(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145353
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】住宅プラン提案システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20240101AFI20241004BHJP
【FI】
G06Q50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057665
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 吏
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC27
5L050CC27
(57)【要約】
【課題】居住者のプライバシーを考慮しつつ、居住者の実生活に即した最適な住宅プランを提案すること。
【解決手段】住宅プラン提案システムは、居住中の住宅内の複数の室のそれぞれに設けられる複数のセンサ(21)と、複数のセンサによる検知結果に基づいて、複数の室間における複数の居住者の移動を判定する移動判定手段(51)と、移動判定手段による判定結果に基づく居住者ごとの移動データを複数日に亘って蓄積する移動データ蓄積手段(52)とを備える。また、蓄積した居住者ごとの移動データをもとに、複数の住宅プランそれぞれの移動シミュレーションを行い、1日あたりの平均移動距離およびすれ違い頻度の少なくとも一方を含む生活行動特徴量に基づいて、複数の住宅プランの提案順位を算出する提案プラン算出手段(56)と、上位の住宅プランの間取り情報を、ユーザに提示するプラン表示手段(33)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅購入検討者に適した住宅プランを提案するための住宅プラン提案システムであって、
複数の住宅プランを記憶する記憶手段と、
居住中の住宅内の複数の室のそれぞれに設けられ、居住者の入退室を検知するための複数のセンサと、
前記複数のセンサによる検知結果に基づいて、前記複数の室間における複数の居住者の移動を判定する移動判定手段と、
前記移動判定手段による判定結果に基づく居住者ごとの移動データを複数日に亘って蓄積する移動データ蓄積手段と、
前記移動データ蓄積手段に蓄積した居住者ごとの移動データをもとに、前記記憶手段に記憶された前記複数の住宅プランそれぞれの移動シミュレーションを行い、1日あたりの平均移動距離およびすれ違い頻度の少なくとも一方を含む生活行動特徴量に基づいて、前記複数の住宅プランの提案順位を算出する提案プラン算出手段と、
前記提案プラン算出手段により算出された上位の住宅プランの間取り情報を、ユーザに提示するプラン表示手段とを備える、住宅プラン提案システム。
【請求項2】
前記生活行動特徴量は、平均移動距離およびすれ違い頻度の両方を含み、
前記プラン表示手段に表示する住宅プランの優先条件を、平均移動距離およびすれ違い頻度から選択するための選択手段をさらに備える、請求項1に記載の住宅プラン提案システム。
【請求項3】
前記プラン表示手段は、住宅プランの前記間取り情報とともに、当該住宅プランに対応する前記生活行動特徴量を表示する、請求項1または2に記載の住宅プラン提案システム。
【請求項4】
前記提案プラン算出手段は、前記移動データ蓄積手段に蓄積されたデータに基づいて、前記居住中の住宅に対応する生活行動特徴量の実測特徴量をさらに算出し、
前記プラン表示手段は、表示中の住宅プランに対応する前記生活行動特徴量と、前記実測特徴量とを併せて表示する、請求項3に記載の住宅プラン提案システム。
【請求項5】
前記センサは、赤外線センサであり、
居住者の身長データに基づいて、前記赤外線センサが検知した通過者を識別する通過者識別手段をさらに備える、請求項1に記載の住宅プラン提案システム。
【請求項6】
住宅購入検討者に適した住宅プランを提案するための住宅プラン提案プログラムであって、
居住中の住宅内の複数の室のそれぞれに設けられた複数のセンサによる検知結果に基づいて、前記複数の室間における複数の居住者の移動を判定するステップと、
前記判定するステップにおける判定結果に基づく居住者ごとの移動データを複数日に亘って記憶装置に蓄積するステップと、
前記記憶装置に蓄積した居住者ごとの移動データをもとに、前記記憶装置に事前に記憶された複数の住宅プランそれぞれの移動シミュレーションを行い、1日あたりの平均移動距離およびすれ違い頻度の少なくとも一方を含む生活行動特徴量に基づいて、前記複数の住宅プランの提案順位を算出するステップと、
前記算出するステップにおいて算出された上位の住宅プランの間取り情報を、ユーザに提示するステップとを、コンピュータに実行させる、住宅プラン提案プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅プラン提案システムおよびプログラムに関し、特に、住宅購入検討者に適した住宅プランを提案するための住宅プラン提案システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅購入検討者に住宅プランを提案する技術が、特開2021-140637号公報(特許文献1)に開示されている。この提案方法では、住人属性(家族人数)と住宅設備(キッチン・収納・給湯器)の使用状況情報、監視カメラから取得した移動動線、住人の満足度を対応させ、住人属性(家族人数)に応じたプラン提案をシステム化しており、住宅購入検討者の属性(家族人数)から満足度の高いプラン提案を提示している。
