(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145483
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20241004BHJP
【FI】
G02B7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057855
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(72)【発明者】
【氏名】平尾 朋三
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044BF09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固定焦点の小型レンズユニットであって、フォーカス調整が可能で、高温環境に晒されても画質の変化を抑えられる構造を提案する。
【解決手段】レンズユニットの焦点位置にフォーカスプレートFPの位置決め面GAが一致するように、フォーカスプレートFPがホルダHに圧入調整され、位置決め面GAにイメージセンサを当接させることで、最良な画質のカメラモジュールが得られる。さらに、ネジ構造を用いずにフォーカス調整が可能な構造のため、高温下での部材変形による画質の劣化を抑えることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、イメージセンサを光軸方向に位置決めするためのフォーカスプレートと、中空形状のホルダと、を有するレンズユニットであって、
前記ホルダには、前記フォーカスプレートが圧入され、
前記フォーカスプレートは、前記イメージセンサの感光部を避けた位置に前記イメージセンサを当接するための位置決め面を有していることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズユニットであって、
前記位置決め面の光軸方向の位置と前記レンズユニットの焦点位置が一致していることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のレンズユニットであって、
前記ホルダと前記ファーカスプレートが組まれた後、前記レンズユニットの外周側面部に形成された空間部に接着剤が充填されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載のレンズユニットであって、
前記ホルダと前記フォーカスプレートが同一材料で形成されていることを特徴とするレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカス調整を簡便に制御できる構造を有するレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像レンズとイメージセンサを組み合わせたカメラモジュールにおいて、オートフォーカス機構を有さない固定焦点カメラモジュールは、レンズユニット組立後、イメージセンサの感光面にレンズの焦点位置を合わせて、位置決めをする必要がある。
【0003】
レンズユニットの焦点位置は、レンズやレンズを収納するホルダの製造精度、それらを組立する際に発生する組立誤差によって変化する。これらの焦点位置変化量は部材の点数が少ない場合や、それぞれの部材精度が高い場合は、小さくなる。
【0004】
一定以上の変化量がある場合は、イメージセンサを組み込んだ後に、フォーカス調整によって、レンズの焦点位置変化をキャンセルしなければいけない。
【0005】
また、近年、1つの基板内での電子部品点数が増加し、個々の電子部品サイズは小さくなってきている。カメラモジュールを実装するスペースも小さくなってきているため、カメラモジュールの実装後に、フォーカス調整を実行できるようなスペースが取れない。この課題解決のため、他の電子部品と一緒に、半田リフロー工程へ流すことができるカメラモジュールが求められている。
【0006】
さらに、現在のカメラモジュール実装では、一度、実装基板にイメージセンサを半田リフロー工程で固定した後、レンズユニットを取り付けてフォーカス調整を実施している。リフロー対応レンズを使用し、フォーカス調整を簡便に制御できる構造を有するレンズユニットであれば、他の電子部品(イメージセンサ等)と一緒に半田リフロー工程で実装基板へ実装することが可能となる。その場合、半田リフロー工程で固定した後、レンズユニットを取り付けてフォーカス調整をする工程が削減できるため、工数の削減が可能となる。
【0007】
イメージセンサとレンズユニットの距離を調整する構造として、特許文献1にネジ構造を利用した構造が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、半田リフロー工程を経ても性能の劣化を抑えられる小型レンズユニットとイメージセンサを固定する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許2926370
【特許文献2】特開2018―88016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、雄ネジ部が形成されたレンズ鏡筒部材の中にレンズが収納され、このレンズ鏡筒部材は、雌ネジ部が形成され、イメージセンサ等の撮像素子を固定する部材に、ネジ部を介して取付られている。レンズ鏡筒部材を回転することで、レンズ鏡筒部材が光軸方向に上下し、イメージセンサ等の撮像素子との距離を調整することができる。
【0011】
特許文献1の構造では、レンズユニットのフォーカス調整は鏡筒を回転することで実施されるが、半田リフロー工程のような高温プロセスに晒された場合、部材の熱膨張によって、ネジ部に負荷がかかり、鏡筒が傾いたり、上下に移動したりして、調整した最適なフォーカス位置から、ずれて画質が劣化してしまう。
