(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145454
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】銀被覆樹脂粒子、銀被覆樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 18/44 20060101AFI20241004BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C23C18/44
H01B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057813
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】田口 莉帆
(72)【発明者】
【氏名】影山 謙介
【テーマコード(参考)】
4K022
5G307
【Fターム(参考)】
4K022AA13
4K022AA21
4K022AA23
4K022AA35
4K022BA01
4K022DA01
4K022DB18
5G307AA08
(57)【要約】
【課題】導電性材料として用いた際に高い導電性を実現するとともに、低コストで容易に形成することができる銀被覆樹脂粒子、銀被覆樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂からなるコア粒子と、前記コア粒子の表面を覆う、銀を含む被覆層と、
少なくとも一部が前記被覆層の表面から突出し、前記被覆層に散在するように形成された銀粒子からなる複数の突出粒子と、を有し、前記突出粒子の最大直径は、前記コア粒子の直径に対して1/20以上、1/8以下の範囲であり、かつ、前記突出粒子は、1つの前記コア粒子に対して20個以上形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなるコア粒子と、
前記コア粒子の表面を覆う、銀を含む被覆層と、
少なくとも一部が前記被覆層の表面から突出し、前記被覆層に散在するように形成された銀粒子からなる複数の突出粒子と、を有し、
前記突出粒子の最大直径は、前記コア粒子の最大直径に対して1/20以上、1/8以下の範囲であり、かつ、前記突出粒子は、1つの前記コア粒子に対して20個以上形成されていることを特徴とする銀被覆樹脂粒子。
【請求項2】
前記突出粒子の最外部と、前記被覆層の表面との間の平均突出高さが、前記コア粒子の最大直径に対して1/20以上、1/10以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の銀被覆樹脂粒子。
【請求項3】
前記コア粒子の平均粒子径は、1.0μm以上、30μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の銀被覆樹脂粒子。
【請求項4】
前記コア粒子は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の銀被覆樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1または2に記載の銀被覆樹脂粒子の製造方法であって、
前記コア粒子を5質量%以上、10質量%以下の範囲で水に分散させてなるコア粒子スラリーを10℃以上、30℃以下の範囲に調温し、前記コア粒子スラリーに銀塩と銀錯体化剤の混合溶液、pH調整液、および還元剤水溶液を同時に滴下することによって、前記コア粒子に前記被覆層および前記突出粒子を形成する工程を備え、
前記コア粒子スラリーに対して、前記混合溶液、前記pH調整液、および前記還元剤水溶液を滴下する時間は、滴下開始から10分以上、40分以下の範囲であることを特徴とする銀被覆樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀被覆樹脂粒子、および銀被覆樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉛はんだ又は非鉛はんだを代替する導電性材料として、樹脂粒子に銀を被覆した銀被覆樹脂粒子と樹脂とを混合した導電性ペーストや導電性フィルム等の導電性接着剤が知られている。導電性接着剤は、例えば、太陽電池パネル、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の電子機器を構成する電極や電気配線等の形成材料として用いられている。
【0003】
このような導電性材料に用いられる銀被覆樹脂粒子として、例えば、特許文献1には、前処理として樹脂粒子にスズを用いて触媒化処理を行い、この前処理を施した樹脂粒子に対して、銀の無電解めっきを施すことにより、樹脂粒子と銀被覆層との密着性を高めた銀被覆樹脂粒子が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、コア粒子としての樹脂粒子の表面に銀被覆層が形成された銀被覆樹脂粒子において、コア粒子の表面に、微細銀粒子からなるベース層と、このベース層から突出して形成された銀粒子からなる複数の硬質突出部とを有している銀被覆樹脂粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-199970号公報
