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特開2024-145335信号変換方法、位置検出方法、および位置検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145335
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】信号変換方法、位置検出方法、および位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01D5/245 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057638
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】水沼 大輔
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 駿弥
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳
(72)【発明者】
【氏名】石上 翔太
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA20
2F077AA43
2F077CC02
2F077NN04
2F077NN17
2F077NN24
2F077PP11
2F077TT33
2F077TT43
2F077TT66
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数のアナログ信号のそれぞれをデジタル信号に変換する信号変換方法を提供する。
【解決手段】アナログ信号の値を少なくとも1回以上サンプリングするサンプリング処理を複数回、順次行う第1ステップと、第1ステップの後に続けて行われ、サンプリング処理を複数回、順次行う第2ステップと、を含む。第1ステップにおいて行われる複数回のサンプリング処理は、複数のアナログ信号のそれぞれに対するサンプリング処理を少なくとも1回ずつ含む。第2ステップにおいては、第1ステップにおいて行われる複数回のサンプリング処理を第1ステップとは逆の順番で行う。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアナログ信号のそれぞれをデジタル信号に変換する信号変換方法であって、
前記アナログ信号の値を少なくとも1回以上サンプリングするサンプリング処理を複数回、順次行う第1ステップと、
前記第1ステップの後に続けて行われ、前記サンプリング処理を複数回、順次行う第2ステップと、
を含み、
前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を少なくとも1回ずつ含み、
前記第2ステップにおいては、前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理を前記第1ステップとは逆の順番で行う、信号変換方法。
【請求項2】
前記複数のアナログ信号ごとに、前記第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと前記第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとに基づいてデジタル信号の値を算出する第3ステップを含む、請求項1に記載の信号変換方法。
【請求項3】
前記第3ステップは、前記複数のアナログ信号ごとに、前記第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと前記第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせることを含む、請求項2に記載の信号変換方法。
【請求項4】
前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を同数回ずつ含む、請求項3に記載の信号変換方法。
【請求項5】
回転体の回転位置を検出する位置検出方法であって、
前記回転体の回転位置に応じたアナログ信号を出力可能な複数の回転センサによって、互いに異なる位相を有する複数のアナログ信号を取得することと、
前記複数のアナログ信号に基づいて前記回転体の回転位置を検出する検出ステップを所定の周期で行うことと、
を含み、
前記検出ステップは、
前記複数のアナログ信号のそれぞれを請求項2から4のいずれか一項に記載の信号変換方法によってデジタル信号に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにおいて得られたデジタル信号に基づいて、前記回転体の回転位置を算出する演算ステップと、
を含む、位置検出方法。
【請求項6】
2回目以降に行われる前記検出ステップは、前記第3ステップにおいて得られたデジタル信号の値と、1回前に行われた前記検出ステップの前記第3ステップにおいて得られたデジタル信号の値とに基づいて、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから第1所定時間後の前記アナログ信号の値に基づいて得られるデジタル信号の推定値を算出することを含む、請求項5に記載の位置検出方法。
【請求項7】
前記所定の周期をtsとし、前記第1所定時間をtpaとし、M回目の前記検出ステップにおいて得られるデジタル信号の値をD[M]とし、前記デジタル信号の推定値をDeとしたとき、2回目以降に行われる前記検出ステップにおいて、以下の式(1)によって前記デジタル信号の推定値を算出する、請求項6に記載の位置検出方法。
De=D[M]+(D[M]-D[M-1])/ts×tpa …式(1)
【請求項8】
前記第1所定時間は、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから前記演算ステップにおいて前記回転体の回転位置が算出されるまでの時間に等しい、請求項6に記載の位置検出方法。
【請求項9】
2回目以降に行われる前記検出ステップは、前記演算ステップにおいて得られた前記回転体の回転位置と、1回前に行われた前記検出ステップの前記演算ステップにおいて得られた前記回転体の回転位置とに基づいて、第2所定時間後における前記回転体の回転位置の推定値を算出することを含む、請求項5に記載の位置検出方法。
【請求項10】
前記所定の周期をtsとし、前記第2所定時間をtpbとし、M回目の前記検出ステップにおいて得られる前記回転体の回転位置をθ[M]とし、前記回転体の回転位置の推定値をθeとしたとき、2回目以降に行われる前記検出ステップにおいて、以下の式(2)によって前記回転体の回転位置の推定値を算出する、請求項9に記載の位置検出方法。
θe=θ[M]+(θ[M]-θ[M-1])/ts×tpb …式(2)
【請求項11】
前記第2所定時間は、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから前記推定値が算出されるまでの時間に等しい、請求項9に記載の位置検出方法。
【請求項12】
回転体の回転位置を検出する位置検出装置であって、
前記回転体の回転位置に応じたアナログ信号であり、かつ、互いに異なる位相を有するアナログ信号を出力可能な複数の回転センサと、
前記複数の回転センサから出力された複数のアナログ信号に基づいて前記回転体の回転位置を検出する検出ステップを所定の周期で実行可能な演算部と、
を備え、
前記検出ステップにおいて前記演算部は、
前記複数のアナログ信号のそれぞれをデジタル信号に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにおいて得られたデジタル信号に基づいて、前記回転体の回転位置を算出する演算ステップと、
を実行し、
前記変換ステップにおいて前記演算部は、
前記アナログ信号の値を少なくとも1回以上サンプリングするサンプリング処理を複数回、順次行う第1ステップと、
前記第1ステップの後に続けて行われ、前記サンプリング処理を複数回、順次行う第2ステップと、
前記複数のアナログ信号ごとに、前記第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと前記第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとに基づいてデジタル信号の値を算出する第3ステップと、
を実行し、
前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を少なくとも1回ずつ含み、
前記第2ステップにおいて前記演算部は、前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理を前記第1ステップとは逆の順番で行う、位置検出装置。
【請求項13】
前記第3ステップにおいて前記演算部は、前記複数のアナログ信号ごとに、前記第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと前記第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせる、請求項12に記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を同数回ずつ含む、請求項13に記載の位置検出装置。
