(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145422
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】運転整理支援システム、運転整理支援装置及び運転整理支援方法
(51)【国際特許分類】
B61L 27/60 20220101AFI20241004BHJP
B61L 27/12 20220101ALI20241004BHJP
【FI】
B61L27/60
B61L27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057760
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 拓希
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ01
5H161JJ32
5H161JJ36
(57)【要約】
【課題】運転整理内容の入力を自動化し、指令員の運転整理の入力作業を軽減できる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の運転整理支援システムは、運転整理支援装置、中央処理装置及び路線設備を備えている。前記運転整理支援装置は、前記中央処理装置に接続され、運行指令部、運転整理予測入力部、運転整理入力データベース及びユーザーインターフェースを含む。
運行指令部は、運転整理予測入力部に運転整理の予測値を作成させ、前記ユーザーインターフェースに前記運転整理の予測値を表示させる。ユーザーインターフェースにおいて前記運転整理の予測値が承認された場合には、前記承認された運転整理の予測値を前記中央処理装置に送信し、運転整理が実行される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転整理支援装置、中央処理装置及び路線設備を備える運転整理支援システムであって、
前記運転整理支援装置は、前記中央処理装置に接続され、運行指令部、運転整理予測入力部、運転整理入力データベース及びユーザーインターフェースを含み、
前記運転整理入力データベースは、過去の運転整理内容及び前記過去の運転整理内容に関する列車運行状況を記憶し、
運行指令部は、
前記中央処理装置から実績ダイヤ、計画ダイヤ及び列車運行状況を受信し、
前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を作成させ、
前記運転整理予測入力部は、前記列車運行状況、計画ダイヤ及び前記運転整理入力データベースを照合して、前記運転整理の予測値を作成し、
前記ユーザーインターフェースは、前記運転整理予測入力部が予測した前記運転整理の予測値を表示する、
前記運行指令部は、前記ユーザーインターフェースにおいて前記運転整理の予測値が承認された場合には、前記承認された運転整理の予測値を前記中央処理装置に送信する
運転整理支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運転整理支援システムであって、
前記ユーザーインターフェースは、前記運転整理の予測値を変更することができ、
前記ユーザーインターフェースにおいて前記運転整理の予測値が承認されず、変更された場合には、前記運行指令部は、変更された予測値以外の予測値について、前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を再び作成させ、前記再び作成した予測値を前記ユーザーインターフェースに前記運転整理の予測値を表示する
運転整理支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の運転整理支援システムであって、
前記運転整理支援装置は、入力履歴学習部を含み
前記入力履歴学習部は、前記過去の運転整理内容を学習データとして機械学習した学習結果を生成し、前記承認された運転整理内容及び生成した前記学習結果を追加情報として前記運転整理入力データベースに記憶させ、
前記中央処理装置は、前記計画ダイヤを記憶するとともに、前記路線設備から現場情報を受信して、前記列車運行状況と前記実績ダイヤとを作成し、前記運転整理支援装置に、前記計画ダイヤと、前記実績ダイヤと、前記列車運行状況を送信し、
前記承認された運転整理の予測値を受信した場合には、前記計画ダイヤを変更するとともに、前記路線設備に対して進路要求を発信し、
前記路線設備は、現場情報を発信し、進路要求を受信する
運転整理支援システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の運転整理支援システムであって、
前記運行指令部は、一定周期ごとに前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を作成させ、
前記運転整理予測入力部が作成した予測値の精度・適正性が一定以上である場合に、前記ユーザーインターフェースに前記予測値を表示する
