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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014534
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】セグメント把持装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
E21D11/40 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117437
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】507157676
【氏名又は名称】株式会社クボタ建設
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】成島 照和
(72)【発明者】
【氏名】三山 和孝
(72)【発明者】
【氏名】田島 和史
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小野 哲
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155BB01
2D155GB07
(57)【要約】
【課題】セグメントを組み立てる際にセグメントの位置を微調整して、一つのセグメントが他のセグメントの設置を妨げないようにする。
【解決手段】シールド工法によるトンネルの施工に使用可能な、セグメント把持装置Hであって、セグメント101に装着されるアタッチメントと、アタッチメントと着脱自在に係合可能な支持部材10と、チルトレバー15と、を備え、支持部材10が、支持軸のまわりに回動可能に軸支されており、チルトレバー15が、支持部材10のセグメントを支持する面の反対側の面の側に配置され、かつ、支持部材10の縁部を押圧するチルト姿勢と、当該縁部を押圧しない中立姿勢と、にわたって姿勢変更可能であり、チルトレバー15がチルト姿勢に姿勢変更すると、支持部材10が支持軸のまわりに回動する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工法によるトンネルの施工に使用可能な、セグメント把持装置であって、
セグメントに装着されるアタッチメントと、
前記アタッチメントと着脱自在に係合可能な支持部材と、
チルトレバーと、を備え、
前記支持部材が、支持軸のまわりに回動可能に軸支されており、
前記チルトレバーが、
前記支持部材の前記セグメントを支持する面の反対側の面の側に配置され、かつ、
前記支持部材の縁部を押圧するチルト姿勢と、当該縁部を押圧しない中立姿勢と、にわたって姿勢変更可能であり、
前記チルトレバーが前記チルト姿勢に姿勢変更すると、前記支持部材が前記支持軸のまわりに回動するセグメント把持装置。
【請求項2】
前記チルトレバーが前記中立姿勢にあるときに、前記セグメントを支持する支持面が所定の姿勢を取るように付勢する付勢装置が、前記支持部材に設けられている請求項1に記載のセグメント把持装置。
【請求項3】
前記アタッチメントが装着された前記セグメントを前記支持部材に供給して、当該アタッチメントと当該支持部材とを係合させることができる供給装置をさらに備え、
前記チルトレバーが、
回転軸に軸支され、かつ、
一端が前記支持部材の前記縁部に当接可能な位置に配置されるとともに、他端が前記供給装置と接触可能な位置に配置されており、
前記供給装置が前記セグメントを前記支持部材に供給するときに、前記供給装置が前記チルトレバーの前記他端と接触し、前記チルトレバーが前記支持軸の周りに回動して、前記一端が前記支持部材に当接することによって、前記チルト姿勢が実現される請求項1または2に記載のセグメント把持装置。
【請求項4】
前記支持部材が、前記アタッチメントを挿入可能な溝部分を有し、
前記アタッチメントの、前記セグメントに装着されたときに当該セグメントに当接する面が、曲面として形成されており、
前記溝部分の壁面が、前記アタッチメントの曲面に沿う曲面として形成されている請求項1または2に記載のセグメント把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法によるトンネルの施工に使用可能なセグメント把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道などのトンネルを施工する際に、シールド工法が汎用されている。シールド工法では、概して、シールドマシンを用いて地中を掘り進むともに、掘削した箇所にセグメントを組み立ててトンネル壁面を形成する、という方法が採用される。
