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  • 特開-造粒粉およびガラスグリーンシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145410
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】造粒粉およびガラスグリーンシート
(51)【国際特許分類】
   C03C 8/16 20060101AFI20241004BHJP
   H01M 8/0282 20160101ALI20241004BHJP
   H01M 8/028 20160101ALI20241004BHJP
   C03C 8/24 20060101ALI20241004BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20241004BHJP
【FI】
C03C8/16
H01M8/0282
H01M8/028
C03C8/24
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057739
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】杉本 研人
【テーマコード(参考)】
4G062
5H126
【Fターム(参考)】
4G062AA10
4G062BB01
4G062CC08
4G062DA01
4G062DA02
4G062DB01
4G062DB02
4G062DC01
4G062DC02
4G062DD01
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4G062DE01
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4G062DF01
4G062DF02
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4G062EA02
4G062EA10
4G062EB01
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4G062EE01
4G062EE02
4G062EF01
4G062EF02
4G062EG01
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4G062FA01
4G062FB01
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4G062FC01
4G062FC02
4G062FD01
4G062FE01
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4G062FF02
4G062FG01
4G062FG02
4G062FH01
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4G062FK01
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4G062FL01
4G062FL02
4G062GA01
4G062GA02
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH04
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH12
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH18
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM08
4G062MM23
4G062NN29
4G062PP14
5H126AA13
5H126BB06
5H126GG11
5H126GG17
5H126JJ01
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】ガラスグリーンシートの成形性を向上させる技術を提供する
【解決手段】。ここで開示される封止用ガラスグリーンシートに用いられる造粒粉は、ガラス粉末と、水溶性バインダと、カルボキシ基を含む有機酸とを含み、上記ガラス粉末のレーザ回折・散乱法に基づく体積基準のD50粒径が、10μm以上50μm以下であり、上記有機酸に含まれる炭素数が8以下であり、上記造粒粉全体を100wt%としたとき、上記有機酸の割合が5wt%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止用ガラスグリーンシートに用いられる造粒粉であって、
ガラス粉末と、
水溶性バインダと、
カルボキシ基を含む有機酸と
を含み、
前記ガラス粉末のレーザ回折・散乱法に基づく体積基準のD50粒径が10μm以上50μm以下であり、
前記有機酸に含まれる炭素数が8以下であり、
前記造粒粉全体を100wt%としたとき、前記有機酸の割合が5wt%以下である、
