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特開2024-145374拡散フィルム、光拡散装置、および拡散フィルムの製造方法
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  • 特開-拡散フィルム、光拡散装置、および拡散フィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145374
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】拡散フィルム、光拡散装置、および拡散フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/10 20150101AFI20241004BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20241004BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20241004BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20241004BHJP
   F21V 3/10 20180101ALI20241004BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20241004BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20241004BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20241004BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20241004BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241004BHJP
【FI】
G02B1/10
G02F1/13357
G02B1/04
F21V3/00 530
F21V3/00 100
F21V3/10 310
F21V3/06 130
F21S2/00 481
B32B27/20 Z
F21Y105:10
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057697
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 正
(72)【発明者】
【氏名】武本 博之
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅徳
(72)【発明者】
【氏名】平井 真理子
【テーマコード(参考)】
2H391
2K009
3K244
4F100
【Fターム(参考)】
2H391AA03
2H391AA18
2H391AB04
2H391AC13
2K009AA12
2K009BB24
2K009CC09
2K009CC21
2K009CC35
2K009DD02
2K009DD06
3K244AA01
3K244BA08
3K244BA26
3K244BA31
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244GA02
3K244LA04
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK42C
4F100AK42D
4F100AT00C
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA08
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DE01A
4F100DE01B
4F100EH46
4F100EJ52
4F100EJ54
4F100GB41
4F100JN01
4F100JN06A
4F100JN06B
4F100JN18A
4F100JN18B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】光源部と組み合わせて光拡散装置として用いた場合に、より均一な面発光を実現し得る拡散フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による拡散フィルムは、高分子マトリクスと、前記高分子マトリクス中に分散し、液晶化合物および液晶ポリマーから選択される少なくとも1種を含む分散粒子と、を含む拡散層を2つ以上有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリクスと、前記高分子マトリクス中に分散し、液晶化合物および液晶ポリマーから選択される少なくとも1種を含む分散粒子と、を含む拡散層を2つ以上有する、拡散フィルム。
【請求項2】
前記拡散層の合計厚みが、50μm以上である、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項3】
一対の支持基材とその間に配置された前記拡散層とを含む構造単位を2つ以上有する、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項4】
支持基材と前記拡散層とが交互に配置された積層構造を有する、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項5】
増厚層をさらに有する、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項6】
前記拡散層の少なくとも1つが、平面視においてヘイズが異なる領域を有する、請求項1に記載の拡散フィルム。
【請求項7】
前記ヘイズが異なる領域が、所定のパターンで配列している、請求項6に記載の拡散フィルム。
【請求項8】
ヘイズの最大値と最小値との差が、10%以上である、請求項6に記載の拡散フィルム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の拡散フィルムと、光源部と、を有する、光拡散装置。
【請求項10】
前記光源部が、複数の点光源を含む、請求項9に記載の光拡散装置。
【請求項11】
支持基材に、高分子マトリクス形成用樹脂、液晶化合物、および溶媒を含む塗工液を塗工して、塗布層を得る工程I、