運転整理支援システム。
【請求項5】
中央処理装置に接続され、運行指令部、運転整理予測入力部、運転整理入力データベース及びユーザーインターフェースを含む運転整理支援装置であって、
前記運転整理入力データベースは、過去の運転整理内容及び前記過去の運転整理内容に関する列車運行状況を記憶し、
前記運行指令部は、
前記中央処理装置から実績ダイヤ、計画ダイヤ及び列車運行状況を受信し、
前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を作成させ、
前記ユーザーインターフェースに前記運転整理の予測値を表示し、
前記ユーザーインターフェースにおいて前記運転整理の予測値が承認された場合には、前記承認された運転整理の予測値を前記中央処理装置に送信し、
前記運転整理予測入力部は、前記列車運行状況、計画ダイヤ及び前記運転整理入力データベースを照合して、前記運転整理の予測値を予測し、
前記ユーザーインターフェースは、前記運転整理予測入力部が予測した前記運転整理の予測値を表示する、
運転整理支援装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の運転整理支援システムにおいて、
運転整理予測入力部が、列車運行状況、計画ダイヤ及び運転整理入力データベースを照合して、運転整理の予測値を予測する第1の工程、
ユーザーインターフェースに前記運転整理の予測値を表示する第2の工程、
前記ユーザーインターフェースにおいて、前記運転整理の予測値が承認されず、変更された場合には、変更された予測値以外の予測値について、前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を再び作成させ、前記再び作成した予測値を前記ユーザーインターフェースに前記運転整理の予測値を表示する第3の工程
前記ユーザーインターフェースにおいて、前記運転整理の予測値が承認された場合には、前記運転整理の予測値を運転整理内容が確定されたものとして中央処理装置へ送信する第4の工程、
運転整理内容が中央処理装置へ送信された場合には、前記中央処理装置は、前記計画ダイヤを変更するとともに、前記路線設備に対して進路要求を発信する第5の工程を含む運転整理の予測値を表示する、
運転整理支援方法。
【請求項7】
請求項6に記載の運転整理支援方法において、
前記第3の工程は、前記運転整理の予測値の承認の有無にかかわらず、一定周期で行われ、その際に、再び作成した予測値の精度・適正性が一定以上でない場合には、前記ユーザーインターフェースに表示されていた予測値は変更しないこととする
運転整理支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運転整理支援システム、運転整理支援装置及び運転整理支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車運行状況が計画ダイヤから乱れた場合には、指令員が運転整理システムへダイヤの変更内容を手動で入力することで、乱れた運行状況を正常に戻すための運転整理を行っていた。このような場合、運転整理システムに必須となる内容をすべて手入力する必要があり、入力完了までに時間を要し、運転整理をリアルタイムで行うことができなかった。
また、運転整理システムへ入力を行う際に、ヒューマンエラーによる入力ミスや指令員の経験不足などにより、常に最適な運転整理が行うことが難しい場合もあった。
【0003】
これらの課題に対応するため、例えば、特許文献1では、「駅の実態情報を収集し、運転整理に必要な情報を受け付けて処理する本部コンピュータ12と、それに実態情報を送信する駅処理装置13と、計画ダイヤ8及び実績ダイヤ9に基づく運転整理入力を受け付けて本部コンピュータ12へ送信する運行管理指令端末2と、を備えた。運行管理指令端末2は、運転整理入力内容及びそれらの件数を記憶可能な運転整理入力項目データベース3と、それに追加情報を記憶させる入力履歴学習部6と、それと協働して新たに入力された運転整理入力内容が過去に入力された件数に基づいて正誤を判断する正誤判断部5と、正しいと判断された運転整理修正案を探索・提案する運転整理修正部7と、全体を統括する運行管理指令部4と、を備えた」技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、「運転整理案を作成するとともに、運行支障情報と列車の位置情報とから運転整理をする順番に関する優先度を設定し、この優先度に基づき実行待ちの運転整理に対して、運転整理を実行する」技術が開示されている。
【0005】