【0003】
また、特開2001-115658号公報(特許文献2)では、提案するプランに対して拠点(家事を行う場所)を設定すると、プランに対する動線を自動計算し、プランの平均移動距離を算出するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-140637号公報
【特許文献2】特開2001-115658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2では、提案するプランに対しての平均移動量を提示している。しかし、居住者の実際の生活行動の計測結果を考慮したものではないため、実生活との乖離が生じる可能性が高い。
【0006】
また、特許文献1では、カメラを用いて居住者の実際の生活行動を計測し、プラン提案している。しかし、実生活へのカメラの導入はプライバシー侵害の観点から、生活者から忌避されやすい。また、カメラを用いた画像処理は計算負荷が高く、電力確保の観点から既存の建物への導入は実現性が低くなる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、居住者のプライバシーを考慮しつつ、居住者の実生活に即した最適な住宅プランを提案することのできる住宅プラン提案システムおよびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う住宅プラン提案システムは、住宅購入検討者に適した住宅プランを提案するための住宅プラン提案システムである。当該システムは、複数の住宅プランを記憶する記憶手段と、居住中の住宅内の複数の室のそれぞれに設けられ、居住者の入退室を検知するための複数のセンサと、複数のセンサによる検知結果に基づいて、複数の室間における複数の居住者の移動を判定する移動判定手段と、移動判定手段による判定結果に基づく居住者ごとの移動データを複数日に亘って蓄積する移動データ蓄積手段とを備える。また、移動データ蓄積手段に蓄積した居住者ごとの移動データをもとに、記憶手段に記憶された複数の住宅プランそれぞれの移動シミュレーションを行い、1日あたりの平均移動距離およびすれ違い頻度の少なくとも一方を含む生活行動特徴量に基づいて、複数の住宅プランの提案順位を算出する提案プラン算出手段と、提案プラン算出手段により算出された上位の住宅プランの間取り情報を、ユーザに提示するプラン表示手段とを備える。
【0009】
好ましくは、生活行動特徴量は、平均移動距離およびすれ違い頻度の両方を含む。この場合、プラン表示手段に表示する住宅プランの優先条件を、平均移動距離およびすれ違い頻度から選択するための選択手段をさらに備えることが望ましい。
【0010】
好ましくは、プラン表示手段は、住宅プランの間取り情報とともに、当該住宅プランに対応する生活行動特徴量を表示する。
【0011】
より好ましくは、提案プラン算出手段は、移動データ蓄積手段に蓄積されたデータに基づいて、居住中の住宅に対応する生活行動特徴量の実測特徴量をさらに算出する。この場合、プラン表示手段は、表示中の住宅プランに対応する生活行動特徴量と、実測特徴量とを併せて表示することが望ましい。
【0012】
センサは、典型的には赤外線センサである。住宅プラン提案システムは、居住者の身長データに基づいて、赤外線センサが検知した通過者を識別する通過者識別手段をさらに備えることが望ましい。
【0013】
この発明の他の局面に従う住宅プラン提案プログラムは、住宅購入検討者に適した住宅プランを提案するための住宅プラン提案プログラムであって、居住中の住宅内の複数の室のそれぞれに設けられた複数のセンサによる検知結果に基づいて、複数の室間における複数の居住者の移動を判定するステップと、判定するステップにおける判定結果に基づく居住者ごとの移動データを複数日に亘って記憶装置に蓄積するステップと、記憶装置に蓄積した居住者ごとの移動データをもとに、記憶装置に事前に記憶された複数の住宅プランそれぞれの移動シミュレーションを行い、1日あたりの平均移動距離およびすれ違い頻度の少なくとも一方を含む生活行動特徴量に基づいて、複数の住宅プランの提案順位を算出するステップと、算出するステップにおいて算出された上位の住宅プランの間取り情報を、ユーザに提示するステップとを、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、居住者のプライバシーを考慮しつつ、居住者の実生活に即した最適な住宅プランを提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る住宅プラン提案システムを実現するための装置構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る住宅プラン提案システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態における初期設定方法を示すフローチャートである。
