(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145442
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電解質封入構造体
(51)【国際特許分類】
B65D 77/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B65D77/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057792
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100203312
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 敬孝
(72)【発明者】
【氏名】中山 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 司
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA05
3E067AB99
3E067BA01A
3E067BA12A
3E067BB11A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BC03A
3E067CA05
3E067EA09
3E067FA03
3E067FB07
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】開封時にH
2Sガスを放出しにくい電解質封入構造体を提供すること。
【解決手段】電解質封入構造体1は、硫化物系固体電解質3と、硫化物系固体電解質3を封入する梱包体と、を有し、前記梱包体は、硫化物系固体電解質3側からn層目(nは1以上の整数)に配置された梱包材からなり、前記nが1である第1梱包体100が硫化物系固体電解質3を封入し、第1梱包体100を封入する梱包体が存在するとき、第1梱包体100を梱包する梱包体は、第1梱包体100の外面側に向かって前記nが順に増加し、第1梱包体100で梱包された空間を第1空間109とし、前記第n梱包体とn-1梱包体とで区画された空間を第n空間としたときに、第1空間109から第n空間までの各空間内に存在する充填ガス中のH
2Sガスの濃度が、7日後に50ppm以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化物系固体電解質と、
前記硫化物系固体電解質を封入する梱包体と、を有し、
前記梱包体は、前記硫化物系固体電解質側からn層目(nは1以上の整数)に配置された梱包材からなり、
前記nが1である第1梱包体が前記硫化物系固体電解質を封入し、前記第1梱包体を封入する梱包体が存在するとき、第1梱包体を梱包する第n梱包体は、前記第1梱包体の外面側に向かって前記nが順に増加し、
前記第1梱包体で梱包された空間を第1空間とし、前記第n梱包体とn-1梱包体とで区画された空間を第n空間としたときに、第1空間から第n空間までの各空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が、7日後に50ppm以下である電解質封入構造体。
【請求項2】
前記第1空間内に存在する充填ガスの露点温度が-20℃以下である請求項1に記載の電解質封入構造体。
【請求項3】
前記充填ガスが、Ar、大気、N2又はCO2である請求項2に記載の電解質封入構造体。
【請求項4】
前記第1梱包体を構成する梱包材は、内面側の少なくとも一部に有機物からなる層を有する請求項1又は2に記載の電解質封入構造体。
【請求項5】
前記第1梱包体は、前記有機物からなる層の溶着によって密封されている請求項4に記載の電解質封入構造体。
【請求項6】
前記有機物は、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンPE、塩素化ポリエチレンSPE、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂である請求項4に記載の電解質封入構造体。
【請求項7】
前記第1梱包体を構成する梱包材は、溶着可能な有機物からなる内側溶着部と、前記内側溶着部の外面に積層形成され、アルミニウムからなる層である外側非溶着部と、を備える請求項4に記載の電解質封入構造体。
【請求項8】
前記第1梱包体を収容して封入する第2梱包体をさらに有し、
前記第1梱包体の外面と前記第2梱包体の内面とで区画される第2空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が50ppm以下である請求項1又は2に記載の電解質封入構造体。
【請求項9】
前記第2梱包体を収容して封入する第3梱包体をさらに有し、
前記第2梱包体の外面と前記第3梱包体の内面とで区画される第3空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が50ppm以下である請求項8に記載の電解質封入構造体。
【請求項10】
硫化物系固体電解質と、
前記硫化物系固体電解質を封入する梱包体と、を有し、
前記梱包体は、前記硫化物系固体電解質側からn層目(nは1以上の整数)に配置された梱包材からなり、
前記nが1である第1梱包体が前記硫化物系固体電解質を封入し、前記第1梱包体を封入する梱包体が存在するとき、第1梱包体を梱包する第n梱包体は、前記第1梱包体の外面側に向かって前記nが順に増加する電解質封入構造体の製造方法であって、
前記第1梱包体で梱包された空間を第1空間とし、前記第n梱包体とn-1梱包体とで区画された空間を第n空間としたときに、第1空間から第n空間までの各空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が、7日後に50ppm以下になるように前記充填ガスを充填する封入工程を含む電解質封入構造体の製造方法。
【請求項11】
前記充填ガスの露点温度が-20℃以下である請求項10に記載の電解質封入構造体の製造方法。
【請求項12】
前記封入工程の前に、前記第1梱包体を50℃以上で乾燥処理する乾燥工程をさらに含む請求項10又は11に記載の電解質封入構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質封入構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2削減による地球温暖化防止に向けた取り組みとして、二次電池が注目されている。このような二次電池として、硫化物固体電解質を用いた固体電池が知られている。硫化物固体電解質としては、リチウムイオン伝導性の一層の向上の観点から、例えばアルジロダイト型結晶構造を有する材料が知られている。ここで、アルジロダイト型結晶構造とは、化学式:Ag8GeS6で表される鉱物に由来する化合物群が有する結晶構造である。なお、固体電池の電解質として用いられる硫化物固体電解質は、通常、粉末状である。粉末状の硫化物固体電解質は、通常、製造後、梱包体に封入された後、保管、輸送される。硫化物固体電解質が梱包体に封入された構造体を、以下、「電解質封入構造体」ともいう。
【0003】
ところで、硫化物固体電解質は、大気中の水分と容易に反応してH2Sガスが発生しやすい。電解質封入構造体の開封時にH2Sガスが放出されると、周辺の装置や機械の金属部分を腐食するおそれがある。このため、電解質封入構造体は、保管、輸送の期間に硫化物固体電解質と大気中の水分との反応等により生じたH2Sガスを放出しにくい構造であることが好ましい。
【0004】
また、硫化物固体電解質は、通常、形状、粒径が所定範囲に制御された粉末状になっている。この硫化物固体電解質の粉末は、大きな外力が加えられると、粒子が破損し、所望の特性を発現できないことがある。このため、硫化物固体電解質は、保管、輸送の際に、硫化物固体電解質の形状、粒径が変化しにくいことが好ましい。
【0005】
電解質封入構造体に関する従来例として、特許文献1には、気体の水及び/又は液体の水と、硫黄系ガスとを吸収する、硫化物系無機固体電解質タイプの全固体リチウムイオンバッテリー用の、吸水性硫黄系ガス吸収包装材料が開示されている。この吸水性硫黄系ガス吸収包装材料は、ナイロンフィルム等からなる基材層と、アルミニウム箔等からなるガスバリア層と、吸水性硫黄系ガス吸収シーラントフィルムからなるヒートシール性のシーラント層とを含み、前記シーラント層は、硫黄系ガス吸収剤と無機系吸水剤とヒートシール性樹脂とを含むとされている。特許文献1の吸水性硫黄系ガス吸収包装材料のシーラント層を内側にした梱包体内に硫化物固体電解質を封入すると電解質封入構造体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の実施例に示されている吸水性硫黄系ガス吸収包装材料は、層構成の一部であるガス吸収フィルムを用いた相対湿度試験において、相対湿度が最大で45%と高く、また基材層が一般的に水分透過度の高い材料として知られているナイロンフィルム等で構成されている。このため、この吸水性硫黄系ガス吸収包装材料に硫化物固体電解質を封入した電解質封入構造体を用いると、保管、輸送期間中に硫化物固体電解質と大気中の水分とが反応することで開封時にH2Sガスを放出するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、開封時にH2Sガスを放出しにくい電解質封入構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、硫化物系固体電解質を封入する第1梱包体を有する電解質封入構造体であって、前記第1梱包体の、前記硫化物固体電解質を封入する側の表面である内面で区画される第1空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が50ppm以下である電解質封入構造体を用いると、開封時にH2Sガスを放出しにくい電解質封入構造体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)本発明に係る電解質封入構造体は、硫化物系固体電解質と、前記硫化物系固体電解質を封入する梱包体と、を有し、前記梱包体は、前記nが1である第1梱包体が前記硫化物系固体電解質を封入し、前記第1梱包体を封入する第n梱包体が存在するとき、第1梱包体を梱包する第n梱包体は、前記第1梱包体の外面側に向かって前記nが順に増加し、前記第1梱包体で梱包された空間を第1空間とし、前記第n梱包体とn-1梱包体とで区画された空間を第n空間としたときに、第1空間から第n空間までの各空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が、7日後に50ppm以下である。
【0011】
(2)前記第1空間内に存在する充填ガスの露点温度が-20℃以下であることが好ましい。
【0012】
(3)前記充填ガスが、Ar、大気、N2又はCO2であることが好ましい。
【0013】
(4)前記第1梱包体を構成する梱包材は、内面側の少なくとも一部に有機物からなる層を有することが好ましい。
【0014】
(5)前記第1梱包体は、前記有機物からなる層の溶着によって密封されていることが好ましい。
【0015】
(6)前記有機物は、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンPE、塩素化ポリエチレンSPE、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂であることが好ましい。
【0016】
(7)前記第1梱包体を構成する梱包材は、溶着可能な有機物からなる内側溶着部と、前記内側溶着部の外面に積層形成され、アルミニウムからなる層である外側非溶着部と、を備えることが好ましい。
【0017】
(8)前記第1梱包体を収容して封入する第2梱包体をさらに有し、前記第1梱包体の外面と前記第2梱包体の内面とで区画される第2空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が50ppm以下であることが好ましい。
【0018】
(9)前記第2梱包体を収容して封入する第3梱包体をさらに有し、前記第2梱包体の外面と前記第3梱包体の内面とで区画される第3空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が50ppm以下であることが好ましい。
【0019】
(10)本発明に係る電解質封入構造体の製造方法は、硫化物系固体電解質と、前記硫化物系固体電解質を封入する梱包体と、を有し、前記梱包体は、前記硫化物系固体電解質側からn層目(nは1以上の整数)に配置された梱包材からなり、前記nが1である第1梱包体が前記硫化物系固体電解質を封入し、前記第1梱包体を封入する梱包体が存在するとき、第1梱包体を梱包する第n梱包体は、前記第1梱包体の外面側に向かって前記nが順に増加する電解質封入構造体の製造方法であって、前記第1梱包体で梱包された空間を第1空間とし、前記第n梱包体とn-1梱包体とで区画された空間を第n空間としたときに、第1空間から第n空間までの各空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が、7日後に50ppm以下になるように前記充填ガスを充填する封入工程を含む。
(11)前記充填ガスの露点温度が-20℃以下であることが好ましい。
(12)前記封入工程の前に、前記第1梱包体を50℃以上で乾燥処理する乾燥工程をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、開封時にH2Sガスを放出しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電解質封入構造体を示す平面図である。
【
図2】
図1の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【
図3】
図1、
図5及び
図7の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が開いた状態で示す。
【
図4】
図3の梱包体を構成する梱包材の断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体を示す平面図である。
【
図6】
図5の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体を示す平面図である。
【
図8】
図7の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る電解質封入構造体を示す斜視図である。
【
図10】
図9の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【
図11】
図9、
図14及び
図16の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が閉じた状態で示す。
【
図12】
図9の電解質封入構造体を構成する梱包体の分解斜視図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体を示す斜視図である。
【
図15】
図14の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【
図16】本発明の第2の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体を示す斜視図である。本発明の第2の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体を示す概略図である。
