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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145339
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】貯蔵設備
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/34 20060101AFI20241004BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20241004BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G21F9/34 Z
G21F9/36 541A
G21F3/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057645
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】定木 啓
(72)【発明者】
【氏名】藤原 寛明
(72)【発明者】
【氏名】隈元 一善
(72)【発明者】
【氏名】山中 智弘
(72)【発明者】
【氏名】柳田 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 郁
(72)【発明者】
【氏名】杉本 夏子
(57)【要約】
【課題】建屋を簡素化する。
【解決手段】貯蔵設備100は、第1の壁(上壁112)と、第1の壁(上壁112)と略平行に設けられた第2の壁(底壁114)と、第2の壁(底壁114)から立設し、頂部118aが第1の壁(上壁112)と離隔する第3の壁(第1の側壁118)と、第1の壁(上壁112)、第2の壁(底壁114)、および、第3の壁(第1の側壁118)によって区画され、放射性物質を貯蔵する貯蔵室SRと、第1の壁(上壁112)のうち、貯蔵室SRの外部に位置する箇所から立設し、頂部170aが第3の壁(第1の側壁118)の頂部118aよりも第2の壁(底壁114)側に位置し、第3の壁(第1の側壁118)と対向し、第1の壁(上壁112)側から第2の壁(底壁114)側に向かって第3の壁(第1の側壁118)側に傾斜した対向面172とを有する遮蔽壁170と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の壁と、
前記第1の壁と略平行に設けられた第2の壁と、
前記第2の壁から立設し、頂部が前記第1の壁と離隔する第3の壁と、
前記第1の壁、前記第2の壁、および、前記第3の壁によって区画され、放射性物質を貯蔵する貯蔵室と、
前記第1の壁のうち、前記貯蔵室の外部に位置する箇所から立設し、頂部が前記第3の壁の頂部よりも前記第2の壁側に位置し、前記第3の壁と対向し、前記第1の壁側から前記第2の壁側に向かって前記第3の壁側に傾斜した対向面とを有する遮蔽壁と、
を備える、貯蔵設備。
【請求項2】
前記遮蔽壁の前記頂部の縁は、外方に凸となる曲面形状を有する、請求項1に記載の貯蔵設備。
【請求項3】
前記第3の壁の前記頂部の縁は、外方に凸となる曲面形状を有する、請求項1または2に記載の貯蔵設備。
【請求項4】
前記第1の壁は、前記第2の壁の上方に設けられ、
前記第3の壁は、前記第2の壁から上方に立設し、
前記遮蔽壁は、前記第1の壁から下方に立設し、
前記貯蔵室内の外気は、前記第1の壁と前記第3の壁の頂部との間の空隙から前記貯蔵室の外に排気される、請求項1または2に記載の貯蔵設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、貯蔵設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電プラント等で発生する廃液等の放射性廃棄物に対し、ガラス固化処理が施されている。ガラス固化処理は、放射性廃棄物をガラスとともに溶融した後、冷却してガラス固化体とする処理である。ガラス固化体は、内部に貯蔵室を有するコンクリート製の建屋を備えた貯蔵設備に貯蔵される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-166092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の放射性物質を貯蔵する貯蔵設備において、建屋を簡素化する技術の開発が希求されている。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑み、建屋を簡素化することが可能な貯蔵設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る貯蔵設備は、第1の壁と、第1の壁と略平行に設けられた第2の壁と、第2の壁から立設し、頂部が第1の壁と離隔する第3の壁と、第1の壁、第2の壁、および、第3の壁によって区画され、放射性物質を貯蔵する貯蔵室と、第1の壁のうち、貯蔵室の外部に位置する箇所から立設し、頂部が第3の壁の頂部よりも第2の壁側に位置し、第3の壁と対向し、第1の壁側から第2の壁側に向かって第3の壁側に傾斜した対向面とを有する遮蔽壁と、を備える。
