(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145456
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】還元剤注入装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/90 20060101AFI20241004BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20241004BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B01D53/90 ZAB
B01D53/86 222
F23J15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057815
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】戸▲高▼ 心平
(72)【発明者】
【氏名】加古 博
【テーマコード(参考)】
3K070
4D148
【Fターム(参考)】
3K070DA02
3K070DA14
3K070DA22
3K070DA25
3K070DA73
4D148AA06
4D148AA08
4D148AB02
4D148AB03
4D148AC03
4D148AC04
4D148BA07Y
4D148BA41Y
4D148BB02
4D148BB04
4D148CC23
4D148CC32
4D148CC44
4D148CC54
4D148CC61
4D148DA03
4D148DA20
(57)【要約】
【課題】ダクト内を流通するガスに対する還元剤の濃度を均一化することを目的とする。
【解決手段】アンモニア注入部20は、ダクト3内を流通する排ガスに対して、排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を注入する。アンモニア注入部20は、ダクト3内を流通する排ガスに対してアンモニアガスを注入する複数の噴射ノズル21と、複数の噴射ノズル21が設けられ、内部をアンモニアガスが流通する複数の母管22と、ダクト3内であって母管22のガス流れにおける下流側に設けられ、複数の母管22に還元剤を供給するヘッダ23と、を備えている。母管22からヘッダ23までの距離Dは、母管22の外径dの3倍よりも長い距離とされている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクト内を流通するガスに対して、ガスに含まれる窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を注入する還元剤注入装置であって、
前記ダクト内を流通するガスに対して還元剤を注入する複数の注入部と、
複数の前記注入部が設けられ、内部を還元剤が流通する複数の母管と、
前記ダクト内であって前記母管のガス流れにおける下流側に設けられ、複数の前記母管に還元剤を供給する供給部と、を備え、
前記母管から前記供給部までの距離は、前記母管の外径の3倍よりも長い距離とされている還元剤注入装置。
【請求項2】
前記供給部は、複数の前記母管が接続され複数の前記母管へ還元剤を供給するヘッダと、前記ダクトの外部から前記ヘッダへ還元剤を導く供給管と、を有し、
前記母管から前記ヘッダ及び前記供給管までの距離は、前記母管の外径の3倍よりも長い距離とされている請求項1に記載の還元剤注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、還元剤注入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排熱回収ボイラ(HRSG)は、ガスタービン等から排出される排ガスがダクト(煙道)内を通過し、排ガスと伝熱管内の水又は蒸気とが熱交換することによって、蒸気を生成する。排熱回収ボイラのダクト内部には、水や蒸気が流通する多数の伝熱管を有する複数の熱交換器や、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を取り除く(脱硝する)脱硝装置等が設置される。
【0003】
脱硝装置は、例えば、ダクト内を流通する排ガスに対して複数の注入ノズルから、窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤(例えば、アンモニアや尿素水)を噴射する。そして、脱硝装置は、還元剤が注入された排ガスを、反応装置(例えば、脱硝触媒)を通過させることで排ガス中の窒素酸化物を取り除く。
