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特開2024-145417電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法
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  • 特開-電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法 図1
  • 特開-電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法 図2
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  • 特開-電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法 図4
  • 特開-電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法 図5
  • 特開-電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145417
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/18 20150101AFI20241004BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20241004BHJP
   H04B 17/23 20150101ALI20241004BHJP
【FI】
H04B17/18
H04B17/29 300
H04B17/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057750
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】森下 雄太
(57)【要約】
【課題】電子機器のプロテクト装置において、プロテクト動作時に、例えば画面をキャプチャしておくことで、再度、プロテクト動作をさせなくとも、どのような運用状況からプロテクト動作に陥ったか、エラーの原因を容易に判明可能とする。
【解決手段】無線通信機1の負荷状態を検出するセンサ部34と、負荷状態を表示する表示部8と、センサ部の信号を基に異常が検出されたとき機器保護のためにプロテクト動作するプロテクト部9と、プロテクト動作した時に負荷状態のデータを自動記録するメモリ部102と、各部を制御する制御部10と、を備え、制御部10は、プロテクト部9がプロテクト動作した時にメモリ部102に負荷状態のデータを自動記録させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の負荷状態を検出するセンサ部と、
前記電子機器の前記負荷状態を表示する表示部と、
前記センサ部の信号を基に前記負荷状態に異常が検出されたとき前記電子機器保護のためにプロテクト動作するプロテクト部と、
データを記録するメモリ部と、
前記各部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記プロテクト部が前記プロテクト動作した時に、前記メモリ部に前記負荷状態のデータを自動記録させることを特徴とする電子機器のプロテクト装置。
【請求項2】
前記プロテクト動作時に、前記表示部により表示されている画面をキャプチャすることを特徴とする請求項1に記載の電子機器のプロテクト装置。
【請求項3】
前記プロテクト動作は、前記電子機器の前記負荷状態を軽減するための動作をすることを特徴とする請求項2に記載の電子機器のプロテクト装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記プロテクト部が前記プロテクト動作した時に、前記プロテクト部が前記プロテクト動作したことを前記表示部に表示させることを特徴とする請求項3に記載の電子機器のプロテクト装置。
【請求項5】
前記電子機器が無線通信機であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電子機器のプロテクト装置。
【請求項6】
電子機器の負荷状態を検出する検出ステップと、
前記電子機器の前記負荷状態を表示する表示ステップと、
前記検出ステップで前記負荷状態に異常が検出されたとき前記電子機器保護のためにプロテクト動作するプロテクトステップと、
前記プロテクトステップで前記プロテクト動作した時に、前記負荷状態のデータを自動記録させる記録ステップと、を備え、
前記記録ステップで自動記録されたデータを前記表示ステップで表示させることを特徴とする電子機器のプロテクト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のプロテクト装置は、機器運転中の負荷状態や異常を監視し、異常が検出されたとき、機器の故障を回避するために動作を停止させるものである。例えば、特許文献1には、RF出力回路のRF反射電力をRF検波器で検波し、過電力検出器及び低電力検出器によってRF検波器の検波出力が、RF出力回路の正常時の検波出力の上限値より大きくなったこと、又は下限値より小さくなったことを検出し、両検出器の検出出力によりRF出力回路の動作を停止させることが示されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、アンテナ定在波比を表示する機能を有する送信機又は送受信機にあって、送信する周波数毎に、送信部出力側とアンテナとが直接接続状態のSWR(定在波比)、及びアンテナ整合器が接続されて整合した状態のSWRを記録し、記録された周波数毎の2種類のSWRを読み出し、グラフィック表示機能を有する表示部に周波数とSWRを同時表示する装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】公開実用昭53-51116号公報