【0003】
シールド工法に用いられる装置は、地中の限られた空間において目的の作業を遂行することが必要とされる。たとえば特開平4-269300号公報(特許文献1)には、あらかじめ用意された複数(当該文献では六つ)のセグメントを同時に組み立てることができるセグメント組立装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-269300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ではトンネル側のセグメントと切羽側のセグメントとを順次拡径して組み合わせればリングが完成するように記載されているが、実際にはセグメント間の嵌合部分にずれが生じるなどして、微調整を要する場合がある。しかし特許文献1では、このような微調整について考慮されていなかった。
【0006】
そこで、セグメントを組み立てる際にセグメントの位置を微調整して、一つのセグメントが他のセグメントの設置を妨げないようにできるセグメント把持装置の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るセグメント組立装置は、シールド工法によるトンネルの施工に使用可能な、セグメント把持装置であって、セグメントに装着されるアタッチメントと、前記アタッチメントと着脱自在に係合可能な支持部材と、チルトレバーと、を備え、前記支持部材が、支持軸のまわりに回動可能に軸支されており、前記チルトレバーが、前記支持部材の前記セグメントを支持する面の反対側の面の側に配置され、かつ、前記支持部材の縁部を押圧するチルト姿勢と、当該縁部を押圧しない中立姿勢と、にわたって姿勢変更可能であり、前記チルトレバーが前記チルト姿勢に姿勢変更すると、前記支持部材が前記支持軸のまわりに回動することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、一つのセグメントが他のセグメントの設置を妨げないように、セグメントの位置を微調整できる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0010】
本発明に係るセグメント組立装置は、一態様として、前記チルトレバーが前記中立姿勢にあるときに、前記セグメントを支持する支持面が所定の姿勢を取るように付勢する付勢装置が、前記支持部材に設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、チルトレバーを機能させないときの支持部材、およびこれに支持されるセグメントの姿勢を所定の範囲に規制できる。
【0012】
本発明に係るセグメント組立装置は、一態様として、前記アタッチメントが装着された前記セグメントを前記支持部材に供給して、当該アタッチメントと当該支持部材とを係合させることができる供給装置をさらに備え、前記チルトレバーが、回転軸に軸支され、かつ、一端が前記支持部材の前記縁部に当接可能な位置に配置されるとともに、他端が前記供給装置と接触可能な位置に配置されており、前記供給装置が前記セグメントを前記支持部材に供給するときに、前記供給装置が前記チルトレバーの前記他端と接触し、前記チルトレバーが前記支持軸の周りに回動して、前記一端が前記支持部材に当接することによって、前記チルト姿勢が実現されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第一のセグメントを設置予定箇所に導入し、引き続き第二のセグメントを導入するタイミングで、当該第二のセグメントの導入と同期して、第一のセグメントの位置を微調整できる。
【0014】
本発明に係るセグメント組立装置は、一態様として、前記支持部材が、前記アタッチメントを挿入可能な溝部分を有し、前記アタッチメントの、前記セグメントに装着されたときに当該セグメントに当接する面が、曲面として形成されており、前記溝部分の壁面が、前記アタッチメントの曲面に沿う曲面として形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、チルトレバーが機能して支持部材が傾斜するときに、支持部材とアタッチメントとが干渉しにくい。
【0016】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】トンネル施工の状態を示す模式図である。
図2】円弧状セグメントおよび壁面ユニットの断面図である。
図3】円弧状セグメントの上面図である。
図4】実施形態に係る施工装置の側面図である。
図5】実施形態に係る持上装置および回転装置の側面図である。
図6】実施形態に係る押上装置および回転装置の正面図である。