【特許文献2】特開2020-056088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された銀被覆樹脂粒子は、外形形状が真球状であり、粒子表面が平滑であるため、粒子同士の接触点が少なく、かつ転動しやすい。このため、導電性材料として用いた際に電気的な接点が安定せず、導電性のバラつきが大きくなりやすいという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示された銀被覆樹脂粒子は、開示されているサイズ範囲ではベース層に対する硬質突出部の突出量が大きすぎるために、導電性材料として用いた際に導電性の向上効果が限定的であるといった課題があった。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、導電性材料として用いた際に高い導電性を実現するとともに、低コストで容易に形成することができる銀被覆樹脂粒子、銀被覆樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の態様1の銀被覆樹脂粒子は、樹脂からなるコア粒子と、前記コア粒子の表面を覆う、銀を含む被覆層と、少なくとも一部が前記被覆層の表面から突出し、前記被覆層に散在するように形成された銀粒子からなる複数の突出粒子と、を有し、前記突出粒子の最大直径は、前記コア粒子の最大直径に対して1/20以上、1/8以下の範囲であり、かつ、前記突出粒子は、1つの前記コア粒子に対して20個以上形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の態様2は、態様1の銀被覆樹脂粒子において、前記突出粒子の最外部と、前記被覆層の表面との間の平均突出高さが、前記コア粒子の最大直径に対して1/20以上、1/10以下の範囲であることを特徴とする。
【0011】
本発明の態様3は、態様1または2の銀被覆樹脂粒子において、前記コア粒子の平均粒子径は、1.0μm以上、30μm以下の範囲であることを特徴とする。
【0012】
本発明の態様4は、態様1から3のいずれか1つの銀被覆樹脂粒子において、前記コア粒子は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の態様5の銀被覆樹脂粒子の製造方法は、態様1から4のいずれか1つの銀被覆樹脂粒子の製造方法であって、前記コア粒子を5質量%以上、10質量%以下の範囲で水に分散させてなるコア粒子スラリーを10℃以上、30℃以下の範囲に調温し、前記コア粒子スラリーに銀塩と銀錯体化剤の混合溶液、pH調整液、および還元剤水溶液を同時に滴下することによって、前記コア粒子に前記被覆層および前記突出粒子を形成する工程を備え、前記コア粒子スラリーに対して、前記混合溶液、前記pH調整液、および前記還元剤水溶液を滴下する時間は、滴下開始から10分以上、40分以下の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電性材料として用いた際に高い導電性を実現するとともに、低コストで容易に形成することができる銀被覆樹脂粒子、銀被覆樹脂粒子の製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る銀被覆樹脂粒子を示す模式断面図である。
【
図2】
図1の銀被覆樹脂粒子の要部拡大断面図である。
【
図3】実施例における本発明例1の銀被覆樹脂粒子のSEM写真である。
【
図4】実施例における比較例1の銀被覆樹脂粒子のSEM写真である。
【
図5】実施例における比較例2の銀被覆樹脂粒子のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の銀被覆樹脂粒子、銀被覆樹脂粒子の製造方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0017】
[銀被覆樹脂粒子]
本発明の一実施形態の銀被覆樹脂粒子について説明する。
図1は、本実施形態の銀被覆樹脂粒子を示す模式断面図である。また、
図2は、
図1の銀被覆樹脂粒子の要部拡大断面図である。
1つの銀被覆樹脂粒子10は、コア粒子11と、このコア粒子11の表面に形成された被覆層12と、この被覆層12の表面から少なくとも一部が突出し被覆層12に散在するように形成された複数の突出粒子13と、から構成されている。
【0018】
コア粒子11は、全体が樹脂から形成された中実な粒子であればよい。コア粒子11の外形形状は、球形に近いほど好ましいが、楕円形の粒子や粒子の表面に粗面化の凹みより大きな凹凸があっても良い。但し、こうした凹凸は、鋭角な角部などが無いものが好ましい。鋭角な角部などがある凹凸がコア粒子11の表面に存在する場合、後述する被覆層12の形成時に被膜の密着性の低下や、銀被覆樹脂粒子を導電性ペーストなどに用いた場合に、バインダ内での分散性の低下によって、導電性が低くなる懸念がある。
【0019】
コア粒子11の長径と短径との比であるアスペクト比は、1~1.5の範囲が好ましく、1~1.3の範囲がより好ましく、1~1.1の範囲が更に好ましい。このアスペクト比は、10個の粒子について走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製:型式名:SU-1500)観察により一粒子の長径と短径の比(長径/短径)を計測し、これらを平均した値である。
【0020】
また、コア粒子11は、平均粒子径が1.0μm以上、30μm以下、好ましくは1.0μm以上10μm以下であることが好ましい。平均粒子径が1.0μm未満ではコア粒子11の表面積の割合が大きくなりすぎ、導電性粒子として必要な導電性を得るための銀の必要量が多くなりすぎて、製造コストが高くなる懸念がある。また、平均粒子径が30μmより大きいと、銀被覆樹脂粒子を微細なパターンに適用することが困難になる。なお、ここでいう平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所社製:型式名:SDLD200VER)により測定した体積基準のメジアン径を示している。
