS1511に進める。
【0114】
制御部10は、侵入水有り(S1506:YES)と判定した場合、系統テーブル116及び運転情報テーブル112を参照し、分析対象となったマンホール装置4の上流側に位置する各マンホール装置4の各種統計データを生成する(S1507)。制御部10は、S1508において各種統計データが生成された各マンホール装置4について第1相関係数及び第2相関係数を算出する(S1508)。制御部10は、各マンホール装置4について侵入水の流入の有無を判定する(S1509)。制御部10は、S1509における判定結果に基づき、汚水用管路6において侵入水が発生している箇所の主候補及び副候補を推定し(S1510)、処理をS1511に進める。
【0115】
制御部10は、状態判定テーブル113を参照し、分析対象となったマンホール装置4の第1相関係数、第2相関係数、及び運転時間増加比に基づいてアドバイスコードを特定する(S1511)。制御部10は、状態情報テーブル114を参照し、S1511において特定したアドバイスコードに基づいて、端末2に出力する状態情報及び注意情報を特定する(S1512)。
【0116】
以下、
図26に戻って説明を行う。情報処理装置1の制御部10は、分析処理において作成された各種統計データのグラフ、特定した状態情報及び注意情報、各マンホール装置4における侵入水の流入の有無の判定結果、及び汚水用管路6における侵入水が発生している箇所の主候補及び副候補を送信(出力)し(S16)、処理を終了する。端末2の端末制御部20は、各種統計データのグラフ、状態情報、注意情報、各マンホール装置4における侵入水の流入の有無の判定結果、及び汚水用管路6における侵入水が発生している箇所の主候補及び副候補を受信する(S17)。端末2の端末制御部20は、各種統計データのグラフ、状態情報、及び注意情報を分析結果表示画面において表示部23に表示させる(S18)。端末2の端末制御部20は、各マンホール装置4における侵入水の流入の有無の判定結果、及び汚水用管路6における侵入水が発生している箇所の主候補及び副候補を推定結果表示画面において表示部23に表示させ(S19)、処理を終了する。なお、端末2の端末制御部20は、各マンホール装置4の状態の各種統計データを表示部23に表示させてもよい。また、情報処理装置1の制御部10は、各状態情報及び注意情報を特定し、端末2の端末制御部20は、各状態情報及び注意情報を表示部23に表示させてもよい。
【0117】
(変形例)
上述の各実施形態においては、ポンプシステム装置4が汚水と雨水を別の管に流す分流式下水道に設けられることを想定して記述しているが、これに限定したものではない。合流式下水道においても本発明を用いることは可能である。合流式下水道においては、第3統計データと第4統計データの相関が強い場合は、運転時間が遅延していてもその原因が、通常の雨水流入によるものであれば異常と判断しないなど分流式下水道とは判定基準や判定結果を変える。
また分流式下水道に設けられるポンプシステム装置4において第1統計データと第4統計データを比較することにより、雨水排水のみ行うポンプの異常検出や雨水系の配管異常の可能性を検出することも可能である。
【0118】
上述の各実施形態において、情報処理装置1はポンプシステム装置4の運転情報に基づく第1統計データ及び第2統計データを生成したが、これに限られない。機器は、例えば立体駐車場の管理装置であってもよい。この場合、情報処理装置1は、例えば第3軸に単位時間あたりの車両の入庫台数または出庫台数を割り当てた第1統計データ及び第2統計データを生成してもよい。また、情報処理装置1は、第1統計データ第2統計データに基づき、立体駐車場に入庫中の台数が所定期間の平均よりも異常に多いまたは少ないことを示す情報などの、立体駐車場の状態に関する情報を出力してもよい。また、機器は、ルーツブロワ、またはターボブロア等の散気装置に空気を送る送風機、または汚水貯留槽内を攪拌するための撹拌機などであってもよい。
【0119】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。特許請求の範囲は、マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0120】
100 情報処理システム
1 情報処理装置
10 制御部
11 記憶部
11a 記録媒体
111 プログラム
112 運転情報テーブル
113 状態判定テーブル
114 状態情報テーブル
115 学習モデル
116 系統テーブル
12 通信部
2 端末
20 端末制御部
21 記憶部
211 プログラム
22 通信部
23 表示部
24 操作部
300 制御盤
3 制御装置
30 装置制御部
31 記憶部
32 通信部
33 入出力部
4 ポンプシステム装置(マンホール装置)(機器)
41 ポンプ
411 ポンプ本体
412 駆動装置
42 水位計
43 流入管
44 貯留槽
45 吐出管
46 水位計
5 気象サーバ
6 汚水用管路
N ネットワーク