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特開2024-14541吸音材、吸音材の設計方法及び吸音材の造形方法
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  • 特開-吸音材、吸音材の設計方法及び吸音材の造形方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014541
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】吸音材、吸音材の設計方法及び吸音材の造形方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20240125BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G10K11/162
G10K11/16 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117445
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 清孝
(72)【発明者】
【氏名】松崎 克也
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA22
5D061AA25
5D061CC01
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】要求される吸音性能を好適に設計する。
【解決手段】三次元造形により形成される吸音材であって、最小単位セルを周期的に並べて一体に造形されており、繊維状となる繊維状固体と、繊維状固体の外側の中空空間となる空隙と、を備える。要求吸音性能となる吸音材を設計する吸音材の設計方法において、最小単位セルは、設計パラメータとして、繊維状固体の繊維径と、繊維状固体と空隙との割合である繊維充填率と、繊維状固体の繊維方向となる繊維配向と、を含み、要求吸音性能に関する要求吸音パラメータを取得するステップと、吸音材設計モデルを設計するステップと、設計された吸音材設計モデルの吸音性能に関する設計吸音パラメータを取得するステップと、設計吸音パラメータが要求吸音パラメータを満足するように最適化計算を実行し、計算結果に基づいて設計吸音パラメータを再設定して、吸音材設計モデルを再設計するステップと、を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形により形成される吸音材であって、
構造の最小単位となる最小単位セルを周期的に並べて一体に造形されており、
繊維状となる繊維状固体と、前記繊維状固体の外側の中空空間となる空隙と、を備える吸音材。
【請求項2】
前記繊維状固体同士を接合するバインダをさらに備える請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
三次元造形により形成される吸音材であって、予め要求される要求吸音性能となる前記吸音材を設計する吸音材の設計方法において、
前記吸音材は、繊維状となる繊維状固体と、前記繊維状固体の外側の中空空間となる空隙と、を備え、
前記吸音材を設計するための吸音材設計モデルは、構造の最小単位となる最小単位セルを含むと共に、前記最小単位セルを周期的に並べることで一体に構築されており、
前記最小単位セルは、設計パラメータとして、前記繊維状固体の繊維径と、前記繊維状固体と前記空隙との割合である繊維充填率と、前記繊維状固体の繊維方向となる繊維配向と、を含み、
前記要求吸音性能に関する要求吸音パラメータを取得するステップと、
前記吸音材設計モデルを設計するステップと、
設計された前記吸音材設計モデルの吸音性能に関する設計吸音パラメータを取得するステップと、
前記設計吸音パラメータが前記要求吸音パラメータを満足するように最適化計算を実行し、計算結果に基づいて前記設計吸音パラメータを再設定して、前記吸音材設計モデルを再設計するステップと、を実行する吸音材の設計方法。
【請求項4】
前記吸音材は、前記繊維状固体同士を接合するバインダをさらに備え、
前記設計パラメータの前記繊維充填率は、前記繊維状固体及び前記バインダと前記空隙との割合となっている請求項3に記載の吸音材の設計方法。
【請求項5】
前記吸音材設計モデルは、前記繊維状固体がストレートな円柱形状となるモデルとなっている請求項3に記載の吸音材の設計方法。
【請求項6】
前記設計パラメータには、設定されるパラメータ値に制約条件が与えられており、
前記繊維状固体の繊維径は、1μmから100μmまでの範囲となっており、
前記繊維充填率は、1%から13%までの範囲となっている請求項3に記載の吸音材の設計方法。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の吸音材の設計方法により設計された前記吸音材設計モデルに基づいて、前記吸音材を三次元造形する吸音材の造形方法であって、
前記吸音材は、繊維状となる繊維状固体と、前記繊維状固体の外側の中空空間となる空隙と、を備えており、