前記塗布層を乾燥させて、高分子マトリクスと、前記高分子マトリクス中に分散した前記液晶化合物を含む分散粒子と、を含む高分子分散型液晶層を得る工程II、および
前記高分子分散型液晶層の上に別の支持基材を積層する工程IIIを含み、
前記工程I~IIIを2回以上繰り返して、前記支持基材と前記高分子分散型液晶層とが各々2つ以上交互に配置された積層体を作製すること、を含む、拡散フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記液晶化合物が、重合性液晶化合物と非重合性液晶化合物とを含み、
前記積層体に含まれる前記高分子分散型液晶層に電圧を印加した状態で、所定の領域に活性エネルギー線を照射して前記重合性液晶化合物を重合させることを含む、請求項11に記載の拡散フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散フィルム、光拡散装置、および拡散フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の透明電極層の間に高分子分散型液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal;以下、「PDLC」と称する場合がある)層を有するPDLCフィルムは、調光フィルムの一種であり、電圧印加状態と無印加状態とを切り替えることにより、光を散乱させる状態(散乱状態)と光を透過させる状態(非散乱状態または透明状態)とを切り替えることができる。具体的には、PDLC層は、高分子マトリクスと該高分子マトリクス中に分散した液晶化合物の液滴(以下、「液晶液滴」と称する場合がある)とを含み、液晶液滴中の液晶化合物と高分子マトリクスとの屈折率差等に起因して液晶液滴が散乱粒子となって光散乱を生じさせ得る。
【0003】
また、近年、消費電力が少ないこと、小型化や薄型化が可能であること等から、発光ダイオード(以降、LEDと言う)を光源として用いる表示装置や照明装置が普及しており、均一な面発光を得る観点から光源の上に拡散フィルムが配置されている。
【0004】
上記拡散フィルムとしては、凹凸加工、ドット印刷等により表面に拡散パターンが形成された表面型の拡散フィルムがある。表面型の拡散フィルムは、接着層を介さずに隣接部材と積層すると、擦過により、隣接部材にキズが生じる、経時的に拡散パターンが変化する等の場合があり、また、粘着剤層を介して隣接部材と積層すると、粘着剤によって、拡散パターンが変化または消失する、凹凸部分に気泡が生じる等の場合がある。
【0005】
別の拡散フィルムとしては、内部に散乱粒子を含む内部型の拡散フィルムがある。上記PDLC層を有するPDLCフィルムは、上記液晶液滴の散乱効果を利用して、内部型の拡散フィルムとして利用され得る(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-077534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PDLCフィルムは、光源部と組み合わせて光拡散装置として用いた場合に面内輝度の均一化が不十分な場合がある。よって、本発明は、光源部と組み合わせて光拡散装置として用いた場合に、より均一な面発光を実現し得る拡散フィルムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の1つの局面によれば、高分子マトリクスと、上記高分子マトリクス中に分散し、液晶化合物および液晶ポリマーから選択される少なくとも1種を含む分散粒子と、を含む拡散層を2つ以上有する、拡散フィルムが提供される。
[2]上記[1]の拡散フィルムにおいて、上記拡散層の合計厚みが、50μm以上であってよい。
[3]上記[1]または[2]の拡散フィルムは、一対の支持基材とその間に配置された上記拡散層とを含む構造単位を2つ以上有してよい。
[4]上記[1]または[2]の拡散フィルムは、支持基材と上記拡散層とが交互に配置された積層構造を有してよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の拡散フィルムは、増厚層をさらに有してよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の拡散フィルムにおいて、上記拡散層の少なくとも1つが、平面視においてヘイズが異なる領域を有してよい。
[7]上記[6]に記載の拡散フィルムにおいて、上記ヘイズが異なる領域が、所定のパターンで配列してよい。
[8]上記[6]または[7]に記載の拡散フィルムにおいて、ヘイズの最大値と最小値との差が、10%以上であってよい。
[9]本発明の別の局面によれば、上記[1]から[8]のいずれかに記載の拡散フィルムと、光源部と、を有する、光拡散装置が提供される。
[10]上記[9]に記載の光拡散装置において、上記光源部が、複数の点光源を含んでよい。
[11]本発明の別の局面によれば、支持基材に、高分子マトリクス形成用樹脂、液晶化合物、および溶媒を含む塗工液を塗工して、塗布層を得る工程I、上記塗布層を乾燥させて、高分子マトリクスと、上記高分子マトリクス中に分散した上記液晶化合物を含む分散粒子と、を含む高分子分散型液晶層を得る工程II、および上記高分子分散型液晶層の上に別の支持基材を積層する工程IIIを含み、上記工程I~IIIを2回以上繰り返して、上記支持基材と上記高分子分散型液晶層とが各々2つ以上交互に配置された積層体を作製すること、を含む、拡散フィルムの製造方法が提供される。
[12]上記[11]に記載の製造方法において、上記液晶化合物が、重合性液晶化合物と非重合性液晶化合物とを含んでよく、上記製造方法は、上記積層体に含まれる上記高分子分散型液晶層に電圧を印加した状態で、所定の領域に活性エネルギー線を照射して上記重合性液晶化合物を重合させることを含んでよい。
【発明の効果】
【0009】
PDLC層は、成膜性等の観点から厚膜化が困難であるところ、本発明の実施形態による拡散フィルムは、拡散層を2つ以上有し、拡散層の合計厚みとして十分な厚みを確保できる。その結果、散乱特性が向上して、面内輝度の均一化がより好適に行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)~(c)はそれぞれ、本発明の1つの実施形態による拡散フィルムの構成を示す概略断面図である。
図2】(a)~(d)はそれぞれ、拡散層の構成の一例を説明する概略断面図である。
図3】拡散層の製造方法の一例を説明する概略図である。
