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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145408
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】クリーンルームの空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/70 20180101AFI20241004BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20241004BHJP
   F24F 6/04 20060101ALI20241004BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20241004BHJP
   F24F 3/167 20210101ALI20241004BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20241004BHJP
【FI】
F24F11/70
F24F7/06 C
F24F6/04
F24F6/00 E
F24F3/167
F24F110:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057736
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 康博
(72)【発明者】
【氏名】玖野 仁志
【テーマコード(参考)】
3L053
3L055
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BD03
3L055BA01
3L058BF01
3L260AA06
3L260AB07
3L260AB14
3L260BA05
3L260BA06
3L260BA13
3L260CA13
3L260CB74
3L260FA04
3L260FB45
(57)【要約】
【課題】室内における湿度の変動に対し、外調機において取り込まれる外気の湿度を好適に調整し得るクリーンルームの空調システムを提供する。
【解決手段】クリーンルームである対象空間Sに導入する外気A0の湿度を調整し得るよう構成された外調機9と、屋内を流通する空気(室内空気A1、還気A2)に対し、該空気A1,A2の湿度に応じて加湿を行う室内加湿器7を備え、外調機9における除湿運転時、屋内を流通する空気A1,A2の湿度またはこれに関連する値に基づき、外調機9における外気A0の除湿量を調整するよう構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームである対象空間に導入する外気の湿度を調整し得るよう構成された外調機と、
屋内を流通する空気に対し、該空気の湿度に応じて加湿を行う室内加湿器を備え、
前記外調機における除湿運転時、屋内を流通する空気の湿度またはこれに関連する値に基づき、前記外調機における外気の除湿量を調整するよう構成されたこと
を特徴とするクリーンルームの空調システム。
【請求項2】
対象空間内に設置された湿度計の測定値に基づき、前記外調機における外気の除湿量の調整を、外調機出口の露点温度設定値を変更することで行うよう構成されたこと
を特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
【請求項3】
前記室内加湿器における加湿量に応じ、前記外調機における外気の除湿量の調整を行うよう構成されたこと
を特徴とする請求項1に記載のクリーンルームの空調システム。
【請求項4】
前記室内加湿器は、水が滴下されるエレメントに対しファンにより空気を吹き付けて加湿を行うよう構成された気化式の加湿器であり、
前記外調機は、前記ファンの回転数に応じて外気の除湿量の調整を、外調機出口の露点温度設定値を変更することで行うよう構成されたこと
