(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145486
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】触覚制御システム、触覚提示機、触覚制御プログラム、及び、触覚制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057861
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 修一
(72)【発明者】
【氏名】木野井 慶介
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
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5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザの好みに応じた触覚を提示できる触覚提示機の制御を提供する。
【解決手段】触覚制御システム10は、ユーザに触覚を提示する触覚提示機20を制御する。触覚制御システム10は、触覚提示機20が備える、触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイス11、及び、触覚提示のための力の出力形態が第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイス12を制御することで、ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御部2と、触覚制御部2による第1触覚デバイスの第1触覚制御機能、及び、前記第2触覚デバイスの第2触覚制御機能のそれぞれの有効又は無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択部3とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに触覚を提示する触覚提示機を制御する触覚制御システムであって、
前記触覚提示機が備える、触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイス、及び、触覚提示のための力の出力形態が前記第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイスを制御することで、前記ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御部と、
前記触覚制御部による前記第1触覚デバイスの第1触覚制御機能及び前記第2触覚デバイスの第2触覚制御機能のそれぞれの有効又は無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択部とを備える、触覚制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の触覚制御システムであって、
前記触覚提示機が備える前記ユーザに触覚提示のための力を作用させる可動部に対する前記ユーザの動きを取得する動き取得部をさらに備え、
前記選択部は、前記動き取得部で取得された前記ユーザの動きに応じて前記第1触覚デバイスから前記可動部への力を制御する前記第1触覚制御機能、及び、前記動き取得部で取得された前記ユーザの動きに応じて前記第2触覚デバイスから前記可動部への力を制御する前記第2触覚制御機能のそれぞれの有効又は無効を前記ユーザの指定に基づき選択する、触覚制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の触覚制御システムであって、
前記触覚制御部は、前記第1触覚デバイスの第1触覚制御機能のための出力パターンと、前記第2触覚デバイスの第2触覚制御機能のための出力パターンを含む制御情報を取得し、前記第1触覚制御機能及び第2触覚制御機能のうち前記選択部が有効と選択した触覚制御機能のための出力パターンを用いて、前記第1触覚デバイス及び前記第2触覚デバイスの少なくとも1つを制御する、触覚制御システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の触覚制御システムであって、
前記選択部は、前記ユーザからの前記指定がない場合は、前記第1触覚デバイスによる第1触覚制御機能及び前記第2触覚デバイスによる第2触覚制御機能の両方を有効にする、触覚制御システム。
【請求項5】
触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイスと、
触覚提示のための力の出力形態が前記第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイスと、
前記第1触覚デバイス、及び、前記第2触覚デバイスを制御することで、前記ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御部と、
前記第1触覚デバイスによる第1触覚制御機能及び前記第2触覚デバイスによる第2触覚制御機能のそれぞれの有効と無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択部と、を備える、触覚提示機。
【請求項6】
ユーザに触覚を提示する触覚提示機を制御する触覚制御プログラムであって、
前記触覚提示機が備える、触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイス、及び、触覚提示のための力の出力形態が前記第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイスを制御することで、前記ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御処理と、
前記触覚制御処理における、前記第1触覚デバイスに対する第1触覚制御処理及び前記第2触覚デバイスに対する第2触覚制御処理のそれぞれの有効と無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択処理とをコンピュータに実行させる、触覚制御プログラム。
【請求項7】
ユーザに触覚を提示する触覚提示機を制御する触覚制御方法であって、
前記触覚提示機が備える、触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイス、及び、触覚提示のための力の出力形態が前記第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイスを制御することで、前記ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御工程と、