図4】拡散層の製造方法の一例を説明する概略図である。
図5】本発明の1つの実施形態による光拡散装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、各実施形態は、適宜組み合わせることができる。本明細書中で、数値範囲を表す「~」は、その上限および下限の数値を含む。
【0012】
A.拡散フィルム
本発明の実施形態による拡散フィルムは、高分子マトリクスと、上記高分子マトリクス中に分散し、液晶化合物および液晶ポリマーから選択される少なくとも1種を含む分散粒子と、を含む拡散層を2つ以上有する。このような構成を有することにより、本発明の実施形態による拡散フィルムは、光源部と組み合わせて光拡散装置として用いた場合に、より均一な面発光を実現することができる。また、2つ以上の拡散層が一体化されていることから、拡散フィルムを一体化せずに積層する場合に生じ得るフィルム同士の擦過による劣化、フィルムのうねり、ウォーターマーク等の問題を回避することができる。
【0013】
拡散フィルムのヘイズは、用途等に応じて適宜設定され得る。拡散フィルムのヘイズは、例えば50%~80%、また例えば70%~100%であり得る。後述するようにヘイズが異なる領域を有する拡散層を含む場合、拡散フィルムのヘイズの最大値は、例えば30%~100%であり得、最小値は、例えば0%~70%であり得る。ヘイズの最大値と最小値との差は、代表的には0%を超え、例えば5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%~100%、さらに好ましくは30%~100%であり得る。
【0014】
図1(a)~(c)はそれぞれ、本発明の1つの実施形態による拡散フィルムの構成を示す概略断面図である。図1(a)に示される拡散フィルムは、一対の支持基材とその間に配置された拡散層とを含む構造単位を2つ有する。具体的には、拡散フィルム100Aは、一対の支持基材20a、20a’とその間に配置された拡散層10aとを含む第1の構造単位30aと、一対の支持基材20b、20b’とその間に配置された拡散層10bとを含む第2の構造単位30bと、を有する。第1の構造単位30aと第2の構造単位30bとは、代表的には、接着層(図示せず)を介して積層されている。拡散層と支持基材とは、接着層を介して積層されていてもよく、接着層を介さずに密着して積層されていてもよい。1つの実施形態において、拡散層と支持基材とは、接着層を介さずに密着して積層されている。接着層としては、接着剤層または粘着剤層を好ましく例示することができる。接着層の厚みは、例えば0.1μm~50μm、好ましくは0.3μm~30μmである。
【0015】
図1(b)に示される拡散フィルムは、支持基材と拡散層とが交互に配置された積層構造を有する。具体的には、拡散フィルム100Bは、第1の支持基材20aと、第1の拡散層10aと、第2の支持基材20bと、第2の拡散層10bと、第3の支持基材20cと、をこの順に有する。これらの拡散層および支持基材はそれぞれ、代表的には、接着層を介さずに積層されている。支持基材と拡散層とが交互に配置された積層構造を有する拡散フィルムにおいて、取り扱い性、耐久性等の観点から、拡散層の両側に支持基材が好ましく配置され得る。
【0016】
図1(c)に示される拡散フィルムは、支持基材および拡散層に加えて、増厚層をさらに有している。具体的には、拡散フィルム100Cは、拡散フィルム100Bの第1の支持基材20a側に配置された増厚層40を有する。増厚層は、代表的には、接着層を介して第1の支持基材20aに積層されている。増厚層を有する拡散フィルムは、光源部の上に配置された場合に、光源部から拡散層までの距離を十分に確保することができ、結果として、面内輝度の均一化がより好適に行われ得る。増厚層は、図示例のように、2つ以上の拡散層の一方の側(光源部側)に配置されてもよく、図示例とは異なり、2つ以上の拡散層の間に配置されてもよい。
【0017】
上記拡散フィルムが有する拡散層の数は、図示例に限定されない。拡散フィルムが有する拡散層の数は、例えば2~4、好ましくは2~3であり得る。よって、例えば、拡散フィルム100Aの第2の構造単位30bに接着層を介して1つまたは2つ以上の上記構造単位が積層された構成、拡散フィルム100Bの第3の支持基材20cに接着層を介して1つまたは2つ以上の上記構造単位が積層された構成等も本発明の実施形態に含まれる。
【0018】
上記拡散フィルムに含まれる拡散層の合計厚みは、例えば50μm以上であり、好ましくは60μm以上、より好ましくは70μm以上、さらに好ましくは80μm以上である。本発明の実施形態で用いられる拡散層は、その構成上、1層あたりの厚みを大きくすることが難しいが、拡散層を2つ以上積層することで、拡散層の合計厚みを大きくして、拡散特性に優れた拡散フィルムを得ることができる。拡散層の合計厚みの上限は、製造工程の煩雑さや拡散フィルムの薄膜化の観点から、例えば300μm以下、また例えば200μm以下である。
【0019】
上記拡散フィルムにおいて、一方の表面から当該表面から最も遠方に配置されている拡散層までの厚み(図1(c)においては、T1またはT2で示される厚み)の少なくとも一方は、例えば100μm以上であり、好ましくは100μm~400μm、より好ましくは100μm~300μmである。一方の表面から拡散層までの距離が上記範囲であれば、光源部の上に配置した場合に、光源部から拡散層までの距離を確保することができ、結果として、面内輝度の均一化がより好適に行われ得る。
【0020】
上記拡散フィルムの全体厚みは、例えば100μm~450μm、好ましくは125μm~425μm、より好ましくは150μm~400μmである。
【0021】
A-1.拡散層
拡散層は、高分子マトリクスと、上記高分子マトリクス中に分散し、液晶化合物および液晶ポリマーから選択される少なくとも1種を含む分散粒子と、を含む。拡散フィルムに含まれる2つ以上の拡散層は、互いに同じ構成(高分子マトリクス、液晶化合物、および液晶ポリマーの種類または組成、分散粒子径、厚み等)であっても、異なる構成であってもよい。
【0022】
