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特開2024-145350ポリスチレン系樹脂発泡シート及びその製造方法
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  • 特開-ポリスチレン系樹脂発泡シート及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145350
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂発泡シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20241004BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241004BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C08J9/04 CET
B29C44/00 E
B29C44/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057660
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】長谷 真之介
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA09D
4F074AA13B
4F074AA32
4F074AA32D
4F074AA32L
4F074AA33
4F074AA98
4F074AC02
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA95
4F074BC12
4F074CA22
4F074CE02
4F074CE46
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA08
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA34
4F214AA11
4F214AA13
4F214AA45
4F214AA50
4F214AB02
4F214AG01
4F214AG20
4F214AH56
4F214UA14
4F214UF01
(57)【要約】
【課題】ポリスチレン系樹脂発泡シートについて、外観不良を抑制でき、耐衝撃性を高める。
【解決手段】1層以上の単位発泡層からなる発泡層10を有し、前記単位発泡層の内の少なくとも1層は、ポリスチレン系樹脂100質量部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー0.5~15質量部と、ポリプロピレン系樹脂1~20質量部とを含む樹脂を含む特定発泡層12であり、前記ポリスチレン系樹脂は、ゴム分とスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体とを含み、前記ゴム分は、前記樹脂の総質量に対して1~7質量%であることよりなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層以上の単位発泡層からなる発泡層を有し、
前記単位発泡層の内の少なくとも1層は、ポリスチレン系樹脂100質量部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー0.5~15質量部と、ポリプロピレン系樹脂1~20質量部とを含む樹脂を含む特定発泡層であり、
前記ポリスチレン系樹脂は、ゴム分とスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体とを含み、
前記ゴム分は、前記樹脂の総質量に対して1~7質量%である、ポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記特定発泡層は、前記ポリスチレン系樹脂と前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとのマトリックス構造中に前記ポリプロピレン系樹脂が分散された海島構造を有する、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、及び、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記特定発泡層は、カーボンをさらに含む、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記樹脂は、リサイクル原料を含む、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記発泡層の片面又は両面に非発泡層を有する、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項7】
請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記樹脂と発泡剤との混練物をシート状に押し出し、発泡して、前記特定発泡層を形成する工程を有する、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂は、リサイクル原料を含む、請求項7に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の容器として、ポリスチレン系樹脂の発泡層を有する容器(発泡容器)が知られている。容器の製造方法としては、ポリスチレン系樹脂の発泡層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートに熱成形を施す方法が挙げられる。容器を製造する際には、熱成形後のトリミングにより、端材が生じる。
環境保全や資源の有効活用を図るため、上述のような端材の再利用が望まれる。
【0003】
発泡容器の耐熱性を高めることを目的とし、耐熱性のポリスチレン樹脂の発泡層と、発泡層の片面又は両面に、ポリオレフィン系樹脂等の非発泡樹脂の非発泡層とを有するポリスチレン系樹脂発泡シート(「積層発泡シート」ということがある)が知られている。上記積層発泡シートの端材を発泡層に用いると、得られる容器の強度は、実用上十分ではなかった。
こうした問題に対して、メタクリル酸を有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を50質量%未満で含有する混合物から構成され、混合物がスチレンを主成分とし、かつメタクリル酸とゴム成分とを含有して発泡されている発泡層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された発明によれば、メタクリル酸を含むリサイクル原料で形成されたポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、強度の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-046466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、得られた原反シートの表面に樹脂の塊やスジが発生する等の外観不良を生じて、美麗なポリスチレン系樹脂発泡シートを得られない。加えて、得られたポリスチレン系樹脂発泡シートから成形された成形体は、脆く、耐衝撃強度に劣るという問題があった。
そこで、本発明は、外観不良を抑制でき、耐衝撃性に優れるポリスチレン系樹脂発泡シートを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等の検討によると、端材に含まれているポリプロピレン系樹脂はポリスチレン系樹脂及びスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体に対する相溶性が低いため、耐衝撃性が低く、外観不良を生じるとの知見を得た。即ち、端材を溶融混練して押出発泡すると、ポリスチレン系樹脂及びスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体に対してポリプロピレン系樹脂の相溶性が低いために、端材の溶融混練物中に未溶融のポリプロピレン系樹脂が凝集して塊となり、この塊が発泡シートの表面に発生して、外観不良を生じる。また、ポリプロピレン系樹脂の塊が押出機のダイのリップ部に堆積して、発泡シートの表面にスジを発生して、発泡シートの外観不良を生じることが分かった。
本発明者らは、上記知見を基に、樹脂の相溶性を高めて、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
<1>
1層以上の単位発泡層からなる発泡層を有し、
前記単位発泡層の内の少なくとも1層は、ポリスチレン系樹脂100質量部と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー0.5~15質量部と、ポリプロピレン系樹脂1~20質量部とを含む樹脂を含む特定発泡層であり、
