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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145355
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】出力切替装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 35/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F16H35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057668
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】草部 将吾
(57)【要約】
【課題】環境に依らずに使用できる新規な出力切替装置を提供する。
【解決手段】出力切替装置100は、動力源Mからの入力を、ギヤ比を切り替え可能に伝達して出力する。出力切替装置100は、動力源Mの出力軸Maの回転に対して第1ギヤ比で回転可能な微動出力軸10aを含む内部ダイアル機構10と、出力軸Maの回転に対して第2ギヤ比で回転可能な粗動出力軸20aを含む外部ダイアル機構20と、内部ダイアル機構10と外部ダイアル機構20との接続を切り替え可能なロック機構30と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源からの入力を、ギヤ比を切り替え可能に伝達して出力する出力切替装置であって、
前記動力源の出力軸の回転に対して第1ギヤ比で回転可能な微動出力軸を含む内部ダイアル機構と、
前記出力軸の回転に対して第2ギヤ比で回転可能な粗動出力軸を含む外部ダイアル機構と、
前記内部ダイアル機構と前記外部ダイアル機構との接続を切り替え可能なロック機構と、を備える
出力切替装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記内部ダイアル機構に係脱自在な内部バーと、前記外部ダイアル機構に係脱自在な外部バーと、前記内部バーと前記外部バーに係止可能なレバーを有する
請求項1に記載の出力切替装置。
【請求項3】
前記内部バーは、前記微動出力軸に向けて弾性的に付勢されている
請求項2に記載の出力切替装置。
【請求項4】
前記外部バーは、前記微動出力軸に向けて弾性的に付勢されている
請求項2又は請求項3に記載の出力切替装置。
【請求項5】
前記レバーは、前記微動出力軸に向けて弾性的に付勢されている
請求項2又は請求項3に記載の出力切替装置。
【請求項6】
前記レバーは、前記外部ダイアル機構に回動自由に支持される回動軸と、前記内部ダイアル機構に係止可能な内部側係止片と、前記外部バーから作用を受ける外部側係止片と、を備える
請求項2又は請求項3に記載の出力切替装置。
【請求項7】
前記内部ダイアル機構は、
前記微動出力軸に沿う方向に突出する第1内部ピン、及び、前記内部バーを係止可能な第1内部係止溝を形成し、前記微動出力軸に対して同位相で回転する第1内部回転体と、
前記微動出力軸に沿う方向に突出し、前記第1内部ピンに当接可能な第2内部突起、及び、前記内部バーを係止可能な第2内部係止溝を形成し、前記微動出力軸の中心軸を基準として自在に回転可能な第2内部回転体と、を有し、
前記内部バーは、前記第1内部係止溝及び前記第2内部係止溝に嵌る連結位置と、前記第1内部係止溝及び前記第2内部係止溝から離れた分離位置との間で進退することで前記内部ダイアル機構と前記外部ダイアル機構との連結と分離とを切り替え可能である
請求項6に記載の出力切替装置。
【請求項8】
前記外部ダイアル機構は、
前記内部ダイアル機構の外方に配置され、前記微動出力軸に沿う方向に突出する第1外部ピン、及び、前記外部バーを係止可能な第1外部係止溝を形成し、前記内部ダイアル機構と同軸で回転可能な第1外部回転体と、
前記内部ダイアル機構の外方に配置され、前記微動出力軸に沿う方向に突出し、前記第1外部ピンに当接可能な第2外部突起、及び、前記外部バーを係止可能な第2外部係止溝を形成し、前記内部ダイアル機構と同軸で回転可能な第2外部回転体を有し、
前記外部バーは、前記第1外部係止溝及び前記第2外部係止溝に嵌る接続位置と、前記第1外部係止溝及び前記第1外部係止溝から離れた解除位置との間で進退可能である
請求項7に記載の出力切替装置。
【請求項9】
前記第1内部回転体は、前記第1内部係止溝の溝底と外周面とを滑らかに繋ぐ内部スロープを有し、
前記第1外部回転体は、前記第1外部係止溝の溝底と外周面とを滑らかに繋ぐ外部スロープを有し、
前記内部スロープと前記外部スロープとは、左右対称的に配置される
請求項8に記載の出力切替装置。
【請求項10】
前記ロック機構と連動して前記微動出力軸に対して係脱自在であり、前記微動出力軸の回転を伝達する伝達機構と、前記伝達機構で伝達された回転を出力する拡張出力軸と、を有する拡張装置を備える
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の出力切替装置。
【請求項11】
前記ロック機構と連動する切替フレームと、前記内部ダイアル機構の回転を伝達可能な伝達機構と、前記伝達機構で伝達された回転を、前記切替フレームで切り替えて出力可能な第1出力軸及び第2出力軸を有する遊星歯車機構と、を備える
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の出力切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷となる対象物に対して、ギヤ比を切り替える出力切替装置を介して動力を伝達する動力伝達装置が知られている(特許文献1-5)。また、負荷となる対象物に対して、長いストロークで比較的大雑把に駆動する粗動(mmからμmのスケール)と、短いストロークで比較的精密に駆動する微動(μmからnmのスケール)とを切り替え可能に動力を伝達する動力伝達装置が知られている(特許文献6、非特許文献1ー2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-97528号公報
【特許文献2】特開平6-87363号公報
【特許文献3】特開昭64-30850号公報
【特許文献4】特開平6-156123号公報
【特許文献5】特許第4880088号公報
【特許文献6】米国特許第6478434号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】NASA Langley Research Center, “Type 2 Actuator, Final Report”, Alson E. Hatheway Inc., AEH Document No. 93607, Rev A 30 August 1999
【非特許文献2】Robert M. Warden, “Cryogenic Nano-Actuator for JWST”, Proceedings of the 38th Aerospace Mechanisms Symposium, Langley Research Center, May 17-79, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の動力伝達装置は、電磁クラッチを用いてギヤ比を切り替える場合、電気制御回路を要するものであるので、機械式のクラッチを用いた場合と比べて、一般的に、不具合の発生リスクが比較的高くなる。機械式のクラッチを用いてギヤ比を切り替える場合、物理的な外力を人間の直接的な操作により作用させる必要がある。これらの要因により、ギヤ比を切り替える出力切替装置は、環境によって使用を制限される場合があった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、環境に依らずに使用できる新規な出力切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る一態様は、動力源からの入力を、ギヤ比を切り替え可能に伝達して出力する出力切替装置であって、前記動力源の出力軸の回転に対して第1ギヤ比で回転可能な微動出力軸を含む内部ダイアル機構と、前記出力軸の回転に対して第2ギヤ比で回転可能な粗動出力軸を含む外部ダイアル機構と、前記内部ダイアル機構と前記外部ダイアル機構との接続を切り替え可能なロック機構と、を備える。
(2)上記(1)において、前記ロック機構は、前記内部ダイアル機構に係脱自在な内部バーと、前記外部ダイアル機構に係脱自在な外部バーと、前記内部バーと前記外部バーに係止可能なレバーを有してよい。
(3)上記(2)において、前記内部バーは、前記微動出力軸に向けて弾性的に付勢されていてよい。
(4)上記(2)又は(3)において、前記外部バーは、前記微動出力軸に向けて弾性的に付勢されていてよい。
(5)上記(2)又は(3)において、前記レバーは、前記微動出力軸に向けて弾性的に付勢されていてよい。
(6)上記(2)又は(3)において、前記レバーは、前記外部ダイアル機構に回動自由に支持される回動軸と、前記内部ダイアル機構に係止可能な内部側係止片と、前記外部バーから作用を受ける外部側係止片と、を備えてよい。
(7)上記(6)において、前記内部ダイアル機構は、前記微動出力軸に沿う方向に突出する第1内部ピン、及び、前記内部バーを係止可能な第1内部係止溝を形成し、前記微動出力軸に対して同位相で回転する第1内部回転体と、前記微動出力軸に沿う方向に突出し、前記第1内部ピンに当接可能な第2内部突起、及び、前記内部バーを係止可能な第2内部係止溝を形成し、前記微動出力軸の中心軸を基準として自在に回転可能な第2内部回転体と、を有し、前記内部バーは、前記第1内部係止溝及び前記第2内部係止溝に嵌る連結位置と、前記第1内部係止溝及び前記第2内部係止溝から離れた分離位置との間で進退することで前記内部ダイアル機構と前記外部ダイアル機構との連結と分離とを切り替え可能であってよい。
(8)上記(7)において、前記外部ダイアル機構は、前記内部ダイアル機構の外方に配置され、前記微動出力軸に沿う方向に突出する第1外部ピン、及び、前記外部バーを係止可能な第1外部係止溝を形成し、前記内部ダイアル機構と同軸で回転可能な第1外部回転体と、前記内部ダイアル機構の外方に配置され、前記微動出力軸に沿う方向に突出し、前記第1外部ピンに当接可能な第2外部突起、及び、前記外部バーを係止可能な第2外部係止溝を形成し、前記内部ダイアル機構と同軸で回転可能な第2外部回転体を有し、前記外部バーは、前記第1外部係止溝及び前記第2外部係止溝に嵌る接続位置と、前記第1外部係止溝及び前記第1外部係止溝から離れた解除位置との間で進退可能であってよい。
(9)上記(8)において、前記第1内部回転体は、前記第1内部係止溝の溝底と外周面とを滑らかに繋ぐ内部スロープを有し、前記第1外部回転体は、前記第1外部係止溝の溝底と外周面とを滑らかに繋ぐ外部スロープを有し、前記内部スロープと前記外部スロープとは、左右対称的に配置されてよい。
(10)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記ロック機構と連動して前記微動出力軸に対して係脱自在であり、前記微動出力軸の回転を伝達する伝達機構と、前記伝達機構で伝達された回転を出力する拡張出力軸と、を有する拡張装置を備えてよい。
(11)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記ロック機構と連動する切替フレームと、前記内部ダイアル機構の回転を伝達可能な伝達機構と、前記伝達機構で伝達された回転を、前記切替フレームで切り替えて出力可能な第1出力軸及び第2出力軸を有する遊星歯車機構と、を備えてよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、環境に依らずに使用できる新規な出力切替装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る出力切替装置を示す説明図である。
図2図1の出力切替装置の断面を示す説明図である。
図3】出力切替装置の詳細版及び簡易版を示す説明図である。
図4】出力切替装置の詳細版及び簡易版を示す断面図である。
図5】内部バーが分離位置にある状態の内部ダイアル機構を示す説明図である。
図6図5の状態から微動出力軸を反時計回りに約180度回転させた状態における内部ダイアル機構を示す説明図である。
図7】外部バーが接続位置にある状態のレバーの姿勢を示す説明図である。
図8】外部バーが解除位置にある状態のレバーの姿勢を示す説明図である。
図9】内部バーが分離位置にある状態と連結位置にある状態とを示す説明図である。
図10】外部バーが接続位置にある状態の外部ダイアル機構を示す説明図である。
図11図10の状態から微動出力軸を反時計回りに約180度回転させた状態における外部ダイアル機構20を示す説明図である。
図12図11の状態から微動出力軸を反時計回りに約180度回転させた状態における外部ダイアル機構20を示す説明図である。
図13図12の状態から微動出力軸を反時計回りに約180度回転させた状態における外部ダイアル機構20を示す説明図である。
