(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145336
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F15B 11/042 20060101AFI20241004BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20241004BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20241004BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F15B11/042
F15B11/02 C
F15B11/02 D
F15B11/08 A
E02F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057639
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】坂田 淳哉
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB03
2D003AB04
2D003AB05
2D003BA01
2D003BA05
2D003BB02
2D003BB12
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB08
2D003FA02
3H089AA22
3H089AA60
3H089BB10
3H089BB15
3H089BB27
3H089CC08
3H089CC12
3H089DA02
3H089DA03
3H089DA06
3H089DB43
3H089DB75
3H089EE05
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構成の制御弁により安定的な走行操舵性を確保することができる作業機械を提供する。
【解決手段】左右一対の走行操作レバー(332a,332b)が同一方向に異なる操作量で傾倒する時、左右一対の走行操作レバー(332a,332b)のうち、操作量の小さい一方の走行操作レバー(332a,332b)の操作量に基づく方向切換弁(514a,514b)のスプールの開口面積の増加量を減少させる第1制御を実行させる制御装置(520)を備える作業機械。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプから吐出される作動油が流れる左右一対の走行モータと、前記左右一対の走行モータに流れる前記作動油の流量をスプールの開口面積の増減により制御する一対の方向切換弁と、前方又は後方に傾倒させ、操作量に基づいて対応する方向の前記方向切換弁の前記スプールの開口面積を増減させる一対の操作レバーと、を備える作業機械において、前記一対の操作レバーが同一方向に異なる操作量で傾倒する時、前記一対の操作レバーのうち、操作量の小さい一方の操作レバーの操作量に基づく前記スプールの開口面積の増加量を減少させる第1制御を実行させる制御装置を備える作業機械。
【請求項2】
前記第1制御が前記一対の操作レバーの操作量の差分に基づき、前記一方の操作レバーの操作量に基づく前記スプールの開口面積の増加量を減少させる請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
前記第1制御が前記一対の操作レバーの操作量の差分が規定値以下の時、前記第1制御を実行する請求項2記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御装置が前記一対の操作レバーの操作量に基づいて前記油圧ポンプから吐出される作動油の流量を制御する請求項3記載の作業機械。
【請求項5】
前記制御装置が前記一対の操作レバーの操作量の差分に基づき、前記油圧ポンプから吐出される作動油の流量を増加させる第2制御を実行する請求項1から請求項4記載の何れか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行操舵性の優れた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械において、一つの油圧ポンプから油が流入する左右の走行用油圧供給油路に、メータイン絞りを備えた左右の走行用制御弁と左右の圧力補償弁とを配置することで安定的な走行操舵性を確保する油圧ショベルが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