前記ポリスチレン系樹脂は、ゴム分とスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体とを含み、
前記ゴム分は、前記樹脂の総質量に対して1~7質量%である、ポリスチレン系樹脂発泡シート。
<2>
前記特定発泡層は、前記ポリスチレン系樹脂と前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとのマトリックス構造中に前記ポリプロピレン系樹脂が分散された海島構造を有する、<1>に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
<3>
前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、及び、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体から選ばれる1種以上を含む、<1>又は<2>に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
<4>
前記特定発泡層は、カーボンをさらに含む、<1>~<3>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
<5>
前記樹脂は、リサイクル原料を含む、<1>~<4>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
<6>
前記発泡層の片面又は両面に非発泡層を有する、<1>~<5>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【0008】
<7>
<1>~<6>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記樹脂と発泡剤との混練物をシート状に押し出し、発泡して、前記特定発泡層を形成する工程を有する、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
<8>
前記樹脂は、リサイクル原料を含む、<7>に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートによれば、外観不良を抑制でき、耐衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一の実施形態に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの断面図である。
図2】第二の実施形態に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの断面図である。
図3】他の実施形態に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの断面図である。
図4】他の実施形態に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ということがある)は、発泡層を有する。
発泡シートは、発泡層のみからなる単層発泡シートでもよいし、発泡層と発泡層の片面又は両面に位置する非発泡層とを有する積層発泡シートでもよい。
以下に、本発明の実施形態にかかる発泡シートを例にして、本発明の発泡シートを説明する。
【0012】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態に係る発泡シートについて、図1を用いて説明する。
図1の発泡シート1は、発泡層10と、発泡層10の一方の面に位置する第一の非発泡層20と、発泡層10の他方の面に位置する第二の発泡層30とを有する。即ち、発泡シート1は、発泡層10の両面に非発泡層を有する積層発泡シートである。
【0013】
発泡シート1の厚さt1は、用途等を勘案して適宜決定される。厚さt1は、例えば、0.5~3.0mmが好ましく、0.7~2.5mmがより好ましく、1.0~2.0mmがより好ましい。厚さt1が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、剛性を高められる。厚さt1が上記上限値以下であると、熱成形で成形体を成形した際に、形状の再現性を高める(即ち、成形性を高められる)。
厚さは、例えば、ダイヤルシックネスゲージを用い、任意の方向(例えばTD方向)10カ所を測定し、その平均値とする。
【0014】
発泡シート1の坪量は、100~500g/mが好ましく、150~350g/mがより好ましい。坪量が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、剛性を高められる。坪量が上記上限値以下であると、成形性を高められる。
坪量は、以下の方法で測定できる。
発泡シート1の幅方向(TD方向)の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、発泡シート1の坪量(g/m)とする。
【0015】
発泡シート1の見掛け密度は、例えば、0.060~0.716g/cmが好ましく、0.086~0.540g/cmがより好ましく、0.130~0.363g/cmがさらに好ましい。発泡シート1の見掛け密度が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高められる。発泡シート1の見掛け密度が上記上限値以下であると、成形体をより軽量にでき、かつ断熱性をより高められる。
【0016】
発泡シート1の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して測定することによって求められる。
具体的には、元のセル構造を変えないように切断した発泡シート1の試験片について、その質量と見掛け体積とを測定し、下記式(1)により算出する。
発泡シート1の見掛け密度(g/cm)=試験片の質量(g)/試験片の見掛け体積(cm)・・・(1)
【0017】
本発明の効果をより発現させ得る観点から、発泡シート1のMD方向の最大点荷重は、4.0~10.0Nが好ましく、4.0~9.0Nがより好ましく、4.0~8.0Nがさらに好ましい。最大点荷重は、JIS K7221:1997「硬質発泡プラスチックの曲げ試験方法」記載の3点曲げ試験方法に準拠して求められ。
【0018】
<発泡層>
本実施形態の発泡層10は、第一の単位発泡層12と第二の単位発泡層14とを有する2層構造である。本実施形態において、第一の単位発泡層12が特定発泡層である。
発泡層10の厚さt10は、用途等を勘案して適宜決定される。厚さt10は、例えば、0.5~3.0mが好ましく、1.0~2.5mmがより好ましく、1.0~2.0mmがより好ましい。厚さt10が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、剛性を高められる。厚さt10が上記上限値以下であると、成形性を高められる。
【0019】
発泡層10の坪量は、50~250g/mが好ましく、100~200g/mがより好ましい。坪量が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、剛性を高められる。坪量が上記上限値以下であると、成形性を高められる。
発泡層10の坪量は、発泡シート1の坪量と同様にして測定できる。
【0020】
発泡層10の見掛け密度は、例えば、0.055~0.716g/cmが好ましく、0.086~0.540g/cmがより好ましく、0.130~0.363g/cmがさらに好ましい。発泡層10の見掛け密度が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高められる。発泡層10の見掛け密度が上記上限値以下であると、成形体をより軽量にでき、かつ断熱性をより高められる。
発泡層10の見掛け密度は、発泡シート1の見掛け密度同様にして測定できる。
【0021】
発泡層10の発泡倍率は、例えば、2~18倍が好ましく、5~15倍がより好ましく、3~10倍がさらに好ましい。発泡層10の発泡倍率が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高められる。発泡層10の発泡倍率が上記上限値以下であると、成形体をより軽量にでき、かつ断熱性をより高められる。
通常、発泡倍率を高めると、強度が低減して、発泡シートの成形体(例えば、熱成形した容器等)としての適性を欠く場合がある。本発明においては、発泡層10の発泡倍率を上記下限値以上としても、成形体として十分な強度を有する。
発泡倍率は、1を見掛け密度で除した値である。
【0022】
≪第一の単位発泡層≫
第一の単位発泡層12は、樹脂(第一の発泡層樹脂)を含み、第一の発泡層樹脂は、ポリスチレン系樹脂((A1)成分)と水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー((B1)成分)と、ポリプロピレン系樹脂((C1)成分)とを含む。
