(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145462
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】消臭剤組成物、消臭剤
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20241004BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20241004BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20241004BHJP
A61K 8/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61L9/01 H
A61L9/01 J
A61L9/12
A61Q13/00
A61K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057823
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100220836
【弁理士】
【氏名又は名称】堂前 里史
(72)【発明者】
【氏名】山中 絢子
(72)【発明者】
【氏名】田澤 寿明
【テーマコード(参考)】
4C083
4C180
【Fターム(参考)】
4C083KK02
4C180AA03
4C180AA16
4C180BB04
4C180EB02X
4C180EB03X
4C180EB06X
4C180EB07X
4C180EB12X
4C180EB14X
4C180EC01
4C180EC02
4C180FF01
4C180GG07
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】香料成分の消臭効果が得られ、かつ、嗅覚受容体の応答抑制能も充分に発揮される消臭剤組成物;および前記消臭剤組成物を備えた消臭剤の提供。
【解決手段】本発明の消臭剤組成物は、メチルメルカプタン臭に対する嗅覚受容体の応答を抑制する成分(A)と、イソアミルアセテート、エチル-2-メチルブチレート、イソアミルイソバレレート、ベンジルサリシレート、デカナール、ブチルアセテート、ヘキシルアセテート、イソアミルアセテート、ヘキサナールおよびcis-3-ヘキセニルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分(B)とを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメルカプタン臭に対する嗅覚受容体の応答を抑制する成分(A)と、
イソアミルアセテート、エチル-2-メチルブチレート、イソアミルイソバレレート、ベンジルサリシレート、デカナール、ブチルアセテート、ヘキシルアセテート、イソアミルアセテート、ヘキサナールおよびcis-3-ヘキセニルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分(B)と、を含有する、消臭剤組成物。
【請求項2】
前記嗅覚受容体が、OR2T11、および、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の消臭剤組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、α-イロン、フルフリルメチルジスルフィド、フルフリルメルカプタン、4-メトキシ-2-メチル-2-ブタンチオール、ゲラニオール、シトラール、リナリルアセテート、ターピニルアセテート、アセチルセドレン、δ-ダマスコン、フルフリルメチルスルフィド、チオゲラニオール、8-メルカプトメントン、ベンジルメルカプタン、β-イオノン、α-イオノン、α-イソメチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマセノンおよびβ-ダマスコンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の消臭剤組成物。
【請求項4】
前記成分(A)として、β-イオノンを少なくとも含有する、請求項3に記載の消臭剤組成物。
【請求項5】
前記成分(B)が、イソアミルアセテート、エチル-2-メチルブチレート、イソアミルイソバレレート、ベンジルサリシレートおよびデカナールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の消臭剤組成物。
【請求項6】
透過性シートを有する容器と、
前記容器内に収容された請求項1~5のいずれか一項に記載の消臭剤組成物と、
を備えた、消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤組成物、消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
嗅覚は、嗅上皮の嗅神経細胞に存在する嗅覚受容体が匂い分子に応答することで認識される。一の嗅覚受容体は複数の匂い分子に対して応答することがある。また、一の匂い分子が複数の嗅覚受容体に結合して作用することもある。