【0021】
コア粒子11の構成材料としては、例えば、シリコーン樹脂粒子、アラミド樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、ポリスルホン樹脂粒子、ポリエーテル樹脂粒子、ポリイミド樹脂粒子、ポリアミドイミド樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、フェノール樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、アクリル-スチレン共重合体粒子、ポリウレタン粒子、ゴム粒子、スチレン樹脂粒子、コアシェル構造を有する樹脂粒子などを挙げることができる。
【0022】
シリコーン樹脂粒子の具体例としては、ポリシルセスキオキサン(PSQ)樹脂粒子、ポリメチルシルセスキオサキサン(PMSQ)樹脂粒子が挙げられる。アラミド樹脂粒子の具体例としては、ポリメタフェニレンイソフタラミド(MPIA)樹脂粒子、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)樹脂粒子が挙げられる。
【0023】
フッ素系粒子の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粒子、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド(THV)樹脂粒子、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系樹脂粒子、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)系樹脂粒子、クロロトリフルオロエチレン-エチレン(ECTFE)系樹脂粒子、テトラフルオロエチレン-エチレン(ETFE)系樹脂粒子、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン(FEP)系樹脂粒子、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)系樹脂粒子等が挙げられる。
【0024】
ポリスルホン樹脂粒子の具体例としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリエーテル-スルホン(PES)樹脂等が挙げられる。ポリエーテル樹脂粒子の具体例としては、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)樹脂粒子、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂粒子等が挙げられる。フェノール樹脂粒子の具体例としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、またはそれらの一部を変性したフェノール樹脂等が挙げられる。
【0025】
ポリウレタン粒子の具体例としては、ポリエステル系ポリウレタン粒子、ポリオール系ポリウレタン粒子等が挙げられる。ゴム粒子の具体例としては、シリコーンゴム粒子、フッ素ゴム粒子等が挙げられる。コアシェル構造を有する樹脂粒子の具体例としては、アクリル樹脂コア-シリコーン樹脂シェルの樹脂粒子が挙げられる。なお、アクリル樹脂コア-シリコーン樹脂シェルの樹脂粒子は、アクリル樹脂粒子にシリコーン樹脂膜を被覆することにより作製することができる。
【0026】
被覆層12は、コア粒子11の表面に形成された、平均結晶子径が突出粒子13よりも小さい微細銀粒子からなる層である。こうした被覆層12は、突出粒子13がコア粒子11の表面に直接接している部分以外のコア粒子11の表面全体を覆っている。被覆層12を構成する微細銀粒子は、銀の含有量が、例えば95質量%以上であればよい。
【0027】
被覆層12の平均厚さは、例えば、30nm以上300nm以下であればよく、40nm以上200nm以下であることがより好ましい。平均厚さが30nm未満では、被覆層12に被覆されず、コア粒子11の表面が露出する箇所が出現することにより、銀被覆樹脂粒子10の導電性が低くなる懸念がある。また平均厚さが200nmを超えると、被覆層12が剥離やすくなり、導通不良になる懸念がある。
こうした、被覆層12の平均厚さは、透過型電子顕微鏡にて銀被覆樹脂粒子10の断面形状を観察することで算出できる。
【0028】
また、被覆層12を構成する微細銀粒子の平均結晶子径は、10nm以上、400nm以下であればよい。
被覆層12を構成する微細銀粒子の平均結晶子径は、以下のようにして求めることができる。まずカーボン製試料台に振りかけた銀被覆樹脂粒子10を、FIB(集束イオンビーム装置)を用いて約100nmの厚みまで断面露出加工した試料を作製した。次に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面露出した試料中の銀/樹脂粒子界面における断面形状を、10個の銀被覆樹脂粒子10について、コア粒子11の表面から厚み方向に5000nmの範囲で、被覆層12の全体を重複なく観察できるように、複数に分けて観察し、被覆層12の結晶方位分布を取得した。
【0029】
