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特開2024-145392電力制御計画作成方法、電力制御計画作成プログラム、および電力制御計画作成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145392
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電力制御計画作成方法、電力制御計画作成プログラム、および電力制御計画作成システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20241004BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/14 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057716
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 伶
(72)【発明者】
【氏名】山下 尚也
(72)【発明者】
【氏名】平井 友之
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠祐
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AE09
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G066KB03
5G066KB07
(57)【要約】
【課題】電力消費装置の安定的な動作を維持しながら、経済的な電力制御を行うことを目的とする。
【解決手段】電力制御計画は、系統電力の停止予測の有無を制御基準として蓄電装置の充電を促進する計画を立案する停電電力制御(#2)と、目標デマンドを制御基準として系統電力量が目標デマンド以下となるように制御する計画を立案するデマンド電力制御(#5,#7,#9)と、電力市場の状況に応じて決まる制御基準を用いて系統電力量を抑制する計画を立案する市場対応制御(#8,#9B,#11)とを含み、電力制御工程における電力制御計画は、停電電力制御(#2)、デマンド電力制御(#5,#7,#9)、および市場対応制御(#8,#9B,#11)の実行可否が判断され、停電電力制御(#2)、デマンド電力制御(#5,#7,#9)、市場対応制御(#8,#9B,#11)の順の優先順位で計画される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の電力使用量に応じて決定される料金を対価として供給される系統電力と、蓄電装置を含む電源装置から供給される電源電力とにより動作する電力消費装置に供給される電力の制御計画を作成する電力制御計画作成方法であって、
あらかじめ設定される第1期間における、前記第1期間が等分割された所定の長さのデマンド期間に前記電力消費装置で消費される単位予測電力量を予測する予測工程と、
前記第1期間において前記デマンド期間毎の前記系統電力および前記電源電力の少なくともいずれかを制御する電力制御計画を、前記単位予測電力量に基づいて所定の制御基準を用いて作成する電力制御計画作成工程とを備え、
前記電力制御計画作成工程における前記制御基準を用いた前記電力制御計画は、
前記系統電力の停止予測の有無を前記制御基準として、前記蓄電装置の充電を促進する計画を立案する停電電力制御と、
前記デマンド期間において前記系統電力から供給を受ける系統電力量の目標値である所定の目標デマンドを前記制御基準として、それぞれの前記デマンド期間における前記系統電力量が前記目標デマンド以下となるように制御する計画を立案するデマンド電力制御と、
電力市場の状況に応じて決まる前記制御基準を用いて前記系統電力量を抑制する計画を立案する市場対応制御とを含み、
前記電力制御計画作成工程における前記電力制御計画は、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、および前記市場対応制御の実行可否が判断され、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御の順の優先順位で計画される電力制御計画作成方法。
【請求項2】
前記制御基準として、前記電力市場の状況が外部から要求される前記系統電力量の抑制である場合の前記系統電力量を抑制する要求に応じて決定されるDR目標電力量を含み、前記市場対応制御として、それぞれの前記デマンド期間における前記系統電力量を前記DR目標電力量以下に抑制する制御計画を含む請求項1に記載の電力制御計画作成方法。
【請求項3】
前記制御基準として前記系統電力を調達する際の市場価格を含み、前記市場対応制御として、前記単位予測電力量と前記市場価格に基づいて、前記蓄電装置を充電するための前記系統電力の費用を抑制するように、前記蓄電装置を充電する前記デマンド期間を選択する制御計画を含む請求項1に記載の電力制御計画作成方法。
【請求項4】
前記電源装置には、自然エネルギー発電装置が含まれ、前記自然エネルギー発電装置が発電した発電電力は、前記電力消費装置または前記蓄電装置に供給される請求項1から3のいずれか一項に記載の電力制御計画作成方法。
【請求項5】
前記電力制御計画は、前記自然エネルギー発電装置の発電量が前記単位予測電力量から逆潮発生を防止するために最低限必要な前記系統電力量を減じた電力量を上回ることが予想される前記デマンド期間が存在する場合、その前記デマンド期間で前記蓄電装置を充電し、その前記デマンド期間より前の前記デマンド期間において前記蓄電装置を放電させるように計画される余剰充電制御をさらに含み、
前記電力制御計画作成工程における前記電力制御計画は、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御、および前記余剰充電制御の実行可否が判断され、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御、前記余剰充電制御の順の優先順位で計画される請求項4に記載の電力制御計画作成方法。
【請求項6】
過去の電力使用量に応じて決定される料金を対価として供給される系統電力と、蓄電装置を含む電源装置から供給される電源電力とにより動作する電力消費装置に供給される電力の制御計画を作成する電力制御計画作成プログラムであって、
あらかじめ設定される第1期間における、前記第1期間が等分割された所定の長さのデマンド期間に前記電力消費装置で消費される単位予測電力量を予測する予測機能と、
