(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145414
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241004BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F25B1/00 321Z
F25B1/00 331Z
F25B1/00 311B
F25B43/00 R
F25B1/00 396D
F25B1/00 396C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057744
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】陳 作舟
(72)【発明者】
【氏名】丸山 要
(57)【要約】
【課題】圧縮機における圧縮比を小さくできる冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】冷凍サイクルシステム(1)は、圧縮機(11)と、凝縮器(12)と、蒸発器(16)と、冷媒吸収回路(17)と、を備えた冷媒回路(10)を備える。冷媒吸収回路(17)は、圧縮機(11)の入口と蒸発器(16)の出口との間に、吸収器(17a)と再生器(17b)と、を備える。吸収器(17a)は、蒸発器(16)から供給された冷媒を吸収する吸収媒体(18)を冷却することで、冷媒を吸収媒体(18)に吸収させた高濃度吸収媒体(18a)を生成する。再生器(17b)は、吸収器(17a)から供給された高濃度吸収媒体(18a)を加熱することで、高濃度吸収媒体(18a)から冷媒を取り出して、取り出した冷媒を圧縮機(11)の入口に供給するとともに、冷媒を取り出して生成された低濃度吸収媒体(18b)を吸収器(17a)に戻す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(11)と、凝縮器(12)と、蒸発器(16)と、冷媒吸収回路(17)と、を備えた冷媒回路(10)を備え、
前記冷媒吸収回路(17)は、前記圧縮機(11)の入口と前記蒸発器(16)の出口との間に、吸収器(17a)と再生器(17b)と、を備え、
前記吸収器(17a)は、前記蒸発器(16)から供給された冷媒を吸収する吸収媒体(18)を冷却することで、前記冷媒を前記吸収媒体(18)に吸収させた高濃度吸収媒体(18a)を生成し、
前記再生器(17b)は、前記吸収器(17a)から供給された前記高濃度吸収媒体(18a)を加熱することで、前記高濃度吸収媒体(18a)から前記冷媒を取り出して、取り出した前記冷媒を前記圧縮機(11)の入口に供給するとともに、前記冷媒を取り出して生成された低濃度吸収媒体(18b)を前記吸収器(17a)に戻す
冷凍サイクルシステム。
【請求項2】
前記冷媒吸収回路(17)は、前記吸収器(17a)と前記再生器(17b)との間に、中間熱交換器(17d)を備え、
前記中間熱交換器(17d)は、前記吸収器(17a)から前記再生器(17b)へ供給される前記高濃度吸収媒体(18a)と前記再生器(17b)から前記吸収器(17a)に供給される前記低濃度吸収媒体(18b)との間で熱交換を行う
請求項1に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項3】
前記冷媒回路(10)は、前記凝縮器(12)と前記蒸発器(16)との間に、気冷媒と液冷媒とを分離する分離器(14)を備え、
前記分離器(14)は、前記気冷媒を前記圧縮機(11)の入口に供給するとともに、前記液冷媒を前記蒸発器(16)に供給する
請求項2に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項4】
前記冷媒回路(10)は、前記凝縮器(12)と前記分離器(14)との間に、第1膨張弁(13)を備える
請求項3に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項5】
前記冷媒回路(10)は、前記分離器(14)と前記蒸発器(16)の間に、第2膨張弁(15)を備える
請求項3又は4に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項6】
前記冷媒は、非フロン冷媒又は自然冷媒である
請求項1に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項7】
前記冷媒は、CO2冷媒である
請求項1に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項8】
前記再生器(17b)は、前記吸収媒体を加熱する低温熱源(17f)を備え、
前記低温熱源(17f)は、60℃以下で前記吸収媒体(18)を加熱する
請求項1に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項9】