拡散層は、平面視において略均一なヘイズを有していてもよく、ヘイズが異なる領域を有していてもよい。ヘイズが異なる領域は、目的に応じて、任意の適切なパターンで形成され得る。例えば、所定のパターンで配置された点光源を有する光源部に対して、点光源の配置に対応するパターンで高ヘイズ領域を有し、他の領域が低ヘイズ領域とされた拡散層を有する拡散フィルムを用いることにより、面内輝度の均一化が好適に行われ得る。なお、拡散フィルムは、平面視において略均一なヘイズを有する拡散層と、ヘイズが異なる領域を有する拡散層との両方を含んでもよい。また、ヘイズが異なる領域を有する拡散層を2つ以上含む場合、これらの拡散層におけるヘイズが異なる領域の形成パターンは同じであっても、異なっていてもよい。
【0023】
拡散層のヘイズは、拡散フィルムの用途、拡散フィルム中の拡散層の数等に応じて適宜設定され得る。略均一なヘイズを有する拡散層のヘイズは、例えば50%~80%、また例えば70%~100%であり得る。ヘイズが異なる領域を有する拡散層のヘイズの最大値は、例えば30%~100%であり得、最小値は、例えば0%~70%であり得る。ヘイズの最大値と最小値との差は、代表的には0%を超え、例えば5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%~100%、さらに好ましくは30%~100%であり得る。
【0024】
図2(a)~(d)はそれぞれ、拡散層の構成の一例を説明する概略断面図である。
図2(a)に示される拡散層10は、高分子マトリクス12と、高分子マトリクス12中に分散し、液晶化合物13を含む分散粒子16aと、を含む。分散粒子16a中、液晶化合物13は非配向状態であり、高分子マトリクス12と分散粒子16aとの屈折率差に起因して拡散性が発揮される。本実施形態において用いられる液晶化合物13は、重合性液晶化合物であってもよく、非重合性液晶化合物であってもよい。
【0025】
図2(b)に示される拡散層10は、高分子マトリクス12と、高分子マトリクス12中に分散し、液晶ポリマー14を含む分散粒子16bと、を含む。分散粒子16b中、液晶ポリマー14は非配向状態で固定化されており、高分子マトリクス12と分散粒子16bとの屈折率差に起因して拡散性が発揮される。ここで、液晶ポリマーは、重合性液晶化合物の重合体であり、非液晶性である。すなわち、液晶ポリマーにおいては、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。本実施形態において、分散粒子16bの代わりに、液晶ポリマーと液晶化合物とを含む分散粒子を用いてもよい。この場合、液晶化合物としては、非重合性液晶化合物が好ましく用いられる。
【0026】
図2(c)に示される拡散層10は、高分子マトリクス12と、高分子マトリクス12中に分散し、非重合性液晶化合物13aと液晶ポリマー14とを含む分散粒子16cと、を含む。領域Aにおいて、分散粒子16c中の液晶ポリマー14は非配向状態で固定化されており、非重合性液晶化合物13aも液晶ポリマー14に追随して非配向状態となっている。一方、領域Bにおいて、分散粒子16c中の液晶ポリマー14は厚み方向に略垂直に配向した状態で固定化されており、非重合性液晶化合物13aも液晶ポリマー14に追随して配向している。このような構成の拡散層によれば、平面視において、領域Aは、領域Bよりも高いヘイズを示す。本実施形態において、上記のような液晶ポリマーの配向状態を形成し得る限りにおいて、分散粒子16cの代わりに、液晶ポリマーを含み、非重合性液晶化合物を含まない分散粒子を用いてもよい。
【0027】
図2(d)に示される拡散層10は、高分子マトリクス12と、高分子マトリクス12中に分散し、非重合性液晶化合物13aと液晶ポリマー14とを含む分散粒子16cと、非重合性液晶化合物13aと重合性液晶化合物13bとを含む分散粒子16dと、を含む。領域Aにおいて、分散粒子16d中の非重合性液晶化合物13aおよび重合性液晶化合物13bはいずれも非配向状態である。一方、領域Bにおいて、分散粒子16c中の液晶ポリマー14は厚み方向に略垂直に配向した状態で固定化されており、非重合性液晶化合物13aも液晶ポリマー14に追随して配向している。このような構成の拡散層によれば、平面視において、領域Aは、領域Bよりも高いヘイズを示す。本実施形態において、上記のような液晶ポリマーの配向状態を形成し得る限りにおいて、分散粒子16cおよび分散粒子16dの代わりに、液晶ポリマーを含み非重合性液晶化合物を含まない分散粒子および重合性液晶化合物を含み、非重合性液晶化合物を含まない分散粒子を用いてもよい。
【0028】
高分子マトリクスは、任意の適切な樹脂で構成され得る。高分子マトリクス形成用樹脂は、光透過率、液晶ポリマーまたは液晶化合物の屈折率、支持基材との密着力等に応じて適切に選択され得る。例えば、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂等の水溶性樹脂または水分散性樹脂が好ましく用いられ得る。高分子マトリクス形成用樹脂は、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
拡散層中における高分子マトリクスの含有割合は、例えば30重量%~70重量%、好ましくは35重量%~65重量%、より好ましくは40重量%~60重量%である。高分子マトリクスの含有割合が当該範囲内であれば、良好な機械的強度が得られる、端部からの液晶漏れが防止される等の効果が得られ得る。
【0030】
非重合性液晶化合物としては、任意の適切な非重合性液晶化合物を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。非重合性液晶化合物の誘電異方性は、正でも負でもよい。非重合性液晶化合物は、例えば、ネマティック型、スメクティック型、コレステリック型液晶化合物であり得る。配向状態において高い透明性を実現できることから、ネマティック型液晶化合物を用いることが好ましい。
【0031】
ネマティック型液晶化合物としては、ビフェニル系化合物、フェニルベンゾエート系化合物、シクロヘキシルベンゼン系化合物、アゾキシベンゼン系化合物、アゾベンゼン系化合物、アゾメチン系化合物、ターフェニル系化合物、ビフェニルベンゾエート系化合物、シクロヘキシルビフェニル系化合物、フェニルピリジン系化合物、シクロヘキシルピリミジン系化合物、コレステロール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。これらの低分子液晶化合物は、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
非重合性液晶化合物の波長589nmにおける複屈折Δn(=ne-no;neは液晶化合物分子の長軸方向の屈折率、noは液晶化合物分子の短軸方向の屈折率)は、好ましくは0.05~0.50、より好ましくは0.10~0.45である。