近年油圧ショベルにおいては、製造コストの低減が求められており、各アクチュエータを制御する制御弁においても簡易な構成にすることにより製造コストを低減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造コストを低減する目的で左右の走行用油圧供給油路から圧力補償弁を取り除くことが考えられるが、左右の走行モータに速度差をつけて同時に駆動させる緩旋回操作を作業機械に行わせる場合、速度が速くなるべき外側の走行モータの負荷が上昇することにより、負荷の低くなるべき内側の走行モータに油が流入し左右の走行モータの速度差が小さくなり、作業機械は、十分に曲がることができないという問題が発生する。
【0006】
また上記問題を解消するために左右の走行用油圧供給油路に対してそれぞれ独立した2つのポンプから油を流入させることにより安定的な走行操舵性を確保することができるが、簡易な構成とは言えず製造コストの低減ができない。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、その課題は、簡易な構成の制御弁により安定的な走行操舵性を確保することができる作業機械の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため本発明は、油圧ポンプから吐出される作動油が流れる左右一対の走行モータと、前記左右一対の走行モータに流れる前記作動油の流量をスプールの開口面積の増減により制御する一対の方向切換弁と、前方又は後方に傾倒させ、操作量に基づいて対応する方向の前記方向切換弁の前記スプールの開口面積を増減させる一対の操作レバーと、を備える作業機械において、前記一対の操作レバーが同一方向に異なる操作量で傾倒する時、前記一対の操作レバーのうち、操作量の小さい一方の操作レバーの操作量に基づく前記スプールの開口面積の増加量を減少させる第1制御を実行させる制御装置を備える作業機械。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成の制御弁により安定的な走行操舵性を確保することができる作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの制御システムの模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの制御フローのフローチャート図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る油圧ショベルの制御システムの模式図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る油圧ショベルの制御フローのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る作業機械の代表例としての油圧ショベル100を例に挙げ
図1を参照しつつ詳細に説明する。なお上部旋回体300に作業装置400が配置されている方向を前方としその反対方向を後方とする。
【0012】
油圧ショベル100は、自走可能な下部走行体200と、下部走行体200上に旋回可能に支持された上部旋回体300と、上部旋回体300の前方に上下に回動可能に支持された作業装置400と制御システム500を備えて構成されている。
【0013】
作業装置400は、上部旋回体300の先端部に水平方向に回動するように支持されたスイングポスト410と、スイングポスト410に上下に回動可能に支持されたブーム420と、ブーム420の先端に上下に回動可能に装着されたアーム430と、アーム430の先端に回動可能に装着されたバケット450と、上部旋回体300の下方に設置され、スイングポスト410を水平方向に回動させるスイングシリンダ(図示せず)と、ブーム420の前方かつ下方に設置された、ブーム420を動かすブームシリンダ460と、ブーム420の上方に設置され、アーム430を動かすアームシリンダ470と、アーム430の前方に設置され、バケットリンク440を介してバケット450を動かすバケットシリンダ480により構成されている。
【0014】
下部走行体200は、センターフレーム210とセンターフレーム210に左右対称に対をなし前後方向に延びるサイドフレーム211a,211bを有しており、左側方のサイドフレーム211aの後端には左走行モータ516aにより駆動する駆動輪212aが設置され、前方に向け複数の遊動輪213aが配置されており、そして駆動輪212aと遊動輪213aは、履帯214aが巻装され、右側方のサイドフレーム211bの後端には右走行モータ516bにより駆動する駆動輪212b(図示せず)が設置され、前方に向け複数の遊動輪213b(図示せず)が配置されており、そして駆動輪212bと遊動輪213bは、履帯214bが巻装され、センターフレーム210前方には、排土装置220が装着されている。
【0015】