前記吸収媒体は、臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)である
請求項1に記載の冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、CO2冷媒を用いた冷凍サイクルが記載されている。特許文献1の冷凍サイクルにおいて、圧縮機により圧縮された冷媒は、放熱器へと導かれると、外部の流体と熱交換し、放熱器出口側に設けられている第1減圧機構により減圧される。減圧された冷媒は、冷媒分岐機構で分岐される。一方の分岐した冷媒は、第2減圧機構により減圧される。減圧した冷媒と分岐する前の冷媒とは、冷却器で熱交換されることで、分岐する前の冷媒は冷却される。また、分岐された他方の冷媒は、第3減圧機構により減圧されてから蒸発器へと導かれる。蒸発器から流出した冷媒と冷却器を通過した冷媒とは、気液分離器において、混合される。この気液分離器は、液冷媒を貯蔵する機能を有する。気液分離器は、流入した冷媒のうち気冷媒を圧縮機へ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍サイクルにおいて、圧縮機は、圧縮比が大きくなると、仕事が増えることで、エネルギ効率が下がってしまう。蒸発圧力が相対的に高いCO2冷媒における圧縮機では、相対的に圧縮比が高くなるため、効率低下が顕著に表れる。このような現象は、フロン等の通常冷媒のときの圧縮機においても当てはまる。そこで、圧縮機における圧縮比を小さくできる冷凍サイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、冷媒吸収回路と、を備えた冷媒回路を備え、前記冷媒吸収回路は、前記圧縮機の入口と前記蒸発器の出口との間に、吸収器と再生器と、を備え、前記吸収器は、前記蒸発器から供給された冷媒を吸収する吸収媒体を冷却することで、前記冷媒を前記吸収媒体に吸収させた高濃度吸収媒体を生成し、前記再生器は、前記吸収器から供給された前記高濃度吸収媒体を加熱することで、前記高濃度吸収媒体から前記冷媒を取り出して、取り出した前記冷媒を前記圧縮機の入口に供給するとともに、前記冷媒を取り出して生成された低濃度吸収媒体を前記吸収器に戻す。
【0006】
この構成によれば、冷媒吸収回路によって、圧縮機の入力に供給される冷媒の圧力を高くすることができる。これにより、圧縮機における圧縮比を小さくできる。その結果、冷凍サイクルシステムにおけるCOPを向上できる。
【0007】
第2観点の冷凍サイクルシステムは、第1観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒吸収回路は、前記吸収器と前記再生器との間に、中間熱交換器を備え、前記中間熱交換器は、前記吸収器から前記再生器へ供給される前記高濃度吸収媒体と前記再生器から前記吸収器に供給される前記低濃度吸収媒体との間で熱交換を行う。
【0008】
この構成によれば、高濃度吸収媒体と低濃度吸収媒体との間で熱エネルギ交換を行うことで、再生器へ供給される高濃度吸収媒体の温度を高めることができる。また、吸収器に供給される低濃度吸収媒体の温度を下げることができる。
【0009】
第3観点の冷凍サイクルシステムは、第2観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒回路は、前記凝縮器と前記蒸発器との間に、気冷媒と液冷媒とを分離する分離器を備え、前記分離器は、前記気冷媒を前記圧縮機の入口に供給するとともに、前記液冷媒を前記蒸発器に供給する。この構成によれば、液冷媒だけを蒸発器に供給できる。
【0010】
第4観点の冷凍サイクルシステムは、第3観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒回路は、前記凝縮器と前記分離器との間に、第1膨張弁を備える。この構成によれば、第1膨張弁によって、凝縮器と分離器との間で、蒸発器へ供給される冷媒の圧力を下げることができる。
【0011】
第5観点の冷凍サイクルシステムは、第3観点又は第4観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒回路は、前記分離器と前記蒸発器の間に、第2膨張弁を備える。この構成によれば、第2膨張弁によって、分離器と蒸発器との間で、蒸発器へ供給される冷媒の圧力を下げることができる。また、第1膨張弁と第2膨張弁とを備えたときには、凝縮器から蒸発器へ供給される冷媒の圧力を段階的に下げることができる。
【0012】
第6観点の冷凍サイクルシステムは、第1観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒は、非フロン冷媒又は自然冷媒である。第7観点の冷凍サイクルシステムは、第1観点の冷凍サイクルシステムであって、前記冷媒は、CO2冷媒である。このような構成によれば、環境に対して低負荷な冷媒を使用することができる。
