(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145440
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電解質封入構造体
(51)【国際特許分類】
B65D 77/00 20060101AFI20241004BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B65D77/00 C
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057790
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100203312
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 敬孝
(72)【発明者】
【氏名】中山 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 司
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067AA05
3E067AB99
3E067BA01A
3E067BA12A
3E067BB11A
3E067BB15
3E067BB16A
3E067BC03A
3E067BC07A
3E067CA05
3E067EA09
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E067GD10
3E086AA22
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086AD04
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB71
3E086CA40
(57)【要約】
【課題】封入した硫化物固体電解質のイオン伝導率が低下しにくい電解質封入構造体を提供すること。
【解決手段】電解質封入構造体1は、硫化物固体電解質3と、硫化物固体電解質3を封入する梱包体100と、を有する電解質封入構造体1であって、梱包体100は、水分透過度が10(g/m
2・24h)以下、厚さが50μm以上である梱包材110で構成される。梱包材110は、アルミニウムからなる層118を含むことが好ましい。梱包材110は、溶着可能な有機物からなる内側溶着部117と、内側溶着部117の外面に積層形成されたアルミニウムからなる層118と、を備えることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化物固体電解質と、
前記硫化物固体電解質を封入する梱包体と、
を有する電解質封入構造体であって、
前記梱包体は、水分透過度が10(g/m2・24h)以下、厚さが50μm以上である梱包材で構成される電解質封入構造体。
【請求項2】
前記梱包材は、アルミニウムからなる層を含む請求項1に記載の電解質封入構造体。
【請求項3】
前記梱包材は、溶着可能な有機物からなる内側溶着部と、前記内側溶着部の外面に積層形成され、前記アルミニウムからなる層である外側非溶着部と、を備える請求項2に記載の電解質封入構造体。
【請求項4】
前記有機物は、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンPE、塩素化ポリエチレンSPE、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂である請求項3に記載の電解質封入構造体。
【請求項5】
前記梱包体は、開口部が溶着されたヒートシール袋である請求項1に記載の電解質封入構造体。
【請求項6】
前記梱包体は、スクリューキャップを備えた蓋付蓋付ボトルである請求項1に記載の電解質封入構造体。
【請求項7】
前記梱包体は、前記アルミニウムからなる層の前記梱包材で構成される請求項2に記載の電解質封入構造体。
【請求項8】
前記梱包体は、前記有機物からなる層の前記梱包材で構成される請求項3に記載の電解質封入構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質封入構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全固体リチウムイオン電池の電解質として硫化物固体電解質が知られている。硫化物固体電解質としては、リチウムイオン伝導性の一層の向上の観点から、例えばアルジロダイト型結晶構造を有する材料が知られている。ここで、アルジロダイト型結晶構造とは、化学式:Ag8GeS6で表される鉱物に由来する化合物群が有する結晶構造である。なお、固体電池の電解質として用いられる硫化物固体電解質は、通常、粉末状である。粉末状の硫化物固体電解質は、通常、製造後、梱包体に封入された後、保管、輸送される。硫化物固体電解質が梱包体に封入された構造体を、以下、「電解質封入構造体」ともいう。
【0003】
ところで、硫化物固体電解質は、大気中の水分と容易に反応してイオン伝導率が低下しやすい。このため、電解質封入構造体は、保管、輸送の期間に硫化物固体電解質と大気中の水分とが反応しにくい構造であることが好ましい。
【0004】
また、硫化物固体電解質は、通常、形状、粒径が所定範囲に制御された粉末状になっている。この硫化物固体電解質の粉末は、大きな外力が加えられると、粒子が破損し、所望の特性を発現できないことがある。このため、硫化物固体電解質は、保管、輸送の際に、硫化物固体電解質の形状、粒径が変化しにくいことが好ましい。
【0005】
電解質封入構造体に関する従来例として、特許文献1には、気体の水及び/又は液体の水と、硫黄系ガスとを吸収する、硫化物系無機固体電解質タイプの全固体リチウムイオンバッテリー用の、吸水性硫黄系ガス吸収包装材料が開示されている。この吸水性硫黄系ガス吸収包装材料は、ナイロンフィルム等からなる基材層と、アルミニウム箔等からなるガスバリア層と、吸水性硫黄系ガス吸収シーラントフィルムからなるヒートシール性のシーラント層とを含み、前記シーラント層は、硫黄系ガス吸収剤と無機系吸水剤とヒートシール性樹脂とを含む。特許文献1の吸水性硫黄系ガス吸収包装材料のシーラント層を内側にした梱包体内に硫化物固体電解質を封入すると電解質封入構造体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の実施例に示されている吸水性硫黄系ガス吸収包装材料は、層構成の一部であるガス吸収フィルムを用いた相対湿度試験において、相対湿度が最大で45%と高く、また基材層が一般的に水分透過度の高い材料として知られているナイロンフィルム等で構成されている。このため、この吸水性硫黄系ガス吸収包装材料に硫化物固体電解質を封入した電解質封入構造体を用いると、保管、輸送期間中に硫化物固体電解質と大気中の水分とが反応することで硫化物固体電解質のイオン伝導率が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、封入した硫化物固体電解質のイオン伝導率が経時的に低下しにくい電解質封入構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、硫化物固体電解質を封入する梱包体を構成する梱包材の、水分透過度及び厚さの適正化を図ることにより、封入した硫化物固体電解質のイオン伝導率が低下しにくい電解質封入構造体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)本発明に係る電解質封入構造体は、硫化物固体電解質と、前記硫化物固体電解質を封入する梱包体と、を有する電解質封入構造体であって、前記梱包体は、水分透過度が10(g/m2・24h)以下、厚さが50μm以上である梱包材で構成される。