【
図17】
図16の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る電解質封入構造体1は、硫化物系固体電解質3と、硫化物系固体電解質3を封入する梱包体と、を有する。本発明に係る電解質封入構造体1において、前記梱包体は、硫化物系固体電解質3側からn層目(nは1以上の整数)に配置された梱包材からなり、前記nが1である第1梱包体が硫化物系固体電解質3を封入し、前記第1梱包体を封入する梱包体が存在するとき、第1梱包体を梱包する第n梱包体は、前記第1梱包体の外面側に向かって前記nが順に増加する。本発明に係る電解質封入構造体1は、前記第1梱包体で梱包された空間を第1空間とし、前記第n梱包体とn-1梱包体とで区画された空間を第n空間としたときに、第1空間から第n空間までの各空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図の形状、大きさは、説明の便宜のため適宜変更している。このため、本発明は図面の形状に拘束されるものではない。
【0024】
[電解質封入構造体]
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電解質封入構造体を示す平面図であり、
図2は、
図1の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図であり、
図3は、
図1、
図5及び
図7の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が開いた状態で示す。
図4は、
図3の梱包体を構成する梱包材の断面図である。
【0025】
図1に示す第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AA(1)は、硫化物系固体電解質3と、硫化物系固体電解質3を封入する第1梱包体100A(100)と、を有する。電解質封入構造体1AAにおいて、第1梱包体100Aは、硫化物系固体電解質3側から1層目に配置された梱包材110からなる。
【0026】
電解質封入構造体1AAでは、前記nが1である第1梱包体100Aが硫化物系固体電解質3を封入し、第1梱包体100Aを封入する梱包体は存在しない。電解質封入構造体1AAでは、第1梱包体100Aで梱包された空間を第1空間109で区画された空間を第n空間(第1空間109)としたときに、第1空間109内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0027】
図1に示す第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AA(1)を構成する第1梱包体100A(100)、例えばヒートシール袋120は、それを構成する袋本体121の内部に、硫化物固体電解質3を封入しているため、
図1の紙面垂直方向に厚みを有している。
【0028】
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AA(1)は、硫化物固体電解質3と、硫化物固体電解質3を封入する第1梱包体100A(100)と、を有する。なお、
図2では、袋本体121の厚さを実際よりも強調して示している。
【0029】
図3に示すように、第1梱包体100Aは、封止部122の少なくとも一部を溶着してヒートシール部123を形成することで、硫化物固体電解質3を封入することが可能なヒートシール袋120になっている。第1梱包体100Aは、開口部127が溶着されたヒートシール袋120になっている。
【0030】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3は、典型的には、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む。硫化物固体電解質3は、アルジロダイト型結晶構造を有すると、リチウムイオン伝導性が高く、電気化学的に安定であるため全固体電池として良好な特性を示すため好ましい。ここで、アルジロダイト型結晶構造とは、化学式:Ag8GeS6で表される鉱物に由来する化合物群が有する結晶構造である。硫化物固体電解質3の具体的な組成式としては、Li6PS5Cl、Li6PS5Br、Li5.5PS4.5Cl1.5、Li5.4PS4.4Cl0.8Br0.8、Li6PS5I等が挙げられる。
【0031】
硫化物固体電解質3におけるLi元素、P元素及びS元素の含有量は、適宜調整することができる。
【0032】
硫化物固体電解質3は、硫化物固体電解質3の構成元素の合計モル量を100モル%として、Li元素の含有量が、好ましくは41モル%以上、より好ましくは41モル%以上、さらに好ましくは42モル%以上、さらに一層好ましくは43モル%以上である。また、上記含有量が、好ましくは50モル%以下、より好ましくは48モル%以下、さらに好ましくは47モル%以下、さらに一層好ましくは45モル%以下である。リチウム(Li)元素の含有量が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0033】
硫化物固体電解質3は、硫化物固体電解質3の構成元素の合計モル量を100モル%として、P元素の含有量が、好ましくは7.0モル%以上、より好ましくは7.2モル%以上、さらに好ましくは7.5モル%以上、さらに一層好ましくは7.7モル%以上である。また、上記含有量が、好ましくは20モル%以下、より好ましくは18モル%以下、さらに好ましくは16モル%以下、さらに一層好ましくは12モル%以下である。P元素の含有量が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0034】
硫化物固体電解質3は、硫化物固体電解質3の構成元素の合計モル量を100モル%として、S元素の含有量が、好ましくは31モル%以上、より好ましくは32モル%以上、さらに好ましくは33モル%以上、さらに一層好ましくは34モル%以上である。また、上記含有量が、好ましくは43モル%以下、より好ましくは42モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、さらに一層好ましくは38モル%以下である。S元素の含有量が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0035】
硫化物固体電解質3は、P元素の含有量に対するLi元素の含有量(Li元素の含有量/P元素の含有量)のモル比率が、好ましくは4.8以上、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは5.2以上である。また、上記モル比率が、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.4以下、さらに好ましくは5.8以下である。上記モル比率が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0036】
硫化物固体電解質3は、P元素の含有量に対するS元素の含有量(S元素の含有量/P元素の含有量)のモル比率が、好ましくは3.6以上、より好ましくは4.0以上、さらに好ましくは4.2以上である。また、上記モル比率が、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.6以下である。上記モル比率が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0037】
硫化物固体電解質3は、好ましくは、フッ素(F)元素、塩素(Cl)元素、臭素(Br)元素及びヨウ素(I)元素から選択される少なくとも一種のハロゲン(X)元素をさらに含み、より好ましくは、Cl元素及びBr元素から選択される少なくとも一種のX元素をさらに含む。硫化物固体電解質3が上記元素をさらに含むと、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0038】
硫化物固体電解質3は、硫化物固体電解質3の構成元素の合計モル量を100モル%として、X元素の含有量が、好ましくは3.7モル%以上、より好ましくは4.0モル%以上、さらに好ましくは8.0モル%以上、さらに一層好ましくは10モル%以上である。また、上記含有量が、好ましくは19モル%以下、より好ましくは17モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下、さらに一層好ましくは14モル%以下である。なお、硫化物固体電解質3が二種以上のX元素を含む場合、「X元素の含有量」は、当該二種以上のX元素の合計含有量を意味する。X元素の含有量が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0039】
硫化物固体電解質3は、P元素の含有量に対するX元素の含有量(X元素の含有量/P元素の含有量)のモル比率が、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは1.2以上である。また、上記モル比率が、好ましくは2.1以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である。上記モル比率が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3のリチウムイオン伝導性が向上しやすい。
【0040】
硫化物固体電解質3は、Li元素、P元素、S元素及びX元素以外の一種又は二種以上の元素(以下「その他の元素」という。)を含んでもよい。その他の元素としては、例えば、ケイ素(Si)元素、ゲルマニウム(Ge)元素、スズ(Sn)元素、鉛(Pb)元素、ホウ素(B)元素、アルミニウム(Al)元素、ガリウム(Ga)元素、ヒ素(As)元素、アンチモン(Sb)元素、ビスマス(Bi)元素等が挙げられる。
【0041】
硫化物固体電解質3は、D50が、好ましくは0.10μm以上、より好ましくは0.20μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上、特に好ましくは0.5μm以上である。また、上記D50が、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。D50が上記範囲内にあると、硫化物固体電解質3を正負極の電極内部に均一に分布して良好な電池特性が得られやすい。なお、D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される当該粉末の体積基準の粒度分布において、累積体積が50%となる粒径である。
【0042】
(第1梱包体)
第1梱包体100Aは、硫化物固体電解質3を封入する構造体である。
【0043】
電解質封入構造体1AAでは、第1梱包体100Aの、硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内、及び第1梱包体100A自体か又は第1梱包体100Aを内包する梱包体であってかつ電解質封入構造体1AAの最外部の梱包体である最外梱包体900内の全空間である梱包空間959内の各空間、に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が特定範囲内になっている。具体的には、電解質封入構造体1AAでは、第1空間109内に存在する充填ガスFG(第1空間ガス119)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0044】
電解質封入構造体1AAでは、最外梱包体900は第1梱包体100A自体である。電解質封入構造体1AAでは、最外梱包体900が第1梱包体100A自体であるため、梱包空間959は第1空間109と同一になる。なお、梱包空間959内に存在するガスを梱包空間ガス969という。電解質封入構造体1AAでは、梱包空間ガス969は、第1空間109内に存在する充填ガスFGである後述の第1空間ガス119のみとなる。すなわち、電解質封入構造体1AAでは、充填ガスFGは、第1空間ガス119のみとなる。
【0045】
第1梱包体100Aは、硫化物固体電解質3を封入する機能(以下、「第1封入機能」ともいう)を有する。なお、第1梱包体100Aは、水分透過度が低い機能(以下、「第1低水分透過機能」ともいう)をさらに有すると、硫化物固体電解質3と水分との反応によるH2Sの生成が抑制されることで、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0046】
図2及び
図3に示されるように、第1梱包体100Aは、シート状の梱包材110を用いて、硫化物固体電解質3を封入可能なヒートシール袋120としたものである。
【0047】
図3に示すように、第1梱包体100Aを構成するヒートシール袋120は、袋本体121と、袋本体121に連続して形成され端部に開口部127を形成する帯状部材である封止部122と、を備える。封止部122は、その少なくとも一部を溶着してヒートシール部123を形成することで第1梱包体100A内に硫化物固体電解質3を封入することが可能になっている。
【0048】
図2に示すように、第1梱包体100Aでは、第1梱包体100Aの硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内に、硫化物固体電解質3が封入される。ヒートシール袋120からなる第1梱包体100Aは、比較的扁平形状であるため収納のスペース効率が高い。
【0049】
第1空間109内には、充填ガスFGが封入される。充填ガスFGとしては、Ar、大気、N2又はCO2等が用いられる。このうちArは、硫化物固体電解質3との反応性が低いため好ましい。第1空間109内に存在する充填ガスFGを、以下、第1空間ガス119ともいう。なお、第1空間ガス119は硫化物固体電解質3との反応等により成分が変化することがある。
【0050】
電解質封入構造体1AAでは、第1梱包体100Aの、硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内、及び第1梱包体100A自体か又は第1梱包体100Aを内包する梱包体であってかつ電解質封入構造体1AAの最外部の梱包体である最外梱包体900内の全空間である梱包空間959内の各空間、に存在する充填ガスFG(第1空間ガス119、梱包空間ガス969)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が上記範囲内にあると、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0051】
第1空間109に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が後者の範囲内にあるほど、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0052】
第1空間109に存在する充填ガスFGの露点温度は、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-60℃以下である。充填ガスFGの露点温度が後者の範囲内にあるほど、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0053】