上部旋回体300は、後端に設置されたカウンタウエイト310と、カウンタウエイト310から前方に延設された機体フレーム320と、機体フレーム320の先端に設置されたスイングポスト410とカウンタウエイト310の間に配置された運転席330と、運転席330の後部に配置された座席331の下方に設置された機関室340から構成されている。
【0016】
運転席330は、操作装置332と、座席331と、座席331の下方の機関室340の前方の壁面から前方に向けて延び機体フレーム320の上方に形成されされた床材333から形成される。
【0017】
機関室340には、エンジン(図示せず)と、エンジンにより駆動し、ブームシリンダ460やアームシリンダ470等の油圧ショベル100を動かす複数のアクチュエータに作動油を圧送する可変容量ポンプ511と、床材333の下方に配置され、複数のアクチュエータを制御するコントロールバルブ514と、コントロールバルブ514に入力される制御信号圧(パイロット圧)及び可変容量ポンプ511の流量を制御するレギュレータ511aに入力されるパイロット圧の1次圧を生成するパイロットポンプ512等の複数の機器が配置されている。
【0018】
操作装置332は、操作方向および操作量を電気信号として出力することにより、制御装置520を介して各アクチュエータを操作することができる。
【0019】
操作装置332は、運転席330の前方に左右に列設され、床材333から突設された左走行レバー332a及び右走行レバー332bと、座席331の左右に配置されたコンソールボックスに立設され、作業機400の操作または旋回操作を行う左操作レバー332cと、右操作レバー332d等から構成されている。
【0020】
左走行レバー332a,右走行レバー332bは、前後に操作レバーを傾倒させることにより、下部走行体200を排土装置220の設置されている方向、又はその逆側の方向に進むように、左走行モータ516a,右走行モータ516bに回転させる。
【0021】
続いて、
図2を用いて油圧ショベル100の制御システム500について説明する。
【0022】
制御システム500は、油圧回路510と、制御装置520と、操作装置332から構成されている。
【0023】
油圧回路510は、可変容量ポンプ511から延設される高圧の作動油配管を実線で表し、パイロットポンプ512から延設される低圧の作動油(パイロット圧)配管を点線で表す。
【0024】
油圧回路510は、可変容量ポンプ511から延びるセンターバイパス流路513と、センターバイパス流路513から延びる油路とそれぞれ接続する各アクチュエータを制御する方向切換弁から構成されるコントールバルブ514からなり、油圧回路510は、方向切換弁のスプールの摺動位置にかかわらずセンターバイパス流路513からタンク515につながる流路は形成されないいわゆるクローズドセンター回路であるが、これに限定されるものではない。
【0025】
コントールバルブ514は、左走行モータ516aを制御する方向切換弁514aと、右走行モータ516bを制御する方向切換弁514bと、複数の他のアクチュエータをそれぞれ制御する複数の他の方向切換弁からなり、複数の他のアクチュエータと複数の他の方向切換弁については、油圧回路510には、記載を省略している。
【0026】
方向切換弁514aのパイロット圧の入力ポート514a1,514a2には、左走行レバー332aの操作の方向と操作量(傾倒量)に応じて電磁比例弁517a1,電磁比例弁517a2から減圧したパイロット圧が入力されることによって方向切換弁514aのスプールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油が左走行モータ516aに流れる。
【0027】
左走行レバー332aを前方に傾倒させ操作させた場合、入力ポート514a1にパイロット圧が入力され、左走行モータ516aは前方方向に向けて回転する。
【0028】
左走行レバー332aを後方に傾倒させ操作させた場合、電磁比例弁514a2にパイロット圧が入力され、左走行モータ516aは後方方向に向けて回転する。
【0029】
方向切換弁514bのパイロット圧の入力ポート514b1,514b2には、右走行レバー332bの操作の方向と操作量に応じて電磁比例弁518b1,電磁比例弁518b2から減圧したパイロット圧が入力されることによって方向切換弁514bのスプールが摺動し、対応するスプールの開口量に応じた油が右走行モータ516bに流れる。
【0030】
右走行レバー332bを前方に傾倒させ操作した場合、入力ポート514b1にパイロット圧が入力され、左走行モータ516bは前方方向に向けて回転する。
【0031】
右走行レバー332bを後方に傾倒させ操作した場合、入力ポート514b2にパイロット圧が入力され、左走行モータ516bは後方方向に向けて回転する。
【0032】
油圧回路510に油を供給する可変容量ポンプ511は、操作装置332の操作量に応じて電磁比例弁517cによって減圧されたパイロット圧をレギュレータ511aに入力することによって、作動油の流量を制御する。