第一の単位発泡層12は、第一の発泡層樹脂を含む第一の発泡性樹脂組成物を発泡してなる層であり、層中に気泡が形成されている。
【0023】
(A1)成分は、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を含むポリスチレン系樹脂である。即ち、(A1)成分は、ポリスチレン系樹脂であって、その一部又は全部がスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体である。(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸とアクリル酸との総称である。
【0024】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体が挙げられる。また、ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系モノマーを主成分とし、スチレン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体、スチレン系モノマーとブタジエン等のゴム分との共重合体、スチレン系モノマーの単独重合体もしくはこれらの共重合体もしくはスチレン系モノマーとビニルモノマーとの共重合体とジエン系のゴム状重合体との混合物又は重合体である、いわゆるハイインパクトポリスチレン(HIPS)等が挙げられる。
【0025】
スチレン系モノマーと重合可能なビニルモノマーであり、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を構成するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。スチレン系モノマーと重合可能な他のビニルモノマーとしては、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらのビニルモノマーは、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を表し、「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」と「メタクリロニトリル」の一方又は双方を表す。
【0026】
スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体中の(メタ)アクリル酸か誘導される単位((メタ)アクリル酸単位)の含有量は、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の総質量に対して、2~10質量%が好ましく、3~8質量%がより好ましく、4~8質量%がさらに好ましい。(メタ)アクリル酸単位の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性を高められる。(メタ)アクリル酸単位の含有量が上限値以下であると、外観不良をより抑制できる。
【0027】
第一の発泡層樹脂中、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の含有量は、第一の発泡層樹脂の総質量に対して、50~90質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましく、70~80質量%がさらに好ましい。スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性をより高められる。スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の含有量が上記上限値以下であると、柔軟性をより高められる。
【0028】
加えて、(A1)成分は、ゴム分を含む。即ち、(A1)成分の一部又は全部は、前記ゴム状重合体である。
ジエン系のゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン三次元共重合体等が挙げられる。
これらのポリスチレン系樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0029】
ゴム分は、第一の発泡層樹脂の総質量に対して、1~7質量%が好ましく、2~6質量%がより好ましく、3~5質量%がさらに好ましい。ゴム分の含有量が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、成形性をより高められる。ゴム分の含有量が上記上限値以下であると、剛性をより高められる。
【0030】
(A1)成分は、一部又は全部がリサイクル原料でもよい。リサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレー等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したものが挙げられる。また、例えば、リサイクル原料としては、発泡シートから食品包装用容器を打ち抜いた後に生じる端材を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものが挙げられる。
使用できるリサイクル原料としては、使用済みの発泡容器等の成形体を再生処理して得られたもの以外に、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)、事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)等から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂が挙げられる。
(A1)成分は、リサイクル原料以外のバージン原料でもよい。バージン原料としては、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)、市販されているポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で新たに調製されたポリスチレン系樹脂等が挙げられる。
【0031】
(A1)成分の重量平均分子量Mwは、例えば、12万~45万が好ましく、15万~40万がより好ましい。質量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値を、標準ポリスチレンによる較正曲線に基づき換算した値である。
【0032】
(A1)成分のメルトフローレイト(MFR)は、0.5~6.0g/10minが好ましく、0.7~3.0g/10minがより好ましい。(A1)成分のMFRが上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高められる。(A1)成分のMFRが上記上限値以下であると、成形性をより高められる。
本明細書において、MFRは、JIS K7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に記載のB法に準拠し、試験温度200℃、試験荷重49.03N、予熱時間5分の条件で測定される値をいう。
【0033】
第一の発泡層樹脂中、(A1)成分の含有量は、第一の発泡層樹脂の総質量に対して、50~90質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましく、70~80質量%がさらに好ましい。(A1)成分の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性をより高め、成形体の剛性をより高められる。(A1)成分の含有量が上記上限値以下であると、柔軟性をより高められる。
【0034】
(B1)成分は、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである。
(B1)成分におけるスチレン系モノマーから誘導される単位(スチレン単位)の含有量は、(B1)成分の総質量に対して、50~85質量%が好ましく、60~75質量%がより好ましい。スチレン単位の含有量が上記範囲内であると、(A1)成分及び(B1)成分と、(C1)成分との相溶性をより高めて、外観不良をより抑制でき、耐衝撃性をより高められる。
(B1)成分における共役ジエンモノマーから誘導される単位(共役ジエン単位)の含有量は、(B1)成分の総質量に対して、15~50質量%が好ましく、25~40質量%がより好ましい。共役ジエン単位が上記範囲内であると、(A1)成分及び(B1)成分と、(C1)成分との相溶性をより高めて、外観不良をより抑制でき、耐衝撃性をより高められる。
(B1)成分では、共役ジエン単位の二重結合部分が水素添加によって部分的に又は完全に飽和している。(B1)成分中の二重結合部分の水素添加率は、30%以上が好ましく、40~100%がより好ましく、50~100%が特に好ましい。水素添加率が上記範囲内であると、(A1)成分及び(B1)成分と、(C1)成分との相溶性をより高められる。
【0035】
