(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145357
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20241004BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20241004BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20241004BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20241004BHJP
H01M 8/0271 20160101ALI20241004BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241004BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/0228
H01M8/0247
H01M8/0206
H01M8/0271
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057671
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】坂野 雅章
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126AA13
5H126AA15
5H126AA22
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE06
5H126EE11
5H126EE22
5H126GG02
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックを安価に構成する。
【解決手段】燃料電池スタック100のセパレータ3は、それぞれ凹凸状に形成された前プレート32と後プレート33とを有し、凹部側の端面32b,33a同士を当接した状態で一体に接合して形成される。積層方向端部のセパレータ3Aとターミナルプレート4との間には、中間部材7A,7Bが介装される。中間部材7Aは、凹部側の端面33aがターミナルプレート4に当接された後プレート33により構成され、中間部材7Bは、凹部側の端面32bがターミナルプレート4に当接された前プレート32により構成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と電極との接合体を含む構造体と、セパレータとを、所定方向に交互に積層して構成され、複数の構造体と複数のセパレータとを有するセル積層体と、
前記セル積層体の前記所定方向における外側に配置されたターミナルプレートと、
前記セル積層体と前記ターミナルプレートとの間に介装された中間部材と、を備え、
前記セパレータは、それぞれ凹凸状に形成された第1プレートと第2プレートとを有するとともに、前記第1プレートの凸部が前記第2プレートの反対方向を向き、かつ、前記第2プレートの凸部が前記第1プレートの反対方向を向くように前記第1プレートに対し前記第2プレートを反転し、前記第1プレートの凹部側の端面である第1端面と前記第2プレートの凹部側の端面である第2端面とを互いに当接した状態で、前記第1プレートと前記第2プレートとが一体に接合して構成され、
前記複数のセパレータのうち、前記所定方向の端部に配置されるセパレータは、前記第1プレートの凸部が前記ターミナルプレートに向けて突出する端部セパレータであり、
前記中間部材は、前記第2端面が前記ターミナルプレートに当接された前記第2プレートにより構成されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記セパレータおよび前記ターミナルプレートはそれぞれ金属により構成され、
前記第2端面は前記ターミナルプレートに溶接されていることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記構造体は、前記接合体と、前記接合体の周縁部を支持する支持プレートと、を有し、
前記第1プレートの凸部および前記第2プレートの凸部はいずれも、前記接合体に向けて突設された内側凸部と、前記内側凸部の外側に設けられ、前記支持プレートに向けて突設された外側凸部と、を有することを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記支持プレートの前記所定方向における厚さは、前記接合体の前記所定方向における厚さよりも薄く、
