(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145469
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】制御装置、パワーコンディショナ、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20241004BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241004BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20241004BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057834
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 亮
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA06
5G066AD14
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA03
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA10
5G503CA11
5G503DA04
5G503DA13
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】DCバス電圧の低下および上昇を検出したときに、DCバス電圧が通常運転電圧範囲を超えることを抑制して運転継続することができる制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、パワーコンディショナと蓄電池ユニットとを接続するDCバスの電圧を取得する電圧取得部と、前記電圧が上限閾値を超える場合、または下限閾値を下回る場合に、前記パワーコンディショナが負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力の出力制限値をゼロにする出力制限部と、前記出力制限値をゼロにした後、前記出力制限値を漸増または漸減させる制限解除部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)と蓄電池ユニットとを接続するDCバスの電圧を取得する電圧取得部と、
前記電圧が上限閾値を超える場合、または下限閾値を下回る場合に、前記パワーコンディショナが負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力の出力制限値をゼロにする出力制限部と、
前記出力制限値をゼロにした後、前記出力制限値を漸増または漸減させる制限解除部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記電圧が予め定めた通常運転電圧範囲の上限値または下限値となった場合に、前記出力制限値を漸増または漸減を止めて固定する制限値設定部をさらに備える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制限値設定部は、上位装置から新たな出力制限値を受信し、前記出力制限値よりも前記新たな出力制限値の方が小さい場合に、前記出力制限値を前記新たな出力制限値の値で上書きする、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置を備えるパワーコンディショナ。
【請求項5】
パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)と蓄電池ユニットとを接続するDCバスの電圧を取得するステップと、
前記電圧が上限閾値を超える場合、または下限閾値を下回る場合に、前記パワーコンディショナが負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力の出力制限値をゼロにするステップと、
前記出力制限値をゼロにした後、前記出力制限値を漸増または漸減させるステップと、
を有する制御方法。
【請求項6】
パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)と蓄電池ユニットとを接続するDCバスの電圧を取得するステップと、
前記電圧が上限閾値を超える場合、または下限閾値を下回る場合に、前記パワーコンディショナが負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力の出力制限値をゼロにするステップと、
前記出力制限値をゼロにした後、前記出力制限値を漸増または漸減させるステップと、