【請求項15】
2回目以降に行われる前記検出ステップにおいて前記演算部は、前記第3ステップにおいて得られたデジタル信号の値と、1回前に行われた前記検出ステップの前記第3ステップにおいて得られたデジタル信号の値とに基づいて、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから第1所定時間後の前記アナログ信号の値に基づいて得られるデジタル信号の推定値を算出する、請求項12に記載の位置検出装置。
【請求項16】
前記第1所定時間は、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから前記演算ステップにおいて前記回転体の回転位置が算出されるまでの時間に等しい、請求項15に記載の位置検出装置。
【請求項17】
2回目以降に行われる前記検出ステップにおいて前記演算部は、前記演算ステップにおいて得られた前記回転体の回転位置と、1回前に行われた前記検出ステップの前記演算ステップにおいて得られた前記回転体の回転位置とに基づいて、第2所定時間後における前記回転体の回転位置の推定値を算出する、請求項12に記載の位置検出装置。
【請求項18】
前記第2所定時間は、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから前記推定値が算出されるまでの時間に等しい、請求項17に記載の位置検出装置。
【請求項19】
前記回転体に設けられたマグネットを備え、
前記回転センサは、前記マグネットの磁界を検出可能な磁気センサである、請求項12から18のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号変換方法、位置検出方法、および位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のホールセンサを用いて、モータのロータなどの回転体の回転位置を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-54656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の方法においては、複数のホールセンサから得られるアナログ信号をデジタル信号に変換し、得られた複数のデジタル信号に基づいて回転体の回転位置を検出する。アナログ信号をデジタル信号に変換する機器として安価な機器を用いる場合などにおいては、複数のアナログ信号を同時に変換することができず、アナログ信号を1つずつしかデジタル信号に変換できない場合がある。この場合、複数のアナログ信号をそれぞれデジタル信号に変換するためには、複数のアナログ信号を順番にデジタル信号に変換していく必要がある。したがって、デジタル信号を取得するタイミングが複数のアナログ信号ごとにずれ、回転体の回転位置の検出精度が低下する問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、複数のアナログ信号を変換して得られる複数のデジタル信号同士の間にずれが生じることを抑制できる信号変換方法、そのような信号変換方法を用いた位置検出方法、およびそのような信号変換方法を実行可能な位置検出装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の信号変換方法の一つの態様は、複数のアナログ信号のそれぞれをデジタル信号に変換する信号変換方法であって、前記アナログ信号の値を少なくとも1回以上サンプリングするサンプリング処理を複数回、順次行う第1ステップと、前記第1ステップの後に続けて行われ、前記サンプリング処理を複数回、順次行う第2ステップと、を含む。前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を少なくとも1回ずつ含む。前記第2ステップにおいては、前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理を前記第1ステップとは逆の順番で行う。
【0007】
本発明の位置検出方法の一つの態様は、回転体の回転位置を検出する位置検出方法であって、前記回転体の回転位置に応じたアナログ信号を出力可能な複数の回転センサによって、互いに異なる位相を有する複数のアナログ信号を取得することと、前記複数のアナログ信号に基づいて前記回転体の回転位置を検出する検出ステップを所定の周期で行うことと、を含む。前記検出ステップは、前記複数のアナログ信号のそれぞれを上記の信号変換方法によってデジタル信号に変換する変換ステップと、前記変換ステップにおいて得られたデジタル信号に基づいて、前記回転体の回転位置を算出する演算ステップと、を含む。
【0008】
本発明の位置検出装置の一つの態様は、回転体の回転位置を検出する位置検出装置であって、前記回転体の回転位置に応じたアナログ信号であり、かつ、互いに異なる位相を有するアナログ信号を出力可能な複数の回転センサと、前記複数の回転センサから出力された複数のアナログ信号に基づいて前記回転体の回転位置を検出する検出ステップを所定の周期で実行可能な演算部と、を備える。前記検出ステップにおいて前記演算部は、前記複数のアナログ信号のそれぞれをデジタル信号に変換する変換ステップと、前記変換ステップにおいて得られたデジタル信号に基づいて、前記回転体の回転位置を算出する演算ステップと、を実行する。前記変換ステップにおいて前記演算部は、前記アナログ信号の値を少なくとも1回以上サンプリングするサンプリング処理を複数回、順次行う第1ステップと、前記第1ステップの後に続けて行われ、前記サンプリング処理を複数回、順次行う第2ステップと、前記複数のアナログ信号ごとに、前記第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと前記第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとに基づいてデジタル信号の値を算出する第3ステップと、を実行する。前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を少なくとも1回ずつ含む。前記第2ステップにおいて前記演算部は、前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理を前記第1ステップとは逆の順番で行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、複数のアナログ信号を変換して得られる複数のデジタル信号同士の間にずれが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態における位置検出装置を模式的に示す概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態における複数のアナログ信号の一例を示すグラフである。
図3図3は、第1実施形態における検出ステップを示すフローチャートである。
図4図4は、第1実施形態における検出ステップを模式的に示す図である。
図5図5は、第1実施形態における第1ステップおよび第2ステップを模式的に示す図である。
図6図6は、第2実施形態における検出ステップを示すフローチャートである。
図7図7は、第1ステップおよび第2ステップの他の例を模式的に示す図である。
図8図8は、第1ステップおよび第2ステップのまた他の例を模式的に示す図である。
図9図9は、第1ステップおよび第2ステップのさらにまた他の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の位置検出装置100は、モータ10のロータ20の回転位置を検出する装置である。本実施形態においてモータ10は、3相モータである。ロータ20は、中心軸線J回りに回転可能な回転体である。以下の説明においては、中心軸線Jが延びる軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線J回りの周方向を単に「周方向」と呼ぶ場合がある。
【0012】
図1に示すように、ロータ20には、マグネット30が設けられている。マグネット30は、例えば、中心軸線Jを囲む環状である。マグネット30は、中心軸線J回りの周方向に交互に並ぶ磁極部30Nと磁極部30Sとを有する。磁極部30Nは、N極である。磁極部30Sは、S極である。磁極部30Nと磁極部30Sとは、4つずつ設けられている。つまり、本実施形態においてマグネット30は、4つの極対を有する。なお、極対とは、N極とS極とのペアを意味する。マグネット30は、マグネット30の磁束がモータ10における図示しないステータとロータ20との間で流れるロータマグネットであってもよいし、当該ロータマグネットとは別にロータ20に設けられたセンサマグネットであってもよい。
【0013】
位置検出装置100は、マグネット30と、複数の回転センサ40と、信号処理装置50と、を備える。また、図示は省略するが、位置検出装置100は、マグネット30と軸方向に対向する回路基板を備える。複数の回転センサ40および信号処理装置50は、例えば、当該回路基板に取り付けられている。
【0014】