さらに、例えば、特許文献3では、「ダイヤ乱れ時に指令員が運転整理装置2に入力した内容(制御予定)を、当該内容を受けた運行管理装置3による信号設備4の制御結果としての列車の運行状況を待つことなく、予測シミュレーション機能に取り込むことにより、予測シミュレーションの精度向上及び運転整理提案13の早期提案を図ることができる。また、運転整理装置2が提示する運転整理提案15に対し、指令員が承認17、不承認22した履歴に基づいて、運転整理提案15の提示順序と複数の運転整理提案内の主案の選択とを自動調整することにより、実際の運用に即した運転整理提案の提示を行うことができる」技術が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献4では、「本実施形態による列車運転制御装置は、列車が運行計画から遅延したときに、該列車の遅延時間を算出する運行監視部を備える。記憶部は、複数の走行区間のうち遅延時間を回復するために運行計画における走行時間を短縮する回復走行区間を決定する遅延回復ルールを格納する。着発時刻修正部は、列車が遅延したときに、遅延回復ルールに従って回復走行区間における走行時間を修正して運行計画の目標着発時刻を再計画する。この目標着発時刻に対して運転曲線をリアルタイムで作成する」技術が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献5では、「乗務員運用指令システム10および列車ダイヤ指令システム20を備え、乗務員運用指令システム10は、乗務員運用情報を記憶した乗務員運用情報記憶部3と、列車ダイヤ変更案により乗務員運用情報に発生する警報を抽出する警報抽出部4と、警報を解消するための乗務員運用情報および乗務員運用情報を評価した評価情報を乗務員運用情報変更案・評価情報として複数作成する提案評価部7と、乗務員運用情報変更案・評価情報等を表示する乗務員支援情報表示部6と、1つの乗務員運用情報変更案・評価情報が選択された場合に乗務員運用情報変更案の内容を置き換える提案実行部9と、を備え、提案評価部7は、複数の乗務員運用情報変更案・評価情報を一覧表形式で同時に乗務員支援情報表示部6に表示する」技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-078989号公報
【特許文献2】特開2011-173530号公報
【特許文献3】特開2008-222004号公報
【特許文献4】特開2018-007402号公報
【特許文献5】特開2013-035502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載された発明では、指令員が入力した運転整理内容について、正誤の判定は行うものの、運転整理内容自体は、指令員が入力することを前提としている。
また、特許文献2~5に記載された発明でも、遅延を回復する運転整理案は提示するものの、運転整理の内容の入力は、やはり、指令員が入力することを前提としている。このため、いずれの先行技術においても指令員が運転整理の内容を入力することを前提としており、運転整理の入力作業を軽減できるものではない。
【0010】
そこで、本発明では、運転整理内容の入力を自動化し、指令員の運転整理の入力作業を軽減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の運転整理支援システムの一つは、列車運行と運転整理を支援する運転整理支援システムであって、駅の実態情報および指令員から入力された運転整理に関する情報である運転整理情報に基づき、列車運行状況に応じて列車の進路を制御する制御要求を処理する中央処理装置と、現場設備に基づく前記運転整理情報を前記中央処理装置に送信し、前記中央処理装置にから前記列車運行状況に基づく前記制御要求を受信する駅処理装置と、列車運行計画と前記列車運行状況を比較可能に表示し、入力した運転整理入力内容を前記中央処理装置へ送信する運転整理支援装置と、を備え、運行管理指令端末は、前記運転整理入力内容を入力する運転整理ダイヤログボックスを表示する表示部と、前記運転整理入力内容及び前記運転整理入力内容の入力時の前記列車運行状況を記憶する運転整理入力データベースと、前記運転整理入力データベースに追加情報を記憶させる入力履歴学習部と、前記列車運行計画と前記列車運行状況を前記運転整理入力データベースと照合して、前記運転整理入力内容を予測し、前記運転整理ダイヤログボックスに自動で入力する運転整理予測入力部を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運転整理内容の入力を自動化し、指令員の運転整理の入力作業を軽減できる技術を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態における運転整理支援システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における運転整理項目と自動入力された結果の例を示す図である。
【
図3】
