(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145471
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】センサユニット、及び産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20241004BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057836
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(71)【出願人】
【識別番号】520115462
【氏名又は名称】メカビジョン インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 渉
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CY06
3C707DS01
3C707HS27
3C707KS11
3C707KS21
3C707KS31
3C707KS35
3C707KV01
3C707KW01
3C707KW03
3C707KX05
3C707MS27
(57)【要約】
【課題】接触力を低減可能であり且つ物体との接触を高感度で検知することができるセンサユニットを提供する。
【解決手段】産業用ロボットのアームに取り付けられ、物体との接触を検知するセンサユニット(50)であって、アームの表面よりも軟らかい材質により、アームの所定部を覆うことができる形状に形成された軟質部(53)と、軟質部の内面に対向して配置されて圧力を検出する検出部(57a)を有し、検出部により検出された圧力が閾値を超えたことを条件として接触を検知するシート状のセンサシート(57)と、軟質部の内面(53a)から検出部に向けて突出する複数の突起(54)と、検出部と複数の突起との間に所定隙間が形成されるように軟質部を支持する支持部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットのアームに取り付けられ、物体との接触を検知するセンサユニットであって、
前記アームの表面よりも軟らかい材質により、前記アームの所定部を覆うことができる形状に形成された軟質部と、
前記軟質部の内面に対向して配置されて圧力を検出する検出部を有し、前記検出部により検出された圧力が閾値を超えたことを条件として前記接触を検知するシート状のセンサシートと、
前記軟質部の内面から前記検出部に向けて突出する複数の突起と、
前記検出部と前記複数の突起との間に所定隙間が形成されるように前記軟質部を支持する支持部と、
を備える、センサユニット。
【請求項2】
前記複数の突起は、前記軟質部の内面から前記検出部に近付くほど細くなっている、請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記センサシートにおける前記検出部以外の箇所と、前記複数の突起のうちの一部の突起との間には、前記所定隙間に相当する厚みのスペーサが設けられている、請求項2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記軟質部及び前記複数の突起は、同一の材質により一体に形成されている、請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項5】
産業用ロボットのアームに取り付けられ、物体との接触を検知するセンサユニットであって、
前記アームの表面よりも軟らかい材質により、前記アームの所定部を覆うことができる形状に形成された軟質部と、
前記軟質部の内面に対向して配置されて圧力を検出する検出部を有し、前記検出部により検出された圧力が閾値を超えたことを条件として前記接触を検知するシート状のセンサシートと、を備え、
前記軟質部に加えられた力を集中させて前記検出部の方向へ伝達する力集中部と、
前記検出部と前記力集中部との間に所定隙間が形成されるように前記軟質部を支持する支持部と、
を備える、センサユニット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサユニットと、
前記アームと、を備え、
前記アームに前記センサユニットが取り付けられた産業用ロボットであって、