還元剤を噴射する複数の注入ノズルは、排ガスが流通する煙道内に設けられる母管に所定の間隔で取付けられている。母管にはヘッダ等を介して供給管が接続されており、ヘッダ及び供給管を介して母管に還元剤が供給される。各注入ノズルの噴射量を均一化するためには、母管内で還元剤の温度が変化しないことが望ましい。このため、ヘッダ及び供給管を煙道内に設け、母管に供給する還元剤を供給管内で十分に昇温させる場合がある(例えば、特許文献1)。特許文献1には、排ガスにアンモニア稀釈ガスを注入するノズル母管に対して、排ガスダクト内に設けられたアンモニア供給管を経由してアンモニア稀釈ガスを供給する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
煙道内にアンモニア供給管やヘッダが配置されている場合、煙道内を流通する排ガスの一部がアンモニア供給管の影響で流速が遅くなる。これにより、アンモニア供給管の下流側では、他の領域よりも流速が遅い領域(ウェイク)が生じる。
したがって、特許文献1のように、アンモニア供給管等を母管の上流側に設置した場合、母管に設けられた注入ノズルから噴射されるアンモニアのうちの一部がウェイクに噴射されることとなる。このため、ダクト内を流通する排ガスに対するアンモニアの濃度にバラつきが生じる可能性があった。注入されるアンモニア濃度にバラつきが生じた場合、母管の下流に設けられた反応装置に均一にアンモニアが到達せずに、反応装置において排ガス中の窒素酸化物を好適に取り除くことができない可能性があった。
【0006】
煙道内において、母管の下流側では、噴射ノズルから噴射されたアンモニアを拡散する効果を奏するカルマン渦が発生する。しかしながら、母管の下流側であって母管の近傍にアンモニア供給管等が設けられている場合、アンモニア供給管等によってカルマン渦の発達が阻害される。このため、母管の下流側においてカルマン渦が発達し難くなり、アンモニアの拡散が抑制される可能性があった。アンモニアの拡散が抑制されることで、ダクト内を流通する排ガスに対するアンモニアの濃度にバラつきが生じる可能性があった。よって、反応装置に均一にアンモニアが到達せずに、反応装置において排ガス中の窒素酸化物を好適に取り除くことができない可能性がある。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ダクト内を流通するガスに対する還元剤の濃度を均一化することができる還元剤注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の還元剤注入装置は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る還元剤注入装置は、ダクト内を流通するガスに対して、ガスに含まれる窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を注入する還元剤注入装置であって、前記ダクト内を流通するガスに対して還元剤を注入する複数の注入部と、複数の前記注入部が設けられ、内部を還元剤が流通する複数の母管と、前記ダクト内であって前記母管のガス流れにおける下流側に設けられ、複数の前記母管に還元剤を供給する供給部と、を備え、前記母管から前記供給部までの距離は、前記母管の外径の3倍よりも長い距離とされている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ダクト内を流通するガスに対する還元剤の濃度を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る排熱回収ボイラを示す概略構成図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る脱硝装置を示す概略構成図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るアンモニア注入部を示す模式的な水平断面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るアンモニア注入部のおけるアンモニアの分布を示す図である。
【
図6】本開示の比較例に係るアンモニア注入部のおけるアンモニアの分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る脱硝装置について、
図1から
図6を用いて説明する。以下の説明及び図面において、上下方向をZ軸方向と称し、水平方向のうち排ガスが流通する方向をX軸方向と称し、X軸方向及びZ軸方向と直交する方向をY軸方向と称する。また、
図2から
図6において排ガスの流通方向を矢印Eで示している。
【0012】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る排熱回収ボイラ2について説明する。
本実施形態に係る排熱回収ボイラ2は、
図1に示すように、排ガスがX軸方向(所定方向)に流れる横型の排熱回収ボイラである。本実施形態では、排ガスが流れる方向であるX軸方向は水平方向とされている。
【0013】