硫化物固体電解質3を封入した状態の第1梱包体100Aにおいて、第1空間109の体積V1(cm3)に対する、硫化物固体電解質3の物質自体の体積VSE(cm3)の比率(VSE/V1)である第1充填率は、例えば0%超、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。また、上記充填率は、例えば50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。第1充填率が0%超であると、収納のスペース効率が高くなりやすい。また、第1充填率が50%以下であると、硫化物固体電解質3の粒子が押しつぶされることによる凝集や粒子形状の変化が抑制されやすい。
【0054】
第1梱包体100Aを構成する梱包材110は、硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を特定範囲内にすることが可能な材質、構造になっている。
【0055】
第1充填率(%)は、例えば、ピクノメータ法(ガス置換法)で求めた硫化物固体電解質3の真密度Dt(g/cm3)の逆数に硫化物固体電解質3の質量M(g)を乗じた値から梱包材の内容積V1(cm3)を除し、さらにこの値に100を乗じた式である(1/Dt)M/V1×100で算出することができる。
【0056】
第1梱包体100Aを構成する梱包材110は、封止部122を含めヒートシール袋120全体が、
図4に示すように、溶着可能な有機物からなる内側溶着部117と、内側溶着部117の外面に積層形成され、アルミニウムからなる層である外側非溶着部118と、を備える複層構造になっている。
【0057】
梱包材110がこのような複層構造であると、水分透過度が例えば10(g/m2・24h)以下のように低い材料(以下、「低水分透過材料」ともいう)からなる外側非溶着部118を用いる場合に、第1梱包体100Aに、内側溶着部117の溶着による硫化物固体電解質3を封入する第1封入機能と、外側非溶着部118による第1低水分透過機能と、を付与することができる。外側非溶着部118に第1低水分透過機能が付与されると、硫化物固体電解質3からのH2Sガスの発生の抑制が容易になる。
【0058】
ここで、内側溶着部117とは、梱包材110の表面のうち、硫化物固体電解質3を封入した場合に硫化物固体電解質3側に位置する表面である内面107を含みかつ溶着に寄与する部材を意味する。内面107及び表面については、
図2に示す。
【0059】
内側溶着部117は、1種又は2種以上の溶着可能な有機物からなる単層構造であってもよいし、2種以上の溶着可能な有機物が2層以上の層状に形成された図示しない複層構造であってもよい。内側溶着部117が複層構造である場合、内側溶着部117は、内面107を含む最内層と、最内層から見て外側非溶着部118側に積層される1層以上の隣接内層とを備える。
【0060】
例えば、内側溶着部117は、溶着可能な有機物W1からなり内面107を含む最内層と、溶着可能な有機物W2からなり最内層から見て外側非溶着部118側に積層される第1隣接内層と、を備える2層構造とすることができる。
【0061】
また、内側溶着部117は、溶着可能な有機物W1からなり内面107を含む最内層と、溶着可能な有機物W2からなり最内層から見て外側非溶着部118側に積層される第1隣接内層と、溶着可能な有機物W3からなり第1隣接内層から見て外側非溶着部118側に積層される第2隣接内層と、を備える3層構造とすることができる。
【0062】
外側非溶着部118とは、梱包材110の表面のうち、硫化物固体電解質3を封入した場合に内面107と反対側の表面である外面108を含みかつ溶着に寄与しない部材を意味する。外面108及び表面については、
図2に示す。
【0063】
外側非溶着部118は、1種又は2種以上の材質からなる単層構造であってもよいし、2種以上の材質からなる図示しない複層構造であってもよい。外側非溶着部118が複層構造である場合、外側非溶着部118は、外面108を含む最外層と、最外層から見て内側溶着部117側に積層される1層以上の補助外層とを備える。
【0064】
例えば、外側非溶着部118は、材質N1からなり外面108を含む最外層と、材質N2からなり最外層から見て内側溶着部117側に積層される第1隣接外層と、を備える2層構造とすることができる。
【0065】
また、外側非溶着部118は、材質N1からなり外面108を含む最外層と、材質N2からなり最外層から見て内側溶着部117側に積層される第1隣接外層と、材質N3からなり第1隣接外層から見て内側溶着部117側に積層される第2隣接外層と、を備える3層構造とすることができる。
【0066】
内側溶着部117を構成する溶着可能な有機物としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンPE、塩素化ポリエチレンSPE、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂が用いられる。このうち、ポリエチレンPEは汎用性が高くかつリサイクル性に優れるため好ましい。
【0067】
内側溶着部117を構成する1層以上の層は、それぞれ、溶着可能な有機物の1種以上の有機樹脂からなるものとすることができる。例えば、内側溶着部117は、1種の有機樹脂からなる層と、2種以上の有機樹脂からなる層と、を備えるものであってもよい。2種以上の有機樹脂からなる層は、例えば、2種以上の有機樹脂の混合物からなる層とすることができる。
【0068】
外側非溶着部118は低水分透過材料からなると、第1梱包体100Aに、第1低水分透過機能を付与することができるため好ましい。
【0069】
外側非溶着部118に用いられる低水分透過材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス及び鉄等の金属、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、塩素化ポリエチレン(SPE)、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂等の有機物が用いられる。このうち、アルミニウは第1梱包体100Aを構成する梱包材110の水分透過度を低くしやすいため好ましい。
【0070】
このため、梱包材110が、外側非溶着部118としてアルミニウム層118を含むと、梱包材110の水分透過度を低くしやすいため好ましい。
【0071】
外側非溶着部118を構成する1層以上の層は、それぞれ、1種以上の材質からなるものとすることができる。例えば、外側非溶着部118は、1種の材質からなる層と、2種以上の材質からなる層と、を備えるものであってもよい。2種以上の材質からなる層は、例えば、2種以上の有機樹脂の混合物からなる層とすることができる。
【0072】
複層構造の梱包材110としては、例えば、内面107側から、ポリエチレンPEからなる内側溶着部117の最内層、塩素化ポリエチレンSPEからなる内側溶着部117の第1隣接内層、アルミニウムからなる外側非溶着部118、がこの順番に積層された3層構造の梱包材を用いることができる。
【0073】
また、複層構造の梱包材110としては、例えば、内面107側から、ポリエチレンPEからなる内側溶着部117の最内層、塩素化ポリエチレンSPEからなる内側溶着部117の第1隣接内層、アルミニウムからなる外側非溶着部118の第2隣接外層、塩素化ポリエチレンSPEかからなる外側非溶着部118の第1隣接外層、ポリエチレンPEからなる外側非溶着部118の最外層、がこの順番に積層された5層構造の梱包材を用いることができる。
【0074】
このように、電解質封入構造体1AAでは、第1梱包体100Aを構成する梱包材110は、内面107側の少なくとも一部に有機物からなる層、いわゆる内側溶着部117を有する。また、内側溶着部117が溶着可能な有機物からなる場合、電解質封入構造体1AAの第1梱包体100Aは、ヒートシール部123における有機物からなる層、いわゆる内側溶着部117の溶着によって密封される。
【0075】
第1梱包体100Aを構成する梱包材110の厚さは、第1梱包体100Aの最も薄い部分において、例えば50μm以上、好ましくは100μm以上である。また、上記最も薄い部分の厚さは、好ましくは10000μm以下である。梱包材110の厚さが上記範囲内にあると、水分透過度を低くしやすいため好ましい。また、機械的強度も高められ外部からの衝撃が加わった際にピンホールが生じ、大気が混入することを抑制できるため好ましい。
【0076】
第1梱包体100Aの梱包材110は、
図4に示すように複層構造になっている。しかし、梱包材110が第1封入機能を備える限りにおいて、第1梱包体100Aの梱包材110を
図4に示す複層構造以外の層構造、例えば
図13に示すような単層構造とすることができる。
【0077】
外側非溶着部118が低水分透過材料からなる場合、ヒートシール袋120からなる第1梱包体100Aでは、梱包材110の材質が主に第1封入機能及び第1低水分透過機能に寄与し、ヒートシール袋120からなる第1梱包体100Aの構造が主に第1封入機能に寄与するようになっている。
【0078】
例えば、梱包材110の外側非溶着部118が低水分透過材料からなる場合、第1梱包体100Aの梱包材110の内側溶着部117が溶着することにより第1封入機能が主に発現し、梱包材110の外側非溶着部118により第1低水分透過機能も主に発現する。また、ヒートシール袋120からなる第1梱包体100Aのヒートシール部123により第1封入機能が主に発現する。
【0079】
(効果)
電解質封入構造体1AAによれば、開封時にH2Sガスを放出しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【0080】
また、電解質封入構造体1AAによれば、ヒートシール袋120からなる第1梱包体100Aが比較的扁平形状であるため収納のスペース効率が高い電解質封入構造体を提供することができる。
【0081】
電解質封入構造体1AAの第1空間109内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、公知の方法により、測定することができる。
【0082】
<第1の実施形態の第1変形例>
図5は、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体を示す平面図であり、
図6は、
図5の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【0083】
図5及び
図6に示す第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1AB(1)は、硫化物系固体電解質3と、硫化物系固体電解質3を封入する第1梱包体100A(100)と、第1梱包体100Aを封入する第2梱包体200A(200)と、を有する。電解質封入構造体1ABにおいて、第1梱包体100A及び第2梱包体200Aは、硫化物系固体電解質3側から1層目及び2層目に配置された梱包材110、210からなる。
【0084】
電解質封入構造体1ABは、第1梱包体100Aの梱包材110の内面107と、第1梱包体100A内に封入される硫化物系固体電解質3と、の間で区画される第1空間109を有する。また、電解質封入構造体1ABは、第2梱包体200Aの梱包材210の内面207と、第1梱包体100Aと、の間で区画される第2空間209を有する。電解質封入構造体1ABでは、前記nが1である第1梱包体100Aが硫化物系固体電解質3を封入し、第1梱包体100Aを封入する梱包体が存在し、第1梱包体100Aを梱包する第n梱包体(第2梱包体200A)は、第1梱包体100Aの外面側に向かって前記nが順に増加するように設けられている。電解質封入構造体1ABでは、第1梱包体100Aで梱包された空間を第1空間109とし、第n梱包体(第2梱包体200A)とn-1梱包体(第1梱包体100A)とで区画された空間を第n空間(第2空間209)としたときに、第1空間109から第n空間(第2空間209)までの各空間(第1空間109、第2空間209)内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0085】
図5及び
図6に示すように、第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1AB(1)は、硫化物固体電解質3を封入する第1梱包体100A(100)と、第1梱包体100Aを収容して封入する第2梱包体200A(200)と、を有する。第1梱包体100Aを収容して封入する第2梱包体200Aの袋本体221は
図5の紙面垂直方向に厚みを有している。なお、
図6では、袋本体121、221の厚さを実際よりも強調して示している。
【0086】
第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1ABは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAが、第1梱包体100Aを収容して封入する第2梱包体200Aをさらに有するものである。
【0087】
図3に示すように、第2梱包体200Aは、封止部222の少なくとも一部を溶着してヒートシール部223を形成することで、第1梱包体100Aを封入することが可能なヒートシール袋220になっている。第1梱包体100Aは、開口部227が溶着されたヒートシール袋220になっている。
【0088】
第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1ABは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAに比較して、第2梱包体200Aをさらに備える以外は、同じである。このため、第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1ABと、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAとで同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。以下、主に第2梱包体200Aに関して説明する。
【0089】
(第2梱包体)
第2梱包体200Aは、第1梱包体100Aを収容して封入する構造体である。
【0090】
電解質封入構造体1ABでは、第1梱包体100Aの外面108と第2梱包体200Aの内面207とで区画される第2空間209内、及び第1梱包体100A自体か又は第1梱包体100Aを内包する梱包体であってかつ電解質封入構造体1AAの最外部の梱包体である最外梱包体900内の全空間である梱包空間959内の各空間、に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が特定範囲内になっている。具体的には、電解質封入構造体1ABでは、第1空間109及び第2空間209の各空間内に存在する充填ガスFG(第1空間ガス119及び第2空間ガス219)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0091】
電解質封入構造体1ABでは、最外梱包体900は第2梱包体200Aである。電解質封入構造体1ABでは、梱包空間959は第1空間109及び第2空間209となる。電解質封入構造体1ABでは、梱包空間ガス969は、第1空間ガス119、及び第2空間209内に存在する充填ガスFGである後述の第2空間ガス219となる。すなわち、電解質封入構造体1ABでは、充填ガスFGは、第1空間ガス119及び第2空間ガス219となる。
【0092】