前記第1期間において前記デマンド期間毎の前記系統電力および前記電源電力の少なくともいずれかを制御する電力制御計画を、前記単位予測電力量に基づいて所定の制御基準を用いて作成する電力制御計画作成機能とをコンピュータに実行させ、
前記電力制御計画作成機能における前記制御基準を用いた前記電力制御計画は、
前記系統電力の停止予測の有無を前記制御基準として、前記蓄電装置の充電を促進する計画を立案する停電電力制御と、
前記デマンド期間において前記系統電力から供給を受ける系統電力量の目標値である所定の目標デマンドを前記制御基準として、それぞれの前記デマンド期間における前記系統電力量が前記目標デマンド以下となるように制御する計画を立案するデマンド電力制御と、
電力市場の状況に応じて決まる前記制御基準を用いて前記系統電力量を抑制する計画を立案する市場対応制御とを含み、
前記電力制御計画作成機能における前記電力制御計画は、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、および前記市場対応制御の実行可否が判断され、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御の順の優先順位で計画される電力制御計画作成プログラム。
【請求項7】
過去の電力使用量に応じて決定される料金を対価として供給される系統電力と、蓄電装置を含む電源装置から供給される電源電力とにより動作する電力消費装置に供給される電力の制御計画を作成する電力制御計画作成システムであって、
あらかじめ設定される第1期間における、前記第1期間が等分割された所定の長さのデマンド期間に前記電力消費装置で消費される単位予測電力量を予測する予測部と、
前記第1期間において前記デマンド期間毎の前記系統電力および前記電源電力の少なくともいずれかを制御する電力制御計画を、前記単位予測電力量に基づいて所定の制御基準を用いて作成する電力制御計画作成部とを備え、
前記電力制御計画作成部における前記制御基準を用いた前記電力制御計画は、
前記系統電力の停止予測の有無を前記制御基準として、前記蓄電装置の充電を促進する計画を立案する停電電力制御と、
前記デマンド期間において前記系統電力から供給を受ける系統電力量の目標値である所定の目標デマンドを前記制御基準として、それぞれの前記デマンド期間における前記系統電力量が前記目標デマンド以下となるように制御する計画を立案するデマンド電力制御と、
電力市場の状況に応じて決まる前記制御基準を用いて前記系統電力量を抑制する計画を立案する市場対応制御とを含み、
前記電力制御計画作成部は、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、および前記市場対応制御の実行可否を判断し、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御の順の優先順位で計画する電力制御計画作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を備え、電力消費装置に供給される電力を制御する電力制御計画作成方法、電力制御計画作成プログラム、および電力制御計画作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
事業所、工場等の施設において、電化製品や設備等の電力消費装置は、供給される電力により動作する。電力消費装置は、電力会社等の外部の電力系統から買電された電力や、自然エネルギーにより発電された電力が供給され、さらに、蓄電装置に充電された電力が供給される場合もある。そして、これらの電力は、安定的かつ経済的に供給されるよう電力制御が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、需要予測電力量と蓄電装置の定格とから計画発電量と目標デマンド(ピークカット量)があらかじめ求められるデマンドカット(ピークカット)が開示されている。また、特許文献1に開示された発明では、電力の制御時に、実際の発電量と需要予測電力量とが比較され、その差分が蓄電池(蓄電装置)に対して充放電される。
【0004】
また、特許文献2には、将来の市場価格(電力価格)を予想し、収支が最適になるように、蓄電池に対する充放電の時期を決定する構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、台風等の停電の予兆を示す情報から充電の必要性を示す緊急度を計算し、緊急度に応じて蓄電池(蓄電装置)の充放電を制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/38482号
【特許文献2】特開2015-156195号公報
【特許文献3】特開2012-235541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電力制御の安定性および経済性の、さらなる向上が求められている。例えば、複数の種類の電力制御を実行可能な場合に、電力消費装置の安定的な動作を維持しながら、経済的な電力制御を行うことが求められている。
【0008】
本発明は、電力消費装置の安定的な動作を維持しながら、経済的な電力制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る電力制御計画作成方法の特徴構成は、過去の電力使用量に応じて決定される料金を対価として供給される系統電力と、蓄電装置を含む電源装置から供給される電源電力とにより動作する電力消費装置に供給される電力の制御計画を作成する電力制御計画作成方法であって、あらかじめ設定される第1期間における、前記第1期間が等分割された所定の長さのデマンド期間に前記電力消費装置で消費される単位予測電力量を予測する予測工程と、前記第1期間において前記デマンド期間毎の前記系統電力および前記電源電力の少なくともいずれかを制御する電力制御計画を、前記単位予測電力量に基づいて所定の制御基準を用いて作成する電力制御計画作成工程とを備え、前記電力制御計画作成工程における前記制御基準を用いた前記電力制御計画は、前記系統電力の停止予測の有無を前記制御基準として、前記蓄電装置の充電を促進する計画を立案する停電電力制御と、前記デマンド期間において前記系統電力から供給を受ける系統電力量の目標値である所定の目標デマンドを前記制御基準として、それぞれの前記デマンド期間における前記系統電力量が前記目標デマンド以下となるように制御する計画を立案するデマンド電力制御と、電力市場の状況に応じて決まる前記制御基準を用いて前記系統電力量を抑制する計画を立案する市場対応制御とを含み、前記電力制御計画作成工程における前記電力制御計画は、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、および前記市場対応制御の実行可否が判断され、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御の順の優先順位で計画される点にある。