造粒粉。
【請求項2】
前記有機酸が水溶性である、請求項1に記載の造粒粉。
【請求項3】
前記有機酸のカルボキシ基の数が2以上である、請求項1に記載の造粒粉。
【請求項4】
前記有機酸としてクエン酸を含む、請求項1に記載の造粒粉。
【請求項5】
前記造粒粉全体を100wt%としたときの前記ガラス粉末の割合が、50wt%以上80wt%以下である、請求項1に記載の造粒粉。
【請求項6】
封止用ガラスグリーンシートであって、
ガラス粉末と、
水溶性バインダと、
カルボキシ基を含む有機酸と
を含み、
前記ガラス粉末のレーザ回折・散乱法に基づく体積基準のD50粒径が10μm以上50μm以下であり、
前記有機酸に含まれる炭素数が8以下であり、
前記ガラスグリーンシート全体を100wt%としたとき、前記有機酸の割合が5wt%以下である、
ガラスグリーンシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、造粒粉およびガラスグリーンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池では、空気と燃料ガスとの混合を防ぐため、封止用途としてガラスが用いられる。このようなガラスとして、例えば、ガラスグリーンシートが知られている。例えば、特開2020-167093号公報には、シート成形時の成形不良や破損を防止でき、かつ、ガスリークを好適に防止できるガス封止部を形成できる封止用グリーンシートに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-167093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガラスグリーンシートを成形する際には、その端部に亀裂が発生する場合がある。そのため、優れた成形性を有するガラスグリーンシートの実現する技術が望まれている。
【0005】
そこで、本開示はガラスグリーンシートの成形性を向上させる技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示により、封止用ガラスグリーンシートに用いられる造粒粉が提供される。ここで開示される造粒粉の一態様では、ガラス粉末と、水溶性バインダと、カルボキシ基を含む有機酸(本明細書において「有機酸添加物」ともいう。)とを含み、上記ガラス粉末のレーザ回折・散乱法に基づく体積基準のD50粒径が、10μm以上50μm以下であり、上記有機酸に含まれる炭素数が8以下であり、上記造粒粉全体を100wt%としたとき、上記有機酸の割合が5wt%以下である。
【0007】
本発明者の検討により、造粒粉が上記有機酸を上記割合で含むことで、当該造粒粉をシート成形する際の成形荷重が低減することが見出された。成形荷重が低減することで、成形されるガラスグリーンシートに亀裂が入り難くなる。すなわち、上記造粒粉によれば、ガラスグリーンシートの成形性を向上させることができる。
【0008】
ここで開示される造粒粉の一態様では、上記有機酸が水溶性である。これにより、他の材料と水系溶媒とが混合されたスラリーにおいて、有機酸添加物がより均一に混合されるため、ガラスグリーンシートの成形性をより向上させることができる。
【0009】
ここで開示される造粒粉の一態様では、上記有機酸のカルボキシ基の数が2以上である。有機酸のカルボキシル基の数が多いほど、水溶性が向上するため、より高い成形性が実現される。
【0010】
ここで開示される造粒粉の一態様では、上記有機酸としてクエン酸を含む。これにより、より高い成形性が実現される。
【0011】
ここで開示される造粒粉の一態様では、上記造粒粉全体を100wt%としたときの上記ガラス粉末の割合が、50wt%以上80wt%以下である。これにより、ガラスグリーンシートの成形安定性がより向上し得る。
【0012】
また、本開示により、ここで開示される造粒粉を原料とした封止用ガラスグリーンシートが提供される。ここで開示されるガラスグリーンシートの一態様では、ガラス粉末と、水溶性バインダと、カルボキシ基を含む有機酸とを含み、上記ガラス粉末のレーザ回折・散乱法に基づく体積基準のD50粒径が10μm以上50μm以下であり、上記有機酸に含まれる炭素数が8以下であり、上記ガラスグリーンシート全体を100wt%としたとき、上記有機酸の割合が5wt%以下である。かかる構成のガラスグリーンシートは、優れた成形性が実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ロール成形法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、造粒粉の成分、ガラスグリーンシートの成分など)以外の事柄であって本技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において、数値範囲を「A~B(ここでA、Bは任意の数値)」と記載している場合は、「A以上B以下」を意味すると共に、「Aを超えてB未満」、「Aを超えてB以下」、および「A以上B未満」の意味を包含する。また、本明細書で説明する図面において寸法関係(長さ、幅、厚さなど)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