を制御装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、パワーコンディショナ、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、再生可能エネルギーを利用した発電設備や工場などの様々な場所で蓄電システムが利用されている。蓄電システムは、蓄電池およびDC/DCコンバータを有する複数の蓄電池ユニットと、PCS(Power Conditioning System;パワーコンディショナ)と、蓄電池ユニットおよびPCSを接続するDCバスとを備える。
【0003】
また、蓄電システムは、たとえばDC/DCコンバータがトリップした場合など、蓄電池ユニット全体の総充放電可能電力が、PCSから負荷側(蓄電ユニットの放電時は電力系統、充電時は蓄電ユニット)に出力するPCS出力電力よりも小さくなると、蓄電池の過放電やDCバスの過電圧が発生してシステム停止となる。蓄電システムの運転継続のためには、DCバスの電圧が大きく低下または上昇した場合に、PCS出力電力を制限することが必要となる。たとえば特許文献1には、複数の単電池で構成される組電池(蓄電システム)で負荷を起動する際に、いずれかの単電池の過放電を検出した場合に、組電池から負荷への電力供給を制限または停止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、従来技術における蓄電システムの出力制限処理の一例を表す図である。
図8に示すように、従来の蓄電システムは、DCバス電圧V
dcの上昇または低下に応じて、PCS出力電力P
PCSを制限するための出力制限値を変更する。出力制限値が正の値のときは蓄電池ユニットへの充電を、負の値のときは蓄電池ユニットからの放電を表す。
【0006】
たとえば、蓄電池ユニットからの放電時にトリップが発生すると、蓄電池ユニットの総放電可能電力が低下し(
図8のa1)、DCバス電圧V
dcが低下する(
図8のa2)。このとき、蓄電システムは、時刻t91でDCバス電圧V
dc_t91の低下を検知すると、PCS出力電力P
PCSを徐々に下げて(出力制限値の値を徐々に大きくして)、蓄電池ユニットからの放電を制限する(
図8のa3)。そうすると、時刻t92では、PCS出力電力P
PCSを蓄電池ユニットの総放電可能電力まで下げることができるので、蓄電池システムは放電電力を制限する処理を停止する。しかしながら、PCS出力電力P
PCSが総放電可能電力に釣り合うまでDCバス電圧V
dcは低下し続ける。そうすると、時刻t94までDCバス電圧V
dcが低下し続けてしまい、以降、蓄電システムは、DCバス電圧を異常に低い状態(時刻t92時点におけるDCバス電圧V
dc_t92の値)のまま保持して(
図8のa4)運転を継続してしまう。
【0007】
同様に、蓄電池ユニットへの充電時、1つの蓄電池ユニットのDC/DCバスがトリップしたとする。そうすると、蓄電池ユニットの総充電可能電力が低下し(
図8のb1)、DCバス電圧V
dcが上昇する(
図8のb2)。このとき、蓄電システムは、時刻t93でDCバス電圧V
dc_t93の上昇を検知すると、PCS出力電力P
PCSを徐々に下げて(出力制限値の値を徐々に小さくして)、蓄電池ユニットへの充電を制限する(
図8のb3)。そうすると、時刻t94では、PCS出力電力P
PCSを蓄電池ユニットの総充電可能電力まで下げることができるので、蓄電池システムは充電電力を制限する処理を停止する。しかしながら、PCS出力電力P
PCSが総充電可能電力に釣り合うまでDCバス電圧V
dcは上昇し続ける。そうすると、時刻t94までDCバス電圧V
dcが上昇し続けてしまい、以降、蓄電システムは、DCバス電圧を異常に高い状態(時刻t94時点におけるDCバス電圧V
dc_t94の値)のまま保持して(
図8のb4)運転を継続してしまう。
【0008】
本開示の目的は、DCバス電圧の低下および上昇を検出したときに、DCバス電圧が通常運転電圧範囲を超えることを抑制して運転継続することができる制御装置、パワーコンディショナ、制御方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によれば、制御装置は、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)と蓄電池ユニットとを接続するDCバスの電圧を取得する電圧取得部と、前記電圧が上限閾値を超える場合、または下限閾値を下回る場合に、前記PCSが負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力の出力制限値をゼロにする出力制限部と、前記出力制限値をゼロにした後、前記出力制限値を漸増または漸減させる制限解除部と、を備える。
【0010】
本開示の一態様によれば、制御方法は、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)と蓄電池ユニットとを接続するDCバスの電圧を取得するステップと、前記電圧が上限閾値を超える場合、または下限閾値を下回る場合に、前記PCSが負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力の出力制限値をゼロにするステップと、前記出力制限値をゼロにした後、前記出力制限値を漸増または漸減させるステップと、を有する。
【0011】