【0013】
第8観点の冷凍サイクルシステムは、第1観点の冷凍サイクルシステムであって、前記再生器は、前記吸収媒体を加熱する低温熱源を備え、前記低温熱源は、60℃以下で前記吸収媒体を加熱する。第9観点の冷凍サイクルシステムは、第1観点の冷凍サイクルシステムであって、前記吸収媒体は、臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)である。このような構成によれば、生活排熱等の低温熱源に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1に示す冷凍サイクルシステムにおけるp-h線図(モリエル線図)である。
【
図3】
図1に示す冷凍サイクルシステムにおける冷媒吸収回路における温度と圧力との関係を示すp-t線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<冷凍サイクルシステム>
図1を参照して、本開示の冷凍サイクルシステム1について説明する。
冷凍サイクルシステム1は、冷媒回路10を備える。冷媒回路10は、圧縮機11と、凝縮器12と、第1膨張弁13と、分離器14と、第2膨張弁15と、蒸発器16と、冷媒吸収回路17と、を備えている。また、冷媒吸収回路17は、吸収器17aと、再生器17bと、ポンプ17cと、中間熱交換器17dと、を備えている。
【0016】
すなわち、冷媒回路10は、圧縮機11と冷媒吸収回路17との間に、凝縮器12と、蒸発器16と、を備えている。更に、凝縮器12と蒸発器16との間には、分離器14を備えている。更に、凝縮器12と分離器14との間には、第1膨張弁13を備えている。更に、分離器14と蒸発器16の間には、第2膨張弁15を備えている。そして、蒸発器16と圧縮機11との間には、冷媒吸収回路17が設けられている。
【0017】
圧縮機11は、冷媒吸収回路17からの冷媒を圧縮して高温高圧状態とする。凝縮器12は、圧縮機11の出口から供給される冷媒を冷却する。第1膨張弁13は、凝縮器12からの冷媒を減圧する。分離器14では、低温低圧の冷媒を気液分離する。分離器14は、気冷媒を圧縮機11の入口に供給するとともに、液冷媒を第2膨張弁15に供給する。第2膨張弁15は、分離器14からの液冷媒を減圧する。蒸発器16は、第2膨張弁15からの冷媒を蒸発気化する。蒸発器16は、冷媒を冷媒吸収回路17に供給する。
【0018】
この冷媒回路10は、冷媒として、非フロン冷媒、自然冷媒等の環境に対して低負荷な冷媒を使用している。また、冷媒としては、フロンなどの通常冷媒よりも蒸発圧力が高い冷媒を使用している。このような冷媒は、例えばCO2冷媒であり、本開示では、CO2冷媒を使用している。
【0019】
<冷媒吸収回路17>
冷媒吸収回路17において、吸収器17a及び再生器17bには、吸収媒体18が貯留される。吸収媒体18は、冷媒を吸収する媒体である。吸収媒体18は、吸収した冷媒を、例えば60℃以下、好ましくは40℃以下のような生活排熱程度の低温で放出可能な媒体であることが好ましい。具体的に、吸収媒体18としては、例えば包接水和物である。包接水和物には、準包接水和物、アミン水和物、及びガス水和物が含まれる。この中でも、吸収媒体18としては、準包接水和物が好ましい。準包接水和物としては、臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)が好ましい。本開示の冷凍サイクルシステム1は、吸収媒体18として、TBAB吸収媒体を使用している。TBAB吸収媒体は、CO2冷媒を吸収することができるとともに、生活排熱程度の低温でCO2冷媒を放出することができる。
【0020】
冷媒吸収回路17は、冷媒回路10において、圧縮機11と蒸発器16との間に直列接続されている。吸収器17aは、蒸発器16の出口と接続されている。再生器17bは、圧縮機11の入口に接続されている。吸収器17aと再生器17bとの間には、中間熱交換器17dを備えている。吸収器17aの吸収媒体18は、ポンプ17cによって中間熱交換器17dを介して再生器17bに送られる。また、再生器17bの吸収媒体18は、中間熱交換器17dを介して吸収器17aに送られる。
【0021】
吸収器17aは、貯留する吸収媒体18を冷却する冷却源17eを備えている。冷却源17eは、貯留している吸収媒体18を冷却する冷却水が供給される。吸収器17aは、冷却源17eにより吸収媒体18を冷却することで、蒸発器16から供給された冷媒を吸収媒体18に吸収させ、これによって、冷媒を吸収媒体18に吸収させた高濃度吸収媒体18aを生成する。高濃度吸収媒体18aは、ポンプ17cによって、中間熱交換器17dを介して吸収器17aから再生器17bに供給される。
【0022】