前記外側凸部の先端部と前記支持プレートとの間に、シール部が設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜と電極との接合体を含む構造体と、セパレータとを、交互に積層して構成された燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギの効率化に貢献する燃料電池に関する技術開発が行われている。この種の燃料電池に用いられる燃料電池スタックに関する技術として、従来、積層方向端部に配置された端部セパレータと、端部セパレータの積層方向外側に配置されたターミナルプレートとの間に、波形状の断熱プレートを介在するようにした燃料電池スタックが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の断熱プレートには、端部セパレータの凸部に交差する方向に延在するような複数の凸部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の燃料電池スタックにおいては、断熱プレートを別途準備する必要があり、コストの増加を招く。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である燃料電池スタックは、電解質膜と電極との接合体を含む構造体と、セパレータとを、所定方向に交互に積層して構成され、複数の構造体と複数のセパレータとを有するセル積層体と、セル積層体の所定方向における外側に配置されたターミナルプレートと、セル積層体とターミナルプレートとの間に介装された中間部材と、を備える。セパレータは、それぞれ凹凸状に形成された第1プレートと第2プレートとを有するとともに、第1プレートの凸部が第2プレートの反対方向を向き、かつ、第2プレートの凸部が第1プレートの反対方向を向くように第1プレートに対し第2プレートを反転し、第1プレートの凹部側の端面である第1端面と第2プレートの凹部側の端面である第2端面とを互いに当接した状態で、第1プレートと第2プレートとが一体に接合して構成される。複数のセパレータのうち、所定方向の端部に配置されるセパレータは、第1プレートの凸部がターミナルプレートに向けて突出する端部セパレータであり、中間部材は、第2端面がターミナルプレートに当接された第2プレートにより構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、燃料電池スタックを安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの全体構成を概略的に示す斜視図。
【
図2】
図1の燃料電池スタックに含まれる電極アッセンブリの概略構成を示す斜視図。
【
図3】
図1の燃料電池スタックに含まれるセパレータの正面図。
【
図5】本発明の参考例としての燃料電池スタックの要部構成を示す断面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの要部構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図6を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る燃料電池スタックは、燃料電池の構成要素である。燃料電池は、例えば車両に搭載され、車両駆動用の電力を発生することができる。燃料電池スタックは、航空機や船舶等の車両以外の移動体、ロボットの他、各種産業機械に搭載することもできる。
【0009】
まず、燃料電池スタックの全体構成を概略的に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池スタック100の全体構成を概略的に示す斜視図である。以下では、便宜上、図示のように互いに直交する三軸方向を、前後方向、左右方向および上下方向と定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。これらの方向は、車両の前後方向、左右方向および上下方向と同一であるとは限らない。例えば
図1の前後方向は、車両の前後方向であってもよく、左右方向であってもよく、上下方向であってもよい。
【0010】
図1に示すように、燃料電池スタック100は、複数の発電セル1を前後方向に積層して構成されたセル積層体101と、セル積層体101の前後両端部に配置されたエンドユニット102とを有し、全体が略直方体形状を呈する。セル積層体101の左右方向の長さは、上下方向の長さよりも長い。
図1には、便宜上、単一の発電セル1が示される。発電セル1は、電解質膜と電極とを含む接合体を有する電極アッセンブリ2と、電極アッセンブリ2の前後両側に配置され、電極アッセンブリ2を挟持するセパレータ3,3と、を有する。電極アッセンブリ2とセパレータ3とは、前後方向に交互に配置される。したがって、互いに隣接して配置された前後一対の発電セル(前側発電セル1、後側発電セル1)において、前側発電セル1の後側のセパレータ3が、後側発電セル1の前側のセパレータ3になる。
【0011】
セパレータ3は、断面が波板状の前後一対の金属製の薄板を有し、これら薄板の外周同士を接合して一体に構成される。セパレータ3には耐腐食性に優れた導電性の材料が用いられ、例えばチタン、チタン合金、ステンレス等を用いることができる。一対の薄板は、セパレータ3の内部に冷却媒体が流れる冷却流路を形成するようにプレス成形などによって凹凸状に形成され、冷却媒体の流れにより発電セル1の発電面が冷却される。冷却媒体としては例えば水を用いることができる。電極アッセンブリ2に対向するセパレータ3の表面(前面および後面)は、電極アッセンブリ2の接合体の表面、すなわち発電面との間にガス流路を形成するように凹凸状に構成される。
【0012】
電極アッセンブリ2の前側のセパレータ3は、例えばアノード側のセパレータ(アノードセパレータ)であり、アノードセパレータ3と電極アッセンブリ2の接合体との間に、燃料ガスが流れるアノード流路が形成される。電極アッセンブリ2の後側のセパレータ3は、例えばカソード側のセパレータ(カソードセパレータ)であり、カソードセパレータ3と電極アッセンブリ2の接合体との間に、酸化剤ガスが流れるカソード流路が形成される。燃料ガスとしては例えば水素ガスを、酸化剤ガスとしては例えば空気を用いることができる。燃料ガスと酸化剤ガスとを区別せずに、これらを反応ガスと呼ぶこともある。