【0011】
(2)前記梱包材は、アルミニウムからなる層を含むことが好ましい。
【0012】
(3)前記梱包材は、溶着可能な有機物からなる内側溶着部と、前記内側溶着部の外面に積層形成され、前記アルミニウムからなる層である外側非溶着部と、を備えることが好ましい。
【0013】
(4)前記有機物は、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンPE、塩素化ポリエチレンSPE、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂であることが好ましい。
【0014】
(5)前記梱包体は、開口部が溶着されたヒートシール袋であることが好ましい。
【0015】
(6)前記梱包体は、スクリューキャップを備えた蓋付ボトルであることが好ましい。
【0016】
(7)前記梱包体は、前記アルミニウムからなる層の前記梱包材で構成されることが好ましい。
【0017】
(8)前記梱包体は、前記有機物からなる層の前記梱包材で構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、封入した硫化物固体電解質のイオン伝導率が経時的に低下しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電解質封入構造体を示す平面図である。
【
図2】
図1の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【
図3】
図1の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が開いた状態で示す。
【
図4】
図3の梱包体を構成する梱包材の*断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る電解質封入構造体を示す斜視図である。
【
図6】
図5の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【
図7】
図5の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が閉じた状態で示す。
【
図8】
図5の電解質封入構造体を構成する梱包体の分解斜視図である。
【
図9】
図7の梱包体を構成する梱包材の断面図である。
【
図10】従来例の電解質封入構造体を示す平面図である。
【
図11】
図10の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【
図12】
図10の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が開いた状態で示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図の形状、大きさは、説明の便宜のため適宜変更している。このため、本発明は図面の形状に拘束されるものではない。
【0021】
[電解質封入構造体]
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電解質封入構造体を示す平面図であり、
図2は、
図1の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図であり、
図3は、
図1の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が開いた状態で示す。
図4は、
図3の梱包体を構成する梱包材の断面図である。
【0022】
図1に示す第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AA(1)を構成する梱包体100A(100)、例えばヒートシール袋120は、それを構成する袋本体121の内部に、硫化物固体電解質3を封入しているため、
図1の紙面垂直方向に厚みを有している。
【0023】
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AA(1)は、硫化物固体電解質3と、硫化物固体電解質3を封入する梱包体100A(100)と、を有する。なお、
図2では、袋本体121の厚さを実際よりも強調して示している。
【0024】
図3に示すように、梱包体100Aは、封止部122の少なくとも一部を溶着してヒートシール部123を形成することで、硫化物固体電解質3を封入することが可能なヒートシール袋120になっている。梱包体100Aは、開口部127が溶着されたヒートシール袋120になっている。
【0025】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3は、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含むことが好ましい。硫化物固体電解質3は、アルジロダイト型結晶構造を有すると、リチウムイオン伝導性が高く、電気化学的に安定であるため全固体電池として良好な特性を示すため好ましい。ここで、アルジロダイト型結晶構造とは、化学式:Ag8GeS6で表される鉱物に由来する化合物群が有する結晶構造である。硫化物固体電解質3の具体的な組成式としては、Li6PS5Cl、Li6PS5Br、Li5.5PS4.5Cl1.5、Li5.4PS4.4Cl0.8Br0.8、Li6PS5I等が挙げられる。
【0026】
硫化物固体電解質3におけるリチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素の含有量は、適宜調整することができる。
【0027】
硫化物固体電解質3は、硫化物固体電解質3の構成元素の合計モル量を100モル%として、Li元素の含有量が、好ましくは41モル%以上、より好ましくは42モル%以上、さらに好ましくは43モル%以上である。また、上記含有量が、好ましくは50モル%以下、より好ましくは48モル%以下、さらに好ましくは47モル%以下、さらに一層好ましく45%以下である。リチウム(Li)元素の含有量が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0028】