【0015】
《造粒粉》
ここで開示される造粒粉は、少なくともガラス粉末と、水溶性バインダと、カルボキシ基を含む有機酸とを含む。造粒粉は、原料としてのガラス粉末を顆粒状に加工したものである。ここで開示される造粒粉は、例えば、封止用ガラスグリーンシートの製造に用いることができる。
【0016】
造粒粉を構成する粒子の性状、例えば形状やサイズ等は特に限定されない。造粒粉の形状は、例えば略球状である。ただし、鱗片状(フレーク状)、板状、不定形状等であってもよい。なお、本明細書において「略球状」とは、全体として概ね球体と見なせる形態を示し、電子顕微鏡の観察画像に基づく平均アスペクト比(長径/短径)が、概ね1~2、例えば1~1.5であることをいう。
【0017】
造粒粉のD50粒径は、取扱い性を向上する観点等から、例えば、20μm以上、40μm以上、60μm以上、80μm以上、100μm以上、または120μm以上であり得る。また、シート成形性の向上の観点から、造粒粉のD50粒径は、例えば、250μm以下、200μm以下、または150μm以下であり得る。
なお、本明細書において「ガラス粉末のD50粒径」は、レーザ回折・光散乱法で測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒子径をいう。
【0018】
以下、造粒粉に含まれる各成分について説明する。
【0019】
1.ガラス粉末
ガラス粉末は、ここで開示される造粒粉の主成分であり得る。例えば、ここで開示される造粒粉を含むガラスグリーンシートを焼成した際に、ガラス粉末は焼成処理によって融着固化して封止部を形成する。かかるガラス粉末は、本技術の効果が発揮される範囲において従来公知のものを特に制限なく使用できる。例えば、ガラス粉末は、一般的な非晶質ガラスの他に、結晶を含んだ結晶化ガラスであってもよい。また、ガラス粉末の成分についても特に限定されない。例えば、ホウケイ酸ガラス、アルカリガラス、無アルカリ系ガラス、鉛系ガラス、鉛リチウム系ガラス、亜鉛系ガラス、ビスマス系ガラス、ボレート系ガラス、無鉛系ガラス、テルル系ガラス等が挙げられる。この中でもホウケイ酸ガラスを用いることが好ましい。ホウケイ酸ガラスは、少なくともSiOとBとを含む。ホウケイ酸ガラスとしては、例えば、SiO-B系ガラス、SiO-RO-B系ガラス(Rは、例えばMg、Ca、Zn、Ba、Srを表す。以下同じ。)、SiO-R’O-B系ガラス(R’は、例えばLi、K、Naを表す。以下同じ。)等が挙げられる。また、ホウケイ酸ガラスは、Al、ZrO、BeO、AgO、TiO、V、FeO、Fe、Fe、CuO、CuO、Nb、P、La、CeO、Bi、Pb等の成分を含んでいてもよい。なお、ガラス粉末は、上述のガラス成分の他に1つまたは2つ以上の成分を含んでもよい。また、上述のガラス成分の1種が単独で用いられていてもよく、2種以上が混合されていてもよい。
【0020】
ガラス粉末のD50粒径は、例えば、10μm以上、15μm以上、または20μm以上であり得る。ガラス粉末のD50粒径が小さすぎる場合、造粒粉の流動性が高くなりすぎるため、シート成形がし難くなる。また、ガラス粉末のD50粒径は、例えば、50μm以下、40μm以下、30μm以下であり得る。ガラス粉末のD50粒径が大きすぎる場合、シート成形時に造粒粉がかさばり易くなり、成形性が低下し得る。
【0021】
なお、本明細書における「ガラス粉末のD50粒径」は、レーザ回折・光散乱法で測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒子径をいう。ガラス粉末の粒子径の測定は、例えば、造粒粉に含まれる有機物を除去する処理をした後に行ってもよい。例えば、造粒粉に含まれる有機物の沸点以上ガラス粉末のガラス転移点未満の加熱処理により有機物を除去してもよい。また、有機物を除去した後、ガラス粉末の凝集が観察された場合には解砕することが好ましい。
【0022】
ガラス粉末のガラス転移温度は、ガラスグリーンシートの脱脂処理での加熱温度よりも高く、かつ、焼成処理での加熱温度よりも低いと好ましい。これにより、脱脂処理でガラス粉末が溶融して有機物の除去が阻害されることを防止できると共に、焼成処理においてガラス粉末を適切に融着固化させることができる。かかるガラス粉末の好適なガラス転移温度は、脱脂処理と焼成処理の各々における加熱温度に応じて適宜変更され得るが、例えば530℃以上が好ましく、例えば550℃以上680℃以下が特に好ましい。
【0023】
また、ガラス粉末は、被封止部材(例えば、燃料電池のガス管など)との間で熱膨張係数を近似させるという観点で適宜選択するとより好ましい。例えば、ガラス粉末と被封止部材との熱膨張係数の差が、概ね2×10-6-1以下、例えば1×10-6-1以下であると好ましい。具体的には、被封止部材の熱膨張係数が、8×10-6-1~12×10-6-1程度である場合には、ガラス粉末の熱膨張係数が、概ね8×10-6-1~12×10-6-1、典型的には9.5×10-6-1~11.5×10-6-1、例えば10×10-6-1~11×10-6-1であるとよい。これにより、被封止部材との膨張量の差異によってガス封止部が破損することを抑制できる。なお、本明細書における「熱膨張係数」は、30℃から500℃における平均線熱膨張係数を指す。