【
図4】(A),(B)は、本発明の実施の形態における間取り設定画面例を示す図である。
【
図5】(A)は、本発明の実施の形態におけるセンサ設定画面例を示す図であり、(B)は、赤外線センサの設置例を示す図である。
【
図6】(A)は、ユーザ管理部のデータ構造例を示し、(B)は、間取りデータ蓄積部のデータ構造例を示し、(C)は、センサ管理部のデータ構造例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態における通過者の識別方法を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態における移動判定方法を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施の形態における移動判定方法により対応可能な移動パターンを示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態における移動距離算出方法を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施の形態における移動距離算出方法の説明図である。
【
図12】本発明の実施の形態におけるすれ違い判定方法を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施の形態におけるすれ違い判定方法の説明図である。
【
図14】(A)は、移動データ蓄積部のデータ構造例を示す図であり、(B)は、すれ違いデータ蓄積部のデータ構造例を示す図である。
【
図15】本発明の実施の形態における提案プランの算出方法を示すフローチャートである。
【
図16】(A)は、住宅プラン記憶部のデータ構造例を示す図であり、(B)は、提案プラン蓄積部のデータ構造例を示す図である。
【
図17】本発明の実施の形態における提案プランの表示方法を示すフローチャートである。
【
図18】本発明の実施の形態における提案プランの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
本実施の形態に係る住宅プラン提案システムは、一例として、戸建てまたは他のマンションの購入を検討している家族(夫婦および子供2人を含む)に、実際の生活行動に基づいた最適な住宅プランを提案する。本実施の形態では、住宅購入検討者が、居住中の住宅の「室」に自身で赤外線センサを設置するとともに、自身で端末(タブレット等)を用いて間取り等を入力することで、本システムを利用可能とする例について説明する。
【0018】
本明細書において「室」とは、住宅の屋内に位置する部屋空間と、ベランダ、テラスなど住宅に付随する半屋外空間とを含む。また、屋内の「部屋空間」は、間仕切り壁による仕切りの有無に関わらず、機能的に仕切られた空間を表わし、廊下、階段などの通路を含まない。
【0019】
<全体構成>
図1を参照して、本実施の形態に係る住宅プラン提案システム1の全体構成例について説明する。
図1は、住宅プラン提案システム1を実現するための装置構成を模式的に示す図である。
【0020】
図1に示すように、住宅プラン提案システム(以下「システム」と略す)1は、主に、複数の赤外線センサモジュール2と、設定入力端末3と、データ収集サーバ4と、生活行動分析クラウド5とを備えている。これらの装置は、ネットワーク(インターネットを含む)を介して通信可能に接続されている。
【0021】
典型的には、赤外線センサモジュール2、設定入力端末3、およびデータ収集サーバ4は、住宅購入検討者の自宅(居住中の住宅)に配置される。データ収集サーバ4および生活行動分析クラウド5は、住宅メーカーにより管理される。
【0022】
赤外線センサモジュール2は、赤外線距離センサ(以下「赤外線センサ」という)を含み、たとえば室の出入り口の扉上の壁に取り付けられる(
図5(B)参照)。壁への着脱を容易にするために、
図1に示すように、赤外線センサモジュール2は、たとえば両面テープ20b付きの金物20aに予め固定されている。赤外線センサモジュール2は、小型で省電力であるため、住宅購入検討者(以下「ユーザ」または「居住者」という)が生活する既存建物への導入が容易である。赤外線センサモジュール2を設置する扉が近接している場合の混線や誤検知を避けるため、複数の周波数をもち、切り替えが可能であることが望ましい。
【0023】
設定入力端末3は、ユーザ端末であり、たとえば、タッチパネルを有するタブレット端末により実現される。具体的には、設定入力端末3は、プロセッサと、たとえばタッチパネルにより実現される表示手段および操作手段と、メモリと、通信インターフェイスとを含む情報処理装置である。本実施の形態では、設定入力端末3によってユーザから既存建物の間取りや大きさ、センサ配置の情報を収集する構成である。これによって、様々な既存建物への対応が可能である。
【0024】
