(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145421
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】放熱器の構造及び放熱器の組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20241004BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057759
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】難波 正憲
(72)【発明者】
【氏名】杉本 展章
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA02
5E322AA11
5E322AB01
5E322AB02
5E322FA04
5F136BC03
5F136DA27
5F136EA13
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】放熱器の構造及び放熱器の組み立て方法であって、発熱部品の大きさによる制約を受けることなく、熱伝導の良い銅でなる放熱部材を必要に応じて大きくでき、しかも発熱部品と放熱部材との間の熱伝導を高めることができ、十分な放熱性能を得る。
【解決手段】放熱器1は、発熱部品4と、発熱部品4に接合されるヒートスプレッダとしての銅板5と、発熱部品4の端子41がはんだ付け72される回路基板3と、銅板5に接触されるヒートシンク6と、を備え、銅板5は、発熱部品4と接触する面の面積が発熱部品4の銅板5に接触する面の面積よりも大きく、銅板5は発熱部品4とヒートシンク6との間に介在させ、発熱部品4は銅板5にはんだ付け71により接合されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品と、
前記発熱部品に接合されるヒートスプレッダと、
前記発熱部品の端子がはんだ付けされる回路基板と、
前記ヒートスプレッダに接触されるヒートシンクと、を備え、
前記ヒートスプレッダは、前記発熱部品と接触する面の面積が前記発熱部品の前記ヒートスプレッダに接触する面の面積よりも大きく、
前記ヒートスプレッダは前記発熱部品と前記ヒートシンクとの間に介在させ、
前記発熱部品は前記ヒートスプレッダにはんだ付けにより接合されていることを特徴とする放熱器の構造。
【請求項2】
前記発熱部品の周辺の前記回路基板は、左右に分割され、
左右に分割された前記回路基板の各々は、前記発熱部品の端子と前記銅板との間に差し込まれ組み立てられていることを特徴とする請求項1記載の放熱器の構造。
【請求項3】
前記銅板の前記発熱部品がはんだ付けされる面に、前記発熱部品の外形形状に沿ったはんだ対応の溝が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放熱器の構造。
【請求項4】
前記ヒートスプレッダは、銅板から成ることを特徴とする請求項3に記載の放熱器の構造。
【請求項5】
発熱部品と、
前記発熱部品に接合されるヒートスプレッダと、
前記発熱部品の端子がはんだ付けされる回路基板と、
前記ヒートスプレッダに接触されるヒートシンクと、を備えた放熱器の組み立て方法であって、
前記ヒートスプレッダは、前記発熱部品と接触する面の面積が前記発熱部品の前記ヒートスプレッダに接触する面の面積よりも大きいものを用い、
前記発熱部品を前記ヒートスプレッダにはんだ付けし、
その後、前記発熱部品がはんだ付けされた前記ヒートスプレッダを前記ヒートシンクに固定し、
その後、前記回路基板を前記ヒートスプレッダと前記発熱部品の端子との間に差し込んで、前記回路基板に前記発熱部品の端子をはんだ付けにより接合することを特徴とする放熱器の組み立て方法。
【請求項6】
前記発熱部品の周辺の前記回路基板は左右に分割されており、前記回路基板の各々を前記ヒートスプレッダと前記発熱部品の左右の端子との間に差し込んで組み立てることを特徴とする請求項5に記載の放熱器の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器のパワーモジュールなどの発熱部品を冷却(放熱)するため放熱器の構造及び放熱器の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放熱器は、発熱部品の熱を熱伝導、熱伝達(対流)、熱放射(輻射)の現象を利用して放熱させる。その放熱性能を向上させるためには、(1)放熱器の放熱部材に熱伝導率の良い金属(銅など)を使用すること、(2)放熱器の表面積、体積を大きくすること、(3)発熱部品と放熱器との接触部分の熱抵抗を低くすること、が挙げられる。
【0003】
発熱部品と放熱器との接触部分の熱抵抗を低くするために、放熱器の発熱部品取り付け面に熱伝導グリスを塗布することも知られている。また、放熱部材として一般的にコスト、重量増を考慮してアルミを使用することが多いが、放熱が足りない場合は、必要最小限で熱伝導の良い銅を使用する。