図14】(A)は、内部バーが連結位置にあり、外部バーが接続位置にある状態の出力切替装置を中心軸方向にみた説明図である。(B)は、内部バーが連結位置にあり、外部バーが接続位置から解除位置に移動している状態の出力切替装置を中心軸方向にみた説明図である。(C)は、内部バーが連結位置にあり、外部バーが解除位置にある状態の出力切替装置を中心軸方向にみた説明図である。
図15】(A)は、内部バーが連結位置にあり、外部バーが解除位置から接続位置に移動している状態の出力切替装置を中心軸方向にみた説明図である。(B)は、内部バーが連結位置から分離位置に移動しており、外部バーが接続位置にある状態の出力切替装置を中心軸方向にみた説明図である。(C)は、内部バーが分離位置にあり、外部バーが接続位置にある状態の出力切替装置を中心軸方向にみた説明図である。
図16】第2内部回転体と第2外部回転体を中心軸方向にみたときの説明図である。
図17】拡張装置が係合状態の第1変形例に係る出力切替装置を説明する図である。
図18】拡張装置が離脱状態の第1変形例に係る出力切替装置を説明する図である。
図19】第1変形例に係る出力切替装置を構成する拡張装置の説明図である。
図20】第2変形例に係る出力切替装置の説明図である。
図21】内部ダイアル機構と伝達機構の説明図である。
図22】遊星キャリアがブレーキされて内歯車から回転が出力される状態の説明図である。
図23】内歯車がブレーキされて遊星キャリアから回転が出力される状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の出力切替装置100に係る実施形態について説明する。
【0011】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る出力切替装置100を示す説明図である。図2は、図1の出力切替装置100の断面を示す説明図である。図3は、出力切替装置100の詳細版及び簡易版を示す説明図である。図4は、出力切替装置100の詳細版及び簡易版を示す断面図である。
なお、以下、微動出力軸10aの中心軸Xに対して垂直に向かう方向を内方といい、微動出力軸10aの中心軸Xに対して垂直に離れる方向を外方という場合がある。また、微動出力軸10aの中心軸Xを基準として、動力源Mの出力軸Maのある方向を入力側といい、その反対側であり、負荷となる対象物Tのある方向を出力側という場合がある。また、特に説明のない限り、時計回り又は反時計回りは、入力側から出力側をみたときの中心軸Xを中心とした回転方向を示している。
【0012】
(出力切替装置)
図1に示すように、出力切替装置100は、電動モータ等の動力源Mからの入力(動力)を、負荷となる対象物Tに対して、ギヤ比(粗動と微動と)を切り替え可能に伝達して出力するものである。
【0013】
出力切替装置100は、粗動系機構と微動系機構とを併せ持つ微粗動駆動機構に用いることができる。出力切替装置100は、例えば、プローブ走査型顕微鏡を駆動する微粗動駆動機構、顕微鏡等に設けられた粗動ねじ又は微動ねじの駆動、パラレルリンクロボ、いわゆるヘキサポッドと呼ばれるような微粗動駆動機構を持つ装置、生産、組立又は検査等の対象となる部品の精密位置決めステージ(テーブル)、望遠鏡の主鏡を構成する複数の分割鏡を駆動する微粗動駆動機構、等に用いることができる。
また、後述する第一変形例である出力切替装置500及び第二変形例である出力切替装置600は、例えば、2軸駆動装置に用いることができる。出力切替装置500及び出力切替装置600は、例えば、X-Y精密位置決めステージ(平行ステージ)、上下軸モータ及び回転軸モータからの入力を回転と並進を含む2自由度以上で出力するスカラロボット、車両の伝動シートに設けられた位置調節機構等に用いることができる。
【0014】
詳細には、図2に示すように、出力切替装置100は、動力源Mの出力軸Maの回転に対して第1ギヤ比で回転可能な微動出力軸10aを含む内部ダイアル機構10と、出力軸Maの回転に対して第2ギヤ比で回転可能な粗動出力軸20aを含む外部ダイアル機構20と、内部ダイアル機構10と外部ダイアル機構20との接続を切り替え可能なロック機構30と、を備えている。なお、第1ギヤ比と第2ギヤ比とは、異なっていてよく、同じであってもよい。
【0015】
これにより、単一の動力源M(モータ)の回転角度を制御して、内部ダイアル機構10又は外部ダイアル機構20を回転させることで、ロック機構30を作動させ、微動の出力と粗動の出力とを切り替えることができる。したがって、出力切替装置100は、動力源Mの個数を最小にでき、出力切替のための電気制御回路と、人間の直接的な操作による外部からの作用を、いずれも不要にできる。よって、出力切替装置100は、軽量であり、不具合の発生リスクを低減できるので、重量の影響が大きい空間、人間による作用が困難な空間等の環境に依らずに使用できる。
なお、図1から図23で示された実施形態に係る出力切替装置100は、技術思想の説明を簡便にするため、軽量化の観点を無視して設計されたモデルである。出力切替装置100は、機械的な部品を主にして機構を形成しているため、小型化しやすく、軽量化しやすい。
なお、図3及び図4は、出力切替装置100の詳細版(上図)と、説明の便宜のために詳細版を構成する各構造要素を簡素化した簡易版(下図)とを並べた図であり、以下、特に説明のない限り、簡易版に基づいて説明する。
【0016】
動力源Mは、例えば、モータ(電動機)である。動力源Mは、回転する出力軸Maを有している。出力軸Maは、微動出力軸10aに連結されている。動力源Mのロータ及びステータを収容するモータケースMcは、微動出力軸10a及び粗動出力軸20aを回転自由に支持するフレームFに取り付けられている。
【0017】
出力軸Maは、出力軸Maの回転角度と微動出力軸10aの回転角度とが同調するように微動出力軸10aと直結されていることが好ましい。これにより、動力源Mで制御された回転角度を、出力軸Maを介して直接的に微動出力軸10aの回転として伝達できるため。微動出力軸10aに繋がる対象物Tを精度良く動作させることができる。
【0018】
微動出力軸10aは、直線状の中心軸Xを基準に回転し、直線状の軸に沿って延びる棒状体である。微動出力軸10aは、適宜、ベアリングを介して、フレームFに回転自由に取り付けられている。微動出力軸10aは、動力源Mの出力軸Maと一体として形成されていてよく、動力源Mの出力軸Maに対して、直接的又は間接的に連結されていてもよい。微動出力軸10aと動力源Mの出力軸Maとは、バックラッシュによる微動への影響を極力減らす観点から、ギヤ等を介して間接的に連結されているより、直接的に連結されているか、一体として形成されていることが好ましい。
そして、動力源Mの出力軸Maが回転すると、微動出力軸10aが出力軸Maの回転と同位相で回転し、微動出力軸10aに接続された負荷となる対象物Tがその回転の量である回転角度に応じて動作する。
【0019】
第1ギヤ比は、微動出力軸10aを1回転させるのに必要な動力源Mの出力軸Maの回転数である。第1ギヤ比は、回転角度を制御された動力源Mの微量な回転動作を、直接的に微動出力軸10aに伝達するため、1/1であることが好ましい。これにより、出力軸Maが回転すると、微動出力軸10aを介して、対象物Tは、第1ギヤ比で回転する。よって、動力源Mの回転により、対象物Tを比較的精密に小さく動作させることができる。
【0020】
第2ギヤ比は、粗動出力軸20aを1回転させるのに必要な動力源Mの出力軸Maの回転数である。第2ギヤ比は、第1ギヤ比より小さくてよい。出力軸Maが1回転するときに、粗動出力軸20aは、微動出力軸10aより多く回転するようにしてよい。これにより、出力軸Maが回転すると、粗動出力軸20aを介して、対象物Tは、第2ギヤ比で回転する。よって、動力源Mの回転により、対象物Tを比較的大雑把に大きく動作させることができる。
なお、第2ギア比は第1ギア比と比較し、小さくする必要はなく、大きくてもよい。また、粗動出力軸20aは、微動出力軸10aより多く回転する必要はなく、少なく回転してもよい。本機構で重要なのは、出力切替であって、具体的な粗微動量(第1ギヤ比及び第2ギヤ比)は、本機構の下流システムの設計にて調整できる。第1ギア比が出力軸Maと同期している一方で、第2ギア比として重要なのは、出力軸Maと同期していなくてもよいため、出力軸Maに繋がっていなくてもよいことである。バックラッシュ等が発生しても、粗動のあとに必ず微動を行うので、微動でそのバックラッシュ等を修正できる。
【0021】
(内部ダイアル機構)
以下、内部ダイアル機構10について詳細に説明する。
図5は、内部バー31が分離位置P1uにある状態の内部ダイアル機構10を示す説明図である。図6は、図5の状態から微動出力軸10aを反時計回りに約180度回転させた状態における内部ダイアル機構10を示す説明図である。図9は、内部バー31が分離位置P1uにある状態と連結位置P1eにある状態とを示す説明図である。なお、図5及び図6は、出力切替装置100から、内部ダイアル機構10及びロック機構30の一部が抜き出された状態を示している。なお、図5及び図6において、ロック機構30の内部バー31は、分離位置P1uにある。なお、図5から図9において、説明の便宜のため、第1内部回転体11の入力側の側面に、中心軸Xを基準として入力側から出力側を見て時計回りに30度間隔で1から12までの数字を示している。
【0022】
(第1内部回転体)
図5に示すように、内部ダイアル機構10は、微動出力軸10aに沿う方向に突出する第1内部ピン111、及び、内部バー31を係止可能な第1内部係止溝112を形成し、微動出力軸10aに対して同位相で回転する第1内部回転体11を有している。
【0023】
第1内部回転体11は、微動出力軸10aと一体に形成されていてよく、微動出力軸10aとは別体として微動出力軸10aに結合されていてもよい。
【0024】
第1内部回転体11は、円柱状の外周面11cと、平坦な出力側の側面11aと、を有している。第1内部回転体11の出力側の側面11aは、第2内部回転体12の入力側の側面12aと対向している。
【0025】
第1内部ピン111は、第2内部突起121に対して、周方向の両側から当接可能となっている。図5は、第1内部ピン111と第2内部突起121とが周方向で当接している状態を示している。第1内部ピン111は、動力伝達が行えればどのような形状を有していてもよい。第1内部ピン111は、例えば、微動出力軸10aに沿って入力側から出力側に向けて延びる四角柱状のものである。第1内部ピン111は、第1内部回転体11の出力側の側面11aから突出するように、周縁部の1箇所に設けられている。よって、第1内部ピン111は、第1内部回転体11の回転に応じて、微動出力軸10aの中心軸Xを基準に公転する。
【0026】
微動出力軸10aの回転に応じて第1内部回転体11が時計回りに回転すると、第1内部ピン111が時計回りに公転する。そして、第1内部ピン111が第2内部突起121の反時計回り側の側面に接するまでは、第1内部ピン111は時計回りに公転し、第2内部回転体12は第1内部回転体11の回転とは独立した自由な状態となっている。第1内部ピン111が時計回りに公転して第2内部突起121の反時計回り側の側面に作用すると、第2内部突起121が第1内部ピン111に接した状態で時計回りに公転し、第2内部回転体12が第1内部回転体11と同調して時計回りに回転する。
【0027】
また、微動出力軸10aの回転に応じて第1内部回転体11が反時計回りに回転すると、第1内部ピン111が反時計回りに公転する。そして、第1内部ピン111が第2内部突起121の時計回り側の側面に接するまでは、第1内部ピン111は反時計回りに公転し、第2内部回転体12は第1内部回転体11の回転とは独立した自由な状態となっている。第1内部ピン111が反時計回りに公転して第2内部突起121の時計回り側の側面に作用すると、第2内部突起121が第1内部ピン111に接した状態で反時計回りに公転し、第2内部回転体12が第1内部回転体11と同調して反時計回りに回転する。
【0028】
第1内部係止溝112は、周縁部の1箇所に設けられる。第1内部係止溝112は、第1内部回転体11の外周面11cから内方(微動出力軸10a)に向けて切り欠かれたような窪みである。第1内部係止溝112は、内部バー31を嵌めることができるように、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする周方向の寸法(中心軸X方向に見たときの幅)を、内部バー31の周方向の寸法より大きくしている。
【0029】
第1内部回転体11は、図9に示すように、第1内部係止溝112の溝底112dと外周面11cとを滑らかに繋ぐ内部スロープ112sを有している。詳細には、図15(A)、図15(B)及び図15(C)に示すように、第1内部係止溝112は、中心軸X方向にみたとき、周方向における他方(時計回り側)に急傾斜面を有し、一方(反時計回り側)に緩傾斜面を含む内部スロープ112sを有している。これにより、第1内部回転体11を一方に回転させるトルクを与えたときには、外部バー32が接続位置P2uにない状態にあり、連結位置P1eにある内部バー31が急傾斜面に係止して、第1内部回転体11と内部バー31とを一体に回転させることができる。そして、図15(B)から図15(C)に示すように、外部バー32が接続位置P2uにある状態で、第1内部回転体11を他方(時計回り側)に回転させるトルクを与えたときには、内部スロープ112sの緩傾斜面によって内部バー31に付勢された弾性力に抗して内部バー31を内方から外方に移動させる分力を作用させて、内部バー31を分離位置P1uに位置させることができる。