【0007】
また、遮蔽壁の頂部の縁は、外方に凸となる曲面形状を有してもよい。
【0008】
また、第3の壁の頂部の縁は、外方に凸となる曲面形状を有してもよい。
【0009】
また、第1の壁は、第2の壁の上方に設けられ、第3の壁は、第2の壁から上方に立設し、遮蔽壁は、第1の壁から下方に立設し、貯蔵室内の外気は、第1の壁と第3の壁の頂部との間の空隙から貯蔵室の外に排気されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、建屋を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る貯蔵設備の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、本実施形態に係る遮蔽壁を説明する図である。
図3図3は、本実施形態に係る遮蔽壁を説明する図である。
図4図4は、従来の貯蔵設備を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
[貯蔵設備100]
図1は、本実施形態に係る貯蔵設備100の概略構成を示す断面図である。貯蔵設備100は、例えば、放射性物質を貯蔵する。放射性物質は、例えば、ガラス固化体である。ガラス固化体は、放射性廃棄物をガラスとともに溶融した後、冷却して固化したものである。また、本実施形態に係る貯蔵設備100は、内部に外気を通過させることで、放射性物質を空冷する。
【0014】
図1に示すように、貯蔵設備100は、建屋110と、収納管210とを備える。図1では、垂直に交わるX軸(水平方向)、Y軸(水平方向)、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。
【0015】
建屋110は、内部に貯蔵室SRを有するコンクリート建造物である。建屋110は、下部が地中に埋設されるように建造される。
【0016】
建屋110は、上壁112と、底壁114と、第1の側壁116、118と、2つの第2の側壁120と、下部プレナム板130と、上部プレナム板132と、通風管140と、遮蔽壁150と、突出部160と、上流外壁162と、遮蔽壁170と、床部180と、下流外壁182、184とを備える。
【0017】
上壁112(第1の壁、第2の壁)は、略水平方向(図1中、X方向およびY方向)に延在する壁である。上壁112は、例えば、建屋110の周囲の地面と略同一の高さに設置される。
【0018】
底壁114(第1の壁、第2の壁)は、上壁112の下方に設けられる。底壁114は、略水平方向に延在する壁である。底壁114は、上壁112と略平行に設けられる。
【0019】
第1の側壁116、118は、略鉛直方向(図1中、Z方向およびY方向)に延在する壁である。
【0020】
第1の側壁116(第3の壁)は、上壁112から略鉛直下方に立設する。第1の側壁116の頂部116aは、底壁114と離隔する。頂部116aと底壁114との間には、空隙116bが形成される。
【0021】
第1の側壁118(第3の壁)は、底壁114から略鉛直上方に立設する。第1の側壁118の頂部118aは、上壁112と離隔する。頂部118aと上壁112との間には、空隙118bが形成される。
【0022】
第2の側壁120は、略鉛直方向(図1中、Z方向およびX方向)に延在する壁である。第2の側壁120の上端部は、上壁112に接続される。第2の側壁120の下端部は、底壁114に接続される。
【0023】
上壁112、底壁114、第1の側壁116、118、および、第2の側壁120によって区画された空間が貯蔵室SRとして機能する。
【0024】
下部プレナム板130は、貯蔵室SRに設けられる。下部プレナム板130は、略水平方向(図1中、X方向およびY方向)に延在する板である。下部プレナム板130は、第1の側壁116、118、第2の側壁120に固定される。下部プレナム板130と底壁114との間には、下部プレナム部BPが形成される。下部プレナム部BPは、貯蔵室SRにおける最下部に設けられる空間である。下部プレナム部BPには、空隙116bが連通される。
【0025】