【0004】
従来の放熱器の構造として、発熱部品を回路基板に仮付けし、発熱部品の放熱器(本願明細書におけるヒートスプレッダに対応する)にアルミのヒートシンクを取り付け(本願明細書では、ヒートスプレッダ、ヒートシンクを組み合わせた物を放熱器と称し、それぞれの区別の必要がない場合は放熱部品と称する)、発熱部品の端子を回路基板にはんだ付けするものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、放熱部品の放熱部材として、コスト対策や重量軽減のため、熱伝導の良い銅の使用は、必要最小限としつつ、十分な放熱性能が得られるような大きさとすることが望まれる。上記特許文献1に示される構造においては、ヒートスプレッダを回路基板の切欠き穴に通す構成であるので、放熱性能を高めるためにヒートスプレッダの表面積、体積を大きくしたくても、ヒートスプレッダの平面視での大きさが発熱部品と同等(または発熱部品より僅かに大きい)程度が限度と成り、また、放熱性能を高めるために発熱部品と放熱器との間の熱伝導を高める工夫は成されていない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みと成されたものであり、発熱部品の大きさによる制約を受けることなく、熱伝導の良い放熱部材である銅から成るヒートスプレッダ(銅板)の体積・表面積を必要に応じて大きくでき、しかも発熱部品と放熱器との間の熱伝導を高めることができ、十分な放熱性能を得ることができる放熱器の構造及び放熱器の組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発熱部品と、前記発熱部品に接合されるヒートスプレッダと、前記発熱部品の端子がはんだ付けされる回路基板と、前記ヒートスプレッダに接触されるヒートシンクと、を備え、前記ヒートスプレッダは、前記発熱部品と接触する面の面積が前記発熱部品の前記ヒートスプレッダに接触する面の面積よりも大きく、前記ヒートスプレッダは前記発熱部品と前記ヒートシンクとの間に介在させ、前記発熱部品は前記ヒートスプレッダにはんだ付けにより接合されている放熱器の構造である。
【0009】
また、本発明は、発熱部品と、前記発熱部品に接合されるヒートスプレッダと、前記発熱部品の端子がはんだ付けされる回路基板と、前記ヒートスプレッダに接触されるヒートシンクと、を備えた放熱器の組み立て方法であって、前記ヒートスプレッダは、前記発熱部品と接触する面の面積が前記発熱部品の前記ヒートスプレッダに接触する面の面積よりも大きいものを用い、前記発熱部品を前記ヒートスプレッダにはんだ付けし、その後、前記発熱部品がはんだ付けされた前記ヒートスプレッダを前記ヒートシンクに固定し、その後、前記回路基板を前記ヒートスプレッダと前記発熱部品の端子との間に差し込んで、前記回路基板に前記発熱部品の端子をはんだ付けにより接合する放熱器の組み立て方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発熱部品とヒートスプレッダとをはんだ付けにより接合させるので、熱伝導グリスよりも熱伝導率が良く、接触面の隙間も無くすることができ、接触部分の熱抵抗を低くすることができる。また、発熱部品と接触する面の面積が発熱部品のヒートスプレッダに接触する面の面積よりも大きいヒートスプレッダを、発熱部品とヒートシンクの間に介在させたので、発熱部品の熱を周りに拡散させてヒートシンクに効率良く伝達させ、放熱効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放熱器を搭載した通信機器の外観図。
【
図4】同放熱器において回路基板組み付け前の状態の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る放熱器の構造及び放熱器の組み立て方法について図面を参照して説明する。
図1は、放熱器1を搭載した通信機器の外観を示す。
図1において、放熱器1は、通信機器2の外装ケース内に設けられている。放熱器1は、回路基板3に搭載された発熱部品4(後述)から発生する熱を放熱するもので、ヒートスプレッダとしての銅板5(後述)及びアルミのヒートシンク6を備えている。ヒートシンク6は、熱放散のため回路基板3の上方に銅板5を介在して配置されている。
【0013】
図2は、発熱部品4側を上向きにした状態の放熱器1を示す。
図2において、放熱器1は、発熱部品4と、発熱部品4の熱を放散するためのヒートスプレッダである銅板5と、発熱部品4を含む複数の部品が搭載される回路基板3と、アルミのヒートシンク6と、を備えている。銅板5は、発熱部品4よりも上方からの平面視での面積が大きく、換言すると、銅板5は、発熱部品4と接触する面の面積が発熱部品4の銅板5に接触する面の面積よりも大きい。ここに、発熱部品4と接触する面とは、接触する箇所を含めた面全体を言う。また、銅板5は、発熱部品4とヒートシンク6との間に介在させている。発熱部品4は、その底面が銅板5の平面にはんだ付けされ、接合させている。銅板5は、ヒートシンク6の底面(図示では上面)に設けた凹部61に接触固定されている。回路基板3は、ヒートシンク6に設けた複数の支柱62に支持され、ビス63により締結されている。