を特徴とする請求項3に記載のクリーンルームの空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームの空調システムに関する。特に、外気調和機を設けて変動の大きな外気を温調して導入するクリーンルームの空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図5はクリーンルームを対象とする空調システムの一例を示している。対象空間Sの天井1には複数の送風ユニット2が設置され、下方の対象空間Sへ清浄な室内空気A1を送り出すようになっている。送風ユニット2は、ファン・フィルタ・ユニット(FFU)と称される装置であり、天井1の上方天井裏の空気を送風機により筐体内に吸い込んで筐体下をカバーするフィルタに吹き付け、該フィルタを通って浄化された空気を下方へ供給する仕組みである。
【0003】
対象空間Sの床3は、パンチングパネルやグレーチング等を素材とする上げ床として構成されている。送風ユニット2から対象空間Sに室内空気A1として送り込まれた空気は、床3の開孔を通って還気A2として床下の空間に抜け、床下と天井裏を連通するレタンシャフト4を通って天井裏の空間へ送られ、再度送風ユニット2から室内空気A1として対象空間Sに供給される。このように、クリーンルームである対象空間Sの内外で空気が循環するようになっている。
【0004】
工業用クリーンルームである対象空間Sでは生産装置等の機器5が稼働しており、室内空気A1は、機器5の排熱を受け取り昇温した状態で、還気A2として床下へ抜ける。レタンシャフト4における入口付近にはドライコイルである冷却ユニット6が備えられており、昇温した還気A2はレタンシャフト4の通過に伴って冷却されるようになっている。さらに、床下には加湿器(室内加湿器)7が備えられており、ここで屋内を循環する空気の湿度が必要に応じて調整される。ここに示した例の場合、対象空間S内に湿度計8が設置されており、この湿度計8で測定される室内空気A1の湿度が不足する場合には、加湿器7を作動させて還気A2に対し加湿を行うようになっている。
【0005】
また、対象空間Sのある建物の外には外調機(外気調和機)9が設けられている。外調機9からは、外気A0が取り込まれ、温度と湿度を必要に応じて調整された上で屋内に導入され、上述した空気の流路へ送り込まれる。ここに示した例の場合、外気A0の流路の出口は床下の空間に設置されており、ここに外気A0が導入されて還気A2と混合されるようになっている。
【0006】
外調機9は、上流側から順に、前段のフィルタ(中性能フィルタ)9a、加熱器(加熱コイル)9b、除湿器(冷却除湿コイル)9c、加湿器(外気加湿器)9d、外調機ファン9eおよび後段のフィルタ(高性能フィルタ)9fを内部に備えている。
【0007】
加熱器としての加熱コイル9b、除湿器としての冷却除湿コイル9cは、例えばフィンを備えた伝熱管の内部を熱媒が流通する一般的な型式の熱交換器である。外気加湿器9dは、例えば蒸気式の加湿器であり、外部に設けられた図示しないボイラ等の蒸気発生器から供給される蒸気を、外調機9内における空気の流路に噴射するようになっている。外気加湿器9dに蒸気を供給する流路の途中には蒸気供給弁(図示せず)が備えられ、該蒸気供給弁の開閉および開度の調整により、外調機9に取り込まれる外気A0に対する蒸気の供給の有無および供給量が調整されるようになっている。
【0008】
外気A0は、外調機ファン9eの作動によって外調機9内に取り込まれた後、前段の中性能フィルタ9aで塵埃を除去され、加熱コイル9b、冷却除湿コイル9c、外気加湿器9dにより必要に応じて温度や湿度を調整され、後段の高性能フィルタ9fでさらに浄化されたうえで建物内へ送り込まれる。
【0009】
対象空間Sの内外を循環する空気の流路の適宜位置(ここに示した例では、天井1の上の空間の一部)には、さらに図示しない排気ファンを有する排気口10が設けられており、循環する空気の一部がここから排気A3として外部へ、対象空間Sの正圧を保つように排気ファンを制御しながら排出されるようになっている。
【0010】
こうして、図5に示す空調システムでは、対象空間Sにおいては清浄な室内空気A1を送風ユニット2から供給しつつ、対象空間Sの内外で空気(室内空気A1および還気A2)を循環させながら、外気A0を外調機9から取り込むと共に、循環する空気の一部を排気A3として排出するようになっている。
【0011】
この種のクリーンルームの空調システムに関連する先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1、2等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011-174650号公報