【0013】
図2は、電極アッセンブリ2の概略構成を示す斜視図である。
図2に示すように、電極アッセンブリ2は、略矩形状の接合体20と、接合体20を支持するフレーム21と、を有する。接合体20は膜電極接合体(いわゆるMEA;Membrane Electrode Assembly)であり、電解質膜と、電解質膜の前面に設けられたアノード電極と、電解質膜の後面に設けられたカソード電極とを有する。
【0014】
電解質膜は、例えば固体高分子電解質膜であり、水分を含んだパーフルオロスルホン酸ポリマーの薄膜を用いることができる。フッ素系電解質膜に限らず、炭化水素系電解質膜を用いることもできる。
【0015】
アノード電極は、電解質膜の前面に形成され、電極反応の反応場となる電極触媒層であり、該電極触媒層の前面には反応ガスを拡散して供給するガス拡散層が設けられる。カソード電極は、電解質膜の後面に形成され、電極反応の反応場となる電極触媒層であり、該電極触媒層の後面には反応ガスが拡散して供給するガス拡散層が設けられる。電極触媒層には、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素の電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、および電子伝導性を有するカーボン粒子等が含まれる。ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材、例えばカーボン多孔質体により構成される。
【0016】
アノード電極では、アノード流路およびガス拡散層を介して供給された燃料ガス(水素)が、触媒の作用によってイオン化され、電解質膜を通過してカソード電極側へ移動する。このとき生じた電子は、外部回路を通過し、電気エネルギとして取り出される。カソード電極では、カソード流路およびガス拡散層を介して供給された酸化剤ガス(酸素)と、アノード電極から導かれた水素イオンおよびアノード電極から移動した電子とが反応し、水が生成される。生成された水は、電解質膜に適度な湿度を与え、余剰な水は電極アッセンブリ2の外部へ排出される。
【0017】
フレーム21は、略矩形状を呈する薄板であり、絶縁性を有する樹脂やゴム等により構成される。フレーム21の中央部には、略矩形状の開口部21aが設けられる。接合体20は、開口部21aの全体を覆うように設けられ、接合体20の周縁部がフレーム21により支持される。フレーム21の開口部21aの左側には、フレーム21を前後方向に貫通する3つの貫通孔211~213が上下方向に並んで開口され、開口部21aの右側には、フレーム21を前後方向に貫通する3つの貫通孔214~216が上下方向に並んで開口される。
【0018】
図1に示すように、電極アッセンブリ2の前後のセパレータ3には、フレーム21の貫通孔211~216に対応する位置に、セパレータ3を前後方向に貫通する貫通孔311~316がそれぞれ開口される。貫通孔311~316は、フレーム21の貫通孔211~216にそれぞれ連通する。これら互いに連通する貫通孔211~216,311~316の集合により、セル積層体101を貫通して前後方向に延在する流路PA1~PA6(便宜上、矢印で示す)が形成される。流路PA1~PA6は、マニホールドと呼ばれることもある。流路PA1~PA6は、燃料電池スタック100の外部のマニホールドに接続される。
【0019】
貫通孔211,311を介して前方に延びる流路PA1(実線矢印)は、燃料ガス供給流路である。貫通孔216,316を介して後方に延びる流路PA6(実線矢印)は、燃料ガス排出流路である。燃料ガス供給流路PA1および燃料ガス排出流路PA6は、接合体20の前面に対向するアノード流路と連通し、燃料ガス供給流路PA1と燃料ガス排出流路PA6とを介して、実線矢印に示すように、アノード流路を左右方向に燃料ガスが流れる。アノード流路と他の流路PA2~PA5との連通は、図示しないシール部を介して遮断される。燃料ガス排出流路PA6を流れる燃料ガスは、アノード電極で一部が使用された後の燃料ガスであり、これを燃料排ガスと呼ぶことがある。
【0020】
貫通孔214,314を介して前方に延びる流路PA4(点線矢印)は、酸化剤ガス供給流路である。貫通孔213,313を介して後方に延びる流路PA3(点線矢印)は、酸化剤ガス排出流路である。酸化剤ガス供給流路PA4および酸化剤ガス排出流路PA3は、接合体20の後面に対向するカソード流路と連通し、酸化剤ガス供給流路PA4と酸化剤ガス排出流路PA3とを介して、点線矢印に示すように、カソード流路を左右方向に酸化剤ガスが流れる。カソード流路と他の流路PA1,PA2,PA5,PA6との連通は、図示しないシール部を介して遮断される。酸化剤ガス排出流路PA3を流れる酸化剤ガスは、カソード電極で一部が使用された後の酸化剤ガスであり、これを酸化剤排ガスと呼ぶことがある。燃料排ガスと酸化剤排ガスとを区別せずに、これらを反応排ガスと呼ぶこともある。
【0021】
貫通孔215,315を介して前方に延びる流路PA5(一点鎖線矢印)は、冷却媒体供給流路である。貫通孔212,312を介して後方に延びる流路PA2(一点鎖線矢印)は、冷却媒体排出流路である。冷却媒体供給流路PA5および冷却媒体排出流路PA2は、セパレータ3の内部の冷却流路と連通しており、冷却媒体供給流路PA5と冷却媒体排出流路PA2とを介して、冷却流路を冷却媒体が流れる。冷却流路と他の流路PA1,PA3,PA4,PA6との連通は、図示しないシール部を介して遮断される。