なお、第1外部係止溝212は、中心軸X方向にみたとき、周方向における一方(反時計回り側)に急傾斜面を有し、他方(時計回り側)に外部スロープ212sの緩傾斜面を有している。このように、第1外部係止溝212の形状は、第1内部係止溝112の形状に対して、急傾斜面と緩傾斜面とが逆に配置されている。第1外部係止溝212と第1内部係止溝112とは、左右対称的な配置となっている。
【0030】
第1内部回転体11において、第1内部ピン111が形成された位置と、第1内部係止溝112が形成された位置とは、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相が所定の角度θ1ずれている。図5に示す内部ダイアル機構10の例では、角度θ1は、90度である。なお、角度θ1は、90度に限られない。図5に示す内部ダイアル機構10の例では、第1内部係止溝112は、12時の方向に位置し、第1内部ピン111は、時計回りに90度位相がずれた、3時の方向に位置している。
【0031】
(第2内部回転体)
また、内部ダイアル機構10は、微動出力軸10aに沿う方向に突出し、第1内部ピン111に当接可能な第2内部突起121、及び、内部バー31を係止可能な第2内部係止溝122を形成し、微動出力軸10aの中心軸Xを基準として自在に回転可能な第2内部回転体12を有している。
【0032】
なお、内部ダイアル機構10が第3内部回転体13を備える場合、内部ダイアル機構10の第2内部回転体12は、第3内部回転体13に設けられた第3内部突起131に当接可能な第2内部ピン123を有している。
【0033】
第2内部回転体12は、微動出力軸10a及び第1内部回転体11とは別体として形成されている。第2内部回転体12は、中央に開口部を有している。第2内部回転体12の開口部には、微動出力軸10aが貫通している。第2内部回転体12の開口部は、微動出力軸10aに対して、適宜のベアリングを介して回転自由に係止されている。これにより、第2内部回転体12は、微動出力軸10a及び第1内部回転体11の回転の影響を受けて回転し難くなっている。
【0034】
第2内部回転体12は、円柱状の外周面12cと、平坦な入力側の側面12aと、平坦な出力側の側面12bと、を有している。第2内部回転体12の全体形状は、概ね、中央に開口部を有する円盤状である。第2内部回転体12の入力側の側面12aは、第1内部回転体11の出力側の側面11aと対向している。なお、内部ダイアル機構10が第3内部回転体13を備えている場合、第2内部回転体12の出力側の側面12bは、第3内部回転体13の入力側の側面13aと対向している。
【0035】
第2内部突起121は、第1内部ピン111に対して、周方向の両側から当接可能となっている。図5は、第1内部ピン111と第2内部突起121とが周方向で当接している状態を示している。第2内部突起121は、動力伝達が行えればどのような形状を有していてもよい。第2内部突起121は、例えば、微動出力軸10aに沿って出力側から入力側に向けて延びる円柱状のものである。第2内部突起121は、第2内部回転体12の入力側の側面12aから突出するように、周縁部の1箇所に設けられている。よって、第2内部突起121は、第2内部回転体12の回転に応じて、微動出力軸10aの中心軸Xを基準に公転する。
【0036】
そして、微動出力軸10aの回転に応じて第1内部回転体11が時計回りに回転すると、第1内部ピン111が時計回りに公転して第2内部突起121の反時計回り側の側面に作用し、第2内部突起121が第1内部ピン111に接した状態で時計回りに公転し、第2内部回転体12が第1内部回転体11と同調して時計回りに回転する。
【0037】
また、微動出力軸10aの回転に応じて第1内部回転体11が反時計回りに回転すると、第1内部ピン111が反時計回りに公転して第2内部突起121の時計回り側の側面に作用し、第2内部突起121が第1内部ピン111に接した状態で反時計回りに公転し、第2内部回転体12が第1内部回転体11と同調して反時計回りに回転する。
なお、各内部回転体に設けられたピンの自重により、各内部回転体が自然に回転してしまう現象を防ぐため、また、第1内部ピン111が第2内部突起121に作用した反動で第2内部回転体12が勢いよく回転して第1内部ピン111と第2内部突起121とが接した状態から離れないようにするため、第2内部回転体12には、内部バー31からの弾性力による摩擦が与えられている。第2内部回転体12と微動出力軸10aとの間には、適度な摩擦抵抗があってもよい。
具体的には、自重や反動による各内部回転体の回転を防止するため、各内部回転体に接して摩擦力を作用させるブレーキBRをフレームFもしくは第1外部回転体21の本体部21m等に備えてよい。
【0038】
このようにして、微動出力軸10aを所定の回転角度で回転させることで、第1内部回転体11又は第2内部回転体12のそれぞれを回転させて、それぞれを特定の位相で回転させた状態で配置して並べることができる。したがって、これらの回転体のそれぞれに形成された溝である、第1内部係止溝112及び第2内部係止溝122のそれぞれの位相を、図9に示すように、互いにずれている状態から合わせた状態(第1内部係止溝112及び第2内部係止溝122がいずれも中心軸X方向にみたときに12時の方向に配置されている状態)にすることができる。よって、図9に示すように、第1内部係止溝112及び第2内部係止溝122のそれぞれの位相がずれた状態で、外部ダイアル機構20の第1外部回転体21に支持されて中心軸Xに向けて弾性的に付勢されたロック機構30の内部バー31を、それらの溝から外れた状態である分離位置P1uに位置させ、第1内部係止溝112及び第2内部係止溝122のそれぞれの位相を合わせた状態で、ロック機構30の内部バー31を、それらの溝に同時に嵌めた状態である連結位置P1eに位置させることができる。これにより、内部ダイアル機構10と外部ダイアル機構20とを連結したり分離したりできる。
【0039】
第2内部ピン123は、第3内部突起131に対して、周方向の両側から当接可能となっている。第2内部ピン123は、動力伝達が行えればどのような形状を有していてもよい。第2内部ピン123は、例えば、微動出力軸10aに沿って入力側から出力側に向けて延びる四角柱状のものである。第2内部ピン123は、第2内部回転体12の出力側の側面12bから突出するように、周縁部の1箇所に設けられている。よって、第2内部ピン123は、第2内部回転体12の回転に応じて、微動出力軸10aの中心軸Xを基準に公転する。
【0040】
微動出力軸10aの回転に応じて第1内部回転体11が時計回りに回転すると、第1内部回転体11の出力側の側面11aに設けられた第1内部ピン111が時計回りに公転する。ここで、第1内部ピン111が第2内部突起121の反時計回り側の側面に接するまでは、第1内部ピン111は時計回りに公転し、第2内部回転体12は第1内部回転体11の回転とは独立した自由な状態となっている。そして、第2内部突起121の反時計回り側の側面に作用すると、第2内部突起121が第1内部ピン111に接した状態で時計回りに公転し、第2内部回転体12が第1内部回転体11と同調して時計回りに回転する。同時に、第2内部回転体12の出力側の側面12bに設けられた第2内部ピン123が時計回りに公転する。ここで、第2内部ピン123が第3内部回転体13の入力側の側面13aに設けられた第3内部突起131の反時計回り側の側面に接するまでは、第2内部ピン123は時計回りに公転し、第3内部回転体13は第2内部回転体12の回転とは独立した自由な状態となっている。そして、第2内部ピン123が第3内部突起131の反時計回り側の側面に作用すると、第2内部ピン123が第3内部突起131に接した状態で時計回りに公転し、第3内部回転体13が第2内部回転体12と同調して時計回りに回転する。
【0041】
微動出力軸10aの回転に応じて第1内部回転体11が反時計回りに回転すると、第1内部回転体11の出力側の側面11aに設けられた第1内部ピン111が反時計回りに公転する。ここで、第1内部ピン111が第2内部突起121の時計回り側の側面に接するまでは、第1内部ピン111は反時計回りに公転し、第2内部回転体12は第1内部回転体11の回転とは独立した自由な状態となっている。そして、第2内部突起121の時計回り側の側面に作用すると、第2内部突起121が第1内部ピン111に接した状態で反時計回りに公転し、第2内部回転体12が第1内部回転体11と同調して反時計回りに回転する。同時に、第2内部回転体12の出力側の側面12bに設けられた第2内部ピン123が反時計回りに公転する。ここで、第2内部ピン123が第3内部回転体13の入力側の側面13aに設けられた第3内部突起131の時計回り側の側面に接するまでは、第2内部ピン123は反時計回りに公転し、第3内部回転体13は第2内部回転体12の回転とは独立した自由な状態となっている。そして、第2内部ピン123が第3内部突起131の時計回り側の側面に作用すると、第2内部ピン123が第3内部突起131に接した状態で反時計回りに公転し、第3内部回転体13が第2内部回転体12と同調して反時計回りに回転する。
【0042】
このようにして、微動出力軸10aを所定の回転角度で回転させることで、第1内部回転体11、第2内部回転体12又は第3内部回転体13のそれぞれを回転させて、それぞれを特定の位相で回転させた状態で配置して並べることができる。したがって、これらの回転体のそれぞれに形成された溝である、第1内部係止溝112、第2内部係止溝122及び第3内部係止溝132のそれぞれの位相を、互いにずれている状態から合わせた状態にすることができる。よって、第1内部係止溝112、第2内部係止溝122及び第3内部係止溝132の位相を合わせた状態で、ロック機構30の内部バー31をそれらの溝に同時に嵌めることができる。
【0043】
第2内部係止溝122は、周縁部の1箇所に設けられる。第2内部係止溝122は、第2内部回転体12の外周面12cから内方(微動出力軸10a)に向けて切り欠かれたような窪みである。第2内部係止溝122は、内部バー31を嵌めることができるように、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする周方向の寸法を、内部バー31の周方向の寸法より大きくしている。
【0044】
次に、第2内部回転体12及び第2外部回転体22における、係止溝と、突起と、ピンとの関係を説明する。
図16は、第2内部回転体12と第2外部回転体22を中心軸X方向にみたときの説明図である。
図16に示すように、第2内部回転体12において、第2内部突起121が形成された位置と、第2内部係止溝122が形成された位置とは、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相が所定の角度θ2ずれている。図5に示す内部ダイアル機構10の例では、角度θ2は、90度である。なお、角度θ2は、90度に限られない。図5に示すように、第2内部突起121は、第2内部係止溝122の位置から、反時計回りに90度位相がずれた位置に配置されている。
【0045】
図16に示すように、第2内部回転体12において、第2内部ピン123(図6参照)が形成された位置と、第2内部係止溝122が形成された位置とは、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相が所定の角度θ3ずれている。図6に示す内部ダイアル機構10の例では、角度θ3は、90度である。なお、角度θ3は、90度に限られない。図6に示すように、第2内部ピン123は、第2内部係止溝122の位置から、時計回りに90度位相がずれた位置に配置されている。
【0046】
(第3内部回転体13)
図5に戻り、第3内部回転体13について説明する。
内部ダイアル機構10は、微動出力軸10aに沿う方向に突出し、第2内部ピン123に当接可能な第3内部突起131、及び、内部バー31を係止可能な第3内部係止溝132を形成し、微動出力軸10aの中心軸Xを基準として自在に回転可能な第3内部回転体13を有していてよい。
【0047】
第3内部回転体13は、第2内部回転体12と同様に、微動出力軸10aとは別体として形成されている。第3内部回転体13は、中央に開口部を有している。第3内部回転体13の開口部には、微動出力軸10aが貫通している。第3内部回転体13の開口部は、微動出力軸10aに対して、適宜のベアリングを介して回転自由に係止されている。これにより、第3内部回転体13は、微動出力軸10aの回転の影響を受けて回転し難くなっている。
【0048】
