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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145415
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20241004BHJP
   B60K 31/00 20060101ALI20241004BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20241004BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20241004BHJP
   B62J 45/415 20200101ALI20241004BHJP
   B62J 45/414 20200101ALI20241004BHJP
   B62J 45/412 20200101ALI20241004BHJP
【FI】
B60W30/02
B60K31/00 Z
B60W30/14
B62J45/00
B62J45/415
B62J45/414
B62J45/412
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057746
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 広基
(72)【発明者】
【氏名】内笹井 弘明
(72)【発明者】
【氏名】清水 航
【テーマコード(参考)】
3D241
3D244
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BA11
3D241BB22
3D241CA12
3D241CC02
3D241CD05
3D241DB02Z
3D241DB15Z
3D241DC45Z
3D244AA41
3D244AB01
3D244AC26
3D244AC57
3D244AE04
3D244AE25
3D244AE27
(57)【要約】
【課題】平坦路から勾配路へ走行路が変化した場合の乗り心地について改善する。
【解決手段】車両の駆動力を制御する制御装置(32)を有する鞍乗り型車両であって、前記車両が走行する路面の勾配を検出する勾配検出部(43)と、前記車両の加速度を含む車両情報を検出する車両情報検出部(34)と、を備え、前記制御装置(32)は、ジャーク最小軌道に合わせて目標ジャークを算出する目標ジャーク算出部(75)と、車速を目標車速に維持するクルーズコントロール部(79)とを有し、前記制御装置(32)は、前記勾配検出部(43)の検出結果から勾配路を走行中であると判定した場合は、前記加速度から算出されるジャークを前記目標ジャークに合わせるように前記車両の前記駆動力を制御する、ことを特徴とする鞍乗り型車両。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動力を制御する制御装置(32)と、
前記車両が走行する路面の勾配を検出する勾配検出部(43)と、
前記車両の加速度を含む車両情報を検出する車両情報検出部(34)と、を備え、
前記制御装置(32)は、
目標ジャークを算出する目標ジャーク算出部(75)と、
車速を目標車速に維持するクルーズコントロール部(79)と、を有し、
前記勾配検出部(43)の検出結果から勾配路を走行中であると判定した場合、前記加速度から算出されるジャークを前記目標ジャークに合わせるように前記車両の前記駆動力を制御する、
ことを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
ロール角検出部(41)を有し、
前記車両が、前記勾配路を走行中であり、且つ前記ロール角検出部(41)の検出結果であるロール角がロール角閾値以上であると判定するとき、前記目標車速を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
実車速を検出する車速検出部(45)を有し、
前記制御装置(32)は、
前記勾配検出部(43)の前記検出結果から前記勾配路を走行中であり、且つ前記ロール角検出部(41)の検出結果である前記ロール角が所定の前記ロール角閾値以上であると判定するとき、前記目標車速を前記実車速に変更する
ことを特徴とする請求項2記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記制御装置(32)は、前記車両が減速して、目標車速追従時の位置から遅れる距離の許容値である遅れ許容距離内に収まるように前記車両の前記駆動力をフィードフォワード制御し、