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る電力制御計画作成プログラムの特徴構成は、過去の電力使用量に応じて決定される料金を対価として供給される系統電力と、蓄電装置を含む電源装置から供給される電源電力とにより動作する電力消費装置に供給される電力の制御計画を作成する電力制御計画作成プログラムであって、あらかじめ設定される第1期間における、前記第1期間が等分割された所定の長さのデマンド期間に前記電力消費装置で消費される単位予測電力量を予測する予測機能と、前記第1期間において前記デマンド期間毎の前記系統電力および前記電源電力の少なくともいずれかを制御する電力制御計画を、前記単位予測電力量に基づいて所定の制御基準を用いて作成する電力制御計画作成機能とをコンピュータに実行させ、前記電力制御計画作成機能における前記制御基準を用いた前記電力制御計画は、前記系統電力の停止予測の有無を前記制御基準として、前記蓄電装置の充電を促進する計画を立案する停電電力制御と、前記デマンド期間において前記系統電力から供給を受ける系統電力量の目標値である所定の目標デマンドを前記制御基準として、それぞれの前記デマンド期間における前記系統電力量が前記目標デマンド以下となるように制御する計画を立案するデマンド電力制御と、電力市場の状況に応じて決まる前記制御基準を用いて前記系統電力量を抑制する計画を立案する市場対応制御とを含み、前記電力制御計画作成機能における前記電力制御計画は、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、および前記市場対応制御の実行可否が判断され、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御の順の優先順位で計画される点にある。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る電力制御計画作成システムの特徴構成は、過去の電力使用量に応じて決定される料金を対価として供給される系統電力と、蓄電装置を含む電源装置から供給される電源電力とにより動作する電力消費装置に供給される電力の制御計画を作成する電力制御計画作成システムであって、あらかじめ設定される第1期間における、前記第1期間が等分割された所定の長さのデマンド期間に前記電力消費装置で消費される単位予測電力量を予測する予測部と、前記第1期間において前記デマンド期間毎の前記系統電力および前記電源電力の少なくともいずれかを制御する電力制御計画を、前記単位予測電力量に基づいて所定の制御基準を用いて作成する電力制御計画作成部とを備え、前記電力制御計画作成部における前記制御基準を用いた前記電力制御計画は、前記系統電力の停止予測の有無を前記制御基準として、前記蓄電装置の充電を促進する計画を立案する停電電力制御と、前記デマンド期間において前記系統電力から供給を受ける系統電力量の目標値である所定の目標デマンドを前記制御基準として、それぞれの前記デマンド期間における前記系統電力量が前記目標デマンド以下となるように制御する計画を立案するデマンド電力制御と、電力市場の状況に応じて決まる前記制御基準を用いて前記系統電力量を抑制する計画を立案する市場対応制御とを含み、前記電力制御計画作成部は、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、および前記市場対応制御の実行可否を判断し、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御の順の優先順位で計画する点にある。
【0012】
台風等の気象条件により電力系統が停止して系統電力が停止(停電)する場合があり、このような系統電力の停止は気象条件からあらかじめ予想することができる。また、電力系統は設備の保守・点検等により停止して系統電力が停止する場合があり、このような場合も当然に系統電力が停止することがあらかじめ分かる。
【0013】
ここで、系統電力が停止した場合であって、電源装置から供給される電源電力だけでは電力消費装置を駆動させるのに必要な電力が賄えない場合、電力消費装置を停止せざるを得ない状態になる。
【0014】
以上のことから、電力消費装置の継続的な動作を維持するために、停電が予想される状況においては、電源装置の蓄電量をあらかじめ高めるように停電電力制御が行われることが必要である。
【0015】
また、系統電力の基本料金は、過去の(例えば前年の)系統電力の消費量に応じて決まる。例えば、今後1年間の基本料金は、過去1年間の各デマンド期間において最も系統電力量の大きなデマンド期間の系統電力量に応じて決まる。つまり、基本料金を低減させるために各デマンド期間において消費される系統電力量を抑制する必要がある。そこで、将来の基本料金を低減させるために、各デマンド期間における系統電力量が目標デマンド以下となるように制御するデマンド電力制御(デマンドカット)が行われることが好ましい。ただし、停電電力制御は電力消費装置の動作維持のために必須であるのに対し、デマンド電力制御は経済的な優位性を確保できるだけのものであるため、デマンド電力制御は停電電力制御ほどには優先順位が高くない。
【0016】
また、電力がひっ迫する等の電力市場の状況に応じて、電力消費装置で消費する系統電力量を調整することにより、経済的な利得を得ることができる場合がある。このような場合、所定の制御基準で系統電力量を抑制する市場対応制御が行われることが好ましい。ただし、デマンド電力制御は将来にわたる系統電力の基本料金を低減させるのに対し、市場対応制御は一時的な利得を得るためだけのものである。そのため、市場対応制御はデマンド電力制御ほどには優先順位が高くない。
【0017】
上記各構成によると、上記のような優先関係に応じて電力制御計画の作成が行われるため、電力消費装置の安定的な動作を維持しながら、経済的な電力制御を行うことができる。
【0018】
また、前記制御基準として、前記電力市場の状況が外部から要求される前記系統電力量の抑制である場合の前記系統電力量を抑制する要求に応じて決定されるDR目標電力量を含み、前記市場対応制御として、それぞれの前記デマンド期間における前記系統電力量を前記DR目標電力量以下に抑制する制御計画を含んでもよい。
【0019】