第2梱包体200Aは、硫化物固体電解質3を封入している第1梱包体100Aである電解質封入構造体1AAを封入する機能を有する。このような第1梱包体100を封入する機能を、以下、「第2封入機能」ともいう。なお、第2梱包体200Aは、水分透過度が低い機能(以下、「第2低水分透過機能」ともいう)をさらに有すると、硫化物固体電解質3と水分との反応によるH2Sの生成が抑制されることで、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0093】
図6及び
図3に示されるように、第2梱包体200Aは、シート状の梱包材210を用いて、第1梱包体100Aを収容して封入可能なヒートシール袋220としたものである。
【0094】
図3に示すように、第2梱包体200Aを構成するヒートシール袋220は、第1梱包体100Aを構成するヒートシール袋120と同様の構造をしている。すなわち、
図3に示すように、第2梱包体200Aを構成するヒートシール袋220は、袋本体221と、袋本体221に連続して形成され端部に開口部227を形成する帯状部材である封止部222と、を備える。第2梱包体200Aの封止部222は、その少なくとも一部を溶着してヒートシール部223を形成することで第2梱包体200A内に第1梱包体100Aを収容して封入することが可能になっている。
【0095】
図3に示すように、第2梱包体200Aでは、第2梱包体200Aの第1梱包体100Aを封入する側の表面である内面207で区画される第2空間209内に、第1梱包体100Aが封入される。ヒートシール袋220からなる第2梱包体200Aは、比較的扁平形状であるため収納のスペース効率が高い。
【0096】
第2空間209内には、充填ガスFGが封入される。第2空間209内に封入される充填ガスFGとしては、第1空間109内に封入される充填ガスFGで用いられる充填ガスFGと同様の、Ar、大気、N2又はCO2等が用いられる。このうちArは、たとえ第1梱包体100Aが破損することにより硫化物固体電解質3が第2空間209内の雰囲気に曝露される場合でも、硫化物固体電解質3との反応性が低いため好ましい。なお、第2空間209内に封入される充填ガスFGと、第1空間109内に封入される充填ガスFGとは、成分や濃度が同一であってもよいし異なっていてもよい。第2空間209内に存在する充填ガスFGを、以下、第2空間ガス219ともいう。なお、第2空間ガス219は硫化物固体電解質3との反応等により成分が変化することがある。
【0097】
電解質封入構造体1ABでは、第2空間209内に存在する充填ガスFG(第2空間ガス219)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が上記範囲内にあると、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0098】
第2空間209に封入される充填ガスFG(第2空間ガス219)中のH2Sガスの濃度の好ましい数値範囲及びその理由は、第1空間109に封入される充填ガスFG(第1空間ガス119)と同様である。
【0099】
第2空間209に存在する充填ガスFGの露点温度の好ましい数値範囲及びその理由は、第1空間109に封入される充填ガスFGと同様である。
【0100】
第2梱包体200Aを構成する梱包材210は、第1梱包体100Aを封入する側の表面である内面207で区画される第2空間209内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を特定範囲内にすることが可能な材質、構造になっている。
【0101】
第2梱包体200Aを構成する梱包材210は、封止部222を含めヒートシール袋220全体が、
図4に示すように、溶着可能な有機物からなる内側溶着部217と、内側溶着部217の外面に積層形成され、アルミニウムからなる層である外側非溶着部218と、を備える複層構造になっている。
【0102】
梱包材210がこのような複層構造であると、低水分透過材料からなる外側非溶着部218を用いる場合に、第2梱包体200Aに、内側溶着部217の溶着による第1梱包体100Aを封入する第2封入機能と、外側非溶着部218による第2低水分透過機能と、を付与することができる。
【0103】
第2梱包体200Aの内側溶着部217及び外側非溶着部218とは、第1梱包体100Aにおける内側溶着部117及び外側非溶着部118と同様の概念であるため、説明を省略する。
【0104】
内側溶着部217を構成する溶着可能な有機物としては、第1梱包体100Aの内側溶着部117で用いられる有機物と同様の有機物が同様の理由で用いられる。なお、内側溶着部217を構成する溶着可能な有機物と、第1梱包体100Aの内側溶着部117を構成する溶着可能な有機物とは、成分や濃度が同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0105】
外側非溶着部218は低水分透過材料からなると、第2梱包体200Aに、第2低水分透過機能を付与することができるため好ましい。
【0106】
外側非溶着部218に用いられる低水分透過材料としては、第1梱包体100Aの外側非溶着部118で用いられる低水分透過材料と同様の低水分透過材料が同様の理由で用いられる。
【0107】
このため、梱包材210が、外側非溶着部218としてアルミニウム層218を含むと、梱包材210の水分透過度を低くしやすいため好ましい。
【0108】
第2梱包体200Aを構成する梱包材210の厚さは、第2梱包体200Aの最も薄い部分において、第1梱包体100を構成する梱包材110の厚さと同様の理由で同一数値範囲内になっている。
【0109】
内側溶着部217の厚さは、第2梱包体200Aの最も薄い部分において、第1梱包体100を構成する内側溶着部117の厚さと同様の理由で同一数値範囲内になっている。
【0110】
外側非溶着部218の厚さは、第2梱包体200Aの最も薄い部分において、第1梱包体100を構成する外側非溶着部118の厚さと同様の理由で同一数値範囲内になっている。
【0111】
第2梱包体200Aの梱包材210は、
図4に示すように複層構造になっている。しかし、梱包材210が第2封入機能を備える限りにおいて、第2梱包体200Aの梱包材210を
図4に示す複層構造以外の層構造、例えば
図13に示すような単層構造とすることができる。
【0112】
外側非溶着部218が低水分透過材料からなる場合、ヒートシール袋220からなる第2梱包体200Aでは、梱包材210の材質が主に第2封入機能及び第2低水分透過機能に寄与し、ヒートシール袋220からなる第2梱包体200Aの構造が主に第2封入機能に寄与するようになっている。
【0113】
例えば、梱包材210の外側非溶着部218が低水分透過材料からなる場合、第2梱包体200Aの梱包材210の内側溶着部217が溶着することにより第2封入機能が主に発現し、梱包材210の外側非溶着部218により第2低水分透過機能も主に発現する。また、ヒートシール袋220からなる第2梱包体200Aのヒートシール部223により第2封入機能が主に発現する。
【0114】
(効果)
電解質封入構造体1ABによれば、電解質封入構造体1AAに比較して開封時にH2Sガスをより放出しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【0115】
また、電解質封入構造体1ABによれば、ヒートシール袋120からなる第1梱包体100Aが比較的扁平形状であるため収納のスペース効率が高い電解質封入構造体を提供することができる。
【0116】
電解質封入構造体1ABの第1空間109内及び第2空間209内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、公知の方法により、測定することができる。
【0117】
<第1の実施形態の第2変形例>
図7は、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体を示す平面図であり、
図8は、
図7の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【0118】
図7及び
図8に示すように、第1の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1AC(1)は、硫化物系固体電解質3と、硫化物系固体電解質3を封入する第1梱包体100A(100)と、第1梱包体100Aを封入する第2梱包体200A(200)と、第2梱包体200Aを封入する第3梱包体300A(300)と、を有する。電解質封入構造体1ACにおいて、第1梱包体100A、第2梱包体200A及び第3梱包体300Aは、硫化物系固体電解質3側から1層目、2層目及び3層目に配置された梱包材110、210、310からなる。
【0119】
電解質封入構造体1ACは、第1梱包体100Aの梱包材110の内面107と、第1梱包体100A内に封入される硫化物系固体電解質3と、の間で区画される第1空間109を有する。また、電解質封入構造体1ACは、第2梱包体200Aの梱包材210の内面207と、第1梱包体100Aと、の間で区画される第2空間209を有する。さらに、電解質封入構造体1ACは、第3梱包体300Aの梱包材310の内面307と、第2梱包体200Aと、の間で区画される第3空間309を有する。電解質封入構造体1ACでは、前記nが1である第1梱包体100Aが硫化物系固体電解質3を封入し、第1梱包体100Aを封入する梱包体が存在し、第1梱包体100Aを梱包する第n梱包体(第2梱包体200A)は、第1梱包体100Aの外面側に向かって前記nが順に増加するように設けられている。電解質封入構造体1ACでは、第1梱包体100Aで梱包された空間を第1空間109とし、第n梱包体(第2梱包体200A)とn-1梱包体(第1梱包体100A)とで区画された空間を第n空間(第2空間209)、第n梱包体(第3梱包体300A)とn-1梱包体(第2梱包体200A)とで区画された空間を第n空間(第3空間309)、としたときに、第1空間109から第n空間(第3空間309)までの各空間(第1空間109、第2空間209、第3空間309)内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0120】
図7及び
図8に示すように、第1の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1AC(1)は、硫化物固体電解質3を封入する第1梱包体100A(100)と、第1梱包体100Aを収容して封入する第2梱包体200A(200)と、第2梱包体200Aを収容して封入する第3梱包体300A(300)を有する。電解質封入構造体1ACは、電解質封入構造体1ABを含むため、
図7の紙面垂直方向に厚みを有している。なお、
図8では、袋本体121、221及び321の厚さを実際よりも強調して示している。
【0121】
第1の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1ACは、第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1ABにおいて、第2梱包体200Aを収容して封入する第3梱包体300Aをさらに有するものである。
【0122】
図3に示すように、第3梱包体300Aは、封止部322の少なくとも一部を溶着してヒートシール部323を形成することで、第2梱包体200Aを封入することが可能なヒートシール袋320になっている。第2梱包体200Aは、開口部327が溶着されたヒートシール袋320になっている。
【0123】
第1の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1ACは、第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1ABに比較して、第3梱包体300Aをさらに備える以外は、同じである。このため、第1の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1ACと、第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1ABとで同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。以下、主に第3梱包体300Aに関して説明する。
【0124】
(第3梱包体)
第3梱包体300Aは、第2梱包体200Aを収容して封入する構造体である。
【0125】
電解質封入構造体1ACでは、前記nが1である第1梱包体100Aが硫化物系固体電解質3を封入し、第1梱包体100Aを封入する梱包体が存在し、第1梱包体100Aを梱包する第n梱包体(第2梱包体200A、第3梱包体300A)は、第1梱包体100Aの外面側に向かって前記nが順に増加するように設けられている。
電解質封入構造体1ACでは、第2梱包体200Aの外面208と第3梱包体300Aの内面307とで区画される第3空間309内、及び第1梱包体100A自体か又は第1梱包体100Aを内包する梱包体であってかつ電解質封入構造体1AAの最外部の梱包体である最外梱包体900内の全空間である梱包空間959内の各空間、に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が特定範囲内になっている。具体的には、電解質封入構造体1ACでは、第1梱包体100Aで梱包された空間を第1空間109とし、第n梱包体(第2梱包体200A)とn-1梱包体(第1梱包体100A)とで区画された空間を第n空間(第2空間209)、第n梱包体(第3梱包体300A)とn-1梱包体(第2梱包体200A)とで区画された空間を第n空間(第3空間309)としたときに、第1空間109から第n空間(第2空間209)までの各空間(第1空間109、第2空間209、第3空間309)内に存在する充填ガスFG(第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0126】
電解質封入構造体1ACでは、最外梱包体900は第3梱包体300Aである。電解質封入構造体1ACでは、梱包空間959は第1空間109、第2空間209及び第3空間309となる。電解質封入構造体1ACでは、梱包空間ガス969は、第1空間ガス119、第2空間ガス219、及び第3空間309内に存在する充填ガスFGである後述の第3空間ガス319となる。すなわち、電解質封入構造体1ACでは、充填ガスFGは、第1空間ガス119、第2空間ガス219、及び第3空間ガス319となる。
【0127】
第3梱包体300Aは、電解質封入構造体1ABの最外層を構成する第2梱包体200Aを封入する機能を有する。このような第2梱包体200を封入する機能を、以下、「第3封入機能」ともいう。なお、第3梱包体300Aは、水分透過度が低い機能(以下、「第3低水分透過機能」ともいう)をさらに有すると、硫化物固体電解質3と水分との反応によるH2Sの生成が抑制されることで、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0128】
図8及び
図3に示されるように、第3梱包体300Aは、シート状の梱包材310を用いて、第2梱包体200Aを収容して封入可能なヒートシール袋320としたものである。
【0129】
図8に示すように、第3梱包体300Aを構成するヒートシール袋320は、第1梱包体100Aを構成するヒートシール袋120と同様の構造をしている。すなわち、
図3に示すように、第3梱包体300Aを構成するヒートシール袋320は、袋本体321と、袋本体321に連続して形成され端部に開口部327を形成する帯状部材である封止部322と、を備える。第3梱包体300Aの封止部322は、その少なくとも一部を溶着してヒートシール部323を形成することで第3梱包体300A内に第2梱包体200Aを収容して封入することが可能になっている。