本開示の一態様によれば、プログラムは、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)と蓄電池ユニットとを接続するDCバスの電圧を取得するステップと、前記電圧が上限閾値を超える場合、または下限閾値を下回る場合に、前記PCSが負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力の出力制限値をゼロにするステップと、前記出力制限値をゼロにした後、前記出力制限値を漸増または漸減させるステップと、を制御装置に実行させる。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、DCバス電圧の低下および上昇を検出したときに、DCバス電圧が通常運転電圧範囲を超えることを抑制して運転継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る蓄電システムの全体構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係るDCバス電圧の上限閾値および下限閾値を説明するための図である。
【
図4】一実施形態に係る制御装置の出力制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】一実施形態に係る出力制御処理を説明するための第1の図である。
【
図6】一実施形態に係る出力制御処理を説明するための第2の図である。
【
図7】一実施形態に係る制御装置の出力制限値の更新処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】従来技術における蓄電システムの出力制限処理の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(蓄電システムの全体構成)
図1は、一実施形態に係る蓄電システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、蓄電システム1は、PCS(Power Conditioning System;パワーコンディショナ)2と、制御装置3と、DCバス4と、複数の蓄電池ユニット5とを備える。
【0015】
PCS2は、電力系統と連系するパワーコンディショナである。PCS2は、交流電力と直流電力とを変換する双方向インバータであるインバータ21を備える。PCS2は、各蓄電池ユニット5から放電される直流電力を、インバータ21により交流電力に変換して電力系統に出力する。また、PCS2は、電力系統から供給された交流電力を、インバータ21により直流電力に変換して各蓄電池ユニット5に出力する。PCS2から負荷側へ出力する電力をPCS出力電力PPCSとも記載する。PCS出力電力PPCSは、蓄電池ユニット5の放電時はPCS2から電力系統へ出力する電力であり、蓄電池ユニット5の充電時はPCS2から蓄電池ユニット5へ出力する電力である。
【0016】
制御装置3は、PCS2が負荷側へ出力する電力(PCS出力電力PPCS)が、蓄電池ユニット5全体で充放電可能な電力(P1+P2+・・・+PN)内となるように、PCS2の出力制限値LM2を設定する。なお、制御装置3は、通常時は上位装置6からPCS2の出力制限値LM1を受信して、この出力制限値LM1に従いPCS2を制御する。制御装置3の具体的な機能構成については後述する。
【0017】
DCバス4は、PCS2と複数の蓄電池ユニット5とを接続するためのバスである。
【0018】
複数の蓄電池ユニット5は、DCバス4を介してPCS2に並列接続される。各蓄電池ユニット5は、DC/DCコンバータ51および蓄電池52を備える。DC/DCコンバータ51は、PCS2から供給された直流電力を所定の電圧に変換して蓄電池52を充電する。また、DC/DCコンバータ51は、蓄電池52の放電電力を所定の電圧に変換してPCS2へ供給する。
【0019】
なお、
図1には、PCS2が制御装置3を内蔵する構成例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、制御装置3は、PCS2の外部に異なるハードウェアとして設けられてもよい。
【0020】
(制御装置の機能構成)
図2は、一実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置3は、プロセッサ31と、メモリ32と、ストレージ33と、通信インタフェース34とを備える。
【0021】
プロセッサ31は、所定のプログラムに従って動作することにより、電圧取得部310、出力制限部311、制限解除部312、制限値設定部313としての機能を発揮する。
【0022】
電圧取得部310は、DCバス4に設けられた電圧センサ(不図示)から、PCS2と蓄電池ユニット5とを接続するDCバス4の電圧(以下、DCバス電圧Vdcとも記載する。)を取得する。
【0023】
出力制限部311は、DCバス電圧Vdcが上限閾値VULを超える場合、または下限閾値VLLを下回る場合に、PCS2が負荷側に出力する電力であるPCS出力電力PPCSの出力制限値LM2をゼロにする。上限閾値VULおよび下限閾値VLLの詳細については後述する。