結晶方位分布の取得については、以下のように実施した。透過型電子顕微鏡(TEM)に付属する結晶方位解析装置を用いて、表面研磨面の法線方向に対して0.5度~1.0度に傾けた電子線をPrecession(歳差運動)照射しながら、電子線でスキャンし、連続的に電子回折パターンを取り込み、個々の測定点の電子回折パターンを取得した。なお、本測定に用いた電子回折パターンの取得条件は、加速電圧200kV、カメラ長20cm、ビームサイズ2.2nmで、測定ステップは5.0nmである。
【0030】
得られた個々の測定点の電子回折パターンを、立方晶の任意の方位に対してあらかじめ計算した電子回折パターンと比較し、最も良くマッチした結晶方位をその測定点の結晶方位とした。得られた結晶方位のうち、最小粒界角度を5度とし、結晶子サイズが5nm以下であるものをノイズとして除去し、結晶方位分布が識別された画像を出力することで、結晶方位分布が識別された画像を得た。
【0031】
得られた画像について画像処理ソフトウェア「imageJ:NIH」を用いて結晶子径を測定した。具体的には、以下のように測定した。まず、観察画像のスケールに合わせて、ソフトウェア中の計測スケールを設定する。次に、上述した方法で得られた、結晶方位分布が識別された画像から判定される結晶粒界を基に結晶子を判定し、その観察画像中の全ての結晶子について、それぞれの結晶子の結晶粒界の任意の2点を結んだ線分のうち、最も長さが大きくなるときの線分の長さをソフトウェアで計測し、これをその結晶子の結晶子径とした。なお、これはフェレー径に相当する。更に、測定した全ての結晶子径の平均値を算出し、この値を被覆層12を構成する微細銀粒子の平均結晶子径とした。
【0032】
突出粒子13は、この被覆層12の表面から少なくとも一部が突出し、被覆層12に散在するように複数個形成されている。
個々の突出粒子13は、外形形状が多角形を成し、平均結晶子径が被覆層12を構成する微細銀粒子よりも大きい大粒径銀粒子である。こうした突出粒子13を構成する大粒径銀粒子は、銀の含有量が、例えば95質量%以上であればよい。
【0033】
突出粒子13は、
図2に示すように、一部がコア粒子11の表面に接するように形成されていても、コア粒子11の表面に接することなく一部が被覆層12に埋まっている状態で形成されていてもよい。
【0034】
突出粒子13の最大直径は、コア粒子11の直径に対して1/20以上、1/8以下の範囲とされている。突出粒子13の最大直径がコア粒子11の直径に対して1/20未満では、コア粒子11のサイズに対して突出粒子13のサイズが小さすぎ、被覆層12の表面からの突出粒子13の突出量が小さくなるため、銀被覆樹脂粒子10を導電性ペーストなどに用いた際に、電極層などに対する接着効果が低くなりすぎる懸念がある。
【0035】
一方、突出粒子13の最大直径がコア粒子11の直径に対して1/8を超えると、コア粒子11のサイズに対して突出粒子13のサイズが大きすぎ、コア粒子11や被覆層12から突出粒子13が脱落しやすくなる虞がある。
【0036】
また、突出粒子13は、1つのコア粒子11あたり、20個以上形成されている。1つのコア粒子11あたりの突出粒子13の形成個数が20個未満では、銀被覆樹脂粒子10を導電性ペーストなどに用いた際に、電極層などに対する接着効果が低くなり、導電性が低下する懸念がある。
【0037】
なお、突出粒子13は、1つのコア粒子11あたり20個以上であれば、上限に制限はないが、隣り合う突出粒子13どうしが接触するほど密に形成すると、コア粒子11や被覆層12から突出粒子13が脱落しやすくなる虞がある。このため、突出粒子13どうしは、一定の間隔を保ち、その間に被覆層12の表面の一部が露出する程度に形成することが好ましい。
【0038】
突出粒子13の最外部と、被覆層12の表面との間の平均突出高さは、コア粒子11の最大直径に対して1/20以上、1/10以下の範囲であればよい。突出粒子13の平均突出高さがコア粒子11の最大直径に対して1/20未満では、突出粒子13の被覆層12の表面からの突出高さが低いため、銀被覆樹脂粒子10を導電性ペーストなどに用いた際に、電極層などに対する接着効果が低くなりすぎる懸念がある。
【0039】
一方、突出粒子13の平均突出高さがコア粒子11の最大直径に対して1/10を超えると、突出粒子13の被覆層12の表面からの突出高さが高くなりすぎて、コア粒子11や被覆層12から突出粒子13が脱落しやすくなる虞がある。
【0040】
突出粒子13の平均結晶子径は、例えば、200nm以上、1000nm以下、好ましくは200nm以上500nm以下であればよい。平均結晶子径が200nm未満では、銀被覆樹脂粒子10を導電性ペーストなどに用いた際に、電極層などに対する接着効果が低くなり、導電性が低下する懸念がある。また、平均結晶子径が1000nmを超えると、コア粒子11や被覆層12から突出粒子13が脱落しやすくなる虞がある。
【0041】
なお、上述した突出粒子13の平均突出高さ、平均結晶子径は、例えば、透過型電子顕微鏡及び結晶方位解析装置を用いて、撮像及び結晶方位分布が識別された画像を画像処理ソフトウェアで計測することで算出することができる。
【0042】
例えば、突出粒子13は被覆層12の外側に位置する結晶子群であり、平均結晶子径はそれらの平均フェレー径である。また、平均突出高さは、突出粒子13が被覆層12の表面から、突出粒子13の最先端までの垂直距離を指し、突出粒子13がコア粒子11の表面から突出する場合であっても、被覆層12の表面から突出粒子13の最先端までの垂直距離を指す。
【0043】