上部プレナム板132は、貯蔵室SRにおける下部プレナム板130の略鉛直上方に設けられる。上部プレナム板132は、略水平方向(図1中、X方向およびY方向)に延在する板である。上部プレナム板132は、下部プレナム板130と略平行に設けられる。上部プレナム板132は、第1の側壁116、118、第2の側壁120に固定される。上部プレナム板132と上壁112との間には、上部プレナム部UPが形成される。上部プレナム部UPは、貯蔵室SRにおける最上部に設けられる空間である。上部プレナム部UPには、空隙118bが連通される。
【0026】
通風管140は、円筒形状の直管である。通風管140は、軸方向が略鉛直方向となるように、下部プレナム板130および上部プレナム板132を貫通し、下部プレナム板130および上部プレナム板132によって支持される。通風管140の上端に形成された開口は、上部プレナム部UPに配され、通風管140の下端に形成された開口は、下部プレナム部BPに配される。通風管140は、下部プレナム部BPと上部プレナム部UPとを連通する。通風管140は、例えば、図1中、X方向に20本、Y方向に7本、合計140本、配される。
【0027】
収納管210は、円筒形状の直管である。収納管210の下端は封止されており、収納管210の内部にはガラス固化体が収納される。収納管210の上端は、不図示のプラグによって封止される。収納管210の外径は、通風管140の内径よりも小さい。収納管210は、通風管140内に設けられるように、上壁112に垂下される。したがって、通風管140と収納管210との間に空間が形成される。
【0028】
遮蔽壁150は、底壁114における貯蔵室SRの外部に位置する箇所から略鉛直上方に立設する壁である。遮蔽壁150は、第1の側壁116と対向する対向面152を有する。遮蔽壁150の対向面152と、第1の側壁116との間には、流路R3が形成される。流路R3は、空隙116bを通じて、下部プレナム部BPに連通される。遮蔽壁150の頂部150aは、第1の側壁116の頂部116aよりも上方に位置する。
【0029】
突出部160は、第1の側壁116から貯蔵室SRの外部に突出する。突出部160の下面160aの一部は、遮蔽壁150の頂部150aと対向する。突出部160の下面160aと遮蔽壁150の頂部150aとの間に形成される流路R2は、流路R3に連続する。突出部160の突出面160bは、略鉛直方向(図1中、Z方向およびY方向)に延在する面である。突出面160bは、上流外壁162と対向する。
【0030】
上流外壁162は、遮蔽壁150の頂部150aから略鉛直上方に延在した壁である。上流外壁162と、突出部160の突出面160bとの間に流路R1が形成される。また、流路R1は、流路R2に連続する。流路R1は、上流外壁162に形成された入口開口162aに連通される。
【0031】
流路R1と、流路R2とは、略直角に交差し、流路R2と流路R3とは、略直角に交差する。つまり、上流外壁162、突出部160、遮蔽壁150、および、第1の側壁116によってラビリンス構造が形成される。ラビリンス構造は、外気を蛇行させて通過させるが、直進する放射線を遮断する構造である。
【0032】
遮蔽壁170は、上壁112における貯蔵室SRの外部に位置する箇所から略鉛直下方に立設する壁である。遮蔽壁170は、第1の側壁118と対向する対向面172を有する。遮蔽壁170の対向面172と、第1の側壁118との間には、流路R4が形成される。流路R4は、空隙118bを通じて、上部プレナム部UPに連通される。遮蔽壁170の頂部170aは、第1の側壁118の頂部118aよりも下方に位置する。
【0033】
床部180は、第1の側壁118から貯蔵室SRの外部に延在し、下流外壁182に接続される。床部180は、略水平方向に延在する。床部180の上面180aの一部は、遮蔽壁170の頂部170aと対向する。床部180の上面180aと遮蔽壁170の頂部170aとの間に形成される流路R5は、流路R4に連続する。
【0034】
下流外壁182は、略鉛直方向(図1中、Z方向およびY方向)に延在した壁である。下流外壁184は、上壁112の上面における遮蔽壁170の設置箇所に対応する箇所から略鉛直上方に立設する壁である。下流外壁182と、下流外壁184とは、略平行に設けられる。下流外壁182と下流外壁184との間に流路R6が形成される。流路R6は、流路R5に連続する。流路R5は、下流外壁182に形成された出口開口182aに連通される。
【0035】
流路R4と、流路R5とは、略直角に交差し、流路R5と流路R6とは、略直角に交差する。つまり、第1の側壁118、遮蔽壁170、床部180、および、下流外壁182によってラビリンス構造が形成される。
【0036】