政府や電力会社、関連組織等から、電力がひっ迫する期間(デマンド期間)において、電力消費装置で消費する系統電力量を抑制することが要求される場合がある。このような要求を満たすことにより所定の報酬が得られる場合がある。そのため、市場対応制御として、要求を満たすために必要な各デマンド期間における上限の系統電力量(DR目標電力量)以下となるように、系統電力量を抑制することが好ましい。このような市場対応制御を行うことにより、所定の利得を得ることができ、経済的な電力制御を行うことができる。
【0020】
また、前記制御基準として前記系統電力を調達する際の市場価格を含み、前記市場対応制御として、前記単位予測電力量と前記市場価格に基づいて、前記蓄電装置を充電するための前記系統電力の費用を抑制するように、前記蓄電装置を充電する前記デマンド期間を選択する制御計画を含んでもよい。
【0021】
系統電力を供給する電力系統は需要バランスに応じて決まる市場価格で電力を調達する場合がある。そのため、市場価格を考慮して市場対応制御を行うことにより、所定の利得を得ることができる。また、蓄電装置は系統電力により充電することができる。そのため、蓄電装置の充電を市場価格が安いデマンド期間に行い、市場価格が高いデマンド期間においては蓄電装置から放電される電力でできるだけ単位予測電力量を賄って系統電力量を抑制することが有利である。
【0022】
上記構成によると、蓄電装置の充放電を適切なタイミングで行うように計画することにより、経済的な電力制御を行うことができる。
【0023】
また、前記電源装置には、自然エネルギー発電装置が含まれ、前記自然エネルギー発電装置が発電した発電電力は、前記電力消費装置または前記蓄電装置に供給されてもよい。
【0024】
このような構成により、電源装置として、蓄電装置に加えて自然エネルギー発電装置が用いられるため、電力消費装置に供給される電力の供給元の自由度が増し、電力消費装置に供給される電力の制御を、より効率的かつ安定的に行うことができる。
【0025】
また、前記電力制御計画は、前記自然エネルギー発電装置の発電量が前記単位予測電力量から逆潮発生を防止するために最低限必要な前記系統電力量を減じた電力量を上回ることが予想される前記デマンド期間が存在する場合、その前記デマンド期間で前記蓄電装置を充電し、その前記デマンド期間より前の前記デマンド期間において前記蓄電装置を放電させるように計画される余剰充電制御をさらに含み、前記電力制御計画作成工程における前記電力制御計画は、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御、および前記余剰充電制御の実行可否が判断され、前記停電電力制御、前記デマンド電力制御、前記市場対応制御、前記余剰充電制御の順の優先順位で計画されてもよい。
【0026】
単位予測電力量が、そのデマンド期間における自然エネルギー発電装置が発電すると予想される電力量より小さい場合、余剰電力を蓄電装置の充電に用いることが好適である。ただし、蓄電装置に余剰電力を蓄えるだけの空き容量がないと余剰電力の全てを充電に用いることができない。
【0027】
上記構成によると、余剰電力を蓄電装置の充電に用いる場合には、あらかじめ蓄電装置に蓄電された電力を電力消費装置の動作に用いて消費するように計画することにより、余剰電力を充電するための空き容量を確保することができ、経済的な電力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】電力消費装置へ電力を供給する概略構成を例示する図である。
図2】デマンド期間毎に行われる電力制御を例示する図である。
図3】電力制御システムの構成を例示する図である。
図4】余剰充電制御を例示する図である。
図5】電力制御のフローを示す図である。
図6】複数のDR目標電力量を用いて制御する構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示すように、工場や事業所等の各種施設では、様々な装置や機器等の電力消費装置1が稼働している。また、施設は電力を生成したり蓄電したりする電源装置2を備える場合がある。例えば、電源装置2は、発電装置や蓄電装置4等を備える。発電装置は、例えば、太陽光発電装置等の再生可能エネルギーを利用した自然エネルギー発電装置5や、燃料電池を備える発電装置や、エンジンとそのエンジンによって駆動される発電機とを備えて構成されるタイプの発電装置等である。
【0030】
電力消費装置1は、過去の電力使用量に応じて決定される料金を対価として供給される系統電力や電源装置2から供給される電源電力により動作する。系統電力は、対価が市場価格に応じて変動する電力系統7や、自社保有の発電所のような対価があらかじめ設定される電力系統7等から供給される。また、電力消費装置1に供給される電力は電力制御システム10(電力制御計画作成システムに相当)により制御される。
【0031】
電力制御システム10は、図2に示すように、あらかじめ設定される所定の第1期間PAにおいて、第1期間PAが等分割される所定の長さのデマンド期間PDに電力消費装置1で消費される単位予測電力量20を予測(予測機能・予測工程)し、予測された単位予測電力量20に基づいて所定の制御基準24を用いて電力の制御計画を作成する電力制御計画作成(電力制御計画作成機能・電力制御計画作成工程)を行う。例えば、第1期間PAは24時間であり、第1期間PAは30分の長さのデマンド期間PDを48個有する。そして、電力制御システム10は、30分毎に、24時間後までの各デマンド期間PDにおける単位予測電力量20を予測し、電力制御計画作成を行う。
【0032】
〔電力制御システム〕
まず、図1図4を用いて電力消費装置1に供給される電力を制御する計画を作成する電力制御計画作成(以下、単に電力制御とも称す)について説明する。なお、以下の説明において、電力消費装置1は、機器等の1つ1つではなく施設に設けられて供給される電力により動作する機器等の全体を意味する。つまり、電力制御は、各施設に備えられる全ての機器等を動作させるための電力、施設に供給される電力の制御計画を作成することを意味する。また、電源装置2として、蓄電装置4と自然エネルギー発電装置5とが設けられる構成を例に説明する。
【0033】
本実施形態における電力制御システム10は、入力部12と、予測部13と、基準判定部15と、電力制御計画作成部17と、記憶部19とを備える。電力制御システム10はCPU等のプロセッサ(コンピュータ)を備え、電力制御システム10の各機能ブロックはプロセッサにより制御される。
【0034】
入力部12は、外部からの各種情報を受け付ける。入力部12は、インターネット8を介して情報を入手したり、電源装置2から情報を入手したり、任意の方法で入力される人為操作を受け付けたりすることができる。例えば、入力部12は、過去に電力消費装置1が各デマンド期間PDで消費した消費電力量22を、消費された日時と紐づけて経時的に取得し、記憶部19に格納する。また、入力部12は、蓄電装置4の蓄電量31、自然エネルギー発電装置5の発電量32、気象情報29等を取得し、記憶部19に格納する。
