(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145419
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】車両周辺監視システム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20241004BHJP
【FI】
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057755
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】日角 公紀
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB07
5J084AC02
5J084EA07
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】本開示は、車両周辺におけるセンサの検出範囲を切り替えられる構成とすることで、車両のセキュリティを向上する車両周辺監視システムを提供することを目的とする。
【解決手段】車両周辺監視システム100は、車両1に搭載され、車両1の周辺情報を検出可能な複数の第一センサ20A~20Dを有する第一センサ群20と、第一センサ群20を制御するセンサ制御部11と、を備える。センサ制御部11は少なくとも一つの第一センサの検出方向を変更することで、各々の第一センサ20A~20Dの検出範囲で構成される第一センサ群20の検出範囲を、第一検出モードと、第一検出モードよりも鉛直方向の検出範囲が広く第一検出モードと異なる第二検出モードとに切り替え可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の周辺情報を検出可能な複数の第一センサを有する第一センサ群と、
前記第一センサ群を制御するセンサ制御部と、
を備え、
前記センサ制御部は少なくとも一つの前記第一センサの検出方向を変更することで、各々の前記第一センサの検出範囲で構成される前記第一センサ群の検出範囲を、第一検出モードと、前記第一検出モードよりも鉛直方向の検出範囲が広く前記第一検出モードと異なる第二検出モードとに切り替え可能である、車両周辺監視システム。
【請求項2】
前記車両周辺監視システムは、
前記車両の全周囲情報を検出可能な第二センサを更に備え、
前記センサ制御部は、前記第二センサの検出結果に基づいて前記第一検出モードと前記第二検出モードとを切り替える、請求項1に記載の車両周辺監視システム。
【請求項3】
前記第一センサ群は、カメラ、LiDAR、超音波センサ、およびミリ波センサのうち少なくとも1つ以上から構成される、請求項1に記載の車両周辺監視システム。
【請求項4】
前記第二センサは、アラウンドビューモニタから構成される、請求項2に記載の車両周辺監視システム。
【請求項5】
前記センサ制御部は、前記車両から水平方向に見た場合に、重点的に検出する特定の領域を定め、
前記特定の領域において、前記第二検出モードの検出範囲は前記第一検出モードの検出範囲よりも鉛直方向に広い、請求項1に記載の車両周辺監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両周辺監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカメラ等のセンサによって車両周辺を監視する、車両周辺監視システムが知られている。例えば、下記特許文献1には、車両の周縁部よりも外側にミラーが設けられ、車両の周囲を照射する光源からの光をミラーで反射させて光源の光軸を変更することで、広範囲をカメラで撮像できる車両周辺監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両のセキュリティの観点から、車両周辺の特定の領域を重点的に監視できる車両周辺監視システムが求められている。
【0005】
本開示は、車両周辺におけるセンサの検出範囲を切り替えられる構成とすることで、車両のセキュリティを向上する車両周辺監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両周辺監視システムは、
車両に搭載され、前記車両の周辺情報を検出可能な複数の第一センサを有する第一センサ群と、
前記第一センサ群を制御するセンサ制御部と、
を備え、