【0130】
図8に示すように、第3梱包体300Aでは、第3梱包体300Aの第2梱包体200Aを封入する側の表面である内面307で区画される第3空間309内に、第2梱包体200Aが封入される。ヒートシール袋320からなる第3梱包体300Aは、比較的扁平形状であるため収納のスペース効率が高い。
【0131】
第3空間309内には、充填ガスFGが封入される。第3空間309内に封入される充填ガスFGとしては、第1空間109内に封入される充填ガスFGで用いられる充填ガスFGと同様の、Ar、大気、N2又はCO2等が用いられる。このうちArは、たとえ第1梱包体100A及び第2梱包体200Aが破損することにより硫化物固体電解質3が第3空間309内の雰囲気に曝露される場合でも、硫化物固体電解質3との反応性が低いため好ましい。なお、第3空間309内に封入される充填ガスFGと、第1空間109内に封入される充填ガスFGとは、成分や濃度が同一であってもよいし異なっていてもよい。第3空間309内に存在する充填ガスFGを、以下、第3空間ガス319ともいう。なお、第3空間ガス319は硫化物固体電解質3との反応等により成分が変化することがある。
【0132】
電解質封入構造体1ACでは、第3空間309内に存在する充填ガスFG(第3空間ガス319)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が上記範囲内にあると、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0133】
第3空間309に封入される充填ガスFG(第3空間ガス319)中のH2Sガスの濃度の好ましい数値範囲及びその理由は、第1空間109に封入される充填ガスFG(第1空間ガス119)と同様である。
【0134】
第3空間309に封入される充填ガスFGの露点温度の好ましい数値範囲及びその理由は、第1空間109に封入される充填ガスFGと同様である。
【0135】
第3梱包体300Aを構成する梱包材310は、第2梱包体200Aを封入する側の表面である内面307で区画される第3空間309内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を特定範囲内にすることが可能な材質、構造になっている。
【0136】
第3梱包体300Aを構成する梱包材310は、封止部322を含めヒートシール袋320全体が、
図4に示すように、溶着可能な有機物からなる内側溶着部317と、内側溶着部317の外面に積層形成され、アルミニウムからなる層である外側非溶着部318と、を備える複層構造になっている。
【0137】
梱包材310がこのような複層構造であると、低水分透過材料からなる外側非溶着部318を用いる場合に、第3梱包体300Aに、内側溶着部317の溶着による第2梱包体200Aを封入する第3封入機能と、外側非溶着部318による第3低水分透過機能と、を付与することができる。
【0138】
第3梱包体300Aの内側溶着部317及び外側非溶着部318とは、第1梱包体100Aにおける内側溶着部117及び外側非溶着部118と同様の概念であるため、説明を省略する。
【0139】
内側溶着部317を構成する溶着可能な有機物としては、第1梱包体100Aの内側溶着部117で用いられる有機物と同様の有機物が同様の理由で用いられる。なお、内側溶着部317を構成する溶着可能な有機物と、第1梱包体100Aの内側溶着部117を構成する溶着可能な有機物とは、成分や濃度が同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0140】
外側非溶着部318は低水分透過材料からなると、第3梱包体300Aに、第3低水分透過機能を付与することができるため好ましい。
【0141】
外側非溶着部318に用いられる低水分透過材料としては、第1梱包体100Aの外側非溶着部118で用いられる低水分透過材料と同様の低水分透過材料が同様の理由で用いられる。
【0142】
このため、梱包材310が、外側非溶着部318としてアルミニウム層318を含むと、梱包材310の水分透過度を低くしやすいため好ましい。
【0143】
第3梱包体300Aを構成する梱包材310の厚さは、第3梱包体300Aの最も薄い部分において、第1梱包体100を構成する梱包材110の厚さと同様の理由で同一数値範囲内になっている。
【0144】
内側溶着部317の厚さは、第3梱包体300Aの最も薄い部分において、第1梱包体100を構成する内側溶着部117の厚さと同様の理由で同一数値範囲内になっている。
【0145】
外側非溶着部318の厚さは、第3梱包体300Aの最も薄い部分において、第1梱包体100を構成する外側非溶着部118の厚さと同様の理由で同一数値範囲内になっている。
【0146】
第3梱包体300Aの梱包材310は、
図4に示すように複層構造になっている。しかし、梱包材310が第3封入機能を備える限りにおいて、第3梱包体300Aの梱包材310を
図4に示す複層構造以外の層構造、例えば
図13に示すような単層構造とすることができる。
【0147】
外側非溶着部318が低水分透過材料からなる場合、ヒートシール袋320からなる第3梱包体300Aでは、梱包材310の材質が主に第3封入機能及び第3低水分透過機能に寄与し、ヒートシール袋320からなる第3梱包体300Aの構造が主に第3封入機能に寄与するようになっている。
【0148】
例えば、梱包材310の外側非溶着部318が低水分透過材料からなる場合、第3梱包体300Aの梱包材310の内側溶着部317が溶着することにより第3封入機能が主に発現し、梱包材310の外側非溶着部318により第3低水分透過機能も主に発現する。また、ヒートシール袋320からなる第3梱包体300Aのヒートシール部323により第3封入機能が主に発現する。
【0149】
(効果)
電解質封入構造体1ACによれば、電解質封入構造体1ABに比較して開封時にH2Sガスをより放出しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【0150】
また、電解質封入構造体1ACによれば、ヒートシール袋120からなる第1梱包体100Aが比較的扁平形状であるため収納のスペース効率が高い電解質封入構造体を提供することができる。
【0151】
電解質封入構造体1ACの第1空間109内、第2空間209内及び第3空間309内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、公知の方法により、測定することができる。
【0152】
<第2の実施形態>
図9は、本発明の第2の実施形態に係る電解質封入構造体を示す斜視図であり、
図10は、
図9の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図であり、
図11は、
図9、
図14及び
図16の電解質封入構造体を構成する梱包体の斜視図であって、開口部が閉じた状態で示し、
図12は、
図9の電解質封入構造体を構成する梱包体の分解斜視図であり、そして、
図13は、
図11の梱包体を構成する梱包材の断面図である。
【0153】
図9及び
図10に示す第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BA(1)は、硫化物系固体電解質3と、硫化物系固体電解質3を封入する第1梱包体100B(100)と、を有する。電解質封入構造体1BAにおいて、第1梱包体100Bは、硫化物系固体電解質3側から1層目に配置された梱包材110からなる。
【0154】
電解質封入構造体1BAは、第1梱包体100Bの梱包材110の内面107と、第1梱包体100B内に封入される硫化物系固体電解質3と、の間で区画される第1空間109を有する。電解質封入構造体1BAでは、第1梱包体100Bで梱包された空間を第1空間109で区画された空間を第n空間(第1空間109)としたときに、第1空間109内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0155】
図9及び
図10に示すように、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BA(1)は、硫化物固体電解質3と、硫化物固体電解質3を封入する梱包体100B(100)と、を有する。第1梱包体100Bは、蓋付ボトル130からなる。
【0156】
図9及び
図10に示すように、第1梱包体100Bは、ボトル本体131の外面に設けられた第1連結部133である雄ねじ部と、スクリューキャップ132の内面に設けられた第2連結部134である雌ねじ部と、を螺合させることで第1梱包体100B内に硫化物固体電解質3を封入することが可能な蓋付ボトル130になっている。第1梱包体100Bは、スクリューキャップ132を備えた蓋付ボトル130になっている。
【0157】
第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAに比較して、第1梱包体100Aを第1梱包体100Bに代えた以外は、同じである。このため、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAと、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAとで同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。
【0158】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3としては、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAで用いられる硫化物固体電解質3と同様の物を用いることができる。
【0159】
なお、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAの蓋付ボトル130からなる第1梱包体100Bは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAのヒートシール袋120からなる梱包体100Aに比較して、通常、外力に対する変形が生じにくい。このため、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAでは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAに比較して、外力に対する硫化物固体電解質3の変形及びそれに伴う硫化物固体電解質3の変質が、通常、生じにくい。
【0160】
したがって、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAでは、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAに比較して、硫化物固体電解質3のイオン伝導率が、経時的により一層低下しにくくなり、また外力で変形しやすい硫化物固体電解質3を用いて封入することが可能になる。
【0161】
(第1梱包体)
第1梱包体100Bは、硫化物固体電解質3を封入する構造体である。
【0162】
電解質封入構造体1BAでは、第1梱包体100Bの、硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内、及び第1梱包体100B自体か又は第1梱包体100Bを内包する梱包体であってかつ電解質封入構造体1BAの最外部の梱包体である最外梱包体900内の全空間である梱包空間959内の各空間、に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が特定範囲内になっている。具体的には、電解質封入構造体1BAでは、第1空間109内に存在する充填ガスFG(第1空間ガス119)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0163】
電解質封入構造体1BAでは、最外梱包体900は第1梱包体100B自体である電解質封入構造体1BAでは、最外梱包体900が第1梱包体100B自体であるため、梱包空間959は第1空間109と同一になる。電解質封入構造体1BAでは、梱包空間ガス969は、第1空間ガス119のみとなる。すなわち、電解質封入構造体1BAでは、充填ガスFGは、第1空間ガス119のみとなる。
【0164】
第1梱包体100Bは、硫化物固体電解質3を封入する機能(第1封入機能)を有する。なお、第1梱包体100Bは、第1低水分透過機能をさらに有すると、硫化物固体電解質3と水分との反応によるH2Sの生成が抑制されることで、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0165】
図9~
図12に示されるように、第1梱包体100Bは、梱包材110を用いて、硫化物固体電解質3を封入可能な蓋付ボトル130としたものである。
【0166】
図11及び
図12に示すように、第1梱包体100Bを構成する蓋付ボトル130は、第1連結部(雄ねじ部)133を有するボトル本体131と、第2連結部(雌ねじ部)134を有するスクリューキャップ132と、を備える。蓋付ボトル130は、ボトル本体131とスクリューキャップ132とを螺合させることで第1梱包体100B内に硫化物固体電解質3を封入することが可能な蓋付ボトル130になっている。
【0167】
図10に示すように、第1梱包体100Bでは、第1梱包体100Bの硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内に、硫化物固体電解質3が封入される。蓋付ボトル130からなる第1梱包体100Bは、その形状により機械的強度が一般的に高いかつ変形しにくいため、封入した硫化物固体電解質3の粒子の破損が強く抑制される。
【0168】
第1空間109内には、充填ガスFGが封入される。充填ガスFGとしては、Ar、大気、N2又はCO2等が用いられる。このうちArは、硫化物固体電解質3との反応性が低いため好ましい。
【0169】
電解質封入構造体1BAでは、第1梱包体100Bの、硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内、及び第1梱包体100B自体か又は第1梱包体100Bを内包する梱包体であってかつ電解質封入構造体1BAの最外部の梱包体である最外梱包体900内の全空間である梱包空間959内の各空間、に存在する充填ガスFG(第1空間ガス119、梱包空間ガス969)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が上記範囲内にあると、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0170】
第1空間109に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が後者の範囲内にあるほど、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0171】
第1空間109に存在する充填ガスFGの露点温度は、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-60℃以下である。充填ガスFGの露点温度が後者の範囲内にあるほど、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0172】