前記センサシートにより前記接触が検知された場合に前記アームを減速させる、産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットに取り付けられ、物体との接触を検知するセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のリンクが一連となるようにして連結された多関節型ロボット等の産業用ロボットには、リンクが人等の物体(障害物)に接触したことを検知可能となるように構成されているものがある。例えば特許文献1に記載された産業用ロボットは、物体と接触した際に発生する異常トルクに基づいて接触を検知する検知機能を有しており、接触を検知した場合に産業用ロボットを停止(防護停止)させることで物体や産業用ロボットの保護を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した検知手法においては、物体との接触箇所から関節部分までの距離に関わらず同じ閾値を用いて異常トルクの判定がなされる。このため、接触箇所によって接触検知の精度や応答性に差が生じることとなる。例えば、関節部分から近い位置では遠い位置と比べて検知の精度や応答性が低くなる。なお、関節部分から近い位置での接触を想定して閾値を低くした場合には、不要な防護停止の回数が増えることで生産効率が低下し得る。
【0005】
これに対して、物体との接触を検知可能な検知部を有するセンサユニットによってアーム(リンク)の表面を覆う構成とすれば、上述した検知精度や応答性の懸念を払拭できる。産業用ロボットの生産効率を向上させるためには、産業用ロボットの動作速度を上昇させることが望ましい。しかし、産業用ロボットが人と協働する場面では、産業用ロボットが人と接触した際に人に加わる力(以下、「接触力」という)を許容値以下にする必要がある。このため、産業用ロボットの動作速度は、接触力が許容値を超えない範囲でしか上昇させることができない。ここで、センサユニットが接触力を低減可能であり且つ物体との接触を高感度で検知することができれば、物体との接触時に接触力が許容値を超えるまでに産業用ロボットを減速させやすくなるため、産業用ロボットの動作速度を上昇させることができる。
【0006】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、接触力を低減可能であり且つ物体との接触を高感度で検知することができるセンサユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、
産業用ロボットのアームに取り付けられ、物体との接触を検知するセンサユニットであって、
前記アームの表面よりも軟らかい材質により、前記アームの所定部を覆うことができる形状に形成された軟質部と、
前記軟質部の内面に対向して配置されて圧力を検出する検出部を有し、前記検出部により検出された圧力が閾値を超えたことを条件として前記接触を検知するシート状のセンサシートと、
前記軟質部の内面から前記検出部に向けて突出する複数の突起と、
前記検出部と前記複数の突起との間に所定隙間が形成されるように前記軟質部を支持する支持部と、
を備える。
【0008】
上記構成によれば、センサユニットは、産業用ロボットのアームに取り付けられ、物体との接触を検知する。
【0009】
ここで、軟質部は、前記アームの表面よりも軟らかい材質により、前記アームの所定部を覆うことができる形状に形成されている。このため、軟質部により前記アームの所定部を覆うことによって、前記アームの所定部が物体に接触する際に、軟質部が変形して衝撃を吸収することができる。したがって、アームの所定部が直接人に接触する場合と比較して、産業用ロボットが人と接触した際に人に加わる力(以下、「接触力」という)を低減することができる。
【0010】
シート状のセンサシートは、前記軟質部の内面に対向して配置されて圧力を検出する検出部を有し、前記検出部により検出された圧力が閾値を超えたことを条件として前記接触を検知する。すなわち、センサシートは、前記検出部により検出された圧力が閾値を超えた場合に物体との接触を検知するため、この検知に基づいて産業用ロボットのアームを減速させることができる。また、センサシートは、前記検出部により検出された圧力が閾値を超えていない場合は物体との接触を検知しない。
【0011】
さらに、複数の突起が前記軟質部の内面から前記検出部に向けて突出しており、支持部は前記検出部と前記複数の突起との間に所定隙間が形成されるように前記軟質部を支持している。このため、物体が軟質部に接触していない場合は、センサシートの検出部により物体との接触が検知されることなく、前記軟質部を支持することができる。一方、物体が軟質部に接触した場合は、物体と軟質部との接触面積よりも、突起の先端と検出部との接触面積が小さくなる。このため、物体が軟質部に接触した場合に、物体から軟質部に加えられる圧力よりも高い圧力を、突起の先端から検出部に加えることができる。このため、接触力が大きくなる前に前記検出部により検出される圧力が閾値を超えるようになり、物体との接触を高感度で検知することができる。
【0012】
突起全体が細い場合は、軟質部から検出部へ突起により力を伝達する際に、突起が座屈するおそれがある。この場合、突起の先端から検出部に加えられる圧力が低下し、前記検出部により検出される圧力が閾値を超えなくなるおそれがある。一方、突起全体が太い場合は、突起の強度が高くなり過ぎ、物体が軟質部に接触した際に軟質部が変形して衝撃を吸収する効果が低下するおそれがある。
【0013】