複数の回転センサ40は、回転体であるロータ20の回転位置に応じたアナログ信号HSを出力可能である。複数の回転センサ40から出力されるアナログ信号HSは、互いに異なる位相を有する。本実施形態において複数の回転センサ40は、マグネット30の磁界を検出可能な磁気センサである。そのため、回転センサ40を安価なセンサとしつつ、回転センサ40によってマグネット30の磁界を検出することで回転体であるロータ20の回転位置を容易に検出できる。
【0015】
回転センサ40は、ロータ20の回転位置、すなわちマグネット30の回転位置に応じて変化する磁界強度を示すアナログ信号HSを出力する。磁気センサである回転センサ40の種類は、アナログ信号HSを出力可能な磁気センサであれば、特に限定されない。回転センサ40は、ホール素子であってもよいし、リニアホールICであってもよいし、磁気抵抗素子であってもよい。本実施形態において回転センサ40は、第1回転センサ41と第2回転センサ42と第3回転センサ43との3つ設けられている。
【0016】
第1回転センサ41と第2回転センサ42と第3回転センサ43とは、周方向に所定の間隔を空けて配置されている。本実施形態において第1回転センサ41と第2回転センサ42と第3回転センサ43とは、周方向に30°ずつ間隔を空けてこの順に配置されている。マグネット30の極対数をPとした場合、各回転センサ40から出力される各アナログ信号HSの電気角1周期は、機械角1周期の1/Pに相当する。本実施形態では、マグネット30の極対数Pが「4」であるため、各回転センサ40から出力される各アナログ信号HSの電気角1周期は、機械角1周期の1/4、すなわち機械角で90°に相当する。本実施形態において周方向に隣り合う回転センサ40から出力されるアナログ信号HS同士は、互いに電気角で120°の位相差を有する。
【0017】
第1回転センサ41から出力されるアナログ信号HSは、第1アナログ信号Huである。第2回転センサ42から出力されるアナログ信号HSは、第2アナログ信号Hvである。第3回転センサ43から出力されるアナログ信号HSは、第3アナログ信号Hwである。図2に示すように、第1アナログ信号Hu、第2アナログ信号Hv、および第3アナログ信号Hwは、正弦波である。図2において、横軸はロータ20の回転角度θであり、縦軸は電圧Vである。回転角度θは、機械角である。ロータ20が一定の回転速度で回転している場合、各アナログ信号HSは、横軸を時間として図2に示すグラフと同様に変化する。本実施形態において第2アナログ信号Hvは、第1アナログ信号Huに対して電気角で120°の位相遅れを有する。第3アナログ信号Hwは、第2アナログ信号Hvに対して電気角で120°の位相遅れを有する。図1に示すように、第1アナログ信号Hu、第2アナログ信号Hv、および第3アナログ信号Hwは、信号処理装置50に入力される。
【0018】
信号処理装置50は、複数の回転センサ40から出力される複数のアナログ信号HSを処理する装置である。本実施形態において信号処理装置50は、第1アナログ信号Hu、第2アナログ信号Hv、および第3アナログ信号Hwに基づいて、回転体であるロータ20の回転角度θを算出する。信号処理装置50は、演算部51と、記憶部52と、を有する。つまり、位置検出装置100は、演算部51と、記憶部52と、を備える。
【0019】
演算部51は、第1アナログ信号Hu、第2アナログ信号Hv、および第3アナログ信号Hwに基づいて、回転体であるロータ20の回転角度θを算出する部分である。演算部51は、例えばMCU(Microcontroller Unit)などのマイクロプロセッサである。演算部51は、例えばデータバスを介して、記憶部52とデータ通信可能に接続されている。演算部51には、第1アナログ信号Hu、第2アナログ信号Hv、および第3アナログ信号Hwが入力される。演算部51は、複数の回転センサ40から出力された複数のアナログ信号HSに基づいて回転体であるロータ20の回転位置を検出する検出ステップSd1を所定の周期tsで実行可能である。
【0020】
記憶部52は、演算部51に各種処理を実行させるのに必要なプログラム、各種の値、および学習データなどを記憶する不揮発性メモリと、演算部51が各種処理を実行する際にデータの一時保存先として使用される揮発性メモリと、を含む。不揮発性メモリは、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、またはフラッシュメモリなどである。揮発性メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)などである。
【0021】
本実施形態において位置検出装置100は、複数の回転センサ40によって複数のアナログ信号HSとして第1アナログ信号Hu、第2アナログ信号Hv、および第3アナログ信号Hwを取得し、演算部51において取得した複数のアナログ信号HSを用いて検出ステップSd1を所定の周期tsで実行することによって、回転体であるロータ20の回転位置を回転角度θとして所定の周期tsで検出する。本実施形態において、回転体であるロータ20の回転位置を検出する位置検出方法は、位置検出装置100を用いて行われる方法である。本実施形態の位置検出方法は、ロータ20の回転位置に応じたアナログ信号HSを出力可能な複数の回転センサ40によって、互いに異なる位相を有する複数のアナログ信号HSを取得することと、複数のアナログ信号HSに基づいてロータ20の回転位置を検出する検出ステップSd1を所定の周期tsで行うことと、を含む。一例として、周期tsは、5マイクロ秒(μs)以上、100マイクロ秒(μs)以下程度である。
【0022】
本実施形態において演算部51は、図3のフローチャートに沿って検出ステップSd1を実行する。図3に示すように、検出ステップSd1において演算部51は、変換ステップScvを実行する。つまり、検出ステップSd1は、変換ステップScvを含む。変換ステップScvは、複数のアナログ信号HSのそれぞれを本実施形態の信号変換方法によってデジタル信号に変換するステップである。言い換えれば、変換ステップScvは、A/D変換を行うステップである。
【0023】
本実施形態において演算部51は、アナログ信号HSを1つずつしかデジタル信号に変換できない。そのため、演算部51に同時に複数のアナログ信号HSをデジタル信号に変換できる性能を持たせる場合に比べて、演算部51を構成するマイクロプロセッサを安価にすることができる。これにより、位置検出装置100を製造する製造コストを低減できる。演算部51が実行可能なA/D変換のサンプリングレートは、例えば、数百kサンプル/秒(sps)程度であってもよいし、数千kサンプル/秒(sps)程度であってもよい。演算部51が実行可能なA/D変換のサンプリングレートは、例えば、100kサンプル/秒(sps)以上、10000kサンプル/秒(sps)以下程度である。演算部51が実行可能なA/D変換のサンプリングレートは、特に限定されない。
【0024】
変換ステップScvにおいて演算部51は、第1ステップS1aと、第2ステップS2aと、第3ステップS3aと、を実行する。つまり、変換ステップScvは、第1ステップS1aと、第2ステップS2aと、第3ステップS3aと、を含む。第1ステップS1aと第2ステップS2aと第3ステップS3aとは、この順で実行される。
【0025】
第1ステップS1aは、サンプリング処理Spを複数回、順次行うステップである。サンプリング処理Spは、アナログ信号HSの値を少なくとも1回以上サンプリングする処理である。サンプリング処理Spは、例えば、アナログ信号HSの値を8回サンプリングする。なお、サンプリング処理Spにおいて行われるサンプリングの回数は、1回以上であれば特に限定されない。図4に示すように、本実施形態の第1ステップS1aでは、サンプリング処理Spが3回実行される。本実施形態のサンプリング処理Spにおいて演算部51は、アナログ信号HSを複数回サンプリングして得られた値を足し合わせた合計値を、サンプリングデータとして取得する。なお、図4において横軸は、時間tである。
【0026】
第1ステップS1aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、複数の回転センサ40からそれぞれ出力される複数のアナログ信号HSのそれぞれに対するサンプリング処理Spを少なくとも1回ずつ含む。本実施形態では、第1ステップS1aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、複数の回転センサ40からそれぞれ出力される複数のアナログ信号HSのそれぞれに対するサンプリング処理Spを同数回ずつ含む。第1ステップS1aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、第1アナログ信号Huに対して行われる第1サンプリング処理Usと、第2アナログ信号Hvに対して行われる第2サンプリング処理Vsと、第3アナログ信号Hwに対して行われる第3サンプリング処理Wsと、を1回ずつ含む。本実施形態の第1ステップS1aにおいては、第1サンプリング処理Usと第2サンプリング処理Vsと第3サンプリング処理Wsとが、この順で連続して実行される。
【0027】