第3内部回転体13は、円柱状の外周面13cと、平坦な入力側の側面13aと、平坦な出力側の側面13bと、を有している。第3内部回転体13の全体形状は、概ね、中央に開口部を有する円盤状である。第3内部回転体13の入力側の側面13aは、第2内部回転体12の出力側の側面12bと対向している。なお、内部ダイアル機構10は、適宜、第3内部回転体13と同様の構造の第4内部回転体(不図示)を備えてよい。内部ダイアル機構10が第4内部回転体を備えている場合、第3内部回転体13の出力側の側面13bは、第4内部回転体の入力側の側面と対向している。
【0049】
第3内部突起131は、第2内部ピン123に対して、周方向の両側から当接可能となっている。図6は、第2内部ピン123と第3内部突起131とが周方向で当接する直前の状態を示している。第3内部突起131は、動力伝達が行えればどのような形状を有していてもよい。第3内部突起131は、例えば、微動出力軸10aに沿って出力側から入力側に向けて延びる円柱状のものである。第3内部突起131は、第3内部回転体13の入力側の側面13aから突出するように、周縁部の1箇所に設けられている。よって、第3内部突起131は、第3内部回転体13の回転に応じて、微動出力軸10aの中心軸Xを基準に公転する。
【0050】
第3内部係止溝132は、周縁部の1箇所に設けられる。第3内部係止溝132は、第3内部回転体13の外周面13cから内方(微動出力軸10a)に向けて切り欠かれたような窪みである。第3内部係止溝132は、内部バー31を嵌めることができるように、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする周方向の寸法を、内部バー31の周方向の寸法より大きくしている。
【0051】
図16に示すように、第3内部回転体13において、第3内部突起131が形成された位置と、第3内部係止溝132が形成された位置とは、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相が所定の角度θ4ずれている。図6に示す内部ダイアル機構10の例では、角度θ4は、90度である。なお、角度θ4は、90度に限られない。図6に示すように、第3内部突起131は、第3内部係止溝132の位置から、反時計回りに90度位相がずれた位置に配置されている。
【0052】
このように、内部ダイアル機構10は、少なくとも、2つの回転体、すなわち、第1内部回転体11と、第2内部回転体12と、を有している。なお、内部ダイアル機構10は、第1内部回転体11及び第2内部回転体12の他に、第3内部回転体13を更に有していてもよい。なお、内部ダイアル機構10は、第1内部回転体11及び第2内部回転体12の他に、複数の回転体を更に有していてもよい。
また、第3内部回転体13においても、自重や反動による第3内部回転体13の回転を防止するため、第3内部回転体13に接して摩擦力を作用させるブレーキBRをフレームFもしくは第1外部回転体21の本体部21m等に備えてよい。これは他の複数の回転体においても同様である。
【0053】
(外部ダイアル機構)
次に、外部ダイアル機構20について詳細に説明する。
図10は、外部バー32が接続位置P2uにある状態の外部ダイアル機構20を示す説明図である。図11は、図10の状態から微動出力軸10aを反時計回りに約180度回転させた状態における外部ダイアル機構20を示す説明図である。図12は、図11の状態から微動出力軸10aを反時計回りに約180度回転させた状態における外部ダイアル機構20を示す説明図である。図13は、図12の状態から微動出力軸10aを反時計回りに約180度回転させた状態における外部ダイアル機構20を示す説明図である。なお、図11から図13において、外部バー32は解除位置P2eにある。
【0054】
(第1外部回転体)
図11に示すように、外部ダイアル機構20は、内部ダイアル機構10(第1内部回転体11)の外方に配置され、微動出力軸10aに沿う方向に突出する第1外部ピン211、及び、外部バー32を係止可能な第1外部係止溝212を形成し、内部ダイアル機構10(第1内部回転体11)と同軸で回転可能な第1外部回転体21を有している。
外部ダイアル機構20は、内部ダイアル機構10(第2内部回転体12)の外方に配置され、微動出力軸10aに沿う方向に突出し、第1外部ピン211に当接可能な第2外部突起221、及び、外部バー32を係止可能な第2外部係止溝222を形成し、内部ダイアル機構10(第2内部回転体12)と同軸で回転可能な第2外部回転体22を有している。
このように、外部ダイアル機構20は、少なくとも、2つの回転体、すなわち、第1外部回転体21と、第2外部回転体22と、を有している。本実施形態において、外部回転体は、粗動出力軸20aを除いて、内部回転体の数より1つ多く設けられることが好ましい。このようにすることで、例えば、粗微動切り替え時に回転誤差が生じた場合、粗動出力軸20aに力が伝達されることを抑えることが好ましい。なお、外部ダイアル機構20は、第1外部回転体21及び第2外部回転体22の他に、第2外部回転体22と同様の配置及び構造の、内部ダイアル機構10の外方に配置される第3外部回転体23を更に有していてもよい。なお、外部ダイアル機構20は、第1外部回転体21及び第2外部回転体22の他に、複数の回転体を更に有していてもよい。本実施形態では、外部ダイアル機構20は、第4外部回転体24を有している。そして、第4外部回転体24は、粗動出力軸20aに作用して、粗動出力軸20aを回転させる。
【0055】
図2に示すように、第1外部回転体21は、フレームFに対して、適宜、ベアリングを介して、回転自由に支持されている。なお、支持方法によっては第1外部回転体21は内部ダイアル機構10に支持されていてもよい。本実施形態において、第1外部回転体21以外の外部ダイアル機構20は、フレームFに支持されており、内部ダイアル機構10には直接支持されていない。
【0056】
第1外部回転体21は、中心軸Xを中心とする回転体である円筒状の本体部21mと、本体部における入力側の端部から外方に延びる円盤状のフランジ部21fとを有している。
【0057】
第1外部回転体21は、ロック機構30の内部バー31が第1内部回転体11に形成された第1内部係止溝112に嵌っている状態である連結位置P1eにあって(図9の下図参照)、ロック機構30の外部バー32が第1外部回転体21に形成された第1外部係止溝212から外れている解除位置P2eにあるとき(図11から図13参照)に、外部バー32による回転の拘束がなくなり、第1内部回転体11と一体となって回転可能である。
第1外部回転体21は、内部バー31が第1内部回転体11に形成された第1内部係止溝112から外れている状態である分離位置P1u(図9の上図参照)にあって、外部バー32が第1外部回転体21に形成された第1外部係止溝212に嵌っている接続位置P2uにあるとき(図10参照)に、第1内部回転体11の回転の影響を受けずに独立し、外部バー32によって回転が拘束される。
【0058】
本体部21mは、中心軸Xを中心として、微動出力軸10a、第1内部回転体11及び第2内部回転体12と同軸に回転自由となるように、適宜、ベアリングを介して、フレームFに支持されている。
本体部21mは、内部バー31を、中心軸Xに向けて適宜のばねを介して弾性的に付勢して支持している。
【0059】
第1外部回転体21は、直線状の棒体である内部バー31が、連結位置P1eと分離位置P1uとの間で進退できるように、フランジ部21fから本体部21mまで中心軸Xに沿って連続し、内周面から外方に窪む長溝21g(図14参照)を有している。
第1外部回転体21は、直線状の棒体である外部バー32が、接続位置P2uと解除位置P2eとの間で進退できるように、フランジ部21fの外周面から内方に窪む第1外部係止溝212(図11図12及び図13参照)を有している。
【0060】
フランジ部21fは、第1内部回転体11の外方に位置している。フランジ部21fは、第1内部回転体11と同軸に配置されている。
【0061】
本体部21mの外方には、フレームFに回転自由に支持された第2外部回転体22及び第3外部回転体23が配置されている。本体部21mは、微動出力軸10aと同軸に配置されている。本体部21mは、第2内部回転体12及び第3内部回転体13と同軸に配置されている。本体部21mは、第2外部回転体22及び第3外部回転体23と同軸に配置されている。
【0062】
第1外部回転体21のフランジ部21fの出力側の側面21bは、第2外部回転体22の入力側の側面22aと対向している。
【0063】
第1外部ピン211は、第2外部突起221に対して、周方向の両側から当接可能となっている。図11は、第1外部ピン211と第2外部突起221とが周方向で当接する直前の状態を示している。第1外部ピン211は、動力伝達が行えればどのような形状を有していてもよい。第1外部ピン211は、例えば、微動出力軸10aに沿って入力側から出力側に向けて延びる四角柱状のものである。第1外部ピン211は、第1外部回転体21のフランジ部21fの出力側の側面21bから突出するように、周縁部の1箇所に設けられている。よって、第1外部ピン211は、第1外部回転体21の回転に応じて、微動出力軸10aの中心軸Xを基準に公転する。
【0064】
内部バー31が連結位置P1eにあり、外部バー32が解除位置P2eにあると、内部バー31が第1内部回転体11と第1外部回転体21との間に跨るので、互いの相対回転が規制され、第1外部回転体21は、第1内部回転体11とともに回転する。
そして、微動出力軸10aの回転に応じて第1内部回転体11が時計回りに回転すると、第1外部回転体21も時計回りに回転する。
微動出力軸10aの回転に応じて第1内部回転体11が反時計回りに回転すると、第1外部回転体21も反時計回りに回転する。
【0065】
第1内部回転体11の回転に応じて第1外部回転体21が時計回りに回転すると、第1外部ピン211が時計回りに公転する。そして、第1外部ピン211が第2外部突起221の反時計回り側の側面に接するまでは、第1外部ピン211は時計回りに公転し、第2外部回転体22は第1外部回転体21の回転とは独立した自由な状態となっている。第1外部ピン211が時計回りに公転して第2外部突起221の反時計回り側の側面に作用すると、第2外部突起221が第1外部ピン211に接した状態で時計回りに公転し、第2外部回転体22が第1外部回転体21と同調して時計回りに回転する。
【0066】
また、第1内部回転体11の回転に応じて第1外部回転体21が反時計回りに回転すると、第1外部ピン211が反時計回りに公転する。そして、第1外部ピン211が第2外部突起221の時計回り側の側面に接するまでは、第1外部ピン211は反時計回りに公転し、第2外部回転体22は第1外部回転体21の回転とは独立した自由な状態となっている。第1外部ピン211が反時計回りに公転して第2外部突起221の時計回り側の側面に作用すると、第2外部突起221が第1外部ピン211に接した状態で反時計回りに公転し、第2外部回転体22が第1外部回転体21と同調して反時計回りに回転する。
【0067】
図11に示すように、第1外部係止溝212は、周縁部の1箇所に設けられる。第1外部係止溝212は、第1外部回転体21の外周面21cから内方(微動出力軸10a)に向けて切り欠かれたような窪みである。第1外部係止溝212は、外部バー32を嵌めることができるように、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする周方向の寸法(中心軸X方向にみたときの幅)を、外部バー32の周方向の寸法より大きくしている。
【0068】
第1外部回転体21は、第1外部係止溝212の溝底と外周面21cとを滑らかに繋ぐ外部スロープ212sを有している。
第1外部係止溝212は、中心軸X方向にみたとき、周方向における一方(反時計回り側)に急傾斜面を有し、他方(時計回り側)に緩傾斜面となる外部スロープ212sを有している。これにより、第1外部回転体21を他方に回転させるトルクを与えたときには、接続位置P2uにある外部バー32が急傾斜面に係止して、第1外部回転体21がそれ以上他方に回転するのを規制することができる。そして、第1外部回転体21を一方に回転させるトルクを与えたときには、緩傾斜面となる外部スロープ212sによって外部バー32に付勢された弾性力に抗して外部バー32を内方から外方に移動させる分力を作用させて、外部バー32を解除位置P2eに位置させることができる。
なお、第1内部係止溝112は、中心軸X方向にみたとき、周方向における他方(時計回り側)に急傾斜面を有し、一方(反時計回り側)に緩傾斜面となる内部スロープ112sを有しており、第1外部係止溝212の形状に対して、急傾斜面と緩傾斜面とが逆に配置された左右対称的な形状となっている。
したがって、図14又は図15に示すように、内部スロープ112sと外部スロープ212sとは、中心軸X方向にみて左右対称的に配置されている。
【0069】
第1外部回転体21において、第1外部ピン211が形成された位置と、第1外部係止溝212が形成された位置とは、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相が所定の角度θ5ずれている。図11から図13に示す外部ダイアル機構20の例では、角度θ5は、90度である。なお、角度θ5は、90度に限られない。図11から図13に示す外部ダイアル機構20の例では、第1外部係止溝212は、12時の方向に位置し、第1外部ピン211は、時計回りに90度位相がずれた、3時の方向に位置している。