【0024】
造粒粉中のガラス粉末の割合は、造粒粉全体を100wt%としたとき、例えば、50wt%以上、55wt%以上、又は60wt%以上であり得る。これにより、焼成により封止性の高い封止部を形成することができる。また、造粒粉中のガラス粉末の割合は、例えば、80wt%以下、75wt%以下、70wt%以下、または65wt%以下であり得る。ガラス粉末の割合が高すぎる場合にはガラスグリーンシートの成形安定性が低下し得る。
【0025】
2.水溶性バインダ
バインダは、造粒粉の各成分を結着して造粒粉の形状を安定させる成分である。ここに開示される造粒粉の製造工程において、好適には水系溶媒が好適に用いられるため、当該水系溶媒に溶解される水溶性バインダが用いられる。かかる水溶性バインダとしては、例えば親水基を有する水溶性樹脂が挙げられる。水溶性樹脂バインダを使用することで、製造工程における有機溶剤の使用を抑えられ、環境負荷を低減させることができる。
【0026】
本明細書において「水溶性バインダ」とは、25℃の水系溶媒中で完全に溶解した状態となるバインダ、水系溶媒に一部が溶解し、残りが水系溶媒中に分散する状態となるバインダ、または、水系溶媒中で分散状態となるバインダを包含し得る。水系溶媒としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等の水が挙げられる。なお、水系溶媒は、ここで開示される技術の効果を損なわない範囲において、水と均一に混合し得る非水系溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)を必要に応じて含有し得る。この場合、例えば水系溶媒の95vol%以上または99vol%以上が水であるとよい。
【0027】
水溶性バインダの種類は、特に限定されないが、例えば、400℃の大気雰囲気における加熱処理後の重量減少率が70%以上の樹脂材料であることが好ましい。また、水溶性バインダの400℃の加熱処理後の重量減少率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。また、かかる加熱処理後の重量減少率の上限は、特に制限されず、100%以下であってもよく、99%以下であってもよい。このように、比較的に低温の加熱処理によって十分に除去される樹脂材料を水溶性バインダとして選定することによって、例えば低温作動型SOFC作製時の脱脂処理でもより確実に水溶性バインダを除去できる。この結果、水溶性バインダ(炭素成分)の残留による焼成不良が好適に防止されるため、相対密度の高い緻密な封止部を形成できる。
【0028】
水溶性バインダに用いられる樹脂材料の好適例として、側鎖および末端の少なくとも一方にカルボキシ基を有したアクリル樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂材料は、水系溶媒に均一に溶解または分散して造粒粉の形状に安定性を付与することができる。また、かかる造粒粉を含むガラスグリーンシートに好適な形状一体性を付与することができると共に、低温の脱脂処理でも好適に除去することができる。
【0029】
また、水溶性バインダのガラス転移温度は、脱脂処理における加熱温度よりも低いと好ましい。これにより、脱脂処理で水溶性バインダを容易に除去し、水溶性バインダの残留による焼成不良をより好適に防止できる。なお、水溶性バインダのガラス転移温度は、脱脂処理と焼成処理の各々における加熱温度に応じて適宜変更され得るが、例えば、10℃~80℃が好ましい。
【0030】
造粒粉全体を100wt%としたとき、水溶性バインダの割合は、例えば、10wt%以上、20wt%以上、25wt%以上、または30wt%以上であり得る。これにより、造粒粉の形状が安定する。また、水溶性バインダの割合は、例えば、50wt%以下、40wt%以下、または35wt%以下であり得る。水溶性バインダの量が多すぎる場合には、造粒粉におけるガラス粉末の割合が低下し、焼成後の封止性が低下し得る。
【0031】
3.有機酸(有機酸添加物)
造粒粉は、カルボキシ基を含む有機酸(本明細書中では、他の成分として含まれ得る有機酸と区別するため、「有機酸添加物」ともいう。)を含む。本発明者の検討により、所定のD50粒径(例えば、10μm~50μm)のガラス粉末を有する造粒粉において、造粒粉が有機酸添加物を適量含むことで、シート成形時の成形荷重が低減することが見出された。成形荷重が低減することで、成形されるガラスグリーンシートに亀裂が入り難くなり、成形性を向上させることができる。かかる効果のメカニズムは明らかではないが、本発明者の検討によれば、上記所定の範囲のD50粒径のガラス粉末を有する造粒粉に有機酸添加物が混合されることで、造粒粉が流動し難くなる傾向が見出されている。そのため、造粒粉が流動し難くなることで、シート成形時の荷重が低減されると推測される。なお、かかる推測のメカニズムは、本技術を何ら限定するものではない。