こうした突出粒子13は、平均結晶子径が被覆層12を構成する微細銀粒子の平均結晶子径よりも大きく、かつ結晶性が高いため、導電性ペーストなどに用いた際に、電極層などに突出粒子13を食い込ませることができる。突出粒子13は、そのすべてが被覆層12の表面からもしくは被覆層12の内部から突出して形成されるもの、またはそのすべてがコア粒子11の表面から突出して形成されるもの、あるいはこれらが混在したものである。こうした突出粒子13の形態は、後述する銀被覆樹脂粒子の製造方法における製造条件によって制御することができる。
【0044】
以上のような構成の銀被覆樹脂粒子10は、体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であればよく、3×10-3Ω・cm以下であることがより好ましい。体積抵抗率が1×10-2Ω・cmよりも高いと、電圧降下による損失が大きくなるため、導電性材料としては好ましくない。なお、体積抵抗率は、例えば、粉末状態の銀被覆樹脂粒子10を圧力容器に入れて9.8MPaで圧縮した圧粉体の抵抗値を抵抗率計で測定することで算出できる。
【0045】
以上のような構成の銀被覆樹脂粒子10に対する、被覆層12の微細銀粒子と突出粒子13の銀粒子を合計した銀の被覆量(銀の含有量)は、コア粒子11の平均粒子径に依存するとともに、必要とされる導電性の程度により決まり、例えば、銀被覆樹脂粒子100質量部に対して、2質量部~80質量部であればよく、28質量部~70質量部がより好ましく、28質量部~60質量部が更に好ましい。
【0046】
銀被覆樹脂粒子100質量部に対して、銀の含有量が2質量部より少ないと、例えば導電性ペーストとして銀被覆樹脂粒子を分散させたしたときに、銀同士の接点が少なくなり、導電性を付与することが困難になる虞がある。一方、銀の含有量が80質量部を超えると、比重が大きくなりコストも高くなるとともに、導電性の飽和によって銀の含有量ほどには導電性は向上しない。
【0047】
以上のような構成の本実施形態の銀被覆樹脂粒子10によれば、突出粒子13の最大直径をコア粒子11の最大直径に対して1/20以上、1/8以下の範囲にして、かつ、この突出粒子13を1つのコア粒子11に対して20個以上形成することによって、銀被覆樹脂粒子10を導電性材料として用いた際に、接続対象の電極等に対する突出粒子13の接触面積が高められ、その結果、高い導電性を実現することができる。また、突出粒子13のコア粒子11に対する最大直径が大きくなりすぎないようにすることで、突出粒子13がコア粒子11や被覆層12から脱落することを防止し、耐久性に優れた銀被覆樹脂粒子10を実現することができる。
【0048】
[銀被覆樹脂粒子の適用例]
本実施形態の銀被覆樹脂粒子10は、導電性フィラーとして優れており、特に、導電性接着剤、導電性フィルム(シート)、導電性ゴム(エラストマー)、導電性粘着剤、放熱シートや放熱グリス等のTIM(Thermal Interface Material)材料、又は導電性スペーサなどの導電性材料の導電性フィラーとして最適に適用できる。
【0049】
(導電性接着剤)
導電性接着剤は、等方性の導電性接着剤(ICA:Isotropic Conductive Adhesive)と異方性の導電性接着剤(ACA:Anisotropic Conductive Adhesive)に区分される。また、バインダの形態によってペースト状、フィルム状、インク状の形態を有する。等方性の導電性接着剤は、バインダ硬化時にバインダが収縮することで、縦方向、横方向、斜方向ともにフィラーが互いに接触し、これにより接続したい導電物とフィラーが接触して導電性が得られる。等方性の導電性接着剤にてシートを形成することも可能である。
【0050】
異方性の導電性接着剤は、バインダ中にフィラーとして銀被覆樹脂粒子10が分散していて、接続したい導電物同士の間に異方性の導電性接着剤を挟み込む。これを縦方向に加圧することで、接続したい導電物の間のフィラーと接続したい導電物が縦方向に接触し導電性が得られる。一方、加圧されていない部分は絶縁物であるバインダを介してフィラー同士が横方向に配置され、互いに接触しないので導電性は得られない。
【0051】
導電性接着剤としては、例えば、異方性又は等方性の導電性ペースト、異方性又は等方性の導電性インキなどが挙げられる。導電性接着剤は、銀被覆樹脂粒子10と絶縁性のバインダ樹脂とを遊星混合機や三本ロールミルのような混練機を用いて均一に混合して調製される。こうした導電性接着剤は、絶縁性のバインダ樹脂中に銀被覆樹脂粒子10が均一に分散する。銀被覆樹脂粒子10の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、バインダ樹脂100質量部に対して0.5質量部~90質量部の範囲内であればよい。
【0052】
導電性接着剤における絶縁性のバインダ樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂や、硬化性樹脂組成物などの熱や光によって硬化する組成物などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂組成物としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂又はそれらの混合物を主成分として含む樹脂組成物が挙げられる。
【0053】
(導電性フィルム(シート))
導電性フィルムとしては、フィルム状に成形された異方性又は等方性の導電性フィルムが挙げられる。導電性フィルムは、先ず銀被覆樹脂粒子10が絶縁性のバインダ樹脂中に分散された樹脂組成物を作製し、次いでこの樹脂組成物をPET等の支持フィルムの表面に塗布することにより作製される。この樹脂組成物は銀被覆樹脂粒子10と絶縁性のバインダ樹脂とを遊星混合機や三本ロールミルのような混練機を用いて均一に混合して調製することができる。