【特許文献2】特開2017-48940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の如きクリーンルームでは、室内空気A1の湿度の調整を外調機9の外気除湿器9cおよび外気加湿器9dと、床下の室内加湿器7が担っており、外気A0の湿度は外調機9である程度調整された後、室内加湿器7でさらに調整されるようになっている。ここで、湿度の制御に関し、従来は、外調機9において出口露点温度の設定値を固定値とするか、あるいは前記設定値を時季に応じて手動で設定することが一般的であった。
【0014】
しかしながら、このようなフィードフォワード制御によって湿度を調整しようとすると、外乱として外気A0の変動のみを想定していればよい場合には特段の問題はないが、対象空間S内における湿度の変動が無視できない程度に大きい場合には、これに対する湿度制御の追従性が悪いという問題があった。
【0015】
クリーンルームである対象空間S内では、上述のように生産装置等の機器5が稼働しているが、こうした機器類は、稼働中、内部の圧縮空気を排出するエアパージを行う場合がある。湿度の低い圧縮空気が対象空間Sに放出されれば、室内空気A1の湿度は低下する。エアパージによって室内空気A1の湿度が実際にどの程度変動するかは、対象空間Sの広さや換気量、機器5の種類や性能、設置台数、稼働状況といった条件によって異なるが、例えば複数台の機器5が一斉にエアパージを行った場合には、室内空気A1の湿度が一時的に大きく低下することも考えられる。
【0016】
ここで、外調機9による湿度の制御を、上述のように外調機9の出口における露点温度の設定値に基づくフィードフォワード制御によって行う場合、外調機9で除湿運転を行っている間にエアパージによる室内空気A1の湿度の低下が発生すると、外調機9で適度に除湿された状態で導入された外気A0が、室内空気A1として対象空間Sに供給された後、パージされた空気と混合してさらに湿度が低下するということが起こり得た。室内空気A1の湿度の低下は、湿度計8により検出され、湿度が室内における設定値よりも低い場合には、室内加湿器7が作動して加湿が行われる。つまり、外調機9にとっては、下流側にあたる対象空間S内における室内空気A1の湿度の変動に対し、これを考慮するような湿度の制御ができない。そして、これを受けて下流側の室内加湿器7で湿度を調整する制御を行う結果、外調機9における除湿で空気から除いた水分を、室内加湿器7で再び空気に添加することになる。これでは屋内を循環する空気の湿度が安定性を欠くことになるし、エネルギー効率の観点からも無駄である。
【0017】
本発明は、斯かる実情に鑑み、室内における湿度の変動に対し、外調機において取り込まれる外気の湿度を好適に調整し得るクリーンルームの空調システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、クリーンルームである対象空間に導入する外気の湿度を調整し得るよう構成された外調機と、屋内を流通する空気に対し、該空気の湿度に応じて加湿を行う室内加湿器を備え、前記外調機における除湿運転時、屋内を流通する空気の湿度またはこれに関連する値に基づき、前記外調機における外気の除湿量を調整するよう構成されたことを特徴とするクリーンルームの空調システムにかかるものである。
【0019】
本発明のクリーンルームの空調システムは、対象空間内に設置された湿度計の測定値に基づき、前記外調機における外気の除湿量の調整を、外調機出口の露点温度設定値を変更することで行うよう構成することができる。
【0020】
本発明のクリーンルームの空調システムは、前記室内加湿器における加湿量に応じ、前記外調機における外気の除湿量の調整を行うよう構成することもできる。
【0021】
本発明のクリーンルームの空調システムにおいて、前記室内加湿器は、水が滴下されるエレメントに対しファンにより空気を吹き付けて加湿を行うよう構成された気化式の加湿器とし、前記外調機は、前記ファンの回転数に応じて外気の除湿量の調整を、外調機出口の露点温度設定値を変更することで行うよう構成してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のクリーンルームの空調システムによれば、室内における湿度の変動に対し、外調機において取り込まれる外気の湿度を好適に調整し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの構成の一例(第一実施例)を示す模式図である。