【0022】
セル積層体101の前後両側に配置されたエンドユニット102は、それぞれターミナルプレート4と、絶縁プレート5と、エンドプレート6とを有する。なお、前側のエンドユニット102をドライ側エンドユニット、後側のエンドユニット102をウェット側エンドユニットと呼ぶこともある。前後一対のターミナルプレート4,4は、セル積層体101を挟んでその前後両側に配置される。前後一対の絶縁プレート5,5は、ターミナルプレート4,4を挟んでその前後両側に配置される。前後一対のエンドプレート6,6は、絶縁プレート5,5を挟んでその前後両側に配置される。
【0023】
ターミナルプレート4は、金属製の略矩形状の板状部材であり、セル積層体101で電気化学反応により生成された電力を取り出すための端子部を有する。絶縁プレート5は、非導電性を有する樹脂製またはゴム製の略矩形状の板状部材であり、ターミナルプレート4とエンドプレート6とを電気的に絶縁する。エンドプレート6は、金属製または高強度に構成された樹脂製の板状部材であり、エンドプレート6には、例えば前後方向細長の連結部材がボルトにより固定され連結部材を介して前後のエンドプレート6,6同士が連結される。燃料電池スタック100は、連結部材を介してエンドプレート6,6により前後方向に押圧された状態で、保持される。セル積層体101を包囲するケースを連結部材として用いてよく、ケースの前端面および後端面にそれぞれエンドプレート6,6が固定されてもよい。
【0024】
後側のエンドユニット102には、エンドユニット102を前後方向に貫通する複数の貫通孔102a~102fが開口される。なお、貫通孔102a~102fは、それぞれターミナルプレート4を貫通する貫通孔、絶縁プレート5を貫通する貫通孔およびエンドプレート6を貫通する貫通孔を含むが、
図1では、便宜上、これらをまとめて貫通孔102a~102fとして示す。貫通孔102aは、燃料ガス供給流路PA1の延長線上に開口され、燃料ガス供給流路PA1に連通する。貫通孔102bは、冷却媒体排出流路PA2の延長線上に開口され、冷却媒体排出流路PA2に連通する。貫通孔102cは、酸化剤ガス排出流路PA3の延長線上に開口され、酸化剤ガス排出流路PA3に連通する。貫通孔102dは、酸化剤ガス供給流路PA4の延長線上に開口され、酸化剤ガス供給流路PA4に連通する。貫通孔102eは、冷却媒体供給流路PA5の延長線上に開口され、冷却媒体供給流路PA5に連通する。貫通孔102fは、燃料ガス排出流路PA6の延長線上に開口され、燃料ガス排出流路PA6に連通する。
【0025】
より詳しくは、貫通孔102aには、エジェクタ、インジェクタなどを介して、高圧の燃料ガスが貯留された燃料ガスタンクが接続され、燃料ガスタンク内の燃料ガスが貫通孔102aを介して燃料電池スタック100に供給される。貫通孔102fには、気液分離機が接続され、貫通孔102fを介して排出された燃料ガス(燃料排ガス)は、気液分離機で燃料ガスと水とに分離される。分離された燃料ガスは、エジェクタを介して吸い込まれ、燃料電池スタック100に再び供給される。分離された水は、ドレン流路を介して外部に排出される。
【0026】
貫通孔102dには、酸化剤ガス供給用のコンプレッサが接続され、コンプレッサで圧縮された酸化剤ガスが貫通孔102dを介して燃料電池スタック100に供給される。貫通孔102cからは、酸化剤ガス(酸化剤排ガス)が外部に流出する。貫通孔102eには、冷却媒体供給用のポンプが接続され、貫通孔102eを介して燃料電池スタック100に冷却媒体が供給される。貫通孔102bからは冷却媒体が排出される。排出された冷却媒体は、ラジエータでの熱交換により冷却され、貫通孔102eを介して再び燃料電池スタック100に供給される。
【0027】
以上が燃料電池スタック100の概略構成である。燃料電池スタック100は略ボックス状のケースに収納され、車両に搭載される。
【0028】
セパレータ3の構成についてより詳しく説明する。
図3は、セパレータ3の正面図(後方から見た図)であり、
図4は、
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図3,4に示すように、セパレータ3は、略矩形状の前後一対の薄板(前プレート32、後プレート33)を一体に接合して構成される。より詳しくは、後プレート33が前プレート32に対して前後方向に反転され、前プレート32の後面32bと後プレート33の前面33aとを密接状態で溶接して構成される。前プレート32の前面32aは、セパレータ3の前側の電極アッセンブリ2に対向し、後プレート33の後面33bは、セパレータ3の後側の電極アッセンブリ2に対向する。
【0029】
図3は、アノード電極に対向する後プレート33の正面図である。前プレート32および後プレート33の基本的な構成は等しいため、カソード電極に対向する前プレート32の正面図(セパレータ3を前方から見た図)は示さない。
【0030】
以下では、電極アッセンブリ2の接合体20に対向するセパレータ3の領域、すなわち発電面に対向する領域AR1を、アクティブ領域と呼び、電極アッセンブリ2のフレーム21に対向するセパレータ3の領域AR2を、非アクティブ領域と呼ぶ。非アクティブ領域AR2は、反応ガスと冷却媒体の給排流路PA~PA6を含む領域であり、非アクティブ領域AR2では、流路同士のシールおよび外部空間とのシールが必要である。