【0033】
重合性液晶化合物としては、光透過率、非重合性液晶化合物との相溶性等に応じて適切に選択された重合性液晶化合物を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合性液晶化合物は、2官能以上の架橋型であってもよい。重合性液晶化合物としては、例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合型メソゲン化合物等が使用できる。重合性液晶化合物としては、例えばネマティック型液晶モノマーが好ましい。重合性液晶化合物の波長589nmにおける複屈折Δnは、好ましくは0.05~0.50、より好ましくは0.10~0.45である。
【0034】
液晶ポリマーは、上記重合性液晶化合物の重合体であり、上述のとおり、非液晶性である。
【0035】
拡散層における液晶ポリマーおよび液晶化合物(非重合性液晶化合物および重合性液晶化合物)の合計含有割合は、例えば30重量%~70重量%、好ましくは35重量%~65重量%、より好ましくは40重量%~60重量%である。また、分散粒子が液晶ポリマーを含む場合、拡散層における液晶ポリマーおよび液晶化合物の合計含有量に対する液晶ポリマーの含有割合は、例えば5重量%以上、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、また例えば100重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下であり得る。また、拡散層における高分子マトリクスと液晶ポリマーと液晶化合物との合計含有割合は、例えば90重量%~99.9重量%、好ましくは95重量%~99.9重量%であり得る。
【0036】
拡散層は、必要に応じて、任意の適切な成分をさらに含んでもよい。このような任意成分としては、重合開始剤、界面活性剤、レベリング剤、架橋剤、分散安定剤等が挙げられる。拡散層における任意成分の合計含有割合は、例えば0.1重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%であり得る。
【0037】
分散粒子の平均粒子径は、例えば0.2μm~9μm、好ましくは0.3μm~8μmであり得る。分散粒子の平均粒子径が小さすぎると、光の波長よりも分散粒子サイズが小さいために、光が散乱することなく分散粒子を透過してしまい、結果として、十分なヘイズを得られないという問題が生じ得る。また、該平均粒子径が大きすぎると、光の波長よりも分散粒子サイズが大きすぎるために、十分なヘイズを得られないという問題が生じ得る。なお、拡散層中における分散粒子の平均粒子径は、拡散層の主面に対して垂直な方向から見た場合の分散粒子の体積平均粒子径である。
【0038】
拡散層の厚みは、例えば10μm~60μm、好ましくは15μm~55μm、より好ましくは20μm~50μmである。
【0039】
A-2.支持基材
支持基材は、基材本体を含む。支持基材は、必要に応じて、基材本体の片側または両側にハードコート(HC)層を有していてもよい。
【0040】
基材本体は、任意の適切な材料を用いて形成され得る。具体例としては、ガラスフィルムおよび高分子フィルムが挙げられる。平滑性に優れ、また、ロールによる連続生産により生産性を大幅に向上させ得ることから、高分子フィルムが好ましい。
【0041】
基材本体は、代表的には熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂;ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;セルロース系樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂またはアクリル系樹脂である。これらの樹脂は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れる。上記熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、偏光板に用いられるような光学フィルム、例えば、低位相差基材、高位相差基材、位相差板、吸収型偏光フィルム、偏光選択反射フィルム等を基材本体として用いることも可能である。
【0042】
支持基材のヘイズは、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは0.1%~10%である。
【0043】
支持基材の全光線透過率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。全光線透過率は、JIS K 7361に従って測定され得る。
【0044】
支持基材の厚みは、例えば200μm以下であり、好ましくは3μm~150μmであり、より好ましくは5μm~100μmである。B項で記載するように電圧を印加しながら拡散層を形成する場合、支持基材の厚みは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは3μm~40μmであり、さらに好ましくは5μm~30μmである。
【0045】
A-3.増厚層
増厚層は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な材料で構成され得る。増厚層は、例えば、ガラスフィルムまたは高分子フィルムであり、好ましくは高分子フィルムである。増厚層を構成する高分子フィルムとしては、支持基材の基材本体を構成する高分子フィルムと同様のフィルムが挙げられる。
【0046】
増厚層のヘイズは、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは0.1%~10%である。
【0047】
増厚層の全光線透過率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
【0048】
増厚層の厚みは、例えば30μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上であり、例えば300μm以下、好ましくは250μm以下であり得る。
【0049】
B.拡散フィルムの作製方法
A項に記載の拡散フィルムは任意の適切な方法で製造することができる。
1つの実施形態において、拡散フィルムの製造方法は、
一方の支持基材に、高分子マトリクス形成用樹脂、液晶化合物、および溶媒を含む塗工液を塗工して、塗布層を得ること、