硫化物固体電解質3を封入した状態の第1梱包体100Bにおいて、第1空間109の体積V1(cm3)に対する、硫化物固体電解質3の物質自体の体積VSE(cm3)の比率(VSE/V1)である第1充填率は、例えば0%超、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。また、上記充填率は、例えば50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。第1充填率が0%超であると、収納のスペース効率が高くなりやすい。また、第1充填率が50%以下であると、硫化物固体電解質3の粒子が押しつぶされることによる凝集や粒子形状の変化が抑制されやすい。
【0173】
第1梱包体100Bを構成する梱包材110は、硫化物固体電解質3を封入する側の表面である内面107で区画される第1空間109内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を特定範囲内にすることが可能な材質、構造になっている。
【0174】
第1梱包体100Bを構成する梱包材110は、ボトル本体131及びスクリューキャップ132を含め蓋付ボトル130全体が、
図9に示すように、単一層116からなる単層構造になっている。なお、蓋付ボトル130を構成するボトル本体131及びスクリューキャップ132は場所により形状が異なるが、梱包材110が単一層116からなる点で共通している。
【0175】
第1梱包体100Bを構成する単一層116からなる梱包材110は、低水分透過機能を有する材質であると好ましい。
【0176】
単一層116が低水分透過材料からなると、第1梱包体100Bに、低水分透過機能を付与することが可能になる。
【0177】
単一層116に用いられる低水分透過材料としては、第1の実施形態に係る電解質封入構造体1AAの第1梱包体100Aの外側非溶着部118に用いられる低水分透過材料と同様の材料が用いられる。具体的には、単一層116に用いられる低水分透過材料として、例えば、アルミニウム、ステンレス及び鉄等の金属;ポリエチレンテレフタレートPET、ポリエチレンPE、塩素化ポリエチレンSPE、高密度ポリエチレン、ナイロン及びポリビニルアルコールから選択される1種以上の有機樹脂等の有機物が用いられる。このうち、第1梱包体100Bがアルミニウムからなると第1梱包体100Bを構成する梱包材110の水分透過度を低くしやすく、軽量性に優れるため好ましい。
【0178】
第1梱包体100Bの単一層116に用いられる低水分透過材料が、アルミニウムである場合、第1梱包体100Bは、アルミニウムからなる蓋付ボトル130となる。第1梱包体100Bの単一層116に用いられる低水分透過材料が、高密度ポリエチレンである場合、第1梱包体100Bは、高密度ポリエチレンからなる蓋付ボトル130となる。
【0179】
第1梱包体100Bを構成する梱包材110の厚さは、第1梱包体100Bの最も薄い部分において、例えば50μm以上、好ましくは100μm以上である。また、上記最も薄い部分の厚さは、好ましくは10000μm以下である。梱包材110の厚さが上記範囲内にあると、水分透過度を低くしやすいため好ましい。
【0180】
第1梱包体100Bがアルミニウムからなる蓋付ボトル130である場合、第1梱包体100Bを構成する梱包材110の厚さは、第1梱包体100Bの最も薄い部分において、例えば50μm以上、好ましくは100μm以上である。また、上記最も薄い部分の厚さは、好ましくは10000μm以下である。梱包材110の厚さが上記範囲内にあると、水分透過度を低くしやすいため好ましい。
【0181】
第1梱包体100Bが高密度ポリエチレンからなる蓋付ボトル130である場合、第1梱包体100Bを構成する梱包材110の厚さは、第1梱包体100Bの最も薄い部分において、例えば50μm以上、好ましくは100μm以上である。また、上記最も薄い部分の厚さは、好ましくは10000μm以下である。梱包材110の厚さが上記範囲内にあると、水分透過度を低くしやすいため好ましい。
【0182】
単一層116が低水分透過材料からなる場合、蓋付ボトル130からなる第1梱包体100Bでは、梱包材110の材質が主に低水分透過機能に寄与し、蓋付ボトル130からなる第1梱包体100Bの構造が主に封入機能に寄与するようになっている。
【0183】
例えば、第1梱包体100Bの梱包材110の単一層116が低水分透過材料からなる場合には低水分透過機能も主に発現する。また、蓋付ボトル130からなる第1梱包体100Bのボトル本体131とスクリューキャップ132との螺合により封入機能が主に発現する。
【0184】
(効果)
電解質封入構造体1BAによれば、開封時にH2Sガスを放出しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【0185】
また、電解質封入構造体1BAによれば、蓋付ボトル130からなる第1梱包体100Bは、その形状により機械的強度が一般的に高いかつ変形しにくいため、封入した硫化物固体電解質3の粒子の破損が強く抑制される。
【0186】
電解質封入構造体1BAの第1梱包体100Aの第1空間109内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、公知の方法により、測定することができる。
【0187】
<第2の実施形態の第1変形例>
図14は、本発明の第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体を示す斜視図であり、
図15は、
図14の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【0188】
図14及び
図15に示す第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1BB(1)は、硫化物系固体電解質3と、硫化物系固体電解質3を封入する第1梱包体100B(100)と、第1梱包体100Bを封入する第2梱包体200A(200)と、を有する。電解質封入構造体1BBにおいて、第1梱包体100B及び第2梱包体200Aは、硫化物系固体電解質3側から1層目及び2層目に配置された梱包材110、210からなる。
【0189】
電解質封入構造体1BBは、第1梱包体100Bの梱包材110の内面107と、第1梱包体100B内に封入される硫化物系固体電解質3と、の間で区画される第1空間109を有する。また、電解質封入構造体1BBは、第2梱包体200Aの梱包材210の内面207と、第1梱包体100Bと、の間で区画される第2空間209を有する。電解質封入構造体1BBでは、前記nが1である第1梱包体100Bが硫化物系固体電解質3を封入し、第1梱包体100Bを封入する梱包体が存在し、第1梱包体100Bを梱包する第n梱包体(第2梱包体200A)は、第1梱包体100Bの外面側に向かって前記nが順に増加するように設けられている。電解質封入構造体1BBでは、第1梱包体100Bで梱包された空間を第1空間109とし、第n梱包体(第2梱包体200A)とn-1梱包体(第1梱包体100B)とで区画された空間を第n空間(第2空間209)としたときに、第1空間109から第n空間(第2空間209)までの各空間(第1空間109、第2空間209)内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0190】
図14及び
図15に示すように、第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1BB(1)は、硫化物固体電解質3を封入する第1梱包体100B(100)と、第1梱包体100Bを収容して封入する第2梱包体200A(200)と、を有する。第1梱包体100Bは、蓋付ボトル130からなり、通常、直径分の厚さを有して電解質封入構造体1BBの第2梱包体200Aに収容、封入される。このため、第1梱包体100Bを収容して封入する第2梱包体200Aの袋本体221及び電解質封入構造体1BBは、
図14の紙面垂直方向に厚みを有している。
【0191】
第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1BBは、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAが、第1梱包体100Bを収容して封入する第2梱包体200Aをさらに有するものである。
【0192】
図3に示すように、第2梱包体200Aは、封止部222の少なくとも一部を溶着してヒートシール部223を形成することで、第1梱包体100Bを封入することが可能なヒートシール袋220になっている。
【0193】
第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1BBは、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAに比較して、第2梱包体200Aをさらに備える以外は、同じである。このため、第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1BBと、第2の実施形態に係る電解質封入構造体1BAとで同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。以下、主に第2梱包体200Aに関して説明する。
【0194】
(第2梱包体)
第2梱包体200Aは、第1梱包体100B収容して封入する構造体である。第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1BBを構成する第2梱包体200Aは、第1の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1ABを構成する第2梱包体200Aと同様である。このため、第2梱包体200Aの構成及び作用の説明を省略する。なお、電解質封入構造体1BBでは、第1空間109及び第2空間209の各空間内に存在する充填ガスFG(第1空間ガス119及び第2空間ガス219)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0195】
電解質封入構造体1BBでは、最外梱包体900は第2梱包体200Aである。電解質封入構造体1BBでは、梱包空間959は第1空間109及び第2空間209となる。電解質封入構造体1BBでは、梱包空間ガス969は、第1空間ガス119及び第2空間ガス219となる。すなわち、電解質封入構造体1BBでは、充填ガスFGは、第1空間ガス119及び第2空間ガス219となる。
【0196】
(効果)
電解質封入構造体1BBによれば、開封時にH2Sガスを放出しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【0197】
また、電解質封入構造体1BBによれば、蓋付ボトル130からなる第1梱包体100Bは、その形状により機械的強度が一般的に高いかつ変形しにくいため、封入した硫化物固体電解質3の粒子の破損が強く抑制される。
【0198】
電解質封入構造体1BBの第1空間109内及び第2空間209内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、公知の方法により、測定することができる。
【0199】
<第2の実施形態の第2変形例>
図16は、本発明の第2の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体を示す平面図であり、
図17は、
図16の電解質封入構造体の内部状態が分かるように示した図である。
【0200】
図16及び
図17に示すように、第2の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1BC(1)は、硫化物系固体電解質3と、硫化物系固体電解質3を封入する第1梱包体100B(100)と、第1梱包体100Bを封入する第2梱包体200A(200)と、第2梱包体200Aを封入する第3梱包体300A(300)と、を有する。電解質封入構造体1BCにおいて、第1梱包体100B、第2梱包体200A及び第3梱包体300Aは、硫化物系固体電解質3側から1層目、2層目及び3層目に配置された梱包材110、210、310からなる。
【0201】
電解質封入構造体1BCは、第1梱包体100Bの梱包材110の内面107と、第1梱包体100B内に封入される硫化物系固体電解質3と、の間で区画される第1空間109を有する。また、電解質封入構造体1BCは、第2梱包体200Aの梱包材210の内面207と、第1梱包体100Bと、の間で区画される第2空間209を有する。さらに、電解質封入構造体1BCは、第3梱包体300Aの梱包材310の内面307と、第2梱包体200Aと、の間で区画される第3空間309を有する。電解質封入構造体1BCでは、前記nが1である第1梱包体100Bが硫化物系固体電解質3を封入し、第1梱包体100Bを封入する梱包体が存在し、第1梱包体100Bを梱包する第n梱包体(第2梱包体200A、第3梱包体300A)は、第1梱包体100Bの外面側に向かって前記nが順に増加するように設けられている。電解質封入構造体1BCでは、第1梱包体100Bで梱包された空間を第1空間109とし、第n梱包体(第2梱包体200A)とn-1梱包体(第1梱包体100B)とで区画された空間を第n空間(第2空間209)、第n梱包体(第3梱包体300A)とn-1梱包体(第2梱包体200A)とで区画された空間を第n空間(第3空間309)としたときに、第1空間109から第n空間(第2空間209)までの各空間(第1空間109、第2空間209、第3空間309)内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0202】
図16及び
図17に示すように、第2の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1BC(1)は、硫化物固体電解質3を封入する第1梱包体100B(100)と、第1梱包体100Bを収容して封入する第2梱包体200A(200)と、第2梱包体200Aを収容して封入する第3梱包体300A(300)を有する。電解質封入構造体1BCは、電解質封入構造体1BBを含むため、
図16の紙面垂直方向に厚みを有している。
【0203】
第2の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1BCは、第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1BBにおいて、第2梱包体200Aを収容して封入する第3梱包体300Aをさらに有するものである。
【0204】
図3に示すように、第3梱包体300Aは、封止部322の少なくとも一部を溶着してヒートシール部323を形成することで、第2梱包体200Aを封入することが可能なヒートシール袋320になっている。
【0205】
第2の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1BCは、第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1BBに比較して、第3梱包体300Aをさらに備える以外は、同じである。このため、第2の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1BCと、第2の実施形態の第1変形例に係る電解質封入構造体1BBとで同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。以下、主に第3梱包体300Aに関して説明する。