データ収集サーバ4は、各種情報を記憶する記憶装置を備えたサーバ装置である。データ収集サーバ4は、赤外線センサモジュール2が検知したセンサデータを蓄積するとともに、設定入力端末3によってユーザが設定した各種情報を記憶する。また、データ収集サーバ4は、生活行動分析クラウド5による分析結果に基づく情報を記憶する。データ収集サーバ4は、各種情報を記憶する不揮発性の記憶装置を含む。この記憶装置は、生活行動分析クラウド5と一体的に設けられていてもよい。
【0025】
生活行動分析クラウド5は、データ収集サーバ4にアクセス可能なクラウドサーバであり、住宅プラン提案装置として機能する。生活行動分析クラウド5は、プロセッサと、メモリと、通信インターフェイスとを含む情報処理装置である。
【0026】
生活行動分析クラウド5は、データ収集サーバ4のデータから居住者(大人)ごとの室間の移動を判定して、移動データとして蓄積する。また、蓄積した移動データをもとに住宅プランごとに分析し、各住宅プランに対応する居住者の生活行動特徴量を算出し、その算出結果に基づいて提案プラン(間取り)を抽出する。「生活行動特徴量」は、1日あたりの平均移動距離、および、1日あたりのすれ違い頻度を含む。
【0027】
生活行動分析クラウド5は、抽出した提案プランの間取り情報および分析結果(生活行動特徴量)を、直接またはデータ収集サーバ4を介して、設定入力端末3に送信する。これにより、設定入力端末3に、ユーザの実生活の生活行動を考慮した住宅プランが表示されるので、ユーザは最適な住宅プランを客観的に把握して選択することができる。
【0028】
<機能構成例>
図2は、本実施の形態に係る住宅プラン提案システム1の機能構成を示すブロック図である。
【0029】
図2に示すように、赤外線センサモジュール2は、赤外線発光器および赤外線受光器を含む赤外線センサ21と、通過者識別部22と、周波数制御部23と、キャリブレーション制御部24とを含む。通過者識別部22、周波数制御部23、およびキャリブレーション制御部24の機能は、赤外線センサ21と電気的に接続された制御装置のプロセッサにより実現される。この制御装置は、通信インターフェイスを有している。
【0030】
設定入力端末3は、センサ設定部31と、間取り設定部32と、提案プラン表示部33とを含む。センサ設定部31、間取り設定部32、および提案プラン表示部33の機能は、設定入力端末3のプロセッサがメモリに記録されたアプリケーション(ダウンロードされたものであってもよい)を実行することで実現可能である。
【0031】
データ収集サーバ4は、センサデータ蓄積部41と、ユーザ管理部42と、センサ管理部43と、間取りデータ蓄積部44と、提案プラン蓄積部45とを含む。住宅購入検討者は、本システム1の申し込み時に、1家庭に対し1つの識別IDが付与されており、上記記憶部41~45内のデータはこの識別IDに関連付けて記憶されているものとする。
【0032】
生活行動分析クラウド5は、移動判定部51と、移動データ蓄積部52と、移動距離算出部53と、すれ違い判定部54と、すれ違いデータ蓄積部55と、提案プラン算出部56と、住宅プラン記憶部57とを含む。移動判定部51、移動距離算出部53、すれ違い判定部54、および提案プラン算出部56は、生活行動分析クラウド5のプロセッサがメモリに記録されたアプリケーションを実行することで実現可能である。また、これらの機能部51,53,54,56の処理は、家庭ごとに付与された識別IDをキーとして実行される。
【0033】
移動データ蓄積部52、すれ違いデータ蓄積部55、および、住宅プラン記憶部57は、共通または個別の記憶装置により実現される。これらのうち移動データ蓄積部52およびすれ違いデータ蓄積部55のデータもまた、家庭ごとに付与された識別IDに関連付けて記憶されているものとする。住宅プラン記憶部57は、本システム1を運営する住宅メーカーにより提供可能な多数の住宅プランのデータを保持しており、このデータは随時更新可能である。
【0034】
図2に示す各ブロックの具体的な機能については、後述の動作例において説明する。
【0035】
<動作例>
次に、本実施の形態に係る住宅プラン提案システム1の動作について説明する。
【0036】
(初期設定)
図を参照して、設定入力端末3が実行する初期設定処理について説明する。
図3は、初期設定方法を示すフローチャートである。なお、
図3に示す処理は、設定入力端末3のプロセッサが、ユーザからの指示に応じて、本システム1を実行するためのアプリケーションソフトウェアを読み出して実行することにより実現される。
【0037】
図3を参照して、はじめに、タッチパネルにユーザ設定画面を表示し、ユーザ設定処理を実行する(ステップS1)。この処理では、ユーザが設定入力端末3のタッチパネルを用いて、家族の人数分(たとえば4人分)の身長を入力する。また、各居住者の属性(夫、妻、子など)を入力する。
【0038】
次に、間取り設定部32が、
図4(A)に示すような間取り設定画面をタッチパネルに表示して、間取り設定処理を実行する(ステップS2)。間取り設定画面は、間取り表示欄と、室選択欄とを含む。室選択欄では、ユーザが選択した室タイプ(リビング、浴室、など)に対応する室パーツが表示される。室選択欄に表示された室パーツを間取り表示欄にドラッグ等により順次移動させて、居住中の住宅の間取りを完成させることができる。間取りが完成すると、
図4(B)に示すように、室寸法設定画面を表示する。ユーザは、室ごとに、実測の大きさ(縦幅、横幅)を入力する。