第2ステップS2aは、第1ステップS1aの後に続けて行われ、サンプリング処理Spを複数回、順次行うステップである。本実施形態の第2ステップS2aでは、サンプリング処理Spが3回実行される。第2ステップS2aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、複数の回転センサ40からそれぞれ出力される複数のアナログ信号HSのそれぞれに対するサンプリング処理Spを少なくとも1回ずつ含む。本実施形態では、第2ステップS2aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、複数の回転センサ40からそれぞれ出力される複数のアナログ信号HSのそれぞれに対するサンプリング処理Spを同数回ずつ含む。本実施形態において第2ステップS2aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、第1アナログ信号Huに対して行われる第1サンプリング処理Usと、第2アナログ信号Hvに対して行われる第2サンプリング処理Vsと、第3アナログ信号Hwに対して行われる第3サンプリング処理Wsと、を1回ずつ含む。つまり、第2ステップS2aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、第1ステップS1aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spと同様である。
【0028】
第2ステップS2aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、第1ステップS1aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spに対して、行われる順番が異なる。本実施形態の第2ステップS2aにおいては、第3サンプリング処理Wsと第2サンプリング処理Vsと第1サンプリング処理Usとが、この順で連続して実行される。つまり、第2ステップS2aにおいて演算部51は、第1ステップS1aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spを第1ステップS1aとは逆の順番で行う。
【0029】
第1ステップS1aのサンプリング処理Spおよび第2ステップS2aのサンプリング処理Spにおいてそれぞれ得られるサンプリングデータは、各サンプリングデータの相対的な比較において、各サンプリング処理Spが開始されてから終了するまでの間の中心となる時刻において取得された値とみなすことができる。これは、図5に示すように、各検出ステップSd1が実行される十分に短い時間の中では、各アナログ信号HSの時間tに対する変化を線形で近似できるためである。図5における上下の各グラフにおいて、横軸は時間tである。図5における上のグラフにおいて、縦軸は電圧Vである。なお、以下の説明においては、各サンプリング処理Spが開始されてから終了するまでの間の中心となる時刻を、各サンプリング処理Spの中心時刻と呼ぶ場合がある。
【0030】
例えば、第1アナログ信号Huが時間とともに線形に変化する信号に近似できる場合に、第1サンプリング処理Usにおいて一定間隔で複数回のサンプリングを行う場合、第1サンプリング処理Usの中心時刻における第1アナログ信号Huの値は、複数回のサンプリングで得られた値を全て足し合わせた値を、第1サンプリング処理Usにおいて行われるサンプリングの回数で割った平均値と同等の値とみなすことができる。これは、第2サンプリング処理Vsおよび第3サンプリング処理Wsについても同様である。
【0031】
ここで、第1サンプリング処理Usにおいて行われるサンプリングの回数と、第2サンプリング処理Vsにおいて行われるサンプリングの回数と、第3サンプリング処理Wsにおいて行われるサンプリングの回数とは、互いに同じである。そのため、各サンプリング処理Spにおいて複数回のサンプリングで得られたデータを合計した値同士の比は、各サンプリング処理Spの中心時刻において各アナログ信号HSから得られる値同士の比と同じである。したがって、本実施形態のように各サンプリング処理Spにおいて、複数回のサンプリングによって得られた値の合計値をサンプリングデータとして取得し、当該サンプリングデータを各アナログ信号HS同士で比較する上では、各サンプリングデータを各サンプリング処理Spの中心時刻において取得された値として扱うことができる。
【0032】
図5においては、第1ステップS1aの第1サンプリング処理Usの中心時刻における第1アナログ信号Huの値を、PU1で示している。第1ステップS1aの第2サンプリング処理Vsの中心時刻における第2アナログ信号Hvの値を、PV1で示している。第1ステップS1aの第3サンプリング処理Wsの中心時刻における第3アナログ信号Hwの値を、PW1で示している。第2ステップS2aの第1サンプリング処理Usの中心時刻における第1アナログ信号Huの値を、PU2で示している。第2ステップS2aの第2サンプリング処理Vsの中心時刻における第2アナログ信号Hvの値を、PV2で示している。第2ステップS2aの第3サンプリング処理Wsの中心時刻における第3アナログ信号Hwの値を、PW2で示している。本実施形態において各値PU1,PV1,PW1,PU2,PV2,PW2同士の比は、各サンプリング処理Spにおいて得られる各サンプリングデータ、すなわち各サンプリング処理Spにおいて複数のサンプリングによって得られた値を足し合わせた合計値同士の比と同等の値とみなすことができる。
【0033】
第3ステップS3aは、複数のアナログ信号HSごとに、第1ステップS1aにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2aにおいて得られたサンプリングデータとに基づいてデジタル信号の値を算出するステップである。本実施形態の第3ステップS3aにおいて演算部51は、複数のアナログ信号HSごとに、第1ステップS1aにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2aにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせる。つまり、本実施形態において第3ステップS3aは、複数のアナログ信号HSごとに、第1ステップS1aにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2aにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせることを含む。
【0034】
第3ステップS3aにおいて演算部51は、第1ステップS1aの第1サンプリング処理Usにおいて第1アナログ信号Huから得られたサンプリングデータと第2ステップS2aの第1サンプリング処理Usにおいて第1アナログ信号Huから得られたサンプリングデータとを足し合わせた値を、第1アナログ信号Huを変換したデジタル信号の値として算出する。
【0035】
第3ステップS3aにおいて演算部51は、第1ステップS1aの第2サンプリング処理Vsにおいて第2アナログ信号Hvから得られたサンプリングデータと第2ステップS2aの第2サンプリング処理Vsにおいて第2アナログ信号Hvから得られたサンプリングデータとを足し合わせた値を、第2アナログ信号Hvを変換したデジタル信号の値として算出する。
【0036】
第3ステップS3aにおいて演算部51は、第1ステップS1aの第3サンプリング処理Wsにおいて第3アナログ信号Hwから得られたサンプリングデータと第2ステップS2aの第3サンプリング処理Wsにおいて第3アナログ信号Hwから得られたサンプリングデータとを足し合わせた値を、第3アナログ信号Hwを変換したデジタル信号の値として算出する。
【0037】
第3ステップS3aおいてそれぞれ得られるデジタル信号の値は、各アナログ信号HSから得られるデジタル信号の値同士の相対的な比較において、第1ステップS1aと第2ステップS2aとが切り替わるタイミングTaにおいて取得された値とみなすことができる。これは、上述したように各検出ステップSd1が実行される十分に短い時間の中では、各アナログ信号HSの時間tに対する変化を線形で近似でき、かつ、いずれのアナログ信号HSに対するサンプリング処理Spにおいても、検出ステップSd1において最初のサンプリング処理Spが開始されてから最後のサンプリング処理Spが終了するまでの間における中心時刻が、タイミングTaとなるためである。
【0038】
具体的に、検出ステップSd1において最初の第1サンプリング処理Usが開始されてから最後の第1サンプリング処理Usが終了されるまでの間における中心時刻と、検出ステップSd1において最初の第2サンプリング処理Vsが開始されてから最後の第2サンプリング処理Vsが終了されるまでの間における中心時刻と、検出ステップSd1において最初の第3サンプリング処理Wsが開始されてから最後の第3サンプリング処理Wsが終了されるまでの間における中心時刻とは、互いに同じであり、タイミングTaである。第1ステップS1aと第2ステップS2aとが切り替わるタイミングTaは、第1ステップS1aが終了した時刻であるとともに、第2ステップS2aが開始された時刻である。
【0039】