【0031】
後プレート33のアクティブ領域AR1には、上下方向所定間隔で後方に向けて複数の凸部331が突設される。複数の凸部331はそれぞれ左右方向に延在し、上下方向に隣り合う凸部331,331の間に凹部332が設けられる。凹部332と接合体20の前面との間には、
図4に二点鎖線で示すようなアノード流路PAnが形成される。同様に、前プレート32のアクティブ領域AR1には、上下方向所定間隔で後方に向けて複数の凸部321が突設される。複数の凸部321はそれぞれ左右方向に延在し、上下方向に隣り合う凸部321,321の間に凹部322が設けられる。凹部322と接合体20の後面との間には、
図4に二点鎖線で示すようなカソード流路PCaが形成される。このような凹部322,332と凸部321,331は、プレート32,33のプレス加工によって形成される。
【0032】
図4に示すように、前プレート32は、凸部321の前面32aおよび凹部322の後面32bが、それぞれ鉛直面に沿った平坦面となるように構成される。後プレート33は、凸部331の後面33bおよび凹部332の前面33aが、それぞれ鉛直面に沿った平坦面となるように構成される。前プレート32と後プレート33とは、例えば周縁部32c,33c同士が溶接されて接合される。このとき、前プレート32の凹部322の後面32bと後プレート33の凹部332の前面33aとが互いに当接し、前プレート32の凸部321と後プレート33の凸部331との間に、冷却媒体が流れる冷却流路PCoが形成される。
【0033】
図3に示すように、後プレート33の後面33bの非アクティブ領域AR2には、フレーム21に向けて後方に突出したシール用のビード部335が設けられる。ビード部335は、外周ビード部336と、内周ビード部337と、中間ビード部338とを有する。外周ビード部336は、全ての貫通孔311~316を包囲するように後プレート33の周縁に沿って略矩形状に延在する。内周ビード部337は、アクティブ領域AR1を包囲するように略矩形状に延在するとともに、燃料ガスの給排用の貫通孔311,316を包囲するように、一部が外周ビード部336の近傍まで延在する。
【0034】
中間ビード部338は、酸化剤ガス給排用の貫通孔313,314および冷却媒体供排用の貫通孔312,315に対応して複数設けられる。これら中間ビード部338は、外周ビード部336と内周ビード部337との間で、貫通孔312~315を独立して個別に包囲するように略矩形状に延在する。
【0035】
前プレート32の前面32aの非アクティブ領域AR2にも同様に、フレーム21に向けて前方に突出したシール用のビード部325が設けられる。すなわち、外周ビード部と、内周ビード部と、中間ビード部とが設けられる。但し、内周ビード部は、アクティブ領域AR1を包囲するように略矩形状に延在するとともに、後プレート33の内周ビード部337とは異なり、酸化剤ガスの給排用の貫通孔313,314を包囲するように、一部が外周ビード部の近傍まで延在する。また、中間ビード部は、貫通孔311,312,315,316を独立して個別に包囲するように設けられる。これらビード部325,335は、プレート32,33のプレス加工によって形成される。
【0036】
図4に示すように、前プレート32のビード部325(外周ビード部、内周ビード部、中間ビード部)の前面32aは、鉛直面に沿った平坦面となるように構成される。後プレート33のビード部335(外周ビード部336、内周ビード部337、中間ビード部338)の後面33bも、鉛直面に沿った平坦面となるように構成される。ビード部325、335は、それぞれ前方および後方に突出した凸部である。前プレート32の非アクティブ領域AR2におけるビード部325以外を、凹部329と呼び、後プレート33のアクティブ領域AR2におけるビード部335以外を、凹部339と呼ぶことがある。
【0037】
前プレート32の凹部329の後面32bおよび後プレート33の凹部339の前面は、それぞれ鉛直面に沿った平坦面となるように構成される。アクティブ領域AR1の凹部322の後面32bおよび凹部332の前面33aと、非アクティブ領域AR2の凹部329の後面32bおよび凹部339の前面33aとは、同一面上に位置する。
【0038】
非アクティブ領域AR2では、前プレート32の凹部329の後面32bと後プレート33の凹部339の前面33aとが互いに当接し、ビード部325とビード部335との間に空間SPが形成される。複数のビード部325の前方への突出量および複数のビード部335の後方への突出量は同一である。これらビード部325,335の突出量は、アクティブ領域AR1の凸部321の前面32aが接合体20の後面に密接し、凸部331の後面33bが接合体20の前面に密接するように、凸部321,331の突出量を基準にして設定される。例えばビード部325,335の突出量は、凸部321,331の突出量よりも小さい値に設定される。
【0039】
ビード部325の前面32aおよびビード部335の後面33bには、
図4に二点鎖線で示すようにシール材40が固着される。シール材40には、ゴムや樹脂材等の弾力性を有する構成材が用いられる。前側のシール材40は、電極アッセンブリ2のフレーム21(
図2)の後面に押圧され、後側のシール材40は、フレーム21の前面に押圧される。