【0070】
第1外部回転体21には、外部バー32からの弾性力による摩擦が与えられている。
【0071】
(第2外部回転体)
また、外部ダイアル機構20は、微動出力軸10aに沿う方向に突出し、第1外部ピン211に当接可能な第2外部突起221、及び、外部バー32を係止可能な第2外部係止溝222を形成し、微動出力軸10aの中心軸Xを基準として自在に回転可能な第2外部回転体22を有している。
【0072】
なお、外部ダイアル機構20が第3外部回転体23を備える場合、外部ダイアル機構20の第2外部回転体22は、第3外部回転体23に設けられた第3外部突起231に当接可能な第2外部ピン223を有している。
【0073】
第2外部回転体22は、第1外部回転体21とは別体として形成されている。第2外部回転体22は、中央に開口部を有している。第2外部回転体22の開口部には、フレームFが貫通している。第2外部回転体22の開口部は、フレームFに対して、適宜のベアリングを介して回転自由に係止されている。これにより、第2外部回転体22は、第1外部回転体21の回転の影響を受けて回転し難くなっている。
【0074】
第2外部回転体22は、円柱状の外周面22cと、平坦な入力側の側面22aと、平坦な出力側の側面22bと、を有している。第2外部回転体22の全体形状は、概ね、中央に開口部を有する円盤状である。第2外部回転体22の入力側の側面22aは、第1外部回転体21のフランジ部21fの出力側の側面21bと対向している。なお、外部ダイアル機構20が第3外部回転体23を備えている場合、第2外部回転体22の出力側の側面22bは、第3外部回転体23の入力側の側面23aと対向している。
【0075】
第2外部突起221は、第1外部ピン211に対して、周方向の両側から当接可能となっている。図11は、第1外部ピン211と第2外部突起221とが周方向で当接する直前の状態を示している。第2外部突起221は、動力伝達が行えればどのような形状を有していてもよい。第2外部突起221は、例えば、微動出力軸10aに沿って出力側から入力側に向けて延びる円柱状のものである。第2外部突起221は、第2外部回転体22の入力側の側面22aから突出するように、周縁部の1箇所に設けられている。よって、第2外部突起221は、第2外部回転体22の回転に応じて、微動出力軸10aの中心軸Xを基準に公転する。
【0076】
そして、第1内部回転体11の回転に応じて第1外部回転体21が時計回りに回転すると、第1外部ピン211が時計回りに公転して第2外部突起221の反時計回り側の側面に作用し、第2外部突起221が第1外部ピン211に接した状態で時計回りに公転し、第2外部回転体22が第1外部回転体21と同調して時計回りに回転する。
【0077】
また、第1内部回転体11の回転に応じて第1外部回転体21が反時計回りに回転すると、第1外部ピン211が反時計回りに公転して第2外部突起221の時計回り側の側面に作用し、第2外部突起221が第1外部ピン211に接した状態で反時計回りに公転し、第2外部回転体22が第1外部回転体21と同調して反時計回りに回転する。
なお、各外部回転体に設けられたピンの自重により、各外部回転体が自然に回転してしまう現象を防ぐため、また、第1外部ピン211が第2外部突起221に作用した反動で第2外部回転体22が勢いよく回転して第1外部ピン211と第2外部突起221とが接した状態から離れないようにするため、第2外部回転体22には、外部バー32からの弾性力による摩擦が与えられている。なお、第2外部回転体22とフレームFとの間には、適度な摩擦抵抗があってもよい。
具体的には、自重や反動による各外部回転体の回転を防止するため、各外部回転体に摩擦力を作用させるブレーキBRをフレームFに備えてよい。
【0078】
このようにして、微動出力軸10aを所定の回転角度で回転させることで、第1外部回転体21又は第2外部回転体22のそれぞれを回転させて、それぞれを特定の位相で回転させた状態で配置して並べることができる。したがって、これらの回転体のそれぞれに形成された溝である、第1外部係止溝212及び第2外部係止溝222のそれぞれの位相を、互いにずれている状態から合わせた状態(第1外部係止溝212及び第2外部係止溝222がいずれも中心軸X方向にみたときに12時の方向に配置されている状態)にすることができる。よって、図11から図13に示すように、第1外部係止溝212及び第2外部係止溝222のそれぞれの位相がずれた状態で、フレームFに支持されて中心軸Xに向けて弾性的に付勢されたロック機構30の外部バー32を、それらの溝から外れた状態である解除位置P2eに位置させ、第1外部係止溝212及び第2外部係止溝222のそれぞれの位相を合わせた状態で、ロック機構30の外部バー32を、それらの溝に同時に嵌めた状態である接続位置P2uに位置させることができる。そして、ロック機構30により、外部バー32が解除位置P2eにあるときに、内部バー31を連結位置P1eに位置させ、外部バー32が接続位置P2uにあるときに、内部バー31を分離位置P1uに位置させることができる。これにより、内部ダイアル機構10と外部ダイアル機構20とを連結したり分離したりできる。
【0079】
第2外部ピン223は、第3外部突起231に対して、周方向の両側から当接可能となっている。第2外部ピン223は、動力伝達が行えればどのような形状を有していてもよい。第2外部ピン223は、例えば、微動出力軸10aに沿って入力側から出力側に向けて延びる四角柱状のものである。第2外部ピン223は、第2外部回転体22の出力側の側面22bから突出するように、周縁部の1箇所に設けられている。よって、第2外部ピン223は、第2外部回転体22の回転に応じて、微動出力軸10aの中心軸Xを基準に公転する。
【0080】
第1内部回転体11の回転に応じて第1外部回転体21が時計回りに回転すると、第1外部回転体21の出力側の側面21bに設けられた第1外部ピン211が時計回りに公転する。ここで、第1外部ピン211が第2外部突起221の反時計回り側の側面に接するまでは、第1外部ピン211は時計回りに公転し、第2外部回転体22は第1外部回転体21の回転とは独立した自由な状態となっている。そして、第2外部突起221の反時計回り側の側面に作用すると、第2外部突起221が第1外部ピン211に接した状態で時計回りに公転し、第2外部回転体22が第1外部回転体21と同調して時計回りに回転する。同時に、第2外部回転体22の出力側の側面22bに設けられた第2外部ピン223が時計回りに公転する。ここで、第2外部ピン223が第3外部回転体23の入力側の側面23aに設けられた第3外部突起231の反時計回り側の側面に接するまでは、第2外部ピン223は時計回りに公転し、第3外部回転体23は第2外部回転体22の回転とは独立した自由な状態となっている。そして、第2外部ピン223が第3外部突起231の反時計回り側の側面に作用すると、第2外部ピン223が第3外部突起231に接した状態で時計回りに公転し、第3外部回転体23が第2外部回転体22と同調して時計回りに回転する。
【0081】
第1内部回転体11の回転に応じて第1外部回転体21が反時計回りに回転すると、第1外部回転体21の出力側の側面21bに設けられた第1外部ピン211が反時計回りに公転する。ここで、第1外部ピン211が第2外部突起221の時計回り側の側面に接するまでは、第1外部ピン211は反時計回りに公転し、第2外部回転体22は第1外部回転体21の回転とは独立した自由な状態となっている。そして、第2外部突起221の時計回り側の側面に作用すると、第2外部突起221が第1外部ピン211に接した状態で反時計回りに公転し、第2外部回転体22が第1外部回転体21と同調して反時計回りに回転する。同時に、第2外部回転体22の出力側の側面22bに設けられた第2外部ピン223が反時計回りに公転する。ここで、第2外部ピン223が第3外部回転体23の入力側の側面23aに設けられた第3外部突起231の時計回り側の側面に接するまでは、第2外部ピン223は反時計回りに公転し、第3外部回転体23は第2外部回転体22の回転とは独立した自由な状態となっている。そして、第2外部ピン223が第3外部突起231の時計回り側の側面に作用すると、第2外部ピン223が第3外部突起231に接した状態で反時計回りに公転し、第3外部回転体23が第2外部回転体22と同調して反時計回りに回転する。
【0082】
このようにして、微動出力軸10aを所定の回転角度で回転させることで、第1内部回転体11を介して、第1外部回転体21、第2外部回転体22又は第3外部回転体23のそれぞれを回転させて、それぞれを特定の位相で回転させた状態で配置して並べることができる。したがって、これらの回転体のそれぞれに形成された溝である、第1外部係止溝212、第2外部係止溝222及び第3外部係止溝232のそれぞれの位相を、互いにずれている状態から合わせた状態にすることができる。よって、第1外部係止溝212、第2外部係止溝222及び第3外部係止溝232の位相を合わせた状態で、ロック機構30の外部バー32をそれらの溝に同時に嵌めることができる。
【0083】
第2外部係止溝222は、第2外部回転体22周縁部の1箇所に設けられる。第2外部係止溝222は、第2外部回転体22の外周面22cから内方(微動出力軸10a)に向けて切り欠かれたような窪みである。第2外部係止溝222は、外部バー32を嵌めることができるように、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする周方向の寸法を、外部バー32の周方向の寸法より大きくしている。
【0084】
図16に示すように、第2外部回転体22において、第2外部突起221が形成された位置と、第2外部係止溝222が形成された位置とは、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相が所定の角度θ6ずれている。図10から図13に示す外部ダイアル機構20の例では、角度θ6は、90度である。なお、角度θ6は、90度に限られない。第2外部突起221は、第2外部係止溝222の位置から、反時計回りに90度位相がずれた位置に配置されている。
【0085】
図16に示すように、第2外部回転体22において、第2外部ピン223が形成された位置と、第2外部係止溝222が形成された位置とは、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相が所定の角度θ7ずれている。図10から図13に示す外部ダイアル機構20の例では、角度θ7は、90度である。なお、角度θ7は、90度に限られない。第2外部ピン223は、第2外部係止溝222の位置から、時計回りに90度位相がずれた位置に配置されている。
【0086】
(第3外部回転体)
外部ダイアル機構20は、微動出力軸10aに沿う方向に突出し、第2外部ピン223に当接可能な第3外部突起231、及び、外部バー32を係止可能な第3外部係止溝232を形成し、微動出力軸10aの中心軸Xを基準として自在に回転可能な第3外部回転体23を有していてよい。
【0087】
第3外部回転体23は、第2外部回転体22と同様に、第1外部回転体21とは別体として形成されている。第3外部回転体23は、中央に開口部を有している。第3外部回転体23の開口部には、フレームFが貫通している。第3外部回転体23の開口部は、フレームFに対して、適宜のベアリングを介して回転自由に係止されている。これにより、第3外部回転体23は、第1外部回転体21及び第2外部回転体22の回転の影響を受けて回転し難くなっている。
【0088】
第3外部回転体23は、円柱状の外周面23cと、平坦な入力側の側面23aと、平坦な出力側の側面23bと、を有している。第3外部回転体23の全体形状は、概ね、中央に開口部を有する円盤状である。第3外部回転体23の入力側の側面23aは、第2外部回転体22の出力側の側面22bと対向している。なお、外部ダイアル機構20は、適宜、第4外部回転体24を備えてよく、外部ダイアル機構20が第4外部回転体24を備えている場合、第3外部回転体23の出力側の側面23bは、第4外部回転体24の入力側の側面と対向している。
【0089】
第3外部突起231は、第2外部ピン223に対して、周方向の両側から当接可能となっている。図12は、第2外部ピン223と第3外部突起231とが周方向で当接する直前の状態を示している。第3外部突起231は、動力伝達が行えればどのような形状を有していてもよい。第3外部突起231は、例えば、微動出力軸10aに沿って出力側から入力側に向けて延びる円柱状のものである。第3外部突起231は、第3外部回転体23の入力側の側面23aから突出するように、周縁部の1箇所に設けられている。よって、第3外部突起231は、第3外部回転体23の回転に応じて、微動出力軸10aの中心軸Xを基準に公転する。
なお、外部ダイアル機構20が第4外部回転体を更に有する場合、第3外部回転体23は、第4外部回転体に形成される第4外部突起に当接可能な第3外部ピン233を有してよい。
【0090】