(B1)成分中における共役ジエン単位の二重結合部分の水素添加率とは、水素添加前の二重結合部分に対する水素添加された二重結合部分の割合を意味する。上記水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いた機器分析により分析できる。
【0036】
(B1)成分として、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。中でも、(B1)成分としては、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、及びスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)が好ましく、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。これらの(B1)成分は、(A1)成分及び(B1)成分に対する(C1)成分の相溶性をさらに高められる。これらの(B1)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0037】
第一の発泡層樹脂中の(B1)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対して0.5~15質量部であり、1.0~8.0質量部が好ましく、2.0~5.0質量部がより好ましい。(B1)成分の含有量が上記下限値以上であると、(A1)成分及び(B1)成分に対する(C1)成分の相溶性をさらに高められる。(B1)成分の含有量が上記上限値以下であると、発泡シート1の剛性を高められる。
【0038】
(C1)成分は、ポリプロピレン系樹脂である。(C1)成分は、(A1)成分及び(B1)成分を含むマトリックス構造中に分散されていることが好ましい。即ち、第一の発泡層樹脂は(C1)成分を島とする海島構造であることが好ましい。海島構造であるか否かは、TEM(透過型電子顕微鏡)により確認できる。
【0039】
第一の発泡層樹脂においては、(B1)成分の存在により、(C1)成分は、(A1)成分及び(B1)成分との相溶性が高まっている。このため、発泡シート1に発泡層10に(B1)成分が含まれていても、(C1)成分が凝集せずに微分散され、美麗な外観を呈する。
【0040】
第一の発泡層樹脂中の(C1)成分の含有量は、(A1)成分100重量部に対して、1~20質量部であり、2~10質量部が好ましく、2~8質量部がより好ましい。(C1)成分の含有量が上記下限値以上であると、(B1)成分を含まない場合に外観不良を生じる。(C1)成分の含有量が上記上限値以下であると、(C1)成分をより良好に分散して、外観不良をより良好に抑制できる。
【0041】
(A1)成分、(B1)成分及び(C1)成分の合計量は、第一の発泡層樹脂の総質量に対して、80~100質量%が好ましく、85~100質量%がより好ましく、90~100質量%がさらに好ましい。(A1)~(C1)成分の含有量が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、外観不良をより良好に抑制できる。
【0042】
(C)成分に対する(B)成分の質量比であり、(B)成分/(C)成分で表化される質量比(B/C比)は、0.5~4.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく1.2~2.5がさらに好ましい。B/C比が上記下限値以上であると、外観不良をより良好に抑制できる。B/C比が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。
【0043】
第一の発泡性樹脂組成物は、発泡剤を含有する。
発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素;テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素;等が挙げられ、中でも、炭化水素が好ましく、ブタンが好ましい。ブタンとしては、ノルマルブタン又はイソブタンがそれぞれ単独で使用されてもよいし、ノルマルブタンとイソブタンとが任意の割合で併用されてもよい。これらの発泡剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0044】
第一の発泡性樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、第一の発泡層樹脂100質量部に対して、例えば、0.1~10質量部が好ましく、1~7質量部がより好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。
【0045】
第一の発泡性樹脂組成物は、第一の発泡層樹脂及び発泡剤以外の他の成分(以下、「第一の発泡層任意成分」ともいう)を含有してもよい。第一の発泡層任意成分としては、例えば、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、消臭剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、カーボン等が挙げられる。
第一の発泡層任意成分の種類は、第一の単位発泡層12に求められる物性等を勘案して決定される。第一の発泡層任意成分は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
【0046】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末等の混合物等が挙げられる。これらの気泡調整剤は、第一の単位発泡層12の独立気泡率を高められる。
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、酸化チタン、及びフラーレン等が挙げられる。
着色剤(但し、カーボンを除く)としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤等が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト焼成物等が挙げられる。
カーボンとしては、カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンを含有することで、意匠性をより高められる。
【0047】
第一の発泡性樹脂組成物中の第一の発泡層任意成分の含有量は、第一の発泡層樹脂100質量部に対して、例えば、0.05~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.3~5.0質量部がさらに好ましい。第一の発泡層任意成分の含有量が上記下限値以上であると、第一の発泡層任意成分に由来する効果を発揮できる。第一の発泡層任意成分の含有量が上記上限値以下であると、ダイ等への目詰まりをより良好に防止し、発泡シート1の外観をより良好にできる。
【0048】
第一の単位発泡層12の厚さは、用途を勘案して決定でき、例えば、250~1500μmが好ましく、500~1000μmがより好ましい。
【0049】
第一の単位発泡層12の坪量は、25~150g/mが好ましく、35~100g/mがより好ましい。坪量が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、剛性を高められる。坪量が上記上限値以下であると、熱成形で成形体を成形した際に、成形性を高められる。
第一の単位発泡層12の坪量は、発泡シート1の坪量と同様にして測定できる。
【0050】
第一の単位発泡層12の見掛け密度は、例えば、0.055~0.716g/cmが好ましく、0.086~0.540g/cmがより好ましく、0.130~0.363g/cmがさらに好ましい。第一の単位発泡層12の見掛け密度が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高められる。第一の単位発泡層12の見掛け密度が上記上限値以下であると、成形体をより軽量にでき、かつ断熱性をより高められる。
第一の単位発泡層12の見掛け密度は、発泡シート1の見掛け密度同様にして測定できる。
【0051】
第一の単位発泡層12の発泡倍率は、例えば、2~18倍が好ましく、5~15倍がより好ましく、3~10倍がさらに好ましい。第一の単位発泡層12の発泡倍率が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高められる。第一の単位発泡層12の発泡倍率が上記上限値以下であると、成形体をより軽量にでき、かつ断熱性をより高められる。
【0052】
第一の単位発泡層12のガラス転移温度Tg1は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な温度を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、ガラス転移温度Tg1は、110℃~150℃が好ましく、113℃~140℃がより好ましく、115℃~130℃がさらに好ましく、117℃~125℃が特に好ましい。