図7】実施形態に係る支持部材の上面図である。
図8】実施形態に係るチルトレバーと当接部材との位置関係を示す図である。
図9】実施形態に係るチルトレバーと当接部材との位置関係を示す図である。
図10】実施形態に係る供給装置の側面図である。
図11】実施形態に係る供給装置の上面図である。
図12】実施形態に係るアタッチメントの側面図である。
図13】実施形態に係るアタッチメントの上面図である。
図14】実施形態に係るアタッチメントの使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るセグメント把持装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るセグメント把持装置を、トンネル100の施工に使用する施工装置1に適用した例について説明する。以下の例において、アタッチメント40、ならびに、押上装置10の支持部材11およびチルトレバー15が、本発明に係るセグメント把持装置の一実施形態であるセグメント把持装置Hを構成する。
【0019】
〔三分割セグメントを用いるシールド工法の構成〕
まず、本実施形態に係る施工装置1を使用して施工するトンネル100およびトンネル100を施工するシールド工法の一般的な構成について説明する。本実施形態では、三分割セグメントを用いるシールド工法を採用しており、当該シールド工法では、シールドマシンSにより掘り進めた横穴を、三枚の円弧状セグメント101(以下、単に「セグメント101」と称する。)を組み合わせて形成する円筒状の壁面ユニット102で固定してトンネル100を形成する(図1)。
【0020】
シールドマシンSは地上に設けられた制御室Rと電気的に接続され、トンネル工事の線形の先頭で地山を円筒形に掘削する。シールドマシンSの後方には、二台の台車C1、C2が配置されており、本実施形態に係る施工装置1が台車C1、C2に分散して搭載されている。また、シールドマシンSで円筒形に掘削されたトンネルの内壁面には施工装置1によりセグメントが円筒リング状に組み立てられ、台車C1、C2は、トンネル100の内部のセグメント上に敷設された軌道(不図示)の上を走行可能に構成されている。
【0021】
(方向に関する用語の定義)
以下の説明において、「トンネル延長方向」という用語を用いて、トンネル100の延長方向に沿う方向を表す場合がある。施工装置1およびセグメント101の「トンネル延長方向」は、施工装置1およびセグメント101の使用時または設置後にトンネル100の延長方向に沿う方向を指すものとする。同様に、「トンネル内側」、「トンネル外側」、「トンネル径方向」、「トンネル周方向」の各用語は、いずれも、使用時または設置後におけるトンネル100との位置関係に基づいて、内側、外側、径方向、および周方向を指すものとする。また、前後方向はシールドマシンSの進行方向に従って定義されるものとする。加えて、トンネル周方向に関する回転方向について言及するときは、シールドマシンSの進行方向前方から後方に向かう方向に見た場合の時計回りまたは反時計回りとして表現することとする。
【0022】
(セグメントおよびトンネルの構成)
セグメント101は、120度の円弧状の断面を有する鉄筋コンクリート製のブロックである(図2図3)。本実施形態では、トンネル100の仕上り内径が1000mmであり、これに対応して、セグメント101のトンネル内側の面は直径1000mmの円弧状である。なお、セグメント101のトンネル径方向の厚さは70mmであり、トンネル外側の面は直径1140mmの円弧状である。また、セグメント101のトンネル延長方向の長さは600mmである。
【0023】
セグメント101のトンネル周方向の一端部には突起部103が設けられており、他端部には溝部104が設けられている。トンネル周方向に隣接する二つのセグメント101のうちの一方の突起部103と、他方の溝部104とを係合させることによって、二つのセグメント101を連結できる。この部分構造を利用して三枚のセグメント101を連結することによって、円筒状の壁面ユニット102を形成できる。
【0024】
セグメント101のトンネル延長方向の一端部には突起部105が設けられており、他端部には溝部106が設けられている。先に完成している壁面の突起部105(または溝部106)と、隣接して完成させた壁面の溝部106(または突起部105)とを係合させることによって、トンネル延長方向に隣接する二つの壁面ユニット102を連結できる。
【0025】
セグメント101間、壁面ユニット102間のいずれの連結部分(目地という。)にも、シール材が注入される。かかるシール材としては、たとえばエポキシ樹脂系コーキングなどの公知の材料を用いうる。