続いて、貯蔵設備100内における外気の流れについて説明する。入口開口162aから供給された外気は、流路R1、流路R2、流路R3を通過し、空隙116bを通じて下部プレナム部BPに供給される。下部プレナム部BPに供給された外気は、通風管140の下端に形成された開口を通じて、通風管140内を通過し、通風管140の上端に形成された開口を通じて、上部プレナム部UPに排気される。外気は、通風管140を通過する過程で、収納管210内のガラス固化体と熱交換される。これにより、外気が加熱され、ガラス固化体が冷却される。上部プレナム部UPに排気された、加熱された外気は、空隙118bを通じて、流路R4に排気される。そして、加熱された外気は、流路R5、流路R6を通過し、出口開口182aを通じて、貯蔵設備100外へ排気される。
【0037】
[遮蔽壁150、170]
続いて、本実施形態に係る遮蔽壁150、170について詳述する。
【0038】
図2は、本実施形態に係る遮蔽壁150を説明する図である。図3は、本実施形態に係る遮蔽壁170を説明する図である。図4は、従来の貯蔵設備10を説明する図である。
【0039】
図2に示すように、遮蔽壁150の対向面152は、第1の側壁116の外側の面116cと対向する。また、本実施形態において、対向面152は、底壁114側から上壁112側に向かって第1の側壁116側に傾斜する。底壁114と対向面152との為す角αは、例えば、88度である。つまり、対向面152は、第1の側壁116側に、例えば、2度傾斜している。例えば、遮蔽壁150は、対向面152が第1の側壁116側に傾斜するように、コンクリート等によって形成されてもよい。また、遮蔽壁150における、第1の側壁116の面116cと対向する面に、遮蔽壁150とは別部材の傾斜部材を設けることにより、対向面152を形成してもよい。つまり、対向面152は、傾斜部材によって構成されてもよい。傾斜部材は、放射線を反射する機能を有する材料(例えば、ステンレス鋼等の金属)で構成されてもよい。傾斜部材によって対向面152を構成することにより、対向面152を遮蔽壁150の一部として形成する場合と比較して、対向面152の建設工事の負担を軽減することができる。また、傾斜部材によって対向面152を構成することにより、対向面152の傾斜角を容易に調整することが可能となる。
【0040】
貯蔵室SR内に設置された収納管210内のガラス固化体から放射される放射線は、第1の側壁116によって概ね遮蔽される。しかし、外気の流通部となる空隙116bが設けられるため、空隙116bを通じて、下部プレナム部BPから貯蔵室SR外へ放射線が漏洩する。このため、遮蔽壁150が設けられ、遮蔽壁150の対向面152によって漏出した放射線が下部プレナム部BP側に反射される。
【0041】
また、上記のように、対向面152は、底壁114側から上壁112側に向かって第1の側壁116側に傾斜する。これにより、空隙116bから漏出した放射線であって、対向面152によって反射される放射線が、底壁114側(下方)へ向かう確率を向上させることができる。したがって、対向面152と第1の側壁116との間で複数回反射される放射線を、徐々に空隙116bへ向かわせることができ、最終的に下部プレナム部BP側に反射させることが可能となる。このため、遮蔽壁150は、下部プレナム部BPから外部への放射線の漏出を抑制することが可能となる。
【0042】
また、上記のように、本実施形態に係る貯蔵設備100では、遮蔽壁150および第1の側壁116によってラビリンス構造が形成される。
【0043】
一方、図4に示すように、従来の貯蔵設備10では、遮蔽壁50および第1の側壁116によってラビリンス構造が形成されない。したがって、従来の貯蔵設備10では、空隙116bから外部への放射線の漏出を抑制するために、空隙116bにルーバ52が設置されていた。このため、従来の貯蔵設備10では、ルーバ52による流路断面積の急激な増加および減少に伴う圧力損失を防止するために、ルーバ52の設置箇所の上流側に、なだらかに流路断面積を変化させる構造体54を別途設ける必要があった。したがって、従来の貯蔵設備10は、構造体54の分、遮蔽構造が複雑になってしまっていた。
【0044】
これに対し、図2に示すように、本実施形態に係る貯蔵設備100では、遮蔽壁150および第1の側壁116によってラビリンス構造を構成することにより、ルーバ52を省略することができる。このため、本実施形態に係る貯蔵設備100では、構造体54も省略することができ、貯蔵室SRの上流側の遮蔽構造を簡素化することが可能となる。
【0045】
また、遮蔽壁150の頂部150aの縁150b、第1の側壁116の頂部116aの縁116d、突出部160の下面160aの縁(突出面160bの縁)は、外方に凸となる曲面形状を有する。遮蔽壁150の頂部150aと上流外壁162との境界、遮蔽壁150の対向面152と底壁114との境界、突出部160の下面160aと第1の側壁116の面116cとの境界は、内方に凹となる曲面形状を有する。
【0046】