前記センサ制御部は少なくとも一つの前記第一センサの検出方向を変更することで、各々の前記第一センサの検出範囲で構成される前記第一センサ群の検出範囲を、第一検出モードと、前記第一検出モードよりも鉛直方向の検出範囲が広く前記第一検出モードと異なる第二検出モードとに切り替え可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両周辺におけるセンサの検出範囲を切り替えられる構成とすることで、車両のセキュリティを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る車両を上から見た平面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムを示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る車両に設けられた第一センサの照射方向が上向きの場合の検出範囲を説明する模式図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る車両に設けられた第一センサの照射方向が下向きの場合の検出範囲を説明する模式図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムの第一検出モードの場合の検出範囲を車体の側面から見た模式図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムの第一検出モードの場合の検出範囲を車体の上から見た模式図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムにおける車両からの離間距離と検出対象の高さの関係を説明するグラフである。
【
図8】本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムの第二検出モードの場合の検出範囲を車体の側面から見た模式図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムの第二検出モードの場合の検出範囲を車体の上から見た模式図である。
【
図10】本開示の第一実施形態に係る車両周辺監視システムの第一センサ群の検出範囲を説明する模式図である。
【
図11】本開示の第二実施形態に係る車両周辺監視システムの第一センサ群の検出範囲を説明する模式図である。
【
図12】本開示の第三実施形態に係る車両周辺監視システムの第一センサ群の検出範囲を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0010】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する場合がある。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。上下方向は、
図1では示されていないが、左右方向及び前後方向に直交する方向である。
【0011】
最初に、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る車両1及び車両周辺監視システム100について以下に説明する。
図1は、車両1を上から見た平面図である。
図2は、車両1の車両周辺監視システム100を示すブロック図である。
【0012】
車両1は、車両周辺監視システム100を備える。
図2に示すように、車両周辺監視システム100は、車両制御部10と、第一センサ群20と、第二センサ30と、GPS(Global Positioning System)40と、無線通信部50と、記憶装置60とを備える。さらに、車両周辺監視システム100は、ステアリングアクチュエータ71と、ステアリング装置72と、ブレーキアクチュエータ73と、ブレーキ装置74と、アクセルアクチュエータ75と、アクセル装置76と、第一センサ群アクチュエータ80とを備える。
【0013】
車両制御部10は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部10は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC(System on a Chip)等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びTPU(Tensor Processing Unit)のうちの少なくとも一つを含む。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を含む。ROMには、車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、車両制御プログラムは、自動運転用の人工知能(AI)プログラムを含んでもよい。AIプログラムは、多層のニューラルネットワークを用いた教師有り又は教師なし機械学習(特に、ディープラーニング)によって構築されたプログラム(学習済みモデル)である。RAMには、車両制御プログラム、車両制御データ及び/又は車両の周辺環境を示す周辺環境情報が一時的に記憶されてもよい。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。