図3は、運転整理予測入力部が行う自動入力処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、入力履歴学習部が行う学習処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態における運転整理予測入力部が行う自動入力処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、本開示において様々な要素又は構成要素を説明するのに用いられる場合があるが、これらの要素又は構成要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるであろう。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素と区別するためにのみ用いられる。従って、以下で論述する第1の要素又は構成要素は、本発明概念の教示から逸脱することなく第2の要素又は構成要素と呼ぶこともできる。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0015】
なお、本開示において、「運転整理情報」とは、指令員から入力された運転整理に関する情報である。
また、「計画ダイヤ」とは、予め計画した列車の運行計画・スケジュールであり、「実績ダイヤ」とは、実際に列車が走行した列車運行ダイヤである。
さらに、列車運行状況とは、列車の在線状況及び計画ダイヤと比較した場合の遅延状況である。
また、「路線設備」とは、駅処理装置及び現場設備を含むものであり、現場情報を発信し、進路要求を受信する設備および装置をいう。
【0016】
[第1実施形態]
まず、
図1を参照して、第1実施形態の運転整理支援システム1について説明する。
図1は、第1実施形態における運転整理支援システム1の構成例を示す図である。
運転整理支援システム1は、列車の在線状況が計画ダイヤ12に基づいて運行されるように、運転整理を行う際の支援システムである。
運転整理支援システム1は、主に、運転整理支援装置2と、中央処理装置3と、駅処理装置4と、現場設備6を含む。運転整理支援装置2は、運転整理支援システム1を操作するための端末であり、ユーザーインターフェース5が付属している。
【0017】
<中央処理装置>
中央処理装置3は、計画ダイヤ12を記憶しており、駅処理装置4から現場情報を受信して、列車運行状況13と実績ダイヤ11とを作成することができる。
また、中央処理装置3は、計画ダイヤ12、実績ダイヤ11と列車運行状況13を運転整理支援装置2に送信することができる。
さらに、中央処理装置3は、運転整理支援装置2から受信した運転整理内容に基づいて計画ダイヤ12を変更する。そして、中央処理装置3は、変更した計画ダイヤ12に基づいて、列車の進路を制御する進路要求を作成し、駅処理装置4に送信することができる。
【0018】
<駅処理装置>
駅処理装置4は、軌道回路、信号機、転てつ機などの現場設備6から現場情報を受け取り、中央処理装置3へ送信する。また、中央処理装置3から進路要求を受信した場合には、現場設備6に進路要求を送信する。
【0019】
<現場設備>
現場設備6は、駅処理装置4に現場情報を送信する。また、駅処理装置4から進路要求を受信した場合には、現場設備6が進路構成可能であるか否かを判断し、可能であると判断すると進路要求に応じた進路が構成される。
【0020】
<運転整理支援装置>
運転整理支援装置2は、運転整理支援システム1を操作する端末であり、中央処理装置3と接続されている。運転整理支援装置2は、運行指令部14、入力履歴学習部18、運転整理入力データベース16、運転整理予測入力部17及びユーザーインターフェース5を主に含む。
また、運転整理支援装置2は、中央処理装置3から受信した計画ダイヤ12及び列車運行状況13を比較可能な形態でユーザーインターフェース5に表示することができる。
【0021】
(運行指令部)
運行指令部14は、ユーザーインターフェース5からの運転整理の信号を受けると、中央処理装置3から受信した計画ダイヤ12、実績ダイヤ11及び列車運行状況13をユーザーインターフェース5に表示することができる。
なお、ユーザーインターフェース5からの運転整理の信号は、ユーザーインターフェース5の運転整理ダイヤログボックス15が開かれた際に自動的に発信されるものとすることができる。すなわち、指令員が前記運転整理ダイヤログボックス15を開くと、以下に記載する運転整理の予測値の作成及び運転整理ダイヤログボックス15へ予測値を表示するための動作が開始することとしてもよい。
【0022】
そして、運転整理予測入力部17に対して運転整理の予測値作成の指令(コール)を発信し、運転整理予測入力部17から運転整理の予測値を入力データ(1次データ)として受信し、これをユーザーインターフェース5に表示することができる。
ユーザーインターフェース5において、1次データが承認された場合には、運転整理内容が確定されたものとして、運行指令部14は、確定した運転整理内容(1次データ)を中央処理装置3へ送信することができる。
【0023】