【0039】
間取り設定が終わると、センサ設定部31が、
図5(A)に示すようなセンサ設定画面をタッチパネルに表示して、センサ設定処理を実行する(ステップS3)。センサ設定画面は、間取り表示欄と、センサ表示欄とを含む。センサ設定画面では、間取り表示欄に表示した間取り画像に、赤外線センサ21(赤外線センサモジュール2)を設置した場所を表示するとともに、センサ表示欄に各センサの設置高さの測定結果を表示する。なお、
図5(B)に示すように、赤外線センサモジュール2の赤外線センサ21は、距離センサであり、床までの距離(設置高さ)を基準値とする。そのため、赤外線センサ21が検知した距離が基準値と異なる場合(基準値未満となった場合)に、通過者がどの居住者であるかを識別可能である。赤外線センサモジュール2は、廊下側ではなく、室内に設けられることが望ましい。
【0040】
赤外線センサ21の設置高さの測定は、キャリブレーション制御部24によって実行可能である。また、この際、周波数制御部23による周波数の調整制御が可能である。
【0041】
上述の設定処理が終わると、各設定データをデータ収集サーバ4に記憶する(ステップS4)。設定データの構造例を
図6に示す。
【0042】
図6(A)は、ユーザ管理部42に記憶されるユーザ身長テーブルの一例である。ユーザ身長テーブルは、ユーザID(A、B、・・・)ごとに、人物タイプ(夫、妻、子1、子2など)および身長を格納している。
【0043】
図6(B)は、間取りデータ蓄積部44に記憶される間取りデータテーブルの一例である。間取りデータテーブルは、室ID(a、b、・・・)ごとに、室タイプ、室配置位置(x軸、y軸)、室寸法(縦幅、横幅)を格納するとともに、センサID(1、2、・・・)、センサの設置位置(高さ)を格納する。これにより、赤外線センサ21と室とが1対1で対応付けられる。また、他の室と親子関係がある場合には、親側の室IDに対応付けて、子の室IDを格納する。親子関係とは、ある室の出入り口(扉)が他の室との境界に設けられており、廊下や階段などの通路を介することなく室間を出入りする関係をいう。たとえば、リビングとベランダは、親子関係である。
【0044】
図6(C)は、センサ管理部43に記憶されるセンサ設定テーブルの一例である。センサ設定テーブルは、センサID(1、2、・・・)ごとに、床面までの距離(設置高さ)、設定周波数、屋内外種別を格納する。屋内外種別は、赤外線センサ21を設置した室が屋内の室か屋外の室かを識別するためのデータであり、このような屋内外種別は、たとえばセンサ設定処理において設定可能である。センサ設定テーブルにおいても、室IDおよび子IDが格納されていてもよい。
【0045】
上述の初期設定が完了すると、ユーザ管理部42、センサ管理部43、および間取りデータ蓄積部44の記憶データ、および、赤外線センサ21による検知データ(センサデータ)を利用した居住者の生活行動の検出が可能となる。
【0046】
<生活行動検出フェーズ>
生活行動検出フェーズでは、赤外線センサ21が有効化され、常時、居住者識別処理が実行される。また、定期的に(たとえば1日に1回、同時刻に)、移動判定処理、移動距離算出処理、および、すれ違い判定処理が実行される。
【0047】
(通過者識別処理)
まず、
図7を参照して、各赤外線センサモジュール2の通過者識別部22が実行する処理について説明する。
図7は、通過者の識別方法を示すフローチャートである。
【0048】
通過者識別部22は、センサ設定テーブル(
図6(C)から自センサのデータを取得する(ステップS11)。
【0049】
通過者識別部22は、赤外線センサ21による計測データを取得し(ステップS12)、取得した計測データの周波数が自センサの設定周波数である場合に限り、次の処理に移行する(ステップS13にてYES)。これにより、他室に設置された赤外線センサ21に対する反応を自センサの反応と誤検知することを防止することができる。
【0050】
赤外線センサ21により計測された距離が床距離より閾値を以下であれば(ステップS14にてYES)、最小値を更新する(ステップS15)。床距離を再び検知すると(ステップS16にてYES)、直前の最小値をもとに、通過者の身長Xを算出する(ステップS17)。すなわち、センサ設定テーブルに記録されている床距離(設置高さ)から最小値を引いた値を、通過者の身長Xとして算出する。
【0051】
次に、ユーザ身長テーブルから大人(夫婦)であるユーザA、Bのデータを取得する(ステップS18)。ユーザAの身長の方がユーザBの身長よりも高い場合、ステップS17で算出した身長Xが、ユーザAの身長以下、かつユーザBの身長以上であるか否かを判定する(ステップS19)。そうであれば、通過者がユーザAと特定し(ステップS20)、通過者データをセンサデータ蓄積部41に登録する(ステップS21)。
【0052】
ステップS17で算出した身長Xが上記範囲にない場合、他のユーザの身長との比較を行い、対象者がいなければ(ステップS22にてYES)、通過者を不明と特定する(ステップS23)。
【0053】