この点、第2の手段では、前記複数の突起は、前記軟質部の内面から前記検出部に近付くほど細くなっている。こうした構成によれば、突起の強度が高くなり過ぎることを抑制しつつ、軟質部から検出部へ突起により力を伝達する際に突起が座屈することを抑制することができる。したがって、物体が軟質部に接触した際に軟質部が変形して衝撃を吸収する効果が低下することを抑制しつつ、物体との接触を高感度で検知することができる。
【0014】
第3の手段では、前記センサシートにおける前記検出部以外の箇所と、前記複数の突起のうちの一部の突起との間には、前記所定隙間に相当する厚みのスペーサが設けられている。こうした構成によれば、前記センサシートにおける前記検出部以外の箇所(非検出部)にスペーサを設けることにより、複数の突起のうちの一部を、支持部を構成する部材の一部として利用することができる。
【0015】
第4の手段では、前記軟質部及び前記複数の突起は、同一の材質により一体に形成されている。こうした構成によれば、前記軟質部及び前記複数の突起を、同一の材質を用いて金型等により成形することができ、前記軟質部及び前記複数の突起の製造が容易になる。
【0016】
第5の手段は、
産業用ロボットのアームに取り付けられ、物体との接触を検知するセンサユニットであって、
前記アームの表面よりも軟らかい材質により、前記アームの所定部を覆うことができる形状に形成された軟質部と、
前記軟質部の内面に対向して配置されて圧力を検出する検出部を有し、前記検出部により検出された圧力が閾値を超えたことを条件として前記接触を検知するシート状のセンサシートと、を備え、
前記軟質部に加えられた力を集中させて前記検出部の方向へ伝達する力集中部と、
前記検出部と前記力集中部との間に所定隙間が形成されるように前記軟質部を支持する支持部と、
を備える。
【0017】
上記構成によれば、力集中部は前記軟質部に加えられた力を集中させて前記検出部の方向へ伝達し、支持部は前記検出部と前記力集中部との間に所定隙間が形成されるように前記軟質部を支持している。このため、物体が軟質部に接触していない場合は、センサシートの検出部により物体との接触が検知されることなく、前記軟質部を支持することができる。一方、物体が軟質部に接触して軟質部が変形した場合は、軟質部に加えられた力が力集中部により集中させられて前記検出部に伝達される。このため、物体から軟質部に加えられる圧力よりも高い圧力を、力集中部から検出部に加えることができる。このため、接触力が大きくなる前に前記検出部により検出される圧力が閾値を超えるようになり、物体との接触を高感度で検知することができる。
【0018】
第6の手段は、第1~第5のいずれか1つの手段のセンサユニットと、前記アームと、を備え、前記アームに前記センサユニットが取り付けられた産業用ロボットであって、前記センサシートにより前記接触が検知された場合に前記アームを減速させる。こうした構成によれば、産業用ロボットのアームが人と接触した際に接触力を低減するとともに、人との接触を高感度で検知してアームを減速(例えば停止)させることができる。したがって、人との接触時に接触力が許容値を超えるまでにアームを減速させやすくなり、産業用ロボットのアームの動作速度を上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】ロボット本体からセンサユニットを取り外した状態を示す斜視図。
【
図6】複数の突起とセンサシートとの位置関係を示す側面図。
【
図7】同一の動作速度における比較例及び本実施形態の接触力を示すグラフ。
【
図10】センサユニットの他の変更例を示す側面図。
【
図11】センサユニットの他の変更例を示す側面図。
【
図12】センサユニットの他の変更例を示す側面図。
【
図13】センサユニットの他の変更例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、機械組立工場において人間と協働可能な産業用のロボットに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示すように、ロボット10は、垂直多関節型のロボット本体11を備えている。ロボット本体11は、床等に固定されるベース21と、複数のリンクが一連となるようにして連結されたアーム22とを有している。
図1においては一部図示を省略しているがアーム22の各リンクの外周には人等の物体との接触を検知可能なセンサユニット群12が取り付けられている。
【0022】
アーム22は、上記複数のリンクとして、ベース21によって支持されたショルダ部23と、ショルダ部23により支持された下アーム部24と、下アーム部24により支持された第1上アーム部25と、第1上アーム部25により支持された第2上アーム部26と、第2上アーム部26により支持された手首部27と、手首部27により支持されたフランジ部28とを有している。アーム22の表面の材質は、例えばアルミ合金(金属)である。フランジ部28にはエンドエフェクタ29が取り付けられている。ロボット10は、作業内容に応じて複数種のエンドエフェクタに付替可能である。なお、アーム22の表面の材質を硬質プラスチック(硬質樹脂)等にすることもできる。