硫化物固体電解質3は、硫化物固体電解質3の構成元素の合計モル量を100モル%として、P元素の含有量が、好ましくは7.0モル%以上、より好ましくは7.2モル%以上、さらに好ましくは7.5モル%以上、さらに一層好ましくは7.7モル%以上である。また、上記含有量が、好ましくは20モル%以下、より好ましくは18モル%以下、さらに好ましくは16モル%以下、さらに一層好ましくは12モル%以下である。P元素の含有量が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0029】
硫化物固体電解質3は、硫化物固体電解質3の構成元素の合計モル量を100モル%として、S元素の含有量が、好ましくは31モル%以上、より好ましくは32モル%以上、さらに好ましくは33モル%以上、さらに一層好ましくは34モル%以上である。また、上記含有量が、好ましくは43モル%以下、より好ましくは42モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、さらに一層好ましくは38モル%以下である。S元素の含有量が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0030】
硫化物固体電解質3は、P元素の含有量に対するLi元素の含有量(Li元素の含有量/P元素の含有量)のモル比率が、好ましくは4.8以上、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは5.2以上である。また、上記モル比率が、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.4以下、さらに好ましくは5.8以下である。上記モル比率が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0031】
硫化物固体電解質3は、P元素の含有量に対するS元素の含有量(S元素の含有量/P元素の含有量)のモル比率が、好ましくは3.6以上、より好ましくは4.0以上、さらに好ましくは4.2以上である。また、上記モル比率が、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.6以下である。上記モル比率が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0032】
硫化物固体電解質3は、好ましくは、フッ素(F)元素、塩素(Cl)元素、臭素(Br)元素及びヨウ素(I)元素から選択される少なくとも一種のハロゲン(X)元素をさらに含み、より好ましくは、塩素(Cl)元素及び臭素(Br)元素から選択される少なくとも一種のハロゲン(X)元素をさらに含む。硫化物固体電解質3が上記元素をさらに含むと、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0033】
硫化物固体電解質3は、硫化物固体電解質3の構成元素の合計モル量を100モル%として、ハロゲン(X)元素の含有量が、好ましくは3.7モル%以上、より好ましくは4.0モル%以上、さらに好ましくは8.0モル%以上、さらに一層好ましくは10モル%以上である。また、上記含有量が、好ましくは19モル%以下、より好ましくは17モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下、さらに一層好ましくは14モル%以下である。なお、硫化物固体電解質3が二種以上のハロゲン(X)元素を含む場合、「ハロゲン(X)元素の含有量」は、当該二種以上のハロゲン(X)元素の合計含有量を意味する。ハロゲン(X)元素の含有量が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0034】
硫化物固体電解質3は、P元素の含有量に対するX元素の含有量(X元素の含有量/P元素の含有量)のモル比率が、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは1.2以上である。また、上記モル比率が、好ましくは2.1以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である。上記モル比率が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0035】
硫化物固体電解質3は、リチウム(Li)元素、リン(P)元素、硫黄(S)元素及びハロゲン(X)元素以外の一種又は二種以上の元素(以下「その他の元素」という。)を含んでもよい。その他の元素としては、例えば、ケイ素(Si)元素、ゲルマニウム(Ge)元素、スズ(Sn)元素、鉛(Pb)元素、ホウ素(B)元素、アルミニウム(Al)元素、ガリウム(Ga)元素、ヒ素(As)元素、アンチモン(Sb)元素、ビスマス(Bi)元素等が挙げられる。
【0036】
硫化物固体電解質3は、D50が、好ましくは0.10μm以上、より好ましくは0.20μm以上、さらに好ましくは0.4μm以上、特に好ましくは0.6μm以上である。また、上記モル比率が、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。D50が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3を正負極の電極内部に均一に分布して良好な電池特性が得られやすい。なお、D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される当該粉末の体積基準の粒度分布において、累積体積が50%となる粒径である。
【0037】
(梱包体)
梱包体100Aは、硫化物固体電解質3を封入する構造体である。また、梱包体100Aは、水分透過度が10(g/m2・24h)以下、厚さが50μm以上である梱包材110で構成される。
【0038】
梱包体100Aは、硫化物固体電解質3を封入する機能(以下、「封入機能」ともいう)と、水分透過度が低い機能(以下、「低水分透過機能」ともいう)とを有する。梱包体100Aの封入機能及び低水分透過機能については後述する。
【0039】
図2及び
図3に示されるように、梱包体100Aは、シート状の梱包材110を用いて、硫化物固体電解質3を封入可能なヒートシール袋120としたものである。
【0040】
図3に示すように、梱包体100Aを構成するヒートシール袋120は、袋本体121と、袋本体121に連続して形成され端部に開口部127を形成する帯状部材である封止部122と、を備える。封止部122は、その少なくとも一部を溶着してヒートシール部123を形成することで梱包体100A内に硫化物固体電解質3を封入することが可能になっている。
【0041】
図3に示すように、梱包体100Aでは、梱包体100Aの硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内に、硫化物固体電解質3が封入される。ヒートシール袋120からなる梱包体100Aは、比較的扁平形状であるため収納のスペース効率が高い。
【0042】