【0053】
ガラス転移温度の測定方法について説明する。
[前処理]
第一の単位発泡層12から5~6gの試料を量り取り、これを2枚のポリテトラフロロエチレンシートの間に挟みこんで下記の要領でプレスして脱泡する(前処理)。
・プレス装置:東洋精機社製、小型プレス装置「ラボプレス10T」。
・温度:上ヒータ180℃、下ヒータ180℃。
・プレス工程:「0.54MPa×3分間」のプレスを行い、その後、「0.54MPa×2秒」および「圧力開放2秒」を1サイクルとして5サイクルのプレスを行う。ついで、「15.5MPa×2分間」のプレスを行う。
【0054】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
前処理を施した試料について、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で、ガラス転移温度(中間点ガラス転移温度)を測定する。
ただし、サンプリング方法、温度条件は以下のとおりとする。
示差走査熱量計装置「DSC6220型」(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、アルミニウム製測定容器の底にすきまのないように試料を約6mg充てんする。窒素ガス流量20mL/minのもと、20℃/minの昇温速度で、試料を30℃から220℃まで昇温する。昇温後、10分間保持し、次いで速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷する。冷却後の試料について、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温した時に得られたDSC曲線より中間点ガラス転移温度を算出する。
この時に基準物質としてアルミナを用いる。
中間点ガラス転移温度は該規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求める。
【0055】
第一の単位発泡層12の平均気泡径は、100~500μmが好ましく、150~400μmがより好ましく、200~350μmがさらに好ましい。第一の単位発泡層12の平均気泡径が上記下限値以上であると、成形性をより高められる。第一の単位発泡層12の平均気泡径が上記上限値以下であると、美麗性をより高められる。
【0056】
≪第二の単位発泡層≫
第二の単位発泡層14は、ポリスチレン系樹脂を含む第二の発泡層樹脂と発泡剤とを含む第二の発泡性樹脂組成物を発泡してなる層である。
第二の発泡層樹脂は、第二の発泡層樹脂は、ポリスチレン系樹脂((A2)成分)を含んでいればよい。第二の発泡層樹脂は、(A2)成分のみでもよいし、(A2)成分と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー((B2)成分)及びポリプロピレン系樹脂((C2)成分)の少なくも一方を含んでもよい。
【0057】
(A2)成分は、発泡シート1の用途等を勘案して決定される。
例えば、(A2)成分は、スチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体のみで構成されていてもよいし、他のポリスチレン系樹脂(ゴム状重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等)を含んでもよい。(A2)成分の種類は、(A1)成分と同様の種類を挙げられる。スチレンスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(A2)成分は、(A1)成分と同じでもよいし、異なってもよい。
【0058】
第二の発泡層樹脂が(B2)成分を含む場合、(B2)成分の種類又は含有量は(B1)成分の種類又は含有量と同様である。(B2)成分の種類又は含有量は(B1)成分の種類又は含有量の少なくとも一方が同じでもよいし、両方が異なってもよい。
【0059】
第二の発泡層樹脂が(C2)成分を含む場合、(C2)成分の種類又は含有量は(C1)成分の種類又は含有量と同様である。(C2)成分の種類又は含有量は(C1)成分の種類又は含有量の少なくとも一方が同じでもよいし、両方が異なってもよい。
【0060】
第二の発泡性樹脂組成物の発泡剤の種類及び量は、第一の発泡性樹脂組成物の発泡剤の種類及び量と同様である。第二の発泡性樹脂組成物の発泡剤の種類及び量は、第一の発泡性樹脂組成物の発泡剤の種類及び量の少なくとも一方が同じでもよいし、両方が異なってもよい。
【0061】
第二の発泡性樹脂組成物は、第二の発泡層樹脂及び発泡剤以外の他の成分(以下、「第二の発泡層任意成分」ともいう)を含有してもよい。
第二の発泡層任意成分の種類及び量は、第一の発泡層任意成分の種類及び量と同様である。第二の発泡層任意成分の種類及び量は、第一の発泡層任意成分の種類及び量の少なくとも一方が同じでもよいし、両方が異なってもよい。
【0062】
第二の単位発泡層14の厚さは、第一の単位発泡層12の厚さと同様である。第二の単位発泡層14の厚さは、第一の単位発泡層12の厚さとは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0063】
第二の単位発泡層14の見掛け密度は、第一の単位発泡層12の見掛け密度と同様である。第二の単位発泡層14の見掛け密度は、第一の単位発泡層12の見掛け密度とは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0064】
第二の単位発泡層14の発泡倍率は、第一の単位発泡層12の発泡倍率と同様である。第二の単位発泡層14の発泡倍率は、第一の単位発泡層12の発泡倍率とは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0065】
第二の単位発泡層14のガラス転移点Tg2は、ガラス転移温度Tg1と同様である。ガラス転移温度Tg2は、ガラス転移温度Tg1と同じでもよいし、異なってもよい。
【0066】
第二の単位発泡層14の平均気泡径は、第一の単位発泡層12の平均気泡径と同様である。第二の単位発泡層14の平均気泡径は、第一の単位発泡層12の平均気泡径と同じでもよいし、異なってもよい。
【0067】
<第一の非発泡層>
本実施形態の第一の非発泡層20は、発泡層10の第一の単位発泡層12上に位置している。第一の非発泡層20は、第一の単位非発泡層22と第二の単位非発泡層24と第三の単位非発泡層26とを有する3層構造である。本実施形態では、発泡層10側から順に、第三の単位非発泡層26と第二の単位非発泡層24と第一の単位非発泡層22とが積層されている。発泡シート1は、第一の非発泡層20を有することで、美麗性、成形性をより高められる。
【0068】
第一の非発泡層20の厚さt20は、用途等を勘案して適宜決定される。厚さt20は、例えば、80~180μmが好ましく、80~170μmがより好ましく、80~150μmがさらに好ましく、100~145μmが特に好ましい。厚さt20が上記下限値以上であると、強度を高められる。厚さt20が上記上限値以下であると、成形性を高め、環境負荷を低減できる。
【0069】
第一の非発泡層20の坪量は、80~200g/mが好ましく、80~150g/mがより好ましい。坪量が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、剛性を高められる。坪量が上記上限値以下であると、成形性を高められる。
第一の非発泡層20の坪量は、発泡シート1の坪量と同様にして測定できる。
【0070】
≪第一の単位非発泡層≫
第一の単位非発泡層22は、第一の非発泡層樹脂を含む第一の非発泡性樹脂組成物を硬化してなる層である。第一の単位非発泡層22は、無延伸フィルムでもよいし、延伸フィルムでもよい。
【0071】
第一の非発泡層樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂としては、(A1)成分と同様のものが挙げられる。第一の非発泡層樹脂のポリスチレン系樹脂は、(A1)成分と同じでもよいし、異なってもよい。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
上述の第一の非発泡層樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0072】
第一の非発泡性樹脂組成物は、第一の非発泡樹脂以外の任意成分(第一の非発泡層任意成分)を含有してもよい。
第一の非発泡層任意成分としては、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、消臭剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、カーボン等が挙げられる。
