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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145416
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/00 20060101AFI20241004BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F22B37/00 A
F22B37/38 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057747
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】近藤 幹太
(72)【発明者】
【氏名】新藤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】須賀 将吾
(72)【発明者】
【氏名】平木 義信
(57)【要約】
【課題】ボイラ本体内を効率よく効果的に防錆することができるボイラを提供することである。
【解決手段】水を加熱して蒸気を生成するボイラ本体2と、前記ボイラ本体に不活性ガスを導入可能な不活性ガス導入部7とを備え、前記不活性ガス導入部7は、水の加熱を停止したことにより、前記ボイラ本体内の圧力が不活性ガスを導入可能となる圧力まで低下すると、当該ボイラ本体2に不活性ガスを導入する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱して蒸気を生成するボイラ本体と、
前記ボイラ本体に不活性ガスを導入可能な不活性ガス導入部とを備え、
前記不活性ガス導入部は、水の加熱を停止したことにより、前記ボイラ本体内の圧力が不活性ガスを導入可能となる圧力まで低下すると、当該ボイラ本体に不活性ガスを導入する、ボイラ。
【請求項2】
前記不活性ガス導入部は、
前記ボイラ本体内の圧力を検出可能な本体圧力検出部と、
不活性ガスを供給する不活性ガスラインと前記ボイラ本体とが連通していない非連通状態と、連通している連通状態とに変化可能な連通弁とを含み、
前記本体圧力検出部によって検出された圧力が所定値未満となったときに、前記連通弁を前記連通状態に変化させる第1制御を行う、請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記不活性ガス導入部は、前記第1制御を行った後であって前記本体圧力検出部によって検出された圧力が所定値以上となった以降において、前記連通弁を前記非連通状態に変化させる第2制御を行う、請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記不活性ガス導入部は、
前記不活性ガスライン内の圧力を検出可能な不活性ガスライン圧力検出部を含み、
前記不活性ガスライン圧力検出部によって検出される圧力が、当該不活性ガスライン圧力検出部を通過する不活性ガスの圧力に相当するとして定められている圧力値よりも高い特定値以上となったときに、エラーに関する制御を行う、請求項3に記載のボイラ。
【請求項5】
前記不活性ガス導入部は、
前記連通弁が前記非連通状態に変化しているか否かを判定する判定部を含み、
前記第2制御を行ったにもかかわらず前記判定部により前記非連通状態に変化していないと判定されたときにエラーに関する制御を行う、請求項3に記載のボイラ。
【請求項6】
前記不活性ガス導入部は、
前記ボイラ本体内の圧力が不活性ガスを導入可能となる圧力として定められている圧力まで低下したときに、閉状態から開状態となることで、当該ボイラ本体に不活性ガスを導入可能とする開閉弁を含み、
前記開閉弁は、前記ボイラ本体内の圧力にかかわらず、不活性ガスを供給する不活性ガスラインと連通可能である、請求項1に記載のボイラ。
【請求項7】
前記不活性ガスラインは、不活性ガスの供給元への逆流を止めるための逆止弁を含む、請求項6に記載のボイラ。
【請求項8】
前記不活性ガス導入部は、
前記不活性ガスラインと前記開閉弁とが連通していない非連通状態と、連通している連通状態とに変化可能な連通弁を含み、
前記連通弁は、前記ボイラ本体内の圧力にかかわらず、前記不活性ガスラインと前記開閉弁とが連通している連通状態となっている、請求項6に記載のボイラ。
【請求項9】
前記不活性ガス導入部は、
前記不活性ガスライン内の圧力を検出可能な不活性ガスライン圧力検出部と、
前記連通弁および前記不活性ガスライン圧力検出部よりも不活性ガスの供給元側に設けられ、不活性ガスの供給元への逆流を止めるための逆止弁とを含み、
前記不活性ガスライン圧力検出部によって検出される圧力が、当該不活性ガスライン圧力検出部を通過する不活性ガスの圧力に相当するとして定められている圧力値よりも高い特定値以上となったときに、前記連通弁を非連通状態に変化させる制御を行う、請求項8に記載のボイラ。
【請求項10】
前記不活性ガス導入部は、
前記不活性ガスライン内の圧力を検出可能な不活性ガスライン圧力検出部と、
前記不活性ガスライン圧力検出部よりも不活性ガスの供給元側に設けられ、不活性ガスの供給元への逆流を止めるための逆止弁とを含み、
前記不活性ガスライン圧力検出部によって検出される圧力が、当該不活性ガスライン圧力検出部を通過する不活性ガスの圧力に相当するとして定められている圧力値よりも高い特定値以上となったときに、エラーに関する制御を行う、請求項8に記載のボイラ。
【請求項11】
前記不活性ガスラインは、