第3外部係止溝232は、周縁部の1箇所に設けられる。第3外部係止溝232は、第3外部回転体23の外周面23cから内方(微動出力軸10a)に向けて切り欠かれたような窪みである。第3外部係止溝232は、外部バー32を嵌めることができるように、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする周方向の寸法を、外部バー32の周方向の寸法より大きくしている。
【0091】
第3外部回転体23において、第3外部突起231が形成された位置と、第3外部係止溝232が形成された位置とは、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相が所定の角度θ8ずれている。図12に示す外部ダイアル機構20の例では、角度θ8は、90度である。なお、角度θ8は、90度に限られない。図12に示すように、第3外部突起231は、第3外部係止溝232の位置から、反時計回りに90度位相がずれた位置に配置されている。
【0092】
このように、外部ダイアル機構20は、少なくとも、2つの回転体、すなわち、第1外部回転体21と、第2外部回転体22と、を有している。なお、外部ダイアル機構20は、第1外部回転体21及び第2外部回転体22の他に、第3外部回転体23を更に有していてもよい。なお、外部ダイアル機構20は、第1外部回転体21及び第2外部回転体22の他に、複数の回転体を更に有していてもよい。本実施形態においては、外部ダイアル機構20は、4つの回転体、すなわち、第1外部回転体21と、第2外部回転体22と、第3外部回転体23と、第4外部回転体24と、を有している。そして、第1外部回転体21の回転は、第2外部回転体22と、第3外部回転体23と、第4外部回転体24と、を介して、粗動出力軸20aに伝達される。
また、第3外部回転体23においても、自重や反動による第3外部回転体23の回転を防止するため、第3外部回転体23に接して摩擦力を作用させるブレーキBRをフレームFに備えてよい。これは他の複数の回転体においても同様である。
【0093】
(粗動出力軸)
外部ダイアル機構20は、上述の複数の回転体(第1外部回転体21及び第2外部回転体22等)に加えて、粗動出力軸20aを有している。
図13に示すように、粗動出力軸20aは、上述の複数の回転体のうち、最も出力側にある回転体(ここでは第4外部回転体24)に形成された第4外部ピン(不図示)が係止可能な粗動外部突起20a1を有している。そして、粗動出力軸20aは、上述の第2外部回転体22、第3外部回転体23又は第4外部回転体24と同様に、入力側にある回転体に形成されたピンが粗動外部突起20a1に作用することにより、時計回り、又は反時計回りに回転する。なお、粗動出力軸20aは、出力軸Maの回転に対して第2ギヤ比で回転するように、適宜のギヤを介して負荷となる対象物Tに接続されていてよい。
これにより、粗動出力軸20aは、出力軸Maの回転に対して第2ギヤ比で回転する。
また、粗動出力軸20aにおいても、自重や反動による粗動出力軸20aの回転を防止するため、粗動出力軸20aに接して摩擦力を作用させるブレーキBRをフレームFに備えてよい。
【0094】
(ロック機構)
次に、ロック機構30について詳細に説明する。
図2に示すように、ロック機構30は、内部ダイアル機構10に係脱自在な内部バー31と、外部ダイアル機構20に係脱自在な外部バー32を有している。
【0095】
ロック機構30は、微動出力軸10aに向けて弾性的に付勢されるレバー33を有している。
【0096】
内部バー31は、第1内部係止溝112及び第2内部係止溝122に嵌る連結位置P1eと、第1内部係止溝112及び第2内部係止溝122から離れた分離位置P1uとの間で進退することで内部ダイアル機構10と外部ダイアル機構20との連結と分離とを切り替え可能である。
【0097】
内部バー31は、微動出力軸10a(中心軸X)に向けて弾性的に付勢されている。
内部バー31は、圧縮ばね等により、第1外部回転体21の内面に支持されている。
内部バー31は、第1外部回転体21の内面から外方に窪み、微動出力軸10aに沿って形成された長溝21g(図2参照)に嵌った状態で、微動出力軸10aに向けて第1外部回転体21の内面から内部回転体11,12,13のそれぞれの外周面11c,12c,13cの軌跡より中心軸X側に臨むまで突出して内部係止溝112,122,132に係合し、内面より外方に退いて内部係止溝112,122,132から外れる。
内部バー31は、微動出力軸10aに向けて弾性的に付勢されているので、内部バー31における中心軸X側の先端は、第1内部回転体11から第3内部回転体13までのそれぞれの外周面11c,12c、13cに接している。これにより、第1内部回転体11から第3内部回転体13までの回転体が慣性力又は重力で自然に回転するのを抑制するための適度な摩擦を与えることができる。
【0098】
外部バー32は、第1外部係止溝212及び前記第2係止溝に嵌る接続位置P2uと、第1外部係止溝212及び第1外部係止溝212から離れた解除位置P2eとの間で進退可能である。
【0099】
外部バー32は、微動出力軸10a(中心軸X)に向けて弾性的に付勢されている。
外部バー32は、圧縮ばね等により、フレームFに支持されている。
【0100】
外部バー32は、図14(A)に示すように、微動出力軸10aに向けて、外部回転体21,22,23のそれぞれの外周面21c,22c,23cの軌跡より中心軸X側に臨むまで突出して(接続位置P2u)外部係止溝212,222,232に係合し、図14(C)に示すように、外周面21c,22c,23cの軌跡より外方に退いて(解除位置P2e)外部係止溝212,222,232から外れる。
外部バー32は、微動出力軸10aに向けて弾性的に付勢されているので、外部バー32における中心軸X側の先端は、第1外部回転体21から第3外部回転体23までのそれぞれの外周面21c,22c,23cに接している。これにより、第1外部回転体21から第3外部回転体23までの回転体が慣性力又は重力で自然に回転するのを抑制するための適度な摩擦を与えることができる。
【0101】
レバー33は、図5図7及び図8に示すように、外部ダイアル機構20(第1外部回転体21)に回動自由に支持される回動軸333と、内部ダイアル機構10(第1内部回転体11のレバー溝10G)に係止可能な内部側係止片331と、外部バー32から作用を受ける外部側係止片332と、を備えている。
内部側係止片331及び外部側係止片332は、互いに一体に形成されており、回動軸333を中心に、傾動できるようになっている。
【0102】
回動軸333には、適宜の弦巻ばね等により、入力側を3時方向、出力側を9時方向としたときの反時計回りに回転するモーメントが付勢されている。なお、外部バー32の解除位置P2eから接続位置P2uへの移動を妨げないようにするため、回動軸333に付勢されているモーメントは、外部バー32に付勢されている弾性力によりレバー33に作用するモーメントより小さくなっている。
【0103】
次に、レバー33の作用を説明する。
内部バー31が分離位置P1uから連結位置P1eに移動し、かつ、微動出力軸10a(内部ダイアル機構10)が反時計回りに回転することで外部バー32が接続位置P2uから解除位置P2eに移動すると、図8に示すように、外部バー32からレバー33への押し付け力がなくなり、レバー33の傾動の規制がなくなる。したがって、レバー33は、付勢されているモーメントにより、中心軸Xに向けて倒れるように傾動する。
すると、図8に示すように、内部側係止片331は、レバー溝10Gに入り込む。これにより、第1内部回転体11と第1外部回転体21とが連結され、時計回りにおける相対回転が規制される。
これにより、第1外部回転体21は、第1内部回転体11とともに、反時計回りに加えて、時計回りにも回転可能になる。
反対に、外部バー32が解除位置P2e(図8参照)から接続位置P2u(図7参照)に移動すると、図7に示すように、外部バー32がレバー33の外部側係止片332に作用して、外部側係止片332は、回動軸333を中心として、中心軸Xに向けて倒れるように傾動する。同時に、内部側係止片331は、回動軸333を中心として、起き上がるように傾動する。すると、レバー33の内部側係止片331がレバー溝10Gから外れた状態で、第1内部回転体11を時計回りに回転させることによる第1内部回転体11に形成された内部スロープ112s(図15参照)の作用により、内部バー31は、連結位置P1eから分離位置P1uに移動する。
【0104】
レバー33は、外部バー32に当接可能な湾曲面を有している。詳細には、レバー33の外部側係止片332は、外部バー32に当接する先端面が湾曲している。レバー33は、第1内部回転体11の回転に応じて公転しながらも、フレームFに位置が固定された外部バー32を滑らかに移動させることができる。
このように、レバー33は、外部バー32が接続位置P2uにある場合、傾動が規制され、外部バー32が解除位置P2eにある場合、傾動可能になる。レバー33は、モータの回転により、内部ダイアル機構10と外部ダイアル機構20との間で動力の伝達のオンオフを切り替えるように作用する。
【0105】
(作用)
次に、出力切替装置100を用いて微動と粗動とを切り替える際の動作を説明する。
図14(A)は、内部バー31が連結位置P1eにあり、外部バー32が接続位置P2uにある状態の出力切替装置100を中心軸X方向にみた説明図である。
図14(B)は、内部バー31が連結位置P1eにあり、外部バー32が接続位置P2uから解除位置P2eに移動している状態の出力切替装置100を中心軸X方向にみた説明図である。
図14(C)は、内部バー31が連結位置P1eにあり、外部バー32が解除位置P2eにある状態の出力切替装置100を中心軸X方向にみた説明図である。
図15(A)は、内部バー31が連結位置P1eにあり、外部バー32が解除位置P2eから接続位置P2uに移動している状態の出力切替装置100を中心軸X方向にみた説明図である。
図15(B)は、内部バー31が連結位置P1eから分離位置P1uに移動しており、外部バー32が接続位置P2uにある状態の出力切替装置100を中心軸X方向にみた説明図である。
図15(C)は、内部バー31が分離位置P1uにあり、外部バー32が接続位置P2uにある状態の出力切替装置100を中心軸X方向にみた説明図である。
【0106】
(1)まず、対象物Tを微動させる場合について説明する。
図15(C)に示すように、第1内部回転体11の第1内部係止溝112と、第2内部回転体12の第2内部係止溝122と、第3内部回転体13の第3内部係止溝132との位相が全て合致していない場合、内部バー31は、連結位置P1eまで移動できないため、第1内部回転体11の外周面11cに接した状態で、分離位置P1uの位置にある。一方、外部バー32は、接続位置P2uの位置にある。したがって、内部ダイアル機構10と外部ダイアル機構20とは連結していないので、動力源Mの出力軸Ma(不図示)の回転に応じて、微動出力軸10a及び第1内部回転体11が同位相で回転する。
すなわち、出力軸Maが時計回りに回転すると、微動出力軸10aが時計回りに回転し、出力軸Maが反時計回りに回転すると、微動出力軸10aが反時計回りに回転する。
したがって、この状態で、微動出力軸10aを回転させて、微動出力軸10aに繋がる対象物Tを微動させることができる。
【0107】
(2)次に、微動から粗動に切り替える手順を説明する。
図15(C)の状態、すなわち、第1内部回転体11の第1内部係止溝112と、第2内部回転体12の第2内部係止溝122と、第3内部回転体13の第3内部係止溝132との位相が合致していない状態から、図14(A)の状態のように、それらの位相を全て合致させる。
【0108】
詳細には、内部ダイアル機構10が第1内部回転体11、第2内部回転体12及び第3内部回転体13を含む場合で説明すると、各内部回転体における内部ピンが形成された位置と、内部係止溝が形成された位置と、内部突起が形成された位置との、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相のずれである角度の関係に応じて、微動出力軸10aを時計回りの回転角度と反時計回りの回転角度とを組み合わせて所定の順番に回転させる。この構造は、例えば、公知のダイアル錠の解除原理と同様である。なお、この回転は、動力源M(モータ)の回転角度を制御する制御装置によって制御してよい。
【0109】
例えば、図9に示すように、第1内部係止溝112、第2内部係止溝122及び第3内部係止溝132がいずれも12時の方向にあれば内部バー31が連結位置P1eに移動できるように設定した場合であって、各内部回転体における内部係止溝の位置に対する内部ピン及び内部突起の位置の位相のずれ角度がいずれも90度である場合、まず、微動出力軸10aを、時計回りに1周以上回転させ、第3内部回転体13の第3内部係止溝132が12時の方向に向くようにする。
【0110】
すると、第1内部ピン111が第2内部突起121に当接し、第2内部ピン123が第3内部突起131に当接した状態で、第3内部回転体の第3内部係止溝132が12時の方向に向き、内部バー31に向き合う。
【0111】