上記塗布層を乾燥させて、高分子マトリクスと、高分子マトリクス中に分散した液晶化合物を含む分散粒子と、を含むPDLC層を得ること、および、
上記PDLC層上に他方の支持基材を積層すること、を含む製造方法によって、一対の支持基材とその間に配置されたPDLC層とを含む構造単位を形成すること;ならびに、
接着層を介して上記構造単位を2つ以上積層すること;を含む。
上記製造方法(「製造方法A」とも称する)によれば、一対の支持基材とその間に配置された拡散層(PDLC層)とを含む構造単位を2つ以上有する拡散フィルムを得ることができる。
【0050】
別の実施形態において、拡散フィルムの製造方法は、
支持基材に、高分子マトリクス形成用樹脂、液晶化合物、および溶媒を含む塗工液を塗工して、塗布層を得る工程I、
上記塗布層を乾燥させて、高分子マトリクスと、高分子マトリクス中に分散した液晶化合物を含む分散粒子と、を含むPDLC層を得る工程II、および
上記PDLC層の上に別の支持基材を積層する工程IIIを含み、
上記工程I~IIIを2回以上繰り返して、上記支持基材と上記PDLC層とが各々2つ以上交互に配置された積層体を作製すること、を含む。
上記製造方法(「製造方法B」とも称する)によれば、支持基材と拡散層(PDLC層)とが交互に配置された積層構造を有する拡散フィルムを得ることができる。
【0051】
上記拡散フィルムの製造方法AおよびBにおいて、塗工液は、液晶化合物を含む液晶粒子が溶媒中に分散しているエマルション塗工液であることが好ましい。溶媒としては、水または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒が好ましく用いられ得る。水混和性有機溶媒としては、C1-3アルコール、アセトン、DMSO等が挙げられる。塗工液は、目的に応じて、重合開始剤、界面活性剤、レベリング剤、架橋剤、分散安定剤等の任意成分をさらに含み得る。
【0052】
上記拡散フィルムの製造方法AおよびBにおいて、拡散層は、高分子マトリクスと、高分子マトリクス中に分散した液晶化合物を含む分散粒子と、を含むPDLC層(例えば、図2(a)に示される拡散層)であるが、液晶化合物として重合性液晶化合物を含む塗工液を用いてPDLC層を作製し、次いで、重合性液晶化合物を重合させることで、高分子マトリクスと、高分子マトリクス中に分散した液晶ポリマーを含む分散粒子と、を含む拡散層(例えば、図2(b)に示される拡散層)を形成することができる。製造方法Aにおいては、構造単位ごとに重合を行った後に、構造単位を積層してもよく、構造単位を積層後にまとめて重合を行ってもよい。製造方法Bにおいては、工程I~IIIのサイクルごとに重合を行ってもよく、支持基材とPDLC層とが各々2つ以上交互に配置された積層体に対して重合を行ってもよい。
【0053】
また、上記拡散フィルムの製造方法AおよびBにおいて、液晶化合物として重合性液晶化合物を含む塗工液を用いてPDLC層を作製し、次いで、PDLC層の第1主面側および第2主面側から、電界強度が異なる領域が生じるように電圧を印加しながら、重合性液晶化合物を重合させることによって、高分子マトリクスと、高分子マトリクス中に分散した液晶ポリマーを含む分散粒子と、を含み、かつ、平面視においてヘイズが異なる領域を有する拡散層(例えば、図2(c)に示される拡散層)を形成することができる。
【0054】
図3(a)を参照しながら具体的に説明すると、一対の支持基材20、20’とその間に配置されたPDLC層10とを含む構造単位の一方の支持基材20の外側に表面に凹部を有する第1電極310を配置し、他方の支持基材20’の外側に表面が平坦な第2電極(例えば、ITO付ガラス基材)320を配置し、これらの電極に対して電圧を印加することにより、PDLC層10に電界強度が異なる領域を生じさせることができる。より具体的には、電極間距離が小さい領域Bにおける電界強度は大きく、当該領域における非重合性液晶化合物13aおよび重合性液晶化合物13bを電界方向に配向させることができる。一方、電極間距離が大きい領域Aにおける電界強度は小さく、当該領域における非重合性液晶化合物13aおよび重合性液晶化合物13bは非配向状態となっている。このような状態で光照射を行って重合性液晶化合物13bを重合させることにより、領域Aでは非配向状態が固定された液晶ポリマーが生成し、領域Bでは略垂直の配向状態が固定された液晶ポリマー14が生成し得る(図3(b))。領域Aは、領域Bよりも高いヘイズを示すことができる。なお、図示例では、1つの構造単位30に対して上記重合処理を行っているが、2つ以上の構造単位の積層体または支持基材とPDLC層とが交互に配置された積層体に対して上記重合処理を行ってもよい。また、図示例のように、分散粒子16dが重合性液晶化合物13bに加えて非重合性液晶化合物13aを含むことにより、液晶相(例えば、ネマティック相)の温度域を広げ、配向制御をより好適に行うことができるが、目的に応じて、分散粒子は非重合性液晶化合物を含まなくてもよい。
【0055】
上記製造方法において、電極の表面に凹凸、段差、傾斜等を任意のパターンで設けることにより、所望のパターンで所望の電極間距離を実現することができる。例えば、電極の表面にテーパー状の凸部を設けることにより、電極間距離を連続的に変化させることができる。具体的には、テーパー状の凸部の高さおよび傾斜角を変化させることにより、電極間距離の変化量および変化率を任意に制御することができ、結果として、得られる拡散層に任意の勾配を有するヘイズ変化を持たせることができる。
【0056】
また、上記拡散フィルムの製造方法AおよびBにおいて、液晶化合物として重合性液晶化合物と非重合性液晶化合物とを含む塗工液を用いてPDLC層を作製し、次いで、PDLC層に電圧を印加した状態で、所定の領域に活性エネルギー線を照射して重合性液晶化合物を重合させることによって、高分子マトリクスと、高分子マトリクス中に分散し、非重合性液晶化合物と液晶ポリマーとを含む分散粒子と、非重合性液晶化合物と重合性液晶化合物とを含む分散粒子と、を含み、かつ、平面視においてヘイズが異なる領域を有する拡散層(例えば、図2(d)に示される拡散層)を形成することができる。
【0057】