【0023】
図2に示すように、ベース21及びショルダ部23には、それらベース21及びショルダ部23を連結する第1関節部J1が形成されており、ショルダ部23は第1関節部J1の連結軸AX1を中心として水平方向に回動可能となっている。ショルダ部23及び下アーム部24には、それらショルダ部23及び下アーム部24を連結する第2関節部J2が形成されており、下アーム部24は第2関節部J2の連結軸AX2を中心として上下方向に回動可能となっている。下アーム部24及び第1上アーム部25には、それら下アーム部24及び第1上アーム部25を連結する第3関節部J3が形成されており、第1上アーム部25は第3関節部J3の連結軸AX3を中心として上下方向に回動可能となっている。第1上アーム部25及び第2上アーム部26には、それら第1上アーム部25及び第2上アーム部26を連結する第4関節部J4が形成されており、第2上アーム部26は第4関節部J4の連結軸AX4を中心として捻り方向に回動可能となっている。第2上アーム部26及び手首部27には、それら第2上アーム部26及び手首部27を連結する第5関節部J5が形成されており、手首部27は第5関節部J5の連結軸AX5を中心として上下方向に回動可能となっている。手首部27及びフランジ部28には、それら手首部27及びフランジ部28を連結する第6関節部J6が形成されており、フランジ部28は第6関節部J6の連結軸AX6を中心として捻り方向に回動可能となっている。
【0024】
各関節部J1~J6にはそれら関節部J1~J6を回動させる駆動部としてモータM1~M6(具体的にはサーボモータ)が各々配設されており、モータM1~M6はサーボアンプ32を介してモーションコントローラ33に接続されている。モーションコントローラ33はベース21に設けられた外部入出力端子34を介して上位コントローラCに接続可能となっており、上位コントローラCからの指令に基づいてモータM1~M6の駆動制御を行う。
【0025】
具体的には、モーションコントローラ33は、上位コントローラCからの指令を受けてプログラム記憶部から指令に対応した動作プログラムを読み込み且つ読み込んだ動作プログラムから動作目標位置を特定する。その後は、特定した動作目標位置とアーム22の現在の位置とを滑らかに繋ぐ目標軌道を生成し、目標軌道を細分化した位置である補間位置をサーボアンプ32に順次送信する。
【0026】
サーボアンプ32には、モータM1~M6に付属のエンコーダが接続されており、エンコーダ値に基づいてモータM1~M6の回転位置(すなわちアーム22の姿勢)を検出する。そして、サーボアンプ32は、検出した回転位置とモーションコントローラ33から受信した指令に含まれる補間位置との偏差に基づいて各モータM1~M6の目標トルク及び目標回転速度を算出し、算出した目標トルク及び目標回転速度に基づいて各モータM1~M6に供給する電力(電流、電圧、パルス)を決定し、各モータM1~M6に電力供給を行う。これらサーボアンプ32、モーションコントローラ33、及び上位コントローラCにより、ロボット10の制御システムが構成されている。
【0027】
なお、フランジ部28の外周部には、エンドエフェクタ29から延びるケーブル30を接続可能な接続端子28aが設けられており、ロボット本体11には接続端子28aとベース21の外部入出力端子34とを繋ぐ配線が収容(内蔵)されている。配線はモーションコントローラ33や外部入出力端子34に繋がっており、エンドエフェクタ29から延びるケーブル30を接続端子28aに接続することで、エンドエフェクタ29とモーションコントローラ33や上位コントローラCとを接続可能となっている。
【0028】
本実施形態に示す制御システムでは、アーム22が人等の物体と接触した際に発生する異常トルクに基づいて接触を検知する検知機能を有しており、接触を検知した場合にロボット本体11の動作を停止(防護停止)させることで物体やロボット本体11の保護を図っている。但し、この検知手法においては、物体との接触箇所から関節部までの距離に関わらず同じ閾値を用いて異常トルクの判定がなされる。このため、接触箇所によって接触検知の精度や応答性に差が生じることとなる。例えば、関節部から近い位置では遠い位置と比べて検知の精度や応答性が低くなる。なお、関節部から近い位置での接触を想定して閾値を低くした場合には、不要な防護停止の回数が増えることで生産効率が低下し得る。本実施形態に示すロボット10では、物体の接触を検知するセンサユニット群12によってアーム22を覆い、センサユニット群12にて接触を検知した場合にロボット10を停止(防護停止)させる構成となっている。つまり、異常トルクが発生したと判定した場合だけでなく、センサユニット群12によって接触を直接的に検出した場合にも防護停止(アーム22の減速)が実行される構成となっている。
【0029】
ここで、