センサデータ蓄積部41には、全ての赤外線センサ21による検知結果が時系列に記憶される。具体的には、通過者を検知した日付および時刻と、赤外線センサ21のセンサIDと、特定されたユーザIDとを含むログデータが、通過者データとして蓄積される。このような通過者データは、複数日数(たとえば2週間~1ヶ月)分、蓄積される。
【0054】
(移動判定処理)
次に、
図8を参照して、生活行動分析クラウド5の移動判定部51が実行する処理について説明する。
図8は、センサデータ蓄積部41に蓄積された通過者データに基づく移動判定方法を示すフローチャートである。
【0055】
移動判定部51は、たとえば毎日、センサデータ蓄積部41に記憶された通過者データからユーザAのデータを取得する(ステップS31)。次に、センサ管理部43のセンサ設置テーブルからデータを取得する(ステップS32)。ステップS31で取得したデータから、ユーザAの時系列tのセンサIDと次のセンサIDを比較し(ステップS33)、同じセンサIDで2回連続検知したか否かを判定する(ステップS34)。
【0056】
同じセンサIDで2回連続検知した場合(ステップS34にてYES)、そのセンサIDに対応する室にユーザAが滞在していたと判定し(ステップS40)。これに対し、時間的に連続する2つのセンサIDが異なるIDである場合(ステップS34にてNO)、ユーザAが移動したと判定する(ステップS35)。
【0057】
ユーザAが移動したと判定されると(ステップS35)、移動データ蓄積部52の移動データテーブルに、移動元および移動先のデータを蓄積する(ステップS36)。移動データテーブルの具体例を
図14(A)に示す。
【0058】
図14(A)を参照して、移動データテーブルは、ユーザID、移動元センサID、移動元室ID、移動元部屋タイプ、移動元センサによる検知日時、移動先センサID、移動先部屋ID、移動先部屋タイプ、移動先センサによる検知日時、移動時間を格納するとともに、後述の移動距離算出結果を格納する。
【0059】
再び
図8を参照して、次に、移動だけでなく滞在も含まれる場合の例外条件を判定する。この例外条件は、時間的に連続する2つのセンサIDに対応する室IDが親子関係である場合(ステップS37)、および、移動時間(1回目の検知時刻と2回目の検知時刻との時間間隔)が閾値以上である場合(ステップS38)を含む。つまり、これらの例外条件にあてはまると、ステップS40(滞在判定)に進む。
【0060】
なお、上述の移動判定処理により、
図9に示すような移動パターンに対応可能である。
図9(1)は、通常移動の検知フローを示し、
図9(2)は、室に扉(出入口)が二つ以上存在する場合の検知フローを示し、
図9(3)は、二人同時に入れ違いで同時刻に同じ扉を通過し、一人しか検知できなかった場合のフローを示している。(3)のパターンはステップS38の移動時間を判別することで、対応可能である。
【0061】
(移動距離算出処理)
続いて、
図10を参照して、生活行動分析クラウド5の移動距離算出部53が実行する処理について説明する。
図10は、移動データ蓄積部52に蓄積された移動データに基づく移動距離算出方法を示すフローチャートである。
【0062】
移動距離算出部53は、移動データ蓄積部52の移動データテーブルを読み込み(ステップS51)、ユーザAのデータのみ抽出する(ステップS52)。移動元と移動先の部屋が親子関係ではない場合(ステップS53にてNO)、廊下を挟んだ移動であると判定する。一方、移動元と移動先の部屋が親子関係である場合(ステップS53にてYES)、廊下を挟まない移動であると判定する。
【0063】
図11に示す洗面所からリビングへの移動のように、廊下を挟んだ移動であると判定された場合、i)移動元の室(部屋)中心からセンサ位置までの距離、ii)移動元センサから移動先センサまでの距離、iii)移動元センサから移動先センサまでの距離をそれぞれ算出する(ステップS54~S56)。そして、i)~iii)の値の積算値を、移動距離として移動データテーブルに記録する(ステップS59)。
【0064】
図11に示すリビングからバルコニーへの移動のように、廊下を挟まない移動であると判定された場合、i)移動元センサから移動先センサまでの距離、ii)移動先のセンサ位置から室中心までの距離をそれぞれ算出する(ステップS57,S58)。そして、i)およびii)の値の積算値を、移動距離として移動データテーブルに記録する(ステップS59)。
【0065】
ユーザAについて1日分の算出が完了すると(ステップS60)、大人(夫・妻)の算出が完了したか否かを判定する(ステップS61)。未完了である場合(ステップS61にてNO)、抽出対象のユーザを他のユーザに切り替えて、上記と同様の処理を実行する。
【0066】
(すれ違い判定処理)
最後に、
図12を参照して、生活行動分析クラウド5のすれ違い判定部54が実行する処理について説明する。
図12は、移動データ蓄積部52に蓄積された移動データに基づくすれ違い判定方法を示すフローチャートである。
【0067】
すれ違い判定部54は、移動データ蓄積部52の移動データテーブルを読み込み(ステップS71)、同時刻に発生する移動を抽出する(ステップS72)。移動元と移動先の室が親子関係ではなく独立している場合(ステップS73にてYES)、廊下を挟んだ移動であるため、次に、すれ違いの有無を判定する。
【0068】