図2】本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの構成の別の一例(第二実施例)を示す模式図である。
図3】除湿運転時における空気の状態の変化の一例を示す空気線図である。
図4】加湿運転時における空気の状態の変化の一例を示す空気線図である。
図5】クリーンルームの空調システムの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態の一例(第一実施例)を示しており、図中、図5と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0026】
本第一実施例の空調システムにおける機器構成は、基本的には図5に示した例と共通しており、対象空間Sの天井1に設置されたFFUである送風ユニット2から下方へ室内空気A1が送り出され、パンチングパネルやグレーチング等を素材とする上げ床である床3から還気A2として床下の空間に抜け、レタンシャフト4を通って天井裏の空間へ戻され、再度送風ユニット2から浄化された室内空気A1として対象空間Sに供給されるようになっている。レタンシャフト4にはドライコイルである冷却ユニット6が備えられ、対象空間S内の機器5から受け取った排熱により昇温した還気A2がここで冷却される。床下には室内加湿器7が備えられており、屋内を流通する空気(室内空気A1、還気A2)の湿度に応じ、これに対し加湿を行うようになっている。ここに示した例の場合、室内加湿器7は、対象空間S内に設置された湿度計8の測定値として把握される室内空気A1の湿度に応じ、必要な場合は還気A2に対し加湿を行う。
【0027】
建物の外には、前段のフィルタ(中性能フィルタ)9a、加熱器(加熱コイル)9b、除湿器(冷却除湿コイル)9c、加湿器(外気加湿器)9d、外調機ファン9eおよび後段のフィルタ(高性能フィルタ)9fを備えた外調機9が設けられている。外調機9からは、外気A0が取り込まれ、温度と湿度を必要に応じて調整された上で屋内に導入され、屋内を流通する空気と混合されるようになっている。ここに示した例では、外調機9から導入される外気A0の流路の出口は床下に設定されており、外気A0は床下の空間に導入されて還気A2と混合される。排気口10からは、循環する空気の一部が排気A3として外部へ排出されるようになっている。
【0028】
尚、外調機には、例えば加熱コイルの前段で空気を予熱する予熱コイル等、別の構成要素を含む場合もあるが、本願発明の要旨とは直接関係しない構成要素については、適宜図示を省略している。また、空調システムを構成する機器の種類や配置、クリーンルームとしての対象空間の構成等については、ここでは模式的な一例を示しただけであって、本発明を実施するにあたり適宜変更し得る。
【0029】
そして、本第一実施例の場合、外調機9を制御する制御装置11に対し、湿度計8の測定値が測定信号として入力され、制御装置11は、これに基づいて外調機9における外気A0の湿度調整を実行するようになっている。すなわち、制御装置11は、外気除湿器9cの運転に関し、外調機9の出口露点温度の設定値に基づくフィードフォワード制御に加えて、室内空気A1の湿度に基づき、外調機9の出口露点温度の設定値変更を行うカスケード制御を行う。
【0030】
制御装置11では、除湿運転時において、湿度計8から入力される室内空気A1の湿度値が予め設定された閾値よりも低い場合、これに応じて外気A0の除湿量を調整する。具体的には、例えば出口露点温度の設定値を上げる制御を行う。除湿運転は、冷却除湿コイルである外気除湿器9cによって外気A0を設定された出口露点温度まで冷却することによって行われるので、出口露点温度の設定値を上げれば、外気除湿器9cにおける除湿量が小さくなる。これにより、エアパージ等によって室内空気A1の湿度が低下した際、空気の流れにおいて上流にあたる外調機9で導入される外気A0の湿度を上げ、室内空気A1の湿度を回復させることができる。この外調機9での除湿運転では、除湿器(冷却除湿コイル)9cへ、冷熱源の冷凍機において冷凍サイクルを構成する圧縮機回転エネルギーにて冷却する冷水を供給し間接熱交換して外気を除湿するのに、外気の出口露点温度を上昇できれば圧縮機回転エネルギーを削減できることになる。そして、外調機9において大きく除かれた空気中の水分を室内加湿器7で再び加えるという、エネルギー的に無駄な操作の発生を抑えることができる。