第1空間109内には、充填ガスFGが封入されていてもよい。充填ガスFGとしては、Ar、乾燥空気、N2又はCO2等が用いられる。このうちArは、硫化物固体電解質3との反応性が低いため好ましい。第1空間109内に存在する充填ガスFGを、以下、第1空間ガス119ともいう。なお、第1空間ガス119は硫化物固体電解質3との反応等により成分が変化することがある。また、充填ガスの露点温度は、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、一層好ましくは―60℃以下である。充填ガスFGの露点温度が上記範囲内にあると、梱包体100A内に封入した硫化物固体電解質3のイオン伝導率が低下しにくいため好ましい。
【0043】
硫化物固体電解質3を封入した状態の梱包体100Aにおいて、第1空間109の体積V1(cm3)に対する、硫化物固体電解質3の物質自体の体積VSE(cm3)の比率(VSE/V1)である第1充填率は、例えば0%超、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。また、上記充填率は、例えば50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。第1充填率が0%超であると、収納のスペース効率が高くなりやすい。また、第1充填率が50%以下であると、硫化物固体電解質3の粒子が押しつぶされることによる凝集や粒子形状の変化が抑制されやすい。
【0044】
第1充填率(%)は、例えば、ピクノメータ法(ガス置換法)で求めた硫化物固体電解質3の真密度Dt(g/cm3)の逆数に硫化物固体電解質3の質量M(g)を乗じた値から梱包材の内容積V1(cm3)を除し、さらにこの値に100を乗じた式である(1/Dt)M/V1×100で算出することができる。
【0045】
梱包体100Aを構成する梱包材110は、封止部122を含めヒートシール袋120全体が、
図4に示すように、溶着可能な有機物からなる内側溶着部117と、内側溶着部117の外面に積層形成され、アルミニウムからなる層である外側非溶着部118と、を備える複層構造になっている。
【0046】
梱包材110がこのような複層構造であると、水分透過度が10(g/m2・24h)以下の材料(以下、「低水分透過材料」ともいう)からなる外側非溶着部118を用いることで、梱包体100Aに、内側溶着部117の溶着による硫化物固体電解質3を封入する封入機能と、外側非溶着部118による低水分透過機能と、を付与することができる。
【0047】
ここで、内側溶着部117とは、梱包材110の表面のうち、硫化物固体電解質3を封入した場合に硫化物固体電解質3側に位置する表面である内面107を含みかつ溶着に寄与する部材を意味する。内面107及び表面については、
図2に示す。
【0048】
内側溶着部117は、1種又は2種以上の溶着可能な有機物からなる単層構造であってもよいし、2種以上の溶着可能な有機物が2層以上の層状に形成された図示しない複層構造であってもよい。内側溶着部117が複層構造である場合、内側溶着部117は、内面107を含む最内層と、最内層から見て外側非溶着部118側に積層される1層以上の隣接内層とを備える。
【0049】
例えば、内側溶着部117は、溶着可能な有機物W1からなり内面107を含む最内層と、溶着可能な有機物W2からなり最内層から見て外側非溶着部118側に積層される第1隣接内層と、を備える2層構造とすることができる。
【0050】
また、内側溶着部117は、溶着可能な有機物W1からなり内面107を含む最内層と、溶着可能な有機物W2からなり最内層から見て外側非溶着部118側に積層される第1隣接内層と、溶着可能な有機物W3からなり第1隣接内層から見て外側非溶着部118側に積層される第2隣接内層と、を備える3層構造とすることができる。
【0051】
外側非溶着部118とは、梱包材110の表面のうち、硫化物固体電解質3を封入した場合に内面107と反対側の表面である外面108を含みかつ溶着に寄与しない部材を意味する。内面107、外面108及び表面については、
図2に示す。
【0052】
外側非溶着部118は、1種又は2種以上の材質からなる単層構造であってもよいし、2種以上の材質からなる図示しない複層構造であってもよい。外側非溶着部118が複層構造である場合、外側非溶着部118は、外面108を含む最外層と、最外層から見て内側溶着部117側に積層される1層以上の補助外層とを備える。
【0053】
例えば、外側非溶着部118は、材質N1からなり外面108を含む最外層と、材質N2からなり最外層から見て内側溶着部117側に積層される第1隣接外層と、を備える2層構造とすることができる。
【0054】
また、外側非溶着部118は、材質N1からなり外面108を含む最外層と、材質N2からなり最外層から見て内側溶着部117側に積層される第1隣接外層と、材質N3からなり第1隣接外層から見て内側溶着部117側に積層される第2隣接外層と、を備える3層構造とすることができる。
【0055】
内側溶着部117を構成する溶着可能な有機物としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンPE、塩素化ポリエチレンSPE、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂が用いられる。このうち、ポリエチレンPEは汎用性が高くかつリサイクル性に優れるため好ましい。
【0056】
内側溶着部117を構成する1層以上の層は、それぞれ、溶着可能な有機物の1種以上の有機樹脂からなるものとすることができる。例えば、内側溶着部117は、1種の有機樹脂からなる層と、2種以上の有機樹脂からなる層と、を備えるものであってもよい。2種以上の有機樹脂からなる層は、例えば、2種以上の有機樹脂の混合物からなる層とすることができる。
【0057】
外側非溶着部118は低水分透過材料からなると、梱包体100Aに、低水分透過機能を付与することができるため好ましい。
【0058】
外側非溶着部118に用いられる低水分透過材料としては、例えば、アルミニウム等の金属;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、塩素化ポリエチレン(SPE)、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂等の有機物、が用いられる。このうち、アルミニウムは、梱包体100Aを構成する梱包材110の水分透過度を10(g/m2・24h)以下にしやすいため好ましい。
【0059】
外側非溶着部118を構成する1層以上の層は、それぞれ、1種以上の材質からなるものとすることができる。例えば、外側非溶着部118は、1種の材質からなる層と、2種以上の材質からなる層と、を備えるものであってもよい。2種以上の材質からなる層は、例えば、2種以上の有機樹脂の混合物からなる層とすることができる。
【0060】
複層構造の梱包材110としては、例えば、内面107側から、ポリエチレンPEからなる内側溶着部117の最内層、塩素化ポリエチレンSPEからなる内側溶着部117の第1隣接内層、アルミニウムからなる外側非溶着部118、がこの順番に積層された3層構造の梱包材を用いることができる。
【0061】