前記不活性ガスライン圧力検出部よりも不活性ガスの供給元側に設けられた減圧弁を含む、請求項4、請求項9、および、請求項10のいずれかに記載のボイラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばボイラが燃焼停止状態であるときにおいて、ボイラ本体内に酸素が残留していた場合ボイラ本体に錆びが生じる虞がある。このため、例えば、不活性ガスである窒素をボイラ本体内に流入させつつボイラ本体内の空気をボイラ本体外へ排出させて窒素に置き換えることなどにより、防錆処理を行うものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-057009号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のボイラにおいては、ボイラの燃焼停止後、ボイラ本体内の空気を窒素に置き換える際に、空気よりも窒素の方が軽いため、空気をボイラ本体の上側から抜くと完全に抜ききることができない。また、空気をボイラ本体の下側から抜く場合、ボイラ本体内には缶水が残っており缶水の水位がまちまちであるため、缶水の水位のすぐ上の位置から空気を抜くことが不可能であり、空気を抜く位置と缶水の水位との間に溜まる空気を抜き切ることができない。このため、従来のボイラにおいては、窒素への置き換えが不完全となり、空気が残留してしまう虞があった。一方、空気をボイラ本体の最下方から抜く場合には、排水ブローをして缶水を全て抜いた上で窒素を封入することになり手間およびコストが生じる。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、ボイラ本体内を効率よく効果的に防錆することができるボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うボイラは、水を加熱して蒸気を生成するボイラ本体と、前記ボイラ本体に不活性ガスを導入可能な不活性ガス導入部とを備え、前記不活性ガス導入部は、水の加熱を停止したことにより、前記ボイラ本体内の圧力が不活性ガスを導入可能となる圧力まで低下すると、当該ボイラ本体に不活性ガスを導入する。
【0007】
上記の構成によれば、加熱停止に応じてボイラ本体内の蒸気が水に変化することによる圧力低下を活用して不活性ガスが導入されるため、ボイラ本体内に空気を残存させることなく効率よく効果的に防錆処理を行うことができる。
【0008】
(2) 好ましくは、前記不活性ガス導入部は、前記ボイラ本体内の圧力を検出可能な本体圧力検出部と、不活性ガスを供給する不活性ガスラインと前記ボイラ本体とが連通していない非連通状態と、連通している連通状態とに変化可能な連通弁とを含み、前記本体圧力検出部によって検出された圧力が所定値未満となったときに、前記連通弁を前記連通状態に変化させる第1制御を行う。
【0009】
上記の構成によれば、ボイラ本体内の圧力が所定値未満となったときに、ボイラ本体に不活性ガスを導入可能な状態に遷移できる。
【0010】
(3) 前記不活性ガス導入部は、前記第1制御を行った後であって前記本体圧力検出部によって検出された圧力が所定値以上となった以降において、前記連通弁を前記非連通状態に変化させる第2制御を行う。
【0011】
上記の構成によれば、本体内の圧力が所定値以上となった以降に、ボイラ本体に不活性ガスを導入させない状態に遷移できる。
【0012】
(4) 前記不活性ガス導入部は、前記不活性ガスライン内の圧力を検出可能な不活性ガスライン圧力検出部を含み、前記不活性ガスライン圧力検出部によって検出される圧力が、当該不活性ガスライン圧力検出部を通過する不活性ガスの圧力に相当するとして定められている圧力値よりも高い特定値以上となったときに、エラーに関する制御を行う。
【0013】
上記の構成によれば、不活性ガスを供給する圧力よりも高い圧力が検出されて、例えば本体圧力検出部や連通弁の故障などにより蒸気が逆流してきた場合などに、エラーに関する制御が行われる。
【0014】
(5) 前記不活性ガス導入部は、前記連通弁が前記非連通状態に変化しているか否かを判定する判定部を含み、前記第2制御を行ったにもかかわらず前記判定部により前記非連通状態に変化していないと判定されたときにエラーに関する制御を行う。
【0015】
上記の構成によれば、例えば連通弁の故障などにより第2制御が適切に行われていないとみなすことができるときに、エラーに関する制御を行うことができる。
【0016】
(6) 前記不活性ガス導入部は、前記ボイラ本体内の圧力が不活性ガスを導入可能となる圧力として定められている圧力まで低下したときに、閉状態から開状態となることで、当該ボイラ本体に不活性ガスを導入可能とする開閉弁を含み、前記開閉弁は、前記ボイラ本体内の圧力にかかわらず、不活性ガスを供給する不活性ガスラインと連通可能である。
【0017】
上記の構成によれば、ボイラ本体内の圧力にかかわらず不活性ガスを供給する不活性ガスラインと連通可能な開閉弁により、ボイラ本体内の圧力が不活性ガスを導入可能となる圧力として定められている圧力まで低下したときにボイラ本体に不活性ガスを導入させることができる。
【0018】
(7) 前記不活性ガスラインは、不活性ガスの供給元への蒸気の逆流を止めるための逆止弁を含む。
【0019】
上記の構成によれば、開閉弁が不活性ガスラインと連通していても、不活性ガスが供給元へ逆流してしまうことを防ぐことができる。
【0020】
(8) 前記不活性ガス導入部は、前記不活性ガスラインと前記開閉弁とが連通していない非連通状態と、連通している連通状態とに変化可能な連通弁を含み、前記連通弁は、前記ボイラ本体内の圧力にかかわらず、前記不活性ガスラインと前記開閉弁とが連通している連通状態となっている。
【0021】
上記の構成によれば、例えば不活性ガスが供給元へ逆流してしまう状況においても連通弁を非連通状態とすることにより、蒸気が供給元へ逆流してしまうことを防ぐことができる。
【0022】
(9) 前記不活性ガス導入部は、前記不活性ガスライン内の圧力を検出可能な不活性ガスライン圧力検出部と、前記連通弁および前記不活性ガスライン圧力検出部よりも不活性ガスの供給元側に設けられ、不活性ガスの供給元への逆流を止めるための逆止弁とを含み、前記不活性ガスライン圧力検出部によって検出される圧力が、当該不活性ガスライン圧力検出部を通過する不活性ガスの圧力に相当するとして定められている圧力値よりも高い特定値以上となったときに、前記連通弁を非連通状態に変化させる制御を行う。
【0023】
上記の構成によれば、不活性ガスライン圧力検出部により特定値以上が検出されており不活性ガスが適切にボイラ本体へ導入されていないとみなすことができるときに、連通弁を非連通状態に変化させて、蒸気が供給元へ逆流してしまうことを防ぐことができる。
【0024】