前記勾配検出部(43)の前記検出結果から前記勾配路を走行中であり、且つ前記ロール角検出部(41)の検出結果である前記ロール角が前記ロール角閾値以上と判定するとき、前記遅れ許容距離を大きくする
ことを特徴とする請求項2記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の速度を一定に維持するための自動制御システムであるクルーズコントロールシステムを備える鞍乗り型車両がある。一定の速度に設定するとシステムは自動的に車両の速度を制御して、ライダーがスロットル等を操作しなくても一定の速度を維持することができる。クルーズコントロールシステムは、高速道路などで長距離を走行する際にライダーの疲労を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-154713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車速を一定の速度に維持するようにクルーズコントロールシステムを設定した場合に、車両が勾配路に差し掛かると、設定された車速を維持するべく駆動力を制御するため、不自然な体感Gが掛かる現象が生じる。すなわち平坦路から勾配路へ走行路が変化した場合の乗り心地については改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両の駆動力を制御する制御装置を有する鞍乗り型車両であって、前記車両が走行する路面の勾配を検出する勾配検出部と、前記車両の加速度を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、を備え、前記制御装置は、目標ジャークを算出する目標ジャーク算出部と、車速を目標車速に維持するクルーズコントロール部とを有し、前記制御装置は、前記勾配検出部の検出結果から勾配路を走行中であると判定した場合は、前記加速度から算出されるジャークを前記目標ジャークに合わせるように前記車両の前記駆動力を制御する、ことを特徴とする鞍乗り型車両を提供する。
【発明の効果】
【0006】
クルーズコントロールをしている際に、平坦路から勾配路へ走行路が変化した場合の乗り心地を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る鞍乗り型車両の説明図である。
図2】制御装置のブロック図である。
図3】本実施形態における駆動力の制御系のブロック図である。
図4】各制御おける走行距離の時間変化を示すグラフである。
図5】各制御における実車速の時間変化を示すグラフである。
図6】各制御における体感Gの時間変化を示すグラフである。
図7】駆動力の制御フローチャートである。
図8】駆動力の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、ライダー用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、ライダーがシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。ライダーが把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、ライダーが足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
パワーユニット12の燃料噴射等を制御する制御装置32は、シート17の下方に設けられる。制御装置32はコンピュータであり、図3にて後述するように記憶装置71と、記憶装置71が記憶するプログラムを実行することで各種機能を発揮するプロセッサ69とを備える。
【0016】
またシート17の下方には、内部に6軸センサを含むIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測ユニット)34が設けられる。
【0017】
図2は、制御装置32のブロック図である。制御装置32はコンピュータであり、ECU(Electronic Control Unit)である。制御装置32は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ69、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を備え、各種制御を実行する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。
プロセッサ69は、記憶装置71の制御プログラム記憶領域72に記憶されたプログラムを実行することで、後述する各種機能を実現する。記憶装置71は、SSD(Solid State Drive)等であってよい。
【0018】