【0024】
制限解除部312は、出力制限値LM2をゼロにした後、出力制限値LM2を漸増、または漸減させる。
【0025】
制限値設定部313は、DCバス電圧Vdcが予め定めた通常運転電圧範囲Rの上限値Vmaxまたは下限値Vminとなった場合に、出力制限値LM2を現在の値で固定する。また、制限値設定部313は、上位装置6からPCS出力電力PPCSの出力制限値LM1を受信した場合に、出力制限値LM1≦出力制限値LM2であれば、出力制限値LM2を出力制限値LM1の値で上書きする。通常運転電圧範囲Rの詳細については後述する。
【0026】
なお、プロセッサ31が実行する所定のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶される。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。さらに、このプログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0027】
メモリ32は、プロセッサ31の動作に必要なメモリ領域を有する。
【0028】
ストレージ33は、いわゆる補助記憶装置であって、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。ストレージ33には、プロセッサ31の各部が処理中に取得、生成、参照するデータが格納される。
【0029】
通信インタフェース34は、PCS2や上位装置6などとの間で各種データや制御信号などの送受信を行うためのインタフェースである。
【0030】
(DCバス電圧の上限閾値および下限閾値について)
図3は、一実施形態に係るDCバス電圧の上限閾値および下限閾値を説明するための図である。
図3は、DCバス電圧V
dcの上限閾値VUL、下限閾値VLL、通常運転電圧範囲Rの一例を表したものである。
【0031】
各蓄電池ユニット5の無負荷時(充放電を行っていないとき)のDCバス電圧を基準電圧V0とする。
【0032】
通常運転電圧範囲Rは、基準電圧V0を中心とした蓄電池ユニット5の通常運転時のドループによる電圧変動範囲である。通常運転電圧範囲の上限値をVmax、下限値をVminとも記載する。
【0033】
上限閾値VULおよび下限閾値VLLは、DCバス4の電圧の異常を検出するための閾値である。電圧制御時のオーバーシュートや共振などによる過渡電圧変動や、電圧センサの誤差などを考慮して、上限閾値VULは通常運転電圧範囲の上限値Vmaxよりも所定量α分、大きい値が設定される。同様に、下限閾値VLLは通常運転電圧範囲の下限値Vminよりも所定量α分、小さい値が設定される。この所定量αは、蓄電池ユニット5の特性などに応じて任意に変更してよい。
【0034】
(制御装置の処理フロー)
図4は、一実施形態に係る制御装置の出力制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5は、一実施形態に係る出力制御処理を説明するための第1の図である。
図6は、一実施形態に係る出力制御処理を説明するための第2の図である。
以下、
図4~
図6を参照しながら、制御装置3のDCバス電圧の変動にともなう出力制御処理の流れについて説明する。
【0035】
図3の一連の処理を実施中、電圧取得部310は、各時刻のDCバス電圧V
dcを取得する。出力制限部311は、電圧取得部310が取得したDCバス電圧V
dcが上限閾値VULを超えたか、または下限閾値VLLを下回ったか判定する(ステップS01)。
【0036】
蓄電池ユニット5の充電時、出力制限部311は、DCバス電圧Vdcが上限閾値VULを超えていない場合(ステップS01;NO)、ステップS01に戻り、DCバス4の監視を継続する。また、蓄電池ユニット5の放電時、出力制限部311は、DCバス電圧Vdcが下限閾値VLLを下回っていない場合(ステップS01;NO)、ステップS01に戻り、DCバス4の監視を継続する。
【0037】
一方、出力制限部311は、DCバス電圧Vdcが上限閾値VULを超えた場合、または、下限閾値VLLを下回った場合(ステップS01;YES)、PCS2の出力制御処理を実行する。
【0038】
まず、蓄電システム1の放電時における出力制御処理について説明する。
図5は、たとえば蓄電システム1が有する3台の蓄電池ユニット5_1,5_2,5_3のうち、蓄電池ユニット5_2の放電時のPCS出力電力P
PCSおよびDCバス電圧V
dcの時系列を例示したものである。また、
図6は、
図5の各時刻t01~t05に計測した蓄電池ユニット5_2のDCバス電圧V
dcと、出力制限値LM2との対応を例示したものである。
【0039】
図5の例では、蓄電池ユニット5_2は、時刻t01にトリップが発生した。そうすると、蓄電池ユニット5全体が放電可能な電力は、時刻t01より前ではP1+P2+P3であるが、時刻t01以降はP1+P3に低下する。また、このとき、PCS2は蓄電池ユニット5_2のトリップ発生を知ることができない。このため、時刻t01の時点ではPCS出力電力P