【0032】
有機酸添加物は、水溶性であることが好ましい。ここに開示される造粒粉の製造工程において、好適には水系溶媒が好適に用いられる。そのため、有機酸添加物が水溶性であることで、他の材料と混合されたスラリーにおいて、有機酸添加物がより均一に混合される。その結果、造粒粉の流動性がより均一に制御され、成形されるガラスグリーンシートの亀裂が入り難くなり、成形性がより向上する。
なお、本明細書において「水溶性の有機酸添加物」とは、25℃の水系溶媒中で完全に溶解した状態となるもの、水系溶媒に一部が溶解し、残りが水系溶媒中に分散する状態となるもの、または、水系溶媒中で分散状態となるものを包含し得る。
【0033】
有機酸添加物に含まれる炭素数は、例えば、8以下であって、好ましくは7以下、より好ましくは6以下であり得る。炭素数の数が少ない方が水に溶けやすい傾向にあるため、成形性が向上し得る。有機酸添加物の炭素数の下限は、特に限定されないが、例えば、1以上、または2以上であり得る。
【0034】
有機酸添加物に含まれるカルボキシ基の数は特に限定されないが、例えば、1以上3以下であり得るが、好ましくは2以上である(例えば、2以上3以下)。カルボキシル基の数が多いほど、水溶性が向上し、より高い成形性が実現され得る。
【0035】
有機酸添加物の分子量は特に限定されないが、例えば、300g/mol以下であって、好ましくは250g/mol以下、より好ましくは200g/mol以下である。官能基等の違いにより一概には言えないが、有機酸は分子量が低いほど水に溶けやすい傾向があるため、かかる範囲の有機酸を好適に用いることができる。
【0036】
有機酸添加物の具体例としては、例えば、ギ酸等の炭素数1の有機酸、酢酸、シュウ酸等の炭素数2の有機酸、ピルビン酸、マロン酸などの炭素数3の有機酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸等の炭素数4の有機酸、グルタル酸などの炭素数5の有機酸、クエン酸、アジピン酸等の炭素数6の有機酸、ピメリン酸などの炭素数7の有機酸、スベリン酸等の炭素数8の有機酸等が挙げられる。この中でも、クエン酸を使用することが好ましい。クエン酸は、カルボキシ基を3つ有しており、水溶性も高いため、ガラスグリーンシートの成形性を好適に向上させることができる。なお、有機酸添加物は、一種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0037】
造粒粉全体を100wt%としたとき、有機酸添加物の割合は、例えば、0.01wt%以上、0.1wt%以上、または0.2wt%以上であり得る。これにより、造粒粉が流動し難くなり、成形性が向上する。また、有機酸添加物の割合は、例えば、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2.5wt%以下、2wt%以下、1.5wt%以下、1wt%以下、0.8wt%以下であり得る。有機酸添加物の割合が高すぎる場合には、驚くべきことに、造粒粉が流動し易くなる傾向があり、成形されるガラスグリーンシートの柔軟性が低下し得る。
【0038】
4.その他の成分
造粒粉は、上述したガラス粉末、水溶性バインダ、および有機酸添加物に加え、必要に応じて、任意に他の成分を含んでもよい。例えば、可塑剤、離型剤、消泡剤、分散剤、酸化防止剤、増粘剤等の各種添加剤等を含んでよい。好適な一態様では、造粒粉は可塑剤を含む。
【0039】
可塑剤は、造粒粉およびこれを含むに強度、柔軟性等を付与する成分である。可塑剤は、例えば、3価以上のアルコールおよびポリエーテルの少なくとも一方を含むことが好ましい。これらの可塑剤は、水系溶媒に分散させた場合でも、造粒粉およびこれを含むガラスグリーンシートに好適な強度と柔軟性を付与することができるため、シート成形時の成形不良や破損を好適に防止できる。3価以上のアルコールの好適例として、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリンや、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、アルビトール、ソルビトール、キシロース、アラビノース、グルコース、ガラクトース、ソルボース、フルクトース、パラチノース、マルトトリオース、マレジトース等が挙げられる。また、ポリエーテルの好適例として、ポリグリセリンエーテル、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル等が挙げられる。これらのなかでも、グリセリン、ポリグリセリンエーテル、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルは、特に好適な強度、柔軟性を付与できると共に、好適な保湿性を付与することもできるため、成形後のガラスグリーンシートの保管性の観点からも好ましい。
【0040】