【0012】
さらに、レンズユニット自体が小型になることで、鏡筒も小さくなるため、形成されるネジ部は細径でかつ細目になる。半田リフロー工程のような高温条件下では、ネジ部が細目になると、熱膨張によって部材同士の位置関係がずれ、画質劣化が起こる可能性がさらに高まる。
【0013】
また、鏡筒に雄ネジ部を形成し、センサを固定する部材に雌ネジ部を形成する必要のある従来構造はレンズユニットのサイズが大きくなってしまうので、小型化には不向きである。
【0014】
特許文献2に開示されている構造は、1つのホルダにレンズとイメージセンサを固定できるため、小型化には有利である。
【0015】
さらに、半田リフロー工程のような高温下での熱膨張をキャンセル可能なレンズとレンズホルダの構造を有しており、熱膨張による部材の変形や破損が抑えられ、レンズユニットの焦点位置も変化しないため、画質劣化が起き難い。
【0016】
また、レンズを固定する位置決め面が、イメージセンサ側の段差になっているため、1枚構成のレンズであれば、レンズ単体の厚み誤差によるレンズ焦点位置変化を抑えることが可能となっている。
【0017】
しかし、特許文献2で提案されている構造は、レンズやレンズホルダの部材単体を高精度で形成する必要がある。かつレンズユニットにするための組立誤差まで考慮する場合、レンズユニットの焦点位置を精密に制御するためには、1枚か多くても2枚構成程度のレンズが限界となる。
【0018】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、半田リフロー工程等の高温下に晒されても、画質の劣化が抑えられ、かつレンズユニットのフォーカス調整が可能な構造を有し、小型化も実現できるレンズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上の問題を解決するため本発明のレンズユニットは、レンズと、イメージセンサを光軸方向に位置決めするためのフォーカスプレートと、中空形状のホルダと、を備え、前記ホルダには、前記フォーカスプレートが圧入され、前記フォーカスプレートは、前記イメージセンサの感光部を避けた位置に前記イメージセンサを当接するための位置決め面を有している構成としている。
【0020】
前記構成において、前記位置決め面の光軸方向の位置と前記レンズユニットの焦点位置が一致している構成としても良い。このような構造を取ることで、ネジ構造を用いずにレンズユニットのフォーカス位置とイメージセンサの感光面位置を精密に合わせることが可能となる。
【0021】
前記構成において、前記ホルダと前記ファーカスプレートが組まれた後、前記レンズユニットの外周側面部に形成された空間部に接着剤が充填されている構成としても良い。前記ホルダに前記フォーカスプレートが圧入され、フォーカス調整が完了したした後、外周側面部にできる前記空間部に接着剤を充填し、前記フォーカスプレートと前記ホルダを接着固定することにより強固に部材同士を固定することが可能となるので、画質の劣化をさらに抑えることが可能となる。
【0022】
前記構成において、前記ホルダと前記フォーカスプレートが同一材料で形成されている構成としても良い。このように同一材料で構成することにより、部材間の線膨張差が少なくなるため、熱による部材間の膨張差が少なくなるので、画質の劣化が起き難くなる。
【0023】
また、前記フォーカスプレートに当接する前記イメージセンサがカバーガラスで封止され、前記レンズは前記ホルダに固定され、前記フォーカスプレートは前記ホルダに圧入され、前記フォーカスプレートは、前記イメージセンサの前記カバーガラスの上面側を当接する前記位置決め面を有し、前記カバーガラスの厚みを加味した前記レンズユニットのフォーカス位置と前記イメージセンサの感光面の光軸方向位置が一致した状態で固定される。このような構成にすることで、カバーガラスで封止されたイメージセンサに対しても、フォーカス調整が可能となる。
【0024】
フォーカス調整完了後、ホルダとフォーカスプレートは接着または溶着等の固定手段により固定される。圧入部の向かい合う2面もしくは4面でホルダとフォーカスプレートが固定されるため、半田リフロー等の高温下に晒されても、画質の劣化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の構造では、ネジ構造を用いずにフォーカス調整が可能となり、半田リフロー工程のような高温条件下に晒されても、画質の劣化を抑えられ、かつネジ構造を有していないため、イメージセンササイズに近い大きさまで小型化したレンズユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態例について説明する。なお、各図
は、本発明に係る一構成例を図示するものであり、本発明が理解できる程度に各構成要素の断面形状や配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、本発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の条件等を用いることがあるが、これらの材料および条件は好適例の一つに過ぎず、従って、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明のレンズユニット断面図である。
図2はイメージセンサ挿入側(
図1下側)からレンズユニットを見た平面図である。レンズLはホルダHに挿入され、ストッパSTがホルダHに圧入され、固定されている。フォーカスプレートFPは、イメージセンサSの上面が当接する位置決め面GAと、レンズユニットの画質が最も良くなる焦点位置BFAが光軸方向で一致する位置になるように、圧入調整された後、接着等の手段で固定されている。
【0029】