第一の非発泡層任意成分の種類は、第一の単位非発泡層22に求められる物性等を勘案して決定される。第一の非発泡層任意成分は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
【0073】
第一の単位非発泡層22の厚さは、用途等を勘案して適宜決定される。第一の単位非発泡層22の厚さは、例えば、10~150μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。第一の単位非発泡層22の厚さが上記下限値以上であると、伸長しやすくなって成形性を高められる。第一の単位非発泡層22の厚さが上記上限値以下であると、環境負荷を低減し、生産性、光沢性を高められる。
【0074】
≪第二の単位非発泡層≫
第二の単位非発泡層24は、第二の非発泡層樹脂を含む第二の非発泡性樹脂組成物を硬化してなる層である。第二の単位非発泡層24は、無延伸フィルムでもよいし、延伸フィルムでもよい。
【0075】
第二の非発泡層樹脂は、第一の非発泡層樹脂と同様である。第二の非発泡層樹脂は、第一の非発泡層樹脂と同じでもよいし、異なってもよい。
【0076】
第二の非発泡性樹脂組成物は、第二の非発泡樹脂以外の任意成分(第二の非発泡層任意成分)を含有してもよい。
第二の非発泡層任意成分は、第一の非発泡層任意成分と同様である。第二の非発泡層任意成分は、第一の非発泡層任意成分と同じでもよいし、異なってもよい。
【0077】
第二の単位非発泡層24の厚さは、第一の単位非発泡層22の厚さと同様である。第二の単位非発泡層24の厚さは、第一の単位非発泡層22の厚さと同じでもよいし、異なってもよい。
【0078】
第一の単位非発泡層22と第二の単位非発泡層24との組み合わせは、特に限定されない。例えば、無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを第一の単位非発泡層22とし、無延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを第二の単位非発泡層24とする組み合わせが挙げられる。
第一の単位非発泡層22と第二の単位非発泡層24との間には、印刷層が位置してもよい。
【0079】
≪第三の単位非発泡層≫
第三の単位非発泡層26は、第三の非発泡層樹脂を含む第三の非発泡性樹脂組成物を硬化してなる層である。第三の単位非発泡層26は、延伸フィルムでもよい。
【0080】
第三の非発泡層樹脂は、第一の非発泡層樹脂と同様である。第三の非発泡層樹脂は、第一の非発泡層樹脂又は第二の非発泡層樹脂と同じでもよいし、異なってもよい。
【0081】
第三の非発泡性樹脂組成物は、第三の非発泡樹脂以外の任意成分(第三の非発泡層任意成分)を含有してもよい。
第三の非発泡層任意成分は、第一の非発泡性任意成分と同様である。第三の非発泡層任意成分は、第一の非発泡層任意成分又は第二の非発泡層任成分と同じでもよいし、異なってもよい。
【0082】
第三の単位非発泡層26の厚さは、第一の単位非発泡層22の厚さと同様である。第三の単位非発泡層26の厚さは、第一の単位非発泡層22の厚さ又は第二の単位非発泡層24の厚さと同じでもよいし、異なってもよい。
【0083】
第三の単位非発泡層26の坪量は、第一の単位非発泡層22の坪量と同様である。第三の単位非発泡層26の坪量は、第一の単位非発泡層22の坪量又は第二の単位非発泡層24の坪量と同じでもよいし、異なってもよい。
【0084】
第一の単位非発泡層22と第二の単位非発泡層24と第三の単位非発泡層26との組み合わせは、特に限定されない。例えば、無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを第一の単位非発泡層22とし、無延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを第二の単位非発泡層24とし、ポリスチレン系樹脂フィルムを第三の単位非発泡層126とする組み合わせが挙げられる。この場合、強度、光沢性を高める観点から、第三の単位非発泡層樹脂は、HIPSが好ましい。
【0085】
<第二の非発泡層>
本実施形態の第二の非発泡層30は、発泡層10の第二の単位発泡層14上に位置している。発泡シート1は、第二の非発泡層30を有することで、強度のさらなる向上を図れる。
【0086】
第二の非発泡層30は、第一の単位非発泡層22と同様の組成である。即ち、第二の非発泡層30を構成する非発泡性樹脂組成物は、第一の単位非発泡層22を構成する第一の非発泡性樹脂組成物と同様である。第二の非発泡層30を構成する非発泡性樹脂組成物は、第一の単位非発泡層22を構成する第一の非発泡性樹脂組成物と同じでもよいし、異なってもよい。
【0087】
第二の非発泡層30は、無延伸フィルムでもよいし、延伸フィルムでもよい。
第二の非発泡層30の厚さt30は、第一の単位非発泡層22の厚さと同様である。厚さt30は第一の単位非発泡層22の厚さと同じでもよいし、異なってもよい。
第二の非発泡層30としては、ポリスチレン系樹脂のフィルムを、発泡層10に熱ラミネートしたものが好ましい。
【0088】
<製造方法>
発泡シート1の製造方法の一例を説明する。
第一の発泡性樹脂組成物を溶融混練し、この混練物をシート状に押し出して発泡させて、第一の単位発泡層12を得る。
第二の発泡性樹脂組成物を溶融混練し、この混練物をシート状に押し出して発泡させて、第二の単位発泡層14を得る。
次いで、第一の単位発泡層12と第二の単位発泡層14とを貼り合わせて、発泡層10とする。第一の単位発泡層12と第二の単位発泡層14とを貼り合わせる方法としては、例えば、第一の単位発泡層12と第二の単位発泡層14とを熱融着する方法が挙げられる。あるいは、第一の発泡性樹脂組成物と第二の樹脂組成物とを共押出して、第一の単位発泡層12と第二の単位発泡層14とを形成しつつ、両層を貼り合わせる方法が挙げられる。
【0089】
次いで、発泡層10の一方の面(本実施形態では第一の単位発泡層12の面)に第一の非発泡層20を設ける。
第一の非発泡層20を設ける方法としては、Tダイを用い、第三の非発泡性樹脂組成物を第一の単位発泡層12上に押し出し、押し出された第三の非発泡性樹脂組成物上にラミネートフィルムを載置し、第三の非発泡性樹脂組成物を硬化する方法が挙げられる。ラミネートフィルムは、第一の単位非発泡層22と第二の単位非発泡層24と積層フィルムである。
あるいは、第一の単位非発泡層22と第二の単位非発泡層24と第三の単位非発泡層26とを共押出で積層して、第一の非発泡層20を3層の積層フィルムとする。次いで、3層の積層フィルムを発泡層10に熱融着等で融着して、第一の非発泡層20とする。
【0090】
以上説明した通り、本実施形態の発泡シートによれば、発泡層に水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを含むため、ポリプロピレン系の相溶性が高まり、外観不良を抑制できる。加えて、発泡層樹脂が特定量のゴム分を含むため、耐衝撃性を高められる。
本実施形態の発泡シートによれば、発泡層の両面に非発泡層を有するため、耐衝撃性のさらなる向上を図れる。
【0091】
(第二の実施形態)
本実施形態の発泡シートについて、図2を参照して説明する。主に、第一の実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
図2の発泡シート100は、発泡層110と、第一の非発泡層20と、第二の非発泡層30とを有する。
【0092】
発泡シート100の厚さt100は、例えば、0.5~3.0mmが好ましく、0.7~2.5mmがより好ましく、1.0~2.0mmがさらに好ましい。厚さt100が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、剛性を高められる。厚さt100が上記上限値以下であると、熱成形で成形体を成形した際に、形状の再現性を高める(即ち、成形性を高められる)。
【0093】
発泡シート100の坪量は、例えば、100~500g/mが好ましく、150~350g/mがより好ましく、200~300g/mがさらに好ましい。坪量が上記下限値以上であると、耐衝撃性をより高め、剛性を高められる。坪量が上記上限値以下であると、成形性を高められる。
【0094】
発泡シート100の見掛け密度は、例えば、0.06~0.716g/cmが好ましく、0.086~0.54g/cmがより好ましく、0.13~0.363g/cmがさらに好ましい。
【0095】
本実施形態の発泡層110は、単層構造である。発泡層110は、第一の実施形態における第一の単位発泡層12と同様の組成である。即ち、発泡層110を構成する発泡性樹脂組成物は、第一の単位発泡層12を構成する第一の発泡性樹脂組成物と同様である。
【0096】
発泡層110の厚さt110は、第一の実施形態の第一の単位発泡層12の厚さと同様である。
発泡層110の坪量は、第一の実施形態の第一の単位発泡層12の坪量と同様である。
発泡層110の見掛け密度は、第一の実施形態の第一の単位発泡層12の見掛け密度と同様である。
発泡層110の発泡倍率は、第一の実施形態の第一の単位発泡層12の発泡倍率と同様である。