これにより、本実施形態に係る貯蔵設備100では、流路R1、流路R2、および、流路R3を通過し、空隙116bを通じて下部プレナム部BPに供給される外気が受ける流路抵抗を低下させることができる。したがって、従来、流路R1、流路R2、流路R3に設けられていた、図4に示す整流板60を省略しても、本実施形態に係る貯蔵設備100は、外気を効率よく貯蔵室SRに供給することが可能となる。このため、本実施形態に係る貯蔵設備100は、外気による収納管210の冷却効果を向上させることができる。
【0047】
また、図3に示すように、遮蔽壁170の対向面172は、第1の側壁118の外側の面118cと対向する。また、本実施形態において、対向面172は、上壁112側から底壁114側に向かって第1の側壁118側に傾斜する。上壁112と対向面172との為す角βは、例えば、88度である。つまり、対向面172は、第1の側壁118側に、例えば、2度傾斜している。上記対向面152と同様に、例えば、遮蔽壁170は、対向面172が第1の側壁118側に傾斜するように、コンクリート等によって形成されてもよい。また、遮蔽壁170における、第1の側壁118の面118cと対向する面に、遮蔽壁170とは別部材の傾斜部材を設けることにより、対向面172を形成してもよい。つまり、対向面172は、傾斜部材によって構成されてもよい。傾斜部材は、放射線を反射する機能を有する材料(例えば、ステンレス鋼等の金属)で構成されてもよい。傾斜部材によって対向面172を構成することにより、対向面172を遮蔽壁170の一部として形成する場合と比較して、対向面172の建設工事の負担を軽減することができる。また、傾斜部材によって対向面172を構成することにより、対向面172の傾斜角を容易に調整することが可能となる。
【0048】
貯蔵室SR内に設置された収納管210内のガラス固化体から放射される放射線は、第1の側壁118によって概ね遮蔽される。しかし、外気の流通部となる空隙118bが設けられるため、空隙118bを通じて、上部プレナム部UPから貯蔵室SR外へ放射線が漏洩する。このため、遮蔽壁170が設けられ、遮蔽壁170の対向面172によって漏出した放射線が上部プレナム部UP側に反射される。
【0049】
また、上記のように、対向面172は、上壁112側から底壁114側に向かって第1の側壁118側に傾斜する。これにより、空隙118bから漏出した放射線であって、対向面172によって反射される放射線が、上壁112側(上方)へ向かう確率を向上させることができる。したがって、対向面172と第1の側壁118との間で複数回反射される放射線を、徐々に空隙118bに向かわせることができ、最終的に上部プレナム部UP側に反射させることが可能となる。このため、遮蔽壁170は、上部プレナム部UPから外部への放射線の漏出を抑制することが可能となる。
【0050】
また、上記のように、本実施形態に係る貯蔵設備100では、第1の側壁118および遮蔽壁170によってラビリンス構造が形成される。
【0051】
一方、図4に示すように、従来の貯蔵設備10では、空隙118bから外部への放射線の漏出を抑制するために、遮蔽壁170に代えて、ルーバ72が設置されていた。このため、従来の貯蔵設備10では、ルーバ72による流路断面積の急激な増加および減少に伴う圧力損失を防止するために、ルーバ72の設置箇所の下流側に、なだらかに流路断面積を変化させる構造体74、76、および、迷路板78を別途設ける必要があった。したがって、従来の貯蔵設備10は、構造体74、76、および、迷路板78の分、遮蔽構造が複雑になってしまっていた。
【0052】
これに対し、図3に示すように、本実施形態に係る貯蔵設備100では、第1の側壁118および遮蔽壁170によってラビリンス構造を構成することにより、従来、遮蔽壁170の箇所に設けられていたルーバ72を省略することができる。このため、本実施形態に係る貯蔵設備100では、構造体74、76、および、迷路板78も省略することができ、建屋110を簡素化することが可能となる。
【0053】
また、遮蔽壁170の箇所に設けられていた、図4に示す従来のルーバ72には、上部プレナム部UPから排気された、高温の外気が衝突するため、ルーバ72は熱膨張していた。従来のルーバ72は、上壁112と床部180とに支持されていたため、ルーバ72の熱膨張により、上壁112および床部180に不要な圧力が印加されるおそれがあった。このため、従来のルーバ72には、放熱機構を別途設けなければならなかった。
【0054】
これに対し、図3に示すように、本実施形態に係る遮蔽壁170は、上壁112のみに支持されるため、熱膨張によって、上壁112および床部180に圧力が印加される事態を回避することができる。したがって、本実施形態に係る貯蔵設備100は、遮蔽壁170に対する放熱機構の設置を省略することができ、建屋110を簡素化することが可能となる。また、熱膨張による遮蔽壁170から床部180への圧力の印加を回避できるため、建屋110の耐久性を向上することができる。