また、ユーザーインターフェース5が1次データを承認せず、1次データを変更した2次データを受信した場合には、2次データを記憶する。そして、2次データを運転整理予測入力部17に送信し、2次データにおいて、1次データから変更されていない項目について、再度予測値を作成させ、その結果を運転整理予測入力部17から3次データとして受信し、3次データをユーザーインターフェース5に表示することができる。
ユーザーインターフェース5において、3次データが承認された場合には、運転整理内容が確定されたものとして、運行指令部14は、確定した運転整理内容を中央処理装置3へ送信することができる。
もし、3次データが承認されず、3次データが変更された4次データがユーザーインターフェース5から返信された場合には、上述の2次データの場合と同様、変更された以外の項目について、運転整理予測入力部17において再度予測値を作成させ、運転整理内容が承認されるまで同様の処理を繰り返すことができる。
【0024】
なお、運転整理の予測値作成と予測値のユーザーインターフェース5への表示は、運行指令部14を介して行ってもよいし、運転整理予測入力部17とユーザーインターフェース5の間で直接データの送受信を行ってもよい。
また、運転整理予測入力部17における予測値の作成のタイミングは、ユーザーインターフェース5における予測値の入力項目のパラメータが変更されるごとに行われてもよいし、一定時間ごとに周期的に行われてもよいし、これらのタイミングを組み合わせて行われることとしてもよい。
【0025】
(運転整理入力データベース)
運転整理入力データベース16は、過去に入力された運転整理の内容及び当該運転整理内容の入力時の列車運行状況13を記憶するデータベースである。
【0026】
(入力履歴学習部)
入力履歴学習部18は、運転整理入力データベース16に蓄積されたデータ、運転整理入力内容、入力時の列車運行状況13及び計画ダイヤ12を比較し学習を行い、学習結果を運転整理入力データベース16に蓄積する機能部である。
入力履歴学習部18は、新たな運転整理データが確定すると、これを追加情報として運転整理入力データベース16に記憶させることができる。
ここで、追加情報とは、運行指令部14が確定した運転整理内容、および、運行指令部14が確定した運転整理内容を学習データとして機械学習した学習結果である。
また、入力履歴学習部18は、学習結果を取得するにあたり、運行指令部14が確定した運転整理内容に加えて、運転整理入力データベース16に記憶されたデータと、列車運行状況13と、計画ダイヤ12を学習データとして加えてもよい。
さらに、入力履歴学習部18は、機械学習以外の方法、例えば、統計分析で運行指令部14が確定した運転整理内容等を解析してもよい。
【0027】
(運転整理予測入力部)
運転整理予測入力部17は、列車運行状況13と計画ダイヤ12と運転整理入力データベース16とを照合して、運転整理内容の予測値を作成する。作成された予測値は、運行指令部14を介して運転整理ダイヤログボックス15に自動的に表示されてもよいし、運転整理予測入力部17から運転整理ダイヤログボックス15に直接送信され、運転整理ダイヤログボックス15に自動的に表示されてもよい。
運転整理予測入力部17は、予測値について、予測値の精度や適正性を示す指標を付して出力してもよい。精度や適正性を示す指標としては、過去の同様な運転整理事案との類似性を確率として表記してもよい。
【0028】
また、運転整理予測入力部17は、入力履歴学習部18が運転整理入力データベース16に記憶させるデータが充実しているほど、高い精度の予測値を作成できる。
このため、前述した通り入力履歴学習部18は、運転整理入力データベース16に追加情報を記憶させることによって、運転整理予測入力部17の予測値の精度を高めることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、運行指令部14は、指令員が運転整理ダイヤログボックス15に表示された内容を承認するための承認部としても機能する。本実施形態では、運行指令部14と承認部とを一体のものとして説明しているが、運行指令部14と承認部は別体であってもよい。
【0030】
(ユーザーインターフェース)
ユーザーインターフェース5は、運転整理ダイヤログボックス15を表示する表示部であり、運転整理支援装置2に運転整理内容を入力する手動入力部でもある。
本実施形態では、ユーザーインターフェース5は、モニタおよびキーボード・マウスであてもよく、モニタに運転整理ダイヤログボックス15を表示し、キーボード・マウスにより、運転整理支援装置2に情報を入力することとしてもよいし、その他のタブレット端末等の機器であってもよい。
運転整理ダイヤログボックス15には、運転整理項目ごとに運転整理内容が表示され、運転整理内容を入力することができる。
【0031】
指令員は、運転整理ダイヤログボックス15に表示された運転整理の予測値の内容を確認し、予測値に問題がなければ、予測値を運転整理の内容として承認する。そして承認された予測値は、運行指令部14に送信され、運行指令部14から中央処理装置3に送信される。指令員は、自動的に表示された予測値(1次データ)に問題があれば、運転整理ダイヤログボックス15の予測値を手入力で修正し、内容を確定して中央処理装置3に送信することができる。