【0097】
本実施形態によれば、発泡層が単層構造とされているため、発泡シートのさらなる軽量化や薄肉化が図れる。
【0098】
(成形体)
本発明の成形体は、上述の本発明の発泡シートを熱成形してなる。成形体としては、食品用の容器、梱包材、敷材、芯材等が挙げられる。中でも、成形体としては、耐熱性容器が好ましい。
成形体の製造方法としては、例えば、真空成形や圧空成形、あるいはこれらの応用としてのフリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースロード成形等、従来公知の熱成形方法が挙げられる。
【0099】
(その他の実施形態)
第一及び第二の実施形態では、第一の非発泡層が3層構造となっているが、本発明はこれに限定されず、第一の非発泡層の層構造が1~2層でもよいし、4層以上でもよい。但し、コスト、強度の観点から、第一の非発泡層の層構造は2~3層が好ましい。
図3に2層構造の第一の非発泡層を有する発泡シートの例を示す。
図3の発泡シート200は、発泡層10と、発泡層10の一方の面に位置する第一の非発泡層220と、発泡層10の他方の面に位置する第二の非発泡層30とを有する。
本実施形態は、第一の非発泡層210が第一の単位非発泡層22と第二の単位非発泡層24とからなる2層構造である点で、第一の実施形態の発泡シート1と異なる。
発泡シート200は、第一の非発泡層220が2層構造であるため、コスト、環境負荷低減の点で優位である。
なお、発泡シート200の発泡層10は、単層構造の発泡層(例えば、第二の実施形態の発泡層110)でもよい。
【0100】
第一及び第二の実施形態では、発泡層の両面に非発泡層が位置している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、発泡シートは、発泡層の片面にのみ非発泡層を有してもよいし、非発泡層を有しなくてもよい。但し、発泡シートの強度をより高める観点からは、非発泡層を有することが好ましく、発泡層の両面に非発泡層を有することがより好ましい。
図4に、発泡層の片面にのみ非発泡層を有する発泡シートを示す。
図4の発泡シート300は、発泡層10と、発泡層10の一方の面に位置する第一の非発泡層20とを有し、発泡層10の他方の面には非発泡層を有しない。
本実施形態の発泡シート300は、発泡層10の片面にのみ非発泡層を有する点で、第一の実施形態と異なる。
なお、発泡シート300の発泡層10は、単層構造の発泡層(例えば、第二の実施形態の発泡層110)でもよい。
【0101】
第一及び第二の実施形態では、発泡層が1~2の単位発泡層を有している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、発泡層の層構造が3層以上でもよい。但し、成形性、発泡シートの生産性の観点から、発泡層の層構造は1~3層が好ましく、1~2層がより好ましい。
なお、発泡層の層構造が2層以上である場合、その内の1つ以上の単位発泡層が特定発泡層であればよく、全ての単位発泡層が特定発泡層でもよい。
【実施例0102】
以下に、実施例を示して本願発明をより詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。表中、「-」は配合していないことを示す。
(使用原料)
<(A1)成分:ポリスチレン系樹脂>
・A1-1:耐熱ポリスチレン(耐熱PS)、商品名「T080」、東洋スチレン社製、スチレン-メタクリル酸共重合体樹脂、スチレン単量体含有量=92質量%、メタクリル酸単量体含有量=8質量%。
・A1-2:ポリスチレン(PS)、商品名「HRM12」、東洋スチレン社製。
・A1-3:HIPS、ゴム分=60質量%、スチレン-ブタジエンブロック共重合体樹脂(SBS:スチレンブロック共重合体)、商品名「タフプレン125」、旭化成ケミカルズ社製。
・A1-4:ポリスチレン系樹脂を主成分とするリサイクル原料。
<(A2)成分:ポリスチレン系樹脂>
・A2-1:PS、HRM12(商品名)、東洋スチレン社製。
・A2-2:HIPS、ゴム分=6質量%、E641N(商品名)、東洋スチレン社製。
<(B1)成分:素添加スチレン系熱可塑性エラストマー>
・B1-1:水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー1(スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン系モノマー成分67質量%、ブタジエンモノマー成分33質量%、水素添加率60質量%、旭化成製 商品名「タフテックP2000」)。
・B1-2:水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー2(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン系モノマー成分67質量%、水素添加率100質量%、旭化成社製 商品名「タフテックH1043」)。
<(C1)成分:ポリプロピレン系樹脂>
・C1-1:ポリプロピレン系樹脂の成形体のリサイクル原料(市場回収品)。
<ゴム>
・スチレン-ブタジエンブロック共重合体樹脂(SBS:スチレンブロック共重合体)(商品名「タフプレン125」、旭化成ケミカルズ社製)。
<カーボン>
・カーボン含有マスターバッチ(ポリコール興行社製 商品名「ポリクールマスターESH-K4799LB」。
<タルク>
・タルクMB:練り込みマスターバッチ(商品名「DSM1401M」)。
<発泡剤>
・イソブタン:ノルマルブタン=70:30(質量比)の混合物。
【0103】
(実施例1~5、比較例1~5)
以下の手順により、図2の発泡シート100と同様の発泡シートを得た。
表1に記載したタルクの量となるようにタルクMBの量を設定し、(A1)成分、(B1)成分、(C1)成分、タルクMB及びカーボンを混合した。これらをバッチ式連続混合装置に投入した後に、タンデム押出機(スクリュー径90mmとスクリュー径115mmとを有する)の上流側押出機(スクリュー径90mm)のホッパーに供給した。
上流側の押出機では、シリンダー温度の最高設定温度を280℃とし、樹脂に発泡剤を加えて発泡性樹脂組成物とし、発泡性樹脂組成物を下流側の押出機に供給した。
下流側の押出機では、発泡性樹脂組成物を120kg/hの割合で金型へ供給した。
金型に供給された発泡性樹脂組成物を直径175mm、スリットクリアランス0.5mmの環状ダイに供給し、ダイのスリットを通して円筒状の発泡シートを形成した。その直後に、円筒状の発泡シート体にエアーをかけて冷却し、直径675mmの冷却装置(マンドレル)の外面に沿って引取り、次いで押出方向に沿って2枚に切り開き、幅1050mmの発泡シートを得た。エアーの温度は31℃とし、エアーの吹き付け量は、内側で0.053m/m、外側の第1発泡層側では0.032m/mとした。
発泡ガスの置換のため、発泡シートを製造後14日間保管した。HIPS(A2-2と同じ)を最高温度240℃に設定した押出機(直径120mm)で溶融し、これをTダイから発泡シートの一方の面に、フィルム上に押し出し、厚さ100μmで積層した。その直後に、HIPSの層の上に、CPP(無延伸ポリプロピレン)25μmとCPS20μm(大石産業SPH)とがドライラミネートされたフィルム(CPP/CPS45μm無地(商品名))をラミネートした。発泡シートの他方の面に、CPS(無延伸ポリスチレン)フィルム(厚さ20μm、大石産業SPH)を熱ラミネートして発泡シートを得た。
【0104】
(測定方法)
<平均気泡径>
発泡シートの平均気泡径は、以下のようにして求めた。
発泡シートの幅方向中央部からMD方向(押出方向)およびTD方向(押出方向と直交する方向)に沿って、発泡シートの表面に対して垂直に切断した。
切断面を走査型電子顕微鏡(SU1510、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、50倍に拡大して撮影した。このとき、顕微鏡画像は、横向きのA4用紙1枚に縦横2画像(合計4画像)並んだ状態で印刷した際に所定の倍率となるように撮影した。
具体的には、画像上に、MD、TDの各方向に平行する60mmの任意の直線及び各方向に直交する方向(VD方向)に60mmの直線を描く。MD方向に沿って切断した断面(MD断面)およびTD方向に沿って切断した断面(TD断面)のそれぞれに対し、2視野ずつ合計4視野の顕微鏡画像を撮影し、A4用紙に印刷した。MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描き、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描いた。また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描き、MD方向、TD方向、及び、VD方向に平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描いた。なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。MD方向、TD方向、VD方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数Dを算術平均し、各方向の気泡数とした。気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを(s1)式により算出した。