また、複層構造の梱包材110としては、例えば、内面107側から、ポリエチレンPEからなる内側溶着部117の最内層、塩素化ポリエチレンSPEからなる内側溶着部117の第1隣接内層、アルミニウムからなる外側非溶着部118の第2隣接外層、塩素化ポリエチレンSPEからなる外側非溶着部118の第1隣接外層、ポリエチレンPEからなる外側非溶着部118の最外層、がこの順番に積層された5層構造の梱包材を用いることができる。
【0062】
梱包体100Aを構成する梱包材110の厚さは、梱包体100Aの最も薄い部分において、例えば50μm以上、好ましくは100μm以上である。また、上記最も薄い部分の厚さは、好ましくは10000μm以下である。梱包材110の厚さが上記範囲内にあると、{水分透過度を10(g/m2・24h)以下にしやすい}ため好ましい。また、機械的強度も高められ外部からの衝撃が加わった際にピンホールがにくいため好ましい。
【0063】
梱包体100Aの梱包材110は、
図4に示すように複層構造になっている。しかし、梱包材110が封入機能と低水分透過機能とを備える限りにおいて、梱包体100Aの梱包材110を
図4に示す複層構造以外の層構造、例えば
図9に示すような単層構造とすることができる。
【0064】
梱包体100Aの梱包材110は、内側溶着部117及び外側非溶着部118を含めた梱包材110全体の水分透過度が10(g/m2・24h)以下、好ましくは1(g/m2・24h)以下、より好ましくは0.1(g/m2・24h)以下、さらに好ましくは0.01(g/m2・24h)以下である。上記水分透過度が上記範囲内にあると、梱包体100A内に封入した硫化物固体電解質3が水分と反応してイオン伝導率が低下しにくいため好ましい。
【0065】
ヒートシール袋120からなる梱包体100Aでは、梱包材110の材質が主に封入機能及び低水分透過機能に寄与し、ヒートシール袋120からなる梱包体100Aの構造が主に封入機能に寄与するようになっている。
【0066】
例えば、梱包体100Aの梱包材110の内側溶着部117が溶着することにより封入機能が主に発現し、梱包材110の外側非溶着部118が低水分透過材料であることにより低水分透過機能が主に発現する。また、ヒートシール袋120からなる梱包体100Aのヒートシール部123により封入機能が主に発現する。
【0067】
(効果)
電解質封入構造体1AAによれば、梱包体100A内に封入した硫化物固体電解質3のイオン伝導率が経時的に低下しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【0068】
また、電解質封入構造体1AAによれば、ヒートシール袋120からなる梱包体100Aが比較的扁平形状であるため収納のスペース効率が高い電解質封入構造体を提供することができる。
【0069】
電解質封入構造体1AAの梱包体100A内に封入した硫化物固体電解質3のイオン伝導率の低下の度合は、例えば、以下の方法により、測定することができる。すなわち、電解質封入構造体1AAを25℃の大気中で7日間保存したときの硫化物固体電解質3のイオン伝導率を測定し、封入時の硫化物固体電解質3のイオン伝導率と比較することにより確認することができる。
【0070】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る電解質封入構造体を示す斜視図であり、
図6は、
図5の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図であり、
図7は、
図5の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が閉じた状態で示し、
図8は、
図5の電解質封入構造体を構成する梱包体の分解斜視図であり、そして、
図9は、
図7の梱包体を構成する梱包材の断面図である。
【0071】
図5及び
図6に示すように、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BA(1)は、硫化物固体電解質3と、硫化物固体電解質3を封入する梱包体100B(100)と、を有する。梱包体100Bは、蓋付ボトル130からなる。
【0072】
図7及び
図8に示すように、梱包体100Bは、ボトル本体131の外面に設けられた第1連結部133である雄ねじ部と、スクリューキャップ132の内面に設けられた第2連結部134である雌ねじ部と、を螺合させることで梱包体100B内に硫化物固体電解質3を封入することが可能な蓋付ボトル130になっている。梱包体100Bは、スクリューキャップ132を備えた蓋付ボトル130になっている。
【0073】
第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAに比較して、梱包体100Aを梱包体100Bに代えた以外は、同じである。このため、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAと、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAとで同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。
【0074】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3としては、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAで用いられる硫化物固体電解質3と同様の物を用いることができる。
【0075】
なお、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAの蓋付ボトル130からなる梱包体100Bは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAのヒートシール袋120からなる梱包体100Aに比較して、通常、外力に対する変形が生じにくい。このため、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAでは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAに比較して、外力に対する硫化物固体電解質3の変形及びそれに伴う硫化物固体電解質3の変質が、通常、生じにくい。
【0076】
したがって、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAでは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAに比較して、硫化物固体電解質3のイオン伝導率が、経時的により一層低下しにくくなり、また外力で変形しやすい硫化物固体電解質3を用いて封入することが可能になる。
【0077】
(梱包体)
蓋付ボトル130からなる梱包体100Bは、硫化物固体電解質3を封入する構造体である。また、梱包体100Bは、水分透過度が10(g/m2・24h)以下、厚さが50μm以上である梱包材110で構成される。