次に、微動出力軸10aを、反時計回りに1周以上回転させ、第3内部回転体13の第3内部係止溝132が12時の方向に向いた状態で、第2内部回転体12の第2内部係止溝122が12時の方向に向くようにする。
【0112】
すると、第1内部ピン111が第2内部突起121に当接した状態で、第2内部回転体12の第2内部係止溝122が12時の方向に向き、内部バー31に向き合う。
【0113】
次に、第1内部回転体11を、時計回りに回転させ、第3内部回転体13の第3内部係止溝132が12時の方向に向いた状態で、かつ、第2内部回転体12の第2内部係止溝122が12時の方向に向いた状態で、第1内部回転体11の第1内部係止溝112が12時の方向に向くようにする。
これにより、第1内部係止溝112、第2内部係止溝122及び第3内部係止溝132が全て12時の方向に向き、内部バー31に向き合うようになる。
【0114】
すると、中心軸Xに向けて付勢された内部バー31は、溝に嵌り、分離位置P1uから連結位置P1eに移動する。このように、動力源M(微動出力軸10a)の回転角度を制御することで、内部バー31を、分離位置P1uから連結位置P1eに移動させることができる。
【0115】
次に、図14(B)に示すように、微動出力軸10aを反時計回りに回転すると、第1内部回転体11と第1外部回転体21とは、内部バー31及びレバー33によって連結されているので、一体となって反時計回りに回転する。
すると、接続位置P2uにある第1外部係止溝212に嵌っていた外部バー32は、外部スロープ212sを登るようにして押し上げられて、図14(C)に示すような解除位置P2eに至る。
【0116】
そして、微動出力軸10aを同方向、すなわち、反時計回りに回転させ続けると、第1外部回転体21の回転が第1外部ピン211を介して第2外部回転体22に伝わり、第2外部回転体22の回転が第2外部ピン223を介して第3外部回転体23に伝わり、適宜、更なる外部回転体に順次回転が伝わり、最終的に、粗動出力軸20aに回転が伝わる。
また、この状態から、微動出力軸10aを時計回りに回転させると、図14(C)に示すように、内部バー31は連結位置P1eにあり、外部バー32は解除位置P2eにあるので、粗動出力軸20aが時計回りに回転する。
なお、外部バー32が完全に解除位置P2eにある状態でないと、外部バー32が第1外部回転体21の第1外部係止溝212に引っ掛かり、第1外部回転体21が回転できない場合があるので、粗動時は、外部バー32を解除位置P2eに位置させた状態で、第2外部回転体22や第3外部回転体23等を回転させ、外周面22cや外周面23cと接触させることにより、外部バー32を解除位置P2eで保持させてから、出力を行うのが好ましい。
したがって、動力源Mの回転に応じて粗動出力軸20aを回転させて、粗動出力軸20aに繋がる対象物Tを粗動させることができる。このように、動力源Mの回転角度を制御するだけで、微動出力軸10aからの出力から粗動出力軸20aからの出力に切り替えることができる。
【0117】
(3)次に、粗動から微動に切り替える手順を説明する。
図14(C)の状態、すなわち、第1外部回転体21の第1外部係止溝212と、第2外部回転体22の第2外部係止溝222と、第3外部回転体23の第3外部係止溝232との位相が合致していない状態から、図15(B)の状態のように、それらの位相を全て合致させる。なお、このような外部ダイアル機構20に対する操作は、上述の内部ダイアル機構10の操作と同様である。
【0118】
詳細には、外部ダイアル機構20が第1外部回転体21、第2外部回転体22及び第3外部回転体23を含む場合で説明すると、各外部回転体における外部ピンが形成された位置と、外部係止溝が形成された位置と、外部突起が形成された位置との、微動出力軸10aの中心軸Xを基準とする位相のずれである角度の関係に応じて、微動出力軸10aを時計回りの回転角度と反時計回りの回転角度とを組み合わせて所定の順番に回転させる。なお、この回転は、動力源M(モータ)の回転角度を制御する制御装置によって制御してよい。
【0119】
例えば、図10に示すように、第1外部係止溝212、第2外部係止溝222及び第3外部係止溝232がいずれも12時の方向にあれば外部バー32が解除位置P2eからから接続位置P2uに移動できるように設定した場合であって、外部係止溝の位置に対する外部ピン及び外部突起の位置の位相のずれ角度がいずれも90度である場合、まず、微動出力軸10aを、時計回りに1周以上回転させ、第3外部回転体23の第3外部係止溝232が12時の方向に向くようにする。
【0120】
すると、第1外部ピン211が第2外部突起221に当接し、第2外部ピン223が第3外部突起231に当接した状態で、第3外部回転体23の第3外部係止溝232が12時の方向に向き、外部バー32に向き合う。
【0121】
次に、第3外部回転体23の第3外部係止溝232が12時の方向に向いた状態で、第2外部回転体22の第2外部係止溝222が12時の方向に向くようにする。
【0122】
すると、第1外部ピン211が第2外部突起221に当接した状態で、第2外部回転体22の第2外部係止溝222が12時の方向に向き、外部バー32に向き合う。
【0123】
次に、第1外部回転体21を、時計回りに回転させ、第3外部回転体23の第3外部係止溝232が12時の方向に向いた状態で、かつ、第2外部回転体22の第2外部係止溝222が12時の方向に向いた状態で、第1外部回転体21の第1外部係止溝212が12時の方向に向くようにする。
これにより、第1外部係止溝212、第2外部係止溝222及び第3外部係止溝232が全て12時の方向に向き、外部バー32に向き合うようになる。
【0124】
すると、中心軸Xに向けて付勢された外部バー32は、外部係止溝に嵌り、解除位置P2eから接続位置P2uに移動する。このように、動力源M(微動出力軸10a)の回転角度を制御することで、外部バー32を、解除位置P2eから接続位置P2uに移動させることができる。
【0125】
すると、外部バー32が接続位置P2uに移動したことにより、レバー33の外部側係止片332は外部バー32によって押し付けられる様な作用が働き、内部側係止片331が回動軸333を中心として、起き上がるように傾動する。すると、レバー33の内部側係止片331がレバー溝10Gから外れる。それにより、第1内部回転体11と第1外部回転体21との時計回りにおける拘束が解除される。その上で、図15(B)に示すように、微動出力軸10aを時計回りに回転すると、第1内部係止溝112に嵌って第1内部回転体11と第1外部回転体21とを連結していた連結位置P1eにある内部バー31は、内部スロープ112sを登るようにして押し上げられて、図15(C)に示すような分離位置P1uに至る。
【0126】
そのまま微動出力軸10aを同方向、すなわち、時計回りに回転させ続けると、第1内部回転体11の回転が第1内部ピン111を介して第2内部回転体12に伝わり、第2内部回転体12の回転が第2内部ピン123を介して第3内部回転体13に伝わり、適宜、更なる外部回転体に順次回転が伝わり、微動出力軸10aに回転が伝わる。
また、この状態から、微動出力軸10aを反時計回りに回転させると、図15(C)に示すように、内部バー31は分離位置P1uにあり、外部バー32は接続位置P2uにあるので、微動出力軸10aが反時計回りに回転する。なお、内部バー31が完全に分離位置P1uにある状態でないと、内部バー31が第1内部回転体11の第1内部係止溝112に引っ掛かり、第1外部回転体21も回転してしまうので、内部バー31を分離位置P1uに位置させた状態で、第2内部回転体12や第3内部回転体13等を回転させ、外周面12cや外周面13cと接触させることにより、内部バー31を分離位置P1uで保持させてから、出力を行うのが好ましい。
したがって、動力源Mの回転に応じて微動出力軸10aを回転させて、微動出力軸10aに繋がる対象物Tを微動させることができる。また、動力源Mの回転角度を制御するだけで、粗動出力軸20aからの出力から微動出力軸10aからの出力に切り替えることができる。
【0127】
<第1変形例>
次に、第1変形例について説明する。
図17は、拡張装置が係合状態の第1変形例に係る出力切替装置500を説明する図である。図18は、拡張装置が離脱状態の第1変形例に係る出力切替装置500を説明する図である。図19は、第1変形例に係る出力切替装置500を構成する拡張装置510の説明図である。
【0128】
図17から図19に示すように、第1変形例に係る出力切替装置500は、ロック機構30(外部バー32)と連動して微動出力軸10aに対して係脱自在であり、微動出力軸10aの回転を伝達する伝達機構520と、伝達機構520で伝達された回転を出力する拡張出力軸500aと、を有する拡張装置510を備えている。第1変形例に係る出力切替装置500は、上述の実施形態に係る出力切替装置100に対して、拡張装置510を付加したものである。なお、第1変形例に係る出力切替装置500における内部ダイアル機構10、外部ダイアル機構20及びロック機構30は、上述の実施形態に係る出力切替装置100の内部ダイアル機構10、外部ダイアル機構20及びロック機構30と共通している。
これにより、上述の実施形態に係る出力切替装置100では微動出力軸10aが常時回転するものであったが、第1変形例に係る出力切替装置500では、完全に出力軸を独立させて制御することができる。したがって、1つの動力源M(モータ)で2種類の出力軸を完全に切り替えて制御できる。
また、第1変形例に係る出力切替装置500は、後述する第2変形例と同様に、2種の出力軸のそれぞれを完全に独立させて制御できる完全切替機構であるので、ある完全切替機構の先に、同様の完全切替機構をトーナメント式に順次繋いでいけば、出力軸の切り替えを、2種から4種へ、4種から8種へと、理論上2の階乗ごとに増やしていくことができる。つまり、一つのモータで256種や1024種の出力を制御できるように出力切替装置500を構成できる。
【0129】
詳細には、拡張装置510は、図17から図19に示すように、外部バー32と連動して微動出力軸10aに対して係脱自在であり、微動出力軸10aの回転を伝達する伝達機構520と、伝達機構520で伝達された回転を出力する拡張出力軸500aと、を有している。
また、拡張装置510は、伝達機構520と、拡張出力軸500aと、を支持するケースCを有している。
【0130】
ケースCは、外部バー32に対して直接的に支持されている。ケースCは、拡張装置510の全体を外部バー32の動きと連動できるようにするため、外部バー32に対して剛に連結されている。
【0131】
伝達機構520は、出力切替装置500の内部回転体の数に2を加えた数の伝達回転体を有している。これにより、各伝達回転体が所定の回転角度内で他の伝達回転体に回転を伝達しない遊びを有するので、微動と粗動を切り替える動作をする際の回転角度成分の出力を抑制できる。上述の実施形態のように出力切替装置100の内部回転体の数が3の場合、5の伝達回転体を有している。この場合、図19に示すように、伝達機構520は、第1伝達回転体511と、第2伝達回転体512と、第3伝達回転体513と、第4伝達回転体514と、第5伝達回転体515と、を有している。
なお、伝達機構520を構成する伝達回転体には、自重や慣性で回転しないように、ブレーキ(不図示)の接触により摩擦力を作用させてもよい。
【0132】
第1伝達回転体511は、図19に示すように、中心軸Yを中心として回転する回転体である。第1伝達回転体511は、ケースCに回転自由に支持されている。第1伝達回転体511は、微動出力軸10aに形成された歯に噛み合わせることができるギヤ歯511gを外周部に有している。第1伝達回転体511は、第2伝達回転体512に形成された第2伝達突起512qに当接可能な第1伝達ピン511pを有している。第1伝達ピン511pは、中心軸Yから離れた位置に形成されている。第1伝達ピン511pは、第1伝達回転体511の回転に応じて公転する。
【0133】
第2伝達回転体512は、中心軸Yを中心として回転する回転体である。第2伝達回転体512は、ケースCに回転自由に支持されている。第2伝達回転体512は、第1伝達回転体511に形成された第1伝達ピン511pに当接可能な第2伝達突起512qを有している。第2伝達回転体512は、第3伝達回転体513に形成された第3伝達突起513qに当接可能な第2伝達ピン512pを有している。第2伝達ピン512p及び第2伝達突起512qは、中心軸Yから離れた位置に形成されている。第2伝達ピン512p及び第2伝達突起512qは、第2伝達回転体512の回転に応じて公転する。第2伝達ピン512pと第2伝達突起512qとは、第2伝達回転体512において、中心軸Yを中心として位相がずれた位置に配置されている。
【0134】
第3伝達回転体513は、中心軸Yを中心として回転する回転体である。第3伝達回転体513は、ケースCに回転自由に支持されている。第3伝達回転体513は、第2伝達回転体512に形成された第2伝達ピン512pに当接可能な第3伝達突起513qを有している。第3伝達回転体513は、第4伝達回転体514に形成された第4伝達突起514qに当接可能な第3伝達ピン513pを有している。第3伝達ピン513p及び第3伝達突起513qは、中心軸Yから離れた位置に形成されている。第3伝達ピン513p及び第3伝達突起513qは、第3伝達回転体513の回転に応じて公転する。第3伝達ピン513pと第3伝達突起513qとは、第3伝達回転体513において、中心軸Yを中心として位相がずれた位置に配置されている。