このように構成することで、ネジ構造を用いずにフォーカス調整が可能となるので、小型で半田リフロー工程等の高温プロセスに晒されても、画質の劣化が起きないレンズユニットを提供することができる。
【実施例0030】
図3は第1の実施例のカメラモジュール断面図である。液晶ポリマーで形成されたホルダHには1枚の熱硬化型エポキシ樹脂で形成されたレンズLが挿入され、液晶ポリマーで形成されたストッパSTを介してホルダHに固定されている。耐熱ナイロン樹脂で形成されたフォーカスプレートFPは、ホルダHに圧入固定され、位置決め面GAがイメージセンサSの感光部を避けた位置でイメージセンサSと当接している。フォーカスプレートFPとホルダHは、イメージセンサSと基板の間を接続するワイヤーを避けた形状となっている。ホルダHと基板は、接着剤により固定されている。
【0031】
ストッパSTとホルダHはUV光で硬化する接着剤により固定されているが、固定手段は接着に限定されず、レーザー溶着や超音波溶着、熱カシメ等の手段を用いることもできる。
【0032】
ホルダHとフォーカスプレートSPは接着剤により固定されているが、固定手段は接着に限定されず、レーザー溶着や超音波溶着、熱カシメ等の手段を用いることもできる。また、固定箇所は
図4では対面2か所としているが、固定強度が不足する場合は、4か所を固定しても良い。
【0033】
図5は、本発明のフォーカス調整構造を説明した断面図である。
図5左のようにフォーカスプレートFPを、レンズLが組み込まれた後のホルダHに挿入する。レンズユニットの焦点位置BFAを確認しながら、フォーカスプレートFPをイメージセンサSに当接する位置決め面GAを基準としてゆっくり圧入し、
図5右のようにレンズユニットのフォーカス位置BFAとイメージセンサSの上面に当接する位置決め面GAが一致する位置で、圧入を停止する。この場合の一致とは、レンズユニットの焦点が画質仕様を満たす位置範囲であれば一致していると判断でき、画質仕様を満たさない位置の場合は一致していないこととなる。
【0034】
フォーカス調整完了後に、
図4で図示した2か所の接着固定によって、ホルダHとフォーカスプレートFPを固定する。本実施例においては、2か所の接着固定をしているが、接着固定する箇所については、特に限定されず、各辺毎に接着箇所を設けても良いし、接着剤の種類としてはUV硬化性接着剤や熱硬化性接着剤等、用途に応じて、選択することが可能である。但し、半田リフロー工程を通す必要がある場合は、適応温度に注意して接着剤の選定が必要となる。
【0035】
ホルダHとフォーカスプレートFPの固定が完了したレンズユニットに、フォーカスプレートFPの位置決め面GAへ、イメージセンサSの上面を当接させ、ホルダHと基板を接着固定すれば、画質の調整が完了したカメラモジュールが製作可能となる。
【0036】
このようにして製作したカメラモジュールは、使用している部材が全て半田リフロー工程の温度に耐えうる材料で形成されており、かつ、ネジ構造無しでフォーカス調整が実行されており、さらに光軸方向は、フォーカスプレートFPの位置決め面GAとイメージセンサーSの上面が当接し固定されているため、カメラモジュールの状態で半田リフロー工程等の高温下に晒されても、画質の劣化を抑えることができる。
【0037】
以上の通り、本発明による構造を用いることで、半田リフロー工程のような高温条件下に晒されても、画質の劣化を抑えられ、かつネジ構造を有しないため、イメージセンササイズに近い大きさまで小型化できるレンズユニットを提供することができる。
物体側から順に、熱硬化型のエポキシ樹脂で形成された第1レンズL1、熱硬化型アクリル樹脂で形成された第2レンズL2、熱可塑性ポリエーテルイミド樹脂で形成された第3レンズL3が配され、第1レンズL1と第2レンズL2の間には、F値を決定する開口絞り板APが挿入され、第2レンズL2と第3レンズL3の間には、レンズ間隔を調整するためのスペーサーSPが挿入され、開口絞り板APとスペーサーSP、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3は耐熱ナイロン樹脂で形成されたホルダHに圧入され、第3レンズL3とホルダHは熱で硬化する接着剤で固定されている。
レンズや必要な部材が組み込まれたホルダHに、実施例1と同様に耐熱ナイロン樹脂で形成されたフォーカスプレートFPを挿入し、位置決め面GBを基準に、圧入によりフォーカス調整を実行し、カバーガラスCGを考慮したレンズユニットの焦点位置BFBとイメージセンサの感光面が一致した時点で圧入を停止する。
ホルダHとフォーカスプレートFPには、フォーカス調整完了後に、2種類の空間GP1とGP2が形成される。空間部GP1はレンズユニットの内側、空間部GP2はレンズユニットの外側に形成される。
レンズユニット外側の空間部GP2を埋めるようにホルダHとフォーカスプレートFPを接着剤で固定することにより、固定強度を上げることができる。さらに、ホルダHとフォーカスプレートFPが同一材料のため、熱による膨張差は少なく、半田リフロー工程のような高温条件に晒された後でも、画質の劣化が抑えるられる。
このように製作したレンズユニットのフォーカスプレートFPに形成された位置決め面GBと、カバーガラスCGで封止されたイメージセンサチップSCのカバーガラスCG上面側CG1とを当接することで、画質が良い状態で光軸方向の位置を固定することが可能となる。
イメージセンサチップSCを光軸方向へ固定した後、フォーカスプレートFPとイメージセンサチップSCを、UV硬化型接着剤により固定すると、カメラモジュールが製作可能となる。
以上の通り、本発明による構造を用いることで、半田リフロー工程のような高温条件下に晒されても、画質の劣化を抑えられ、かつネジ構造を有しないため、イメージセンササイズに近い大きさまで小型化できるレンズユニットを提供することができる。