前記吸音材設計モデルに基づいて、周期的に並べられた前記最小単位セルが一体となるように造形する吸音材の造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸音材、吸音材の設計方法及び吸音材の造形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸音機能を有する樹脂構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。この樹脂構造体は、3Dプリンタによって形成され、内部に微細空間が形成されている。微細空間は、第1の開口及び第2の開口を有し、第1の開口から第2の開口へ至る1本の円管状の経路となっている。また、複数本の微細空間は、互いに交わることなく形成されている。樹脂構造体において、微細空間に進行した音は、微細空間の内壁に衝突して熱に変換されることで減衰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-189384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂構造体は、微細空間の内壁に音を衝突させることで、音を減衰させる(吸音する)ことから、樹脂構造体の吸音性能は、微細空間の形状及び微細空間の内壁の表面積に依存する。つまり、樹脂構造体による吸音は、微細空間だけで行われることから、吸音性能の向上を図ることが難しい。また、樹脂構造体の吸音性能は、微細空間が設計パラメータとなることから、設計パラメータの種類が限定されることで、設計の自由度が低下し、要求される吸音性能を達成することが困難となる可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、要求される吸音性能を好適に設計することができる吸音材、吸音材の設計方法及び吸音材の造形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の吸音材は、三次元造形により形成される吸音材であって、構造の最小単位となる最小単位セルを周期的に並べて一体に造形されており、繊維状となる繊維状固体と、前記繊維状固体の外側の中空空間となる空隙と、を備える。
【0007】
本開示の吸音材の設計方法は、三次元造形により形成される吸音材であって、予め要求される要求吸音性能となる前記吸音材を設計する吸音材の設計方法において、前記吸音材は、繊維状となる繊維状固体と、前記繊維状固体の外側の中空空間となる空隙と、を備え、前記吸音材を設計するための吸音材設計モデルは、構造の最小単位となる最小単位セルを含むと共に、前記最小単位セルを周期的に並べることで一体に構築されており、前記最小単位セルは、設計パラメータとして、前記繊維状固体の繊維径と、前記繊維状固体と前記空隙との割合である繊維充填率と、前記繊維状固体の繊維方向となる繊維配向と、を含み、前記要求吸音性能に関する要求吸音パラメータを取得するステップと、前記吸音材設計モデルを設計するステップと、設計された前記吸音材設計モデルの吸音性能に関する設計吸音パラメータを取得するステップと、前記設計吸音パラメータが前記要求吸音パラメータを満足するように最適化計算を実行し、計算結果に基づいて前記設計パラメータを再設定して、前記吸音材設計モデルを再設計するステップと、を実行する。
【0008】
本開示の吸音材の造形方法は、上記の吸音材の設計方法により設計された前記吸音材設計モデルに基づいて、前記吸音材を三次元造形する吸音材の造形方法であって、前記吸音材は、繊維状となる繊維状固体と、前記繊維状固体の外側の中空空間となる空隙と、を備えており、前記吸音材設計モデルに基づいて、周期的に並べられた前記最小単位セルが一体となるように造形する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、要求される吸音性能を好適に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る吸音材の一部を示す斜視図である。
図2図2は、吸音材設計モデルを模式的に示した図である。
図3図3は、実施形態1に係る吸音材の設計方法に関する説明図である。
図4図4は、実施形態2に係る吸音材を含む吸音構造体を模式的に示した図である。
図5図5は、実施形態3に係る吸音材を含む吸音構造体を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0012】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る吸音材の一部を示す斜視図である。図2は、吸音材設計モデルを模式的に示した図である。図3は、実施形態1に係る吸音材の設計方法に関する説明図である。
【0013】
実施形態1に係る吸音材10は、吸音構造体1に含まれており、三次元造形により造形されるものとなっている。三次元造形としては、実施形態1において、AM(Additive Manufacturing)造形(積層造形)が適用されるが、三次元造形については、特に限定されず、何れの造形法を用いてもよい。先ず、図1を参照して、吸音構造体1について説明する。