【0014】
また、車両制御部10は、センサ制御部11と、駆動制御部12とを備える。センサ制御部11は、第一センサ群20と、第二センサ30と、GPS40を制御するように構成されている。また、駆動制御部12は、ステアリングアクチュエータ71と、ブレーキアクチュエータ73と、アクセルアクチュエータ75と、第一センサ群アクチュエータ80を駆動制御するように構成されている。
【0015】
第一センサ群20は、前方右第一センサ20Aと、前方左第一センサ20Bと、後方右第一センサ20Cと、後方左第一センサ20Dとから構成される。
図1に示すように、前方右第一センサ20A、前方左第一センサ20B、後方右第一センサ20C、後方左第一センサ20Dは、それぞれ、右前ランプユニット2A内部、左前ランプユニット2B内部、右後ランプユニット2C内部、左後ランプユニット2D内部に配置される。また、前方右第一センサ20A、前方左第一センサ20B、後方右第一センサ20C、後方左第一センサ20Dは、それぞれ、車両1の前方右側の周辺情報、車両1の前方左側の周辺情報、車両1の後方右側の周辺情報、車両1の後方左側の周辺情報を検出可能であり、例えば、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、超音波センサ、またはミリ波センサから構成される。
【0016】
ここで、周辺情報とは、車両1の外部に存在する対象物に関する情報を含んでもよい。例えば、周辺情報は、当該対象物の属性に関する情報と、車両1に対する対象物の距離、方向及び/又は位置に関する情報を含んでもよい。
【0017】
第二センサ30は、
図1に示すように車両1の車体上部に配置される。また、第二センサ30は、車両1の全周囲情報を検出可能であり、例えば、アラウンドビューモニタから構成される。
【0018】
第一センサ群アクチュエータ80は、前方右第一センサアクチュエータ80Aと、前方左第一センサアクチュエータ80Bと、後方右第一センサアクチュエータ80Cと、後方左第一センサアクチュエータ80Dとから構成される。前方右第一センサアクチュエータ80Aと、前方左第一センサアクチュエータ80Bと、後方右第一センサアクチュエータ80Cと、後方左第一センサアクチュエータ80Dは、それぞれ、前方右第一センサ20A、前方左第一センサ20B、後方右第一センサ20C、後方左第一センサ20Dのセンサ光軸を調整するための動力源として機能し、センサの検出方向を上下左右に調整可能である。
【0019】
次に、
図3~9を参照して、本実施形態に係る車両周辺監視システムの第一センサ群20の検出モードについて以下に説明する。
【0020】
図3は、本開示の実施形態に係る車両に設けられた第一センサの照射方向が上向きの場合の検出範囲を説明する模式図である。
図4は、本開示の実施形態に係る車両に設けられた第一センサの照射方向が下向きの場合の検出範囲を説明する模式図である。
【0021】
図3の例示では、前方右第一センサアクチュエータ80Aによって、前方右第一センサ20Aの垂直方向の画角(以下、垂直画角θvともいう)が水平より上向きに設定されていて、あおり角φは正の値となっている。
ここで、垂直画角θvは、センサがカメラやLiDARの場合は光源の垂直方向の広がりを、超音波センサの場合は超音波の垂直方向の広がりを、ミリ波センサの場合はミリ波の垂直方向の広がりを表す。
また、あおり角φは、水平方向を基準とした照射の中心方向Mの角度を表す。照射の中心方向Mが水平方向より上方に延びている場合を、あおり角φが正の値で表す。
【0022】
車両1の前方右側周辺に前方右第一センサ20Aの検出対象である身長Tの人物Hが存在する場合、あおり角φが正の値だと、人物Hの足元を検出するためには、人物Hが前方右第一センサ20Aから水平方向に所定距離L1以上離れている必要がある。つまり、人物Hが前方右第一センサ20Aから水平方向の所定距離L1より近い位置に存在する場合は、前方右第一センサ20Aは人物Hの足元を検出できない恐れがある。
【0023】
図4の例示では、前方右第一センサアクチュエータ80Aによって、前方右第一センサ20Aの垂直画角θvが水平より下向きに設定されていて、あおり角φは負の値となっている。
車両1の前方右側周辺に前方右第一センサ20Aの検出対象である身長Tの人物Hが存在する場合、あおり角φが負の値だと、人物Hの頭部を検出するためには、人物Hが前方右第一センサ20Aから水平方向に所定距離L2以上離れている必要がある。つまり、人物Hが前方右第一センサ20Aから水平方向の所定距離L2より近い位置に存在する場合は、前方右第一センサ20Aは人物Hの頭部を検出できない恐れがある。