【0026】
セグメント101の中央(トンネル周方向の中央かつトンネル延長方向の中央)に、貫通孔107が設けられている。貫通孔107は、セグメント101の設置後に、シールドマシンSによって掘削された横穴の内面とセグメント101のトンネル外側の面との間に裏込め材を注入する際の注入口として使用される開口部である。なお、貫通孔107には雌ねじが設けられており、裏込め材が注入された後に貫通孔107にキャップを螺合して注入口を閉鎖できる。
【0027】
〔施工装置の構成〕
本実施形態に係る施工装置1は、セグメント101を押し上げることができる三つの押上装置10(第一押上装置10A、第二押上装置10B、および第三押上装置10C)と、三つの押上装置10をトンネル周方向に回転移動させることができる回転装置20、押上装置10に対してセグメント101を供給可能な供給装置30と、を備える(図4)。また、セグメント101には、押上装置10および供給装置30と連結可能なアタッチメント40が装着される。
【0028】
三つの押上装置10は、周方向等間隔に、回転装置20の胴体部分21に装着されている。回転装置20の動作により三つの押上装置10を周方向に移動させることができる。以下では、押上装置10(支持部材11)のトンネル外側の面が水平になる姿勢を第一姿勢といい、第一姿勢から120°時計回りに移動した姿勢を第二姿勢といい、第二姿勢からさらに120°時計回りに移動した姿勢(第一姿勢から240°時計回りに移動した姿勢)を第三姿勢という。
【0029】
(押上装置の構成)
押上装置10は、セグメント101を支持する主体として機能する支持部材11、支持部材11をトンネル径方向に移動させる動力を供給可能な油圧シリンダ12、支持部材11と油圧シリンダ12のロッド12aとを連結する第一接続部材13、および、支持部材11と回転装置20の胴体部分21とを連結する第二接続部材14、を有する(図5図7)。
【0030】
支持部材11は、セグメント101を支持する主体として機能する(セグメント101の重量を支える)略板状の部材である。支持部材11のトンネル周方向の中央部分には、アタッチメント40を嵌め込むことができる溝部分111が設けられている。溝部分111の後方側の端部111aは開口しており、前方側の端部111bは閉鎖されている。溝部分111の端部111a、111bの上面(トンネル外側)には、収容したアタッチメント40と係合する係合突起111cが設けられている。また、溝部分111の底部の幅(トンネル周方向)に比べて、溝部分111の開口部の幅が狭くなっており、当該底部から当該開口部に至る壁面が緩やかな曲面に形成されている。この曲面の形状は、アタッチメント40の上面の曲面形状(詳細は後述する。)に沿う形状である。
【0031】
回転装置20を動作させて、三つの押上装置10のうちのいずれか(第一押上装置10A、第二押上装置10B、または第三押上装置10C)を第一姿勢にすると、第一姿勢にある押上装置10の支持部材11の溝部分111と、供給装置30の溝部分32とが連続した溝を形成する。供給装置30から押上装置10(支持部材11)に供給されたセグメント101は、装着されたアタッチメント40が溝部分111の端部111aから進入する形で、支持部材11に受容される。端部111bには近接センサが設置されており、溝部分111の所定の位置にアタッチメント40が嵌め込まれているか否かを検知できる。
【0032】
支持部材11のトンネル周方向の端部分には、ゴムローラ112が前後方向に回転自在に取り付けられている。ゴムローラ112は、アタッチメント40が溝部分111に進入する際に、セグメント101のトンネル内側の面を回転支持して、セグメント101の前進を補助する役割を果たす。
【0033】
油圧シリンダ12は、押上装置10の駆動部分であり、トンネル延長方向に沿って伸縮できるように設置されている。油圧シリンダ12のロッド12aは、第一接続部材13を介して支持部材11と接続されている。第一接続部材13は、ロッド12aに接続された第一リンク13aと、第一リンク13aと支持部材11とを接続する第二リンク13bとに区分される。第一リンク13aおよび第二リンク13bは、相対移動しないように締結された上で、回転装置20の胴体部分21に、一体に軸支されている。また、第二リンク13bの支持部材11側の端部は、支持部材11の下面に軸支されている。
【0034】
油圧シリンダ12が後退すると、第一リンク13aのロッド12aと接続されている部分が前方に引っ張られ、これに伴って第一リンク13aが軸X1の周りに時計回りに回転する。これに連動して、第二リンク13bが軸X1の周りに時計回りに回転するので、支持部材11がトンネル外側方向(上方)に移動する。この動作によって、支持部材11に支持されたセグメント101がトンネル外側方向(上方)に押し上げられる。反対に、油圧シリンダ12が前進すると、支持部材11がトンネル内側方向(下方)に移動する。