【0105】
平均弦長t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)・・・(s1)
【0106】
画像倍率は画像上のスケールバーをデジマチックキャリパ(ミツトヨ社製)にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
・画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)。
【0107】
(s2)式により各方向における気泡径を算出した。
・気泡径D(mm)=t/0.616・・・(s2)
【0108】
さらに、それらの積の3乗根を平均気泡径とした((s3)式)。
・平均気泡径(mm)=(DMD×DTD×DVD)1/3・・・(s3)
DMD:MD方向の気泡径(mm)。
DTD:TD方向の気泡径(mm)。
DVD:VD方向の気泡径(mm)。
【0109】
<耐衝撃性>
耐衝撃性の評価は、打抜必要エネルギーと3点曲げ試験との結果から、下記評価基準により総合的に評価した。
【0110】
≪評価基準≫
〇:3点曲げ強度が4~10N、打抜必要エネルギーが0.2~1.0J(両面)。
△:3点曲げ強度が4N未満もしくは10N超で、打抜必要エネルギーが0.2~1.0J(両面)。又は3点曲げ強度が2~5Nで、打抜必要エネルギーが0.2J未満もしくは1.0J超(片面もしくは両面)。
×:3点曲げ強度が4N未満もしくは10N超で、打抜必要エネルギーが0.2J未満もしくは1.0J超(片面もしくは両面)。
【0111】
≪打抜必要エネルギー≫
フィルムインパクトテスター(安田精機製作所社製、商品名「No.181フィルムインパクトテスター」)により、打抜必要エネルギーを測定した。
発泡シートから100mm×90mmの試料を採取した。温度22℃、相対湿度40%となるように調整された環境下で、衝撃球サイズ12.7mmR、振子角度90度での試料の打抜必要エネルギー(単位:J)を求めた。
具体的には、打抜必要エネルギーを求める試料を、試料板と試料押さえとの間にセットし、指針を3.0Jの線上に置き、振り子止めハンドルを倒して振り子を落下させた。これにより試料が破れて振り子が指針を押して示した目盛りを読み取った。以上の操作を発泡シートの表裏5回ずつ行い、その平均値を求めた。
【0112】
≪最大点荷重≫
JIS K7221:1997「硬質発泡プラスチックの曲げ試験方法」記載の3点曲げ試験方法に準拠して、最大点荷重を求めた。発泡シートの任意の3箇所から、幅50mm、長さ150mmの試験片を切り出した。この3個の試験片について、テンシロン万能試験機(A&D社製、型式:RTG-1310)を用い、支点間距離:100mm、圧縮速度:50mm/min、支持冶具と加圧冶具の先端曲率半径:3.2mmの条件で、最大点荷重(N)を測定した。
【0113】
<外観>
各例の発泡シートを目視で観察し、下記評価基準により外観を評価した。
≪評価基準≫
○:表面に樹脂の塊やスジが発生することなく、美麗な外観を有している。
×:表面に樹脂の塊やスジが発生し、美麗な外観を有している。
【0114】
<耐熱性試験>
各例の発泡シートを用いて、開口部の内径=160mm、底部の内径=110mm、深さ=50mm、絞り比=0.31の碗形の容器を作製した。
発泡容器の外形に対応する凹部を5×5=25個備えたキャビティ(凹型)と、容器の内形に対応する凸部を同数備えたプラグ(凸型)とを有するプレス成形装置に、発泡シートを連続的に供給しながら発泡容器を作製した。
成形条件としては、1ショット(=25個)の成形サイクルを10.0秒、キャビティ側のヒータの設定温度を320℃、プラグ側のヒータの設定温度を350℃とした。
また、成形のタイミングは、キャビティとプラグとがほぼ同時にポリスチレン系樹脂積層発泡シートと接触して成形を開始するように設定した。
ヒータで加熱した際に、外観が平滑であり良好なものを「〇」(良好)、火ぶくれが発生し不要なものを「×」、と評価した。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示す通り、本発明を適用した実施例1~5は、いずれも耐衝撃性及び外観が「〇」であった。
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを含まない比較例1は、外観が「×」であった。
ポリスチレン系樹脂100質量部に対する水素添加スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーの含有量が0.4質量部である比較例2は、外観が「×」であった。
ポリプロピレン系樹脂の含有量が28質量%である比較例3は、外観が「×」であった。
ゴム分を含まない比較例4は、耐衝撃性が「△」であった。
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを含まず、かつ発泡倍率が17.9倍である比較例5は、耐衝撃性及び外観が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、耐衝撃性を高め、外観不良を抑制できることを確認できた。
【0117】
(実施例11~12)
以下の手順により、図1の発泡シート1と同様の発泡シートを得た。
表2に記載したタルクの量となるようにタルクMBの量を設定し、第一の単位発泡層の原料である(A1)成分、(B1)成分、(C1)成分、タルクMB及びカーボンを混合した。これらをバッチ式連続混合装置に投入した後に、タンデム押出機(スクリュー径90mmとスクリュー径115mmとを有する)のタンデム押出機の内の上流側押出機(スクリュー径90mm)のホッパーに供給した。
上流側の押出機では、シリンダー温度の最高設定温度を280℃とし、樹脂に発泡剤を加えて第一の発泡性樹脂組成物とし、第一の発泡性樹脂組成物を下流側の押出機に供給した。
下流側の押出機では、第一の発泡性樹脂組成物を120kg/hの割合で合流金型へ供給した。
表2に記載したタルクの量となるようにタルクMBの量を設定し、第二の単位発泡層の原料である(A2)成分、タルクMB及びカーボンを混合した。これらをバッチ式連続混合装置に投入した後に、他のタンデム押出機別のタンデム押出機(スクリュー径90mmとスクリュー径115mmとを有する)の上流側押出機(スクリュー径90mm)のホッパーに供給した。
上流側の押出機では、シリンダー温度の最高設定温度を260℃とし、発泡剤を加えて第二の発泡性樹脂組成物とし、第二の発泡性樹脂組成物を下流側の押出機に供給した。
下流側の押出機では、第二の発泡性樹脂組成物を120kg/hの割合で合流金型へ供給した。
合流金型に供給された第一の発泡性樹脂組成物と第二の発泡性樹脂組成物とを合流金型内で合流、積層した後に、積層物を環状ダイ(直径175mm、スリットクリアランス0.5mm)に供給し、ダイのスリットを通して円筒状の発泡シートを形成した。その直後に、円筒状の発泡体にエアーをかけて調整して冷却し、直径675mmの冷却装置(マンドレル)の外面に沿って引取り、次いで押出方向に沿って2枚に切り開き、幅1050mmの発泡シートを得た。
エアー温度は31℃とし、吹き付け量は、内側の第一の単位発泡層側では0.053m/m、外側の第1発泡層側では0.032m/mとした。
発泡ガスの置換のため、発泡シートを製造後14日間保管した。HIPS(A2-2と同じ)を最高温度240℃に設定した押出機(直径120mm)で溶融し、これをTダイから発泡シートの一方の面に押し出し、厚さ100μmのフィルム状で積層した。その直後、HIPSの層の上に、CPP(無延伸ポリプロピレン)25μmとCPS20μm(大石産業SPH)とがドライラミネートされたフィルム(CPP/CPS45μm無地(商品名))をラミネートした。発泡シートの他方の面に、CPS(無延伸ポリスチレン)フィルム(厚さ20μm、大石産業SPH)を熱ラミネートして発泡シートを得た。
得られた発泡シートについて、耐熱性、耐衝撃性、外観を評価し、その結果を表中に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
表2に示すように、本発明を適用した実施例11及び12は、耐熱性、耐衝撃性及び外観の評価がいずれも「〇」であった。
【符号の説明】
【0120】
1、100、200、300 ポリスチレン系樹脂発泡シート
10、110 発泡層
12 第一の単位発泡層
14 第二の単位発泡層
20、220 第一の非発泡層
22 第一の単位非発泡層
24 第二の単位非発泡層
26 第三の単位非発泡層
30 第二の非発泡層
図1
図2
図3
図4