【0054】
導電性フィルムでは、支持体フィルム上で絶縁性のバインダ樹脂中に銀被覆樹脂粒子10が均一に分散する。導電性フィルムにおける絶縁性のバインダ樹脂としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などの樹脂又はそれらの混合物を主成分として含む樹脂組成物が挙げられる。導電性フィルムにおける樹脂組成物中の銀被覆樹脂粒子10の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、バインダ樹脂100質量部に対して0.5~90質量部の範囲内が好ましい。
【0055】
(導電性ゴム(エラストマー))
導電性ゴムとしては、シート状や直方体状に成形された導電性ゴムがあり、放熱シートや導電コネクタとして使用できる。導電性ゴムは、まずバインダゴムと、加硫剤と、銀被覆樹脂粒子10とを二軸ロール等を用いて混練し、次いで加熱プレス機や乾燥機を用いて加熱や加圧を実施することにより加硫および成型することで作製される。導電性ゴムにおけるバインダゴムとしては、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。導電性ゴムにおける組成物中の銀被覆樹脂粒子10の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、バインダゴム100質量部に対して0.5質量部~90質量部の範囲内が好ましい。
【0056】
(導電性粘着剤)
導電性粘着剤としては、シート状や直方体状に成形された導電性粘着剤又は導電性ゲルがあり、電気接点材料、放熱シート及び電極として使用できる。導電性粘着剤は、先ず銀被覆樹脂粒子10が絶縁性のバインダとなる粘着剤中に分散された粘着性組成物を作製し、次いでこの粘着性組成物をPET等の支持フィルムの表面に塗布することにより作製することができる。
【0057】
導電性粘着剤におけるバインダ粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。導電性粘着剤における組成物中の銀被覆樹脂粒子10の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、粘着剤100質量部に対して0.5質量部~90質量部の範囲内が好ましい。
【0058】
(放熱グリス)
放熱グリスとしては、不揮発性の基油、銀被覆樹脂粒子10を混合したものがあり、放熱材料として用いることができる。放熱グリスは基油と銀被覆樹脂粒子10を遊星混合機や三本ロールミルのような混練機を用いて均一に混合して調製される。放熱グリスに用いられる基油としては、シリコーンオイル系基油、鉱油系基油、合成炭化水素系基油、エステル系基油、エーテル系基油及びグリコール系基油又はそれらの組合せなどを挙げることができる。放熱グリスにおける組成物中の銀被覆樹脂粒子10の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、基油100質量部に対して0.5質量部~90質量部の範囲内が好ましい。
【0059】
(導電性スペーサ)
導電性スペーサは、液晶表示装置において、液晶物質を挟む上下2枚の基板の配線部分
を電気的に上下に接続し、かつ基板の間隙を所定の寸法に保持して使用される。導電性スペーサは、先ず銀被覆樹脂粒子10を熱硬化性樹脂や紫外光硬化型接着剤などの絶縁性のバインダ樹脂に添加した後、銀被覆樹脂粒子10とバインダ樹脂とを遊星混合機や三本ロールミルのような混練機を用いて均一に混合して樹脂組成物を調製する。
【0060】
次いで上下2枚の基板の配線部分のいずれか一方又は双方に上述した樹脂組成物を塗布して2枚の基板を貼り合わせることにより作製される。銀被覆樹脂粒子10の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、バインダ樹脂100質量部に対して2質量部~10質量部の範囲内が好ましい。
【0061】
[銀被覆樹脂粒子の製造方法]
次に、本発明の一実施形態の銀被覆樹脂粒子の製造方法について説明する。
本実施形態の銀被覆樹脂粒子10の製造方法は、銀塩と銀錯体化剤とを含む銀液、pH調整液及び還元剤水溶液を用いて、コア粒子11の表面に被覆層12と突出粒子13とを析出形成する方法である。
【0062】
まず、平均粒子径が1.0μm以上、30μm以下の範囲のコア粒子11を用意する。本実施形態では、コア粒子11として、平均粒子径が20μmのシリコーン樹脂粒子を用いた。
【0063】
次に、銀を析出させるための滴下液を用意する。滴下液のうち、銀液を構成する銀塩としては、硝酸銀、又は銀を硝酸に溶解したもの等を用いることができる。また、銀液を構成する銀錯体化剤としては、例えば、アンモニア、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、ニトロ三酢酸、トリエチレンテトラアンミン六酢酸、チオ硫酸ナトリウム、コハク酸塩、コハク酸イミド、クエン酸塩等の塩類を用いることができる。こうした銀錯体化剤は銀液中で完全に溶解していることが好ましい。
【0064】
滴下液のうち、pH調整液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などを用いることができる。
【0065】