【0078】
梱包体100Bは、硫化物固体電解質3を封入する封入機能と、低水分透過機能とを有する。梱包体100Bの封入機能及び低水分透過機能については後述する。
【0079】
図5~
図7に示されるように、梱包体100Bは、梱包材110を用いて、硫化物固体電解質3を封入可能な蓋付ボトル130としたものである。
【0080】
図7及び
図8に示すように、梱包体100Bを構成する蓋付ボトル130は、第1連結部(雄ねじ部)133を有するボトル本体131と、第2連結部(雌ねじ部)134を有するスクリューキャップ132と、を備える。蓋付ボトル130は、ボトル本体131とスクリューキャップ132とを螺合させることで梱包体100B内に硫化物固体電解質3を封入することが可能な蓋付ボトル130になっている。
【0081】
図6に示すように、梱包体100Bでは、梱包体100Bの硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内に、硫化物固体電解質3が封入される。蓋付ボトル130からなる梱包体100Bは、その形状により機械的強度が一般的に高いかつ変形しにくいため、封入した硫化物固体電解質3の粒子の破損が強く抑制される。
【0082】
第1空間109内には、充填ガスFGが封入されていてもよい。充填ガスFGとしては、Ar、大気、N2又はCO2等が用いられる。このうちArは、硫化物固体電解質3との反応性が低いため好ましい。また、充填ガスの露点温度は、好ましくは-30℃以下、より好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、一層好ましくは―60℃以下である。
【0083】
硫化物固体電解質3を封入した状態の梱包体100Bにおいて、第1空間109の体積V1(cm3)に対する、硫化物固体電解質3の物質自体の体積VSE(cm3)の比率(VSE/V1)である第1充填率は、例えば0%超、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。また、上記充填率は、例えば50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。第1充填率が0%超であると、収納のスペース効率が高くなりやすい。また、第1充填率が50%以下であると、硫化物固体電解質3の粒子が押しつぶされることによる凝集や粒子形状の変化が抑制されやすい。
【0084】
図9は、
図6に示される蓋付ボトル130からなる梱包体100Bを構成する梱包材110の一例の断面構造を示す断面図である。
【0085】
梱包体100Bを構成する梱包材110は、ボトル本体131及びスクリューキャップ132を含め蓋付ボトル130全体が、
図9に示すように、単一層116からなる単層構造になっている。なお、蓋付ボトル130を構成するボトル本体131及びスクリューキャップ132は場所により形状が異なるが、梱包材110が単一層116からなる点で共通している。
【0086】
梱包体100Bを構成する単一層116からなる梱包材110は、低水分透過機能を有する材質になっている。
【0087】
単一層116は低水分透過材料からなり、梱包体100Bに、低水分透過機能を付与するようになっている。
【0088】
単一層116に用いられる低水分透過材料としては、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAの梱包体100Aの外側非溶着部118に用いられる低水分透過材料と同様の材料が用いられる。具体的には、単一層116に用いられる低水分透過材料として、例えば、アルミニウム等の金属、又は{ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、塩素化ポリエチレンSPE、(SPE)、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂}等の有機物が用いられる。このうち、梱包体100Bがアルミニウムからなると梱包体100Bを構成する梱包材110の水分透過度を10(g/m2・24h)以下にしやすいため好ましい。
【0089】
梱包体100Bの単一層116に用いられる低水分透過材料が、アルミニウムである場合、梱包体100Bは、アルミニウムからなる蓋付ボトル130となる。梱包体100Bの単一層116に用いられる低水分透過材料が、高密度ポリエチレンである場合、梱包体100Bは、高密度ポリエチレンからなる蓋付ボトル130となる。
【0090】
梱包体100Bを構成する梱包材110の厚さは、梱包体100Bの最も薄い部分において、50μm以上、好ましくは100μm以上である。また、上記最も薄い部分の厚さは、好ましくは10000μm以下である。梱包材110の厚さが上記範囲内にあると、梱包体100Bを構成する梱包材110の水分透過度を10(g/m2・24h)以下にしやすいため好ましい。
【0091】
梱包体100Bがアルミニウムからなる蓋付ボトル130である場合、梱包体100Bを構成する梱包材110の厚さは、梱包体100Bの最も薄い部分において、50μm以上、好ましくは100μm以上である。また、上記最も薄い部分の厚さは、好ましくは10000μm以下である。梱包材110の厚さが上記範囲内にあると、梱包体100Bを構成する梱包材110の水分透過度を10(g/m2・24h)以下にしやすいため好ましい。
【0092】
梱包体100Bが高密度ポリエチレンからなる蓋付ボトル130である場合、 梱包体100Bを構成する梱包材110の厚さは、梱包体100Bの最も薄い部分において、50μm以上、好ましくは100μm以上である。また、上記最も薄い部分の厚さは、好ましくは10000μm以下である。梱包材110の厚さが上記範囲内にあると、梱包体100Bを構成する梱包材110の水分透過度を10(g/m2・24h)以下にしやすいため好ましい。
【0093】
梱包体100Bの梱包材110は、水分透過度が10(g/m2・24h)以下、好ましくは 1 (g/m2・24h)以下、より好ましくは 0.1 (g/m2・24h)以下、さらに好ましくは 0.01 (g/m2・24h)以下である。上記水分透過度が上記範囲内にあると、梱包体100B内に封入した硫化物固体電解質3のイオン伝導率が低下しにくいため好ましい。
【0094】
蓋付ボトル130からなる梱包体100Bでは、梱包材110の材質が主に低水分透過機能に寄与し、蓋付ボトル130からなる梱包体100Bの構造が主に封入機能に寄与するようになっている。
【0095】
例えば、梱包体100Bの梱包材110の単一層116が低水分透過材料であることにより低水分透過機能が主に発現する。また、蓋付ボトル130からなる梱包体100Bのボトル本体131とスクリューキャップ132との螺合により封入機能が主に発現する。
【0096】
(効果)
電解質封入構造体1BAによれば、梱包体100B内に封入した硫化物固体電解質3のイオン伝導率が低下しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【0097】