すなわち、各ユーザの移動元から移動先の方向を算出(判別)し(ステップS74)、両ユーザの移動方向が反対方向であるか否かを判定する(ステップS75)。
図13に示すように身長の異なる2人の居住者(大人)の移動方向が反対方向であれば(ステップS75にてYES)、すれ違いが生じたと判定し、今回の判定結果をすれ違いデータ蓄積部55のすれ違いデータテーブルに記録する(ステップS76)。すれ違いデータテーブルの具体例を
図14(B)に示す。
【0069】
図14(B)を参照して、すれ違いデータテーブルは、すれ違いが生じた日時、Y軸正方向に移動したユーザID、Y軸正方向移動の移動元部屋タイプおよび移動先部屋タイプ、Y軸負方向に移動したユーザID、Y軸負方向の移動元部屋タイプおよび移動先部屋タイプを格納する。なお、
図13の例では、玄関からリビングまで延びる廊下をY軸とすると、たとえば玄関側からリビング側に向かう移動方向がY軸正方向(実線矢印で示す)であり、反対に、リビング側から玄関側に向かう移動方向がY軸負方向(破線矢印で示す)である。
【0070】
<プラン提案フェーズ>
ユーザが設定入力端末3を用いて住宅プランの検索要求が入力されたことに応じて、本システム1は、生活行動検出フェーズからプラン提案フェーズに移行する。プラン提案フェーズでは、生活行動分析クラウド5において、生活行動検出フェーズで蓄積された各種データ(生活行動データ)に基づいて、提案プラン算出処理が実行された後、設定入力端末3において、提案プラン表示処理が実行される。
【0071】
(提案プラン算出処理)
図15を参照して、生活行動分析クラウド5の提案プラン算出部56が実行する処理について説明する。
図15は、提案プランの算出方法を示すフローチャートである。
【0072】
提案プラン算出部56はまず、住宅プラン記憶部57に予め記憶されている住宅プランデータテーブルを読み込む(ステップS81)。住宅プランデータテーブルの具体例を
図16(A)に示す。
【0073】
続いて、移動データテーブル(
図14(A))およびすれ違いデータテーブル(
図14(B))を読み込む(ステップS82)。
【0074】
提案プラン算出部56は、移動データテーブルの移動元および移動先の室タイプをもとに、住宅プラン記憶部57に記憶されている複数の住宅プランそれぞれの移動シミュレーションを行う。つまり、各居住者の実際の生活行動(室間の移動)を各住宅プランにあてはめて、住宅プランごとに生活行動特徴量を分析する。具体的には、各住宅プランでの1日あたりの平均移動距離を算出する(ステップS83)。また、すれ違いデータテーブルの移動元および移動先の室タイプをもとに各住宅プランでの1日あたりの平均すれ違い頻度を算出する(ステップS84)。
【0075】
提案プラン算出部56は、これらの算出結果をもとに、住宅プランのレコメンド順番(優先順位)を算出する(ステップS85)。平均移動距離でのレコメンド順番、および、すれ違い頻度でのレコメンド順番を個別に算出し、提案プラン蓄積部45の提案住宅プランデータテーブルに算出データを蓄積する(ステップS85)。提案住宅プランデータテーブルの具体例が、
図16(B)に示される。平均移動距離が短いほど、上位の順位であり、すれ違い頻度が少ないほど、上位の順位である。
【0076】
(提案プラン表示処理)
図17を参照して、設定入力端末3の提案プラン表示部33が実行する処理について説明する。
図17は、提案プランの表示方法を示すフローチャートである。
【0077】
提案プラン表示部33は、提案プラン蓄積部45の提案住宅プランデータテーブルを読み込む(ステップS91)。提案プラン表示部33は、平均移動距離またはすれ違い頻度のレコメンド順番が上位の住宅プランをタッチパネルに表示する(ステップS92)。
図18は、提案プランの表示例を示す図である。
【0078】
図18の表示例では、設定入力端末3の表示画面に、たとえば平均移動距離によるレコメンド順番が上位の住宅プラン(間取り)が表示されている。また、表示中の住宅プランによる平均移動距離および平均すれ違い頻度が、居住者(夫婦)ごとに示されている。これにより、購入後の生活をイメージしやすくすることができる。
【0079】
表示画面には、順送りの矢印ボタンB4が示されており、このボタンB4を選択することで、下位の住宅プランを表示可能となっている。また、表示画面には、優先条件を選択するための選択ボタンB1,B2が表示されており、表示中の住宅プランの優先条件(レコメンド軸)が識別可能に表示されている。
【0080】
ユーザからレコメンド軸の切替指示があり(ステップS93にてYES)、たとえば優先条件が平均移動距離からすれ違い頻度に切り替えられた場合、提案プラン表示部33は、すれ違い頻度によるレコメンド順番が上位の住宅プランを画面に表示する(ステップS92)。このように、優先条件を選択するための選択手段として、選択ボタンB1,B2が表示されるので、ユーザは、容易に、異なる観点でのお勧めの住宅プランを把握することができる。
【0081】
ユーザが一つの住宅プランを選択した状態で決定ボタンB3を選択すると(ステップS94にてYES)、一連の処理が終了する。
【0082】
なお、