また、還元剤としては、例えば、ホルマリン、ブドウ糖、ロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)、ヒドラジン及びその誘導体、ヒドロキノン、L-アスコルビン酸又はギ酸等を用いることができる。特に、ホルムアルデヒドの水溶液であるホルマリンが好ましく、少なくともホルムアルデヒドを含む2種類以上の還元剤の混合物がより好ましく、更には、ホルムアルデヒドとブドウ糖を含む還元剤の混合物が最も好ましい。これら還元剤を純水で溶解することで還元剤水溶液が形成される。
【0066】
次に、コア粒子11に水を加えて、コア粒子11が水に分散したコア粒子スラリーを形成する。コア粒子スラリーに含まれるコア粒子11の割合は、例えば、5質量%以上、10質量%以下の範囲であればよい。そして、このコア粒子スラリーを10℃以上、30℃以下好ましくは15℃以上、25℃以下の範囲に調温する。コア粒子スラリーが10℃未満では、被覆層12の結晶粒子が粗大になり、30℃を超えると、急激な銀の析出により、被覆層12がコア粒子11から剥離しやすくなる。通常の室温範囲(20℃~25℃)であれば、特に加熱や冷却などを行う必要は無い。
【0067】
そして、このコア粒子スラリーを撹拌装置などを用いて撹拌してコア粒子11を均一に分散させつつ、上述した銀液(銀塩と銀錯体化剤)、pH調整液、還元剤水溶液の3液を同時にコア粒子スラリーに滴下する。なお、pH調整液と還元剤水溶液とは予め混合しておいて、銀液と併せて2液を同時に滴下することもできる。
【0068】
それぞれの滴下液の滴下時間は、滴下開始から10分以上、40分以下の範囲で行うようにする。滴下時間が10分未満では、全てが被覆層12を構成する微細銀粒子だけとなり、これよりも平均粒子径が大きい突出粒子13が形成されない。また、滴下時間が40分を超えると、突出粒子13が密に形成されすぎて、コア粒子11から剥離しやすくなる懸念がある。
【0069】
また、上述した滴下時間内で、銀液、pH調整液、還元剤水溶液のそれぞれの滴下速度は、30mL/分以上、200mL/分以下の範囲になるようにするのが好ましい。
【0070】
以上のような滴下時間の範囲で、銀液(銀塩と銀錯体化剤)、pH調整液、還元剤水溶液の3液を同時にコア粒子スラリーに滴下することによって、滴下初期には被覆層12を構成する微細銀粒子が多く形成され、その後、滴下が進むにつれて、微細銀粒子よりも平均粒子径の大きい銀の突出粒子13が成長する。
【0071】
以上のような、本実施形態の銀被覆樹脂粒子の製造方法によって、コア粒子11の表面を覆う微細銀粒子からなる被覆層12と、コア粒子11の最大直径に対して1/20以上、1/8以下の範囲の最大直径を有する突出粒子13が20個以上形成された銀被覆樹脂粒子10を製造することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。こうした実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0073】
以下、本発明の効果を検証した。
平均粒子径が4μmのシリコーン樹脂製コア粒子(製品番号:KMP-701、信越化学工業株式会社製)を、濃度5質量%となるように純水に分散させて、コア粒子スラリーを形成した。
このコア粒子スラリーをマグネチックスターラーを用いて攪拌しつつ、銀液(銀塩と銀錯体化剤)、pH調整液、還元剤水溶液の3液(滴下液)を同時にコア粒子スラリーに滴下した(比較例1を除く)。これにより、銀被覆樹脂粒子(試料)を生成した。
【0074】
銀塩は硝酸銀を用いた(滴下銀液中の硝酸銀濃度30質量%)。また銀錯体化剤はエチレンジアミン四酢酸四ナトリウムを用いた(滴下液中の濃度9.8質量%)。pH調整液は、濃度12.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた。還元剤水溶液は、還元剤としてホルマリンを用いた(濃度5質量%)。
【0075】
(本発明例1)シリコーンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を5質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を20分とした。
(本発明例2)シリコーンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を5質量%、コア粒子スラリーの液温を15℃に保ち、滴下液の滴下時間を10分とした。
(本発明例3)アクリルコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を8質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を30分とした。
(本発明例4)スチレンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を5質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を10分とした。
(本発明例5)シリコーンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を10質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を30分とした。
(本発明例6)アクリルコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を10質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を30分とした。