PCSは変化しない。したがって、時刻t01以降では、PCS出力電力P
PCS>蓄電池ユニット5全体の放電可能電力P1+P3となり、
図5の例のように、DCバス電圧V
dcが時間とともに低下していく。
【0040】
ここで、比較例として、本実施形態の出力制御処理が行われない場合について説明する。運転継続中の蓄電池ユニット5_1,5_3のうち、蓄電池ユニット5_1の電圧VBAT1が最も高いとすると、VBAT1はVdcと近似的に等しくなる。この場合、蓄電池ユニット5_1のDC/DCコンバータ51の制御によらず、不足負荷分を蓄電池ユニット5_1が補うこととなる。そうすると、蓄電池ユニット5_1は過放電となる可能性がある。
【0041】
このような蓄電池ユニット5_1の過放電を抑制するため、本実施形態に係る制御装置3は、以下に説明するような出力制御処理を実行する。
【0042】
図5および
図6の例では、トリップが発生した時刻t01以降、DCバス電圧V
dcは時間とともに低下していき、時刻t02でDCバス電圧V
dc_t02が下限閾値VLLを下回る(ステップS01;YES)。そうすると、出力制限部311は、PSC2の出力制限値LM2をゼロにする(ステップS02)。PCS2の出力制限値LM2がゼロになると、時刻t03において、PCS2のPCS出力電力P
PCSはゼロとなり、DCバス電圧V
dc_t03は無負荷時の基準電圧V
0に復帰(上昇)する。
【0043】
PCS2の出力制限値LM2をゼロにした後、制限解除部312は、PCS2の出力制限値LM2を漸減する(ステップS03)。
【0044】
次に、制限値設定部313は、DCバス電圧Vdcが通常運転電圧範囲Rの下限値Vminとなったか判定する(ステップS04)。
【0045】
図5および
図6の時刻t04では、DCバス電圧V
dc_t04は通常運転電圧範囲Rの下限値Vminに達していない(ステップS04;NO)。この場合、制限値設定部313は、次の判定タイミングまで待機する。
【0046】
また、
図5および
図6の時刻t05では、DCバス電圧V
dc_t05=下限値Vminとなる(ステップS04;YES)。この場合、制限値設定部313は、出力制限値LM2の漸減を停止し、出力制限値LM2を現在の値で固定する(ステップS05)。なお、制限値設定部313は、DCバス電圧V
dc_t05の値が下限値Vminから所定範囲内であれば、DCバス電圧V
dc_t05=下限値Vminとなったと判定し(ステップS04;YES)、出力制限値LM2を現在の値で固定してもよい(ステップS05)。
【0047】
DCバス電圧V
dcが通常運転電圧範囲Rの下限値Vminとなったとき、
図6の例のように、PCS2の出力電力P
PCSは、蓄電池ユニット5全体から放電可能な最大電力と略一致する。したがって、制御装置3は、放電時に蓄電池ユニット5_2がトリップしたとしても、稼働している他の蓄電池5ユニットが放電可能な最大電力で、かつ、DCバス電圧V
dcが通常運転電圧範囲R内となるように制御して、蓄電システム1の運転を継続することができる。
【0048】
また、蓄電システム1の充電時における出力制御について、
図6を参照しながら説明する。
図6には、充電時の時刻t11~t15に計測したDCバス電圧V
dcと、出力制限値LM2との対応が例示されている。
【0049】
たとえば、時刻t11に蓄電池ユニット5_2がトリップしたとする。そうすると、時刻t11の時点では、PCS2の出力制限値LM2およびPCS出力電力PPCSは変化しないが、DCバス電圧Vdcは時間とともに上昇し、時刻t12の時点で上限閾値VULを超える(ステップS01;YES)。
【0050】
そうすると、出力制限部311は、PSC2の出力制限値LM2をゼロにする(ステップS02)。PCS2の出力制限値LM2がゼロになると、時刻t13において、PCS2のPCS出力電力PPCSはゼロとなり、DCバス電圧Vdc_t13は無負荷時の基準電圧V0に復帰(低下)する。
【0051】
PCS2の出力制限値LM2をゼロにした後、制限解除部312は、PCS2の出力制限値LM2を漸増する(ステップS03)。
【0052】
次に、制限値設定部313は、DCバス電圧Vdcが通常運転電圧範囲Rの上限値Vmaxとなったか判定する(ステップS04)。
【0053】
図6の時刻t14では、DCバス電圧V
dc_t14は通常運転電圧範囲Rの上限値Vmaxに達していない(ステップS04;NO)。この場合、制限値設定部313は、次の判定タイミングまで待機する。
【0054】
また、
図6の時刻t15では、DCバス電圧V
dc_t15=上限値Vmaxとなる(ステップS04;YES)。この場合、制限値設定部313は、出力制限値LM2の漸増を停止し、出力制限値LM2を現在の値で固定する(ステップS05)。なお、制限値設定部313は、DCバス電圧V
dc_t15の値が上限値Vmaxから所定範囲内であれば、DCバス電圧V
dc_t15=上限値Vmaxとなったと判定し(ステップS04;YES)、出力制限値LM2を現在の値で固定してもよい(ステップS05)。