制御装置32は、鞍乗り型車両10のロール角を検出するロール角検出部41と接続する。ロール角検出部41は、鞍乗り型車両10がロール方向に傾斜するとそのロール角を検出してロール角情報をプロセッサ69へ送信する。
【0019】
制御装置32は、鞍乗り型車両10が走行している場所の勾配を検出する勾配検出部43と接続する。勾配検出部43はIMU34からの情報を元にして勾配を検出するものでも良く、独立した装置でも良い。また後述するGPS測定部55が検出した鞍乗り型車両10の現在位置と、ナビゲーションシステム(不図示)が持つ地図情報と照らし合わせて、勾配情報を計算して求めても良い。
【0020】
制御装置32は、鞍乗り型車両10の実車速を検出する車速検出部45と接続する。車速検出部45は、前輪の車輪速センサであってもよく、またLiDAR(Light Detection And Ranging)等で構成されたものであってもよい。
【0021】
制御装置32は、IMU(Inertial Measurement Unit)34と接続して、鞍乗り型車両10の加速度等を含む車両情報を検出する。IMU34は、3次元の慣性運動、すなわち直交3軸方向の並進運動と回転運動についての情報を検出する。
【0022】
制御装置32は、パワーユニット12と接続する。制御装置32は、後述するようにパワーユニット12の発生する駆動力を制御する。
【0023】
制御装置32は、鞍乗り型車両10のライダーからの入力を受け付け、ライダーへの情報提供をおこなう入出力部51と接続される。入出力部51は、メカニカルなボタンスイッチや、タッチパネル、液晶パネル等であってよい。
【0024】
制御装置32は、各種の情報を検出するセンサ等からの入力や、液晶パネル等の出力をおこなう入出力部51に、入出力I/F53を介して接続される。入出力I/F53は、インターフェース回路を備える。また制御装置32は鞍乗り型車両10の現在位置を取得するため、GPS(Global Positioning System)測定部55を備える。GPS測定部55はアンテナ57によって人工衛星Sからの電波を利用して鞍乗り型車両10の現在位置を取得する。
【0025】
プロセッサ69は、制御プログラム記憶領域72に記憶されたプログラムを実行することで各種機能を実現する。
【0026】
具体的には、プロセッサ69は、プログラムを実行することで、各種演算をおこなう演算部73の機能を実現する。具体的にはプロセッサ69は、勾配検出部43で検出した勾配情報と、後述する目標車速と、実車速と車両情報に基づいて、ジャーク最小軌道を演算する軌道生成部59の機能を実現する。軌道生成部59は、各時刻の目標ジャークを算出する目標ジャーク算出部75を含む。このとき目標ジャーク算出部75は、目標ジャークを生じさせるために実現すべき速度や加速度を算出する。これらの値は、後述するフィードフォワード(FF)制御等に用いられる。また演算部73は、後述するフィードバック(FB)制御をおこなうための演算もおこなう。
【0027】
またプロセッサ69は、車速検出部45で検出された実車速と、実現すべき速度の大小関係等を判定する判定部77の機能も実現する。判定部77は、記憶装置71に記憶された所定の閾値と、勾配検出部43で検出された路面の勾配との大小関係を比較判定する。判定部77は、後述するクルーズコントロールについて設定される目標車速と、実車速の大小関係を比較判定する。また判定部77は、IMU34で検出される加速度からリアルタイムに算出されるジャークと、目標ジャークを比較しても良い。
【0028】
またプロセッサ69は、プログラムを実行することで、軌道生成部59が生成した軌道情報を使用してパワーユニット12の駆動力を制御するか否かを切り替える切替部61の機能を実現する。
【0029】
プロセッサ69は、プログラムを実行することで、パワーユニット12の駆動力を制御する駆動力制御部81を含むクルーズコントロール部79の機能を実現する。具体的には、入出力部51でライダーが入力した情報に基づいて目標車速を決定し、鞍乗り型車両10がその速度を維持するクルーズコントロール機能を実現する。
【0030】
なお本実施形態では、パワーユニット12として内燃機関を挙げているが、パワーユニット12は電気モーターであってもよい。その場合も、駆動力制御部81によって電気モーターに供給する電力を調整することでパワーユニット12が発生する駆動力を制御することができることが望ましい。
【0031】
図3は、本実施形態における駆動力の制御系のブロック図である。具体的には図2の駆動力制御部81の機能を示している。本実施形態における駆動力の制御は、フィードバック制御部65とフィードフォワード制御部63の組み合わせで実現される。フィードフォワード制御は、即時応答性を担保する。
【0032】