【0014】
(吸音構造体)
図1に示すように、吸音構造体1は、例えば、円筒形状の構造体となっており、図1では、円筒の中心軸に直交する面で切った断面となっている。吸音構造体1は、宇宙航行体の胴体、車両等の車体、吸音材を配置する吸音ダクト構造、または、吸音壁等に適用される。なお、ここでは一例として円筒形状を示しているが、本開示の適用範囲は、必ずしも円筒形状である必要は無く、本吸音構造を適用する物体の外形状によらない。吸音構造体1は、円筒形状の外板5と、外板5の内壁側に設けられる吸音材10と、を含んでおり、三次元造形によって一体に造形される構造体となっている。このため、外板5と吸音材10とは、同じ材料が用いられ、例えば、樹脂材料または金属材料が用いられている。ここで、詳細は後述するが、吸音材10は、吸音構造体1の骨格としても機能している。
【0015】
(吸音材)
吸音材10は、構造の最小単位となる最小単位セル15を周期的に並べて一体に造形されている。吸音材10は、円筒形状に形成されている。最小単位セル15は、一辺が100μm~500μmとなる直方体形状となっている。最小単位セル15は、直交座標系において、x方向、y方向、z方向に周期的に並んでいることから、吸音材10は、最小単位セル15が周期的に並ぶ周期構造となっている。
【0016】
吸音材10(の最小単位セル15)は、繊維状固体21と、空隙22と、バインダ23とを備えている。繊維状固体21は、ストレートな円柱形状となっており、最小単位セル15において、1本以上配置されている。また、繊維状固体21は、その繊維径がランダムな太さとなっており、1μm~100μmの範囲となっている。なお、繊維状固体21の繊維径は、三次元造形による造形の作業効率を考慮して、20μm~100μmの範囲とすることが好ましい。また、複数本の繊維状固体21は、その繊維方向がランダムな方向となっている。空隙22は、繊維状固体21の外側の中空空間となっている。空隙22は、繊維状固体21及びバインダ23に対する割合が、後述する繊維充填率に応じて規定されている。バインダ23は、繊維状固体21同士を接合している。バインダ23は、繊維状固体21同士を接合することで、繊維状固体21の剛性を高め、これにより、繊維状固体21を骨格として機能させている。
【0017】
このような吸音材10において、吸音材10に進入する音は、繊維状固体21を伝播する固体伝播と、空隙22を伝播する空気伝播と、により伝播する。繊維状固体21は、固体伝播する音によって励振することで、音を減衰させている。空隙22は、空気伝播する音が膨張及び圧縮したり、流路の粘性抵抗を受けたりすることで、音を減衰させている。
【0018】
(吸音材の設計方法)
次に、図2及び図3を参照して、上記した吸音材10を設計する吸音材10の設計方法について説明する。吸音材10の設計方法では、図2に示すような、吸音材10を設計するための吸音材設計モデルMが用いられる。吸音材設計モデルMは、モデル化された上記の最小単位セル15を周期的に並べることで一体に構築されている。
【0019】
最小単位セル15は、設計パラメータとして、繊維状固体21の繊維径(直径)と、繊維状固体21及びバインダ23と空隙22との割合である繊維充填率と、繊維状固体21の繊維方向となる繊維配向と、を含んでいる。吸音材10の設計方法において、繊維径に関するパラメータ値が設定されると、設定された繊維径の範囲内で、繊維径がランダムとなるように繊維状固体21がモデリングされる。吸音材10の設計方法において、繊維充填率に関するパラメータ値が設定されると、設定された繊維充填率となるように、繊維状固体21及びバインダ23と空隙22との割合が設定される。繊維充填率は、高ければ高いほど、繊維状固体21の本数が増加し、バインダ23の付着量が増加する一方で、低ければ低いほど、繊維状固体21の本数が減少し、バインダ23の付着量が減少する。吸音材10の設計方法において、繊維配向に関するパラメータ値が設定されると、設定されたパラメータ値に基づいて、繊維状固体21の繊維方向がランダムとなるように繊維状固体21がモデリングされる。繊維配向は、例えば、直交座標系において、x方向、y方向、及びz方向の割合の合計が1となり、x方向、y方向、及びz方向がそれぞれランダムな割合となるように設定される。
【0020】
ここで、上記した設計パラメータには、設定されるパラメータ値に制約条件が与えられている。繊維状固体21の繊維径は、1μmから100μmまでの範囲となっており、下限値は設計可能な直径となっており、上限値は最小単位セル15の一辺の長さ以下となる直径となっている。なお、繊維状固体21の繊維径は、三次元造形の造形時間等の作業効率を考慮した直径とすべく、20μmから100μmまでの範囲とすることがより好ましい。また、最小単位セル15における繊維充填率は、1%から13%までの範囲となっており、下限値は、吸音材として用いられるグラスウールと同様の割合となっている。
【0021】
また、吸音材設計モデルMにおいて、繊維状固体21は、ストレートな円柱形状となるモデルとなっている。また、繊維状固体21は、隣接する最小単位セル15において、連続するように配置されていてもよい。