【0040】
本実施形態に係る燃料電池スタック100は、セル積層体101の積層方向の端部の構成に特徴がある。この点に関し、まず、本実施形態の参考例を用いて説明する。
図5は、本実施形態の参考例に係る燃料電池スタック100Aの要部構成を示す断面図である。燃料電池スタック100Aは、積層された多数の電極アッセンブリ2とセパレータ3とを備えるが、
図5には、便宜上、3つの電極アッセンブリ2と4つのセパレータ3とが示される。
【0041】
図5のセパレータ3の構成は、
図4のセパレータ3の構成と等しく、燃料ガス排出流路PA6(貫通孔216,316)を含む断面(
図3のIV-IV線に沿った断面)で示される。なお、セル積層体101を構成する複数のセパレータ3のうち、積層方向の最も外側(前端側、後端側)に位置するセパレータ3を、端部セパレータ3Aと呼び、前後の端部セパレータ3A,3Aの間のセパレータ3を、中間セパレータ3Bと呼ぶ。
【0042】
図5に示すように、電極アッセンブリ2の接合体20は、電解質膜20aと、電解質膜20aの前面に設けられたアノード電極20bと、電解質膜20aの後面に設けられたカソード電極20cとを有する。アノード電極20bおよびカソード電極20cはいずれも、触媒層とガス拡散層とを含む。接合体20の厚さ(前後方向長さ)は、フレーム21の厚さよりも厚い。燃料電池スタック100Aの組立状態では、アクティブ領域AR1において、前側の端部セパレータ3Aの前面32aおよび後側の端部セパレータ3Aの後面33bを除き、セパレータ3の凸部321の前面32aが接合体20の後面に当接し、凸部331の後面33bが接合体20の前面に当接する。
【0043】
このとき、非アクティブ領域AR2では、前側の端部セパレータ3Aの前面32aおよび後側の端部セパレータ3Aの後面33bを除き、セパレータ3のビード部325とフレーム21との間およびビード部335とフレーム21との間で、それぞれシール材40が押圧される。これにより、セパレータ3とフレーム21との隙間を介して、アノード流路PAn、カソード流路PCaおよび冷却流路PC0が互いに連通すること、およびこれらの流路PAn,PCa,PCoが外部空間に連通することを防止することができ、燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷却媒体の漏れを阻止できる。
【0044】
ところで、
図5の参考例では、前側の端部セパレータ3Aの凸部321が前側のターミナルプレート4の後面4bに当接し、後側の端部セパレータ3Aの凸部331が後側のターミナルプレート4の前面4aに当接する。このため、アクティブ領域AR1のセル積層体101(電極アッセンブリ2、中間セパレータ3B)には、端部セパレータ3A、ターミナルプレート4および絶縁プレート5を介して、エンドプレート6から前後方向の押圧力が作用する。
【0045】
一方、非アクティブ領域AR2のセパレータ3のビード部325,335には、シール材40が設けられる。このため、前側の端部セパレータ3Aのビード部325の前端面(シール材40を含んだ前端面)は、凸部321の前面32aよりも前方に突出し、後側の端部セパレータ3Aのビード部335の後端面(シール材40を含んだ後端面)は、凸部331の後面33bよりも後方に突出する。
【0046】
したがって、非アクティブ領域AR2でのシール性能を確保するためにはターミナルプレート4からシール材40に十分な押圧力が作用する必要があるが、そのためには、シール材40を含んだビード部325,335の突出量を考慮して、ターミナルプレート4の一部を薄肉化する必要がある。例えば、前側のターミナルプレート4の後面4bを、段部41を境にして切削加工し、後側のターミナルプレート4の前面4aを、段部42を境にして切削加工する必要がある。
【0047】
このため、
図5の例では、加工コストが上昇し、コストの増加を伴う。また、ターミナルプレート4を薄肉化する加工をした際の寸法誤差が大きくなると、セパレータ3に過大な力が作用し、セパレータ3が破損するおそれがある。さらに、シール材40がターミナルプレート4に直接当接すると、ターミナルプレート4から熱の影響を受けて、シール材40が破損するおそれもある。このような問題を解消するため、本実施形態は、以下のように燃料電池スタック100を構成する。
【0048】
図6は、本実施形態に係る燃料電池スタック100の要部構成を示す断面図である。
図6には、便宜上、3つの電極アッセンブリ2と2つのセパレータ3とが示される。
図6のセパレータ3は前側および後側の端部セパレータ3Aであり、
図6では、中間セパレータ3Bの図示が省略される。
【0049】
図6に示すように、セル積層体101の前端部には、電極アッセンブリ2が配置され、この電極アッセンブリ2とターミナルプレート4との間に前側中間部材7Aが介装される。セル積層体101の後端部には、電極アッセンブリ2が配置され、この電極アッセンブリ2とターミナルプレート4との間に後側中間部材7Bが介装される。
【0050】
前側中間部材7Aには、ビード部335にシール材40が固着された状態の、セパレータ3の後プレート33(端部用後プレートと呼ぶ)が用いられる。端部用後プレート33は、端部セパレータ3Aの後プレート33と上下方向および左右方向の同一位置に配置される。さらに、端部用後プレート33のアクティブ領域AR1における凹部332の前面33aおよび非アクティブ領域AR2における凹部339の前面33aが、それぞれターミナルプレート4の後面4bに当接され、後面4bに接合される。