図5に示すように、例えば、第1アナログ信号Huが時間とともに線形に変化する信号に近似できる場合において、タイミングTaにおける第1アナログ信号Huの値PUは、第1ステップS1aの第1サンプリング処理Usの中心時刻における第1アナログ信号Huの値PU1と第2ステップS2aの第1サンプリング処理Usの中心時刻における第1アナログ信号Huの値PU2とを足し合わせた値を、第1ステップS1aおよび第2ステップS2aにおいて第1サンプリング処理Usが行われる合計回数で割った平均値と同等の値とみなすことができる。つまり、本実施形態においてタイミングTaにおける第1アナログ信号Huの値PUは、第1アナログ信号Huの値PU1と第1アナログ信号Huの値PU2とを足し合わせた値を2で割った値と同等の値とみなすことができる。これは、第2アナログ信号Hvおよび第3アナログ信号Hwについても同様である。つまり、タイミングTaにおける第2アナログ信号Hvの値PVは、第2アナログ信号Hvの値PV1と第2アナログ信号Hvの値PV2とを足し合わせた値を2で割った値と同等の値とみなすことができる。タイミングTaにおける第3アナログ信号Hwの値PWは、第3アナログ信号Hwの値PW1と第3アナログ信号Hwの値PW2とを足し合わせた値を2で割った値と同等の値とみなすことができる。
【0040】
上述したように、各値PU1,PV1,PW1,PU2,PV2,PW2同士の比は、各サンプリング処理Spにおいて得られる各サンプリングデータ同士の比と同等の値とみなすことができるため、複数のアナログ信号HS同士の相対的な比較においては、各値PU1,PV1,PW1,PU2,PV2,PW2を、各サンプリング処理Spにおいて得られたサンプリングデータに置き換えることができる。したがって、第1ステップS1aおよび第2ステップS2aにおける第1サンプリング処理Usにおいて得られたサンプリングデータを足し合わせて算出したデジタル信号の値を、第1ステップS1aおよび第2ステップS2aにおいて第1サンプリング処理Usが行われる合計回数で割った値は、タイミングTaにおいて得られた第1アナログ信号Huのサンプリングデータとみなすことができる。
【0041】
第1ステップS1aおよび第2ステップS2aにおける第2サンプリング処理Vsにおいて得られたサンプリングデータを足し合わせて算出したデジタル信号の値を、第1ステップS1aおよび第2ステップS2aにおいて第2サンプリング処理Vsが行われる合計回数で割った値は、タイミングTaにおいて得られた第2アナログ信号Hvのサンプリングデータとみなすことができる。
【0042】
第1ステップS1aおよび第2ステップS2aにおける第3サンプリング処理Wsにおいて得られたサンプリングデータを足し合わせて算出したデジタル信号の値を、第1ステップS1aおよび第2ステップS2aにおいて第3サンプリング処理Wsが行われる合計回数で割った値は、タイミングTaにおいて得られた第3アナログ信号Hwのサンプリングデータとみなすことができる。
【0043】
ここで、第1ステップS1aおよび第2ステップS2aにおいて行われる第1サンプリング処理Usの合計回数と第2サンプリング処理Vsの合計回数と第3サンプリング処理Wsの合計回数とは、いずれも2回であり、互いに同じである。そのため、複数のアナログ信号HSに対応する各デジタル信号同士の相対的な比較においては、第3ステップS3aにおいて複数のアナログ信号HSごとにサンプリング処理Spにおけるサンプリングデータを足し合わせて算出された各デジタル信号の値を、タイミングTaにおける各アナログ信号HSに対応するデジタル信号の値として扱うことができる。
【0044】
以上のように本実施形態によれば、第1ステップS1aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、複数のアナログ信号HSのそれぞれに対するサンプリング処理Spを少なくとも1回ずつ含み、第2ステップS2aにおいては、第1ステップS1aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spを第1ステップS1aとは逆の順番で行う。そのため、複数のアナログ信号HSごとに、第1ステップS1aにおいて行われるサンプリング処理Spの回数と第2ステップS2aにおいて行われるサンプリング処理Spの回数とを互いに同じにできるとともに、いずれのアナログ信号HSにおいても、最初のサンプリング処理Spが開始されてから最後のサンプリング処理Spが終了するまでの間における中心の時刻を、第1ステップS1aと第2ステップS2aとが切り替わるタイミングTaにすることができる。これにより、上述したようにして、各アナログ信号HSを変換したデジタル信号の値を、同じタイミングTaにおいて同時に取得した場合に相当する値として取得することが可能となる。したがって、演算部51がアナログ信号HSを1つずつしか変換できない場合であっても、複数のアナログ信号HSを変換して得られる複数のデジタル信号同士の間にずれが生じることを抑制できる。
【0045】
本実施形態において変換ステップScvは、複数のアナログ信号HSごとに、第1ステップS1aにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2aにおいて得られたサンプリングデータとに基づいてデジタル信号の値を算出する第3ステップS3aを含む。そのため、第3ステップS3aにおいて、複数のアナログ信号HSごとに、同時刻に取得したデジタル信号に相当するデジタル信号の値を取得することができる。
【0046】
本実施形態では、第3ステップS3aは、複数のアナログ信号HSごとに、第1ステップS1aにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2aにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせることを含む。そのため、例えば上述したようにして、タイミングTaにおいて取得したデジタル信号に相当するデジタル信号の値を好適に取得しやすい。特に、本実施形態では、第1ステップS1aにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、複数のアナログ信号HSのそれぞれに対するサンプリング処理Spを同数回ずつ含む。そのため、上述したように、第1ステップS1aにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2aにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせた値を、タイミングTaにおいて取得されたデジタル信号の値に相当する値として扱うことができる。これにより、複数のアナログ信号HSごとに、タイミングTaにおいて取得したデジタル信号に相当するデジタル信号の値をより容易に取得することができる。
【0047】
図3に示すように、本実施形態の検出ステップSd1において演算部51は、変換ステップScvの後に、今回の検出ステップSd1が、2回目以降の検出ステップSd1か否かを判定する(ステップSj1)。今回の検出ステップSd1が1回目の検出ステップSd1である場合(ステップSj1:NO)、演算部51は、変換ステップScvにおいて得られたデジタル信号に基づいて、回転体であるロータ20の回転位置を算出する演算ステップSca1を実行する。つまり、検出ステップSd1は、演算ステップSca1を含む。本実施形態において1回目の検出ステップSd1とは、電源の供給が停止されていた演算部51に電源が供給され始めてから、演算部51によって最初に実行された検出ステップSd1である。
【0048】
今回の検出ステップSd1が1回目の検出ステップSd1である場合、演算ステップSca1において演算部51は、変換ステップScvにおいて得られたデジタル信号の値を補正することなく用いて、ロータ20の回転位置、すなわち回転角度θを算出する。演算部51がデジタル信号の値から回転角度θを算出する方法は、特に限定されない。演算部51は、例えば、日本国特許第6233532号公報に記載された方法を用いて、回転角度θを算出することができる。本実施形態では、上述したように複数のアナログ信号HSを変換して得られる複数のデジタル信号同士の間にずれが生じることを抑制できるため、当該複数のデジタル信号の値に基づいて算出される回転角度θの精度を向上させることができる。
【0049】
今回の検出ステップSd1が2回目以降の検出ステップSd1である場合(ステップSj1:YES)、演算部51は、変換ステップScvで得られたデジタル信号の値を補正する補正ステップScr1を実行する。補正ステップScr1において演算部51は、第3ステップS3aにおいて得られたデジタル信号の値と、1回前に行われた検出ステップSd1の第3ステップS3aにおいて得られたデジタル信号の値とに基づいて、タイミングTaから第1所定時間tpa後のアナログ信号HSの値に基づいて得られるデジタル信号の推定値Deを算出する。つまり、2回目以降に行われる検出ステップSd1は、第3ステップS3aにおいて得られたデジタル信号の値と、1回前に行われた検出ステップSd1の第3ステップS3aにおいて得られたデジタル信号の値とに基づいて、第1ステップS1aと第2ステップS2aとが切り替わるタイミングTaから第1所定時間tpa後のアナログ信号HSの値に基づいて得られるデジタル信号の推定値Deを算出することを含む。そのため、タイミングTaとは異なるタイミングにおいて取得した場合に相当するデジタル信号の値を取得できる。これにより、任意のタイミングにおけるデジタル信号の値に基づいて、回転体であるロータ20の回転位置を検出することができる。