【0033】
つまり操作装置332の操作量の減少に伴い、可変容量ポンプ511の流量は減少し、操作装置332の操作量の増加に伴い可変容量ポンプ511の流量は増加する。
【0034】
制御装置520は、ECU(電子制御ユニット)であり、デジタル入力信号の信号レベルの変換を行う入力バッファ及びアナログ入力信号のデジタル変換を行うADコンバータからなる信号入力部と、各種入力信号から制御量の演算を行うマイコンからなる演算部521と、マイコンの出力信号に従いアクチュエータを駆動させる駆動信号の形態に変換させる出力ドライバーからなる信号出力部等から構成される。
【0035】
制御装置520の信号入力部に入力される信号は、制御装置520に向かう矢印が先端にある一点鎖線で表現され、操作装置332から検出される信号である。
【0036】
制御装置520の信号出力部から出力される信号は、電磁比例弁517a1,電磁比例弁517a2、電磁比例弁517b1、電磁比例弁517b2及び電磁比例弁517cに向けて出力される。
【0037】
演算部521は、ポンプ流量演算部522と、スプール開口面積演算部523と、走行操作量補正演算部524から構成されている。
【0038】
ポンプ流量演算部522は、制御装置520の信号入力部に入力された操作装置332の操作量から可変容量ポンプ511に要求する油の流量を演算する。
【0039】
左走行レバー332a、右走行レバー332b、左操作レバー332c及び右操作レバー332d等の操作量から可変容量ポンプ511に要求する油の流量を演算する。
【0040】
信号出力部は、ポンプ要求流量演算部522の演算結果に基づき、電磁比例弁51
7cに信号を出力する。
【0041】
スプール開口面積演算部523は、制御装置520の信号入力部に入力された操作装置332の操作量から対応するコントロールバルブ514の方向切換弁のスプールの開口量を演算する。
【0042】
左走行レバー332aを前方方向に傾倒させ操作した場合、その操作量に相当する信号が、制御装置520の信号入力部に入力され、スプール開口面積演算部523は、操作量に応じた左走行モータ516aを前方方向に回転させる方向切換弁514aのスプールの開口量を演算する。
【0043】
信号出力部がスプール開口面積演算部523の演算結果に基づき電磁比例弁517a1に信号を出力することにより方向切換弁514aのスプールは摺動し、スプールの開口量に応じた油が流入する左走行モータ516aは、前方方向に回転し、油圧ショベル100は、右に旋回する。
【0044】
左走行レバー332aと右走行レバー332bを同時に、前方方向に同量傾倒させ操作した場合、その操作量に相当する信号が、制御装置520の信号入力部に入力される。
【0045】
スプール開口面積演算部523は、操作量に応じた左走行モータ516aを前方方向に回転させる方向切換弁514aのスプールの開口量と操作量に応じた右走行モータ516bを前方方向に回転させる方向切換弁514bのスプールの開口量を演算する。ここで、スプール開口面積演算部523によって演算される2つのスプールの開口量は操作量が同じであることから同じになる。
【0046】
信号出力部は、スプール開口面積演算部523の演算結果に基づき電磁比例弁517a1と電磁比例弁517b1に同量の信号を出力する。
【0047】
方向切換弁514aと方向切換弁514bのスプールは同量摺動し、これらのスプールの開口量に応じた同量の油が左走行モータ516aと走行モータ516bに流れ、走行モータ516aと右走行モータ516bは、前方方向に同じ速度で回転し、油圧ショベル100は、直進する。
【0048】
左走行レバー332aと右走行レバー332bを同時に前方に傾倒させ操作し、左走行レバー332aを右走行レバー332bより大きく傾倒させ操作した場合、走行操作量補正演算部524は、操作量の小さい右走行レバー332bの操作量をより小さな操作量とする補正操作量を演算する。
【0049】
補正操作量は、左走行レバー332aの操作量から右走行レバー332bの操作量を減じた値を右走行レバー332bの操作量から減じた値として演算される。
【0050】
ここで、走行レバーを前方に向けて最大ストロークまで傾倒させた操作量を100%として、中立位置を0%とした場合。左走行レバー332aの操作量と右走行レバー332bの操作量の差が50%より大きい場合は、操作量補正演算部524は、補正操作量を演算せず、スプール開口面積演算部523が右走行レバー332bの操作量に基づき方向切換弁514bのスプールの開口量を演算し、信号出力部は、これらの演算結果に基づき電磁比例弁517b1に信号を出力する。
【0051】