【0024】
つまり、1つの第一センサの検出領域からでは、検出対象である物や人物等が車体1から所定距離以内に近づいてきた場合、物や人物等の全体を検出できない恐れがある。
【0025】
そこで、本開示の実施形態に係る車両周辺監視システム100は、各々の第一センサ20A~20Dの検出範囲で構成される第一センサ群20の検出範囲について、第一検出モードと、第一検出モードよりも鉛直方向の検出範囲が広く第一検出モードと異なる第二検出モードとを備える。
【0026】
図5は、本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムの第一検出モードの場合の検出範囲を車体の側面から見た模式図である。
図6は、本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムの第一検出モードの場合の検出範囲を車体の上から見た模式図である。
図8は、本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムの第二検出モードの場合の検出範囲を車体の側面から見た模式図である。
図9は、本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムの第二検出モードの場合の検出範囲を車体の上から見た模式図である。
【0027】
次に、第一検出モードの場合の第一センサ群20の検出範囲について説明する。
図5および
図6に示した第一検出モードは、車両1の水平方向の広い範囲を検出可能なモードである。第一検出モードにおいては、
図5に示したように、第一センサ群20の各々の検出範囲がなるべく重ならないように、あおり角φを共通に設定することで、水平方向に広い範囲を検出する。
例えば、第一検出モードにおいては、各々の第一センサから各々の検出範囲の中心点SAO~SDOまでの距離が所定距離L(例えば100cm)の範囲内において、各々の第一センサ20A~20Dの検出範囲が重複しない。
図5の例示では、第一検出モードにおいて、前方右第一センサ20Aの検出範囲SAと後方右第一センサ20Cの検出範囲SCが、所定距離Lの範囲内において重複していない状態を示す。したがって、第一検出モードにおける第一センサ群20の検出範囲は、水平方向においては広い範囲となるが、垂直方向においては各々の第一センサ20A~20Dの検出範囲であるT1以下に制限される。
【0028】
次に、第二検出モードの場合の第一センサ群20の検出範囲について説明する前に、
図7を用いて車両からの離間距離と検出対象の高さの関係について説明する。
【0029】
図7は、本開示の実施形態に係る車両周辺監視システムにおける車両からの離間距離と検出対象の高さの関係を説明するグラフである。
図7は、縦軸に前方右第一センサ20Aまたは後方右第一センサ20Cのあおり角φを示し、横軸に前方右第一センサ20Aまたは後方右第一センサ20Cから検出対象である人物Hまでの水平方向の距離LHを示す。
【0030】
曲線LAは人物Hの足元が検出範囲に入るか入らないかの境界を示し、曲線LCは人物Hの頭部が検出範囲に入るか入らないかの境界を示す。つまり、曲線LAより下の範囲であれば人物Hの足元が検出範囲に入り、曲線LAより上の範囲であれば人物Hの足元が検出範囲に入らないことを意味する。また、曲線LCより上の範囲であれば人物Hの頭部が検出範囲に入り、曲線LCより下の範囲であれば人物Hの頭部が検出範囲に入らないことを意味する。
【0031】
例えば、前方右第一センサ20A及び後方右第一センサ20Cの水平方向の画角(以下、水平画角θhともいう)は100°、垂直画角は50°であり、前方右第一センサ20A及び後方右第一センサ20Cが配置されている位置の高さは地面から100cmであり、人物Hの身長は177cmとする。また、例えば、人物Hが前方右第一センサ20Aおよび後方右第一センサ20Cから70cmに存在する場合、前方右第一センサ20Aのあおり角φを20°、後方右第一センサ20Cのあおり角φを-26°と設定することで、人物Hの足元から頭部までが検出範囲に入ることになる。
【0032】
このように、人物Hが車両に近寄ってくると、第一センサのあおり角が固定されていては、人物Hの足元に関する情報が欠落してしまったり、人物の頭部に関する情報が欠落してしまう恐れがある。そこで本実施形態の車両周辺監視システム100においては、第一検出モードよりも鉛直方向の検出範囲が拡大された第二検出モードに、第一センサ群を設定することができる。
【0033】
次に、第二検出モードの場合の第一センサ群20の検出範囲について説明する。
図8および