【0035】
予測部13は、過去に電力消費装置1が消費した消費電力量22の履歴から、第1期間PAにおいて電力消費装置1がデマンド期間PD毎に消費する将来の予測電力量を単位予測電力量20として予測する。基準判定部15は、あらかじめ設定された制御基準24と、単位予測電力量20とを比較・判定する。
【0036】
電力制御計画作成部17は、基準判定部15の判定結果に基づいて、各電力制御の実行可否を判断し、電力制御計画作成(電力制御)を行う。この際、電力制御計画作成部17は、蓄電装置4の蓄電量31や自然エネルギー発電装置5の発電量32等を考慮して電力制御を行ってもよい。電力制御計画作成(電力制御)は、電力系統7から買電して電力消費装置1へ供給する系統電力の系統電力量26(受電量)、自然エネルギー発電装置5が発電した発電電力(発電量32)を電力消費装置1へ供給する発電電力供給量、系統電力量26および発電電力の少なくともいずれかによる蓄電装置4の充電、蓄電装置4から電力消費装置1へ供給(放電)する放電量33等の制御計画の作成である。
【0037】
記憶部19は入力部12を介して入力された情報や、電力制御システム10内で生成された情報等を記憶する。
【0038】
次に、電力制御計画作成部17が行う電力制御の具体例について、図1図4を参照して説明する。
【0039】
〔停電電力制御〕
安定的に電力消費装置1を動作させるために、継続的に電力消費装置1に電力を供給する必要がある。電力系統7が停電し、発電電力および蓄電装置4の蓄電量31が電力消費装置1の動作を維持するのに必要な電力量を満たさない場合、電力消費装置1の動作を維持させることができない。
【0040】
一方、系統電力が停止(電力系統7が停電)する場合、あらかじめ停電を予測する停止予測24Aを得ることができる場合がある。例えば、気象情報29により、台風や大雨により停電を予測して、停止予測24Aを出力できる場合がある。また、電力系統7の設備点検や保守・修理はあらかじめ予定されるものがあり、この場合、停止予測24Aを入手できる。
【0041】
以上のことから、電力制御計画作成部17は、電力制御として、停止予測24Aの有無を制御基準24として、停電すると予測されるデマンド期間PDより前のデマンド期間PDにおいて、蓄電装置4の充電を促進する計画を作成する停電電力制御を実行する。これにより、停電すると予測されるデマンド期間PDにおいて蓄電装置4の蓄電量31(充電量)を満充電、または所定の蓄電量31以上に充電された状態とすることができ、系統電力が停止したとしても蓄電装置4から供給(放電)される電力で電力消費装置1の動作を維持させることができる。
【0042】
〔デマンド電力制御〕
電力系統7から電力の供給を受ける際の買電価格(対価)は、基本料金と、従量料金28(単価)とにより決まる。基本料金は、前年の各デマンド期間PDにおける電力使用量(消費電力量22)に応じて決まる。つまり、デマンド期間PDにおける電力使用量を抑制することにより、将来の基本料金を低減することができる。
【0043】
そのため、電力制御計画作成部17は、電力制御として、デマンド期間PDにおける系統電力量26の目標値である所定の目標デマンド24Bを制御基準24として、それぞれのデマンド期間PDにおける系統電力量26が目標デマンド24B以下となるように制御する計画を作成するデマンド電力制御(デマンドカット)を実行する。
【0044】
例えば、図2に示すように、デマンド期間PD1における単位予測電力量20が目標デマンド24Bを超えるとする。電力制御計画作成部17はデマンド電力制御を実行して、このデマンド期間PD1において、電力系統7から買電する系統電力量26(受電量)を目標デマンド24B以下に抑制する。具体的には、電力制御計画作成部17は、デマンド期間PD1において、単位予測電力量20のうちの目標デマンド24Bを超える部分を、蓄電装置4から供給(放電)される電力、および自然エネルギー発電装置5の発電電力の少なくとも一方で賄うように計画する。
【0045】
このようにデマンド電力制御が行われることにより、各デマンド期間PDにおいて系統電力量26が目標デマンド24Bを超えることが抑制され、将来の基本料金を低減することができる。
【0046】
〔市場対応制御〕
電力がひっ迫する等の電力市場の状況に応じて、電力消費装置1で消費する系統電力量26を調整することにより、報奨を得ることができる場合がある。例えば、政府や電力会社、関連組織等(外部)から、電力がひっ迫するデマンド期間PDにおいて、電力消費装置1で消費する系統電力量26を抑制することが要求される場合がある。この要求を満たすことにより、政府等から報奨を得ることができる。このような場合、電力制御計画作成部17は、電力制御として、電力市場の状況に応じて決まる制御基準24で系統電力量26を抑制する計画を作成する市場対応制御を行う。
【0047】
例えば、電力制御計画作成部17は、系統電力量26を抑制する要求に応じて決定されるDR目標電力量24Cを制御基準24として、それぞれのデマンド期間PDにおける系統電力量26をDR目標電力量24C以下に抑制する計画を作成する市場対応制御を行う。例えば、DR目標電力量24Cは、H4of5(当日調整あり)で算出されるベースラインから、抑制が要求される電力量(指令値)を減じて決定される。
【0048】
また、電力制御計画作成部17は、市場価格を制御基準24とし、市場価格に基づいて、電力小売り(電力系統7)が需要家(施設等)へ供給する電力を調達する際の調達コストを削減するように、蓄電装置4を充電するデマンド期間PDを選択する計画を作成する市場対応制御を実行してもよい。
【0049】
このように市場対応制御が実行されることにより、報奨を得たり、蓄電装置4を充電するための系統電力の買電に係る費用が低減されたりするといった、経済的な利得を得ることができる。
【0050】
〔余剰充電制御〕
自然エネルギー発電装置5の発電電力を電力消費装置1が使用しきれない場合、自然エネルギー発電装置5の発電量32が余ることになる。この際に、蓄電装置4に空き容量があれば余った発電量32で蓄電装置4を充電することができる。また、蓄電装置4に空き容量を設けるために、あらかじめ蓄電装置4に蓄電された電力が放電される。さらに、放電された電力を電力消費装置1に供給することにより、その分の系統電力の使用が抑制され、買電する系統電力量26(受電量)を抑制することができる。
【0051】