また補正操作量の演算方法は、特に上記の実施態様に限定されるものでなく、例えば右走行レバー332bの操作量から、左走行レバー332aの操作量から右走行レバー332bの操作量を減じた値からマップで決定される値を減じて計算してもよい。
【0052】
スプール開口面積演算部523は、操作量に応じた左走行モータ516aを前方方向に回転させる方向切換弁514aのスプールの開口量と補正傾倒量に応じた右走行モータ516bを前方方向に回転させる方向切換弁514bのスプールの開口量を演算する。すなわち方向切換弁514bのスプールの開口量は、補正前の操作量で演算されるスプールの開口量より小さいスプールの開口量として演算される。
【0053】
信号出力部は、スプール開口面積演算部523の演算結果に基づき電磁比例弁517a1と電磁比例弁517b1に信号を出力する。
【0054】
方向切換弁514aと方向切換弁514bのスプールは摺動し、これらのスプールの開口量に応じた油が左走行モータ516aと走行モータ516bに流れ、走行モータ516aは、右走行モータ516bに対して、早い速度で回転し、油圧ショベル100は、右方向に緩旋回を実施する。
【0055】
右走行モータ516bには、操作量の小さい右走行レバー332bの操作量をより小さな操作量とする補正操作量に基づく油量が流入していることから、旋回時、外側にある左走行モータ516aの負荷上昇により、左走行モータ516aに流れるべき油の一部が右走行モータ516bに流れたとしても左走行モータ516aと右走行モータ516bに流れるの油量の差は維持できるため、左走行モータ516aと右走行モータ516bの速度差は、維持できる。
【0056】
また可変容量ポンプ511は、左走行レバー332aと右走行レバー332bの操作量に基づき吐出量を増やすことができることから、左走行モータ516aと右走行モータ516bの速度差を大きくすることができる。
【0057】
これらの構成によれば、簡易な構成の制御弁により安定的な走行操舵性を確保することができる。
【0058】
続いて
図3を用いて制御フローについて説明する。
図3は制御方法に係るフローチャートである。
【0059】
左走行レバー332aと右走行レバー332bを同時に中立位置から一方向に傾倒させる走行操作を開始する。(S1)
【0060】
制御装置520が左走行レバー332aと右走行レバー332bの傾倒量の差が、最大ストロークまで一方に傾倒させた操作量を100%として、中立位置を0%とした場合に50%以下の特定条件に該当する場合(S2:YES)、制御装置520は、左走行レバー332a又は右走行レバー332bのうち操作量の小さい方の操作レバーの操作量から操作量の差を減じた操作量に基づき、操作量の小さい方の操作レバーに対応する走行モータの速度(対応する方向切換弁のスプールの開口量)を制御する第1制御を実行する。又他方の走行モータの速度(他方の方向切換弁のスプールの開口量)は、他方の走行レバーの操作量に基づき制御される。(S3)
【0061】
制御装置520が左走行レバー332aと右走行レバー332bの操作量の差が、特定条件に該当しない場合(S2:NO)、左走行レバー332a及び右走行レバー332bの操作量に応じて対応する走行モータの速度(対応する方向切換弁のスプールの開口量)を制御する定常制御を実行する。(S6)
【0062】
走行レバー332aと右走行レバー332bの操作量の差が特定条件に該当しなくなった場合(S4)、第1制御を停止する。(S5)そして定常制御を実行する。(S6)
【0063】
制御装置500は、上記ステップS1~S6の処理を繰り返して実行する。
図3に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0064】
続いて、
図4を用いて、本発明の他の実施形態について説明する。
【0065】
図4の他の実施形態は、
図2の実施形態と発明の効果に差異がないことから
図2の実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0066】
図4の他の実施形態の演算部521は、
図2の他の実施形態のポンプ流量演算部522と、スプール開口面積演算部523と、走行操作量補正演算部524に加えて、ポンプ流量補正演算部525を有している。
【0067】
ポンプ流量補正演算部525は、可変容量ポンプ511に要求する油の流量の基準値である操作装置332の操作量を補正する補正操作量を左走行レバー332aと右走行レバー332bの操作量の差分から演算する。
【0068】
補正操作量は、左走行レバー332aと右走行レバー332bの操作量の差分に係数を乗じることにより算出するが、操作量の差分に対して設定したマップから算出してもよい。
【0069】
ポンプ流量補正演算部525は、左走行レバー332a、右走行レバー332b、左操作レバー332c及び右操作レバー332d等の操作量に補正操作量を加えた値から可変容量ポンプ511に要求する油の流量を演算する。