【0051】
後側中間部材7Bには、ビード部325にシール材40が固着された状態の、セパレータ3の前プレート32(端部用前プレートと呼ぶ)が用いられる。端部用前プレート32は、端部セパレータ3Aの前プレート32と上下方向および左右方向の同一位置に配置される。さらに、端部用前プレート32のアクティブ領域AR1における凹部322の後面32bおよび非アクティブ領域AR2における凹部329の後面32bが、それぞれターミナルプレート4の前面4aに当接され、前面4aに接合される。
【0052】
端部用後プレート33の凹部332,339の前面33aは、所定の鉛直面に沿って延在し、端部用前プレート32の凹部322,329の後面32bは、所定の鉛直面に沿って延在する。このため、ターミナルプレート4の前面4aや後面4bに段差加工することなく、端部用後プレート33の前面33aおよび端部用前プレート32の後面32bを、それぞれ前側のターミナルプレート4の後面4bおよび後側のターミナルプレート4の前面4aに密接させることができる。
【0053】
端部用前プレート32、端部用後プレート33およびターミナルプレート4はいずれも金属により構成される。このため、端部用前プレート32とターミナルプレート4および端部用後プレート33とターミナルプレート4は、それぞれ溶接により接合される。端部用前プレート32に関し、接合方法の一例を挙げると、まず、ターミナルプレート4を横置きにして、その上面に端部用前プレート32を載置する。次いで、レーザ溶接により凹部322,329とターミナルプレート4とを接合する。端部用後プレート33に関しても同様に、ターミナルプレート4を横置きにして、その上面に端部用後プレート33を載置する。次いで、レーザ溶接により凹部332,339とターミナルプレート4とを接合する。これにより、中間部材7A,7B(端部用後プレート33,端部用前プレート32)を、ターミナルプレート4に強固に固定することができる。
【0054】
中間部材7A,7Bがターミナルプレート4に固定された状態では、中間部材7A,7Bと電極アッセンブリ2との接続部の構成は、端部セパレータ3Aと電極アッセンブリ2との接続部の構成と同一である。したがって、中間部材7A,7Bと電極アッセンブリ2(接合体20およびフレーム21)とは、常時安定した接触状態を保つことができる。これにより、セル積層体101全体に、中間部材7A,7Bを介してエンドプレート6から良好な押圧力を付与することができ、ガスや冷媒の十分なシール性能を確保することができる。
【0055】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)燃料電池スタック100は、電解質膜20aと電極20b,20cとの接合体20を含む構造体である電極アッセンブリ2と、セパレータと3を、前後方向に交互に積層して構成されるとともに、複数の電極アッセンブリ2と複数のセパレータ3とを有するセル積層体101と、セル積層体101の前後方向における外側に配置されたターミナルプレート4と、セル積層体101とターミナルプレート4との間に介装された中間部材7A,7Bと、を備える(
図1,6)。セパレータ3は、それぞれ凹凸状に形成された前プレート32と後プレート33とを有するとともに、前プレート32の凸部321およびビード部325が後プレート33の反対方向(前方)を向き、かつ、後プレート33の凸部331およびビード部335が前プレート32の反対方向(後方)を向くように前プレート32に対し後プレート33を反転し、前プレート32の凹部側の端面である後面32bと後プレート33の凹部側の端面である前面33aとを互いに当接した状態で、前プレート32と後プレート33とが一体に接合して構成される(
図4)。複数のセパレータ3のうち、前端部に配置されるセパレータ3は、前プレート32の凸部321およびビード部325が前側のターミナルプレート4に向けて突出する端部セパレータ3Aであり、中間部材7Aは、凹部側の端面である前面33aがターミナルプレート4に当接された後プレート33により構成される(
図6)。また、複数のセパレータ3のうち、後端部に配置されるセパレータ3は、後プレート33の凸部331およびビード部335が後側のターミナルプレート4に向けて突出する端部セパレータ3Aであり、中間部材7Bは、凹部側の端面である後面32bがターミナルプレート4に当接された前プレート32により構成される(
図6)。
【0056】
このような構成により、中間部材7A,7Bを別部品として別途準備する必要がないため、コストの増加を抑えることができる。すなわち、中間部材7A,7Bとして、セパレータ3の構成部品である前プレート32および後プレート33を流用するので、専用の中間部材7A,7Bを備える必要がなく、部品点数を節約できる。また、
図5の参考例と異なり、ターミナルプレート4の表面に段差加工を施す必要がないため、加工コストの増加を抑えることができる。ターミナルプレート4の段差に起因してセパレータ3やシール材40が破損することも防ぐことができ、耐久性が高まる。
【0057】