【0032】
なお、本開示において、自動とは、指令員が個々のデータを入力することなく、運転整理予測入力部17が運転整理ダイヤログボックス15の入力項目ごとにパラメータとして自動的にデータを表示することを示し、手入力とは、指令員が個々入力項目ごとにパラメータのデータを入力することを意味する。
【0033】
図2は、運転整理ダイヤログボックス15の表示例を示す図である。
運転整理ダイヤログボックス15は、主に入力項目列151と、パラメータ列152と、を含む。
【0034】
(入力項目列)
入力項目列151は、運転整理の内容を特定するための項目であり、例えば、始発駅、始発番線、始発時刻、出庫番線、出庫時刻、行先駅、行先番線、入庫番線、入庫時刻、列車種別、両数であるが、その他の項目があってもよい。
【0035】
(パラメータ列)
パラメータ列152は、入力項目列151に対応した値であり、運転整理予測入力部17により自動で表示される。
また、パラメータ列152の内容は、ユーザーインターフェース5によって指令員が手入力で変更することができる。
【0036】
パラメータ列152の内容を手動で変更した場合、運転整理予測入力部17は、手動で変更されたパラメータ列152の内容を記憶した上で、指令員が手入力で変更していないパラメータ列152の内容を再度計算し、ユーザーインターフェース5に自動で入力をすることとなる。
【0037】
<運転整理の予測値の作成、自動入力処理>
次に、
図3を参照して、運転整理予測入力部17が行う運転整理の予測値の作成、自動入力処理について説明する。
なお、
図3に示す処理は、運転整理の入力項目ごとに行う処理であるが、すべての入力項目の処理を同時に行うこととしてもよい。
図3は、運転整理予測入力部17が行う自動入力処理を示すフローチャートである。
【0038】
(ステップS101)
まず、運転整理予測入力部17は、ユーザーインターフェース5から運転整理の指令を受信し、運転整理の予測値の作成する際は、運転整理入力データベース16を取得する。
【0039】
(ステップS102)
次に、運転整理予測入力部17は、列車運行状況13を取得する。
【0040】
(ステップS103)
次に、運転整理予測入力部17は、運転整理の予測値として、入力項目ごとに精度や適正性の確率が最も高いものを探索する。
具体的には、運転整理予測入力部17は、取得した学習結果と、列車運行状況13を照合し、過去の同様な運転整理事案との類似性の高い予測値を入力項目ごとに探索する。
【0041】
(ステップS104)
次に、運行指令部14は、探索した予測値を運転整理ダイヤログボックス15に自動で入力する(1次データの入力)。
【0042】
(ステップS105)
ユーザーインターフェース5において、運転整理ダイヤログボックス15に自動で入力された予測値が運転整理の内容として承認されれば、処理を終了する。
【0043】
(ステップS106)
予測値が運転整理の内容として承認されず、自動入力された予測値が変更された場合には、変更後の予測値データ(2次データ)を受信する。
【0044】
(ステップ107)
変更後のデータについて、ステップ103と同様に、入力項目ごとに精度や適正性の確率が最も高いものを探索する。ただし、運転整理ダイヤログボックス15において、変更された項目(指令員が変更した項目)については、探索から除外し、変更されていない項目について探索の対象とする。
【0045】
(ステップ108、109)
ステップ108及びステップ109の内容は、前述のステップ103及びステップ104の内容と同様である。
【0046】
つまり、運転整理ダイヤログボックス15において、変更された項目(指令員が変更した項目)については運転整理項目の内容を固定し、変更されなかった項目について再探索を行い、再度、探索した内容を運転整理ダイヤログボックス15に自動で入力する。そして、自動入力された運転整理内容が承認されるまでこれを繰り返す。
【0047】
<学習処理>
次に、
図4を参照して、入力履歴学習部18が行う学習処理について説明する。
図4は、入力履歴学習部18が行う学習処理を示すフローチャートである。
なお、
図4の処理は、運転整理ダイヤログボックス15に表示された運転整理内容が全て承認されていることを前提とする。
【0048】
(ステップS201)
まず、入力履歴学習部18は、運転整理ダイヤログボックス15に表示され、指令員に承認された内容を取得する(S201)。
【0049】
(ステップS202)
次に、入力履歴学習部18は、運転整理入力データベース16からデータを収集する(S202)。
【0050】
(ステップS203)
次に、入力履歴学習部18は、列車運行状況13を取得する。
【0051】
(ステップS204)
次に、入力履歴学習部18は、計画ダイヤ14を取得する。
【0052】
(ステップS205)