図18の画面例では、各住宅プランを選択した場合に想定される1日あたりの平均移動距離およびすれ違い頻度が表示されているが、これと併せて、居住中の住宅に対応する生活行動特徴量の実測特徴量、すなわち実測平均移動距離および実測すれ違い頻度を表示することが望ましい(図示せず)これらの実測特徴量は、提案プラン算出部56が、移動データ蓄積部52およびすれ違いデータ蓄積部55に蓄積されたデータから算出可能である。このように、各住宅プランに対応する生活行動特徴量と、実測特徴量とが併せて表示されることにより、居住中の住宅と比較した客観的な検討が可能となる。
【0083】
また、
図18の画面例では、平均移動距離およびすれ違い頻度を数値として表示した例を示したが、このような例に限定されず、たとえばグラフ表示されていてもよい。
【0084】
<本システムの効果>
本実施の形態に係るシステム1は、複数の住宅プランを記憶する住宅プラン記憶部57と、居住中の住宅内の複数の室のそれぞれに設けられ、居住者の入退室を検知するための複数の赤外線センサ21と、複数の赤外線センサ21による検知結果に基づいて、複数の室間における複数の居住者の移動を判定する移動判定部51と、移動判定部51による判定結果に基づく居住者ごとの移動データを複数日に亘って蓄積する移動データ蓄積部52とを備えている。また、移動データ蓄積部52に蓄積した居住者ごとの移動データをもとに、住宅プラン記憶部57に記憶された複数の住宅プランそれぞれの移動シミュレーションを行い、1日あたりの平均移動距離およびすれ違い頻度を含む生活行動特徴量に基づいて、複数の住宅プランの提案順位を算出する提案プラン算出部56と、提案プラン算出部56により算出された上位の住宅プランの間取り情報を、ユーザに提示する提案プラン表示部33とを備えている。
【0085】
本実施の形態に係るシステム1は、赤外線センサ21により居住者の入退室を検知する構成であるため、カメラのようなプライバシー侵害の不安なく、居住者の生活行動を正確に把握することができる。また、赤外線センサ21は小型かつ安価、省電力であるため、既存建物でも導入が容易である。
【0086】
また、本実施の形態では、移動判定部51が、室の親子関係や移動時間の閾値を考慮して、室間の移動を判定するため、赤外線センサ21のような簡易な検知手段を用いた場合でも、ロバストに行動把握ができる。
【0087】
また、本実施の形態では、提案プラン算出部56が、居住者の実際の生活行動の計測結果を用いて、住宅プランの提案順位を算出するため、実生活に即した最適な住宅プランを提供することができる。したがって、ユーザは、客観的に、購入する住宅プランを検討することができる。また、事業者は、住宅購入検討者に明確なメリットを提示することができるので、主観的評価による失注を防ぐことができる。
【0088】
また、本実施の形態では、提案プランの抽出に用いる生活行動特徴量として、家事動線や身支度動線の長さに直結する「平均移動距離」だけでなく、廊下などの通路における家事動線や身支度動線の接触頻度(同時刻での対向頻度)を表わす「すれ違い頻度」を採用している。そのため、このような生活行動特徴量をもとに住宅プランを提案することにより、ユーザは、家事や身支度の効率化が可能な住宅プランの購入を検討することができる。したがって、本システム1は、共働き家庭や子育て世帯に有効である。
【0089】
なお、生活行動特徴量は、平均移動距離およびすれ違い頻度の両方を含むことが望ましいものの、いずれか一方のみ(たとえばすれ違い頻度のみ)を含んでいてもよい。
【0090】
また、来客時に誤判定することを防止するために、来客の時間帯は赤外線センサ2を無効化できるようにしてもよい。
【0091】
また、本実施の形態では、センサデータ蓄積部41に蓄積された通過者データに基づいて、ユーザの移動を判定する例について説明したが、同データに基づいて、室での滞在を判定することも可能である。この場合、室のタイプおよび滞在時間から、ユーザの家事(たとえば洗濯物を干す、食事を準備する、など)にかかる時間を特定することができるので、この特定結果からユーザに適した住宅設備(たとえば浴室乾燥機、食洗器など)を提供することも可能である。
【0092】
上述の生活行動分析クラウド5が実行するプログラムを、住宅プラン提供プログラムとして提供してもよい。このプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0093】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0094】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1 住宅プラン提案システム、2 赤外線センサモジュール、3 設定入力端末、4 データ収集サーバ、5 生活行動分析クラウド、21 赤外線センサ、22 通過者識別部、23 周波数制御部、24 キャリブレーション制御部、31 センサ設定部、32 間取り設定部、33 提案プラン表示部、41 センサデータ蓄積部、42 ユーザ管理部、43 センサ管理部、44 間取りデータ蓄積部、45 提案プラン蓄積部、51 移動判定部、52 移動データ蓄積部、53 移動距離算出部、54 すれ違い判定部、55 すれ違いデータ蓄積部、56 提案プラン算出部、57 住宅プラン記憶部。