図1に示したセンサユニット群12は、リンクの形状等によって大きく2つのグループに分類される。具体的には、リンクの直線形状部分(以下、直線部という)に適用されるセンサユニット群と、リンクの屈曲形状部分(以下、屈曲部という)に適用されるセンサユニット群とに分類される。本実施形態では、一部のセンサユニットについては図示を省略しているが、下アーム部24及び第1上アーム部25が直線部用のセンサユニットの適用対象となっており、第2上アーム部26及び手首部27が屈曲部用のセンサユニットの適用対象となっている。
【0030】
以下、
図3及び
図4を参照して、屈曲部に適用されるセンサユニットについて手首部27用のセンサユニット50を例に説明する。
【0031】
図3に示すように、手首部27は、その中間位置にて屈曲しており、全体としてL字状をなしている。言い換えれば、手首部27は、第2上アーム部26に連なり連結軸AX5と同じ方向に延びる直線部41aと、フランジ部28に連なり連結軸AX6と同じ方向に延びる直線部41bと、それら直線部41a,41bを繋ぐ屈曲部41cとで構成されている。
【0032】
センサユニット50は、この屈曲部41c(所定部)を屈曲外側から覆うことができる形状に形成されたフレーム52及びソフトパッド53を有している。より詳しくは、フレーム52及びソフトパッド53は、屈曲部41c及び直線部41a,41bにおいて屈曲外側となる部分と、手首部27の側面とに対向している(
図4参照)。なお、
図4に示すように、手首部27の側面にはダイレクトティーチング等を行う場合にユーザによって操作される操作ボタン27aが配設されている。フレーム52及びソフトパッド53は、手首部27の側面を覆ってはいるものの、操作ボタン27aがフレーム52及びソフトパッド53によって覆われる領域から外れるように一部を切り欠いている。
【0033】
フレーム52は、硬質樹脂(例えばポリカーボネート)により形成されており、手首部27の外面に当接する。ソフトパッド53(軟質部)は、軟質樹脂(例えばシリコンゴム)により形成されており、フレーム52を外側から覆っている。軟質樹脂は、ロボット本体11のアーム22の表面(アルミ合金)よりも柔らかい材質であり、物体と接触した際に変形可能である。フレーム52とソフトパッド53との間にシート状のセンサシート57(後述)が収容されている。人等の物体がソフトパッド53に当たることでソフトパッド53が変形し、変形したソフトパッド53(後述する突起54)によってセンサシートが押される。これにより、センサシートから物体との接触を示す信号が出力されることとなる。
【0034】
手首部27の屈曲部41cには、屈曲外側となる部分の一部を凹ませることで、ロボット本体11側のコネクタ44を収容する収容部43が形成されている。この収容部43については、着脱可能なカバー42によって覆われている。センサユニット50をロボット本体11のアーム22に取り付ける場合には、ロボット本体11側のコネクタ44と、センサユニット50側のコネクタ55とを接続することで、接触を示す信号がロボット本体11側に入力されることとなる。
【0035】
次に、センサユニット50の取付構造について説明する。フレーム52には、フレーム52を手首部27に取り付けるための留め具70,80が配設されている。留め具70は、一端がフレーム52に固定された長尺状の面ファスナであり、一方の面部にフック部71とフック部71に結合するループ部72とが形成されている。フック部71とループ部72とは留め具70の長手方向に並んでおり、それらフック部71とループ部72との間にはフック部71及びループ部72の何れも形成されていないブランク部73が設けられている。留め具80は、一端がフレーム52に固定された長尺状のベルト81とベルト81の他端(先端)に固定された連結プレート82とで構成されている。連結プレート82には、開口83が形成されている。開口83に挿通させた留め具70を折り返してフック部71とループ部72とを結合させることにより、留め具70,80が一連となるようにして結合された状態となる。
【0036】
次に、
図5を参照して、センサユニット50の内部構造について説明する。なお、
図5では、留め具70,80の図示を省略している。
【0037】
フレーム52とソフトパッド53との間には、シート状のセンサシート57が設けられている。センサシート57は、フレーム52及びソフトパッド53の形状に対応した形状に形成されており、フレーム52の外面(屈曲外側)を覆っている。センサシート57は、圧力を検出する検出部57aを有している。検出部57a(センサシート57)は、ソフトパッド53の内面53a(屈曲内側)に対向している。検出部57aは、圧力センサを含んでおり、ソフトパッド53の内面53a側から検出部57aに加えられた圧力を検出する。センサシート57は、検出部57aにより検出された圧力が閾値を超えたことを条件として、接触を示す信号をロボット本体11へ出力する(接触を検知する)。すなわち、センサシート57は、検出部57aにより検出された圧力が閾値を超えた場合に接触を示す信号をロボット本体11へ出力し、検出部57aにより検出された圧力が閾値を超えていない場合は接触を示す信号をロボット本体11へ出力しない。