(10) 前記不活性ガス導入部は、前記不活性ガスライン内の圧力を検出可能な不活性ガスライン圧力検出部と、前記不活性ガスライン圧力検出部よりも不活性ガスの供給元側に設けられ、不活性ガスの供給元への逆流を止めるための逆止弁とを含み、前記不活性ガスライン圧力検出部によって検出される圧力が、当該不活性ガスライン圧力検出部を通過する不活性ガスの圧力に相当するとして定められている圧力値よりも高い特定値以上となったときに、エラーに関する制御を行う。
【0025】
上記の構成によれば、不活性ガスライン圧力検出部により特定値以上が検出されており不活性ガスが適切にボイラ本体へ導入されていないとみなすことができるときに、エラーに関する制御を行うことができる。
【0026】
(11) 前記不活性ガスラインは、前記不活性ガスライン圧力検出部よりも不活性ガスの供給元側に設けられた減圧弁を含む。
【0027】
上記の構成によれば、不活性ガスの圧力に相当するとして定められている圧力値を一定範囲に保つことができ、不活性ガスラインからの供給圧が高まることにより不活性ガスライン圧力検出部が誤検知してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の実施形態に係るボイラの概略構成を模式的に示す図である。
図2】第1の実施形態に係る窒素封入関連処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図3】第2の実施形態に係るボイラの概略構成を模式的に示す図である。
図4】第2の実施形態に係る窒素封入関連処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1の実施形態におけるボイラの概略構成について>
以下に、図面を参照しつつ、本発明の第1の実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施の第1の実施形態に係るボイラの概略構成について説明する。
【0030】
ボイラ1は、図1に示すように、燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ本体2と、水位検出装置3と、空気供給路2eを介してボイラ本体2の燃焼室内に空気を送り込む送風機4と、ボイラ1の運転・動作を制御する制御装置5と、ボイラ本体2に給水を行う給水ライン6と、不活性ガス導入部7と、気水分離器20と、ボイラ本体2からの排ガスを導出する排気通路(図示せず)と、ボイラ本体2に燃料を供給する燃料供給ライン(図示せず)とを備えている。なお、燃料は、油である例について説明するが、油などの液体に限らず、ガスなどの気体であってもよい。
【0031】
ボイラ本体2は、略円筒状に形成されており、その内部にバーナ2a、複数の水管2b、上部ヘッダ2c、および、下部ヘッダ2dなどを備えている。複数の水管2bは、ボイラ本体2の内部に収容されており、ボイラ本体2の円周方向に所定の間隔で立設されている。これにより、ボイラ本体2の略中央部に、燃焼室が形成される。
【0032】
バーナ2aは、燃焼室の上方に設けられている。バーナ2aは、複数の水管2bの内部に導入された缶水を加熱して、蒸気を生成する。また、バーナ2aは、燃料供給ラインを介して燃料タンク(図示せず)と接続されている。燃料供給ラインには、流量調整弁が設けられている。ボイラ1の燃焼量は、制御装置5により流量調整弁の開度が制御されることにより、連続的又は段階的に調整される。例えば、高燃焼時には、流量調整弁の開度が100%に制御され、低燃焼時には、流量調整弁の開度が50%に制御される。
【0033】
下部ヘッダ2dは、ボイラ本体2の下部に設けられ、複数の水管2bの下部と連結されている。下部ヘッダ2dは、給水ライン6と接続されている。給水ライン6には、給水ポンプ61と給水逆止弁62が設けられている。給水ポンプ61から給水ライン6を介して下部ヘッダ2dへ給水され、給水された水は水管2bにおいて加熱される。
【0034】
上部ヘッダ2cは、ボイラ本体2の上部に設けられ、複数の水管2bの上部と連結されている。上部ヘッダ2cは、複数の水管2bにおいて生成した蒸気を集め、蒸気出口通路を介して気水分離器20へ導出する。
【0035】
気水分離器20は、上部ヘッダ2cからの蒸気を乾き蒸気と水分とに分離する。気水分離器20により分離された乾き蒸気は、蒸気供給通路を介して所定の機器に送り出される。一方、気水分離器20により分離された水分は、気水分離器20と下部ヘッダ2dとを連結する降水通路を介して下部ヘッダ2dに戻される。
【0036】
水位検出装置3は、導通可能な金属により形成される水位制御筒30と、複数の電極棒31とを備える。水位制御筒30は、両端が封止された略円筒形状に形成されている。水位制御筒30の上端部は、上部ヘッダ2cと連通している。また、水位制御筒30の下端部は、下部ヘッダ2dと連通している。このため、水位制御筒30内の水位は、ボイラ本体2内の水管2bの水位と略一致する。水位制御筒30には、複数の電極棒31が設けられている。本実施の形態では、L棒31L、M棒31M、S棒31Sを備えている。L棒31L、M棒31M、S棒31Sは、それぞれの先端(下端)が、上下方向に互いに間隔をあけて配置されており、水位制御筒30内の複数の水位を、段階的に検出可能に構成されている。L棒31Lは、最も低い水位となる水位Lを検出し、M棒31Mは、水位Lよりも高い水位Mを検出し、S棒31Sは、水位Mよりも高い水位Sを検出する。
【0037】
水位Lは、燃焼状態において必要となる最低水位であり、当該水位L未満の状態が所定時間以上継続することにより燃焼停止する水位、つまりボイラにおいて燃焼を強制的に停止する制御に用いられる燃焼停止水位である。
【0038】
水位Mは、高燃焼時の給水制御に用いられる水位である。制御装置5は、例えば水位検出装置3の検出結果に基づいて給水ポンプをON/OFF制御する場合、水位Mは、高燃焼時における給水開始水位であり、水位が水位Mを下回ると給水を開始し、水位Mを検知してから所定時間経過後に給水を停止するように制御する。これに対して、水位一定制御(基準水位になるように連続的に給水を行う制御)のであってもよく、この場合、例えば水位Mは、高燃焼時における基準となる水位となり、常時水位Mとなるように給水制御が行われる。
【0039】