【特許文献2】特許第3096661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の電子機器において、特に無線通信機などは、多数の計器(周波数、出力、SWR、ALCメータ、パワーアンプの温度など)のパラメータなどを画面表示するように成っている。そして、機器運用中にエラーが発生した場合、機器の負荷状態を軽減するための動作として、出力電力を強制的に制限させたり、送信を停止させたりするプロテクト機能を搭載している。そのプロテクト動作時には、要因別(温度、ALC、パワー、BAND、電源など)に画面にエラー表示をする。
【0006】
しかしながら、プロテクト動作が発生したタイミングで無線通信機の使用者が画面(パラメータ)を見ていなかった場合、エラーの原因究明には、画面を注意深く観察しながら、もう一度プロテクト動作を再現する必要があった。ところが、本来、プロテクト動作は故障を回避するために動作しているのであり、故障するかもしれない要因を含んだまま、機器を動作させるべきではない。また、プロテクト動作時の状況を再現することは難しく、発生要因にたどり着けないことが多い。また、最近の無線通信機では、画面のキャプチャ機能を搭載し、キャプチャした画像をSDカードなどに保存するようにしたものがある。
【0007】
本発明は、上記に着目して成されたものであり、プロテクト動作時に、再度、プロテクト動作をさせなくとも、どのような運用状況からプロテクト動作に陥ったか、エラーの原因を容易に判明可能な、電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電子機器の負荷状態を検出するセンサ部と、
前記電子機器の前記負荷状態を表示する表示部と、
前記センサ部の信号を基に前記負荷状態に異常が検出されたとき前記電子機器保護のためにプロテクト動作するプロテクト部と、
データを記録するメモリ部と、
前記各部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記プロテクト部が前記プロテクト動作した時に、前記メモリ部に前記負荷状態のデータを自動記録させる、電子機器のプロテクト装置である。
【0009】
また、本発明は、電子機器の負荷状態を検出する検出ステップと、
前記電子機器の前記負荷状態を表示する表示ステップと、
前記検出ステップで前記負荷状態に異常が検出されたとき前記電子機器保護のためにプロテクト動作するプロテクトステップと、
前記プロテクトステップで前記プロテクト動作した時に、前記負荷状態のデータを自動記録させる記録ステップと、を備え、
前記記録ステップで自動記録されたデータを前記表示ステップで表示させる電子機器のプロテクト方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機能保護のため自動で発生するプロテクト動作において、プロテクト動作した時の負荷状態のデータを自動記録するので、プロテクト動作時の状況を容易に把握でき、プロテクト動作の要因探求が確実になる。また、ユーザ側で対処すべき事項を把握できることで、プロテクト動作を回避するための運用の手助けが得られる。さらには、プロテクト動作時に、万一、故障が発生した場合でも、故障原因の特定を容易に行え、修理依頼時の情報出しが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るプロテクト装置を搭載した無線通信機の回路図。
図2】(a)は従来の無線通信機のプロテクト動作に係るフローチャート図、(b)は本発明の一実施形態に係る無線通信機のプロテクト動作に係るフローチャート図。
図3】同無線通信機の表示部での表示例を示す図。
図4】同無線通信機の表示部での正常時の表示例を示す図。
図5】同無線通信機の表示部でのプロテクト動作発生直前の表示例を示す図。
図6】同無線通信機の表示部でのプロテクト動作発生後の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る電子機器のプロテクト装置及びプロテクト方法について図面を参照して説明する。図1は、プロテクト装置を搭載した無線通信機1の回路図である。図1において、無線通信機1は、送話器2と、送信回路3と、アンテナ4と、受信回路5と、受話器6と、操作部7と、表示部8と、プロテクト部9と、制御部10と、を備えている。送信回路3は、高周波増幅器31、電力増幅器32、ALC回路33、電力増幅器32の温度などを検出するセンサ部34などを備えている。制御部10は、無線通信機1全体を制御するCPU101、RAMやROMから成るメモリ部102などを備えている。
【0013】
制御部10内のCPU101は、無線通信機1の運用・負荷状態、例えば、送信回路3内の電力増幅器32その他各部の電流・電圧値やセンサ部34からの信号(メータ情報という)を監視して表示部8に表示し、これらの値が異常であるか否かを判断し、異常を検出したとき無線通信機1を保護するためにプロテクト部9をプロテクト動作させる。このプロテクト動作により、例えば送信回路3は電源をオフとし、送信を強制停止する。なお、プロテクト動作には、負荷状態を軽減、すなわち、送信出力を低下して機器を保護することも含まれる。
【0014】
また、CPU101は、プロテクト部9がプロテクト動作する直前の無線通信機1の負荷状態のデータ(メータ情報や画面キャプチャを含む)をメモリ部102に自動記録し、さらに、プロテクト部9がプロテクト動作したことを表示部8に表示させる。画面には、例えば、プロテクト部9がプロテクト動作したことの要因をLED点灯により表示する。
【0015】