特許文献1には、メチルメルカプタン臭に応答する嗅覚受容体としてOR2T11等が開示されている。OR2T11等の嗅覚受容体の応答を抑制することによって、メチルメルカプタン臭をユーザーが知覚しにくくすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消臭剤には香りの嗜好性がユーザーに求められる。本発明者の検討によれば、OR2T11等の嗅覚受容体のアンタゴニストのような抑制剤だけでは、消臭剤に求められる嗜好性を満足しにくいため、1種または2種以上の香料成分と組み合わせる必要がある。しかし、本発明者が該抑制剤および香料成分を実際に組み合わせたところ、香料成分の消臭効果が得られないことや嗅覚受容体の応答抑制能が実際に発揮されないことがあった。
【0005】
本発明は、香料成分の消臭効果が得られ、かつ、嗅覚受容体の応答抑制能も充分に発揮される消臭剤組成物;および前記消臭剤組成物を備えた消臭剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]メチルメルカプタン臭に対する嗅覚受容体の応答を抑制する成分(A)と、イソアミルアセテート、エチル-2-メチルブチレート、イソアミルイソバレレート、ベンジルサリシレート、デカナール、ブチルアセテート、ヘキシルアセテート、イソアミルアセテート、ヘキサナールおよびcis-3-ヘキセニルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分(B)と、を含有する、消臭剤組成物。
[2]前記嗅覚受容体が、OR2T11、および、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の消臭剤組成物。
[3]前記成分(A)が、α-イロン、フルフリルメチルジスルフィド、フルフリルメルカプタン、4-メトキシ-2-メチル-2-ブタンチオール、ゲラニオール、シトラール、リナリルアセテート、ターピニルアセテート、アセチルセドレン、δ-ダマスコン、フルフリルメチルスルフィド、チオゲラニオール、8-メルカプトメントン、ベンジルメルカプタン、β-イオノン、α-イオノン、α-イソメチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマセノンおよびβ-ダマスコンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の消臭剤組成物。
[4]前記成分(A)として、β-イオノンを少なくとも含有する、[3]に記載の消臭剤組成物。
[5]前記成分(B)が、イソアミルアセテート、エチル-2-メチルブチレート、イソアミルイソバレレート、ベンジルサリシレートおよびデカナールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の消臭剤組成物。
[6]透過性シートを有する容器と、前記容器内に収容された[1]~[5]のいずれかに記載の消臭剤組成物と、を備えた、消臭剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、香料成分の消臭効果が得られ、かつ、嗅覚受容体の応答抑制能も充分に発揮される消臭剤組成物;および前記消臭剤組成物を備えた消臭剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】実施例1、2および比較例1~4での快・不快度の結果を示す。
【
図4】実施例1、2および比較例1~4での悪臭強度の結果を示す。
【
図5】実施例1、2および比較例1~4での応答抑制効果の結果を示す。
【
図6】実施例3、比較例5での快・不快度の結果を示す。
【
図7】実施例3、比較例5での悪臭強度の結果を示す。
【
図8】実施例3、比較例5での応答抑制効果の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語の意味は、以下の通りである。
「嗅覚受容体と同等の機能を有するポリペプチド」とは、細胞膜上に発現可能なポリペプチドであって、匂い分子の結合によって細胞内のcAMP量を増加させるポリペプチドをいう。
「アンタゴニスト」とは、嗅覚受容体に結合し、当該嗅覚受容体のアゴニストによる活性化を阻害する化合物である。
「アゴニスト」とは、嗅覚受容体に結合し、当該嗅覚受容体の応答を活性化する化合物である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、以下の説明は代表的な例に関するものであり、本発明は以下の記載に限定されない。
各図面の寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なったものである。また、以下の図面において、同一の構成については同じ符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
【0011】
<消臭剤組成物>
本発明の消臭剤組成物は、メチルメルカプタン臭に対する嗅覚受容体の応答を抑制する成分(A)と、イソアミルアセテート、エチル-2-メチルブチレート、イソアミルイソバレレート、ベンジルサリシレート、デカナール、ブチルアセテート、ヘキシルアセテート、イソアミルアセテート、ヘキサナールおよびcis-3-ヘキセニルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分(B)と、を含有する。
【0012】
(成分(A))