(2)セパレータ3およびターミナルプレート4はそれぞれ金属により構成される。中間部材7A(後プレート33)の凹部側の端面(前面33a)はターミナルプレート4に溶接され、中間部材7B(前プレート32)の凹部側の端面(後面32b)はターミナルプレート4に溶接される。これにより中間部材7A,7Bをターミナルプレート4に強固に固定することができ、中間部材7A,7Bを最適位置に保持できる。中間部材7Aの凹部側の複数の端面は同一面上に位置し、中間部材7Bの凹部側の複数の端面も同一面上に位置する。このため、ターミナルプレート4の前面4aおよび後面4bへの中間部材7A,7Bの溶接が容易である。
【0058】
(3)電極アッセンブリ2は、接合体20と、接合体20の周縁部を支持するフレーム21と、を有する(
図2)。前プレート32は、接合体20に向けて突設された凸部321と、フレーム21に向けて突設されたビード部325とを有する(
図6)。後プレート33は、接合体20に向けて突設された凸部331と、フレーム21に向けて突設されたビード部335とを有する(
図6)。これにより、アクティブ領域AR1において凸部321,331を介してガス流路を形成するとともに、非アクティブ領域AR2においてビード部325,335を介してシール機能を発揮できる。
【0059】
(4)フレーム21の前後方向における厚さは、接合体20の前記所定方向における厚さよりも薄く、ビード部325,335の先端部にシール材40が設けられる(
図6)。これによりビード部325,335とフレーム21との間の隙間を、シール材40を介して良好にシールすることができ、ガスや冷却媒体の漏れを防ぐことができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、それぞれ凹凸状に形成された前プレート32と後プレート33とを一体に接合してセパレータ3を構成したが、第1プレートと第2プレートとの接合体であるセパレータ3の構成は上述したものに限らない。ここで、第1プレートは前プレート32および後プレート33のいずれか一方であり、第2プレートはいずれか他方である。すなわち、前プレート32が第1プレートであるとき、後プレート33が第2プレートとなる。このとき、前プレート32の凹部側の端面(第1端面)と後プレート33の凹部側の端面(第2端面)とが当接してセパレータ3が構成される。また、前プレート32が第2プレートであるとき、後プレート33が第1プレートとなる。このとき、前プレート32の凹部側の端面(第2端面)と後プレート33の凹部側の端面(第1端面)とが当接してセパレータ3が構成される。いずれの場合であっても、セル積層体101とターミナルプレート4との間に介装される中間部材7A,7Bは、第2端面がターミナルプレート4に当接された第2プレートにより構成される。
【0061】
上記実施形態では、セパレータ3とターミナルプレート4とを金属により構成した上で、中間部材7Aとしての後プレート33または中間部材7Bとしての前プレート32を、溶接によってターミナルプレート4に接合するようにしたが、溶接以外で接合してもよい。中間部材7A,7Bを接合するのではなく、ターミナルプレート4に対して位置決めして、ターミナルプレート4の表面に当接するようにしてもよい。上記実施形態では、前プレート32および後プレート33のアクティブ領域AR1に、接合体20に向けて凸部321,331(内側凸部)を設け、非アクティブ領域AR2に、支持プレートとしてのフレーム21に向けてビード部325,335(外側凸部)を設けるようにしたが、内側凸部と外側凸部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、ビード部325,335の先端部にシール材40(シール部)を固着するようにしたが、ビード部325,335に対応する位置にあるフレーム21に、シール部を設けるようにしてもよい。なお、シール部は、印刷や塗布により設けることができる。
【0062】
燃料電池スタック100内の流路の個数、配置、形状は上述したものに限らない。例えば燃料ガス排出流路PA6と酸化剤ガス排出流路PA3とがそれぞれ2個であってもよい。冷却媒体供給流路PA5と冷却媒体排出流路PA2とがそれぞれ2個であってもよい。貫通孔211~216,311~316,102a~102fの形状は矩形状、三角形状、あるいは他の多角形状、円形や楕円形状等、種々の形状とすることができる。上記実施形態では、貫通孔211~213,311~313,102a~102cおよび貫通孔214~216,314~3161a2d~102fを、それぞれ左右方向同一位置に上下方向に並べて配置したが、これらを左右方向に位置をずらして配置してもよい。
【0063】
上記実施形態では、電解質膜20aと電極20b,20cとの接合体20を含む構造体である電極アッセンブリ2と、セパレータ3とを、前後方向に交互に積層してセル積層体101を構成したが、積層方向は前後方向以外(例えば上下方向)であってもよい。上記実施形態では、電極アッセンブリ2と一対のセパレータ3とからなる発電セル1を複数積層して燃料電離スタックを構成したが、積層方向の端部に位置する発電セル1を、発電を行わないダミーセルとして用いてもよい。
【0064】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【0065】
3 セパレータ、3A 端部セパレータ、4 ターミナルプレート、7A,7B 中間部材、20 接合体、20a 電解質膜、20b アノード電極、20c カソード電極、21 フレーム、32 前プレート、32b 後面、33 後プレート、33a 前面、40 シール材、321,331 凸部、325,335 ビード部、100 燃料電池スタック、101 セル積層体