【0070】
これらの構成によれば、左走行モータ516aと右走行モータ516bの速度差を大きくすることができることから、簡易な構成の制御弁により安定的な走行操舵性を確保することができる。
【0071】
続いて
図5を用いて他の実施形態についての制御フローについて説明する。
図5は他の実施形態についての制御方法に係るフローチャートである。
【0072】
左走行レバー332aと右走行レバー332bを同時に中立位置から一方向に傾倒させる走行操作を開始する。(S6)
【0073】
制御装置520が左走行レバー332aと右走行レバー332bの操作量の差が、特定条件に該当する場合(S7:YES)、制御装置520は、第1制御と共に、左走行レバー332aと右走行レバー332bの操作量の差分により、可変容量ポンプ511の吐出流量を増加させる第2制御を実行する。又他方の走行モータの速度(他方の方向切換弁のスプールの開口量)は、他方の走行レバーの操作量に基づき制御される。(S8)
【0074】
制御装置520が左走行レバー332aと右走行レバー332bの操作量の差が、特定条件に該当しない場合(S9:NO)、左走行レバー332a及び右走行レバー332bの操作量に応じて対応する走行モータの速度(対応する方向切換弁のスプールの開口量)を制御する定常制御を実行する。(S11)
【0075】
走行レバー332aと右走行レバー332bの操作量の差が特定条件に該当しなくなった場合(S9)、第1制御及び第2制御を停止する。(S10)そして定常制御を実行する。(S11)
【0076】
制御装置500は、上記ステップS6~S11の処理を繰り返して実行する。
図3に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0077】
上述の本実施形態及び他の実施形態に係る作業機械は、以下のように特定することができる。
【0078】
〈付記1〉油圧ポンプから吐出される作動油が流れる左右一対の走行モータと、前記左右一対の走行モータに流れる前記作動油の流量をスプールの開口面積の増減により制御する一対の方向切換弁と、前方又は後方に傾倒させ、操作量に基づいて対応する方向の前記方向切換弁の前記スプールの開口面積を増減させる一対の操作レバーと、を備える作業機械において、前記一対の操作レバーが同一方向に異なる操作量で傾倒する時、前記一対の操作レバーのうち、操作量の小さい一方の操作レバーの操作量に基づく前記スプールの開口面積の増加量を減少させる第1制御を実行させる制御装置を備える作業機械。
【0079】
〈付記2〉前記第1制御が前記一対の操作レバーの操作量の差分に基づき、前記一方の操作レバーの操作量に基づく前記スプールの開口面積の増加量を減少させる付記1記載の作業機械。
【0080】
〈付記3〉前記第1制御が前記一対の操作レバーの操作量の差分が規定値以下の時、前記第1制御を実行する付記1又は付記2記載の作業機械。
【0081】
〈付記4〉前記制御装置が前記一対の操作レバーの操作量に基づいて前記油圧ポンプから吐出される作動油の流量を制御する付記1から付記3記載の何れか1項に記載の作業機械。
【0082】
〈付記5〉前記制御装置が前記一対の操作レバーの操作量の差分に基づき、前記油圧ポンプから吐出される作動油の流量を増加させる第2制御を実行する付記1から付記4記載の何れか1項に記載の作業機械。
【0083】
さらに変形例として、油圧回路510は、クローズドセンター回路に替えて、センターバイパス流路がタンク515と連通するオープンセンター回路であってもよい。
【0084】
油圧回路510がオープンセンター回路である場合、可変容量ポンプ511は、ポジティブコントロールもしくは、ネガティブコントロール制御により、操作装置の操作量に応じて、吐出流量を制御される。
【0085】
上記で説明した他の実施形態、変形例又は実施形態で説明した種々の構成は、適宜組み合わせて採用可能である。
【0086】
以上では、作業機械として、油圧ショベルを例に挙げて説明したが、作業機械は油圧ショベルに限定されず、ホ
イルローダーや、コンパクトトラックローダなどの他の作業機械であってもよい。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で拡張又は、変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、作業機械に関するものであり産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0089】
100 油圧ショベル(作業機械)332a 左走行レバー(操作レバー)332b 右走行レバー(操作レバー)511 可変容量ポンプ(油圧ポンプ)514a 方向切換弁514b 方向切換弁516a 左走行モータ(走行モータ)516b 右走行モータ(走行モータ)520 制御装置