成分(A)は、メチルメルカプタン臭に対する嗅覚受容体の阻害剤である。メチルメルカプタン臭に対する嗅覚受容体としては、例えば、OR2T11、OR2T1、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチド、OR2T1と同等の機能を有するポリペプチドが挙げられる。なかでも、成分(A)が阻害剤として機能する嗅覚受容体としては、OR2T11、および、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種以上が好ましい。
【0013】
OR2T11は、ヒト嗅覚受容細胞での発現が確認されている嗅覚受容体であり、Gene ID:127077としてGenBank(NCBI)に登録されている。OR2T11は、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
OR2T11は、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチドと代替可能である。OR2T11と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列は、OR2T11のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すことが好ましく、85%以上の相同性を示すことがより好ましく、90%以上の相同性を示すことがさらに好ましく、95%以上の相同性を示すことがさらにいっそう好ましく、98%以上の相同性を示すことが特に好ましく、99%以上の相同性を示すことが最も好ましい。
【0014】
OR2T1は、ヒト嗅覚受容細胞での発現が確認されている嗅覚受容体であり、Gene ID:26696としてGenBank(NCBI)に登録されている。OR2T1は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
OR2T1は、OR2T1と同等の機能を有するポリペプチドと代替可能である。OR2T1と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列は、OR2T1のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すことが好ましく、85%以上の相同性を示すことがより好ましく、90%以上の相同性を示すことがさらに好ましく、95%以上の相同性を示すことがさらにいっそう好ましく、98%以上の相同性を示すことが特に好ましく、99%以上の相同性を示すことが最も好ましい。
【0015】
成分(A)は、上述の各嗅覚受容体の少なくともいずれか1種の応答を抑制する阻害剤であれば、特に限定されるものではない。なかでも、メチルメルカプタンの主要な嗅覚受容体であるOR2T11および、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチドの応答抑制効果が高い点で、α-イロン、フルフリルメチルジスルフィド、フルフリルメルカプタン、4-メトキシ-2-メチル-2-ブタンチオール、ゲラニオール、シトラール、リナリルアセテート、ターピニルアセテート、アセチルセドレン、δ-ダマスコン、フルフリルメチルスルフィド、チオゲラニオール、8-メルカプトメントン、ベンジルメルカプタン、β-イオノン、α-イオノン、α-イソメチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマセノンおよびβ-ダマスコンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。特に、成分(A)として、β-イオノンを少なくとも含有することが好ましい。
【0016】
(成分(B))
成分(B)は、イソアミルアセテート、エチル-2-メチルブチレート、イソアミルイソバレレート、ベンジルサリシレート、デカナール、ブチルアセテート、ヘキシルアセテート、イソアミルアセテート、ヘキサナールおよびcis-3-ヘキセニルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種の香料である。該成分(B)によれば、上述の成分(A)による嗅覚受容体の応答抑制能を充分に発揮させ、かつ、その香料成分の消臭効果も得られる。
なかでも成分(B)としては、イソアミルアセテート、エチル-2-メチルブチレート、イソアミルイソバレレート、ベンジルサリシレートおよびデカナールからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0017】
(他の香料成分)
消臭剤組成物は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、成分(B)以外の他の香料成分をさらに含有してしてもよい。複数成分からなる調合香料を用いてもよい。
他の香料成分としては、例えば、
麝香、霊猫香、竜延香等の動物性香料;
アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、ジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油等の植物性香料が挙げられる。
【0018】
他の香料として、合成香料、抽出香料等の人工香料を用いることもできる。例えば、
ピネン、リモネン等の炭化水素系香料;
リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、βフェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料;