図9に示した第二検出モードは、水平方向の特定の領域について鉛直方向の検出範囲を拡大したモードである。
【0034】
第二検出モードでは、各々の第一センサから各々の検出範囲の中心点SAO~SDOまでの距離が所定距離L(例えば100cm)の範囲内において、各々の第一センサ20A~20Dの検出範囲が部分的に重複する。
図8の例示では、第二検出モードにおいて、前方右第一センサ20Aの検出範囲SAと後方右第一センサ20Cの検出範囲SCが所定距離Lの範囲内において重複している状態を示す。このとき、前方右第一センサ20Aの垂直画角θvが水平より上向きに設定されていて、あおり角φは正の値となっている。また、後方右第一センサ20Cの垂直画角θvが水平より下向きに設定されているため、あおり角φは負の値となっている。ここで、前方右第一センサ20Aの検出範囲SAと後方右第一センサ20Cの検出範囲SCが垂直方向に重複する領域を領域SAC、領域SACの垂直方向の検出範囲をT2とすると、検出範囲T2はT1以上、T1×2以下となる。したがって、第二検出モードにおける第一センサ群20の検出範囲は、第一検出モードと比較して、水平方向においては狭い範囲となるが、垂直方向においては領域SACで広い範囲となる。
【0035】
このため、例えば、第一センサ群20を車両の周囲の水平方向を360°監視するために設定する第一検出モード(
図5参照)、および車両から70cm離れたところにいる身長177cmの人物の全身を検出可能とするために設定する第二検出モード(
図8参照)で動作するように構成できる。このような構成によれば、周囲をくまなく監視する第一検出モードと、特定の領域を重点的に監視する第二検出モードとを切り替えて、第一センサ群20による車両1の周辺の検出範囲を水平方向または垂直方向に拡張することが可能となり、車両のセキュリティを向上することができる。
【0036】
次に、
図10~12を参照して、車両1が停車している場合の本実施形態に係る車両周辺監視システム100の検出モードの決定方法、および第一センサ群20の検出範囲について以下に説明する。以下、車両1の前方向を基準(0°)とした時計回りの角度で、第一センサ群20の各センサの水平画角の中心角θhA~θhDを定義する。
【0037】
図10は、本開示の第一実施形態に係る車両周辺監視システムの第一センサ群の検出範囲を説明する模式図である。なお、センサ制御部11は、第二センサ30を用いて車両1の全周囲情報を検出する。
図10の例示では、車両1の全周囲には検出対象である障害物や人物等が存在しない。そのため、この状況では重点的に監視したい特定の領域が存在しない。そこで、車両周辺監視システム100は、車両1の全周囲には検出対象が存在しないという第二センサ30の検出結果に基づいて、検出モードを第一検出モードに設定する。次に、駆動制御部12は、第一センサ群アクチュエータ80を駆動制御して、第一センサ群20の各センサのセンサ光軸を調整する。具体的には、駆動制御部12は、前方右第一センサ20Aについて、水平画角の中心角θhAを130°、あおり角φを0°に駆動制御する。また、駆動制御部12は、前方左第一センサ20Bついて、水平画角の中心角θhBを40°、あおり角φを0°に駆動制御する。また、駆動制御部12は、後方右第一センサ20Cについて、水平画角の中心角θhCを220°、あおり角φを0°に駆動制御する。また、駆動制御部12は、後方左第一センサ20Dついて、水平画角の中心角θhDを310°、あおり角φを0°に駆動制御する。なお、水平画角の中心角θhA~θhDおよびあおり角φは上記の値に限定されるものではない。
【0038】
車両1の周囲から検出対象である物や人物等が近づいてきた場合、車両制御部10は、第一センサ群20によって物や人物等を検出し、検出結果を
図2に示す記憶装置60に記録してもよい。このとき、車両制御部10は、第一センサ群20によって物や人物等を検出した際の車両1の位置情報をGPS40によって取得し、検出結果と対応付けた状態で記憶装置60に記録してもよい。また、車両制御部10は、検出結果及び/または位置情報を、
図2に示す無線通信部50から外部サーバ等に送信してもよい。このように、車両周辺監視システム100によって、車両1の周囲を広範囲に監視することができる。
【0039】
図11は、本開示の第二実施形態に係る車両周辺監視システムの第一センサ群の検出範囲を説明する模式図である。
図11の例示では、車両1の前方が壁Wで塞がれている。そのため、監視すべき領域は車両1の後方、左方、右方である。この場合、第一検出モードにおいて車両1の後方、左方、右方の領域のみを監視対象とするように第一センサ群を駆動してもよい。
図10において前方を監視対象としていた前方左第一センサ20Bを、他の領域の監視に用いることができるので、監視対象の領域を精度良く検出できる。