【0050】
図4に示すように、本実施形態において第1所定時間tpaは、第1ステップS1aと第2ステップS2aとが切り替わるタイミングTaから演算ステップSca1において回転体であるロータ20の回転位置が算出されるまでの時間に等しい。そのため、推定値Deの値を、回転角度θが算出されるタイミングにおいて取得されるデジタル信号の値に相当する値にすることができる。これにより、本実施形態のようにタイミングTaと回転角度θが算出されるタイミングTbとがずれる場合であっても、タイミングTbにおいて取得したデジタル信号に相当する推定値Deを用いて、タイミングTbにおける回転角度θに相当する値を出力することが可能になる。したがって、位置検出装置100から出力される回転角度θの値にタイムラグが生じることを抑制できる。そのため、位置検出装置100の検出精度をより向上できる。なお、第1所定時間tpaは、特に限定されない。
【0051】
本実施形態においてタイミングTbは、回転角度θが算出される時刻であり、かつ、演算ステップSca1が終了するタイミングである。つまり、本実施形態において第1所定時間tpaは、タイミングTaから、演算ステップSca1が終了するまでの間の時間に等しい。本実施形態において第1所定時間tpaは、第2ステップS2aを実行する時間と、第3ステップS3aを実行する時間と、補正ステップScr1を実行する時間と、演算ステップSca1を実行する時間とを足し合わせた時間に等しい。第1所定時間tpaは、例えば、数十マイクロ秒(μs)程度である。第1所定時間tpaは、例えば、1マイクロ秒(μs)以上、100マイクロ秒(μs)以下程度である。
【0052】
図4では、何回目の検出ステップSd1であるかということを、2以上の整数Mを用いて示している。具体的に、検出ステップSd1[M]は、M回目の検出ステップSd1である。タイミングTa[M]は、M回目の検出ステップSd1におけるタイミングTaである。図4においては、M=2である場合の例を図示している。つまり、図4に示す検出ステップSd1[M-1]は、1回目の検出ステップSd1である。2回目以降に行われる検出ステップSd1における補正ステップScr1において演算部51は、以下の式(1)によってデジタル信号の推定値Deを算出する。
【0053】
De=D[M]+(D[M]-D[M-1])/ts×tpa …式(1)
【0054】
式(1)においてD[M]は、M回目の検出ステップSd1の第3ステップS3aにおいて得られるデジタル信号の値である。D[M-1]は、(M-1)回目の検出ステップSd1の第3ステップS3aにおいて得られるデジタル信号の値である。tsは、所定の周期tsである。tpaは、第1所定時間tpaである。補正ステップScr1において演算部51は、複数のアナログ信号HSからそれぞれ得られた各デジタル信号の値を上記の式(1)によって、推定値Deに補正する。
【0055】
式(1)において、(D[M]-D[M-1])/tsは、前回の検出ステップSd1と今回の検出ステップSd1とを含めた期間内において線形近似できるアナログ信号HSをデジタル信号に変換した場合における値の単位時間当たりの変化率である。当該変化率に、第1所定時間tpaを乗じることで、M回目の検出ステップSd1におけるタイミングTaから第1所定時間tpa後までの間に変化するデジタル信号の値を算出できる。当該値をM回目の検出ステップSd1における第3ステップS3aで得られたデジタル信号の値D[M]に足し合わせることで、タイミングTaから第1所定時間tpa後におけるデジタル信号の値に相当する推定値Deを好適に算出することができる。本実施形態では、上述したように、回転角度θが算出されるタイミングTbにおいて取得したデジタル信号の値に相当する値を好適に算出することができ、回転角度θをより好適に精度よく取得できる。
【0056】
図3に示すように、補正ステップScr1を行った後、演算部51は、補正されたデジタル値である推定値Deを用いて、ロータ20の回転位置、すなわち回転角度θを算出する(演算ステップSca1)。2回目以降の検出ステップSd1において演算部51が推定値Deから回転角度θを算出する方法は、1回目の検出ステップSd1において演算部51が回転角度θを算出する方法と同様である。
【0057】
以下、上述した実施形態と異なる実施形態について説明する。以下の各実施形態の説明においては、各実施形態の説明よりも上段において説明した構成と同様の構成については、適宜同一の符号を付すなどにより説明を省略する場合がある。また、各実施形態の説明よりも上段において説明した構成の各部に対応する部分については、同一の名称を付すとともに異なる符号を付して、上述した構成とは異なる点を説明し、上述した構成と同様の点については説明を省略する場合がある。なお、以下の各実施形態において説明を省略した構成としては、矛盾しない範囲内において、各実施形態よりも上段において説明した構成と同様の構成を採用できる。
【0058】
<第2実施形態>
本実施形態において演算部51は、図6のフローチャートに沿って検出ステップSd2を実行する。検出ステップSd2において演算部51は、第1実施形態の検出ステップSd1と同様に変換ステップScvを実行する。変換ステップScvを実行した後、演算部51は、変換ステップScvにおいて得られたデジタル信号の値に基づいてロータ20の回転位置、すなわち回転角度θを算出する演算ステップSca2を実行する。演算ステップSca2は、変換ステップScvの直後に行われる点を除いて、第1実施形態の演算ステップSca1と同様である。
【0059】
本実施形態の検出ステップSd2において演算部51は、演算ステップSca2の後に、今回の検出ステップSd2が、2回目以降の検出ステップSd2か否かを判定する(ステップSj2)。今回の検出ステップSd2が1回目の検出ステップSd2である場合(ステップSj2:NO)、演算部51は、演算ステップSca2において得られた回転角度θを補正せずにそのまま出力する。本実施形態において1回目の検出ステップSd2とは、電源の供給が停止されていた演算部51に電源が供給され始めてから、演算部51によって最初に実行された検出ステップSd2である。
【0060】
今回の検出ステップSd2が2回目以降の検出ステップSd2である場合(ステップSj2:YES)、演算部51は、演算ステップSca2で得られたロータ20の回転位置、すなわち回転角度θの値を補正する補正ステップScr2を実行する。2回目以降の検出ステップSd2の補正ステップScr2において演算部51は、演算ステップSca2において得られた回転角度θと、1回前に行われた検出ステップSd2の演算ステップSca2において得られた回転角度θとに基づいて、第2所定時間tpb後における回転角度θの推定値θeを算出する。つまり、2回目以降に行われる検出ステップSd2は、演算ステップSca2において得られた回転体であるロータ20の回転位置と、1回前に行われた検出ステップSd2の演算ステップSca2において得られたロータ20の回転位置とに基づいて、第2所定時間tpb後におけるロータ20の回転位置の推定値θeを算出することを含む。そのため、タイミングTaとは異なるタイミングにおいてデジタル信号の値を取得した場合に相当するロータ20の回転位置を検出することができる。これにより、任意のタイミングにおけるロータ20の回転位置を検出することができる。
【0061】
2回目以降に行われる検出ステップSd2の補正ステップScr2において演算部51は、以下の式(2)によってデジタル信号の推定値Deを算出する。
【0062】
θe=θ[M]+(θ[M]-θ[M-1])/ts×tpb …式(2)
【0063】
式(1)においてθ[M]は、M回目の検出ステップSd2の演算ステップSca2において得られる回転角度θの値である。θ[M-1]は、(M-1)回目の検出ステップSd2の演算ステップSca2において得られる回転角度θの値である。tsは、所定の周期tsである。tpbは、第2所定時間tpbである。補正ステップScr2において演算部51は、演算ステップSca2において得られた回転角度θの値を上記の式(2)によって、推定値θeに補正する。
【0064】
式(2)において、(θ[M]-θ[M-1])/tsは、前回の検出ステップSd2と今回の検出ステップSd2とを含めた期間内において線形近似できる回転角度θの単位時間当たりの変化率である。当該変化率に、第2所定時間tpbを乗じることで、M回目の検出ステップSd2におけるタイミングTaから第2所定時間tpb後までの間に変化する回転角度θの値を算出できる。当該値をM回目の検出ステップSd2における演算ステップSca2で得られた回転角度θの値θ[M]に足し合わせることで、タイミングTaから第2所定時間tpb後における回転角度θの値に相当する推定値θeを好適に算出することができる。
【0065】