n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料;
カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料;
γ―ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料;
オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料が挙げられる。
【0019】
(他の成分)
消臭剤組成物は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、必要に応じて可溶化助剤、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、色素、防腐剤等の他の成分をさらに含有してもよい。
【0020】
(消臭剤組成物の形態)
消臭剤組成物の剤型は特に限定されるものではなく、例えば、液剤、ゲル剤、固形剤、ポンプスプレー、エアゾール等の剤型とすることができる。
【0021】
液剤として用いる場合は、消臭剤組成物をそのまま用いてもよいが、適当な溶媒で希釈してもよい。溶媒で希釈する場合、溶媒の含有量は消臭剤組成物の0.1~95質量%が好ましく、0.5~90質量%がより好ましく、1.0~80質量%がさらに好ましい。
【0022】
液剤とする場合の溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、グリセリン等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキサイド等が挙げられる。溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
液剤とする場合、溶媒への溶解性を考慮して、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いてもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石けん、石けん用素地、金属石けん、N-アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(N-ココイル-N-メチルタウリンナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ-アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウムが挙げられる。
アニオン系界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
カチオン系界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、第3級アミンオキサイドが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのポリオキシエチレン鎖の炭素数は3~18が好ましく、7~12がより好ましい。アルキル鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル鎖の炭素数は8~22が好ましく、12~14がより好ましい。
脂肪酸アルカノールアミドとしては、例えば、椰子油脂肪酸、ステアリン酸、ラウリン酸のモノエタノールアミド、ジエタノールアミドが挙げられる。第3級アミンオキサイドとしては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド、椰子油脂肪酸ジメチルアミンオキサイド、ラウロイルアミノプロピルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイド、ミリスチルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0028】
ゲル剤とする場合、任意のゲル化剤を使用できる。ゲル化剤としては、例えば、カラギーナン、ジェランガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギン酸ソーダ、セルロース誘導体、ジベンジリデン-D-ソルビトール、ヒドロキシプロピル化多糖類、ステアリン酸イヌリン、アクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂、オクチル酸アルミニウムが挙げられる。
ゲル化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
<消臭剤>
本発明の消臭剤は、透過性シートを有する容器と、該容器内に収容された本発明の消臭剤組成物と、を備える。容器は、透過性シートを有し、かつ、消臭剤組成物を揮散させることができればよく、特に限定されるものではない。
【0030】
例えば、
図1および
図2に示す容器1は、容器本体2を有し、容器本体2の凹部2aの上面が透過性シート3で塞がれている。容器1内に収容された消臭剤組成物5は、透過性シート3によって容器1からこぼれなくなる。そのため、運搬時の取り扱いが容易になる。
【0031】
透過性シート3は消臭剤組成物の透過選択性が高いことが望ましいが、特に限定されるものではない。透過性シートはフィルムであってもよいが、特に限定されるものではない。透過性シート3は、消臭剤組成物の成分(A)や成分(B)、必要に応じて他の香料を透過させることができれば、特に限定されない。