(本発明例7)シリコーンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を5質量%、コア粒子スラリーの液温を30℃に保ち、滴下液の滴下時間を20分とした。
(本発明例8)ウレタンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を5質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を15分とした。
【0076】
(比較例1)シリコーンコア粒子スラリーに予め銀液(銀塩と銀錯体化剤)、pH調整液、還元剤水溶液の3液を溶かしこみ、この溶液を20℃に保って20分静置した。
(比較例2)シリコーンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を5質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を7分とした。
(比較例3)シリコーンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を12質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を20分とした。
(比較例4)シリコーンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を5質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を50分とした。
(比較例5)シリコーンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を5質量%、コア粒子スラリーの液温を5℃に保ち、滴下液の滴下時間を10分とした。
(比較例6)シリコーンコア粒子スラリー中のコア粒子濃度を3質量%、コア粒子スラリーの液温を20℃に保ち、滴下液の滴下時間を15分とした。
【0077】
以上の本発明例1~8、比較例1~6の各試料の銀被覆樹脂粒子1つあたりの突起粒子の個数、突起粒子の平均粒子径、コア粒子の最大直径に対する突出粒子の最大直径の比率、被覆層を構成する微細銀粒子の平均粒子径をそれぞれ測定した。
なお、突起粒子の個数と平均粒子径、直径の比率、および微細銀粒子の平均粒子径は、走査型顕微鏡で撮影した後、この画像を画像処理ソフトウェア「imageJ:NIH」を用いて処理を行うことによって、それぞれ測定した。
【0078】
また、形成した銀被覆樹脂粒子の形状をSEM写真に基づいて観察した。それぞれの形状は以下の通りである。
毬栗状:コア粒子の直径に対して1/20以上、1/8以下の平均粒子径の突出粒子が、1つのコア粒子に対して20個以上形成されている。
突出粒子なし:被覆層の表面から突出する突起粒子が見られなかった。
突出粒子が粗大:突出粒子の平均粒子径がコア粒子の直径に対して1/8以上である。
突出粒子がほぼなし:被覆層の表面から突出する突起粒子が5個以下である。
コア粒子以外の箇所に銀粒子析出:コア粒子や被覆層に接することなく単離している銀粒子が存在している。
【0079】
また、この各試料の銀被覆樹脂粒子を導電性フィラーとして、それぞれ濃度が50容量%となるようにエポキシ樹脂(硬化前)に均一に分散させて導電性ペーストを作成した。そして、それぞれの試料の導電性ペーストを基材に塗布して硬化させ、厚み50μmの塗膜を形成した。そして、それぞれ塗膜の表面抵抗値を測定した。表面抵抗値を測定は、抵抗測定器(ローレスタ:三菱化学株式会社製)を用いて、10cm×10cm平方のサイズの測定試料の中心部の表面抵抗値を測定することにより行った。なお、表面抵抗値の評価は、1.0×10-3(Ω/□)以下を「〇」、1.0×10-3を超えて1.0×10-2(Ω/□)未満を「△」、1.0×10-2(Ω/□)以上を「×」とした。
これらの各試料の条件を表1に、各測定結果を表2に纏めて示す。
【0080】
【0081】
【0082】
表1に示す結果によれば、コア粒子スラリー中のコア粒子濃度を5質量%以上、10質量%以下の範囲、滴下液の滴下時のコア粒子スラリーの液温を10℃以上、30℃以下の範囲、滴下液の滴下時間を10分以上、40分以下の範囲にすることで得られた本発明例1~7の銀被覆樹脂粒子は、いずれも突出粒子の最大直径がコア粒子の最大直径に対して1/20以上、1/8以下の範囲、かつ、1つの銀被覆樹脂粒子に突出粒子が20個以上形成されている銀被覆樹脂粒子が得られることが確認できた。また、こうした本実施形態の1~8の銀被覆樹脂粒子を用いた導電性ペーストで形成した塗膜は、いずれも表面抵抗率が1.0×10-3(Ω/□)以下であり、優れた導電性を示した。
【0083】
一方、比較例1~6で得られた銀被覆樹脂粒子は、突出粒子の個数が何れも20個未満であり、これを用いた導電性ペーストで形成した塗膜は、いずれも表面抵抗率が1.0×10-3を超えており、導電性が低いことが確認された。
【0084】
また、本発明例1の銀被覆樹脂粒子のSEM写真を
図3に、比較例1の銀被覆樹脂粒子のSEM写真を
図4に、比較例2の銀被覆樹脂粒子のSEM写真を
図5に、それぞれ示す。
図3によれば、本発明例1の銀被覆樹脂粒子は、コア粒子が微細銀粒子からなる被覆層で覆われ、その被覆層の表面から複数の突出粒子が突出するように形成されていることが分かる。
一方、比較例1の銀被覆樹脂粒子は、コア粒子を覆う被覆層の表面に突出粒子が全く形成されていないことが分かる。また、比較例2の銀被覆樹脂粒子は、コア粒子以外の部分にも銀粒子が析出してしまっていることが分かる。