可塑剤がポリマーである場合、その平均分子量は例えば1500以下、1400以下、または1300以下であり得る。可塑剤の平均分子量が大きくなりすぎると、分子鎖が長い可塑剤がガラス粉末と過剰に結合し、造粒粉がゴム状になってシート成形が困難になる傾向があるからである。また、成形後のガラスグリーンシートの保管性(保湿性)を向上させるという観点から、可塑剤の平均分子量は、350以上が好ましく、750以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましい。なお、本明細書における「平均分子量」は、重量平均分子量を指す。
【0041】
造粒粉が可塑剤を含む場合には、造粒粉全体を100wt%としたとき、可塑剤の割合が、例えば、0.1wt%以上、0.5wt%以上、または1wt%以上であるとよい。これにより、成形されるシートに柔軟性が付与されるため、成形時に亀裂が生じにくくなる。その結果、シート成形時に亀裂が生じにくくなる。また、可塑剤の割合は、例えば、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、または1.5wt%以下であり得る。可塑剤が多すぎる場合、造粒粉がシート成形装置に付着し易くなるためである。
【0042】
その他の成分の合計の割合は、造粒粉全体を100wt%としたとき、例えば、10wt%以下、5wt%以下、または3wt%以下であり得る。
【0043】
また、造粒粉は、製造方法に由来して、さらに水系溶媒を含み得る。造粒粉が水系溶媒を含む場合、水系溶媒の割合は、造粒粉の全体を100wt%としたときに、例えば0.1wt%以上、0.2wt%以上であり得る。また、かかる水系溶媒の割合は、例えば、1.0wt%以下であり得る。
【0044】
また、造粒粉は、流動し難い性質を有し得る。例えば、以下の式(1)に示す川北の式によって算出される流動性指数(式(1)中のa)が、例えば、0.2以上、0.22以上、0.24以上、または0.3以上であり得る。また、かかる流動性指数は、例えば、0.4以下、0.35以下、0.34以下、または0.33以下であり得る。なお、流動性指数は、その値が高いほど流動し難いことを示す。流動性指数が高いことで、造粒粉をシート成形する際の成形荷重が小さくなり、シートに亀裂が生じ難くなる(即ち、成形性が高くなる)。なお、流動性指数は、例えば、タップデンサーを用いて、タッピング回数と、タッピング回数に対応する体積を測定することで分析できる。式(1)中のNはタッピング回数、Cはかさべり度(粉体の見かけの体積の減少する度合い)、bは定数を表す。
【0045】
【数1】
【0046】
《ガラスグリーンシート》
ここで開示されるガラスグリーンシートは、主成分として、ここで開示される造粒粉を含む。例えば、ガラスグリーンシートは、ここで開示される造粒粉をシート状に成形することで作製される。ガラスグリーンシート全体を100wt%としたとき、ガラスグリーンシートに占めるここで開示される造粒粉の割合は、例えば、80wt%以上、90wt%以上、95wt%以上、98wt%以上、または100wt%であり得る。これにより、成形性の高いガラスグリーンシートが実現される。
【0047】
ガラスグリーンシートは、上述した造粒粉を主成分とするため、上述したガラス粉末と、上述した水溶性バインダと、上述した有機酸添加物とを含んでいる。また、これらに加え、上述したその他の成分も含み得る。各成分は、上述した内容と同じであってよいため、各成分の詳細は省略する。ただし、上述した各成分の割合において、「造粒粉全体を100wt%としたとき」の記載は、「ガラスグリーンシート全体を100wt%としたとき」と読み替えて理解される。
【0048】
ガラスグリーンシートの平均厚みは特に限定されないが、例えば50μm~2000μmが好ましく、100μm~1000μmがより好ましい。ガラスグリーンシートの平均厚みが所定値以上であると、ガス封止部の機械的強度を向上することができる。また、ガラスグリーンシートの平均厚みが所定値以下であると、焼成時の体積変化を抑えて焼成中の破損を抑制できる。
【0049】
ここで開示されるガラスグリーンシートは、優れた柔軟性を有し得る。例えば、ガラスグリーンシートの破断歪みは、例えば、0.035以上、0.06以上、または0.1以上であり得る。ガラスグリーンシートが柔軟性を有することで、ガラスグリーンシートを被封止部材に密着させやすくなる。なお、ここにおける破断ひずみとは、0.5mm/minの速度での引っ張り試験において、破断時の標点距離をL、引っ張り試験前の標点距離をLoとしたとき、以下の式(2)で求められるεの値のことをいう。
ε=(L-Lo)/Lo …式(2)
【0050】
≪ガラスグリーンシートの作製方法≫
以下、ここで開示される造粒粉を用いたガラスグリーンシートを作製する方法の一例を説明する。以下の説明は、ここに開示されるガラスグリーンシートを限定することを意図するものではない。
【0051】
まず、上述した造粒粉の構成成分であるガラス粉末と、水溶性バインダと、その他の任意成分と、水系溶媒とを用意し、これらの材料を混合してスラリーを調製する。これらの材料の混合には、例えばポットミル、ボールミル、ミキサー、ディスパー、ニーダなどの従来公知の種々の混合装置を特に制限なく使用できる。
【0052】