本実施形態に係る排熱回収ボイラ2は、X軸方向に延設され内部を排ガスが流通するダクト3と、ダクト3の内部に設けられて排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝装置10と、ダクト3の内部に設けられる第1熱交換部4及び第2熱交換部5と、を備える。
【0014】
第1熱交換部4及び第2熱交換部5は、排ガス流れ方向と交差するように延設された複数の伝熱管(図示省略)を有する。第1熱交換部4及び第2熱交換部5は、伝熱管の内部を流通する熱媒体(例えば、水や蒸気)と排ガスとの熱交換により、排ガスの熱を回収する。
第1熱交換部4は、脱硝装置10よりも上流側に設けられている。第1熱交換部4は、例えば、伝熱管の内部を流通する熱媒体を過熱する過熱器であってもよい。第2熱交換部5は、脱硝装置10よりも下流側に設けられている。第2熱交換部5は、例えば、伝熱管の内部を流通する熱媒体を蒸発させる蒸発器であってもよい。
【0015】
燃焼機関1から排出された高温の燃焼排ガス(排ガス)は、ダクト3の入口からダクト3内に導入され、第1熱交換部4、脱硝装置10及び第2熱交換部5を順次通過した後にダクト3の出口を介して煙突7から排出される。
【0016】
次に、脱硝装置10について、
図1から
図5を用いて詳細に説明する。
脱硝装置10は、窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤(アンモニア、尿素水等)を、ダクト3内を流通する排ガスに供給し、還元剤が供給された排ガス中の窒素酸化物(NOx)と還元剤との反応を脱硝触媒40の触媒作用により促進させることで、排ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。以下の説明では、還元剤としてアンモニアガスを用いた例について説明する。なお、本開示に係る還元剤は、アンモニアガスに限定されない。例えば、液体状のアンモニアであってもよく、また、アンモニア以外であってもよい。
【0017】
図1及び
図2に示すように、脱硝装置10は、ダクト3内に排ガス流れの上流側から順番に配置されているアンモニア注入部(還元剤注入装置)20と、混合器30と、脱硝触媒40と、アンモニア分解触媒50と、を備えている。
【0018】
アンモニア注入部20は、複数の噴射ノズル21からダクト3内にX軸方向に沿ってアンモニアガスを噴射することで、ダクト3内を流通する排ガスに対してアンモニアガスを注入する。アンモニア注入部20の詳細については後述する。
【0019】
混合器30は、ダクト3の流路断面の略全域を覆うように配置されている。混合器30には、アンモニア注入部20から噴射されたアンモニアガス及び排ガスが流入する。混合器30は、X軸方向に延在する中心軸線を中心として旋回する旋回流を形成する。混合器30を通過した排ガス(詳細には、アンモニアを注入された排ガス)は、混合器30の下流側の空間において、単数又は複数の旋回流となり流通する。このように、混合器30は、旋回流を形成することでダクト3内を流通する排ガスとアンモニアとを混合する。
【0020】
脱硝触媒40は、ダクト3の流路断面の略全域を覆うように配置されている。脱硝触媒40は、例えば、矩形筒状の矩形枠部(図示省略)と、矩形枠部の内部に設けられる複数の触媒(図示省略)と、を有する。触媒の形状としては、排ガスがX軸方向に通過可能なハニカム形状や波板形状のものが例示されるが、これらに限定されない。触媒は、内部を通過する排ガス(燃焼排ガス)に含まれるNOx(窒素酸化物)の還元反応を促して、NOxの少なくとも一部を除去する。触媒の成分は、例えば、酸化チタンがベースとされている。
【0021】
アンモニア分解触媒50は、ダクト3の流路断面の略全域を覆うように配置されている。アンモニア分解触媒50は、排ガスに含まれるアンモニアを分解することで、排ガス中からアンモニアを除去する。本実施形態では、脱硝触媒40の下流側にアンモニア分解触媒50が設けられているので、脱硝触媒40で反応し切らなかった排ガス中のアンモニアをアンモニア分解触媒50によって分解することができる。
【0022】
次に、アンモニア注入部20の詳細について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、アンモニア注入部20を上面視した図である。また、
図4は、アンモニア注入部20の縦断面図である。詳細には、
図4は、
図3のIV-IV矢視断面図である。
【0023】
図3及び
図4に示されているように、アンモニア注入部20は、アンモニアガスを噴射する複数の噴射ノズル(注入部)21と、噴射ノズル21が設けられY軸方向に延在する複数の母管22と、母管22にアンモニアガスを供給する供給部27とを有する。
【0024】