【0055】
DCバス電圧V
dcが通常運転電圧範囲Rの上限値Vmaxとなったとき、
図6の例のように、PCS2の出力電力P
PCSは、蓄電池ユニット5全体へ充電可能な最大電力と略一致する。したがって、制御装置3は、充電時に蓄電池ユニット5_2がトリップしたとしても、稼働している他の蓄電池5ユニットが充電可能な最大電力で、かつ、DCバス電圧V
dcが通常運転電圧範囲R内となるように制御して、蓄電システム1の運転を継続することができる。
【0056】
出力制限値LM2を固定した後、制御装置3は、ステップS01に戻る。制御装置3は、このようにして蓄電システム1の運転中、
図3の一連の処理を繰り返し実施する。
【0057】
なお、ステップS03において、制限解除部312は、通常の電圧制御時よりも十分に大きい時定数を設定して、出力制限値LM2を漸増または漸減させることが望ましい。たとえば、制限解除部312は、DCバス電圧が基準電圧V0になってから通常運転電圧範囲Rの上限値Vmaxまたは下限値Vminに到達するまでにかかる時間がX秒となるように時定数を設定する。Xの値は、蓄電池ユニット5の特性などに応じて任意に変更してよい。
【0058】
図7は、一実施形態に係る制御装置の出力制限値の更新処理の一例を示すフローチャートである。
制御装置3は、
図7に示す処理を実行して、上位装置6の指令に従ってPCS2の出力制限値LM2を更新してもよい。
【0059】
たとえば、制御装置3は、
図3のステップS01においてDCバス電圧V
dcが上限閾値VULを超えたこと、または下限閾値VLLを下回ったことを検知すると、上位装置6に異常通知を行うようにしてもよい。また、上位装置6は、蓄電システム1の管理者からPCS2の出力制限値LM1を指定する操作を受け付けて、制御装置3へこの出力制限値LM1を送信する。
【0060】
そうすると、制御装置3は
図7に示す処理を実行する。具体的には、制御装置3の制限値設定部313は、上位装置6から新たな出力制限値LM1を受信すると(ステップS11)、出力制限値LM1が出力制限値LM2以下であるか判断する(ステップS12)。制限値設定部313は、出力制限値LM1≦出力制限値LM2である場合(ステップS12;YES)、出力制限値LM2の値を、上位装置6から受信した出力制限値LM1の値とする(ステップS13)。一方、制限値設定部313は、出力制限値LM1>出力制限値LM2である場合(ステップS12;NO)、出力制限値LM2の値を変更しないで処理を終了する。
【0061】
つまり、制御装置3は、DCバス電圧V
dcの異常を検出したとき(
図3のステップS01;YES)は、
図3の一連の処理を実行して、出力制限値LM2を暫定的に変更する自動制御を行う。また、制御装置3は、通常時(DCバス電圧V
dcが通常運転電圧範囲R内であるとき)、上位装置6から新たな出力制限値LM1を受信した場合には、出力制限値LM1≦出力制限値LM2であれば、出力制限値LM1に従って出力制限値LM2を設定しなおす。以降、蓄電システム1は、上位装置6から指定された出力制限値LM1に沿って運転を継続する。たとえば蓄電池ユニット5_2を修理、交換して運転可能となった後、上位装置6からの出力制限値LM1によって出力制限値LM2を設定しなおすことで、蓄電システム1全体で充放電可能な電力を最大化することが可能となる。
【0062】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係る制御装置3は、PCS2と蓄電池ユニット5とを接続するDCバス4のDCバス電圧Vdcを取得する電圧取得部310と、DCバス電圧Vdcが上限閾値VULを超える場合、または下限閾値VLLを下回る場合に、PCS2が負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力PPCSの出力制限値LM2をゼロにする出力制限部311と、出力制限値LM2をゼロにした後、出力制限値LM2を漸増または漸減させる制限解除部312と、を備える。
【0063】
このようにすることで、制御装置3は、DCバス電圧Vdcの異常を検出したときには、一旦PCS2の出力制限値LM2をゼロにしてDCバス電圧Vdcを基準電圧V0まで戻してから、出力制限値LM2を徐々に増加または減少させることにより、DCバス電圧Vdcが通常運転電圧範囲Rを超えることを抑制して運転継続することができる。
【0064】
また、制御装置3は、DCバス電圧Vdcが予め定めた通常運転電圧範囲Rの上限値Vmaxまたは下限値Vminとなった場合に、出力制限値LM2の漸増または漸減を止めて固定する制限値設定部313をさらに備える。
【0065】
DCバス電圧Vdcが通常運転電圧範囲Rの上限値Vmaxまたは下限値Vminと略一致するとき、PCS2の出力電力PPCSは、蓄電池ユニット5全体から充放電可能な最大電力と略一致する。したがって、制御装置3は、上記した構成を有していることにより、蓄電池ユニット5の一部に異常(トリップなど)が発生したとしても、稼働している蓄電池5ユニットが充放電可能な最大電力で、かつ、DCバス電圧Vdcが通常運転電圧範囲R内となるように制御して、蓄電システム1の運転を継続することができる。