【0022】
次に、図3を参照して、吸音材10の設計方法について説明する。吸音材10の設計方法では、先ず、吸音材10の最小単位セル15における要求吸音性能に関する要求吸音パラメータP1を取得する(ステップS1)。ステップS1では、要求吸音パラメータP1として、例えば、吸音率、またはBiotパラメータが取得される。なお、図3には、要求吸音パラメータP1として、吸音率を示しており、要求吸音性能として、所定の周波数における吸音率の上限値及び下限値の範囲が設定されている。
【0023】
続いて、吸音材10の設計方法では、吸音材設計モデルMを設計する(ステップS2)。ステップS2では、上記の設計パラメータに基づいて、つまり、繊維状固体21の繊維径、繊維充填率及び繊維配向に基づいて、吸音材設計モデルMを生成する。
【0024】
この後、吸音材10の設計方法では、生成した吸音材設計モデルMの構造解析を実行することで、生成した吸音材設計モデルMのBiotパラメータを算出し、算出したBiotパラメータを設計吸音パラメータP2として取得する(ステップS3)。この後、吸音材10の設計方法では、設計吸音パラメータP2が要求吸音パラメータP1を満足するか否か、具体的に、算出したBiotパラメータから取得される吸音率が、ステップS1において取得した吸音率の範囲内に収まるか否かを判定する。吸音材10の設計方法において、設計吸音パラメータP2が要求吸音パラメータP1を満足すると判定されると、設計吸音パラメータP2と、設計吸音パラメータP2に対応する吸音材設計モデルMとを取得する。一方で、吸音材10の設計方法において、設計吸音パラメータP2が要求吸音パラメータP1を満足しないと判定されると、設計吸音パラメータが要求吸音パラメータを満足するように最適化計算を実行し、計算結果に基づいて設計パラメータを再設定する(ステップS4)。この後、吸音材10の設計方法では、ステップS4で再設定した設計パラメータに基づいて、吸音材設計モデルMを設計するステップS2を再び実行する。そして、吸音材10の設計方法では、設計吸音パラメータP2が要求吸音パラメータP1を満足するまで、ステップS2からステップS4を繰り返し実行する。なお、ステップS2からステップS4は、演算装置による自動計算によって実行される。
【0025】
なお、吸音材10を含む吸音構造体1としての吸音性能を評価する場合、吸音材10の設計方法において取得した、要求吸音パラメータP1を満足すると判定された吸音材設計モデルMの最小単位セル15に基づいて、吸音構造体1のモデルを構築して、吸音性能を評価する。
【0026】
(吸音材の造形方法)
次に、吸音材10の造形方法について説明する。吸音材10の造形方法では、吸音材10の設計方法において取得した、要求吸音パラメータP1を満足すると判定された吸音材設計モデルMに基づいて、吸音材10を三次元造形している。具体的に、吸音材10の造形方法では、吸音材設計モデルMの最小単位セル15を周期的に配置して、吸音材10の造形モデルを構築する。また、吸音材10の造形方法では、図1に示す外板5の造形モデルを構築すると共に、吸音材10の造形モデルと一体となるように構築して、吸音構造体1の造形モデルを生成する。そして、吸音材10の造形方法では、三次元造形装置を用いて、生成した吸音構造体1の造形モデルに基づく三次元造形を行うことで、吸音構造体1を造形する。
【0027】
[実施形態2]
次に、図4を参照して、実施形態2について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図4は、実施形態2に係る吸音材を含む吸音構造体を模式的に示した図である。
【0028】
実施形態2は、吸音材10が設けられる吸音構造体1aが、実施形態1の吸音構造体1と異なるものとなっている。実施形態2の吸音構造体1aは、実施形態1の吸音構造体1の内周側に、円筒形状の多孔板31を配置したものとなっている。このような吸音構造体1aであっても、三次元造形の実行時において、外板5と吸音材10と多孔板31とが一体となるように、吸音構造体1aを造形することができる。
【0029】
[実施形態3]
次に、図5を参照して、実施形態3について説明する。なお、実施形態3でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1及び2と異なる部分について説明し、実施形態1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図5は、実施形態3に係る吸音材を含む吸音構造体を模式的に示した図である。
【0030】
実施形態3の吸音構造体1bは、吸音材10が設けられる吸音構造体1bが、実施形態1の吸音構造体1と異なるものとなっている。実施形態3の吸音構造体1bは、円筒形状となる外板5と、外板5の内部に設けられると共に、内部を区分けするスプリッタ35とを備え、スプリッタ35は、吸音材10を用いて構成されている。このような吸音構造体1bであっても、三次元造形の実行時において、外板5と吸音材10からなるスプリッタ35とが一体となるように、吸音構造体1bを造形することができる。