図4(a)を参照しながら説明すると、第1の支持基材20aの外側に第1電極310を配置し、第3の支持基材20cの外側に第2電極(例えば、ITO付ガラス基材)320を配置し、これらの電極に対して電圧を印加することにより、PDLC層10における非重合性液晶化合物13aおよび重合性液晶化合物13bを電界方向に配向させることができる。このような状態でフォトマスク330を介して光照射を行って重合性液晶化合物13bを重合させることにより、領域B(照射領域)では略垂直の配向状態が固定された液晶ポリマー14が生成し、領域A(非照射領域)では非重合性液晶化合物13aおよび重合性液晶化合物13bが非配向状態で存在し得る(図4(b))。領域Aは、領域Bよりも高いヘイズを示すことができる。なお、図示例では、支持基材とPDLC層とが交互に配置された積層体に対して上記重合処理を行っているが、2つ以上の構造単位の積層体に上記重合処理を行ってもよく、1つの構造単位に対して上記重合処理を行った後に、他の構造単位と積層してもよい。また、図示例のように、分散粒子16dが重合性液晶化合物13bに加えて非重合性液晶化合物13aを含むことにより、液晶相(例えば、ネマティック相)の温度域を広げ、配向制御をより好適に行うことができるが、目的に応じて、分散粒子は非重合性液晶化合物を含まなくてもよい。
【0058】
上記拡散フィルムの製造方法AおよびBにおいて、所望の部位に増厚層を貼り合わせることにより、増厚層をさらに有する拡散フィルムを得ることができる。
【0059】
C.光拡散装置
本発明の実施形態による光拡散装置は、A項に記載の拡散フィルムと、光源部と、を有する。図5は、本発明の1つの実施形態による光拡散装置の構成を示す概略断面図である。光拡散装置200は、光源層110と、その上に配置された拡散フィルム100Cとを有する。拡散フィルム100Cは、増厚層40が光源層110側となるように配置されており、これにより、拡散層10a、10bと光源部との離間距離を大きくすることができる。拡散フィルム100Cは、接着層を介して光源層110に積層されていてもよく、接着層を介することなく載置されていてもよい。
【0060】
光源層110は、光源部112と光源部112を封止する封止樹脂層114とを有している。
【0061】
光源部112は、代表的には、複数の点光源112aから構成されている。複数の点光源は、例えば、所定のパターンで二次元に配列されている。点光源としては、指向性の高い光を出射する光源が好ましく、例えば、LED素子を用いることができる。
【0062】
封止樹脂層114を形成する樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エチレンビニルアセテート等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂等の紫外線硬化性樹脂、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイソブチレン、イソブチレン系エラストマー等の熱可塑性樹脂が挙げられる。なかでも、樹脂フィルム全般に対する密着性が高く、本発明の効果が好適に得られることから、シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂が好ましく、シリコーン樹脂がより好ましい。封止樹脂層は、単独の樹脂を用いて形成されてもよく、2種以上の樹脂を併用して形成されてもよい。
【実施例0063】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。また、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0064】
(1)厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)液晶エマルション中の液晶粒子の体積平均粒子径
粒度分布測定装置(マイクロトラック社製、「MT3300EXII」を用いて、体積平均粒子径を算出した。
(3)樹脂粒子の平均粒子径
100mLの水に樹脂分散体を数滴加えて測定試料を調製した。動的光散乱式粒子径分布測定装置(Microtrac社製、装置名「Nanotrac150」)を用いて、装置の測定ホルダに測定試料をセットし、測定可能な濃度であることを装置のモニタにて確認後に測定を行った。
(4)ヘイズ
日本電色社製 製品名「NDH4000」を用い、JIS K 7136に基づいて測定した。
【0065】
[実施例1]
1.エマルション塗工液の作製
非重合性液晶化合物(JNC社製、製品名「JC-5240XX」、複屈折Δn=0.252(ne=1.766,no=1.514)、粘度=75mPa・s)34.1部、重合性液晶化合物(BASF社製、製品名「PALIOCOLOR LC-242」)3.8部、光重合開始剤(IGM社製、製品名「OMNIRAD651」)0.1部、純水60.0部、および分散剤(第一工業製薬社製、「ノイゲンET159」)2.0部を混合し、超音波ホモジナイザー(Hielscher ultrasonics社製、UP-200S)にて24kHzの周波数で1分間超音波を照射し、液晶エマルションを調製した。得られた液晶エマルション中の液晶粒子の平均粒子径は、0.8μmであった。
上記液晶エマルション19.03部、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂水性分散体(DSM社製、商品名「NeoRez R967」、ポリマー平均粒子径:80nm、固形分:40wt%)9.16部、ポリエステル系ポリウレタン樹脂水性分散体(三洋化成社製、商品名「ユーコート C-102」、ポリマー平均粒子径:168nm、固形分:45wt%)8.12部、レベリング剤(DIC社製、製品名「F-444」)0.38部、および架橋剤(トリス〔3-(2-メチルアジリジン-1-イル)プロピオン酸〕=プロピリジントリメチル)1.23部、純水62.0部を混合することにより、エマルション塗工液を得た。
【0066】
2.第1のPDLC層の形成
上記エマルション塗工液を、第1の支持基材としてのPETフィルム(厚み25μm)の一方の面に塗工して厚み150μmの塗布層をワイヤーバーにて形成した。次いで、該塗布層を25℃で90分乾燥させることにより、厚み45μmの第1のPDLC層を形成した。得られた第1のPDLC層は主面全体において均一なヘイズ(ヘイズ:99%)を示した。
【0067】
3.第2の支持基材の積層
ラミネーターを用いて0.4MPa/mのラミネート圧を適用しながら、上記第1のPDLC層の上に第2の支持基材としてのPETフィルム(厚み25μm)を積層した。
【0068】
4.第2のPDLC層の形成