一般に、ライダーは加速度の変化に敏感なため、ジャーク最小軌道に従う場合に快適な乗り心地が実現されるとされている。そこで本実施形態では、判定部77が、勾配検出部43の情報から、鞍乗り型車両10が勾配路に入ったと判定した場合に、切替部61がA側に切り替わる。
A側に切り替わっているときには、目標車速と実車速、及びIMU34で検出された車両情報から軌道生成部59がジャーク最小軌道を計算して、目標ジャークと新たな目標車速を算出する。そして新たな目標車速に対応する駆動力を算出して、その情報をパワーユニット12に渡す。このときフィードフォワード制御部63とフィードバック制御部65によりパワーユニット12の制御をおこなう。このような組み合わせ制御をおこなうことで、外乱や目標ジャークの算出に多少の誤差があっても、その悪影響を抑制できると共に、即時応答性が担保される。
【0033】
判定部77が、車速検出部45からの情報から、実車速が目標車速に等しくなったと判定した場合には、切替部61がB側に切り替わる。この場合はクルーズコントロールにおいて最初に設定された目標車速と実車速の情報に基づいてパワーユニット12の制御がおこなわれる。
【0034】
以下の図3図4、及び図5において、本実施形態に係る鞍乗り型車両10が備える制御装置32がおこなう駆動力の制御について説明する。
【0035】
図4は、各制御をおこなったときにおける走行距離の時間変化をシミュレーションした結果を示すグラフである。二点鎖線から前の時間帯において、鞍乗り型車両10は平坦路上を走行しており、そして二点鎖線から後の時間帯において、鞍乗り型車両10は傾斜が一定の勾配路上を走行していると仮定する。破線は車速が目標車速に等しく一定を保った場合における走行距離の時間依存性を示す。これに対して一点鎖線は、実車速を目標車速に対してフィードバック制御させた場合における走行距離の時間依存性を示す。実線は、ジャーク最小軌道に合うように実車速をフィードフォワード制御した場合における走行距離の時間依存性を示す。フィードバック制御に比べて走行距離が短くなっていることがわかる。参考までに駆動力を一定にした場合を点線で示す。
【0036】
ここで、実線と車速一定の破線の間の距離Dは、そのまま後続の車両との車間距離に影響する。したがって駆動力制御部81は、鞍乗り型車両10が減速して、目標車速追従時の位置から遅れる距離の許容値である遅れ許容距離内に収まるように、鞍乗り型車両10の駆動力をフィードフォワード制御することが望ましい。
【0037】
図5は、各制御をおこなったときにおける実車速の時間変化をシミュレーションした結果を示すグラフである。図4と同様に二点鎖線から前の時間帯において、鞍乗り型車両10は平坦路上を走行しており、そして二点鎖線から後の時間帯において、鞍乗り型車両10は傾斜が一定の勾配路上を走行していると仮定する。一点鎖線は、実車速を目標車速に対してフィードバック制御させた場合における実車速の時間依存性を示す。これに対して実線は、ジャーク最小軌道に合うように実車速をフィードフォワード制御した場合における実車速の時間依存性を示す。一点鎖線が大きな時間変化をするのと比較して実線の時間変動が小さいことが見て取れる。
【0038】
図6は、各制御をおこなったときにおける体感Gの時間変化をシミュレーションした結果を示すグラフである。体感Gとは、車両の加減速で生じる加速度変化の影響と、勾配による加速度変化の影響を加算した量である。図4と同様に二点鎖線から前の時間帯において、鞍乗り型車両10は平坦路上を走行しており、そして二点鎖線から後の時間帯において、鞍乗り型車両10は傾斜が一定の勾配路上を走行していると仮定する。一点鎖線は、実車速を目標車速に対してフィードバック制御させた場合における体感Gの時間依存性を示す。これに対して実線は、ジャーク最小軌道に合うように駆動力をフィードフォワード制御した場合における体感Gの時間依存性を示す。一点鎖線は実線と比較して鋭いピークを持つ、すなわち体感Gに急激な変化が生じていることがわかる。これは加減速による加速度の大きな変化が起こっているということ、すなわち乗り心地としては良くないことを意味する。
【0039】
本実施形態で挙げる制御では、勾配路が勾配は上り勾配、すなわち登り坂の例を挙げているが、勾配が下り勾配、すなわち下り坂の場合でも同様な制御が考えられる。その場合は、勾配閾値として所定の下り勾配閾値以下になったときに車両情報として測定される加速度から算出されるジャークと目標ジャークが合うように制御装置32がパワーユニット12を制御する。
【0040】