【0031】
ここで、出口露点温度を上げる制御を行う場合には、露点温度の設定を、外調機9の出口から屋内に導入されて対象空間Sへ至る空気の流路において結露が生じない程度にする必要がある。特にクリーンルームでは、工業用途でもバイオテクノロジー用途でも、一般に雑菌の繁殖や予期しない湿分での反応阻害などで、製品の汚染・欠陥発生を防止するため、結露の発生を嫌うからである。ここに示した例の場合、冷却ユニット6の表面温度か、安全のためそれより1℃~数℃程度低く設定した温度値を、出口露点温度の設定値の上限とするとよい。
【0032】
尚、加湿運転時にも同様の制御を行う(すなわち、室内空気A1の湿度が下がった場合に外調機9で露点温度の設定値を上げる)ようにしてもよいが、除湿運転時のような効果はないので、加湿運転時にはやらなくともよい。除湿運転時であれば、上述の制御は、外気除湿器9cで一旦下げた湿度を室内加湿器7で再び上げるというエネルギー的に無駄な制御を抑制する効果があるが、加湿運転時には、室内加湿器7と外調機9側の外気加湿器9dにおける加湿量の分担割合を変更するに留まるからである。そして、外調機9での外気加湿器9dは出口露点温度への反応性の良さなどの点で蒸気加湿器が採用されて、室内加湿器7は水加湿器が採用されている場合などがよくあるが、外調機9での出口露点温度の設定値を上げて外調機9の加湿量の分担割合を上げると、室内加湿器7での断熱加湿のエネルギー的に有利な加湿量を減らして、エネルギー的にボイラで発生する蒸気加湿を増やすことになるので、エネルギー的に不利になる。
【0033】
図2は本発明の実施によるクリーンルームの空調システムの形態の別の一例(第二実施例)を示している。基本的な構成は図5に示した例、および図1に示した第一実施例と共通するが、本第二実施例の場合、湿度計8の測定値を外調機9に入力する代わりに、室内加湿器7の動作を外調機9に連動させている点を特徴としている。すなわち、上記第一実施例では、室内空気A1の湿度に基づいて外調機9における外気A0の除湿量を調整する場合を説明したが、外調機9における除湿量の調整は、そのように屋内を流通する空気(室内空気A1や還気A2)の湿度に応じて行ってもよいし、また、これに関連する何らかの値に基づいて行ってもよい。本第二実施例では、ここで用いる空気の湿度に関連する値として、室内加湿器7における加湿量を採用している。
【0034】
室内加湿器7は、例えば、水が滴下されるエレメント7aを備え、これに空気を吹き付けて水を蒸発させることで空気に対し加湿を行う仕組みの気化式の加湿器である。エレメント7aには、外部に設けられた図示しない貯留槽から水が汲み出されて滴下されるようになっており、加湿を行う際には、エレメント7aに水を滴下しつつ、加湿量調整部としてのファン7bの駆動により空気をエレメント7aに吹き付ける。エレメント7aにおいては、空気の通過に伴い、エレメント7aに滴下された水分が気化し、空気が加湿される。
【0035】
こうした構成の加湿器においては、ファン7bの回転数によって空気の流量が調整され、これによって加湿量を調整できるようになっている。そこで、室内加湿器7の制御装置12は、湿度計8の測定する室内空気A1の湿度を測定信号として受け取り、これに基づいてファン7bのインバータに対し回転数信号を入力し、前記インバータによって制御されるファン7bの回転数を調整する。すなわち、室内空気A1の湿度が閾値より小さければファン7bの動作をオンにして加湿を行い、湿度値が閾値を大きく下回る場合にはファン7bの回転数を大きくし、湿度値と閾値との差が比較的小さい場合にはファン7bの回転数を小さくする制御を行う。
【0036】