また、電解質封入構造体1BAによれば、蓋付ボトル130からなる梱包体100Bは、その形状により機械的強度が一般的に高いかつ変形しにくいため、封入した硫化物固体電解質3の粒子の破損が強く抑制される。
【0098】
電解質封入構造体1BAの梱包体100B内に封入した硫化物固体電解質3のイオン伝導率の低下の度合は、例えば、以下の方法により、測定することができる。すなわち、電解質封入構造体1BAを25℃の大気中で7日間保存したときの硫化物固体電解質3のイオン伝導率を測定し、封入時の硫化物固体電解質3のイオン伝導率と比較することにより確認することができる。
【0099】
<従来例>
図10は、従来例の電解質封入構造体を示す平面図であり、
図11は、
図10の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図であり、そして、
図12は、
図10の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が開いた状態で示す。
【0100】
図10及び
図11に示すように、従来例に係る電解質封入構造体5C(5)は、硫化物固体電解質3と、硫化物固体電解質3を封入する梱包体100C(100)と、を有する。梱包体100Cは、チャックシール袋140からなる。なお、
図11では、袋本体141の厚さを実際よりも強調して示している。
【0101】
図12に示すように、梱包体100Cは、着脱自在なチャック部143を備え開口部147を開閉自在とすることで梱包体100C内に硫化物固体電解質3を封入することが可能なチャックシール袋140になっている。ここで、チャックシール袋140とは、着脱自在なチャック部143によりチャックシール袋140の開口部147を開閉可能な機構を備えた袋を意味する。
【0102】
従来例に係る電解質封入構造体5Cは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAに比較して、梱包体100Aを梱包体100Cに代えた以外は、同じである。このため、従来例に係る電解質封入構造体5Cと、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAとで同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。
【0103】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3としては、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAで用いられる硫化物固体電解質3と同様の物を用いることができる。
【0104】
(梱包体)
チャックシール袋140からなる梱包体100Cは、硫化物固体電解質3を封入する構造体である。しかし、チャックシール袋140からなる梱包体100Cは、チャック部143の構造上、硫化物固体電解質3を封入する封入機能及び低水分透過機能の少なくとも一方が不十分になりやすい。
【0105】
例えば、チャックシール袋140からなる梱包体100Cを構成する梱包材110は、一般的に、チャック部143の気密性が十分でなく、封入機能が不十分になりやすい。また、チャック部143に可撓性を付与する材料は、通常、低水分透過機能を有しない。このため、チャックシール袋140からなる梱包体100Cは、硫化物固体電解質3を封入する封入機能及び低水分透過機能の少なくとも一方が不十分になりやすい。
【実施例0106】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0107】
[実施例1]
以下のようにして
図1に示す電解質封入構造体1AAを作製した。電解質封入構造体1AAの条件等を表1に示す。
【0108】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3として、Li、P、S、Cl、Br元素から構成されるアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質(D50:0.7μm)を用意した。用意した硫化物固体電解質のイオン伝導率は、3.8(mS/cm)であった。
【0109】
(梱包体)
梱包体100Aの原料として、
図3に示すヒートシール袋120を用意した。ヒートシール袋120の梱包材110は、塩素化ポリエチレンSPEとポリエチレンPEからなる内側溶着部117と、アルミニウムAl{ と塩素化ポリエチレンSPEとポリエチレンPEと }からなる外側非溶着部118と、が積層された複層構造を有し、梱包体100Aの梱包材110全体の最小厚さは、500μmであった。
なお、内側溶着部117は、ポリエチレンPEからなり内面107を含む最内層と、塩素化ポリエチレンSPEからなり最内層から見て外側非溶着部118側に積層される第1隣接内層とを備えていた。
外側非溶着部118は、ポリエチレンPEからなり外面108を含む最外層と、塩素化ポリエチレンSPEからなり最外層から見て内側溶着部117側に積層される第1隣接外層と、アルミニウムからなり第1隣接外層から見て内側溶着部217側に積層される第2隣接外層と、を備えていた。
梱包材110は、内面107から外面108にかけて、PE層、SPE層、Al層、SPE層、及びPE層がこの順番で積層されていた。
【0110】
<水分透過度>
梱包体100Aを構成する梱包材110の水分透過度は、0.01(g/m2・24h)以下であった。
水分透過度は、以下に記載の条件により測定した。
試験方法:JIS K 7129-4準拠(差圧法)
検知器:ガスクロマトグラフ[熱伝導度検出器(TCD)]
試験条件:気体;水蒸気[H2O](加湿下雰囲気)
温湿度;(40±2)℃・(90±5)%RH
差圧;1atm
試験片:φ60mm
透過面積:15.2×10-4(透過部径φ4.4×10―2m)
測定装置:差圧式ガス・上記透過率測定装置(GTR-30XADJ4、G2700T)―3)[GTRテック株式会社・ヤナコテクニカルサイエンス株式会社製]
なお、水分透過度は、梱包体100Aの梱包材110の内面が第1空間109に接する梱包材110のうち水分透過度が最大値になる部分で測定した。
【0111】
梱包体100Aを構成する梱包材110の厚みはデジタルマイクロメータで測定した。
【0112】
第1充填率(%)は、ピクノメータ法(ガス置換法)で求めた硫化物固体電解質3の真密度Dt(g/cm3)の逆数に硫化物固体電解質3の質量M(g)を乗じた値から梱包材の内容積V1(cm3)を除し、さらにこの値に100を乗じた式である(1/Dt)M/V1×100で算出した。
【0113】
(梱包)
図3に示すヒートシール袋120を、露点温度:―70℃のArガス雰囲気下で、開口部127からヒートシール袋120内に硫化物固体電解質3を装入し、封止部122の一部を溶着してヒートシール部123を形成することにより、梱包体100A中に硫化物固体電解質3を封入した。これにより、
図1に示す電解質封入構造体1AAを作製した。
【0114】
【0115】
(評価)
<大気中保存試験>