図7は、駆動力制御部81によってパワーユニット12の駆動力の制御をおこなう場合の制御フローチャートである。クルーズコントロール部79は、目標車速を入力された状態であるとする。まず制御装置32は、実車速と車両情報を検出する(ステップSA1)。制御装置32は、鞍乗り型車両10が現在いる場所の勾配を検出する(ステップSA2)。このとき勾配は、リアルタイムに測定された勾配であるが、地図情報とGPS測定による現在位置情報から算出された値を用いてもいい。次に判定部77は勾配が勾配閾値以上であるか否かを判定する(ステップSA3)。ここで勾配が勾配閾値以上であるというのは勾配がある状態を意味する。判定部77が勾配は勾配閾値以上であると判定した場合(ステップSA3:YES)、軌道生成部59は、車両情報が含む車両の加速度と、実車速と、目標車速に基づいてジャーク最小軌道を生成する(ステップSA4)。そして目標ジャークを目標ジャーク算出部75が算出する。駆動力制御部81は、鞍乗り型車両10のジャークが目標ジャークを実現するようにパワーユニット12の駆動力をフィードフォワード制御する(ステップSA5)。言い換えれば、駆動力制御部81は、車両の加速度から算出されるジャークが目標ジャークに一致するように制御する。そしてその制御の結果を次の制御に反映させるべく、制御装置32は実車速を検出する(ステップSA6)。判定部77は、実車速が目標車速になったか否かを判定する(ステップSA7)。判定部77が、実車速は目標車速になったと判定した場合、駆動力制御部81はパワーユニット12の駆動力を目標車速に保つべくフィードバック制御をおこなう(ステップSA8)。
【0041】
ステップSA3の説明に戻って、判定部77が勾配は勾配閾値未満であると判定した場合(ステップSA3:NO)、ステップSA8に進む。言い換えればクルーズコントロール部79が車速を目標車速に維持する。
【0042】
ステップSA7の説明に戻って、判定部77が、実車速は目標車速になっていないと判定した場合は(ステップSA7:NO)、ステップSA5に戻る。
【0043】
以上、本実施形態に係る鞍乗り型車両10によれば、クルーズコントロールを行っていた際に、平坦路から勾配路に走行路が変化した場合でも、穏やかな体感G変化を維持することができる。このため乗り心地が改善できるという効果を奏し得る。
【0044】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る鞍乗り型車両10について、以下で説明する。なお前述の実施の形態を第1の実施の形態とよび、以下の実施の形態を第2の実施の形態と呼ぶ。
第2の実施の形態に係る鞍乗り型車両10における機器の構成は、前述した第1の実施の形態を表す図1図2、及び図3と同様なので記載を省略する。
【0045】
図8は、第2の実施形態に係る鞍乗り型車両10の動作についてのフローチャートである。本実施形態においては、ロール角検出部41で検出されるロール角についての判定が制御に関わってくる。勾配がある中でもカーブにおいて同時に旋回をおこなう場合には、特に鞍乗り型車両10の車両挙動が複雑になるため、図7で示したフローに加えてロール角の条件も加味した駆動力の制御が必要となる。
【0046】
クルーズコントロール部79は、目標車速を入力された状態であるとする。まず制御装置32は、実車速と車両情報を検出する(ステップSB1)。次に制御装置32は、ロール角検出部41から鞍乗り型車両10のロール角を検出する(ステップSB2)。制御装置32は、勾配検出部43から現在鞍乗り型車両10がいる場所の勾配を検出する(ステップSB3)。判定部77は、路面の勾配が勾配閾値以上か否かを判定する(ステップSB4)。
ここで路面の勾配が勾配閾値以上である場合には、路面に勾配があると判定し、勾配が勾配閾値未満である場合には、路面に勾配がないと判定することになる。
判定部77が、勾配は勾配閾値以上であると判定した場合には、判定部77が、ロール角がロール角閾値以上であるか否かを判定する(ステップSB5)。
ここでロール角がロール角閾値以上である場合には、車両は旋回中であると判定し、ロール角がロール角閾値未満である場合には、車両は旋回中ではないと判定する。
判定部77が、ロール角がロール角閾値未満であると判定した場合には(ステップSB5:NO)、駆動力制御部81は、鞍乗り型車両10のジャークがジャーク最小軌道に合うようにパワーユニット12の駆動力を制御する。このとき具体的には、駆動力制御部81はフィードフォワード制御をおこなう(ステップSB6)。判定部77が、実車速は目標車速になったか否かを判定する(ステップSB7)。判定部77が、実車速は目標車速になったと判定した場合には(ステップSB7:YES)、駆動力制御部81は、目標車速を維持するようにパワーユニット12の駆動力をフィードバック制御する(ステップSB8)。
【0047】
ステップSB4の説明に戻って、判定部77が勾配は勾配閾値未満であると判定した場合には(ステップSB4:NO)、ステップSB8に進む。
【0048】