再生器17bは、貯留する吸収媒体18を加熱する低温熱源17fを備えている。低温熱源17fは、生活排熱程度の低温な熱が供給される。再生器17bでは、低温熱源17fで高濃度吸収媒体18aを加熱することで、高濃度吸収媒体18aから冷媒が放出される。放出された冷媒は、圧縮機11の入口に供給される。これと共に、再生器17bは、高濃度吸収媒体18aから冷媒が放出されることで低濃度吸収媒体18bを生成する。低濃度吸収媒体18bは、中間熱交換器17dを介して再生器17bから吸収器17aに戻される。中間熱交換器17dでは、吸収器17aから再生器17bへ供給される高濃度吸収媒体18a(低温側)と再生器17bから吸収器17aに供給される低濃度吸収媒体18b(高温側)との間で熱交換を行う。
【0023】
<作用>
以上のように構成される冷凍サイクルシステム1の作用を
図2及び
図3を参照して説明する。この冷凍サイクルシステム1において、圧縮機11から供給された後、分離器14で第2膨張弁15側に供給される冷媒の圧力及び比エンタルピーは、
図2のp-h線図に示すように、a→b→c→d→e→f→g→hの順で示される変化となる。また、圧縮機11から供給された後、分離器14で再び圧縮機11側に供給される冷媒の圧力及び比エンタルピーは、a→b→c→d→iの順で示される変化となる。
【0024】
冷媒は、圧縮機11(a-b間)において圧縮されて高温高圧となる。次いで、冷媒は、凝縮器12(b-c間)において、冷却され、更に、第1膨張弁13(c-d間)で減圧される。分離器14では、低温低圧の冷媒を気液分離する。気冷媒は、圧縮機11の入口に供給される(d-i間)。分離器14を通過した液冷媒は、第2膨張弁15(e-f間)で更に減圧される。第2膨張弁15を通過した低温低圧の冷媒は、蒸発器16(f-g間)で蒸発気化された後、吸収器17aに供給される。すなわち、冷媒回路10では、凝縮器12から蒸発器16までの間で、第1膨張弁13と第2膨張弁15とを設けることで、段階的に冷媒の圧力を下げるようにしている。
【0025】
吸収器17aにおいて、冷媒は、冷却源17eで冷却されている吸収媒体18によって吸収される。吸収媒体18は、冷媒を吸収することで高濃度吸収媒体18aとなる。高濃度吸収媒体18aは、ポンプ17cによって、中間熱交換器17dを介して再生器17bに供給される。再生器17bにおいて、高濃度吸収媒体18aは、低温熱源17fによって加熱されることで、冷媒を放出するとともに、低濃度吸収媒体18bとなる。低濃度吸収媒体18bは、中間熱交換器17dで、吸収器17aから再生器17bに送られる高濃度吸収媒体18aと熱交換された後、吸収器17aに戻される。また、吸収媒体18から放出された気冷媒は、吸収器17aの入力圧力より昇圧された状態で圧縮機11へ供給される。冷媒回路10において、昇圧は、蒸発器16の出口圧力に対して冷媒吸収回路17(g-h間)と圧縮機11(a-b間)の2段階で昇圧される。降圧も、第1膨張弁13(c-d間)と第2膨張弁15(e-f間)の2段階で行われる。
【0026】
図3は、冷媒吸収回路17における温度と圧力との関係を示すp-t線図であり、吸収媒体18の溶液濃度を示す等値線を示している。吸収器17a(l-m間)において、吸収媒体18は、冷却されることで冷媒を吸収して低濃度吸収媒体18bから高濃度吸収媒体18aとなる。高濃度吸収媒体18aは、ポンプ17cによって吸収器17aから再生器17bに供給される(m-j間)。この際、高濃度吸収媒体18aは、中間熱交換器17dにおいて加熱される。再生器17b(j-k間)において、高濃度吸収媒体18aは、低温熱源17fによって加熱されることで、冷媒を放出する。冷媒は、気冷媒となって圧縮機11の入口に供給される(
図2中h-a間)。再生器17bにおいて、高濃度吸収媒体18aは、低濃度吸収媒体18bとなる。そして、低濃度吸収媒体18bは、中間熱交換器17dにおいて冷却され吸収器17aに戻る(k-l間)。
【0027】
<効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)冷媒回路10において、圧縮機11の入力に供給される冷媒の圧力は、蒸発器16の出口圧力ではなく、それより高圧の冷媒吸収回路17で高められた再生器17bの出口圧力である。これにより、圧縮機11は、蒸発器16の出口圧力の状態の冷媒を所定圧力まで圧縮する場合(g-b間)よりも圧縮比が小さくなるため、仕事が減る(比エンタルピーの変化が小さくなる)ことでエネルギ効率が向上する。その結果、冷凍サイクルシステム1では、全体として、成績係数(COP:Coefficient of Performance)を向上できる。また、圧縮機11は、圧縮比が小さくなることで、入口配管等の板厚等を薄く、構成を簡素にできる。
【0028】
(2)冷媒吸収回路17では、再生器17bにおける熱源に生活排熱程度の低温な低温熱源17fを用いることができる。