以上のことから、電力制御計画作成部17は、電力制御として、余った発電量32である余剰発電量24Dの有無を制御基準24として、余剰発電量24Dが生じるデマンド期間PDが存在することが予想される場合に、そのデマンド期間PDより前のデマンド期間PDにおいて蓄電装置4を放電させる計画を作成する余剰充電制御を実行する。
【0052】
具体的には、図4に示すように、各デマンド期間PDにおいて、基準判定部15は、自然エネルギー発電装置5の発電量32が単位予測電力量20から逆潮発生を防止するために最低限必要な系統電力量26を減じた電力量(基準電力量)を上回ることが予想されるデマンド期間PDが存在するか否かを判定する。つまり、それぞれのデマンド期間PDの発電量32から、単位予測電力量20から基準電力量を減じた電力量である基準電力量を減じた余剰発電量24Dが正の値であるか否かを判定する。余剰発電量24Dが正の値である場合、電力制御計画作成部17は余剰充電制御を行う。図4の例では、デマンド期間PD4~PD6において余剰発電量24Dが正の値である。余剰充電制御として、電力制御計画作成部17は、デマンド期間PD4~PD6における電力系統7から買電する系統電力量26(受電量)を基準電力量にし(買電を最大限抑制し)、単位予測電力量20を発電量32(余剰発電量24D)で賄う計画を作成する。なお、この際の買電する系統電力量26(受電量)は基準電力量より大きく単位予測電力量20より小さい電力量としてもよい。そして、電力制御計画作成部17は、余剰発電量24Dのうちの電力消費装置1に供給する電力量を除いた電力量を用いて蓄電装置4を充電する計画を作成する。さらに、余剰発電量24Dを用いて蓄電装置4を充電する空き容量を確保するために、電力制御計画作成部17は、デマンド期間PD4~PD6より前のデマンド期間PDであるデマンド期間PD2~PD3において、デマンド期間PD4~PD6で蓄電装置4から電力消費装置1に供給する電力量に相当する蓄電量31を放電して、電力消費装置1に供給する計画を作成する。つまり、デマンド期間PD2~PD3において、蓄電装置4から放電する放電量33と買電する系統電力量26(受電量)とで単位予測電力量20が賄われ、放電量33の分だけ買電する系統電力量26(受電量)が抑制されるように計画が作成される。
【0053】
このように、デマンド期間PD4~PD6においては発電電力で単位予測電力量20が賄われるように計画が作成される。これにより買電する系統電力量26(受電量)を抑制することができる。また、デマンド期間PD2~PD3においては蓄電装置4が蓄電する蓄電量31で単位予測電力量20を賄うように計画が作成される。これにより買電する系統電力量26(受電量)を抑制することができる。
【0054】
〔電力制御の優先順位〕
本実施形態に係る電力制御システム10(電力制御方法・電力制御プログラム)は、上記のような各種の電力制御を組み合わせて行う。この際、各電力制御に優先順位を設け、それぞれの電力制御の実行可否が判断されたうえで、優先順位の高い電力制御の順に電力制御が実行される。以下、図1図3を参照して、電力制御の優先順位について説明する。
【0055】
系統電力が停止(停電)した場合であって、電源装置2から供給される電源電力だけでは電力消費装置1を駆動させるのに必要な電力(単位予測電力量20)が賄えない場合、電力消費装置1を停止せざるを得ない状態になる。電力消費装置1の継続的な動作を維持することは最も重要であり、停電電力制御の優先順位は最も高くする必要がある。
【0056】
デマンド電力制御(デマンドカット)を行うことにより、将来の基本料金を低減させることができる。ただし、停電電力制御は電力消費装置1の動作維持のために必須であるのに対し、デマンド電力制御は経済的な優位性を確保できるだけのものであるため、デマンド電力制御は停電電力制御ほどには優先順位が高くない。
【0057】
市場対応制御が行われることにより、報奨等の経済的な利得を得ることができ、電力市場のひっ迫を軽減することもできる。ただし、デマンド電力制御(デマンドカット)は将来にわたる系統電力の基本料金を低減させるのに対し、市場対応制御は一時的な利得を得るためのものである。そのため、市場対応制御はデマンド電力制御ほどには優先順位が高くない。
【0058】
余剰充電制御が行われることにより、発電電力を無駄なく使うことができ、買電する系統電力量26(受電量)を抑制することができる。しかし、余剰充電制御は一時的な利得を得るためのものであり、蓄電装置4の蓄電量31と発電電力の発電量32との状況が整って初めて実行することができるものである。そのため、余剰充電制御の優先順位は最も低くなる。
【0059】
以上のことから、電力制御の優先順位は、停電電力制御、デマンド電力制御、市場対応制御、余剰充電制御の順で高いことが適切である。そのため、電力制御計画作成部17は、複数の電力制御を行うことが可能な状況においては、この優先順位に従って電力制御を行う。
【0060】
これにより、電力消費装置1の安定的な動作を維持しながら、経済的に有効な電力制御を効率的に行うことができる。
【0061】
〔電力制御計画作成〕
次に、図1図5を用いて、上記優先順位を考慮した電力制御について説明する。
【0062】
上述のように、電力消費装置1は、系統電力、発電電力、および蓄電装置4から放電される放電電力の供給を受けて動作する。また、入力部12は、停止予測24Aや気象情報29、蓄電量31、発電量32等を取得し、記憶部19に格納する。また、過去に電力消費装置1が消費した消費電力量22の履歴が記憶部19に記憶されており、予測部13は、デマンド期間PDが経過する(例えば30分)毎にこの消費電力量22に基づいて、この先第1期間PA(例えば24時間)におけるデマンド期間PD毎の単位予測電力量20を予測する。そして、電力制御計画作成部17は、単位予測電力量20が予測される度に(30分毎に)、この先第1期間PA(例えば24時間)におけるデマンド期間PD毎の電力制御計画作成(電力制御)を実施する。
【0063】
このような状態において、まず、基準判定部15は、記憶部19を確認し、この先第1期間PA(例えば24時間)に制御基準24として停止予測24Aが存在し、停電が予測される状態であるか否かを判定する(図5のステップ#1)。
【0064】
停止予測24Aが存在する場合(図5のステップ#1 Yes)、電力制御計画作成部17は停電電力制御を行う(図5のステップ#2)。具体的には、電力制御計画作成部17は、停電することが予測されるデマンド期間PDより前のデマンド期間PDにおいて、蓄電装置4が満充電の状態になるように、あるいはできるだけ蓄電装置4の蓄電量31が多くなるように、蓄電装置4を充電するように計画する。蓄電装置4を充電する電力は、電力系統7から買電する系統電力および自然エネルギー発電装置5が発電する発電電力の少なくともいずれかが用いられる。なお、停電することが予測されるデマンド期間PDより後のデマンド期間PDにおいて、電力制御計画作成部17は、後述のステップ#3以降の処理に準じて、各電力制御の実行可否を判断し、デマンド電力制御(デマンドカット)、市場対応制御、および余剰充電制御を行ってもよい。