複数の噴射ノズル21は、母管22の延在方向(すなわち、Y軸方向)に沿って所定の間隔で並んで配置されている。噴射ノズル21は、母管22の排ガス流れにおける下流側の面に設けられている。噴射ノズル21は、母管22の側面に形成された穴であってもよい。噴射ノズル21は、所定の噴射圧力でアンモニアガスを噴射する。詳細には、噴射ノズル21は、排ガス流れのおける下流側に向かってアンモニアガスを噴射する。噴射ノズル21の噴射孔の径は、例えば、3mm~6mmである。噴射ノズル21は、アンモニアガスを円錐状に噴射する。なお、上記の噴射ノズル21の噴射孔の径や、噴射態様は一例であり、これに限定されない。
【0025】
母管22は、Y軸方向に沿って延在している。母管22は、内部にアンモニアガスが流通している。母管22は、円管状を為している。母管22の外径dは、所定の長さとされている。また、母管22には、接続管24が接続されている。
母管22は、複数設けられている。複数の母管22は、
図4に示すように、Z軸方向に沿って所定の間隔で並んで配置されている。
【0026】
供給部27は、
図3及び
図4に示すように、ダクト3内であって母管22のガス流れにおける下流側に設けられ、複数の母管22に還元剤を供給する。供給部27は、複数の母管22に接続されるヘッダ23と、母管22とヘッダ23とを接続する接続管24と、ヘッダ23にアンモニアガスを外部から供給する供給管25と、を有する。
【0027】
ヘッダ23は、母管22の排ガス流れにおける下流側に設けられている。ヘッダ23は、
図4に示すように、Z軸方向に沿って延在している。ヘッダ23には、接続管24が接続されている。ヘッダ23は、接続管24を介して、複数の母管22が接続されている。
ヘッダ23は、複数設けられている。複数のヘッダ23は、Y軸方向に沿って所定の間隔で並んで配置されている。なお、
図3及び
図4では、図示の関係上、ヘッダ23を1本のみ図示している。各ヘッダ23には、供給管25が1本ずつ接続されている。
【0028】
母管22からヘッダ23までの距離Dは、母管22の外径dの3倍よりも長い距離とされている。すなわち、以下の(1)式が成立する。なお、距離Dとは、母管22の下流端からヘッダ23の中心軸線までの最短距離であってもよい。
【0029】
D>3d・・・(1)
【0030】
接続管24は、母管22の排ガス流れにおける下流側に設けられている。接続管24は、X軸方向に沿って延在している。接続管24は、母管22とヘッダ23とを接続している。
接続管24は、複数設けられている。複数の接続管24は、Z軸方向に沿って所定の間隔で並んで配置されている。
【0031】
供給管25は、ヘッダ23の下流側に設けられている。供給管25の内部にはアンモニアガスが流通している。供給管25は、ダクト3の外部に設けられたアンモニアガス供給部(図示省略)から供給されるアンモニアガスをヘッダ23へ導く。供給管25の上流端が、アンモニアガス供給部に接続されている。供給管25の下流端は、ヘッダ23の下流側の面に接続されている。供給管25の下流端は、ヘッダ23のZ軸方向の略中央部に接続される。各供給管25は、供給管25内を流通するアンモニアガスが供給管25の外部を流通する排ガスと熱交換することで排ガスの温度と同程度の温度まで昇温するように全長が設定されている。
【0032】
供給管25は、複数設けられている。なお、
図3及び
図4では、図示の関係上、供給管25を1本のみ図示している。各供給管25は、全長が略同じ長さとされている。複数の供給管25は、各々、ヘッダ23に接続されている。供給管25とヘッダ23とは、1対1対応とされている。
【0033】
次に、本実施形態に係るアンモニア注入部20におけるアンモニアガスの流れについて説明する。
ダクト3の外部に設けられたアンモニアガス供給部は、供給管25にアンモニアガスを導入する。供給管25に導入されたアンモニアガスは、供給管25内を流通する。このとき、アンモニアガスは、供給管25の外部を流通する排ガスと熱交換することで、排ガスの温度と同程度の温度まで昇温する。供給管25内を流通したアンモニアガスは、ヘッダ23に導入される。ヘッダ23に導入されたアンモニアガスは、ヘッダ23内を流通するとともに、接続管24を介して各母管22に分配される。母管22に導入されたアンモニアガスは、母管22内を流通するとともに、各噴射ノズルからダクト3内に噴射される。なお、アンモニアガスは、供給管25及びヘッダ23内で十分に昇温していることから、母管22内を流通する際には温度変化をほとんどしない。
【0034】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、ヘッダ23や供給管25が母管22の下流側に設けられている。すなわち、母管22がヘッダ23や供給管25の上流側に設けられている。これにより、母管22に設けられた噴射ノズル21からダクト3内に噴射されるアンモニアガスが、ヘッダ23の下流に生じるウェイク(低流速領域)の影響を受けないようにすることができる。したがって、噴射したアンモニアガスの流速が均一化されるので、ダクト3内を流通する排ガスに対するアンモニアガスの濃度を均一化することができる。よって、アンモニア注入部20の下流に設けられた混合部や脱硝触媒40に到達するアンモニアガスを均一化することができる。よって、脱硝触媒40において排ガス中の窒素酸化物を好適に取り除くことができる。