【0038】
ソフトパッド53の内面53aには、複数の突起54が形成されている。複数の突起54は、ソフトパッド53の内面53aに均等(略均等)に分散して形成されている。ソフトパッド53及び複数の突起54は、同一の軟質樹脂(同一の材質)を用いて金型等で成形(例えば射出成形)されており、同一の軟質樹脂により一体に形成されている。複数の突起54は、ソフトパッド53の内面53aから検出部57aに向けて突出している。複数の突起54は、先細りの四角柱状に形成されている。すなわち、複数の突起54は、ソフトパッド53の内面53aから検出部57aに近付くほど細くなっている。複数の突起54の形状は同一(略同一)であり、その長さ及び太さが互いに等しい(略等しい)。
【0039】
複数の突起54(力集中部)は、ソフトパッド53に加えられた力を集中させて検出部57aの方向へ伝達する。すなわち、ソフトパッド53に力が加えられた部分の面積よりも、突起54の先端の面積は小さくなる。このため、ソフトパッド53に加えられた力は、突起54の先端に集中して検出部57aの方向へ伝達される。その結果、ソフトパッド53に力が加えられた部分の圧力よりも、突起54の先端から検出部57aに伝達される圧力は高くなる。
【0040】
なお、突起54全体が細い場合は、ソフトパッド53から検出部57aへ突起54により力を伝達する際に、突起54が座屈するおそれがある。この場合、突起54の先端から検出部57aに加えられる圧力が低下し、検出部57aにより検出される圧力が閾値を超えなくなるおそれがある。一方、突起54全体が太い場合は、突起54の強度が高くなり過ぎ、物体がソフトパッド53に接触した際にソフトパッド53が変形して衝撃を吸収する効果が低下するおそれがある。
【0041】
図6に示すように、センサシート57は、圧力の検出を行わない非検出部57bを含んでいる。非検出部57b(検出部57a以外の箇所)は、検出部57aと同一の構成で圧力の検出値を無効化した部分でもよいし、圧力センサを含まない配線の部分でもよいし、圧力センサや配線が設けられていない部分でもよい。
【0042】
非検出部57bと複数の突起54のうちの一部の突起54Aとの間には、スペーサ58が設けられている。スペーサ58は、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)等の樹脂により形成されたシート状(板状)の部材であり、非検出部57bの領域に対応した形状に形成されている。これにより、検出部57aと複数の突起54との間には所定隙間Gが形成されている。すなわち、突起54A及びスペーサ58(支持部)は、検出部57aと複数の突起54との間に所定隙間Gが形成されるようにソフトパッド53を支持している。換言すれば、スペーサ58の厚みは、所定隙間Gに相当する厚みである。所定隙間Gは、例えばソフトパッド53及び複数の突起54が自重により変形しても複数の突起54が検出部57aに接触しない(検出部57aによる検出圧力が閾値を超えない)最小の隙間に設定することができる。また、所定隙間Gを、ロボット本体11のアーム22の動作時にソフトパッド53及び複数の突起54に慣性が作用しても複数の突起54が検出部57aに接触しない(検出部57aによる検出圧力が閾値を超えない)最小の隙間に設定してもよい。なお、ソフトパッド53及び複数の突起54の製造ばらつきをさらに考慮して、所定隙間Gを設定してもよい。
【0043】
図7は、同一の動作速度における比較例1,2及び本実施形態の接触力Fを示すグラフである。ここでは、時間t=0[s]においてロボット10が人に接触した例を示している。
【0044】
比較例1は、センサユニット50が取り付けられていないロボット10において、アーム22の屈曲部41cが人と直接接触した際の接触力Fを示している。アーム22の表面はアルミ合金で形成されていて硬いため、接触力Fはt=0[s]から急激に上昇している。接触力Fが接触力F4になった時に、異常トルクによる接触検知に基づく防護停止が作動している。その後、接触力Fはピークで接触力F1になった後に低下している。
【0045】
比較例2は、複数の突起54が設けられていないセンサユニットが取り付けられたロボット10において、アーム22の屈曲部41cに取り付けられたセンサユニットが人と接触した際の接触力Fを示している。センサユニットのソフトパッド53がアーム22の表面を覆っているため、接触力Fはソフトパッド53が変形している間は低くなっている。その後、ソフトパッド53が変形し終わると接触力Fが急激に上昇し、接触力Fが接触力F5になった時に、センサユニットによる接触検知に基づく防護停止が作動している。センサユニットは、接触力F4よりも低い接触力F5で接触を検知している。その後、接触力Fはピークで、接触力F1よりも低い接触力F2になった後に低下している。
【0046】