ステップSB4の説明に戻って、判定部77がロール角はロール角閾値以上であると判定した場合には(ステップSB5:YES)、制御装置32は目標車速を実車速に変更する(ステップSB9)。そしてステップSB7に進む。
【0049】
ステップSB7の説明に戻って、判定部77が実車速は目標車速になっていないと判定した場合には(ステップSB7:NO)、ステップSB6に戻る。
【0050】
このような構成によれば、目標車速を現在の実車速に変更するため、無理な加速をすることがなくなり、勾配路で旋回中の車両挙動を安定させることができるという効果を奏し得る。
【0051】
また、本実施形態の変形実施例として、図8のステップSB6の後でジャーク最小軌道に合うようにフィードフォワード制御する場合に、車両が減速して、目標車速追従時の位置から遅れる距離の許容値である遅れ許容距離以内であるようにジャーク最小軌道を決定することが考えられる。その場合、ロール角がロール角閾値以上であるとき、遅れ許容距離を大きくする処理をおこなうことも考えられる。
【0052】
なお、上述の実施形態は本発明の一態様を示すものである。本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、細部等の構成は適宜に変更してもよい。図7および図8に示すフローチャートの処理単位は、制御装置32の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって本発明が制限されることはない。図7および図8の動作は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0053】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0054】
(構成1)車両の駆動力を制御する制御装置を有する鞍乗り型車両であって、前記車両が走行する路面の勾配を検出する勾配検出部と、前記車両の加速度を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、を備え、前記制御装置は、目標ジャークを算出する目標ジャーク算出部と、車速を目標車速に維持するクルーズコントロール部とを有し、前記制御装置は、前記勾配検出部の検出結果から勾配路を走行中であると判定した場合は、前記加速度から算出されるジャークを前記目標ジャークに合わせるように前記車両の前記駆動力を制御する、ことを特徴とする鞍乗り型車両。
このような構成によれば、クルーズコントロールを行った際に、平坦路から勾配路に走行路が変化した場合でも自然な体感G変化を維持することできる。このため乗り心地が改善できるという効果を奏し得る。
【0055】
(構成2)ロール角検出部を有し、前記車両が、前記勾配路を走行中であり、且つ前記ロール角検出部の検出結果であるロール角が所定のロール角閾値以上であると判定するとき、前記目標車速を変更することを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両。
鞍乗り型車両はロール方向に傾いている場合、旋回している可能性が高い。このような構成によれば、ロール角に合わせて目標車速を適切に変更することが可能となるため、車両挙動が安定するという効果を奏する。
【0056】
(構成3)実車速を検出する車速検出部を有し、前記制御装置は、前記勾配検出部の前記検出結果から前記勾配路を走行中であり、且つ前記ロール角検出部の検出結果である前記ロール角が所定の前記ロール角閾値以上であると判定するとき、前記目標車速を前記実車速に変更することを特徴とする構成2記載の鞍乗り型車両。
このような構成によれば、目標車速を現在の実車速に変更するため、無理な加速がなくなり、勾配路で旋回中の車両挙動を安定させることができるという効果を奏し得る。
【0057】
(構成4)前記制御装置は、前記車両が減速して、目標車速追従時の位置から遅れる距離の許容値である遅れ許容距離内に収まるように前記車両の前記駆動力をフィードフォワード制御し、前記勾配検出部の前記検出結果から前記勾配路を走行中であり、且つ前記ロール角検出部の検出結果である前記ロール角が所定の前記ロール角閾値以上と判定するとき、前記遅れ許容距離を大きくすることを特徴とする構成2記載の鞍乗り型車両。
このような構成によれば、勾配路で旋回中において後続の車間距離が大幅に乱れない範囲で、乗り心地が優先された車速維持が可能になる。
【符号の説明】
【0058】
10 鞍乗り型車両
32 制御装置
34 IMU(車両情報検出部)
41 ロール角検出部
43 勾配検出部
45 車速検出部
79 クルーズコントロール部
81 駆動力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8