【0065】
停止予測24Aが存在しない場合(図5のステップ#1 No)、基準判定部15は、各デマンド期間PDの単位予測電力量20を確認し、単位予測電力量20が制御基準24である目標デマンド24Bを超える(デマンドオーバー)デマンド期間PDがあるか否かを判定する(図5のステップ#3)。
【0066】
デマンドオーバーがある場合(図5のステップ#3 Yes)、基準判定部15は、各デマンド期間PDの単位予測電力量20を確認し、単位予測電力量20が制御基準24であるDR目標電力量24Cを超える(DRオーバー)デマンド期間PDがあるか否かを判定する(図5のステップ#4)。
【0067】
DRオーバーがない場合(図5のステップ#4 No)、電力制御計画作成部17はデマンド電力制御(デマンドカット)を行う(図5のステップ#5)。具体的には、電力制御計画作成部17は、目標デマンド24Bを制御基準24として、それぞれのデマンド期間PDにおける単位予測電力量20が目標デマンド24B以下となるように、発電電力および蓄電電力を活用して電力系統7から買電する系統電力を抑制するように計画する。なお、デマンド電力制御(デマンドカット)を行ったうえで発電量32が基準電力量を上回るデマンド期間PDが存在する場合、電力制御計画作成部17は、後述のステップ#12以降の処理に準じて余剰充電制御を行ってもよい。
【0068】
デマンドオーバーおよびDRオーバーがある場合(図5のステップ#4 Yes)、基準判定部15は、各デマンド期間PDにおいて、デマンドオーバーおよびDRオーバーする電力量の合計が、蓄電装置4の蓄電量31(SOC)以上であるか否かを判定する(図5のステップ#6)。つまり、基準判定部15は、デマンド電力制御(デマンドカット)および市場対応制御が実行できる程度に蓄電装置4の蓄電量31が十分にあるか否かを判定する。なお、基準判定部15は、この判定の際に、予想される自然エネルギー発電装置5の発電量32を考慮してもよい。
【0069】
蓄電量31が十分にある場合(図5のステップ#6 No)、電力制御計画作成部17はデマンド電力制御(デマンドカット)を行い(図5のステップ#7)、さらに、市場対応制御を行う(図5のステップ#8)。具体的には、電力制御計画作成部17は、それぞれのデマンド期間PDにおける系統電力量26を目標デマンド24BおよびDR目標電力量24C以下に抑制するように計画する。なお、この際、電力制御計画作成部17は、電力制御計画作成部17は予想される自然エネルギー発電装置5の発電量32を考慮してデマンド電力制御(デマンドカット)および市場対応制御を行ってもよい。また、デマンド電力制御(デマンドカット)および市場対応制御を行ったうえで発電量32が基準電力量を上回るデマンド期間PDが存在する場合、電力制御計画作成部17は、後述のステップ#12以降の処理に準じて余剰充電制御を行ってもよい。
【0070】
蓄電量31が十分にない場合(図5のステップ#6 Yes)、電力制御計画作成部17はデマンド電力制御(デマンドカット)のみを行う(図5のステップ#9)。つまり、デマンド電力制御(デマンドカット)および市場対応制御を行うだけの電力が蓄電装置4の蓄電量31では賄えないため、電力制御計画作成部17はデマンド電力制御(デマンドカット)を優先的に行う。
【0071】
なお、この際、電力制御計画作成部17は、デマンド電力制御(デマンドカット)を行ったうえで、残りの蓄電量31で賄える範囲で市場対応制御を行ってもよい。例えば、図2に示すように、デマンド期間PD7~PD8において単位予測電力量20が目標デマンド24BおよびDR目標電力量24Cを超え、デマンド期間PD9およびPDa~PDcにおいて単位予測電力量20が目標デマンド24Bを越えないもののDR目標電力量24Cを超える。この場合、電力制御計画作成部17は、デマンド期間PD7~PD9においてデマンド電力制御(デマンドカット)を行う(図5のステップ#9)。その後、電力制御計画作成部17は、デマンドカットを行ったとしても蓄電装置4に電力が残っているかどうか、つまり、蓄電装置4に残った蓄電量31で、市場対応制御を行うことができるデマンド期間PDがあるか否かを判定(実行可否を判断)する(図5のステップ#9A 図では「SOC>0?」と表記する)。残った蓄電量31で、市場対応制御を行うことができるデマンド期間PDがない場合は(図5のステップ#9A No)処理を終了し、残った蓄電量31で、市場対応制御を行うことができるデマンド期間PDがある場合は(図5のステップ#9A Yes)そのデマンド期間PDにおいて市場対応制御を行う(図5のステップ#9B)。図2に示す例では、全てのデマンド期間PDに対してデマンド電力制御(デマンドカット)および市場対応制御に必要な電力が蓄電装置4に蓄電されていないため、電力制御計画作成部17は、デマンド期間PD9では市場対応制御ができない(買電する系統電力量26(受電量)をDR目標電力量24C以下に抑制できない)ものの、デマンド期間PDa~PDcにおいては残りの蓄電量31を用いて市場対応制御(買電する系統電力量26(受電量)をDR目標電力量24C以下に抑制)を行う。これにより、可能な範囲で市場対応制御を行って経済的な利得を得ることができる。なお、デマンド電力制御(デマンドカット)、または、デマンド電力制御(デマンドカット)および市場対応制御を行ったうえで発電量32が基準電力量を上回るデマンド期間PDが存在する場合、電力制御計画作成部17は、後述のステップ#12以降の処理に準じて余剰充電制御を行ってもよい。
【0072】
停止予測24Aが存在せず、デマンドオーバーがない場合(図5のステップ#3 No)基準判定部15は、図5のステップ#4と同様に、各デマンド期間PDの単位予測電力量20を確認し、単位予測電力量20がDR目標電力量24Cを超える(DRオーバー)デマンド期間PDがあるか否かを判定する(図5のステップ#10)。
【0073】
DRオーバーがある場合(図5のステップ#10 Yes)、電力制御計画作成部17は市場対応制御を行う(図5のステップ#11)。なお、市場対応制御を行ったうえで発電量32が基準電力量を上回るデマンド期間PDが存在する場合、電力制御計画作成部17は、後述のステップ#12以降の処理に準じて余剰充電制御を行ってもよい。
【0074】
DRオーバーがない場合(図5のステップ#10 No)、基準判定部15は、自然エネルギー発電装置5の発電量32が単位予測電力量20から逆潮発生を防止するために最低限必要な系統電力量26減じた電力量(基準電力量)を上回る(PV余剰 余剰発電量24Dが存在する)ことが予想されるデマンド期間PDが存在するか否かを判定する(図5のステップ#12)。