本実施形態は、複数の突起54が設けられたセンサユニット50が取り付けられたロボット10において、アーム22の屈曲部41cに取り付けられたセンサユニット50が人と接触した際の接触力Fを示している。センサユニット50のソフトパッド53がアーム22の表面を覆っているため、接触力Fはソフトパッド53が変形している間は低くなっている。その際、ソフトパッド53が変形する過程で突起54が検出部57aに接触し、接触力Fが接触力F6になった時に、センサユニット50による接触検知に基づく防護停止が作動している。ここで、突起54の先端から検出部57aに加えられる圧力が高くなるため、センサユニット50は接触力F5よりも低い接触力F6で接触を検知している。その後、接触力Fはピークで、接触力F2よりも低い接触力F3になった後に低下している。このため、本実施形態では、接触力Fが許容値を超えない範囲で、アーム22の動作速度をさらに上昇させることができる。
【0047】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0048】
・ソフトパッド53は、アーム22の表面を形成するアルミ合金よりも軟らかい軟質樹脂により、アーム22の屈曲部41cを覆うことができる形状に形成されている。このため、ソフトパッド53によりアーム22の屈曲部41cを覆うことによって、アーム22の屈曲部41cが物体に接触する際に、ソフトパッド53が変形して衝撃を吸収することができる。したがって、アーム22の屈曲部41cが直接人に接触する比較例1よりも、ロボット10が人と接触した際に人に加わる力(接触力)を低減することができる。
【0049】
・複数の突起54がソフトパッド53の内面53aから検出部57aに向けて突出しており、突起54A及びスペーサ58(支持部)は検出部57aと複数の突起54との間に所定隙間Gが形成されるようにソフトパッド53を支持している。このため、物体がソフトパッド53に接触していない場合は、センサシート57の検出部57aにより物体との接触が検知されることなく、ソフトパッド53を支持することができる。一方、物体がソフトパッド53に接触した場合は、物体とソフトパッド53との接触面積よりも、突起54の先端と検出部57aとの接触面積が小さくなる。このため、物体がソフトパッド53に接触した場合に、物体からソフトパッド53に加えられる圧力よりも高い圧力を、突起54の先端から検出部57aに加えることができる。このため、接触力が大きくなる前に検出部57aにより検出される圧力が閾値を超えるようになり、物体との接触を高感度で検知することができる。
【0050】
・複数の突起54は、ソフトパッド53の内面53aから検出部57aに近付くほど細くなっている。こうした構成によれば、突起54の強度が高くなり過ぎることを抑制しつつ、ソフトパッド53から検出部57aへ突起54により力を伝達する際に突起54が座屈することを抑制することができる。したがって、物体がソフトパッド53に接触した際にソフトパッド53が変形して衝撃を吸収する効果が低下することを抑制しつつ、物体との接触を高感度で検知することができる。
【0051】
・センサシート57における検出部57a以外の箇所(非検出部57b)と、複数の突起54のうちの一部の突起54Aとの間には、所定隙間Gに相当する厚みのスペーサ58が設けられている。こうした構成によれば、非検出部57bにスペーサ58を設けることにより、複数の突起54のうちの一部の突起54Aを、ソフトパッド53の支持部を構成する部材の一部として利用することができる。
【0052】
・ソフトパッド53及び複数の突起54は、同一の軟質樹脂により一体に形成されている。こうした構成によれば、ソフトパッド53及び複数の突起54を、同一の軟質樹脂を用いて金型等により成形することができ、ソフトパッド53及び複数の突起54の製造が容易になる。
【0053】
・複数の突起54(力集中部)はソフトパッド53に加えられた力を集中させて検出部57aの方向へ伝達し、突起54A及びスペーサ58は検出部57aと複数の突起54との間に所定隙間Gが形成されるようにソフトパッド53を支持している。このため、物体がソフトパッド53に接触していない場合は、センサシート57の検出部57aにより物体との接触が検知されることなく、ソフトパッド53を支持することができる。一方、物体がソフトパッド53に接触してソフトパッド53が変形した場合は、ソフトパッド53に加えられた力が複数の突起54により集中させられて検出部57aに伝達される。このため、物体からソフトパッド53に加えられる圧力よりも高い圧力を、突起54から検出部57aに加えることができる。このため、接触力が大きくなる前に検出部57aにより検出される圧力が閾値を超えるようになり、物体との接触を高感度で検知することができる。
【0054】
・ロボット10は、アーム22にセンサユニット50が取り付けられており、センサシート57により接触が検知された場合にアーム22を防護停止させる。こうした構成によれば、ロボット10のアーム22が人と接触した際に接触力を低減するとともに、人との接触を高感度で検知してアーム22を防護停止させることができる。したがって、人との接触時に接触力が許容値を超えるまでにアーム22を減速させやすくなり、ロボット10のアーム22の動作速度を上昇させることができる。