つまり、室内加湿器7の動作は、屋内を流通する空気の湿度の大小を直接反映しており、さらには、ファン7bの回転数およびファン7bによってエレメント7aに吹き付けられる空気の流量は、室内空気A1に対する加湿の必要量と正に相関している。そこで、本第二実施例では、除湿運転時、室内加湿器7においてファン7bのインバータに対し入力される回転数信号を、室内加湿器7の制御装置12から外調機9の制御装置11にも入力し、制御装置11では、回転数信号として把握される室内加湿器7の運転状態に基づいて外気除湿器9cの動作を制御する。つまり、外調機9は、ファン7bの回転数に応じて外気A0の除湿量の調整を行うようになっている。室内加湿器7においてファン7bが作動して加湿が行われる場合には、出口露点温度の設定値を上げるなどして外気除湿器9cにおける除湿量を少なくし、さらにファン7bの回転数が大きければ出口露点温度の設定値をさらに上げて外気除湿器9cにおける除湿量を大幅に減らし、回転数が小さければ出口露点温度の設定値を元に戻す方向に下げて外気除湿器9cにおける除湿量の減少量を小さくする制御を行うのである。
【0037】
対象空間Sでのエアパージ等により室内空気A1の湿度が下がった場合、まず室内加湿器7の制御装置12はこれを受けてファン7bの回転数を大きくし、屋内を流通する空気(還気A2)に対する加湿量を増やす。同時に、回転数信号は室内加湿器7の制御装置12から外調機9の制御装置11に入力され、制御装置11ではファン7bの回転数の大小に応じて外気除湿器9cにおける除湿量を減らす。このようにすると、エアパージの直後は室内空気A1の湿度が低下し、これを室内加湿器7における加湿によって回復させようとする動きが生じるが、程なく上流側の外調機9で除湿量が減ることによって室内空気A1の湿度が回復し、室内加湿器7では室内空気A1に対する大幅な加湿の必要がなくなって加湿量が抑えられる。外調機9において外気A0から除いた水分を室内加湿器7で再度添加するという運転状態は長く持続しない。こうして、気化式の室内加湿器7を備えた空調システムにおいて、上述の運転を好適に行うことができる。
【0038】
また、室内加湿器7には、空気の流路におけるファン7bの下流側で且つエレメント7aの上流側にあたる位置に加湿量調整部としてのダンパ7cが設けられており、このダンパ7cの開度によっても、空気の流量および加湿量が調整できるようになっている。開度を大きくすればエレメント7aに対し空気が多く吹き付けられて加湿量が大きくなり、開度を小さく絞ればエレメント7aに対し吹き付けられる空気の流量が少なくなって加湿量が小さくなる。つまり、ダンパ7cの開度も、室内空気A1に対する加湿の必要量と相関している。そこで、室内加湿器7の動作と外調機9における除湿量を連動させる場合には、ファン7bの回転数信号に代えて、またはこれに加えて、ダンパ7cの開度信号を外調機9の制御装置11に入力し、前記開度信号に基づいて除湿量を調整するようにしてもよい。
【0039】
尚、室内加湿器7として、ここでは気化式の加湿器を例に説明したが、室内加湿器7の型式はこれに限定されない。例えば、外部から蒸気を導入し、蒸気の流路の途中に備えられた蒸気供給弁の開閉および開度の調整によって蒸気の供給の有無および供給量を調整する蒸気式の加湿器であってもよい。この場合、蒸気供給弁が加湿量調整部にあたるので、この蒸気供給弁の開度に応じて外調機9における除湿量を調整すればよい。すなわち、加湿量を調整する加湿量調整部を備え、該加湿量調整部の動作を外気除湿器9cの動作と連動し得る限りにおいて、本第二実施例における室内加湿器7としては適宜の型式の加湿器を採用し得る。ただし、エネルギー効率の観点からは、水の蒸気化に別途エネルギーを使うことがなく、水の蒸発と同時に気化熱によって空気を冷却することができる気化式の加湿器が特に好適である。
【0040】
図3は上記した各実施例(図1図2)において、外調機9で除湿運転を行う場合の空気の状態の変化の例を示す空気線図である。図中、一点鎖線で示した領域が、対象空間Sにおいて好適とされる空気の状態に相当する。
【0041】
乾球温度と湿度が高い夏期等においては、外気A0に対し、外調機9において冷却と除湿が行われる。図中に実線にて示す如く、外気A0は、冷却除湿コイルである外気除湿器9cで出口露点温度まで冷却された後、加熱コイルである加熱器9bにより室内温度の設定値程度まで加温される(図3中符号1;外調機9の出口における空気状態)。温湿度を調整された外気A0は屋内に供給され、還気A2と混合し、冷却ユニット6や室内加湿器7で温度や湿度を必要に応じてさらに調整された上で、送風ユニット2から対象空間S内に室内空気A1として供給される(図3中符号2;対象空間S内における空気状態)。加熱器9bにより導入外気A0が室内温度の設定値程度まで加温されるのは、還気A2とあまりに温度差があると混合しづらく層状に分かれたままとなり室内温度分布に悪影響があるからである。