【0055】
また、第1の側壁118の頂部118aの縁118d、および、遮蔽壁170の頂部170aの縁170bは、外方に凸となる曲面形状を有する。
【0056】
これにより、本実施形態に係る貯蔵設備100では、上部プレナム部UPから排気され、空隙118b、流路R4、および、流路R5を通じて流路R6へ供給される外気が受ける流路抵抗を低下させることができる。したがって、従来、流路R6に設けられていた、図4に示す整流板80を省略しても、本実施形態に係る貯蔵設備100は、外気を効率よく排気することが可能となる。このため、本実施形態に係る貯蔵設備100は、外気を効率よく貯蔵室SRに通過させることができ、外気による収納管210の冷却効果を向上させることが可能となる。
【0057】
流路R6を構成する下流外壁182、下流外壁184は、地面から高い位置に設けられる。このため、従来、流路R6に迷路板78および整流板80を設置するには、足場を組む必要があり、据え付けに労力を要していた。しかし、本実施形態に係る貯蔵設備100は、流路R6への迷路板78および整流板80を省略できるため、迷路板78および整流板80の据え付けに要する労力を省略することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る貯蔵設備100は、建屋110を簡素化することが可能となる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上記実施形態において、貯蔵室SRから漏出した放射線を貯蔵室SR内へ反射させる対向面152、172が遮蔽壁150、170に設けられる場合を例に挙げた。しかし、貯蔵室SRから漏出した放射線を貯蔵室SR内へ反射させる対向面は、遮蔽壁150、170に加えて、または、遮蔽壁150、170に代えて、遮蔽壁150、170以外の他の壁に設けられていてもよい。つまり、外部から貯蔵室SRに向かう流路の流路断面積は、貯蔵室SRから外部に向かって漸減してもよい。
【0061】
例えば、入口開口162aから貯蔵室SRに向かう流路R1、R2、R3の流路断面積は、入口開口162aから貯蔵室SRに向かって漸増してもよい。つまり、貯蔵室SRから漏出した放射線を貯蔵室SR内へ反射させる対向面は、遮蔽壁150の頂部150a、突出部160の下面160a、または、第1の側壁116の面116cに設けられてもよい。例えば、遮蔽壁150の頂部150aを貯蔵室SRに向けて下方に傾斜させてもよい。例えば、突出部160の下面160aを貯蔵室SRに向けて上方に傾斜させてもよい。例えば、第1の側壁116の面116cを下方に向けて貯蔵室SR側に傾斜させてもよい。
【0062】
また、例えば、貯蔵室SRから出口開口182aに向かう流路R4、R5、R6の流路断面積は、貯蔵室SRから出口開口182aに向かって漸減してもよい。つまり、貯蔵室SRから漏出した放射線を貯蔵室SR内へ反射させる対向面は、第1の側壁118の面118c、または、床部180の上面180aに設けられてもよい。例えば、第1の側壁118の面118cを上方に向けて貯蔵室SR側に傾斜させてもよい。例えば、床部180の上面180aを貯蔵室SRに向けて下方に傾斜させてもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、遮蔽壁150の頂部150aの縁150b、および、遮蔽壁170の頂部170aの縁170bが外方に凸となる球面形状を有する場合を例に挙げた。しかし、遮蔽壁150の頂部150aの縁150b、および、遮蔽壁170の頂部170aの縁170bは、球面形状を有していなくてもよい。
【0064】
同様に、第1の側壁116の頂部116aの縁116d、および、第1の側壁118の頂部118aの縁118dが外方に凸となる球面形状を有する場合を例に挙げた。しかし、第1の側壁116の頂部116aの縁116d、および、第1の側壁118の頂部118aの縁118dは、球面形状を有していなくてもよい。
【0065】
本開示は、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」および目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0066】
100 貯蔵設備
110 建屋
112 上壁(第1の壁、第2の壁)
114 底壁(第1の壁、第2の壁)
116 第1の側壁(第3の壁)
116a 頂部
116b 空隙
116d 縁
118 第1の側壁(第3の壁)
118a 頂部
118b 空隙
118d 縁
150 遮蔽壁
150a 頂部
150b 縁
152 対向面
170 遮蔽壁
170a 頂部
170b 縁
172 対向面
図1
図2
図3
図4