透過性シート3の材質としては、例えば、延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテンが挙げられる。透過性シート3の材質は1種を単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
透過性シート3は単層構造であってもよく、2層以上の積層構造であってもよい。その厚さは10~100μmが好ましく、30~70μmがより好ましい。
2層以上の積層構造としては、例えば2種以上のシートを貼り合わせた複合シートが挙げられる。ポリエチレンまたは無延伸ポリプロピレンをシーラント層とし、その外面に延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、穴あきフィルム(例えば穴あきポリエチレンテレフタレートフィルム等)を貼り合わせた複合フィルムも好適である。シーラント層とは容器1の開口部に直接接着された層であって、容器1との間の密着性、液密性を高めるための層である。
【0033】
消臭剤組成物5の揮散に伴い容器1内が経時的に減圧されると、透過性シート3が容器1の底面に近づき、接触することが想定される。このような状態を防止するための空気導入口を形成してもよい。容器内に空気を送ることで、容器内の減圧状態を解消できる。空気導入口はガス透過性シート3の一部に設けてもよく、容器本体2に設けてもよい。
【0034】
以上いくつかの実施形態を示して説明したが、本発明は本明細書に開示の実施形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。本明細書に開示の実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0036】
<実施例1、2および比較例1~4>
表1に示す組成の消臭剤組成物を調製した。各例の消臭剤組成物について、官能試験、嗅覚受容体の応答試験を実施した。
【0037】
【0038】
表1に示す香料成分は、香料メーカーの製造品の調合香料である。実施例1で用いた調合香料は、サイダー系の調合香料である。実施例2ではフルーティ系の調合香料を、比較例1ではグリーン系の調合香料を、比較例2ではサイダー系の調合香料を、比較例3ではフルーティ系の調合香料を、比較例4ではグリーン系の調合香料をそれぞれ使用した。
【0039】
(官能試験)
官能試験は12名の評価者で行った。まず、各例の消臭剤組成物0.1gを2.5cm×2.5cmのパルプ紙に染み込ませた。その後、パルプ紙とファンを10Lのテトラーバッグに封入した。1時間以上室温で放置することでテトラーバッグ内に芳香空気を充満させた。その後、芳香空気の一部を容積3Lの袋に移し替えた。その容積3Lの袋に、気体のメチルメルカプタン(2%ガス/窒素):0.4mLを注入することで、試験用袋を作製した。評価者は、試験用袋について、下記の基準にしたがって快・不快度、悪臭強度の2項目を採点した。
【0040】
快・不快度は、次の評価基準で+4点から-4点まで1点刻みの9段階で評価した。
+4:極端に快適である。
+3:非常に快適である。
+2:快適である。
+1:やや快適である。
0:快適でも不快でもない。
-1:やや不快である。
-2:不快である。
-3:非常に不快である。
-4:極端に不快である。
【0041】
悪臭強度は、次の評価基準で+5点から0点まで1点刻みの6段階で評価した。
+5:強烈
+4:強い
+3:らくに感知できる
+2:弱い
+1:やっと感知できる
0:無臭
【0042】
(嗅覚受容体の応答試験)
まず、OR2T11のクローニングを実施した。OR2T11はGenBankに登録されている配列情報を基に、human genomic DNAHuman mixed(G3041:Promega)を鋳型としたPCR法によりクローニングした。PCR法により増幅した遺伝子をpCIベクター(Invitrogen)に製品プロトコルにしたがって組み込んだ。より詳細に説明すると、pCIベクター上に存在するNheI制限酵素サイト、BamHI制限酵素サイトを利用してRhoタグ配列が組み込み、その下流のMluI制限酵素サイト、NotI制限酵素サイトを利用してRhoタグ配列の下流に嗅覚受容体遺伝子を組み込んだ。次いで、ヒトRTP1Sをコードする遺伝子をpCIベクターのMluI制限酵素サイト、NotI制限酵素サイトへ組み込んだ。
【0043】
次いで、OR2T11発現細胞を用意した。Hana3A細胞を50%コンフルエントになるように96ウェルプレート(コーニング、BioCoat)で培養した。表2に示す組成の反応液を調製し、クリーンベンチ内で15分静置した後、96ウェルプレート(コーニング BioCoat)の各ウェルに50μLずつ添加した。37℃、5%CO2雰囲気で保持したインキュベータ内で24時間培養し、OR2T11を発現させたHana3A細胞を用意した。
【0044】
【0045】
Hana3A細胞に発現した嗅覚受容体OR2T11は、細胞内在性のGαsと共役し、アデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させる。細胞内cAMP量の増加をホタルルシフェラーゼ遺伝子由来の発光値として測定することで、OR2T11の応答活性を測定できる。以下のGlo Sensorアッセイを行うことで応答試験を実施した。つまり、ルシフェラーゼの活性測定には、Glo Sensor cAMP Reagent(Promega)を用い、製品プロトコルにしたがって測定を行った。より詳細に説明すると以下の通りである。