次に、入力履歴学習部18は、学習結果データ、列車運行状況13及び計画ダイヤ14を解析し、学習結果を取得する。
【0053】
(ステップS206)
入力履歴学習部18は、更新した学習結果を運転整理入力データベースに送信する。
【0054】
以上、第1実施形態に係る運転整理支援システム1について説明した。
本開示の運転整理支援システム1は、運行指令部14、運転整理予測入力部17、入力履歴学習部18及び運転整理入力データベース16を主に有しており、指令員が運転整理ダイヤログボックス15に入力する運転整理内容を、過去の入力内容に基づき、運転整理予測入力部17が運転整理の内容を予測し、ユーザーインターフェース5に予測値として自動的に入力する。
これにより、指令員は運転整理の内容について、自動的に入力された内容を確認し、修正の必要があれば、その項目のみを手入力によって修正すればよい。このため、運転整理に必要な入力作業が大幅に軽減され、入力負担および入力ミスを削減することができる。
また、運転整理予測入力部17が過去の入力内容に基づいて精度・適正性の高い運転整理に関する予測値を提供することができる。
さらに、指令員が運転整理支援装置が示した運転整理の予測値を修正した場合には、修正した項目以外の項目について、再度、最適な運転整理の内容となるよう再探索(再計算)が行われるので、この点でも運転整理の精度の向上が可能となる。
【0055】
[第2実施形態]
第2実施形態は、運転整理予測入力部17が、一定周期で運転整理ダイヤログボックスに表示された予測値を再探索する場合の予測値の変更の手順を示したものである。列車運行状況13は時々刻々と変化するに対応する。このため、運転整理予測入力部17は、運転整理の予測値の承認の有無にかかわらず、一定周期で運転整理ダイヤログボックスに表示された予測値を再探索して、最新の状況に応じた予測値を表示することが望ましい。
しかし、再探索した結果の予測値の精度・適正性が一定のレベルに達していないにもかかわらず、再探索した予測値に更新すると、却って指令員の判断をミスリードすることにつながりかねない。
このため、第2実施形態においては、新たに探索された予測値が、一定以上の精度・適正性を有する場合だけ、運転整理ダイヤログボックス15に表示する予測値を更新することとしている。
以下の説明において、上述の第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0056】
図5は、第2実施形態における運転整理予測入力部17が行う自動入力処理を示すフローチャートである。
なお、
図5に示す処理は、
図3の場合と同様に、運転整理の入力項目ごとに行う処理であるが、すべての入力項目の処理を一定の周期で同時に行うこととしてもよい。
【0057】
(ステップ101からステップ108)
ステップS101からステップ108は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
(ステップ306)
ステップ108において、再探索の結果の予測値が算出された場合、ステップ306において、再探索された入力項目の予測値が一定以上の精度・適正性を有するか否かを判断する。
ここで、予測値が一定以上の精度・適正性を有するか否かは、具体的には、過去の同様な運転整理事案との類似性の確率を指標とし、その確率が一定以上か否かを判定することとしてもよい。
当該項目の予測値の確率が一定確率以上である場合、ステップ109に進み、運転整理ダイヤログボックス15に表示する予測値を更新する。
一方、当該項目の予測値の確率が一定確率未満である場合は、運転整理ダイヤログボックス15に表示する予測値を更新せず、処理を終了する。
【0059】
以上、第2実施形態に係る運転整理支援システム1について説明した。
本開示の運転整理支援システム1では、運転整理予測入力部17は、再探索された予測値の精度・適正性が一定以上の場合だけ、運転整理ダイヤログボックス15の予測値を更新するので、運転整理の作業を安定的に進めることができる。
これにより、精度・適正性の低い予測値を誤って承認することを防止することも可能となる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0061】
また、本開示は以下のような態様も含んでいる。
(態様1)
運転整理支援装置、中央処理装置及び路線設備を備える運転整理支援システムであって、
前記運転整理支援装置は、前記中央処理装置に接続され、運行指令部、運転整理予測入力部、運転整理入力データベース及びユーザーインターフェースを含み、
前記運転整理入力データベースは、過去の運転整理内容及び前記過去の運転整理内容に関する列車運行状況を記憶し、
運行指令部は、
前記中央処理装置から実績ダイヤ、計画ダイヤ及び列車運行状況を受信し、
前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を作成させ、
前記運転整理予測入力部は、前記列車運行状況、計画ダイヤ及び前記運転整理入力データベースを照合して、前記運転整理の予測値を作成し、