水位Sは、燃焼開始時や低燃焼時の給水制御に用いられる水位である。制御装置5は、例えば燃焼開始時において、水位が当該水位Sを下回るときには給水を開始し、水位Sを上回っていることを条件として燃焼を開始する。また、制御装置5は、例えば給水ポンプをON/OFF制御する場合、水位Sは、低燃焼時における給水開始水位であり、水位が水位Sを下回ると給水を開始し、水位Sを検知してから所定時間経過後に給水を停止するように制御する。これに対して、水位一定制御の場合、水位Sは、低燃焼時における基準となる水位となり、常時水位Sとなるように給水制御が行われる。
【0040】
不活性ガス導入部7は、水位検出装置3に連結されるように設けられており、水位検出装置3を介して、ボイラ本体2内の圧力(水管・上部ヘッダ内の圧力)が、不活性ガスを導入可能となる圧力まで低下すると、ボイラ本体2(水管・上部ヘッダ内)に不活性ガスを導入することができる。本実施の形態において不活性ガスとは窒素ガスである例について説明するが、これに限らず、例えば二酸化炭素などであってもよい。
【0041】
不活性ガス導入部7は、ボイラ本体2と外気(空気)とを連通させるための外気ライン71と、ボイラ本体2に窒素ガスを供給する窒素ライン72と、ボイラ本体2と連通させるラインを外気ライン71および窒素ライン72のいずれか一方に切り替えるための三方弁81(連通弁)と、三方弁81を介してボイラ本体2(水管・上部ヘッダ内)へと通じる水位検出装置3に連通させるための導入ライン70とを備えている。
【0042】
また、不活性ガス導入部7は、窒素ライン72上において、窒素ガスタンクなどから供給される窒素ガスの圧力を一定範囲となるよう調整可能な減圧弁83と、減圧弁83よりも三方弁81側において窒素ライン72内の圧力を検出する窒素ライン圧力センサ92とを備えている。窒素ライン72からボイラ本体2へ供給される窒素ガスの圧力は、減圧弁83によって例えば大気圧以上となる範囲で一定範囲(例えば0.15MPa~0.19MPaなど)に調整される。これにより、窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力値を一定範囲となるように調整できる。以下では、一定範囲内の圧力値を、窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力に相当する供給窒素ガス圧力値という。なお、減圧弁83は機械的に作動するものに限らず、制御装置5によって電磁的に制御されるものであってもよい。
【0043】
さらに、不活性ガス導入部7は、導入ライン70上において実質的にボイラ本体2内の圧力を検出する缶内圧力センサ91を備えている。以下、外気ライン71、窒素ライン72、および、導入ライン70各々においてボイラ本体2側を下流とし、ボイラ本体2と反対側(外気ライン71の外気側寄りおよび窒素ライン72の窒素供給側寄り)を上流として説明する。
【0044】
三方弁81は、制御装置5によって、導入ライン70が外気ライン71と連通している状態(外気ライン71側への切替)、あるいは、導入ライン70が窒素ライン72と連通している状態(窒素ライン72側への切替)のいずれかに切り替えられる。すなわち、三方弁81の流路の切り替えにより、ボイラ本体2が、外気ライン71と連通している状態、あるいは、窒素ライン72と連通している状態のいずれかに切り替えられる。
【0045】
窒素ライン72から供給される窒素は、三方弁81とその下流に設けられた導入ライン70とを介し、ボイラ本体2へ導入することが可能となる。また、本実施例においては、例えばボイラの運転停止などにより、缶内圧力センサ91によって検出される圧力が所定値未満となった場合に、制御装置5によって、三方弁81を外気ライン71側から窒素ライン72側へ切り替える第1制御が行われる。所定値は、予め定められた値であって、例えばボイラ本体2に対する外気圧の値(例えば大気圧0.10MPa)である。このため、所定値未満となった場合とは、当該外気圧の値よりも負圧となった場合のことである。なお、所定値は、外気圧の値に限らず、例えば、大気(空気)圧以上であって、供給窒素ガス圧力値となる一定範囲内の下限値以下の予め定められた値であってもよく、大気圧未満となる予め定められた値でもよい。なお、所定値を例えば大気圧よりも高い値とした場合、空気が流入し得る余地が生じ得る以前の段階で速やかに窒素ガスを導入することができる。
【0046】
制御装置5によって三方弁81が窒素ライン72側へ切り替えられると、窒素ライン72から供給される窒素ガスの供給圧よりもボイラ本体2内の圧力が低いことにより、窒素ガスがボイラ本体2内へ自動吸引される。このため、ボイラ本体2内へ窒素ガスが導入されるようになる。なお、所定値未満とするものに限らず、所定値と同じ(例えば、大気圧と同じ)となった場合に、三方弁81を窒素ライン72側へ切り替えるようにしてもよい。
【0047】
ここで、ボイラの燃焼が停止した場合、ボイラ本体内の温度低下に伴いボイラ本体内の蒸気が凝縮され水へと状態変化する。また、燃焼停止に伴い、蒸気出口通路等は閉じられ、ボイラ本体内が外部と遮断された状態となる。そうするとボイラ本体内の圧力が低下し、ボイラ本体内の圧力が外気圧よりも低い負圧(真空状態)となる。ボイラ本体内の圧力が負圧になった場合、給水ライン6からの水をボイラ本体内に取り込んでしまうことや、待機の解除あるいは運転再開しようとするときに急激に給水ライン6からの水を取り込んでしまうことなどにより、ボイラ本体内に給水され過ぎた状態(ボイラ本体内が満水状態)となってしまい、例えば安全弁から水が吹き出してしまうなどの不具合を生じさせてしまう。そのため、一般的にはボイラ本体内に空気を吸い込むことでボイラ本体内が負圧になることを防止している。しかし、ボイラ本体内に空気が混入すると、空気内に含まれる酸素によってボイラ本体内に錆を生じさせてしまう虞が生じ得る。しかし、本実施例においては、ボイラの燃焼停止後においてボイラ本体2内の圧力が外気圧よりも負圧となることを利用し、空気を混入させることなく、窒素ガスをボイラ本体2内へ導入させることができる。このため、ボイラ本体2内は、最終的に水と窒素とで満たされた状態となる。これにより、ボイラ本体内に空気を残存させることなく効率よく効果的に防錆処理を行うことができる。また、本実施例においては、窒素ガスの供給圧力を大気圧以上としているため、空気がボイラ本体2に流入する前に窒素ガスを導入することが可能となる。