【0035】
ダクト3内では、母管22の近傍を通過した排ガスによるカルマン渦が母管22の下流側で発生する。カルマン渦は、ダクト3内を流通する排ガス中に、母管22から注入されるアンモニアガスを拡散させる効果を奏する。一方で、母管22とヘッダ23との距離が3d以下の場合には、ヘッダ23によってカルマン渦の発達が阻害されることから、カルマン渦が安定して形成されない。これにより、ヘッダ23が設けられている箇所の下流領域では、カルマン渦が安定して形成されない可能性がある。
一方で、母管22の外径の長さの3倍よりも長い距離母管22から離間した領域においては、安定したカルマン渦列(連関した渦放出)が形成される。カルマン渦が形成されることで、アンモニアの拡散が促進される。
本実施形態では、母管22からヘッダ23までの距離が、母管22の外径の3倍よりも長い距離とされている。すなわち、母管22とヘッダ23との距離が3倍よりも長い距離とされている。これにより、ヘッダによるカルマン渦の阻害が抑制されるので、カルマン渦が形成され易くすることができる。したがって、ダクト3内を流通する排ガス中に母管22から注入されるアンモニアガスを拡散させることができる。よって、ダクト3内を流通する排ガスに対するアンモニアガスの濃度を均一化することができる。よって、脱硝触媒40において排ガス中の窒素酸化物を好適に取り除くことができる。
【0036】
カルマン渦によるアンモニアガスの濃度の均一化効果について、
図5及び
図6を用いて詳細に説明する。
図5及び
図6では、同等のアンモニア濃度とされている箇所を線で繋いだ図である。また、黒色が濃い線ほどアンモニア濃度が高い状態を表している。
【0037】
図5では、母管22とヘッダ23とが、母管22の外径dの12倍の距離離れて配置されている状態を示している。すなわち、
図5では、以下の(2)式が成立するようにヘッダ23と母管22とを配置している。
【0038】
D=12d・・・(2)
【0039】
図5に示すように、母管22とヘッダ23とが十分な距離離間している場合には、母管22の下流側で母管22の延在方向(Y軸方向)の略全域においてカルマン渦が発生する。このため、Y軸方向の略全域において、カルマン渦によって排ガスとアンモニアガスとが混合されるので、
図5に示されているように、排ガス中のアンモニア濃度が好適に均一化される。
【0040】
また、
図5に示す例では、Y軸方向において、発生したカルマン渦が略均等に減衰していく。これにより、母管22のY軸方向において排ガス中のアンモニアガスの濃度のバラつきが抑制される。
また、排ガスとアンモニアガスとがある程度混合した状態でヘッダ23の近傍を通過するので、ヘッダ23に起因する排ガス中のアンモニアガスの濃度のバラつきが抑制される。
【0041】
このように、母管22とヘッダ23とが十分な距離離間している場合には、ダクト3内を流通する排ガスに対するアンモニアガスの濃度を均一化することができる。よって、脱硝触媒40において排ガス中の窒素酸化物を好適に取り除くことができる。すなわち、脱硝触媒40において脱硝効率を向上させることができる。
【0042】
一方、
図6の比較例では、母管22とヘッダ23との距離が3d以下とされている。すなわち、以下の(3)式が成立するようにヘッダ23と母管22とを配置している。
【0043】
D≦3d・・・(3)
【0044】
図6に示すように、母管22とヘッダ23とが十分な距離離間していない場合には、ヘッダ23の周辺において、Y軸方向にアンモニアガスが拡大する流れが生じ、噴射ノズル21から噴射されたアンモニアガスが排ガスに十分に混合される前にヘッダ23によって分断されている。
【0045】
また、ヘッダ23によってカルマン渦の発生が阻害される。このため、ヘッダ23の下流側においてカルマン渦が発生し難いことから、アンモニアの拡散が抑制される。このため、
図6に示すように、カルマン渦が発生しない領域において、好適に排ガスとアンモニアガスとが混合されない。このため、アンモニア濃度にバラつきが発生する。
【0046】
このように、母管22とヘッダ23とが十分な距離離間していない場合には、ダクト3内を流通する排ガスに対するアンモニアガスの濃度にバラつきが生じる。よって、脱硝触媒40における脱硝効率が低減する可能性がある。
【0047】