【0035】
第二接続部材14は、支持部材11と回転装置20の胴体部分21とを連結する部材である。両端の接続部分は軸支されており、回転自在である。第二接続部材14は、油圧シリンダ12の動作に追随して従属的に動作する。
【0036】
三つの押上装置10のうち、第一押上装置10Aおよび第二押上装置10Bには、チルトレバー15が設けられている。チルトレバー15は、第二リンク13bと軸X2を共通にして軸支されている。また、第一押上装置10Aにはトンネル周方向の両側に一つずつのチルトレバー15(15A、15B)が取り付けられており、第二押上装置10Bにはトンネル周方向の片側にのみチルトレバー15(15C)が取り付けられている(図8図9)。また、チルトレバー15は、支持部材11がセグメント101を支持する面の反対側の面の側に設けられている。
【0037】
第一押上装置10Aの一方のチルトレバー15Aは、第一押上装置10Aが第二姿勢にあるときに、供給装置30の当接部材34(34A)と当接可能な位置に位置合わせされている(図8)。第一押上装置10Aの他方のチルトレバー15Bは、第一押上装置10Aが第三姿勢にあるときに、供給装置30の当接部材34(34B)と当接可能な位置に位置合わせされている(図9)。第二押上装置10Bのチルトレバー15Cは、第二押上装置10Bが第二姿勢にあるときに、供給装置30の当接部材34(34A)と当接可能な位置に位置合わせされている(図9)。ただし、いずれのチルトレバー15も、当接部材34と当接していないときには、支持部材11に干渉しない姿勢(中立姿勢の例である。)を取る。なお、第一押上装置10Aが第三姿勢にあるとき、第二押上装置10Bは第二姿勢にあり、したがって、チルトレバー15Bが当接部材34Bと当接するとき、同時にチルトレバー15Cが当接部材34Aと当接する。
【0038】
チルトレバー15と当接部材34とが当接すると、チルトレバー15が軸X2の周りに時計回りに回転する。このとき、チルトレバー15の支持部材11側の一端151が、支持部材11をトンネル外側方向に押す姿勢(チルト姿勢の例である。)になる。この動作は、支持部材11の左右方向のうちチルトレバーが設けられている側においてのみ生じるので、支持部材11の左右片側のみがトンネル外側方向に押されることになる。これによって、支持部材11がトンネル径方向に対して傾くことになる。より具体的には、セグメント101Aの第二姿勢において上側に配置されている部分がトンネル外側方向に押されて退避することになり、セグメント101Aの上方におけるトンネル内側方向の空地が広がって、供給装置30から供給される他のセグメント101Bが通過する余地が生まれる(図8)。また、セグメント101Aの上方におけるトンネル内側方向の空地が広がるため、他のセグメント101Bをトンネル外側方向(上方)に押し上げる際に、セグメント101Aとセグメント101Bとが干渉しない。以上の一連の動作を、以下の説明において「チルト機構」と称する。なお、三つ目のセグメント101Cを挿入する際も同様にチルト機構を作動して、先に挿入されているセグメント101A、101Bの片側を退避させて、三つ目のセグメント101Cが通過および上昇するための余地を作る(図9)。
【0039】
なお、支持部材11は、チルトレバー15の一端151が当接していないときには、トンネル径方向と略直交する姿勢を取るように構成されている。具体的には、支持部材11をトンネル周方向の両側からそれぞれ付勢する二つのバネ(不図示)(付勢装置の例である。)が設けられ、二つのバネの弾性力のつり合いによって、支持部材11がトンネル径方向と略直交する姿勢に維持されている。チルトレバー15が支持部材11の片側を押すときは、この二つのバネのつり合いに逆らって応力を加えることになる。
【0040】
また、三つの押上装置10を連動して動作させることができる調整シリンダ16が設けられており、調整シリンダ16は三つの油圧シリンダ12のシリンダヘッド12bに接続されている。調整シリンダ16が伸長すると、三つの油圧シリンダ12が前方に移動する。油圧シリンダ12が前方に移動することは、支持部材11との関係では、油圧シリンダ12が引退する動作と等しい意味を持つ。したがって、調整シリンダ16が伸長すると、支持部材11がトンネル外側方向に移動する。ただし、油圧シリンダ12単独の動作と異なり、調整シリンダ16が伸長すると、三つの油圧シリンダ12が同時に移動するので、三つの支持部材11が同時に動作する。すなわち、三つの押上装置10の動作が同期されることになる。これによって、三つのセグメント101の位置を同時に微調整できる。