【0135】
第4伝達回転体514は、中心軸Yを中心として回転する回転体である。第4伝達回転体514は、ケースCに回転自由に支持されている。第4伝達回転体514は、第3伝達回転体513に形成された第3伝達ピン513pに当接可能な第4伝達突起514qを有している。第4伝達回転体514は、第5伝達回転体515に形成された第5伝達突起515qに当接可能な第4伝達ピン514pを有している。第4伝達ピン514p及び第4伝達突起514qは、中心軸Yから離れた位置に形成されている。第4伝達ピン514p及び第4伝達突起514qは、第4伝達回転体514の回転に応じて公転する。第4伝達ピン514pと第4伝達突起514qとは、第4伝達回転体514において、中心軸Yを中心として位相がずれた位置に配置されている。
【0136】
第5伝達回転体515は、中心軸Yを中心として回転する回転体である。第5伝達回転体515は、ケースCに回転自由に支持されている。第5伝達回転体515は、第4伝達回転体514に形成された第4伝達ピン514pに当接可能な第5伝達突起515qを有している。第5伝達回転体515は、拡張出力軸500aを有している。第5伝達突起515qは、中心軸Yから離れた位置に形成されている。拡張出力軸500a及び第5伝達突起515qは、第5伝達回転体515の回転に応じて公転する。拡張出力軸500aは、中心軸Yと同軸上に配置されている。第5伝達突起515qは、第5伝達回転体515において、中心軸Yを中心として位相がずれた位置に配置されている。
【0137】
そして、外部バー32が接続位置P2uと解除位置P2eとの間を移動すると、その移動に応じて、ケースCが並進移動する。よって、ケースCに支持された第1伝達回転体511のギヤ歯511gを、微動出力軸10aに対して、図17に示すような係合した状態となる係合位置P5uと、図18に示すような離脱位置P5eとの間で、係脱自在に移動させることができる。
そして、ギヤ歯511gが係合位置P5uにあるとき、微動出力軸10aの回転(動力源Mの出力軸Maの回転)は、拡張装置510を伝って拡張出力軸500aに出力される。また、ギヤ歯511gが離脱位置P5eにあるとき、微動出力軸10aの回転(動力源Mの出力軸Maの回転)は、外部ダイアル機構20を伝って粗動出力軸20aに出力される。このように、動力源M(動力源Mの出力軸Ma)の回転角度を制御することで、粗動出力軸20aと拡張出力軸500aとの間で出力を切り替えることができる。
【0138】
<第2変形例>
次に、第2変形例について説明する。
図20は、第2変形例に係る出力切替装置600の説明図である。図21は、内部ダイアル機構10と伝達機構610の説明図である。図22は、遊星キャリア622がブレーキされて内歯車から回転が出力される状態の遊星歯車機構620を示す説明図である。図23は、内歯車がブレーキされて遊星キャリア622から回転が出力される状態の遊星歯車機構620を示す説明図である。
【0139】
図20から図23に示すように、第2変形例に係る出力切替装置600は、ロック機構30(外部バー32)と連動する切替フレーム630と、内部ダイアル機構10の回転を伝達可能な伝達機構610と、伝達機構610で伝達された回転を、切替フレーム630で切り替えて出力可能な第1出力軸600a及び第2出力軸624を有する遊星歯車機構620と、を備えている。
【0140】
第2変形例に係る出力切替装置600は、上述の実施形態に係る出力切替装置100に、伝達機構610と、遊星歯車機構620と、切替フレーム630と、を付加したものである。なお、第2変形例に係る出力切替装置600における内部ダイアル機構10、外部ダイアル機構20及びロック機構30は、第1内部回転体11と微動出力軸621とが伝達機構610を介して分離していること、また、第4外部回転体24及び粗動出力軸20aが無いことを除き、上述の実施形態に係る出力切替装置100の内部ダイアル機構10、外部ダイアル機構20及びロック機構30と同様の構造である。なお、第2変形例に係る出力切替装置600における伝達機構610は、第1変形例に係る出力切替装置500における伝達機構520と同様の構造である。
これにより、上述の実施形態に係る出力切替装置100では微動出力軸10a又は粗動出力軸20aが常時回転するものであったが、第1変形例に係る出力切替装置500と同様に、第2変形例に係る出力切替装置600では、完全に出力軸を独立させて制御することができる。したがって、1つの動力源M(モータ)で2種類の出力軸を完全に切り替えて制御できる。
また、第2変形例に係る出力切替装置600は、第1変形例と同様に、2種の出力軸のそれぞれを完全に独立させて制御できる完全切替機構であるので、ある完全切替機構の先に、同様の完全切替機構をトーナメント式に順次繋いでいけば、出力軸の切り替えを、2種から4種へ、4種から8種へと、理論上2の階乗ごとに増やしていくことができる。つまり、一つのモータで256種や1024種の出力を制御できるように出力切替装置600を構成できる。
【0141】
図20に示すように、第2変形例に係る出力切替装置600は、遊星歯車機構620と、切替フレーム630と、を備えている。
また、図21に示すように、第2変形例に係る出力切替装置600は、フレームFの内側に支持された、内部ダイアル機構10と、伝達機構610と、を備えている。
【0142】
内部ダイアル機構10と、伝達機構610とは、図21に示すように、動力源Mから順に中心軸Xに沿って直列的に並んでいる。伝達機構610は、外部回転体の数と同じ数設けられる。
【0143】
伝達機構610は、第1伝達回転体611と、第2伝達回転体612と、第3伝達回転体613と、を有している。内部ダイアル機構10の第3内部回転体13の回転は、第1伝達回転体611と、第2伝達回転体612と、第3伝達回転体613とを伝って、微動出力軸621の回転として伝達される。微動出力軸621の回転は、遊星歯車機構620に伝達される。これにより、所定の回転角度内において、内部ダイアル機構10の回転と微動出力軸621の回転とを切り離すことができる。よって、微粗動切替動作時(ロック機構30の移動のための内部ダイアル機構10及び外部ダイアル機構20の回転時)の回転角度成分を微動出力軸621から出力させないようにできる。
なお、伝達機構610を構成する伝達回転体には、自重や慣性で回転しないように、ブレーキ(不図示)の接触により摩擦力を作用させてもよい。
【0144】
微動出力軸621の回転は、遊星歯車機構620に伝達され、図22に示すような内歯車の回転又は図23に示すような遊星キャリア622の回転として出力される。
遊星歯車機構620は、図20図22及び図23に示すように、サンギヤに対応する微動出力軸621と、微動出力軸621の周囲を自転しながら公転する4つの歯車及びその公転と同調して回転する第1出力軸600aから構成される遊星キャリア622と、遊星キャリア622を構成する4つの歯車を囲む内歯車623と、内歯車の外周に形成された第2出力軸624と、有している。なお、歯車の個数は、一般的な遊星歯車機構を成立させることができれば、4つに限られない。
【0145】
切替フレーム630は、図20に示すように、外部バー32と一体となるように連結されている。
切替フレーム630は、図20図22及び図23に示すように、遊星キャリア622に対して係脱自在に移動することで遊星キャリア622を構成する4つの歯車の公転を規制可能な遊星キャリアストッパ631と内歯車623に対して係脱自在に移動することで内歯車623の回転を規制可能な内歯車ストッパ632とを有している。
【0146】
そして、動力源Mによる内部ダイアル機構10及び外部ダイアル機構20の回転操作により、外部バー32を解除位置P2eに移動させると、外部バー32とともに切替フレーム630が上方に移動し、図22に示すように、遊星キャリアストッパ631が遊星キャリア622を構成する4つの歯車の公転を規制する。この状態で動力源Mを回転させると、その回転は、サンギヤに対応する微動出力軸621を回転させる。すると、遊星キャリア622を構成する4つの歯車が自転して、内歯車623を回転させる。よって、内歯車623の外周に形成された第2出力軸624から回転が出力される。
【0147】
また、動力源Mによる内部ダイアル機構10及び外部ダイアル機構20の回転操作により、外部バー32を接続位置P2uに移動させると、外部バー32とともに切替フレーム630が下方に移動し、図23に示すように、内歯車ストッパ632が内歯車623の回転を規制する。この状態で動力源Mを回転させると、その回転は、サンギヤに対応する微動出力軸621を回転させる。すると、内歯車623が回転していない状態で、遊星キャリア622を構成する4つの歯車が自転しながら公転する。よって、遊星キャリア622を構成する4つの歯車の公転と同調して回転する第1出力軸600aが回転する。このように、動力源Mの回転角度を制御することで、第1出力軸600aと第2出力軸624との間で出力を切り替えることができる。
【0148】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0149】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0150】
本実施形態に係る出力切替装置100は、動力源Mからの入力を切り替え可能に伝達して出力する。出力切替装置100は、動力源Mの出力軸Maの回転に対して第1ギヤ比で回転可能な微動出力軸10aを含む内部ダイアル機構10と、出力軸Maの回転に対して第2ギヤ比で回転可能な粗動出力軸20aを含む外部ダイアル機構20と、内部ダイアル機構10と外部ダイアル機構20との接続を切り替え可能なロック機構30と、を備える。これにより、単一の動力源M(モータ)の回転角度を制御して、内部ダイアル機構10又は外部ダイアル機構20を回転させることで、ロック機構30を作動させ、微動の出力と粗動の出力とを切り替えることができる。したがって、出力切替装置100は、動力源Mの個数を最小にでき、出力切替のための電気制御回路と、人間の直接的な操作による外部からの作用を、いずれも不要にできる。よって、出力切替装置100は、軽量であり、不具合の発生リスクを低減できるので、重量の影響が大きい空間、人間による作用が困難な空間等の環境に依らずに使用できる。出力切替装置100は、機械的な部品を主にして機構を形成しているため、小型化しやすく、軽量化しやすい。
【符号の説明】
【0151】
100,500,600 出力切替装置
10 内部ダイアル機構
10a 微動出力軸
10G レバー溝
11 第1内部回転体
11a 側面
11c 外周面
12 第2内部回転体
12a 側面
12b 側面
12c 外周面
13 第3内部回転体
13a 側面
13b 側面
13c 外周面
20 外部ダイアル機構
20a 粗動出力軸
20a1 粗動外部突起
21 第1外部回転体
21b 側面
21c 外周面
21f フランジ部
21g 長溝
21m 本体部
22 第2外部回転体
22a 側面
22b 側面
22c 外周面
23 第3外部回転体
23a 側面
23b 側面
23c 外周面
24 第4外部回転体
30 ロック機構
31 内部バー
32 外部バー
33 レバー
111 第1内部ピン
112 第1内部係止溝
112d 溝底
112s 内部スロープ
121 第2内部突起
122 第2内部係止溝
123 第2内部ピン
131 第3内部突起
132 第3内部係止溝
211 第1外部ピン
212 第1外部係止溝
212s 外部スロープ
221 第2外部突起
222 第2外部係止溝
223 第2外部ピン
231 第3外部突起
232 第3外部係止溝
331 内部側係止片
332 外部側係止片
333 回動軸
500a 拡張出力軸
510 拡張装置
511 第1伝達回転体
511g ギヤ歯
511p 第1伝達ピン
512 第2伝達回転体
512p 第2伝達ピン
512q 第2伝達突起
513 第3伝達回転体
513p 第3伝達ピン
513q 第3伝達突起
514 第4伝達回転体
514p 第4伝達ピン
514q 第4伝達突起
515 第5伝達回転体
515q 第5伝達突起
520 伝達機構
600a 第1出力軸
610 伝達機構
611 第1伝達回転体
612 第2伝達回転体
613 第3伝達回転体
620 遊星歯車機構
621 微動出力軸
622 遊星キャリア
623 内歯車
624 第2出力軸
630 切替フレーム
631 遊星キャリアストッパ
632 内歯車ストッパ
C ケース
F フレーム
M 動力源
Ma 出力軸
Mc モータケース
P1e 連結位置
P1u 分離位置
P2e 解除位置
P2u 接続位置
P5e 離脱位置
P5u 係合位置
T 対象物
X 中心軸
Y 中心軸
θ1,θ2,θ3,θ4,θ5,θ6,θ7,θ8 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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