本実施形態において第2所定時間tpbは、第1ステップS1aと第2ステップS2aとが切り替わるタイミングTaから推定値θeが算出されるまでの時間に等しい。そのため、推定値θeが算出されたタイミングにおいて複数のアナログ信号HSのサンプリングを行った場合に相当する回転角度θを、推定値θeとして算出できる。したがって、出力される回転角度θにタイムラグが生じることを抑制でき、回転角度θをより好適に精度よく取得できる。なお、第2所定時間tpbは、特に限定されない。第2所定時間tpbは、例えば、数十マイクロ秒(μs)程度である。第2所定時間tpbは、例えば、1マイクロ秒(μs)以上、100マイクロ秒(μs)以下程度である。
【0066】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。第1ステップにおいて行われる複数回のサンプリング処理は、複数のアナログ信号のそれぞれに対するサンプリング処理を少なくとも1回ずつ含むならば、どのような順番でサンプリング処理が実行されてもよいし、各アナログ信号に対するサンプリング処理を何回ずつ含んでいてもよい。第2ステップは、第1ステップにおいて行われる複数回のサンプリング処理と同様のサンプリング処理が第1ステップとは逆の順番で行われるならば、どのような順番でサンプリング処理が実行されてもよいし、各アナログ信号に対するサンプリング処理を何回ずつ含んでいてもよい。
【0067】
第1ステップおよび第2ステップは、例えば、図7に示す第1ステップS1bおよび第2ステップS2bのような構成であってもよい。図7に示すように、第1ステップS1bにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spおよび第2ステップS2bにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、それぞれ、第1アナログ信号Huに対して行われる第1サンプリング処理Usと、第2アナログ信号Hvに対して行われる第2サンプリング処理Vsと、第3アナログ信号Hwに対して行われる第3サンプリング処理Wsと、を1回ずつ含む。第1ステップS1bにおいては、第2サンプリング処理Vsと第3サンプリング処理Wsと第1サンプリング処理Usとが、この順で連続して実行される。第2ステップS2bにおいては、第1サンプリング処理Usと第3サンプリング処理Wsと第2サンプリング処理Vsとが、この順で連続して実行される。
【0068】
第1ステップおよび第2ステップは、例えば、図8に示す第1ステップS1cおよび第2ステップS2cのような構成であってもよい。図8に示すように、第1ステップS1cにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spおよび第2ステップS2cにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、それぞれ、第1アナログ信号Huに対して行われる第1サンプリング処理Usと、第2アナログ信号Hvに対して行われる第2サンプリング処理Vsと、第3アナログ信号Hwに対して行われる第3サンプリング処理Wsと、を2回ずつ含む。つまり、第1ステップS1cおよび第2ステップS2cは、サンプリング処理Spを6回ずつ含む。第1ステップS1cにおいては、第1サンプリング処理Usと第3サンプリング処理Wsと第2サンプリング処理Vsと第3サンプリング処理Wsと第2サンプリング処理Vsと第1サンプリング処理Usとが、この順で連続して実行される。第2ステップS2cにおいては、第1サンプリング処理Usと第2サンプリング処理Vsと第3サンプリング処理Wsと第2サンプリング処理Vsと第3サンプリング処理Wsと第1サンプリング処理Usとが、この順で連続して実行される。
【0069】
第1ステップおよび第2ステップは、例えば、図9に示す第1ステップS1dおよび第2ステップS2dのような構成であってもよい。図9に示すように、第1ステップS1dにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spおよび第2ステップS2cにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、それぞれ、1回の第1サンプリング処理Usと、2回の第2サンプリング処理Vsと、3回の第3サンプリング処理Wsと、を含む。つまり、図9の例では、第1ステップS1dおよび第2ステップS2dにおいて行われる複数回のサンプリング処理Spは、複数のアナログ信号HSのそれぞれに対するサンプリング処理Spを互いに異なる回数ずつ含む。
【0070】
第1ステップS1dおよび第2ステップS2dにおいて行われる第1サンプリング処理Usの合計回数は2回である。第1ステップS1dおよび第2ステップS2dにおいて行われる第2サンプリング処理Vsの合計回数は4回である。第1ステップS1dおよび第2ステップS2dにおいて行われる第3サンプリング処理Wsの合計回数は6回である。
【0071】
第1ステップS1dにおいては、第1サンプリング処理Usと第3サンプリング処理Wsと第2サンプリング処理Vsと第3サンプリング処理Wsと第2サンプリング処理Vsと第3サンプリング処理Wsとが、この順で連続して実行される。第2ステップS2dにおいては、第3サンプリング処理Wsと第2サンプリング処理Vsと第3サンプリング処理Wsと第2サンプリング処理Vsと第3サンプリング処理Wsと第1サンプリング処理Usとが、この順で連続して実行される。
【0072】
図9の例における第3ステップでは、複数のアナログ信号HSごとに、第1ステップS1dにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2dにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせた値を、各アナログ信号HSに対応するサンプリング処理Spの合計回数で割った値をデジタル信号の値として算出する。これにより、複数のアナログ信号HSのそれぞれについて、タイミングTaにおいて取得されたデジタル信号の値に相当するデジタル信号の値を算出することができる。
【0073】
具体的に、図9の例における第3ステップでは、第1ステップS1dにおけるサンプリング処理Spにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2dにおける第1サンプリング処理Usにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせた値を、第1サンプリング処理Usの合計回数、すなわち2で割った値を、第1アナログ信号Huに対応するデジタル信号の値として算出する。図9の例における第3ステップでは、第1ステップS1dにおける第2サンプリング処理Vsにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2dにおける第2サンプリング処理Vsにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせた値を、第2サンプリング処理Vsの合計回数、すなわち4で割った値を、第2アナログ信号Hvに対応するデジタル信号の値として算出する。図9の例における第3ステップでは、第1ステップS1dにおける第3サンプリング処理Wsにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップS2dにおける第3サンプリング処理Wsにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせた値を、第3サンプリング処理Wsの合計回数、すなわち6で割った値を、第3アナログ信号Hwに対応するデジタル信号の値として算出する。
【0074】
第3ステップにおいてデジタル信号の値を算出する方法は、第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとに基づくならば、特に限定されない。第3ステップにおいて算出されるデジタル信号の値は、複数のアナログ信号ごとに、第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせた値を、第1ステップおよび第2ステップにおいて実行されたサンプリング処理の合計回数で割った値であってもよい。第1ステップにおいて得られるサンプリングデータは、複数回のサンプリングで得られた値の合計値でなく、複数回のサンプリングで得られた複数の値であってもよい。第2ステップにおいて得られるサンプリングデータは、複数回のサンプリングで得られた値の合計値でなく、複数回のサンプリングで得られた複数の値であってもよい。
【0075】
位置検出装置の演算部は、複数のアナログ信号を同時にデジタル信号に変換できてもよい。位置検出方法および位置検出装置によって回転位置が検出される対象は、モータのロータに限られず、回転体であれば特に限定されない。対象となる回転体がモータのロータである場合、当該モータは、どのようなモータであってもよい。モータは、3相以外の多相モータであってもよい。回転体の回転位置を検出する回転センサは、磁気センサに限られず、どのような種類のセンサであってもよい。回転センサは、例えば、光学式のセンサなどであってもよい。本発明の信号変換方法によってデジタル信号に変換されるアナログ信号の数は、2つ以上であれば、特に限定されない。