【0042】
ここで、対象空間S内で機器5のエアパージが発生すると、室内空気A1の湿度が低下する(図3中符号3)。室内加湿器7は、湿度の低下を受け、屋内を循環する空気に対し加湿を行う。図1図2に示した例の場合、エアパージによって湿度が低下した室内空気A1は、さらに機器5の排熱を受け取って昇温し(図3中符号4)、還気A2として床下に抜けた後、室内加湿器7で断熱加湿され(図3中符号5)、必要に応じて冷却ユニット6で冷却されて、再び室内空気A1として対象空間S内に供給される(図3中符号2)。
【0043】
一方、室内空気A1の湿度が低下すると、外調機9の制御装置11は、湿度計8の測定値の低下(第一実施例(図1)の場合)またはファン7bの回転数の増大(第二実施例(図2)の場合)に応じて除湿量を減じる(外調機の出口露点温度の設定値を変更し上昇する)。これにより、外気A0は図中に破線で示す如く、外調機9の出口において符号6の状態に調整される。この状態の外気A0は、機器5からパージされた湿度の低い空気と混合され、必要に応じて冷却ユニット6や室内加湿器7による温湿度の調整を受けて符号2の状態となる。
【0044】
図3において、実線で示した空気状態の遷移と、破線で示した空気状態の遷移を比較すると、両者は、温度と湿度の調整に要するエネルギーに関し、符号1に示す状態と、符号6に示す状態の差の分だけ相違する。この差というのは、符号6と符合1とそれぞれの点からそれぞれの湿球温度一定の線上を飽和線まで伸ばしたその差分が概略エントロピ差となっている。すなわち、実線で示す遷移においては、破線で示す遷移と比べ、前記差に相当する分だけ余分にエネルギーを消費している。
【0045】
図1図2に示した各実施例において、対象空間S内で湿度の大きな低下が生じると、図3に実線で示すような空気の遷移による空調の運転が一時的に発生する。しかしながら、この運転状態が長く続くことはなく、上述のカスケード制御により、破線に示す如き遷移による運転へと短時間で移行する。外調機9においては、外気A0を符号1に示す状態に調整する代わりに、符号6の状態に調整すればよいので、その分だけエネルギーの消費量が減少する。上記のようなカスケード制御を行わない場合、外調機9において外気A0を符号1の状態に調整するエネルギー消費の大きい運転が長く続くことになるが、上記各実施例のシステムであればこれを回避することができるのである。
【0046】
図4は、各実施例において、外調機9が加湿運転を行う場合の空気の状態の変化の例を示す空気線図である。乾球温度と湿度が低い冬期等においては、外気A0に対し外調機9において加熱と加湿が行われる。図中に実線にて示す如く、外気A0は、加熱コイルである加熱器9bで加熱され、さらに外気加湿器9dにより適当な湿度まで加温される(図4中符号1;外調機9の出口における空気状態)。温湿度を調整された外気A0は屋内に供給され、還気A2と混合し、冷却ユニット6や室内加湿器7で温度と湿度を必要に応じてさらに調整された上で、送風ユニット2から対象空間S内に室内空気A1として供給される(図4中符号2;対象空間S内における空気状態)。
【0047】
対象空間S内で機器5のエアパージが発生すると、室内空気A1の湿度が低下する(図4中符号3)。室内加湿器7は、湿度の低下を受け、屋内を循環する空気に対し加湿を行う。エアパージによって湿度が低下した室内空気A1は、さらに機器5の排熱を受け取って昇温し(図4中符号4)、還気A2として床下に抜けた後、室内加湿器7で加湿され(図4中符号5)、必要に応じて冷却ユニット6で冷却されて再び室内空気A1として対象空間S内に供給される(図4中符号2)。
【0048】
このような加湿運転時においても、上記したような除湿運転の場合と同様、室内空気A1の湿度の低下に応じて外調機9における出口露点温度を引き上げる運転を行うことは可能である。この場合、図中に破線で示す如く、外気A0は外調機9により例えば符号1'で示す状態まで加熱・加湿され、エアパージによって符号3'の状態まで湿度が低下し、排熱による昇温(図4中符号4')、さらに必要に応じて加湿(図4中符号5')および冷却のうえ、室内空気A1として供給されることになる(図4中符号2)。しかしながら、このような運転を行う場合、室内加湿器7における加湿量の一部または全部が外調機9側に分担されるだけであり、除湿運転時のようなエネルギーの節減効果はない。