【0046】
まず、OR2T11発現細胞の培養物から培地を取り除き、10mMのHEPESを含むHBSS緩衝液で希釈したGlo Sensor cAMP Reagentを96ウェルプレートの各ウェルに25μLずつ添加した。細胞を2.5~3時間培養して細胞内にcAMP Reagentを導入した。ここで、各例の消臭剤組成物および悪臭を添加する前のルシフェラーゼ由来の発光値をGlo Sensorアッセイにより測定した。
次いで、96ウェルプレートの各ウェルに各例の消臭剤組成物を25μL添加し、10分後のルシフェラーゼ由来の発光値をGlo Sensorアッセイにより測定した。この値を悪臭刺激前の発光値とした。
その後、5Lのフレックサンプラーバッグ内に96ウェルプレートと空気循環用のファンを入れ純空気で満たした。最後に悪臭分子としてメチルメルカプタンを気相終濃度が1ppmになるようにシリンジで注入した。10分間、嗅覚受容体発現細胞と悪臭分子を接触させ、その後、ルシフェラーゼ由来の発光値をGlo Sensorアッセイにより測定した。この値を悪臭刺激後の発光値とした。
各例の(悪臭刺激後の発光値)/(悪臭刺激前の発光値)を応答抑制効果の値として算出した。
【0047】
(結果)
実施例1、2および比較例1~4の官能試験、応答試験の結果を表3に示す。
【0048】
【0049】
表3に示した快・不快度の結果を
図3に示す。同じく悪臭強度の結果を
図4に、応答抑制効果の結果を
図5にそれぞれ示す。表3に示した応答抑制効果の値は、(悪臭刺激後の発光値)/(悪臭刺激前の発光値)である。
【0050】
実施例1、2では、β-イオノンによるOR2T11の応答抑制能を阻害することなく、高い消臭効果を発揮できた。
対して、比較例1では、β-イオノンによるOR2T11の応答抑制能はある程度発揮されたが、メチルメルカプタンに対する消臭の官能評価が低く、悪臭強度を抑制できなかった。比較例2、3では実施例に比べ消臭の官能評価が低い。アンタゴニストのβ-イオノンによるOR2T11の応答抑制能が発揮されなかったためであると考えられる。比較例4では、他の香料成分が、β-イオノンによるOR2T11の応答抑制能を阻害した結果、消臭官能評価が低いと考えられる。
【0051】
<実施例3、比較例5>
表4に示す組成のようにアンタゴニストおよびサイダー系の調合香料を混合した。その後、該混合物に、溶媒としてのジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPGDME)、酸化防止剤、紫外線吸収剤および色素を添加することで、各例の消臭剤組成物を調製した。
【0052】
【0053】
実施例3において、消臭剤組成物の調製には、調合香料1.06g、β-イオノン0.056g、DPGDME1.72g、酸化防止剤0.01g、紫外線吸収剤0.01gおよび色素0.00006gを使用した。比較例5においては、β-イオノンを使用しなかったこと以外は、実施例3と同じ手法で消臭剤組成物を調製した。
各例の消臭剤組成物について、官能試験、嗅覚受容体の応答試験を行った。官能試験、嗅覚受容体の応答試験の手法は、実施例1、2および比較例1~4と同じである。
【0054】
(結果)
実施例3、比較例5の官能試験、応答試験の結果を表5に示す。表5に示す応答抑制効果の値は、(悪臭刺激後の発光値)/(悪臭刺激前の発光値)である。
【0055】
【0056】
表5に示した快・不快度の結果を
図6に示す。同じく悪臭強度の結果を
図7に、応答抑制効果の結果を
図8にそれぞれ示す。
【0057】
実施例3では、β-イオノンによるOR2T11の応答抑制能を阻害することなく、高い消臭効果を発揮できた。
対して、比較例5では、メチルメルカプタンに対する消臭の官能評価が低く、悪臭強度を抑制できなかった。β-イオノンによるOR2T11の応答抑制能も発揮されなかった。
【0058】
<実施例7>
実施例3で調製した消臭剤組成物を
図1および
図2に示す容器に収納した。25℃の恒温槽で消臭剤組成物を容器内で揮散させた。揮散後の初期(揮散開始から0日後)、中期(揮散開始から12日後)、終期(揮散開始から27日後)の芳香の嗜好性および強度について官能試験を実施した。官能試験は10名の評価者で行った。まず、容器をファンと一緒に20Lのステンレス缶に封入した後、3~4時間放置することで、芳香空気を20Lのステンレス缶内に充満させた。その後、その後、ステンレス缶の蓋に開けた直径75mmの円形の穴から評価者に提示した。評価基準は以下の通りである。
【0059】
嗜好性は、下記の基準で評価した。
5:好き
4:やや好き
3:どちらでもない
2:やや嫌い
1:嫌い
【0060】
強度は、以下の基準で評価した。
5:芳香が強い。
4:芳香がやや強い。
3:芳香の強さは強くも弱くもない。
2:芳香がやや弱い。
1:芳香が弱い。
【0061】
10名分の採点結果の平均値を表6に示す。
【0062】
【0063】
表6に示した嗜好性の結果を
図9に、強度の結果を
図10にそれぞれ示す。初期から終期にかけて嗜好性および強度はいずれも高く、良好な消臭剤が得られた。
本発明によれば、香料成分の消臭効果が得られ、かつ、嗅覚受容体の応答抑制能も充分に発揮される消臭剤組成物;および前記消臭剤組成物を備えた消臭剤が提供される。