【0041】
(回転装置の構成)
回転装置20は、三つの押上装置10を支持する胴体部分21と、胴体部分21をトンネル周方向に回転させることができる油圧モータと、を有する。油圧モータを動作させて胴体部分21を回転させることによって、三つの押上装置10の周方向の位置を変更でき、特に、三つの押上装置10を、第一姿勢、第二姿勢、および第三姿勢のいずれかに配置できる。
【0042】
(供給装置の構成)
供給装置30は、本体部分31と、本体部分31の上面に設けられた溝部分32と、本体部分31から前方に延出可能に構成された左右一対のガイドアーム33(33A、33B)と、ガイドアーム33に取り付けられた当接部材34(34A、34B)と、ガイドアーム33に取り付けられたストッパ部材35(35A、35B)と、を有する。
【0043】
本体部分31のトンネル周方向の中央部分に、溝部分32が設けられている。溝部分32は、アタッチメント40を嵌め込むことができる形状に構成されている。セグメント101は、装着されたアタッチメント40が溝部分32に収容される態様で、供給装置30に支持される。
【0044】
本体部分31のトンネル周方向の端部分には、ゴムローラ311が前後方向に回転自在に取り付けられている。ゴムローラ311は、アタッチメント40が溝部分32を前後方向に移動する際に、セグメント101のトンネル内側の面を回転支持して、セグメント101の前後移動を補助する役割を果たす。
【0045】
ガイドアーム33は、本体部分31の先端部分から、第一姿勢にある押上装置10(支持部材11)に、セグメント101を押し込む役割を果たす部材である。押上装置10が第一姿勢にあるとき、当該押上装置10の支持部材11の溝部分111と、供給装置30の溝部分32とが連続した溝を形成するので、アタッチメント40が溝部分32から溝部分111に連続的に移動できる。ガイドアーム33を本体部分31から前方に延出させると、セグメント101にストッパ部材35が当接して、セグメント101が前方に押し出される。このとき、セグメント101をガイドアーム33によって押したときに、アタッチメント40が溝部分111に収容されて、セグメント101が押上装置10に支持される。このように、ガイドアーム33の動作によって、供給装置30から押上装置10にセグメント101を供給できる。
【0046】
当接部材34は、ガイドアーム33に固定された部材であり、ガイドアーム33から外側(本体部分31から離間する方向)に延出している。ガイドアーム33を本体部分31から前方に延出させると、当接部材34がチルトレバー15と当接し、これによってチルトレバー15が軸X2の周りに回転する。チルトレバー15が回転したときに支持部材11が傾くことは、前述の通りである。したがって、本体部分31から前方に延出するガイドアーム33の動作に連動してチルト機構が動作する。これによって、たとえば、第二押上装置10Bに対してセグメント101を供給する動作に連動して、第一押上装置10Aの支持部材11を傾けて、セグメント101が進入および上昇するための余地を作ることができる。同様に、第三押上装置10Cに対してセグメント101を供給する動作に連動して、第一押上装置10Aおよび第二押上装置10Bの支持部材11を傾けて、セグメント101が進入および上昇するための余地を作ることができる。
【0047】
ストッパ部材35は、ガイドアーム33に固定された部材であり、応力を受けていないときはガイドアーム33から斜め上方に伸びる姿勢を取っている。ストッパ部材35は、前方から後方へ向かう応力を受けたときにはガイドアーム33から斜め上方に伸びる姿勢(立姿勢)が維持される一方で、後方から前方へ向かう応力を受けたときには倒れた姿勢(倒姿勢)を取るように構成されている。
【0048】
ガイドアーム33を本体部分31から前方に延出させると、セグメント101の後方部分にストッパ部材35が当接する。このときストッパ部材35は前方から後方へ向かう応力をセグメント101から受けるので、立姿勢が維持される。これによってセグメント101は、ストッパ部材35に押されてガイドアーム33とともに前進する。
【0049】
一方、ストッパ部材35より後方にあるセグメント101をストッパ部材35の前方の位置に移動させようとすると、セグメント101の前方部分にストッパ部材35が当接する。このときストッパ部材35は後方から前方へ向かう応力をセグメント101から受けるので、倒姿勢に姿勢変更される。これによって、ストッパ部材35は、セグメント101が前方に移動する動きを妨げない。
【0050】
(アタッチメントの構成)