【0066】
また、制限値設定部313は、上位装置6から新たな出力制限値LM1を受信し、出力制限値LM2よりも新たな出力制限値LM1の方が小さい場合に、出力制限値LM2を新たな出力制限値LM1の値で上書きする。
【0067】
このようにすることで、制御装置3は、たとえば蓄電池ユニット5を修理、交換して再度、運転可能となった後、上位装置6から新たに指示された出力制限値LM1によって出力制限値LM2を設定しなおすことで、蓄電システム1全体で充放電可能な電力を最大化することが可能となる。
【0068】
以上のとおり、本開示に係る実施形態を説明したが、上記した実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
<付記>
上述の実施形態に記載の制御装置、パワーコンディショナ、制御方法、およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0070】
(1)本開示の第1の態様によれば、制御装置3は、PCS2と蓄電池ユニット5とを接続するDCバス4の電圧Vdcを取得する電圧取得部310と、Vdcが上限閾値VULを超える場合、または下限閾値VLLを下回る場合に、PCS2が負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力PPCSの出力制限値LM2をゼロにする出力制限部311と、出力制限値LM2をゼロにした後、出力制限値LM2を漸増または漸減させる制限解除部312と、を備える。
【0071】
このようにすることで、制御装置3は、DCバス電圧Vdcの異常を検出したときには、一旦PCS2の出力制限値LM2をゼロにしてDCバス電圧Vdcを基準電圧V0まで戻してから、出力制限値LM2を徐々に増加または減少させることにより、DCバス電圧Vdcが通常運転電圧範囲Rを超えることを抑制して運転継続することができる。
【0072】
(2)本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る制御装置3は、電圧Vdcが予め定めた通常運転電圧範囲Rの上限値Vmaxまたは下限値Vminとなった場合に、出力制限値LM2の漸増または漸減を止めて固定する制限値設定部313をさらに備える。
【0073】
DCバス電圧Vdcが通常運転電圧範囲Rの上限値Vmaxまたは下限値Vminと略一致するとき、PCS2の出力電力PPCSは、蓄電池ユニット5全体から充放電可能な最大電力と略一致する。したがって、制御装置3は、上記した構成を有していることにより、たとえば蓄電池ユニット5の一部がトリップしたとしても、稼働している蓄電池5ユニットが充放電可能な最大電力で、かつ、DCバス電圧Vdcが通常運転電圧範囲R内となるように制御して、蓄電システム1の運転を継続することができる。
【0074】
(3)本開示の第3の態様によれば、第2の態様に係る制御装置3において、制限値設定部313は、上位装置6から新たな出力制限値LM1を受信し、出力制限値LM2よりも新たな出力制限値LM1の方が小さい場合に、出力制限値LM2を新たな出力制限値LM1の値で上書きする。
【0075】
このようにすることで、制御装置3は、たとえば蓄電池ユニット5を修理、交換して再度、運転可能となった後、上位装置6からの指令値によって出力制限値LM2を設定しなおすことで、蓄電システム1全体で充放電可能な電力を最大化することが可能となる。
【0076】
(4)本開示の第4の態様によれば、PCS2は、第1から第3のいずれか一の態様に係る制御装置3を備える。
【0077】
(5)本開示の第5の態様によれば、制御方法は、PCS2と蓄電池ユニット5とを接続するDCバス4の電圧Vdcを取得するステップと、電圧Vdcが上限閾値VULを超える場合、または下限閾値VLLを下回る場合に、PCS2が負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力PPCSの出力制限値LM2をゼロにするステップと、出力制限値LM2をゼロにした後、出力制限値LM2を漸増または漸減させるステップと、を有する。
【0078】
(6)本開示の第6の態様によれば、プログラムは、PCS2と蓄電池ユニット5とを接続するDCバス4の電圧Vdcを取得するステップと、電圧Vdcが上限閾値VULを超える場合、または下限閾値VLLを下回る場合に、PCS2が負荷側へ出力する電力であるPCS出力電力PPCSの出力制限値LM2をゼロにするステップと、出力制限値LM2をゼロにした後、出力制限値LM2を漸増または漸減させるステップと、を制御装置3に実行させる。
【符号の説明】
【0079】
1 蓄電システム
2 PCS
21 インバータ
3 制御装置
31 プロセッサ
310 電圧取得部
311 出力制限部
312 制限解除部
313 制限値設定部
32 メモリ
33 ストレージ
34 通信インタフェース
4 DCバス
5 蓄電池ユニット
51 DC/DCコンバータ
52 蓄電池
6 上位装置