上記1.と同様のエマルション塗工液を、第2の支持基材面に塗工して厚み150μmの塗布層をワイヤーバーにて形成した。次いで、該塗布層を25℃で90分乾燥させることにより、厚み45μmの第2のPDLC層を形成した。得られた第2のPDLC層は主面全体において均一なヘイズを示した。
【0069】
5.第3の支持基材の積層
ラミネーターを用いて0.4MPa/mのラミネート圧を適用しながら、上記第2のPDLC層の上に第3の支持基材としてのPETフィルム(厚み25μm)を積層した。これにより、[第1の支持基材/第1のPDLC層/第2の支持基材/第2のPDLC層/第3の支持基材]の構成を有する積層体を得た。
【0070】
6.UV照射
上記積層体の第1の支持基材側に平板状の金属電極を配置し、第3の支持基材側にITO付ガラス電極を配置した。これらの電極に7kV~8kVの電圧を印加しながら、所定のパターンを有するフォトマスク(φ1.5)を介して第3の支持基材側からUV照射を行った。具体的には、UV-LEDランプ(浜松ホトニクス社製、製品名「C11924-101」、ピーク波長365nm)の下で20mW/cmで25℃、3分間露光処理した。これにより、照射領域の重合性液晶化合物を重合させて、[第1の支持基材/第1のパターン化拡散層/第2の支持基材/第2のパターン化拡散層/第3の支持基材]の構成を有する拡散フィルム1を得た。得られた拡散フィルム1において、非照射領域は、照射領域に比べて高いヘイズを示した。また、非照射領域(高ヘイズ領域)は、後述する光源層Aにおける点光源の配置パターンに対応するパターンで配列していた。
【0071】
[実施例2]
実施例1の1.~5.と同様にして、[第1の支持基材/第1のPDLC層/第2の支持基材/第2のPDLC層/第3の支持基材]の構成を有する積層体を得た。
実施例1の1.と同様のエマルション塗工液を、第3の支持基材面に塗工して厚み150μmの塗布層をワイヤーバーにて形成した。次いで、該塗布層を25℃で90分乾燥させることにより、厚み45μmの第3のPDLC層を形成した。得られた第3のPDLC層は主面全体において均一なヘイズを示した。
ラミネーターを用いて0.4MPa/mのラミネート圧を適用しながら、上記第3のPDLC層の上に第4の支持基材としてのPETフィルム(厚み25μm)を積層した。これにより、[第1の支持基材/第1のPDLC層/第2の支持基材/第2のPDLC層/第3の支持基材/第3のPDLC層/第4の支持基材]の構成を有する積層体を得た。
上記積層体に対して、実施例1の6.と同様にしてフォトマスクを介してUV照射を行った。これにより、照射領域の重合性液晶化合物を重合させて、[第1の支持基材/第1のパターン化拡散層/第2の支持基材/第2のパターン化拡散層/第3の支持基材/第3のパターン化拡散層/第4の支持基材]の構成を有する拡散フィルム2を得た。得られた拡散フィルム2において、非照射領域は、照射領域に比べて高いヘイズを示した。
【0072】
[実施例3]
実施例1で作製した拡散フィルム1の第1の支持基材側に透明粘着剤層(厚み25μm)を介して、増厚層としてのPETフィルム(厚み100μm)を貼り合わせて、[増厚層/第1の支持基材/第1のパターン化拡散層/第2の支持基材/第2のパターン化拡散層/第3の支持基材]の構成を有する拡散フィルム3を得た。
【0073】
[実施例4]
実施例1の1.~3.と同様にして、[第1の支持基材/第1のPDLC層/第2の支持基材]の構成を有する積層体(構造単位)を2つ作製した。
2つの積層体に対して別々に、実施例1の6.と同様にしてフォトマスクを介してUV照射を行い、これにより、照射領域の重合性液晶化合物を重合させた。
増厚層としてのPETフィルム(厚み50μm)の両面に透明粘着剤層(厚み25μm)を介して照射領域同士および非照射領域同士が重なるようにパターンを一致させて上記積層体を貼り合わせて、[第1の支持基材/第1のパターン化拡散層/第2の支持基材/増厚層/第3の支持基材/第2のパターン化拡散層/第4の支持基材]の構成を有する拡散フィルム4を得た。
【0074】
[比較例1]
実施例1の1.~3.と同様にして、[第1の支持基材/第1のPDLC層/第2の支持基材]の構成を有する積層体を作製した。
上記積層体に対して、実施例1の6.と同様にしてフォトマスクを介してUV照射を行った。これにより、照射領域の重合性液晶化合物を重合させて、[第1の支持基材/第1のパターン化拡散層/第2の支持基材]の構成を有する拡散フィルム1cを得た。
【0075】
液晶表示装置(Apple社、「iPad Pro(登録商標) 12.9インチ(第5世代)」)から光源部と該光源部を封止するシリコーン樹脂層(厚み150μm)とを含む光源層を取り出し、光源層Aとして用いた。光源部は、119行×88列で二次元に配列したmini-LEDから構成されていた。
光源層Aの上に、接着層を介さずに実施例および比較例で得た拡散フィルムを積層し、これにより、光拡散装置を得た。得られた光拡散装置において、拡散フィルムの非照射領域(高ヘイズ領域)は、平面視で各LEDの配置位置に対応していた。
上記光拡散装置を点灯し、下記の通り、面内輝度の均一性を評価した。結果を、光拡散装置の構成と共に表1に示す。なお、表中の「総厚み」は、拡散フィルムの総厚みである。
<面内輝度の均一性>
光拡散装置の拡散フィルム側表面の輝度を2D分光放射計(トプコンテクノハウス社製、「SR-5000HS」)で分解能0.2mm×0.2mmにて測定し、最高輝度(Lmax)と最小輝度(Lmin)を下記式に代入することにより、面内輝度の均一性を算出した。なお、光源層単独での面内輝度の均一性は、30.6%であった。
面内輝度の均一性(%)=[1-(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin)]×100
【0076】
【表1】
【0077】
拡散層を2つ以上有する実施例の拡散フィルムによれば、拡散層を1つのみ有する比較例の拡散フィルムよりも面内輝度の均一性を大きく向上できた。また、このような効果は、拡散層の数が多い場合および増厚層が設けられた場合により好適に得られた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の光拡散装置は、液晶表示装置等の表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0079】
10 拡散層(PDLC層)
12 高分子マトリクス
16 分散粒子
20 支持基材
30 構造単位
40 増厚層
100 拡散フィルム
110 光源層
112 光源部
200 光拡散装置
図1
図2
図3
図4
図5