次に、上記調製したスラリーに、上述した有機酸添加物を混合する。そして、かかるスラリーを噴霧造粒法(スプレードライ法)により造粒し、造粒粉を作製する。例えば、調製したスラリーを乾燥雰囲気中に噴霧して乾燥させることによって造粒粉を得る。この噴霧造粒法を用いることによって、噴霧された液滴の大きさに応じた粒子が形成されるため、造粒粉中の粒子の大きさや質量を容易に調節できる。なお、造粒粉を作製する方法については特に限定されず、例えば、転動造粒法、流動層造粒法、撹拌造粒法、圧縮造粒法、押出造粒法、破砕造粒法等であってもよい。
【0053】
次に、上記得られた造粒粉を加圧成形することによって、ガラスグリーンシートを作製する。成形方法としては、ロール成形法、プレス成形法などの従来公知の種々の加圧成形方法を好適に採用できる。これらの中では、ロール成形法を好ましく採用できる。図1は、ロール成形法の模式図である。図1に示すように、ロール成形法では、例えば、造粒粉1aを、ロール成形装置5の貯留タンク1に投入する。造粒粉1aは、貯留タンク1の底部のフィーダー1bを通って外部に吐出される。そして、吐出された造粒粉1aは、一対の圧延ロール2の間に供給される。そして、一対の圧延ロール2が回転(図1中の矢印を参照)することによって、上記供給された造粒粉1aが圧縮される。これにより、造粒粉1aがシート状に成形されて、グリーンシート10Gが得られる。なお、圧延ロール2によって造粒粉1aを圧縮するときに圧延ロール2が造粒粉1aから受ける圧力を、本明細書中において成形荷重と称している。ここでの温度条件や圧力条件は、原料の種類等によって異なり得るため、特に制限されず、適宜変更され得る。また、圧延ロール2の間の間隔は、グリーンシート10Gの厚みとして所望される厚みを実現できるように、適宜変更され得る。
【0054】
≪ガラスグリーンシートの用途≫
ここに開示されるガラスグリーンシートは、同種部材間または異種部材間の電気的・物理的な封止接合に好適に用いられる。かかる封止接合の接合対象としては、金属部材やセラミック部材などの無機部材が挙げられる。すなわち、ここに開示されるガラスグリーンシートは、金属部材同士の封止接合、セラミック部材同士の封止接合、セラミック部材と金属部材との封止接合などに使用され得る。
上記金属部材の具体例としては、SOFCの単セルにガスを供給するためのガス管や、SOFCの単セル間に配置され、該単セル同士を電気的に接続するインターコネクタなどが挙げられる。金属部材の材質としては、ステンレス鋼、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、銀、マンガン、およびこれらの合金などが挙げられる。これらの金属部材の熱膨張係数は、10×10-6-1~15×10-6-1程度であり得る。
一方、セラミック部材の具体例としては、SOFCの燃料極や空気極、インターコネクタなどが挙げられる。セラミック部材の材質としては、アルミナ、フォルステライト、チタニア、イットリア、ジルコニア、安定化ジルコニアなどが挙げられる。セラミック部材は、いずれか1種のセラミックの単体であってもよいし、2種以上のセラミックが複合化された複合材料(例えば、ムライト、ステアタイト、アルミナジルコニアなど)であってもよい。これらのセラミック部材の熱膨張係数は、6×10-6-1~8×10-6-1程度であり得る。
【0055】
ここに開示されるガラスグリーンシートは、上述した接合対象の被接合部分に貼り付けられた後に、脱脂処理と焼成処理を順次実施されることによって封止部を形成する。
かかる封止部の形成における脱脂処理では、大気雰囲気において、上記水溶性バインダの焼失温度よりも高温、かつ、ガラス粉末のガラス転移温度よりも低温の温度域で封止用グリーンシートを加熱する。これによって、水溶性バインダ等の有機物が除去される。この脱脂処理における温度は、300℃以上が好ましく、350℃以上がより好ましい。一方、脱脂処理における加熱温度の上限は、550℃以下が好ましく、500℃以下がより好ましく、480℃以下がさらに好ましく、450℃以下が特に好ましい。なお、ここに開示される封止用グリーンシートの緻密性向上効果を適切に発揮させるという観点では、脱脂処理における加熱温度を400℃に設定することが好ましい。
【0056】
一方、焼成処理では、還元雰囲気において、ガラス粉末のガラス転移温度よりも高温で封止用グリーンシートを加熱する。これによって、封止用グリーンシート中のガラス粉末が被封止部材に融着固化してガス封止部が形成される。この焼成処理における加熱温度は、700℃以上が好ましく、750℃以上がより好ましく、800℃以上が更に好ましい。また、加熱温度の上限は、900℃以下が好ましく、875℃以下がより好ましい。かかる焼成処理における加熱温度の一例として850℃が挙げられる。
【0057】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:
封止用ガラスグリーンシートに用いられる造粒粉であって、
ガラス粉末と、
水溶性バインダと、
カルボキシ基を含む有機酸と
を含み、
上記ガラス粉末のレーザ回折・散乱法に基づく体積基準のD50粒径が10μm以上50μm以下であり、