【0206】
(第3梱包体)
第3梱包体300Aは、第2梱包体200Aを収容して封入する構造体である。第2の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1BCを構成する第3梱包体300Aは、第1の実施形態の第2変形例に係る電解質封入構造体1ACを構成する第3梱包体300Aと同様である。このため、第3梱包体300Aの構成及び作用の説明を省略する。なお、電解質封入構造体1BCでは、
第1梱包体100Bで梱包された空間を第1空間109とし、第n梱包体(第2梱包体200A)とn-1梱包体(第1梱包体100B)とで区画された空間を第n空間(第2空間209)、第n梱包体(第3梱包体300A)とn-1梱包体(第2梱包体200A)とで区画された空間を第n空間(第3空間309)としたときに、第1空間109から第n空間(第3空間309)までの各空間(第1空間109、第2空間209、第3空間309)内に存在する充填ガスFG(第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319)中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になっている。
【0207】
電解質封入構造体1BCでは、最外梱包体900は第3梱包体300Aである。電解質封入構造体1BCでは、梱包空間959は第1空間109、第2空間209及び第3空間309となる。電解質封入構造体1BCでは、梱包空間ガス969は、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319となる。すなわち、電解質封入構造体1BCでは、充填ガスFGは、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319となる。
【0208】
(効果)
電解質封入構造体1BCによれば、開封時にH2Sガスを放出しにくい電解質封入構造体を提供することができる。
【0209】
また、電解質封入構造体1BCによれば、蓋付ボトル130からなる第1梱包体100Bは、その形状により機械的強度が一般的に高いかつ変形しにくいため、封入した硫化物固体電解質3の粒子の破損が強く抑制される。
【0210】
電解質封入構造体1BCの第1空間109内、第2空間209内及び第3空間309内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、公知の方法により、測定することができる。
【0211】
上記電解質封入構造体1AA、1AB、1AC、1BA、1BB、1BCでは、第1梱包体100、第2梱包体200、第3梱包体300として、ヒートシール袋120(220、320)や蓋付ボトル130を用いる例を示した。しかし、本発明に係る電解質封入構造体1の各梱包体の形状や構造は内容物を封入可能な限り特に限定されない。本発明に係る電解質封入構造体1の各梱包体としては、ヒートシール袋、蓋付ボトル以外に、例えばコンテナ、ドラム缶等を用いることができる。
【0212】
また、上記電解質封入構造体1AA、1AB、1AC、1BA、1BB、1BCでは、第1梱包体100、第2梱包体200、第3梱包体300等を備える例を示した。しかし、本発明に係る電解質封入構造体1は、図示しない第3梱包体300を封入する第4梱包体等のさらなる梱包体等を備えていてもよい。
【0213】
[電解質封入構造体の製造方法]
次に、本発明に係る電解質封入構造体1の製造方法について説明する。本発明に係る電解質封入構造体1の製造方法は、硫化物系固体電解質3と、硫化物系固体電解質3を封入する梱包体と、を有し、前記梱包体は、硫化物系固体電解質3側からn層目(nは1以上の整数)に配置された梱包材からなり前記nが1である第1梱包体が硫化物系固体電解質3を封入し、前記第1梱包体を封入する梱包体が存在するとき、第1梱包体を梱包する梱包体は、前記第1梱包体の外面側に向かって前記nが順に増加する電解質封入構造体の製造方法である。本発明に係る電解質封入構造体1の製造方法は、前記第1梱包体で梱包された空間を第1空間とし、前記第n梱包体と前記n-1梱包体とで区画された空間を第n空間としたときに、第1空間から第n空間までの各空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になるように前記充填ガスを充填する封入工程を含む。
【0214】
本発明に係る電解質封入構造体1の製造方法は、電解質封入構造体1の第1空間から第n空間までの各空間内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になるように前記充填ガスを充填する封入工程を含む。
【0215】
(封入工程)
封入工程は、電解質封入構造体の第1空間から第n空間までの各空間内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が、充填から7日後に50ppm以下になるように前記充填ガスFGを充填する工程である。換言すれば、封入工程は、第1梱包体100自体か又は第1梱包体100を内包する梱包体であってかつ電解質封入構造体1の最外部の梱包体である最外梱包体900内の全空間である梱包空間959内の各空間、の各空間に封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度、充填から7日後に50ppm以下になるように前記充填ガスFGを充填する工程である。
【0216】
例えば、電解質封入構造体1AAを製造する場合、最外梱包体900は第1梱包体100A自体であり、梱包空間959は第1空間109のみとなり、梱包空間ガス969は第1空間ガス119のみとなる。電解質封入構造体1AAでは第1空間109に封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を50ppm以下とすることにより、第1空間ガス119中のH2Sガスの濃度を、充填から7日後に50ppm以下とする。
【0217】
電解質封入構造体1ABを製造する場合、最外梱包体900は第2梱包体200Aであり、梱包空間959は第1空間109及び第2空間209となり、梱包空間ガス969は第1空間ガス119及び第2空間ガス219となる。電解質封入構造体1ABでは第1空間109及び第2空間209の各空間に封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を50ppm以下とすることにより、第1空間ガス119及び第2空間ガス219中のH2Sガスの濃度を、充填から7日後に50ppm以下とする。
【0218】
電解質封入構造体1ACを製造する場合、最外梱包体900は第3梱包体300Aであり、梱包空間959は第1空間109、第2空間209及び第3空間309となり、梱包空間ガス969は第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319となる。電解質封入構造体1ACでは第1空間109、第2空間209及び第3空間309の各空間に封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を50ppm以下とすることにより、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319中のH2Sガスの濃度を、充填から7日後に50ppm以下とする。
【0219】
電解質封入構造体1BAを製造する場合、最外梱包体900は第1梱包体100B自体であり、梱包空間959は第1空間109のみとなり、梱包空間ガス969は第1空間ガス119のみとなる。電解質封入構造体1BAでは第1空間109に封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を50ppm以下とすることにより、第1空間ガス119中のH2Sガスの濃度を、充填から7日後に50ppm以下とする。
【0220】
電解質封入構造体1BBを製造する場合、最外梱包体900は第2梱包体200Aであり、梱包空間959は第1空間109及び第2空間209となり、梱包空間ガス969は第1空間ガス119及び第2空間ガス219となる。電解質封入構造体1BBでは第1空間109及び第2空間209の各空間に封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を50ppm以下とすることにより、第1空間ガス119及び第2空間ガス219中のH2Sガスの濃度を、充填から7日後に50ppm以下とする。
【0221】
電解質封入構造体1BCを製造する場合、最外梱包体900は第3梱包体300Aであり、梱包空間959は第1空間109、第2空間209及び第3空間309となり、梱包空間ガス969は第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319となる。電解質封入構造体1BCでは第1空間109、第2空間209及び第3空間309の各空間に封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度を50ppm以下とすることにより、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319中のH2Sガスの濃度を、充填から7日後に50ppm以下とする。
【0222】
第n空間の各空間内に封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が上記範囲内にあると、電解質封入構造体1の開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0223】
第n空間の各空間内に封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。封入する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度が後者の範囲内にあるほど、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0224】
充填ガスFGは、露点温度は、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-60℃以下である。充填ガスFGの露点温度が後者の範囲内にあるほど、開封時にH2Sガスを放出しにくいため好ましい。
【0225】
(乾燥工程)
本発明に係る電解質封入構造体1の製造方法は、好ましくは、前記封入工程の前に、前記第1梱包体100を50℃以上で乾燥処理する乾燥工程をさらに含む。本発明に係る電解質封入構造体1の製造方法が、乾燥工程をさらに含むと、第1梱包体100A内に封入した硫化物固体電解質3と第1梱包体100Aに付着した水分が反応し、H2Sガスの発生が抑えられるため好ましい。
【0226】
乾燥工程での乾燥温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上である。また、上記乾燥温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。乾燥温度が上記下限を有すると、第1梱包体100A内に付着する水分を減らすことから第1梱包体100A内に封入した硫化物固体電解質3と水分との反応を抑制し、結果としてH2Sガスの発生が抑えられるため、好ましい。また、乾燥温度が上記上限を有すると、梱包体の材質変化や形状変化が抑制されやすい。
【0227】
乾燥工程での乾燥時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは5時間以上である。乾燥時間が上記範囲内にあると、第1梱包体100A内に封入した硫化物固体電解質3と第1梱包体100Aに付着した水分が反応し、H2Sガスの発生が抑えられるため好ましい。
【0228】
乾燥工程は、第1梱包体100の上記乾燥処理に加え、第2梱包体200を50℃以上で乾燥処理したり、第3梱包体300を50℃以上で乾燥処理したりする工程を有していてもよい。
【0229】
(効果)
本発明に係る電解質封入構造体の製造方法によれば、開封時にH2Sガスを放出しにくい電解質封入構造体1を製造することができる。
【0230】
また、本発明に係る電解質封入構造体の製造方法によれば、ヒートシール袋120からなる第1梱包体100Aが比較的扁平形状であるため収納のスペース効率が高い電解質封入構造体1を製造することができる。
【0231】
電解質封入構造体1の第n空間の各空間内に存在する充填ガスFG中のH2Sガスの濃度は、公知の方法により、測定することができる。
【実施例0232】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0233】
[実施例1]
以下のようにして
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。電解質封入構造体1BCの条件等を表1に示す。
【0234】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3として、Li、P、S、Cl、Brを含有するアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質(D50:0.7μm)を用意した。
【0235】
(第1梱包体)
第1梱包体100Bの原料として、
図11及び
図12に示す蓋付ボトル130を用意した。蓋付ボトル130の梱包材110は、高密度ポリエチレンからなる単一層116のものであった。第1梱包体100Bの梱包材110の最小厚さは、950μmであった。
【0236】
(第2梱包体)
第2梱包体200Aの原料として、
図3に示すヒートシール袋220を用意した。ヒートシール袋220の梱包材210は、塩素化ポリエチレンSPEとポリエチレンPEからなる内側溶着部217と、アルミニウムAlと塩素化ポリエチレンSPEとポリエチレンPEと }からなる外側非溶着部218と、が積層された複層構造を有し、第2梱包体200Aの梱包材210全体の最小厚さは、110μmであった。
なお、内側溶着部217は、ポリエチレンPEからなり内面207を含む最内層と、塩素化ポリエチレンSPEからなり最内層から見て外側非溶着部218側に積層される第1隣接内層とを備えていた。
外側非溶着部218は、ポリエチレンPEからなり外面208を含む最外層と、塩素化ポリエチレンSPEからなり最外層から見て内側溶着部217側に積層される第1隣接外層と、アルミニウムからなり第1隣接外層から見て内側溶着部217側に積層される第2隣接外層と、を備えていた。
梱包材210は、内面207から外面208にかけて、PE層、SPE層、Al層、SPE層、及びPE層がこの順番で積層されていた。
【0237】
(第3梱包体)
第3梱包体300Aの原料として、
図3に示すヒートシール袋320を用意した。ヒートシール袋320の梱包材310は、塩素化ポリエチレンSPEとポリエチレンPEからなる内側溶着部317と、アルミニウムAlと塩素化ポリエチレンSPEとポリエチレンPEと }からなる外側非溶着部318と、が積層された複層構造を有し、第3梱包体300Aの梱包材310全体の最小厚さは、110μmであった。
なお、内側溶着部317は、ポリエチレンPEからなり内面307を含む最内層と、塩素化ポリエチレンSPEからなり最内層から見て外側非溶着部318側に積層される第1隣接内層とを備えていた。
外側非溶着部318は、ポリエチレンPEからなり外面308を含む最外層と、塩素化ポリエチレンSPEからなり最外層から見て内側溶着部317側に積層される第1隣接外層と、アルミニウムからなり第1隣接外層から見て内側溶着部317側に積層される第2隣接外層と、を備えていた。