【0031】
以上のように、実施形態1から3に記載の吸音材10、吸音材10の設計方法及び吸音材10の造形方法は、例えば、以下のように把握される。
【0032】
第1の態様に係る吸音材は、三次元造形により形成される吸音材10であって、構造の最小単位となる最小単位セル15を周期的に並べて一体に造形されており、繊維状となる繊維状固体21と、前記繊維状固体21の外側の中空空間となる空隙22と、を備える。
【0033】
この構成によれば、最小単位セル15における吸音性能を設計することができるため、要求される吸音性能を好適に設計することができる。また、繊維状固体21における固体伝播による吸音と、空隙22における空気伝播による吸音とを行うことができるため、吸音性能の向上を図ることができ、要求される吸音性能を満足し易い構造とすることができる。
【0034】
第2の態様として、第1の態様に係る吸音材10において、前記繊維状固体21同士を接合するバインダ23をさらに備える。
【0035】
この構成によれば、バインダ23により繊維状固体21を接合することで、繊維状固体21が骨格となって、吸音材10の剛性を高めることができる。
【0036】
第3の態様に係る吸音材の設計方法は、三次元造形により形成される吸音材10であって、予め要求される要求吸音性能となる前記吸音材10を設計する吸音材10の設計方法において、前記吸音材10は、繊維状となる繊維状固体21と、前記繊維状固体21の外側の中空空間となる空隙22と、を備え、前記吸音材10を設計するための吸音材設計モデルMは、構造の最小単位となる最小単位セル15を周期的に並べることで一体に構築されており、前記最小単位セル15は、設計パラメータとして、前記繊維状固体21の繊維径と、前記繊維状固体21と前記空隙22との割合である繊維充填率と、前記繊維状固体の繊維方向となる繊維配向と、を含み、前記要求吸音性能に関する要求吸音パラメータP1を取得するステップS1と、前記吸音材設計モデルMを設計するステップS2と、設計された前記吸音材設計モデルMの吸音性能に関する設計吸音パラメータP2を取得するステップと、前記設計吸音パラメータP2が前記要求吸音パラメータP1を満足するように最適化計算を実行し、計算結果に基づいて前記設計吸音パラメータP2を再設定して、前記吸音材設計モデルを再設計するステップS2と、を実行する。
【0037】
この構成によれば、最小単位セル15の吸音性能を設計することができるため、要求される吸音性能を好適に設計することができる。また、繊維状固体21における固体伝播による吸音と、空隙22における空気伝播による吸音とを行うことができるため、吸音性能の向上を図ることができ、要求される吸音性能を満足し易い構造とすることができる。
【0038】
第4の態様として、第3の態様に係る吸音材10の設計方法において、前記吸音材10は、前記繊維状固体21同士を接合するバインダ23をさらに備え、前記設計パラメータの前記繊維充填率は、前記繊維状固体21及び前記バインダ23と前記空隙22との割合となっている。
【0039】
この構成によれば、バインダ23により繊維状固体21を接合した構造として設計できるため、繊維状固体21が骨格となって、吸音材10の剛性を高めることができる。
【0040】
第5の態様として、第3または第4の態様に係る吸音材10の設計方法において、前記吸音材設計モデルMは、前記繊維状固体21がストレートな円柱形状となるモデルとなっている。
【0041】
この構成によれば、吸音材設計モデルMの構成を簡易なものとすることができるため、吸音材設計モデルMの設計を容易に(例えば、少ない設計パラメータで)行うことができる。
【0042】
第6の態様として、第3から第5のいずれか1つの態様に係る吸音材10の設計方法において、前記設計パラメータには、設定されるパラメータ値に制約条件が与えられており、前記繊維状固体21の繊維径は、1μmから100μmまでの範囲となっており、前記繊維充填率は、1%から13%までの範囲となっている。
【0043】
この構成によれば、制約条件に基づく設計パラメータとなる吸音材設計モデルMとすることができるため、三次元造形の造形時間等の作業効率が低下することなく、現実的な三次元造形を実行することができる。
【0044】
第7の態様に係る吸音材の造形方法は、上記の吸音材10の設計方法により設計された前記吸音材設計モデルMに基づいて、前記吸音材10を三次元造形する吸音材10の造形方法であって、前記吸音10材は、繊維状となる繊維状固体21と、前記繊維状固体21の外側の中空空間となる空隙22と、を備えており、前記吸音材設計モデルMに基づいて、周期的に並べられた前記最小単位セル15が一体となるように造形する。
【0045】
この構成によれば、要求された吸音性能となる吸音材10を造形することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 吸音構造体
5 外板
10 吸音材
15 最小単位セル
21 繊維状固体
22 空隙
23 バインダ
31 多孔板
35 スプリッタ
M 吸音材設計モデル
P1 要求吸音パラメータ
P2 設計吸音パラメータ
図1
図2
図3
図4
図5