【0040】
具体的には、駆動制御部12は、前方右第一センサ20Aについて、水平画角の中心角θhAを130°、あおり角φを10°に駆動制御する。また、駆動制御部12は、前方左第一センサ20Bついて、水平画角の中心角θhBを230°、あおり角φを-10°に駆動制御する。また、駆動制御部12は、後方右第一センサ20Cについて、水平画角の中心角θhCを220°、あおり角φを-10°に駆動制御する。また、駆動制御部12は、後方左第一センサ20Dついて、水平画角の中心角θhDを140°、あおり角φを10°に駆動制御する。このとき、
図9と同様に、後方右第一センサ20Cの検出範囲SCと後方左第一センサ20Dの検出範囲SCは垂直方向に重複し、重複する領域において、垂直方向の検出範囲が拡張される。このように、車両1の前方に障害物が存在する場合、第一センサ群20の監視範囲を狭めて、車両1の後方を重点的に監視することができる。なお、水平画角の中心角θhA~θhDおよびあおり角φは上記の値に限定されるものではない。
【0041】
なお、車両1の前方を除いた周囲から検出対象である物や人物等が近づいてきた場合の車両制御部10の処理内容については、第一実施形態に係る車両周辺監視システム100と同様である。このように、車両周辺監視システム100によって、車両1の周囲を水平方向のみならず垂直方向にも広範囲に監視することができる。
【0042】
図12は、本開示の第三実施形態に係る車両周辺監視システムの第一センサ群の検出範囲を説明する模式図である。
図11の例示では、車両1の後方、左方、右方の3方向が壁で塞がれている。そのため、監視すべき領域は車両1の前方である。この場合、
図11に示すように第一検出モードにおいて車両1の前方の領域のみを監視対象とするように第一センサ群20を駆動してもよい。
具体的には、車両周辺監視システム100は、車両1の右側、左側、および後方に障害物が存在するという第二センサ30の検出結果に基づいて、検出モードを第二検出モードに設定する。また、車両1の右側、左側、および後方を監視する必要がないため、車両周辺監視システム100は後方右第一センサ20Cと後方左第一センサ20Dをオフにする。次に、駆動制御部12は、第一センサ群アクチュエータ80を駆動制御して、第一センサ群20の各センサのセンサ光軸を調整する。具体的には、駆動制御部12は、前方右第一センサ20Aについて、水平画角の中心角θhAを320°、あおり角φを20°に駆動制御する。また、駆動制御部12は、前方左第一センサ20Bついて、水平画角の中心角θhBを40°、あおり角φを-20°に駆動制御する。このとき、
図9と同様に、前方右第一センサ20Aの検出範囲SAと前方左第一センサ20Bの検出範囲SBは水平方向に重複し、重複する領域において、垂直方向の検出範囲が拡張される。このように、車両1の右側、左側、および後方に障害物が存在する場合、第一センサ群20の監視範囲を特定の領域に限定できるため、車両1の前方を重点的に監視することができる。なお、水平画角の中心角θhA、θhBおよびあおり角φは上記の値に限定されるものではない。例えば、前方右第一センサ20Aについてあおり角φを5°に設定し、前方左第一センサ20Bについてあおり角20°に設定してもよい。
【0043】
なお、車両1の前方から検出対象である物や人物等が近づいてきた場合の車両制御部10の処理内容については、第一実施形態に係る車両周辺監視システム100と同様である。このように、車両周辺監視システム100によって、車両1の周囲を水平方向のみならず垂直方向にも広範囲に監視することができる。
【0044】
以上のように、本開示の実施形態に係る車両周辺監視システム100は、車両周辺におけるセンサの検出範囲を切り替えられる構成とすることで、車両のセキュリティを向上することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0046】
1 車両
2A 右前ランプユニット
2B 左前ランプユニット
2C 右後ランプユニット
2D 左後ランプユニット
10 車両制御部
11 センサ制御部
12 駆動制御部
20 第一センサ群
20A 前方右第一センサ
20B 前方左第一センサ
20C 後方右第一センサ
20D 後方左第一センサ
30 第二センサ
40 GPS
50 無線通信部
60 記憶装置
71 ステアリングアクチュエータ
72 ステアリング装置
73 ブレーキアクチュエータ
74 ブレーキ装置
75 アクセルアクチュエータ
76 アクセル装置
80 第一センサ群アクチュエータ
80A 前方右第一センサアクチュエータ
80B 前方左第一センサアクチュエータ
80C 後方右第一センサアクチュエータ
80D 後方左第一センサアクチュエータ
100 車両周辺監視システム