梱包材310は、内面307から外面308にかけて、PE層、SPE層、Al層、SPE層、及びPE層がこの順番で積層されていた。
【0238】
(梱包)
図11及び
図12に示すボトル本体131とスクリューキャップ132とを80℃で10時間、加熱して乾燥させた後、25℃まで放冷した。その後、室温、Arガス雰囲気下で、開口部137からボトル本体131内に硫化物固体電解質3を装入し、スクリューキャップ132をボトル本体131に螺合することにより、第1梱包体100B中に硫化物固体電解質3を封入した。
【0239】
次に、
図3に示すヒートシール袋220を80℃で10時間、加熱して乾燥させた後、25℃まで放冷した。その後、室温、Arガス雰囲気下で、開口部227からヒートシール袋220内に第1梱包体100Bを装入し、封止部222の一部を溶着してヒートシール部223を形成することにより、第2梱包体200A中に第1梱包体100Bを封入した。
【0240】
さらに、
図3に示すヒートシール袋320を80℃で10時間、加熱して乾燥させた後、25℃まで放冷した。その後、室温、Arガス雰囲気下で、開口部327からヒートシール袋320内に、第1梱包体100Bを封入した第2梱包体200Aを装入し、封止部322の一部を溶着してヒートシール部323を形成することにより、第3梱包体300A中に第2梱包体200Aを封入した。これにより、
図12に示す電解質封入構造体1BCを作製した。これにより、
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。
【0241】
【0242】
(評価)
<大気中保存試験>
電解質封入構造体1BCを25℃の大気中で7日間保存した。
7日間保存後の電解質封入構造体1BCの開封時に、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319の各ガス中のH2S濃度(ppm)を測定した。結果を表1に示す。H2S濃度(ppm)の測定はガステック社製 硫化水素検知管(4LL)を用いて行った。
【0243】
[実施例2]
以下のようにして
図5に示す電解質封入構造体1ABを作製した。電解質封入構造体1ABの条件等を表1に示す。
【0244】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3として、実施例1と同じLi、P、S、Cl、Brを含有するアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質を用意した。
【0245】
(第1梱包体)
第1梱包体100Aの原料として、
図3に示すヒートシール袋120を用意した。ヒートシール袋120の梱包材110は、塩素化ポリエチレンSPEとポリエチレンPEからなる内側溶着部117と、アルミニウムAl{ と塩素化ポリエチレンSPEとポリエチレンPEと }からなる外側非溶着部118と、が積層された複層構造を有し、第1梱包体100Aの梱包材110全体の最小厚さは、110μmであった。
なお、内側溶着部117は、ポリエチレンPEからなり内面107を含む最内層と、塩素化ポリエチレンSPEからなり最内層から見て外側非溶着部118側に積層される第1隣接内層とを備えていた。
外側非溶着部118は、ポリエチレンPEからなり外面108を含む最外層と、塩素化ポリエチレンSPEからなり最外層から見て内側溶着部117側に積層される第1隣接外層と、アルミニウムからなり第1隣接外層から見て内側溶着部117側に積層される第2隣接外層と、を備えていた。
梱包材110は、内面107から外面108にかけて、PE層、SPE層、Al層、SPE層、及びPE層がこの順番で積層されていた。
【0246】
(第2梱包体)
第2梱包体200Aの原料として、実施例1と同じヒートシール袋220を用意した。第2梱包体200Aの梱包材210全体の最小厚さは、110μmであった。
【0247】
(梱包)
図3に示すヒートシール袋120を80℃で10時間、加熱して乾燥させた後、25℃まで放冷した。その後、室温、Arガス雰囲気下で、開口部127からヒートシール袋120内に硫化物固体電解質3を装入し、封止部122の一部を溶着してヒートシール部123を形成することにより、第1梱包体100A中に硫化物固体電解質3を封入した。
【0248】
次に、
図3に示すヒートシール袋220を80℃で10時間、加熱して乾燥させた後、25℃まで放冷した。その後、室温、Arガス雰囲気下で、開口部227からヒートシール袋220内に、硫化物固体電解質3を封入した第1梱包体100Aを装入し、封止部222の一部を溶着してヒートシール部223を形成することにより、第2梱包体200A中に第1梱包体100Aを封入した。これにより、
図5に示す電解質封入構造体1ABを作製した。
【0249】
(評価)
<大気中保存試験>
電解質封入構造体1ABを25℃の大気中で7日間保存した。
7日間保存後の電解質封入構造体1ABの開封時に、第1空間ガス119及び第2空間ガス219の各ガス中のH2S濃度(ppm)を測定した。結果を表1に示す。H2S濃度(ppm)の測定はガステック社製 硫化水素検知管(4LL)を用いて行った。
【0250】
[実施例3]
第1梱包体100Bを以下に示す容量500mlのものとし第1充填率を変え、第3梱包体300Aに用いるヒートシール袋320の乾燥処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。電解質封入構造体1BCの条件等を表1に示す。具体的な梱包の手順を以下に示す。
【0251】
(第1梱包体)
第1梱包体100Bの原料として、
図11及び
図12に示す蓋付ボトル130を用意した。蓋付ボトル130の梱包材110は、高密度ポリエチレンからなる単一層116のものであった。
【0252】
次に、実施例1と同様にして、第2梱包体200A中に第1梱包体100Bを封入した。
【0253】
実施例1と同様にして、第3梱包体300A中に第2梱包体200Aを封入した。これにより、
図12に示す電解質封入構造体1BCを作製した。これにより、
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。
【0254】
(評価)
<大気中保存試験>
実施例1と同様にして、7日間保存後の電解質封入構造体1BCの開封時に、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319の各ガス中のH2S濃度(ppm)を測定した。結果を表1に示す。H2S濃度(ppm)の測定はガステック社製 硫化水素検知管(4LL)を用いて行った。
【0255】
[実施例4]
梱包の際に、第1梱包体100B、第2梱包体200A及び第3梱包体300Aの加熱乾燥を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。電解質封入構造体1BCの条件等を表1に示す。具体的な梱包の手順を以下に示す。
【0256】
(梱包)
図11及び
図12に示すボトル本体131とスクリューキャップ132とを用意した。室温、Arガス雰囲気下で、開口部137からボトル本体131内に硫化物固体電解質3を装入し、スクリューキャップ132をボトル本体131に螺合することにより、第1梱包体100B中に硫化物固体電解質3を封入した。
【0257】
次に、
図3に示すヒートシール袋220を用意した。室温、Arガス雰囲気下で、開口部227からヒートシール袋220内に第1梱包体100Bを装入し、封止部222の一部を溶着してヒートシール部223を形成することにより、第2梱包体200A中に第1梱包体100Bを封入した。
【0258】
さらに、
図3に示すヒートシール袋320を用意した。室温、Arガス雰囲気下で、開口部327からヒートシール袋320内に、第1梱包体100Bを封入した第2梱包体200Aを装入し、封止部322の一部を溶着してヒートシール部323を形成することにより、第3梱包体300A中に第2梱包体200Aを封入した。これにより、
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。
【0259】
(評価)
<大気中保存試験>
実施例1と同様にして、7日間保存後の電解質封入構造体1BCの開封時に、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319の各ガス中のH2S濃度(ppm)を測定した。結果を表1に示す。H2S濃度(ppm)の測定はガステック社製 硫化水素検知管(4LL)を用いて行った。
【0260】
[実施例5]
以下のようにして
図7に示す電解質封入構造体1ACを作製した。電解質封入構造体1ACの条件等を表1に示す。
【0261】
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質3として、実施例1と同じLi、P、S、Cl、Brを含有するアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質を用意した。
【0262】
(第1梱包体)
第1梱包体100Aの原料として、実施例2と同じヒートシール袋120を用意した。第1梱包体100Aの梱包材110全体の最小厚さは、110μmであった。
【0263】
(第2梱包体)
第2梱包体200Aの原料として、実施例1と同じヒートシール袋220を用意した。第2梱包体200Aの梱包材210全体の最小厚さは、110μmであった。
【0264】
(第3梱包体)
第3梱包体300Aの原料として、実施例1と同じヒートシール袋320を用意した。第3梱包体300Aの梱包材310全体の最小厚さは、110μmであった。
【0265】
(梱包)
図3に示すヒートシール袋120を用意した。室温、Arガス雰囲気下で、開口部127からヒートシール袋120内に硫化物固体電解質3を装入し、封止部122の一部を溶着してヒートシール部123を形成することにより、第1梱包体100A中に硫化物固体電解質3を封入した。
【0266】
次に、
図3に示すヒートシール袋220を用意した。室温、Arガス雰囲気下で、開口部227からヒートシール袋220内に第1梱包体100Aを装入し、封止部222の一部を溶着してヒートシール部223を形成することにより、第2梱包体200A中に第1梱包体100Aを封入した。
【0267】
さらに、
図3に示すヒートシール袋320を用意した。室温、Arガス雰囲気下で、開口部327からヒートシール袋320内に、第1梱包体100Aを封入した第2梱包体200Aを装入し、封止部322の一部を溶着してヒートシール部323を形成することにより、第3梱包体300A中に第2梱包体200Aを封入した。これにより、
図7に示す電解質封入構造体1ACを作製した。
【0268】
(評価)
<大気中保存試験>
電解質封入構造体1ACを25℃の大気中で7日間保存した。
7日間保存後の電解質封入構造体1ACの開封時に、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319の各ガス中のH2S濃度(ppm)を測定した。結果を表1に示す。H2S濃度(ppm)の測定はガステック社製 硫化水素検知管(4LL)を用いて行った。
【0269】
[実施例6]
第1梱包体100Bを以下に示す容量500mlのものとし梱包時の雰囲気をArガスからドライルーム中の乾燥空気(露点温度-48℃)に変えた以外は実施例3と同様にして、
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。電解質封入構造体1BCの条件等を表1に示す。具体的な梱包の手順を以下に示す。
【0270】
(第1梱包体)
第1梱包体100Bとして、
図11及び
図12に示す蓋付ボトル130を用意した。蓋付ボトル130の梱包材110は、高密度ポリエチレンからなる単一層116のものであった。第1梱包体100Bの梱包材110の最小厚さは、950μmであった。
【0271】
(梱包)
図11及び
図12に示すボトル本体131とスクリューキャップ132とを用意した。ドライルーム中の乾燥空気(露点温度-48℃)中で、開口部137からボトル本体131内に硫化物固体電解質3を装入し、スクリューキャップ132をボトル本体131に螺合することにより、第1梱包体100B中に硫化物固体電解質3を封入した。
【0272】
次に、
図3に示すヒートシール袋220を用意した。ドライルーム中の乾燥空気(露点温度-48℃)中で、開口部227からヒートシール袋220内に第1梱包体100Bを装入し、封止部222の一部を溶着してヒートシール部223を形成することにより、第2梱包体200A中に第1梱包体100Bを封入した。
【0273】
さらに、
図3に示すヒートシール袋320を用意した。ドライルーム中の乾燥空気(露点温度-48℃)中で、開口部327からヒートシール袋320内に、第1梱包体100Bを封入した第2梱包体200Aを装入し、封止部322の一部を溶着してヒートシール部323を形成することにより、第3梱包体300A中に第2梱包体200Aを封入した。これにより、
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。
【0274】
(評価)
<大気中保存試験>
実施例1と同様にして、7日間保存後の電解質封入構造体1BCの開封時に、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319の各ガス中のH2S濃度(ppm)を測定した。結果を表1に示す。H2S濃度(ppm)の測定はガステック社製 硫化水素検知管(4LL)を用いて行った。
【0275】
[比較例1]
梱包時の雰囲気をドライルーム中の乾燥空気(露点温度-48℃)から露点温度10℃の大気に変えた以外は実施例6と同様にして、
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。電解質封入構造体1BCの条件等を表1に示す。具体的な梱包の手順を以下に示す。
【0276】
(梱包)
図11及び
図12に示すボトル本体131とスクリューキャップ132とを用意した。露点温度10℃の大気中で、開口部137からボトル本体131内に硫化物固体電解質3を装入し、スクリューキャップ132をボトル本体131に螺合することにより、第1梱包体100B中に硫化物固体電解質3を封入した。
【0277】
次に、
図3に示すヒートシール袋220を用意した。露点温度10℃の大気中で、開口部227からヒートシール袋220内に第1梱包体100Bを装入し、封止部222の一部を溶着してヒートシール部223を形成することにより、第2梱包体200A中に第1梱包体100Bを封入した。
【0278】
さらに、
図3に示すヒートシール袋320を用意した。露点温度10℃の大気中で、開口部327からヒートシール袋320内に、第1梱包体100Bを封入した第2梱包体200Aを装入し、封止部322の一部を溶着してヒートシール部323を形成することにより、第3梱包体300A中に第2梱包体200Aを封入した。これにより、
図16に示す電解質封入構造体1BCを作製した。
【0279】
(評価)
<大気中保存試験>
実施例1と同様にして、7日間保存後の電解質封入構造体1BCの開封時に、第1空間ガス119、第2空間ガス219及び第3空間ガス319の各ガス中のH2S濃度(ppm)を測定した。結果を表1に示す。H2S濃度(ppm)の測定はガステック社製 硫化水素検知管(4LL)を用いて行った。
【0280】
実施例及び比較例より、実施例の電解質封入構造体1は、第1空間109内に存在する充填ガス中のH2Sガスの濃度が50ppm以下であることが分かった。