【0075】
発電量32が基準電力量を上回るデマンド期間PDが存在しない場合(図5のステップ#12 No)、電力制御を行うことなく処理を終了する。
【0076】
発電量32が基準電力量を上回るデマンド期間PDが存在する(余剰発電量24Dが存在する)場合(図5のステップ#12 Yes)、電力制御計画作成部17は余剰充電制御を行う(図5のステップ#13)。具体的には、発電量32が単位予測電力量20から基準電力量を減じた電力量を上回るデマンド期間PDにおいて蓄電装置4を充電し、そのデマンド期間PDより前のデマンド期間PDにおいて蓄電装置4を放電して電力消費装置1に供給するように計画する。
【0077】
以上のように、優先順位の高い電力制御を優先的に実行することにより、電力消費装置1の安定的な動作を維持しながら、経済的な電力制御を効率的に行うことができる。
【0078】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、余剰充電制御が実行されない構成であってもよい。この場合、図5のステップ#12、#13が実施されず、ステップ#10でDRオーバーがあると判定されると市場対応制御が実行され、DRオーバーがないと判定されると電力制御が行われずに処理が終了する。
【0079】
余剰充電制御は実行される条件が整うことが多くなく、その効果も状況に依存する。余剰充電制御を実行しないことにより電力制御システム10(電力制御方法・電力制御プログラム)のシステム構成を簡略化することができる。
【0080】
(2)上記各実施形態において、電力制御計画作成部17は、複数の種類の市場対応制御を行うことができる。例えば、市場対応制御は、要求元の政府や電力会社、関連組織等、電力需要の増大や市場価格の高騰等の要求理由となる電力市場の状況、期間、発動回数、各種条件等が市場対応制御毎に異なる。
【0081】
図6を用いて、停止予測24Aは取得されていない状態で、デマンド電力制御と2種類の市場対応制御を実行する例について説明する。2種類の市場対応制御の制御基準24は、それぞれDR目標電力量DR1およびDR目標電力量DR2である。なお、DR目標電力量DR2はDR目標電力量DR1より小さいとする。
【0082】
図6に示す例では、単位予測電力量20が目標デマンド24Bを越えるデマンド期間PDは存在しない。デマンド期間PDd~PDgにおいて、市場対応制御としてDR目標電力量DR1が要求される。デマンド期間PDf~PDgにおいて、2つの市場対応制御として、DR目標電力量DR1に加えてDR目標電力量DR2が要求される。
【0083】
基準判定部15は、単位予測電力量20が目標デマンド24Bを越えるデマンド期間PDは存在しないこと、デマンド期間PDd~PDgにおいて単位予測電力量20がDR目標電力量DR1を超えること、デマンド期間PDf~PDgにおいて単位予測電力量20がDR目標電力量DR2を超えることを判定する。
【0084】
電力制御計画作成部17は、各デマンド期間PDにおいて、最も小さいDR目標電力量24Cを用いて市場対応制御を行う。具体的には、電力制御計画作成部17は、デマンド期間PDd~PDeにおいて、系統電力量26がDR目標電力量DR1以下となるように、系統電力量26と蓄電装置4の放電量33とで単位予測電力量20を賄うように計画する。また、デマンド期間PDd~PDeにおいて、系統電力量26がDR目標電力量DR1より小さいDR目標電力量DR2以下となるように、系統電力量26と蓄電装置4の放電量33とで単位予測電力量20を賄うように計画する。その後(デマンド期間PDg以降)のデマンド期間PDにおいて、目標デマンド24Bから単位予測電力量20を減じた電力量の範囲の系統電力量26で、蓄電装置4が充電される。
【0085】
このように市場対応制御が行われることにより、複数のDR目標電力量24Cを用いて電力制御を行うことができる。
【0086】
なお、市場対応制御は、2種類のDR目標電力量24Cに限らず、3種類以上のDR目標電力量24Cを用いて行われても良い。
【0087】
以上のような場合も、実行する市場対応制御に優先順位を付与し、市場対応制御の中でも優先順位の高い順に市場対応制御を優先的に行ってもよい。これにより、効率的に市場対応制御が行われる。
【0088】
(3)上記各実施形態において、実行する電力制御を選択できる構成であってもよい。例えば、入力部12は、実行する電力制御を選択する操作を受け付け、電力制御計画作成部17は、選択された電力制御を実行する。これにより、電力市場の状況等に応じて必要な電力制御を実行することができる。
【0089】
(4)上記各実施形態において、電力制御システム10は、図3に示すような機能ブロックから構成されるものに限定されず、任意の機能ブロックから構成されてもよい。例えば、電力制御システム10の各機能ブロックはさらに細分化されてもよく、逆に、各機能ブロックの一部または全部がまとめられてもよい。また、電力制御システム10の機能は、上記機能ブロックに限らず、任意の機能ブロックが実行する方法により実現されてもよい。また、電力制御システム10の機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されてもよい。ソフトウエアに係るプログラムは、記憶部19等の任意の記憶装置に記憶され、電力制御システム10が備えるCPU等のプロセッサ(コンピュータ)、あるいは別に設けられたプロセッサ(コンピュータ)により実行される。例えば、プログラムの処理の一部または全部が、サーバ等の電力制御システム10とは別途に設けられた装置に搭載されるプロセッサにより実行されてもよい。
【0090】
なお、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、電力消費装置へ電力を供給する構成において、複数の電力制御計画を作成する際に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 電力消費装置
4 蓄電装置
5 自然エネルギー発電装置
7 電力系統
10 電力制御システム(電力制御計画作成システム)
12 入力部
13 予測部
15 基準判定部
17 電力制御計画作成部
19 記憶部
20 単位予測電力量
24 制御基準
24A 停止予測
24B 目標デマンド
24C DR目標電力量
24D 余剰発電量
26 系統電力量
28 従量料金
PA 第1期間
PD デマンド期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6