電解質封入構造体1AAを25℃の大気中(RH50%)で7日間保存した。
7日間保存後の電解質封入構造体1AAを露点温度:―70℃のArガス雰囲気下で開封して硫化物固体電解質3を取り出し、取り出した硫化物固体電解質3のイオン伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0116】
[実施例2]
以下のようにして
図1に示す電解質封入構造体1BAを作製した。電解質封入構造体1BAの条件等を表1に示す。
【0117】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3として、実施例1と同じアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質を用意した。
【0118】
(梱包体)
梱包体100Bの原料として、
図7及び
図8に示す蓋付ボトル130を用意した。蓋付ボトル130の梱包材110は、アルミニウムからなる単一層116のものであった。梱包体100Bの梱包材110の最小厚さは、500μmであった。
【0119】
<水分透過度>
梱包体100Bを構成する梱包材110の水分透過度は、0.01(g/m2・24h)以下であった。
水分透過度は、以下に記載の条件により測定した。
試験方法:JIS K 7129-4準拠(差圧法)
検知器:ガスクロマトグラフ[熱伝導度検出器(TCD)]
試験条件:気体;水蒸気[H2O](加湿下雰囲気)
温湿度;(40±2)℃・(90±5)%RH
差圧;1atm
試験片:φ60mm
透過面積:15.2×10-4(透過部径φ4.4×10―2m)
測定装置:差圧式ガス・上記透過率測定装置(GTR-30XADJ4、G2700T)―3)[GTRテック株式会社・ヤナコテクニカルサイエンス株式会社製]
なお、水分透過度は、梱包体100Bの梱包材110の内面が第1空間109に接する梱包材110のうち水分透過度が最大値になる部分で測定した。
【0120】
(梱包)
図7及び
図8に示すボトル本体131とスクリューキャップ132とを、室温、Arガス雰囲気下で、開口部137からボトル本体131内に硫化物固体電解質3を装入し、スクリューキャップ132をボトル本体131に螺合することにより、梱包体100B中に硫化物固体電解質3を封入した。これにより、
図5に示す電解質封入構造体1BAを作製した。
【0121】
(評価)
<大気中保存試験>
電解質封入構造体1BAを25℃の大気中(RH50%)で7日間保存した。
7日間保存後の電解質封入構造体1BAのスクリューキャップ132を外して硫化物固体電解質3を取り出し、取り出した硫化物固体電解質3のイオン伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0122】
実施例及び比較例で得られた固体電解質について、以下の方法でリチウムイオン伝導率を測定した。
各固体電解質を、十分に乾燥されたアルゴンガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内で、約6t/cm2の荷重を加え一軸加圧成形し、直径10mm、厚み約1mm~8mmのペレットからなるリチウムイオン伝導率の測定用サンプルを作製した。リチウムイオン伝導率の測定は、株式会社東陽テクニカのソーラトロン1255Bを用いて行った。測定条件は、温度25℃、周波数100Hz~1MHz、振幅100mVの交流インピーダンス法とした。
【0123】
[実施例3]
以下のようにして
図1に示す電解質封入構造体1BAを作製した。電解質封入構造体1BAの条件等を表1に示す。
【0124】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3として、実施例1と同じアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質を用意した。
【0125】
(梱包体)
梱包体100Bの原料として、
図7及び
図8に示す蓋付ボトル130を用意した。蓋付ボトル130の梱包材110は、高密度ポリエチレンからなる単一層116のものであった。梱包体100Bの梱包材110の最小厚さは、950μmであった。
【0126】
<水分透過度>
梱包体100Bを構成する梱包材110の水分透過度は、0.08(g/m2・24h)であった。
水分透過度は、実施例2と同様にして測定した。
【0127】
(梱包)
図7及び
図8に示すボトル本体131とスクリューキャップ132とを、室温、Arガス雰囲気下で、開口部137からボトル本体131内に硫化物固体電解質3を装入し、スクリューキャップ132をボトル本体131に螺合することにより、梱包体100B中に硫化物固体電解質3を封入した。これにより、
図5に示す電解質封入構造体1BAを作製した。
【0128】
(評価)
<大気中保存試験>
電解質封入構造体1BAを25℃の大気中で7日間保存した。
7日間保存後の電解質封入構造体1BAのスクリューキャップ132を外して硫化物固体電解質3を取り出し、取り出した硫化物固体電解質3のイオン伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0129】
[比較例1]
以下のようにして
図10に示す電解質封入構造体5Cを作製した。電解質封入構造体5Cの条件等を表1に示す。
【0130】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3として、実施例1と同じアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質を用意した。
【0131】
(梱包体)
梱包体100Cの原料として、
図12に示すチャックシール袋140を用意した。チャックシール袋140の梱包材110は、ポリエチレンPEからなる単一層116のものであった。梱包体100Cの梱包材110の最小厚さは、40μmであった。
【0132】
<水分透過度>
梱包体100Aを構成する梱包材110の水分透過度は、13.1(g/m2・24h)以下であった。
水分透過度は、実施例1と同様にして測定した。
【0133】
(梱包)
図12に示すチャックシール袋140を、室温、露点温度:―70℃のArガス雰囲気下で、開口部147からチャックシール袋140内に硫化物固体電解質3を装入し、チャック部143を閉塞することにより、梱包体100C中に硫化物固体電解質3を封入した。これにより、
図10に示す電解質封入構造体5Cを作製した。
【0134】
(評価)
<大気中保存試験>
電解質封入構造体5Cを25℃の大気中(RH50%)で7日間保存した。
7日間保存後の電解質封入構造体5Cを開封して硫化物固体電解質3を取り出し、取り出した硫化物固体電解質3のイオン伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0135】
実施例及び比較例1より、電解質封入構造体の梱包体100は、水分透過度が10(g/m2・24h)以下、厚さが50μm以上である梱包材110で構成されると、封入した硫化物固体電解質3のイオン伝導率が低下しにくいことが分かった。