【0055】
なお、上記実施形態及びその変更例を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0056】
・先細りの四角柱状に形成された上記突起54に代えて、
図8に示すように、先端部のみが細くなった四角柱状の突起154を採用することもできる。こうした構成によっても、物体からソフトパッド53に加えられる圧力よりも高い圧力を、突起154の先端から検出部57aに加えることができる。複数の突起154のうちの一部の突起154A及びスペーサ58(支持部)により、ソフトパッド53が支持されている。なお、突起54,154,154Aを、四角柱状から円柱状に変更することもできる。
【0057】
・
図9に示すように、突起54と異なる形状の突起56(突出部)及びスペーサ58(支持部)により、ソフトパッド53を支持することもできる。突起56がソフトパッド53の内面53aから突出する長さは、突起54が内面53aから突出する長さと等しい(略等しい)。突起56は、スペーサ58の範囲に収まっていれば、その形状は任意である。なお、ソフトパッド53及び突起56よりも硬い材質(異なる材質)により突起54を形成することで、突起54の先端から検出部57aにさらに高い圧力を加えることができる。
【0058】
・
図10に示すように、スペーサ58を省略して、検出部57aと複数の突起54との間に所定隙間Gが形成されるように、支持部59によりソフトパッド53を支持することもできる。支持部59は、ソフトパッド53の内面53aから検出部57aに向けて突出しており、スペーサ58の厚みに相当する分だけ複数の突起54よりも長く形成されている。支持部59は、先端が非検出部57bに当接していればよく、その形状は任意である。支持部59を先細り形状に形成することにより、支持部59の先端が非検出部57bから外れて検出部57aに接触することを抑制することができる。
【0059】
・
図11に示すように、センサシート57に貫通孔57cを形成し、検出部57aと複数の突起54との間に所定隙間Gが形成されるように、貫通孔57cを挿通した支持部159によりソフトパッド53を支持することもできる。支持部159は、ソフトパッド53の内面53aからフレーム52に向けて突出しており、スペーサ58及び検出部57aの厚みに相当する分だけ複数の突起54よりも長く形成されている。支持部159は、先端がフレーム52に当接していればよく、その形状は任意である。
【0060】
・
図12に示すように、一定の太さの複数の突起254を、ソフトパッド53の内面53aから検出部57aに向けて突出させることもできる。すなわち、複数の突起254,254Aは、先細り形状及び先端が細い形状に形成されていない。こうした構成によっても、ソフトパッド53における複数の突起254を含む部分の面積よりも、複数の突起254の先端の面積の合計は小さくなる。したがって、物体がソフトパッド53に接触した場合に、物体からソフトパッド53に加えられる圧力よりも高い圧力を、突起254の先端から検出部57aに加えることができる。なお、複数の突起254のうちの一部の突起254Aは、ソフトパッド53の支持部を構成する部材の一部として利用されている。
また、ソフトパッド53及び突起254Aよりも硬い材質(異なる材質)により突起254を形成することで、突起254の先端から検出部57aにさらに高い圧力を加えることができる。
【0061】
・
図13に示すように、複数の突起354において、先端部354a以外をソフトパッド53と同一の材質により形成し、先端部354aをソフトパッド53よりも硬い材質により形成することもできる。例えば、複数の突起354の外形は、上記複数の突起54の外形と同一である。こうした構成によれば、物体がソフトパッド53に接触した場合に、突起54の先端部354aから検出部57aにさらに高い圧力を加えることができる。
【0062】
・第1上アーム部25に適用される直線部用のセンサユニット100(
図1参照)に、センサユニット50と同様の構成を適用することもできる。
【0063】
・ロボット10は、水平多関節型のロボット本体を備えていてもよい。
【0064】
なお、上記各実施形態及びその変更例を、組み合わせ可能な範囲で組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0065】
10…ロボット、12…センサユニット群、22…アーム、50…センサユニット、52…フレーム、53…ソフトパッド(軟質部)、53a…内面、54…突起、54A…突起、56…突起、57…センサシート、57a…検出部、57b…非検出部、58…スペーサ、59…支持部、100…センサユニット、154…突起、159…支持部、254…突起、254A…突起、354…突起、G…所定隙間。