【0076】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 複数のアナログ信号のそれぞれをデジタル信号に変換する信号変換方法であって、前記アナログ信号の値を少なくとも1回以上サンプリングするサンプリング処理を複数回、順次行う第1ステップと、前記第1ステップの後に続けて行われ、前記サンプリング処理を複数回、順次行う第2ステップと、を含み、前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を少なくとも1回ずつ含み、前記第2ステップにおいては、前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理を前記第1ステップとは逆の順番で行う、信号変換方法。
(2) 前記複数のアナログ信号ごとに、前記第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと前記第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとに基づいてデジタル信号の値を算出する第3ステップを含む、(1)に記載の信号変換方法。
(3) 前記第3ステップは、前記複数のアナログ信号ごとに、前記第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと前記第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせることを含む、(2)に記載の信号変換方法。
(4) 前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を同数回ずつ含む、(2)または(3)に記載の信号変換方法。
(5) 回転体の回転位置を検出する位置検出方法であって、前記回転体の回転位置に応じたアナログ信号を出力可能な複数の回転センサによって、互いに異なる位相を有する複数のアナログ信号を取得することと、前記複数のアナログ信号に基づいて前記回転体の回転位置を検出する検出ステップを所定の周期で行うことと、を含み、前記検出ステップは、前記複数のアナログ信号のそれぞれを(2)から(4)のいずれか一項に記載の信号変換方法によってデジタル信号に変換する変換ステップと、前記変換ステップにおいて得られたデジタル信号に基づいて、前記回転体の回転位置を算出する演算ステップと、を含む、位置検出方法。
(6) 2回目以降に行われる前記検出ステップは、前記第3ステップにおいて得られたデジタル信号の値と、1回前に行われた前記検出ステップの前記第3ステップにおいて得られたデジタル信号の値とに基づいて、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから第1所定時間後の前記アナログ信号の値に基づいて得られるデジタル信号の推定値を算出することを含む、(5)に記載の位置検出方法。
(7) 前記所定の周期をtsとし、前記第1所定時間をtpaとし、M回目の前記検出ステップにおいて得られるデジタル信号の値をD[M]とし、前記デジタル信号の推定値をDeとしたとき、2回目以降に行われる前記検出ステップにおいて、以下の式(1)によって前記デジタル信号の推定値を算出する、(6)に記載の位置検出方法。
De=D[M]+(D[M]-D[M-1])/ts×tpa …式(1)
(8) 前記第1所定時間は、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから前記演算ステップにおいて前記回転体の回転位置が算出されるまでの時間に等しい、(6)または(7)に記載の位置検出方法。
(9) 2回目以降に行われる前記検出ステップは、前記演算ステップにおいて得られた前記回転体の回転位置と、1回前に行われた前記検出ステップの前記演算ステップにおいて得られた前記回転体の回転位置とに基づいて、第2所定時間後における前記回転体の回転位置の推定値を算出することを含む、(5)に記載の位置検出方法。
(10) 前記所定の周期をtsとし、前記第2所定時間をtpbとし、M回目の前記検出ステップにおいて得られる前記回転体の回転位置をθ[M]とし、前記回転体の回転位置の推定値をθeとしたとき、2回目以降に行われる前記検出ステップにおいて、以下の式(2)によって前記回転体の回転位置の推定値を算出する、(9)に記載の位置検出方法。
θe=θ[M]+(θ[M]-θ[M-1])/ts×tpb …式(2)
(11) 前記第2所定時間は、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから前記推定値が算出されるまでの時間に等しい、(9)または(10)に記載の位置検出方法。
(12) 回転体の回転位置を検出する位置検出装置であって、前記回転体の回転位置に応じたアナログ信号であり、かつ、互いに異なる位相を有するアナログ信号を出力可能な複数の回転センサと、前記複数の回転センサから出力された複数のアナログ信号に基づいて前記回転体の回転位置を検出する検出ステップを所定の周期で実行可能な演算部と、を備え、前記検出ステップにおいて前記演算部は、前記複数のアナログ信号のそれぞれをデジタル信号に変換する変換ステップと、前記変換ステップにおいて得られたデジタル信号に基づいて、前記回転体の回転位置を算出する演算ステップと、を実行し、前記変換ステップにおいて前記演算部は、前記アナログ信号の値を少なくとも1回以上サンプリングするサンプリング処理を複数回、順次行う第1ステップと、前記第1ステップの後に続けて行われ、前記サンプリング処理を複数回、順次行う第2ステップと、前記複数のアナログ信号ごとに、前記第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと前記第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとに基づいてデジタル信号の値を算出する第3ステップと、を実行し、前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を少なくとも1回ずつ含み、前記第2ステップにおいて前記演算部は、前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理を前記第1ステップとは逆の順番で行う、位置検出装置。
(13) 前記第3ステップにおいて前記演算部は、前記複数のアナログ信号ごとに、前記第1ステップにおいて得られたサンプリングデータと前記第2ステップにおいて得られたサンプリングデータとを足し合わせる、(12)に記載の位置検出装置。
(14) 前記第1ステップにおいて行われる複数回の前記サンプリング処理は、前記複数のアナログ信号のそれぞれに対する前記サンプリング処理を同数回ずつ含む、(13)に記載の位置検出装置。
(15) 2回目以降に行われる前記検出ステップにおいて前記演算部は、前記第3ステップにおいて得られたデジタル信号の値と、1回前に行われた前記検出ステップの前記第3ステップにおいて得られたデジタル信号の値とに基づいて、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから第1所定時間後の前記アナログ信号の値に基づいて得られるデジタル信号の推定値を算出する、(12)から(14)のいずれか一項に記載の位置検出装置。
(16) 前記第1所定時間は、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから前記演算ステップにおいて前記回転体の回転位置が算出されるまでの時間に等しい、(15)に記載の位置検出装置。
(17) 2回目以降に行われる前記検出ステップにおいて前記演算部は、前記演算ステップにおいて得られた前記回転体の回転位置と、1回前に行われた前記検出ステップの前記演算ステップにおいて得られた前記回転体の回転位置とに基づいて、第2所定時間後における前記回転体の回転位置の推定値を算出する、(12)から(14)のいずれか一項に記載の位置検出装置。
(18) 前記第2所定時間は、前記第1ステップと前記第2ステップとが切り替わるタイミングから前記推定値が算出されるまでの時間に等しい、(17)に記載の位置検出装置。
(19) 前記回転体に設けられたマグネットを備え、前記回転センサは、前記マグネットの磁界を検出可能な磁気センサである、(12)から(18)のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【0077】
以上、本明細書において説明した構成および方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0078】
20…ロータ(回転体)、30…マグネット、40…回転センサ、51…演算部、100…位置検出装置、De,θe…推定値、HS…アナログ信号、S1a,S1b,S1c,S1d…第1ステップ、S2a,S2b,S2c,S2d…第2ステップ、S3a…第3ステップ、Sca1,Sca2…演算ステップ、Scv…変換ステップ、Sd1,Sd2…検出ステップ、Sp…サンプリング処理、Ta…タイミング、tpa…第1所定時間、tpb…第2所定時間、ts…周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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