【0014】
回路基板3は、本実施形態では、発熱部品4の周辺の左右に(発熱部品4を挟んで)分割されており、左右に分割された回路基板3の各々が、銅板5にはんだ付けされた発熱部品4の端子41と銅板5との間に差し込まれ組み立てられる。発熱部品4は、その左右両側にある端子41が回路基板3の配線パターンにはんだ付けされる。
【0015】
図3は、放熱器1の概略断面構成を示す。発熱部品4は、その底面が銅板5の上面(図面上)にはんだ付け71され、銅板5は、その底面(図面上)がヒートシンク6の上面(図面上)に固定され、回路基板3は、発熱部品4の端子41と銅板5との間に差し込まれ、発熱部品4の端子41が回路基板3にはんだ付け72される。
【0016】
図4は、回路基板3組み付け前の放熱器1を分解して示す。銅板5の発熱部品4がはんだ付けされる平面には、発熱部品4の外形形状に沿ったはんだ対応の溝51が設けられている。発熱部品4は、溝51で囲まれた内周側の平面にはんだ付け固定される。溝51は、銅板5へ発熱部品4を取り付けの際の位置決めにもなる。銅板5は、酸化し易く、酸化するとはんだ付け性が悪くなるので、耐食性に優れたC1100と防錆紙などを使用することが望ましい。ヒートシンク6の凹部61内の面には、溝状の凹凸が設けられ、ここに熱伝導グリスを塗布して、銅板5が固定されたとき接触固定を高めるようにしている。銅板5は、ヒートシンク6にビス止めされる。
【0017】
図5は、放熱器1の組み立て途上であって、一方(図面で左側)の回路基板3を発熱部品4の端子41と銅板5との間に差し込んだ状態を示す。発熱部品4は、平面視で左右側面に端子41を、平面視で上下側面に取付金具42を備えている。発熱部品4は、その底面が銅板5にはんだ付け固定される。
【0018】
ここに、発熱部品4を銅板5にはんだ付けした後に、回路基板3を組み立てることができるように、回路基板3を分割し、それらを発熱部品4の端子41と銅板5の間に差し込んで組み立てる。そのため、左側の回路基板3は、発熱部品4の左側の複数の端子41に対応した回路パターンを有しており、発熱部品4は、その端子41が回路基板3の回路パターンにはんだ付け接続される。右側の回路基板3も同様に形成されている。
【0019】
図6は、放熱器1の組み立て手順(組み立て方法)を示す。手順としては、発熱部品4を銅板5にはんだ付けし(S1)、その後、発熱部品4がはんだ付けされた銅板5をヒートシンク6に固定する(S2)。その後、回路基板3を銅板5と発熱部品4の端子41との間に差し込んで(S3)、回路基板3に発熱部品4の端子41をはんだ付けする(S4)。ここに、発熱部品4の周辺の回路基板3は左右に分割されている構成の場合は、回路基板3の各々を銅板5と発熱部品4の左右の端子41との間に差し込んで組み立てる。
【0020】
上述した本実施形態の放熱器1の構造または組み立て方法によれば、熱伝導の良いヒートスプレッダとしての銅板5は、発熱部品4の大きさによる制約を受けることがなく、必要に応じて大きくでき、しかも発熱部品4との熱伝導を高めることができ、高い放熱性能を得ることができる。また、発熱部品4と銅板5とをはんだ付けにより接合させるので、熱伝導グリスよりも熱伝導率が良く、接触面の隙間も無くすることができ、熱抵抗を低くすることができる。また、発熱部品4よりも表面積が大きい銅板5を発熱部品4とヒートシンク6の間に介在させているので、発熱部品4の熱を周りに拡散させてヒートシンク6に効率良く伝達させることができる。
【0021】
従来一般の発熱部品の取り付け構造においては、回路基板に発熱部品の外形形状の穴を開けておき、ヒートシンクに銅板と回路基板を取り付けた後に、穴を通してグリスを銅板に塗布して発熱部品を回路基板に取り付け、発熱部品の端子を回路基板にはんだ付けする。このように回路基板に発熱部品を取り付けた後は、発熱部品の銅板へのはんだ付けは、リフローの熱が回路基板に悪影響を及ぼすので、使用できない。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、左右に分割された回路基板3を用いたが、回路基板3は、分割形状に限られず、例えば、U字状の切り欠きを形成して、その切り欠きを用いて回路基板3を発熱部品4の端子41と銅板5との間に差し込むようにしてもよい。このU字状の切り欠きは、発熱部品4の端子41のある左右方向幅と同等の幅を持ち、左右方向と直交する方向に発熱部品4の長さ以上の長さを持つものとすればよい。また、本実施形態及び請求項に記載した「接触」は、直接的に接している形態でも間接的に接している形態でも構わない。
【符号の説明】
【0023】
1 放熱器
2 通信機器
3 回路基板
4 発熱部品
41 端子
42 取付金具
5 ヒートスプレッダである銅板
51 溝
6 ヒートシンク
61 凹部
62 支柱
63 ビス
71 はんだ付け
72 はんだ付け