【0048】
また、本実施例においては、運転停止中における窒素ガス導入後に、缶内圧力センサ91によって検出される圧力が所定値以上(例えば大気圧0.10MPa以上)となった場合には、ボイラ本体2内に窒素ガスが封入されたものと考えられる。そのため、制御装置5によって、三方弁81が外気ライン71側に切り替えられ、ボイラ本体2と窒素ライン72とが連通していない状態とする第2制御が行われる。なお、第2制御は、缶内圧力センサ91によって所定値以上の圧力が検出されてから所定時間経過後に行われるようにしてもよい。この場合の所定時間とは、ボイラ本体2内に残留する蒸気が凝縮されるまでに要する時間よりも長い時間を定めるものとする。また、第2制御を行う圧力値(所定値)は、第1制御を行う圧力値と同じものに限らず、例えば第1制御を行う圧力値以上であって供給窒素ガス圧力値となる一定範囲内の下限値以下となる値であってもよい。
【0049】
また、缶内圧力センサ91によって検出される圧力が所定値以上となった場合に、ボイラ本体2と窒素ライン72とが連通していない状態とすることにより、ボイラ1の運転開始後、ボイラ本体2で生成された蒸気が導入ライン70を逆流してきたとしても、蒸気が窒素ガスの供給元(例えば接続されている窒素ガスタンクなど)へ流入してしまうことを防ぐことができる。また、逆流した蒸気は、外気ライン71を介し外気側へ逃がすことが可能となる。なお、外気ライン71に例えば電磁的に制御される解放弁85を設け、三方弁81を外気ライン71側へ切り替えた後に(例えば、ボイラ1の運転が安定したと判断することができる所定時間(例えば3秒など)後)に解放弁85を閉める制御がされるようにしてもよい。これにより、ボイラ本体2内で生成した蒸気を効率よく使用することができるようになる。
【0050】
また、缶内圧力センサ91によって検出される圧力が所定値以上となり三方弁81が外気ライン71側に切り替えられる第2制御が行われたはずにもかかわらず、窒素ライン圧力センサ92によって検出される圧力が、窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力に相当するとして定められている一定範囲の上限値よりも高い特定値以上(例えば、上限値0.19MPaよりも高い0.20MPa以上)となったときには、不活性ガス導入部7において何らかのエラーが発生している可能性が高いため、エラーに関する処理を行う。エラーとは、例えば三方弁81が故障していることなどにより、外気ライン71側への切り替えが行われず、窒素ライン72に蒸気が逆流してきてしまうことなどが想定される。また、エラーに関する処理とは、例えば、ボイラ1の運転停止制御、あるいは、警告ブザーによってオペレータへ報知するための制御などである。これにより、窒素ガスの供給元に蒸気が流入することを回避しつつ、安全にボイラ1の運転を行うことができる。なお、第2制御が行われているか否かにかかわらず、窒素ライン圧力センサ92によって検出される圧力が、特定値以上となったときには、例えば缶体圧力検出センサ91が故障していることにより、三方弁81が外気ライン71側へ切り替えられず蒸気が逆流してきているとみなして、エラーに関する制御を行うことができるようにしてもよい。
【0051】
制御装置5は、内部にメモリ、タイマ、および演算処理部を含むコンピュータにより実現され、ボイラ1の運転・動作等を制御するものであり、例えば、着火時および停止時の動作、燃焼量が異なる複数種類の燃焼状態(例えば、低燃焼、高燃焼)を制御する。また、制御装置5の記憶部には、ボイラ1に関する各種情報が記憶されている。例えば、ボイラ本体2の外気圧として予め定めた圧力値(所定値)、窒素ライン72を流通する窒素ガスの圧力として定められた一定範囲の圧力値(窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力に相当する上限値および下限値)などを記憶する。
【0052】
<第1の実施形態における窒素封入関連処理>
図2は、第1の実施形態におけるボイラの窒素封入関連処理の一例を示すためのフローチャートである。制御装置5は、一定時間(例えば1秒)毎に継続して窒素封入関連処理を実行する。
【0053】
ステップS01では、ボイラ1における燃焼が停止されているか否かが判定される。なお、ボイラ1における燃焼が停止とは、燃焼停止操作がされたときや、燃焼待機状態(バーナ2aが燃焼していない状態)に移行させる操作がされたときなどを含み、水の加熱が停止されたことである。ボイラ1における燃焼が停止されていると判定されたときには、ステップS02に進み、缶内圧力センサ91によって検出されるボイラ本体2内の圧力が所定値未満(例えば大気圧0.10MPa未満)であるか否かが判定される。すなわち、ボイラ1における燃焼が停止されてから時間経過に応じてボイラ本体2内の蒸気が水に状態変化して徐々に低下する圧力が、所定値未満となったか否かが判定される。ステップS02は、ボイラ本体2内の圧力が所定値未満であると判定されるまで繰り返し実行される。
【0054】
ステップS02において、ボイラ本体2内の圧力が所定値未満であると判定されたときには、ステップS03に進み、三方弁81を窒素ライン71側に切り替える。これにより、窒素ライン71から供給される窒素ガスをボイラ本体2に導入可能となり、時間経過に応じて、ボイラ本体2内が水と窒素ガスとで満たされることによりボイラ本体2内の圧力が所定値に到達し得る。
【0055】
ステップS04においては、缶内圧力センサ91によって検出されるボイラ本体2内の圧力が所定値以上となったか否かが判定される。ステップS04は、ボイラ本体2内の圧力が所定値以上であると判定されるまで繰り返し実行される。
【0056】
ステップS04において、ボイラ本体2内の圧力が所定値以上になったと判定されたときには、ボイラ本体2内が水と窒素ガスとで満たされたものとみなして、ステップS05に進み、三方弁81を外気ライン71側に切り替える。これにより、ボイラ1の運転を再開し蒸気が生成されたとしても、ボイラ本体2と、窒素ライン72とが連通していない状態であるため、蒸気は外気ライン71側へ逃がされ、窒素ライン72へ蒸気が逆流することがなくなる。なお、ボイラ1が燃焼待機中において、ボイラ本体2内の圧力が所定値以上になったと判定されたときには、ボイラ1の待機状態が解消されたものとみなして、ステップS05に進む。