(3)冷媒吸収回路17において、中間熱交換器17dは、吸収器17aから再生器17bに供給される高濃度吸収媒体18a(低温側)と再生器17bから吸収器17aに戻る低濃度吸収媒体18b(高温側)との間で熱エネルギ交換を行う。これにより、中間熱交換器17dは、再生器17bへ供給される高濃度吸収媒体18aの温度が高めることができる。また、中間熱交換器17dは、吸収器17aに供給される低濃度吸収媒体18bの温度を下げることができる。
【0029】
(4)冷媒回路10は、分離器14を備えている。これにより、第2膨張弁15、更に蒸発器16には、液冷媒だけを供給できる。また、圧縮機11には、再生器17bからだけではなく分離器14からも気冷媒を供給することができる。
【0030】
(5)冷媒回路10は、第1膨張弁13によって、凝縮器12と分離器14との間で、蒸発器16へ供給される冷媒の圧力を下げることができる。また、冷媒回路10は、第2膨張弁15によって、分離器14と蒸発器16との間で、蒸発器16へ供給される冷媒の圧力を下げることができる。更に、冷媒回路10は、第1膨張弁13と第2膨張弁15とを備えることで、凝縮器12から蒸発器16へ供給される冷媒の圧力を段階的に下げることができる。
【0031】
(6)冷媒回路10では、冷媒として、環境に対して低負荷なCO2冷媒を用いることができる。
(7)冷媒吸収回路17では、吸収媒体18にTBAB吸収媒体を用いることで、60℃以下、好ましくは40℃以下の低温でCO2冷媒を放出させることができる。例えば、CO2ヒートポンプでは、高温排熱(60℃より高い温度)を利用するシステムがある中、本開示の冷凍サイクルシステム1では、吸収媒体18にTBAB吸収媒体を用いることで、低温熱源17fに、低温な生活排熱等を利用することができる。
【0032】
<変形例>
本開示の冷凍サイクルシステム1は、上記各実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0033】
・吸収媒体18としては、冷媒を吸収できるものであれば特にTBAB吸収媒体に限定されるものではない。例えば準包接水和物である塩化テトラnブチルアンモニウム(TBAC)、臭化テトラnブチルホスフォニウム(TBPB)、硝酸テトラブチルアンモニウム(TBANO3)等であってもよい。また、吸収媒体18としては、準包接水和物であるシクロペンタン水和物(CP)であってもよい。吸収媒体18がシクロペンタン水和物である場合、例えば、冷媒としてフルオロメタン(フッ化メチル、R41)を使用することができる。
【0034】
吸収媒体18としては、アミン水和物、ガス水和物であってもよい。ガス水和物としては、例えばメタンハイドレートがある。更に、吸収媒体18としては、イオン媒体(カチオン系媒体、アニオン系媒体)であってもよい。吸収媒体18がイオン媒体である場合、例えば、冷媒としてCO2冷媒、ハイドロフルオロオレフィン(HFO-1234yf)冷媒等を使用することができる。
【0035】
・冷媒としては、CO2冷媒に限定されるものではない。例えば冷媒としては、フルオロメタン冷媒、クロロフルオロカーボン(CFC)冷媒、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)冷媒、ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒等であってもよい。また、冷媒としては、ハイドロフルオロオレフィン(HFO-1234yf)冷媒等であってもよい。
【0036】
・再生器17bが備える低温熱源17fは、60℃以下の熱源に限定されるものではなく、例えば60℃以上の熱源であることを妨げるものではない。例えば、再生器17bには、一時的に60℃を超える熱源が入力されることがあってもよい。
【0037】
・第1膨張弁13は、蒸発器16の入口圧力を所定圧力まで降圧できるのであれば、省略してもよい。また、第2膨張弁15も、蒸発器16の入口圧力を所定圧力まで降圧できるのであれば、省略してもよい。すなわち、2つの膨張弁13,15は、2つとも省略可能なときもあれば、何れか一方を省略可能な場合もある。また、圧縮機11と蒸発器16との間は、膨張弁が3つ以上配置されていてもよい。
【0038】
・分離器14は、凝縮器12からの冷媒又は第1膨張弁13からの冷媒が液冷媒で構成されているのであれば省略することも可能である。
・冷媒吸収回路17において、中間熱交換器17dは省略してもよい。
【0039】
・以上、本システムの実施の形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本システムの趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0040】
1…冷凍サイクルシステム
10…冷媒回路
11…圧縮機
12…凝縮器
13…第1膨張弁
14…分離器
15…第2膨張弁
16…蒸発器
17…冷媒吸収回路
17a…吸収器
17b…再生器
17c…ポンプ
17d…中間熱交換器
17e…冷却源
17f…低温熱源
18…吸収媒体
18a…高濃度吸収媒体
18b…低濃度吸収媒体