上記有機酸に含まれる炭素数が8以下であり、
上記造粒粉全体を100wt%としたとき、上記有機酸の割合が5wt%以下である、
造粒粉。
項2:上記有機酸が水溶性である、項1に記載の造粒粉。
項3:上記有機酸のカルボキシ基の数が2以上である、項1または2に記載の造粒粉。
項4:上記有機酸としてクエン酸を含む、項1~3のいずれか一項に記載の造粒粉。
項5:上記造粒粉全体を100wt%としたときの上記ガラス粉末の割合が、50wt%以上80wt%以下である、項1~4のいずれか一項に記載の造粒粉。
項6:
封止用ガラスグリーンシートであって、
ガラス粉末と、
水溶性バインダと、
カルボキシ基を含む有機酸と
を含み、
上記ガラス粉末のレーザ回折・散乱法に基づく体積基準のD50粒径が10μm以上50μm以下であり、
上記有機酸に含まれる炭素数が8以下であり、
上記ガラスグリーンシート全体を100wt%としたとき、上記有機酸の割合が5wt%以下である、
ガラスグリーンシート。
【0058】
[試験例]
以下、本技術に関するいくつかの試験例を説明するが、本技術はかかる試験例に示すものに限定されない。
【0059】
1.各サンプルの作製
(1)サンプル1
ガラス粉末としてホウケイ酸ガラス(D50粒径:25μm)、水溶性のアクリルバインダとしてリカボンド4366-02(ジャパンコーティングレジン株式会社製)、可塑剤としてポリグリセリンエーテル(重量平均分子量:750)、離型剤としてセロゾール920(中京油脂株式会社製)、消泡剤としてBYK-011(ビックケミージャパン株式会社製)を準備した。これらを水とポットミルで混合し、スラリーを調製した。得られたスラリーに有機酸添加物としてクエン酸を加え、スプレードライ法を用いて、上記スラリーから造粒粉(サンプル1)を作製した。かかる造粒粉のD50粒径は150μmであった。なお、造粒粉全体を100wt%としたときのガラス粉末、バインダ、及びクエン酸の割合は、表1に示すとおりである。また、可塑剤、離型剤、消泡剤はそれぞれ、1.3wt%、2.4wt%、0.3wt%となるようにした。
【0060】
(2)サンプル2~14
各サンプルのガラス粉末の種類および有機酸添加物の種類を表1に示すように変更した。また、ガラス粉末、バインダ、有機酸添加物の割合を表1のように変更した。なお、可塑剤、離型剤、消泡剤については、サンプル1と同じものを用いた。サンプル2~14において、可塑剤の割合は1.2wt%~1.3wt%、離型剤の割合は2.2wt%~2.4wt%、消泡剤の割合は0.3wt%となるようにした。
【0061】
2.評価試験
(1)流動性評価
各サンプルの造粒粉をシリンダーに投入し、タップデンサーにより流動性を評価した。シリンダーへのタッピング回数と、それに対応する体積減少量のデータを取り、上述した式(1)(川北の式)に当てはめた。これにより得られた直線の近似式の傾きから、流動性指数を算出した。
【0062】
(2)成形性評価
各サンプルの造粒粉を加圧成形することによって、封止用グリーンシート(厚さ:0.7mm、幅:180mm、長さ:210mm)を作製した。なお、造粒粉の加圧成形では、ロール成形装置を使用してロール成形を行った。そして、成形直後のグリーンシートを目視にて観察し、各サンプルの成形性を評価した。具体的には、成形したシートに亀裂が生じた場合を「×」、成形したシートに亀裂が生じなかった場合を「○」と評価した。評価結果を表1に示す。
【0063】
(3)柔軟性評価
成形したグリーンシートをトムソン刃でダンベル型に打ち抜き、試験片を作製した。かかる試験片を万能試験機で固定し、0.5mm/minの速度で引張試験を行った。試験片の破断時の標点距離L、および試験前の標点距離Loを測定し、上述した式(2)で求められる破断ひずみεをグリーンシートの柔軟性として評価した。具体的には、破断ひずみεが0.035未満の場合を「×」、0.035以上0.10未満の場合を「○」、0.10以上の場合を「◎」と評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
(4)総合評価
成形性評価および柔軟性評価の少なくとも一方が「×」である場合を総合評価「×」、成形性評価および柔軟性評価が「○」の場合を総合評価「○」、成形性評価が「○」かつ柔軟性評価が「◎」の場合を総合評価「◎」とした。評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示すように、サンプル1~9の造粒粉を用いたときに、成形性および柔軟性に優れたガラスグリーンシートを作製することができた。このことから、例えば、D50粒径が10μm~50μmのガラス粉末を含み、かつ、炭素数8以下のカルボキシ基を有した有機酸添加物を5wt%以下の割合で含む造粒粉を用いることで、成形性に優れ、さらに柔軟性にも優れたガラスグリーンシートを実現することがわかる。
【0067】
以上、本技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 貯留タンク
1a 造粒粉
1b フィーダー
2 ロール
5 ロール成形装置
10G グリーンシート
図1