【0057】
ステップS06においては、窒素ライン圧力センサ92によって検出される窒素ライン71内の圧力が、窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力に相当するとして定められている一定範囲の上限値よりも高い特定値以上(例えば、0.20MPa)となったか否かが判定される。
【0058】
ステップS06によって窒素ライン72内の圧力が特定値以上と判定されなかったときには、処理を終了する。一方、ステップS06によって窒素ライン72内の圧力が特定値以上と判定されたときには、ステップS05において三方弁81を外気ライン71側へ切り替える制御をしたにもかかわらず、三方弁81の故障などにより実際にボイラ本体2が外気ライン71に連通しておらず窒素ライン72に連通している可能性が高いため、ステップS07においてエラーに関する処理を行い、処理を終了する。
【0059】
ステップS01に戻り、ボイラ1における燃焼が停止されていると判定されなかったときには、ステップS06に進み、上述した流れと同様の処理が行われる。
【0060】
以上のように、上記第1の実施の形態では、ボイラ1における水の加熱停止に応じてボイラ本体2内の蒸気が水に変化することによる圧力低下を活用して(ステップS02 YES)、空気ではなく窒素ガスが導入される(ステップS03)。これにより、ボイラ本体2内に空気を残存させることなく効率よく効果的に防錆処理を行うことができる。
【0061】
また、ボイラ本体2内の圧力が所定値(例えば、ボイラ本体2の外気圧のうち大気圧)以上となった(ステップS04 YES)以降に、ボイラ本体2に窒素ガスを導入させないように三方弁81を外気ライン71側へ切り替えることができる(ステップS05)。これにより、ボイラ1の運転を再開し、蒸気が生成されたとしても、蒸気が窒素ライン72へ逆流することがない。
【0062】
また、窒素ライン圧力センサ92によって検出される圧力が、窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力に相当するとして定められている一定範囲の上限値よりも高い特定値以上と判定されたとき(ステップS06 YES)には、例えば、缶体圧力検出センサ91や三方弁81の故障などにより蒸気が逆流してきているとみなすことができるため、ボイラ1の運転を停止するなどのエラーに関する処理(ステップS07)を行うことができる。これにより、窒素ガスの供給元へ蒸気が流入することを回避しつつ、安全にボイラ1の運転を行うことができる。
【0063】
また、本実施の形態においては、窒素ライン72に減圧弁83が設けられていることにより、窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力値を一定範囲に保つことができる。これにより、窒素ガス供給元からの供給圧が高まることによって窒素ライン圧力センサ92が誤検知してしまうことを防止できる。
【0064】
<第2の実施形態におけるボイラの概略構成について>
以下に、図面を参照しつつ、本発明の第2の実施形態について説明する。まず、図3を参照して、本実施の第2の実施形態に係るボイラの概略構成について説明する。なお、第1の実施例の説明において既に説明された構成と同様の構成については同一符号を示し、説明の便宜上、その説明は繰り返さない。
【0065】
第2の実施形態におけるボイラ1と、第1の実施形態におけるボイラ1との構成の相違点は、第1の実施形態におけるボイラ1には、導入ライン70に缶体圧力センサ91が設けられているが、第2の実施形態におけるボイラ1の導入ライン70には缶体圧力センサ91は設けられておらず、真空破壊弁82が設けられている。
【0066】
第2の実施形態におけるボイラ1の三方弁81(連通弁)は通常、ボイラ本体2内の圧力がボイラ本体2の外気圧の値(大気圧あるいは窒素ガス供給圧)よりも負圧となっているか否かにかかわらず、窒素ライン72側に切り替えられている。三方弁81が窒素ライン72側に切り替えられていることにより、窒素ライン72と、真空破壊弁82とが連通している状態となる。これにより、ボイラ本体2への窒素ガスの導入を速やかに行いつつ、仮に真空破壊弁82が故障した際には外気ライン71側へ切り替えることにより、窒素ガスの供給元へ蒸気が流入することを回避し、安全を確保することができる。
【0067】
真空破壊弁82は、ボイラ本体2内の圧力が外気圧よりも低い負圧(真空状態)となることを防ぐために設定した圧力値以下となることにより、機械的に開状態となる開閉弁である。真空状態となることを防ぐための圧力値には、例えば、大気圧(0.10MPa)が設定される。真空破壊弁82が開状態となることにより、窒素ガスの供給圧力によってボイラ本体2内へ窒素ガスを自動吸引する。すなわち、ボイラ本体2内の圧力が、設定した圧力よりも低下したときに、真空破壊弁82は開状態となり、ボイラ本体2への窒素ガスの導入が可能となる。これにより、ボイラ本体2内が大気圧未満となる負圧となれば、速やかに窒素ガスを封入することができるため効率よい防錆処理が可能となる。また、真空状態となることを防ぐための圧力値は、窒素ガスを導入可能となる圧力として予め定められている圧力であれば大気圧に限らず、大気(空気)圧以上であって、供給窒素ガス圧力値となる一定範囲内の下限値以下の予め定められた値であってもよく、大気圧未満となる予め定められた値であってもよい。なお、真空状態となることを防ぐための圧力値として、例えば大気圧よりも高い値を設定していた場合、空気が流入し得る余地が生じ得る以前の段階で速やかに窒素ガスを導入することができる。
【0068】
また、真空破壊弁82が開状態となり窒素ガスが導入されたことにより、あるいは、ボイラ本体2から蒸気が生成されたことにより、ボイラ本体2内の圧力が真空状態となることを防ぐために設定した圧力値よりも高くなったときには、真空破壊弁82は閉状態となる。なお、ボイラ本体2から蒸気が生成される場合とは、ボイラ1の運転再開、あるいは、燃焼待機状態が解除されることなどである。
【0069】