CPU101による上記の動作は、メモリ部102のROMに格納したプログラムを読み出すことにより実行処理される。CPU101による電流・電圧値やセンサ部34からの信号を監視することは、請求項で言うセンサ部に含まれる。また、センサ部、表示部8、プロテクト部9、制御部10、メモリ部102は、請求項で言うプロテクト装置を構成する要素となる。
【0016】
(時系列動作説明)
図2(a)は従来の無線通信機のプロテクト動作を、(b)は本発明の一実施形態に係る無線通信機のプロテクト動作を示す。従来の無線通信機の時系列動作は、図2(a)に示すように、送信開始(運用・負荷状態のメータ監視)(S1)、異常検知(S2)、送信停止(S3)とプロテクト動作(S4)、プロテクト状態(S5)となる。
【0017】
それに対し、本実施形態の無線通信機1の時系列動作は、図2(b)に示すように、送信開始(運用・負荷状態のメータ監視)(S11)、異常検知(S12)、プロテクト動作(S13)とデータ保存(S14)、送信停止(S15)、プロテクト状態(S16)となる。プロテクト動作(S13)では、LED点灯、ダイアログ表示する。データ保存(S14)では、各メータ情報の記録、画面キャプチャを行う。各メータ情報の記録及び画面キャプチャ(S14)は、送信停止前もしくは同時に自動動作させる。なお、動作的に、プロテクト動作(S13)と送信停止(S15)とはほぼ同時に処理されるので、フローチャートとして同じタイミングで記載したが、プロテクト動作(S13)及びデータ保存(S14)の後に送信停止(S15)を記載する方が、本発明を理解する上では好ましい。
【0018】
本実施形態による無線通信機1によれば、プロテクト動作時の各メータ情報や画面キャプチャを使ってディスプレイ表示を記録することで、プロテクト動作時の運用状況を確認でき、どのような運用状況からプロテクト動作に陥ったかを探求できるようになる。これにより、その後の運用にてプロテクト動作を回避するためのヒントとすることができ、プロテクト動作時に故障が発生した場合でも修理依頼時の情報出しが容易となる。
【0019】
(表示部の表示例)
無線通信機1は、その表示部8に複数のメータを一括に画面表示でき、これにより、各メータのリアルタイムの状況を確認することができる。表示される各メータは、次の通りである。PO:電力増幅器(パワーアンプ)32の出力、SWR:アンテナ4の整合状態を表すSWR値、ALC:送信時のALC(オートレベルコントロール)回路33の入力レベル、VD:終段電力増幅FETのドレイン電圧、ID:終段電力増幅FETのドレイン電流、TEMP:終段電力増幅FETの温度。
【0020】
図3は、表示部8における各メータ表示例を示す。ここに、無線通信機1が100W出力機である場合、メータ上ではPOを150Wまで表示でき、メータの値が100Wを上回り、送信停止区間(メータの右端の太線区間)の値になった時、無線機の保護のために送信を停止する(プロテクト動作)。
【0021】
図4は、無線通信機1を動作させたときの正常時の各メータ表示例を示す。POのメータの値は約50Wで、送信停止区間を超えていない。図2(b)の送信開始(ステップS11)の状態である。
【0022】
図5は、パワーアンプ出力過大によるプロテクト動作発生直前の各メータ表示例を示す。POの出力が100Wを超え、送信停止区間に達している。そのため、パワーアンプ出力過大による無線通信機1の保護のために、プロテクト動作が動作する条件を満たし、この直後にプロテクト動作が発生し、送信が停止される。図2(b)の異常検知(ステップS12)の状態である。
【0023】
図6は、図5の状態の直後、プロテクト動作により送信が停止され、画面上には、出力過大によってプロテクト動作したことを示すダイアログが表示される。送信停止されているため、POは0Wである。図2(b)のプロテクト動作し、送信停止されている間、あるいは送信出力を強制的に制限されている間がプロテクト状態である。ユーザが図5の状態を確認していなかった場合には、プロテクト動作直前のメータの状況(送信出力過大の状況)を知ることができない。ところが、本発明では、
(1)図5をキャプチャ画像として保存する。
(2)図5の各メータの値をログデータとして保存する。
【0024】
これら(1)のみ、(2)のみ、又は(1)及び(2)の動作を実行した後、出力過大によるプロテクトを示すダイアログ「PROTECT:POWER」を画面上に表示する。これにより、プロテクト動作後でも、ユーザがプロテクト動作直前の各メータの状況を確認することができる。なお、プロテクト動作したことを示すダイアログを表示しないパターンも考えられる。
【0025】
無線通信機1のプロテクト方法は、機器の運用中の異常を検出し(検出ステップ)、負荷状態をメータに表示し(表示ステップ)、負荷状態に異常が検出されたとき機器保護のためにプロテクト動作し(プロテクトステップ)、プロテクト動作する直前の負荷状態のデータを自動記録し(記録ステップ)、プロテクト動作した時に、プロテクト動作したことを表示させる、ことである。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、プロテクト部9を制御部10と送信回路3との間に設けた例を示したが、制御部10と受信回路5との間にも設けてもよい。また、プロテクト動作する直前の電子機器の負荷状態のデータとして、キャプチャ画像、複数のメータのログデータを示したが、これらの一種でも構わない。
【符号の説明】
【0027】
1 無線通信機
2 送話器
3 送信回路
31 高周波増幅器
32 電力増幅器
33 ALC回路
34 センサ部
4 アンテナ
5 受信回路
6 受話器
7 操作部
8 表示部
9 プロテクト部
10 制御部
101 CPU
102 メモリ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6