【0049】
ここまで、外調機9を制御する制御装置11に対し、湿度計8の測定値が、あるいは室内加湿器7の加湿量に応じた値が入力され、制御装置11は、これに基づいて外調機9における外気A0の湿度調整を実行するようになっていることは、すなわち、制御装置11は、外気除湿器の運転に関し、外調機9の出口露点温度の設定値に基づくフィードフォワード制御に加えて、室内空気A1の湿度、あるいは室内加湿器7の加湿量に応じた値に基づき、外調機9の出口露点温度の設定値変更を行うカスケード制御を行うことで説明してきた。この代わりに、冷却除湿コイルのコンタクトファクタ(冷却除湿コイル表面に長く触れて通過した空気量をコイルに全く触れないでコイルを出てくる空気と前記空気を足した量で除した割合)を考慮したコイル露点温度から離れた温度を除湿運転時の冷却除湿コイル出口乾球温度とし、外調機の加湿器(外気加湿器)9dの形式をエアワッシャなどの水加湿器とし、その前段の予熱コイルの温度による加湿量制御を行う場合に加湿飽和効率を考慮した、外気加湿器出口乾球温度での、外調機9の制御も成立する。この場合、除湿運転時の外調機9の除湿器(冷却除湿コイル)9cの出口乾球温度の設定値に基づくフィードフォワード制御に加えて、室内空気A1の湿度、あるいは室内加湿器7の加湿量に応じた値に基づき、外調機9の除湿器(冷却除湿コイル)9cの出口乾球温度の設定値変更を行うカスケード制御を行うこととしてもよい。
【0050】
以上のように、上記各実施例のクリーンルームの空調システムは、クリーンルームである対象空間Sに導入する外気A0の湿度を調整し得るよう構成された外調機9と、屋内を流通する空気(室内空気A1、還気A2)に対し、該空気A1,A2の湿度に応じて加湿を行う室内加湿器7を備え、外調機9における除湿運転時、屋内を流通する空気A1,A2の湿度またはこれに関連する値に基づき、外調機9における外気A0の除湿量を調整するよう構成されている。このようにすれば、対象空間Sにおいて室内空気A1の湿度が低下した際、上流にあたる外調機9で除湿量を小さくし、導入される外気A0の湿度を上げることで室内空気A1の湿度を速やかに回復させ、外調機9において大きく除かれた空気中の水分を室内加湿器7で再び加えるという制御の発生を抑えることができる。
【0051】
また、第一実施例のクリーンルームの空調システムは、対象空間S内に設置された湿度計8の測定値に基づき、外調機9における外気A0の除湿量の調整を、外調機出口の露点温度設定値を変更することで行うよう構成されている。このようにすれば、室内空気A1の湿度に基づき、外調機9において上述の運転を行うことができる。
【0052】
また、第二実施例のクリーンルームの空調システムは、室内加湿器7における加湿量に応じ、外調機9における外気A0の除湿量の調整を行うよう構成されている。このようにすれば、空気A1,A2の湿度を反映する室内加湿器7の運転状態に基づき、外調機9において上述の運転を行うことができる。
【0053】
また、第二実施例のクリーンルームの空調システムにおいて、室内加湿器7は、水が滴下されるエレメント7aに対しファン7bにより空気を吹き付けて加湿を行うよう構成された気化式の加湿器であり、外調機9は、ファン7bの回転数に応じて外気A0の除湿量の調整を、外調機出口の露点温度設定値を変更することで行うよう構成されている。このようにすれば、気化式の室内加湿器7を備えた空調システムにおいて、上述の運転を好適に行うことができる。
【0054】
したがって、上記各実施例によれば、送風ユニットの設置面に要する面積を小さくしつつ、対象空間においては十分な清浄度を保ち得る。
【0055】
尚、本発明のクリーンルームの空調システムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
7 室内加湿器
7a エレメント
7b 加湿量調整部(ファン)
8 湿度計
9 外調機
A0 空気(外気)
A1 空気(室内空気)
A2 空気(還気)
S 対象空間
図1
図2
図3
図4
図5