また、第2の実施形態における窒素ライン72には、減圧弁83と、窒素ライン圧力センサ92との間(窒素ライン圧力センサ92よりも窒素ガスの供給元側)に逆止弁84が設けられている。これにより、例えば真空破壊弁82が故障したことにより、窒素ライン72へ蒸気が逆流してきたとしても、窒素ガスの供給元に蒸気が逆流することを防止することができる。
【0070】
<第2の実施形態における窒素封入関連処理>
図4は、第2の実施形態におけるボイラの窒素封入関連処理の一例を示すためのフローチャートである。制御装置5は、一定時間(例えば1秒)毎に継続して窒素封入関連処理を実行する。なお、第2の実施形態における窒素封入関連処理はボイラにおける燃焼が停止されているかどうかにかかわらず、ボイラの運転稼働中も繰り返し実行される。
【0071】
ステップS11では、三方弁81を窒素ライン72側に切り替える。ステップS11において、三方弁81を窒素ライン72側に切り替えた後は、ステップS12において、窒素ライン圧力センサ92によって検出される圧力が、窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力に相当するとして定められている一定範囲の上限値よりも高い特定値以上(例えば、0.20MPa)となったか否かが判定される。ステップS12は、窒素ライン圧力センサ92によって検出される圧力が特定値以上であると判定されるまで繰り返し実行される。なお、ステップS12において、窒素ライン圧力センサ92によって検出される圧力が特定値以上であると判定されるまでの間は、例えばボイラ1の運転停止後(あるいは燃焼待機中)に、蒸気が凝縮され設定された圧力値よりも負圧となったことにより真空破壊弁82が開状態となり、窒素ガスがボイラ本体2に導入される。
【0072】
ステップS12において、窒素ライン圧力センサ92によって検出される圧力が特定値以上であると判定されたときには、例えば真空破壊弁83が故障していることなどによりボイラ本体2内で生成された蒸気が窒素ライン72側へ逆流してきている可能性が高いため、ステップS13において、三方弁81を外気ライン71側へ切り替える。これにより、ボイラ本体2で生成された蒸気が導入ライン70を逆流してきたとしても、窒素ライン72上の逆止弁84により抑制しつつも、蒸気が逆流するラインが外気ライン71側へ変化しているため、蒸気が窒素ガスの供給元(例えば接続されている窒素ガスタンクなど)へ流入してしまうこと防ぐことができる。また、逆流した蒸気は、外気ライン71を介し外気側へ逃がすことが可能となり、蒸気が安全な場所から漏れ出すことで作業者は異常に気付くことができる。
【0073】
ステップS14においては、エラーに関する処理が行われ、処理を終了する。エラーに関する処理とは、例えば、ボイラ1の運転停止、あるいは、警報ブザーなどによるオペレータへ報知するための制御である。これにより、窒素ガスの供給元へ蒸気が流入することを回避しつつ、安全にボイラ1の運転を行うことができる。
【0074】
以上により、上記第2の実施形態では、ボイラ本体2内の圧力にかかわらず窒素ガスを供給する窒素ライン72と連通可能な真空破壊弁82が、ボイラ本体2内の圧力がボイラ本体2内へ窒素ガスを導入可能となる圧力(真空状態となることを防ぐために設定した圧力値)よりも低下したときに開状態となるため、ボイラ本体2に窒素ガスを導入することができる。
【0075】
また、窒素ライン72には、蒸気が窒素ガスの供給元への逆流を止めるための逆止弁が設けられているため、真空破壊弁82が窒素ライン72と連通していても、ボイラ本体2から生成された蒸気が窒素ガスの供給元へ逆流してしまうことを防ぐことができる。
【0076】
さらに、不活性ガス導入部7には、窒素ライン72と真空破壊弁82とが連通している状態と連通していない状態とに切り替え可能な三方弁81が設けられ、ボイラ本体2内の圧力にかかわらず窒素ライン72と真空破壊弁82とが連通している状態となっているため、速やかにボイラ本体2に窒素ガスを導入可能となる。また、例えば真空破壊弁82が故障したとしても、外気ライン71側へ切り替えることにより、窒素ガス供給元へ蒸気が逆流することを防ぐことができる。
【0077】
また、窒素ライン圧力センサ92により検出される圧力が、窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力に相当するとして定められている一定範囲の上限値よりも高い特定値以上が検出されており、窒素ガスが適切にボイラ本体2へ導入されていないとみなすことができるときに、三方弁81を外気ライン71側へ切り替える変化をさせることで、窒素ガスが窒素ガスの供給元へ逆流してしまうことを防ぐことができる。
【0078】
また、窒素ライン圧力センサ92により検出される圧力が、窒素ライン圧力センサ92を通過する窒素ガスの圧力に相当するとして定められている一定範囲の上限値よりも高い特定値以上が検出されており、窒素ガスが適切にボイラ本体2へ導入されていないとみなすことができるときに、エラーに関する処理を行うことができる。これにより、窒素ガスの供給元へ蒸気が流入することを回避しつつ、安全にボイラ1の運転を行うことができる。
【0079】
また、従来のボイラは窒素を導入するまでに排水ブローなどの工程が多いことから、ボイラの数週間から数年など長期休缶に適した処理となっていた。しかし、本実施例においては、ボイラの運転稼働中であっても、例えば燃焼待機中であってバーナが燃焼していない状態などには、ボイラ本体2の圧力が低下するため、窒素ガスをボイラ本体2内へ導入することが可能となる。そのため、ボイラ本体内の圧力が低下してしまう状況において窒素ガスを導入可能となるため、ボイラの耐久性の向上を図ることができる。
【0080】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例などについて説明する。
【0081】