アタッチメント40は、本体部分41と、ねじ部分42とを有する(図12~14)。ねじ部分42には、セグメント101の貫通孔107に形成された雌ねじと螺合可能な雄ねじが形成されている。ねじ部分42の雄ねじと貫通孔107の雌ねじとを螺合させることによって、セグメント101にアタッチメント40を取り付けることができる。
【0051】
本体部分41は、その上面が湾曲した形状に形成されている(図14)。本体部分41の前後方向の両端部分には、トンネル周方向に突出している突出部43が設けられており、本体部分41の前後方向の中央部分には、突出部43に比べて周方向に引退している引退部44が設けられている。アタッチメント40が押上装置10の支持部材11の溝部分111に収容されると、溝部分111の係合突起111cと突出部43が位置合わせされ、これによってアタッチメント40の溝部分111からの脱落が防止されている。
【0052】
三枚のセグメント101を組み合わせて壁面ユニット102を形成した後に、シールドマシンSに設けられているシールドジャッキ(不図示)を動作させて、壁面ユニット102を後方に押す。このとき、アタッチメント40が支持部材11に対して後方に相対移動するので、アタッチメント40の突出部43と支持部材11の係合突起111cとの位置がずれる。係合突起111cが設けられていない部分における溝部分111の幅が、アタッチメント40の突出部43を有する部分の幅より広いため、この状態では、アタッチメント40を支持部材11(押上装置10)から離脱させることができる。
【0053】
〔施工方法の構成〕
次に、本実施形態に係る施工装置1を用いて実施されるトンネル100の施工方法について説明する。施行に先立ち、供給装置30に、三枚のセグメント101(101A、101B、101C)が支持された状態にしてあり、それぞれのセグメント101にはアタッチメント40が装着されている。また、三つの押上装置10は、第一押上装置10Aが第一姿勢にあり、第二押上装置10Bが第三姿勢にあり、第三押上装置10Cが第二姿勢にあるように、それぞれ位置合わせされている。
【0054】
第一に、一枚目のセグメント101Aを、第一押上装置10Aに供給する。その後、第一押上装置10Aの油圧シリンダ12を引退させて、セグメント101Aをトンネル外側方向に移動させる。続いて、回転装置20を動作させて、第一押上装置10Aを第一姿勢から第二姿勢に姿勢変更して、第一押上装置10Aおよび一枚目のセグメント101Aを退避させる。このとき、第二押上装置10Bが第一姿勢に姿勢変更する。
【0055】
第二に、二枚目のセグメント101Bを、第二押上装置10Bに供給する。このとき、ガイドアーム33が前進し、当接部材34Aがチルトレバー15Aに当接するので、チルト機構が作動する(図8)。これによって、セグメント101Aの上方の部分がセグメント101Bの進路から退避して、供給装置30から供給されるセグメント101Bが通過および上昇するための余地が生まれる。その後、第二押上装置10Bの油圧シリンダ12を引退させて、セグメント101Bをトンネル外側方向に移動させる。そして、調整シリンダ16を伸長または引退させて、セグメント101A、101Bを同時に動かして、相対位置を微調整する。続いて、回転装置20を動作させて、第二押上装置10Bを第一姿勢から第二姿勢に姿勢変更して、第二押上装置10Bおよび二枚目のセグメント101Bを退避させる。このとき、第三押上装置10Cが第一姿勢に姿勢変更し、第一押上装置10Aが第三姿勢に姿勢変更する。
【0056】
第三に、三枚目のセグメント101Cを、第三押上装置10Cに供給する。このとき、ガイドアーム33が前進し、当接部材34A、34Bがそれぞれチルトレバー15C、15Bに当接するので、チルト機構が作動する(図9)。これによって、セグメント101Aおよびセグメント101Bの上方の部分がセグメント101Cの進路から退避して、供給装置30から供給されるセグメント101Cが通過および上昇するための余地が生まれる。その後、第三押上装置10Cの油圧シリンダ12を引退させて、セグメント101Cをトンネル外側方向に移動させる。
【0057】
第四に、調整シリンダ16を伸長または引退させてセグメント101A、101B、101Cを同時に動かして、これらを同時にトンネル径方向に進退させる。この進退動作を行うことで、突起部103と溝部104とを係合させて、セグメント101を連結する。この操作により、円筒状の壁面ユニット102が完成する。この壁面ユニット102は、既設の壁面ユニット102より前方の位置に完成し、完成直後の壁面ユニット102と既設の壁面ユニット102との間には隙間が存在する。
【0058】