前記ユーザーインターフェースは、前記運転整理予測入力部が予測した前記運転整理の予測値を表示する、
前記運行指令部は、前記ユーザーインターフェースにおいて前記運転整理の予測値が承認された場合には、前記承認された運転整理の予測値を前記中央処理装置に送信する
運転整理支援システム。
(態様2)
態様1に記載の運転整理支援システムであって、
前記ユーザーインターフェースは、前記運転整理の予測値を変更することができ、
前記ユーザーインターフェースにおいて前記運転整理の予測値が承認されず、変更された場合には、前記運行指令部は、変更された予測値以外の予測値について、前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を再び作成させ、前記再び作成した予測値を前記ユーザーインターフェースに前記運転整理の予測値を表示する
運転整理支援システム。
(態様3)
態様1または2に記載の運転整理支援システムであって、
前記運転整理支援装置は、入力履歴学習部を含み
前記入力履歴学習部は、前記過去の運転整理内容を学習データとして機械学習した学習結果を生成し、前記承認された運転整理内容及び生成した前記学習結果を追加情報として前記運転整理入力データベースに記憶させ、
前記中央処理装置は、前記計画ダイヤを記憶するとともに、前記路線設備から現場情報を受信して、前記列車運行状況と前記実績ダイヤとを作成し、前記運転整理支援装置に、前記計画ダイヤと、前記実績ダイヤと、前記列車運行状況を送信し、
前記承認された運転整理の予測値を受信した場合には、前記計画ダイヤを変更するとともに、前記路線設備に対して進路要求を発信し、
前記路線設備は、現場情報を発信し、進路要求を受信する
運転整理支援システム。
(態様4)
態様1ないし3のいずれか一つに記載の運転整理支援システムであって、
前記運行指令部は、一定周期ごとに前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を作成させ、
前記運転整理予測入力部が作成した予測値の精度・適正性が一定以上である場合に、前記ユーザーインターフェースに前記予測値を表示する
運転整理支援システム。
(態様5)
中央処理装置に接続され、運行指令部、運転整理予測入力部、運転整理入力データベース及びユーザーインターフェースを含む運転整理支援装置であって、
前記運転整理入力データベースは、過去の運転整理内容及び前記過去の運転整理内容に関する列車運行状況を記憶し、
前記運行指令部は、
前記中央処理装置から実績ダイヤ、計画ダイヤ及び列車運行状況を受信し、
前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を作成させ、
前記ユーザーインターフェースに前記運転整理の予測値を表示し、
前記ユーザーインターフェースにおいて前記運転整理の予測値が承認された場合には、前記承認された運転整理の予測値を前記中央処理装置に送信し、
前記運転整理予測入力部は、前記列車運行状況、計画ダイヤ及び前記運転整理入力データベースを照合して、前記運転整理の予測値を予測し、
前記ユーザーインターフェースは、前記運転整理予測入力部が予測した前記運転整理の予測値を表示する、
運転整理支援装置。
(態様6)
態様1ないし4のいずれか一つに記載の運転整理支援システムにおいて、
運転整理予測入力部が、列車運行状況、計画ダイヤ及び運転整理入力データベースを照合して、運転整理の予測値を予測する第1の工程、
ユーザーインターフェースに前記運転整理の予測値を表示する第2の工程、
前記ユーザーインターフェースにおいて、前記運転整理の予測値が承認されず、変更された場合には、変更された予測値以外の予測値について、前記運転整理予測入力部に運転整理の予測値を再び作成させ、前記再び作成した予測値を前記ユーザーインターフェースに前記運転整理の予測値を表示する第3の工程
前記ユーザーインターフェースにおいて、前記運転整理の予測値が承認された場合には、前記運転整理の予測値を運転整理内容が確定されたものとして中央処理装置へ送信する第4の工程、
運転整理内容が中央処理装置へ送信された場合には、前記中央処理装置は、前記計画ダイヤを変更するとともに、前記路線設備に対して進路要求を発信する第5の工程
を含む運転整理の予測値を表示する、
運転整理支援方法。
(態様7)
態様6に記載の運転整理支援方法において、
前記第3の工程は、前記運転整理の予測値の承認の有無にかかわらず、一定周期で行われ、その際に、再び作成した予測値の精度・適正性が一定以上でない場合には、前記ユーザーインターフェースに表示されていた予測値は変更しないこととする
運転整理支援方法。
【符号の説明】
【0062】
1 運転整理支援システム
2 運転整理支援装置
3 中央処理装置
4 駅処理装置
5 ユーザーインターフェース
6 現場設備
11 実績ダイヤ
12 計画ダイヤ
13 列車運行状況
14 運行指令部
15 運転整理ダイヤログボックス
151 入力項目列
152 パラメータ列