上記第1の実施形態では、図2を参照して説明したように、三方弁81を外気ライン71側に切り替えた(図2のステップS05)にもかかわらず、実際にボイラ本体2が外気ライン71に連通しておらず窒素ライン72に連通している可能性が高いとみなされるときにボイラ1の燃焼を停止させるなどのエラーに関する処理を行う(ステップS07)ための判定は、窒素ライン圧力センサ92によって検出される圧力が特定値以上となったか否か(ステップS06)によって行われる例について説明した。しかし、これに替えてあるいは加えて、三方弁81にマイクロスイッチを設けることで、三方弁81が外気ライン71側に切り替えられているか否かの判定を行うようにしてもよい。例えば、外気ライン71側に切り替えられているにもかかわらず、マイクロスイッチによって切り替え済であることが検出されていないときには、エラーに関する処理として運転停止あるいは警告を報知することなどにより、運転開始前であればオペレータは運転を取りやめることもできる。
【0082】
上記実施の形態では、ボイラ本体2および窒素ライン72、あるいは、真空破壊弁82および窒素ライン72が、連通している連通状態と連通していない非連通状態となるように変化させることができる連通弁として三方弁81が設けられている例について説明した。しかし、三方弁81に替えてあるいは加えて、外気ライン71と、窒素ライン72との各々に電磁弁(バルブ)が設けられるようにしてもよい。例えば、図2のステップ03、図4のステップS11の窒素ライン72側への切り替えは、窒素ライン72に設けられた弁を開状態とし、外気ライン71に設けられた弁を閉状態とすることで可能となる。また、反対に、図2のステップS05、図4のステップS13の外気ライン71側への切り替えは、窒素ライン72に設けられた弁を閉状態とし、外気ライン71に設けられた弁を開状態とすることで可能となる。なお、ボイラ1の運転中は、いずれの弁も閉状態となるようにしてもよい。これにより、蒸気が不活性ガス導入部7側へ流出してしまい、ボイラ効率が低下してしまうことを防ぐことができる。
【0083】
上記実施の形態では、導入ライン70に、外気ライン71と窒素ライン72とが連通可能である例について説明した。しかしこれに限らず、外気ライン71を設けずに、窒素ラインのみが導入ライン70に接続されている、あるいは、接続可能にされているものであってもよい。この場合、例えば、三方弁81に替えて電磁弁を設け、図1のボイラ本体2および窒素ライン72、あるいは、図3の真空破壊弁82および窒素ライン72が、連通している連通状態と連通していない非連通状態となるように変化させることができる連通弁としてもよい。また、第2の実施形態においては、三方弁81あるいは電磁弁を設けず、不活性ガス導入部7における弁を真空破壊弁82のみとしてもよい。
【0084】
上記実施の形態におけるボイラ1は、水管2bを加熱して蒸気を生成するボイラである例について説明した。しかし、蒸気を生成するボイラであれば水管を加熱しないボイラであってもよく、例えば貫流ボイラ、炉筒煙管ボイラなどであってもよい。
【0085】
上記第1の実施形態では、逆止弁84が設けられていない例について説明したが、これに限らず、逆止弁84が設けられているものであってもよい。これにより、より窒素ガス供給元への蒸気の逆流を防止することができる。
【0086】
上記第1の実施形態では、ボイラ本体2へ窒素ガスを導入(図2のステップS03)後、缶体圧力センサ91によって検出される圧力が所定値以上と判定されたとき(ステップS04 YES)に、制御装置5によって三方弁81を外気ライン71側に切り替える制御(ステップS05)が行われる例について説明した。しかし、制御装置5によって行われるものに限らず、例えば缶体圧力センサ91によって検出される圧力が所定値以上であることでボイラ本体2内が負圧となっていないことなどをアラーム報知などし、当該アラーム報知をオペレータが確認してから、当該オペレータの操作(手動あるいはスイッチなど)によって三方弁81を外気ライン71側に切り替え、およびボイラ1の運転稼働がなされるようにしてもよい。
【0087】
上記の実施形態では、不活性ガス導入部7が、水位検出装置3に連結されている例について説明した。しかしこれに限らず、不活性ガス導入部7は、ボイラ本体2内(具体的には上部ヘッダ2c内)の気相部に連結されているものであればよく、例えば、水位検出装置3を介さずに上部ヘッダ2cと直接連結されているものでもよく、気水分離器20に連結されているものであってもよい。
【0088】
上記第1の実施形態における三方弁81の切り替え(ステップS03、ステップS05)は、ボイラ本体2内の圧力が所定値未満あるいは所定値以上(ステップS02、ステップS04)となっているか否かの判定がされてから所定時間(例えば、5秒、30秒、1分など)経過後になされるものであってもよい。例えば、一時的な運転の停止(あるいは燃焼待機状態)であってすぐに再稼働される場合には窒素ガスを導入する処理を行わずに済む。あるいは、例えば、窒素ガスが十分に封入された状態を維持できているかの安全確認がとれた上での、三方弁81を外気ライン71側に切り替え、または運転を停止させる操作を行うことができる。
【0089】
上記実施の形態では、窒素ガスの供給圧が大気圧以上である例について説明したが、これに限らず大気圧と同じ圧力に設定されるものとしてもよい。その場合、例えば、ボイラの運転を停止している場合には、ステップS04におけるボイラ本体2内の圧力が所定値と同じとなっていれば、ボイラ本体2内に窒素ガスが十分に封入されたものとして、ステップS05における三方弁81を外気ライン71側へ切り替えることが可能となるものとしてもよい。
【0090】
上記実施の形態では、ボイラ本体2は、略円筒状に形成されている例について説明したが、これに限らず角型に形成されているものであってもよい。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 ボイラ
2 ボイラ本体
2a バーナ
2b 水管
2c 上部ヘッダ
2d 下部ヘッダ
2e 空気供給路
20 気水分離器
3 水位検出装置
30 水位制御筒
31 電極棒
31L L棒
31M M棒
31S S棒
4 送風機
5 制御装置
6 給水ライン
61 給水ポンプ
62 給水逆止弁
7 不活性ガス導入部
70 導入ライン
71 外気ライン
72 窒素ライン(不活性ガスライン)
81 三方弁(連通弁)
82 真空破壊弁(開閉弁)
83 減圧弁
84 逆止弁
85 解放弁
91 缶内圧力センサ(本体圧力検出部)
92 窒素ライン圧力センサ(不活性ガスライン圧力検出部)

図1
図2
図3
図4