第五に、シールドマシンSに設けられているシールドジャッキ(不図示)を動作させて完成直後の壁面ユニット102を後方に押し、完成直後の壁面ユニット102を既設の壁面ユニット102に当接させる。すなわち、完成直後の壁面ユニット102と既設の壁面ユニット102との間の隙間がなくなる。このとき、完成直後の壁面ユニット102が後方に移動することに伴って、アタッチメント40が支持部材11に対して後方に相対移動して、アタッチメント40の突出部43と支持部材11の係合突起111cとの位置がずれる。
【0059】
最後に、三つの押上装置10の油圧シリンダ12を全て伸長させて、三つの支持部材11をトンネル内側方向に移動させる。油圧シリンダ12を伸長させると、第二リンク13bが軸X1の周りに回転することに対応して支持部材11が円弧状の軌跡で移動するが、この時点で前述のように突出部43と係合突起111cとの位置合わせが解除されているので、支持部材11の係合突起111cがアタッチメント40の引退部44を通過できる。この動作によって、アタッチメント40が支持部材11から離脱し、トンネル100側に壁面ユニット102および三つのアタッチメント40が残った状態になる。その後、壁面ユニット102からアタッチメント40を取り外し、貫通孔107から裏込め材を注入する。以降の手順は、従来のシールド工法と同様であるので、説明を省略する。
【0060】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るセグメント把持装置のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0061】
上記の実施形態では、セグメント把持装置Hが施工装置1の一部として実装されている構成を例として説明した。しかし、本発明に係るセグメント把持装置の適用先は、上記の実施形態における施工装置1に限定されない。すなわち、セグメント自体の構成条件(質量、材質、形状、および寸法など)、ならびに、セグメントの施工条件(施工する必要があるセグメントの数量、リングの構成、および継手方式など)といった諸条件によらず、セグメントを把持する必要がある種々の装置に対して、本発明に係るセグメント把持装置を適用しうる。
【0062】
上記の実施形態では、支持部材11をトンネル周方向の両側からそれぞれ付勢する二つのバネが設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明に係るセグメント把持装置において、支持面の向きを規制する付勢装置の有無は任意である。
【0063】
上記の実施形態では、供給装置30が設けられている構成を例として説明したが、本発明に係るセグメント把持装置において、供給装置の有無は任意である。
【0064】
上記の実施形態では、アタッチメントの上面が湾曲形状である構成を例として説明したが、本発明に係るセグメント把持装置におけるアタッチメントの形状は、支持部材と着脱自在に係合可能である限りで、任意である。
【0065】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、たとえばシールド工法によるトンネルの施工に利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 :施工装置
10 :押上装置
11 :支持部材
111 :溝部分
111a :溝部分の端部(後方側)
111b :溝部分の端部(前方側)
111c :係合突起
112 :ゴムローラ
12 :油圧シリンダ
12a :ロッド
12b :シリンダヘッド
13 :第一接続部材
13a :第一リンク
13b :第二リンク
14 :第二接続部材
15 :チルトレバー
151 :チルトレバーの一端
16 :調整シリンダ
X1 :軸
X2 :軸
20 :回転装置
21 :胴体部分
30 :供給装置
31 :本体部分
311 :ゴムローラ
33 :ガイドアーム
34 :当接部材
35 :ストッパ部材
40 :アタッチメント
41 :本体部分
42 :ねじ部分
43 :突出部
44 :引退部
H :セグメント把持装置
100 :トンネル
101 :円弧状セグメント(セグメント)
102 :壁面ユニット
103 :突起部(トンネル周方向)
104 :溝部(トンネル周方向)
105 :突起部(トンネル延長方向)
106 :溝部(トンネル延長方向)
107 :貫通孔
S :シールドマシン
C1 :台車
C2 :台車
R :制御室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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図13
図14