また、本実施形態では、供給管25が、ヘッダ23の下流側に設けられている。すなわち、母管22から供給管25までの距離も、母管22の外径dの3倍よりも長い距離とされている。これにより、供給管25もカルマン渦の発生を阻害しない。よって、ヘッダ23及び供給管25の両方を母管22から3dよりも離れた位置に設けることで、より好適にカルマン渦を発生させることができる。したがって、ダクト3内を流通する排ガス中に母管22から注入されるアンモニアガスをより好適に拡散させることができる。よって、ダクト3内を流通する排ガスに対するアンモニアガスの濃度をより好適に均一化することができる。
【0048】
なお、本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、排ガスが水平方向に流れる横型のダクト内に脱硝装置を設ける例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、脱硝装置は、排ガスが鉛直方向に流れる縦型のダクト内に設けられてもよい。
【0049】
また、
図5では、母管22とヘッダ23とが、母管22の外径dの12倍の距離離れて配置されている例を説明したが、本開示はこれに限定されない。母管22とヘッダ23とを、カルマン渦が自然に消滅する距離(母管22の外径の3倍よりも長い距離)離れて配置すればよい。
【0050】
以上説明した実施形態に記載の還元剤注入装置は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る還元剤注入装置は、ダクト(3)内を流通するガスに対して、ガスに含まれる窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を注入する還元剤注入装置(20)であって、前記ダクト内を流通するガスに対して還元剤を注入する複数の注入部(21)と、複数の前記注入部が設けられ、内部を還元剤が流通する複数の母管(22)と、前記ダクト内であって前記母管のガス流れにおける下流側に設けられ、複数の前記母管に還元剤を供給する供給部(27)と、を備え、前記母管から前記供給部までの距離は、前記母管の外径の3倍よりも長い距離とされている。
【0051】
上記構成では、供給部が母管の下流側に設けられている。すなわち、母管が供給部の上流側に設けられている。これにより、母管に設けられた注入部から注入される還元剤が、供給部の下流に生じるウェイク(低流速領域)の影響を受けないようにすることができる。したがって、ダクト内を流通するガスに対する還元剤の濃度を均一化することができる。
【0052】
ダクト内では、母管の近傍を通過したガスによるカルマン渦が母管の下流側で発生する。カルマン渦は、ダクト内を流通するガス中に、母管から注入される還元剤を拡散させる効果を奏する。一方で、母管と供給部との距離が3d以下の場合には、供給部によってカルマン渦の発達が阻害されることから、カルマン渦が安定して形成されない。これにより、供給部が設けられている箇所の下流領域では、カルマン渦が安定して形成されない可能性がある。
一方で、母管の外径の長さの3倍よりも長い距離母管から離間した領域においては、安定したカルマン渦列(連関した渦放出)が形成される。カルマン渦が形成されることで、還元剤の拡散が促進される。
【0053】
上記構成では、母管から供給部までの距離が、母管の外径の3倍よりも長い距離とされている。すなわち、母管と供給部との距離が3倍よりも長い距離とされている。これにより、ヘッダによるカルマン渦の阻害が抑制されるので、カルマン渦が形成され易くすることができる。したがって、ダクト内を流通するガス中に母管から注入される還元剤を拡散させることができる。よって、ダクト内を流通するガスに対する還元剤の濃度を均一化することができる。
【0054】
本開示の第2態様に係る還元剤注入装置は、上記第1態様において、前記供給部は、複数の前記母管が接続され複数の前記母管へ還元剤を供給するヘッダと、前記ダクトの外部から前記ヘッダへ還元剤を導く供給管と、を有し、前記母管から前記ヘッダ及び前記供給管までの距離は、前記母管の外径の3倍よりも長い距離とされている。
【0055】
上記構成では、母管からヘッダ及び供給管までの距離が、母管の外径の3倍よりも長い距離とされている。このように、ヘッダ及び供給管の両方を母管から母管の外径の3倍よりの長い距離離れた位置に設けることで、より好適にカルマン渦を発生・維持させることができる。したがって、ダクト内を流通するガス中に母管から注入される還元剤をより好適に拡散させることができる。よって、ダクト内を流通するガスに対する還元剤の濃度をより好適に均一化することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 :燃焼機関
2 :排熱回収ボイラ
3 :ダクト
4 :第1熱交換部
5 :第2熱交換部
7 :煙突
10 :脱硝装置
20 :アンモニア注入部(還元剤注入装置)
21 :噴射ノズル(注入部)
22 :母管
23 :ヘッダ
24 :接続管
25 :供給管
27 :供給部
30 :混合器
40 :脱硝触媒
50 :アンモニア分解触媒