前記触覚制御工程における、前記第1触覚デバイスに対する第1触覚制御及び前記第2触覚デバイスに対する第2触覚制御のそれぞれの有効と無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択工程とを含む、触覚制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザに触覚を付与する触覚デバイスの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実(VR; Virtual Reality)、拡張現実(AR; Augmented Reality)、複合現実(MR; Mixed Reality)等の技術を用いてメタバースと呼ばれる仮想空間を提供するサービスが始まっている。上記技術では、映像及び音によりユーザの視覚及び聴覚に対する情報を与えるユーザインタフェースが提供される。近年、視覚及び聴覚に加えて、触覚の情報を与える技術が開発されている。
【0003】
例えば、特開2017-138651号公報(特許文献1)は、映像に映し出された物体の力覚を操作者に提示する力覚提示装置に関し、複雑な制御を必要とすることなく、映像の動きと操作部において提示される力覚とを高い精度でリンクさせることが可能な力覚提示装置を開示する。
【0004】
特表2019-530102号公報(特許文献2)は、特に仮想現実システムまたは拡張現実システムと相互作用を行う触覚装置を開示する。この触覚装置は、手の指に装着されるよう構成された固定本体、モータ手段によって作動する可動本体、及び接触面を有するフラップを備える。可動本体は、接触面が指先から離れた位置から指先に接触する位置まで移動するように固定本体に対して可動である。フラップの接触面は凸状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-138651号公報
【特許文献2】特表2019-530102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の課題は、ユーザの好みに応じた触覚を提示できる触覚提示機の制御を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態における触覚制御システムは、ユーザに触覚を提示する触覚提示機を制御する。前記触覚制御システムは、前記触覚提示機が備える、触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイス、及び、触覚提示のための力の出力形態が前記第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイスを制御することで、前記ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御部と、前記触覚制御部による前記第1触覚デバイスの第1触覚制御機能、及び、前記第2触覚デバイスの第2触覚制御機能のそれぞれの有効又は無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における触覚制御システムを含むシステムの構成例を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、選択部によって、第1触覚制御機能及び第2触覚制御機能のそれぞれが有効又は無効にされる形態を説明する図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すシステムの詳細な構成例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す触覚制御システムによる触覚提示機の制御に用いられる制御情報の例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す触覚提示機の可動部の動力伝達機構の例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図5に示す触覚提示機の変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、
図1に示すシステム、及びその上位システムを含むシステム構成の例を示す機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、ユーザからの指定を受け付ける画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(構成1)
本実施形態における触覚制御システムは、ユーザに触覚を提示する触覚提示機を制御する。前記触覚制御システムは、前記触覚提示機が備える、触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイス、及び、触覚提示のための力の出力形態が前記第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイスを制御することで、前記ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御部と、前記触覚制御部による前記第1触覚デバイスの第1触覚制御機能、及び、前記第2触覚デバイスの第2触覚制御機能のそれぞれの有効又は無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択部とを備える。
【0010】
上記構成によれば、触覚提示のための力の出力形態が異なる2つの触覚デバイスそれぞれの触覚制御機能の有効又は無効が、ユーザの指定に基づき選択される。これにより、ユーザの指定に応じて触覚を制御する力の出力形態の組み合わせを選択することが可能になる。これにより、デバイスの機械的な構成又は複雑な制御機能を追加しなくても、ユーザが選択できる触覚の幅を広げることができる。そのため、ユーザの好みに応じた触覚提示が可能になる。
【0011】
第1及び第2触覚制御機能は、第1及び第2触覚デバイスが触覚提示のために出力する力を制御する処理により実現されてもよい。触覚制御部は、第1及び第2触覚制御機能として、第1及び第2触覚デバイスに、目的の触覚提示のための出力パターンの力を出力させることができる。例えば、触覚制御部は、第1及び第2触覚デバイスの出力パターンを示す制御情報を取得し、制御情報が示す出力パターンの力を第1及び第2触覚デバイスに出力させてもよい。
【0012】
触覚制御部によって制御される第1及び第2触覚デバイスの力が、触覚提示機が備える可動部を介してユーザに作用するよう構成されてもよい。可動部は、第1及び第2触覚デバイスのそれぞれについて独立して設けられてもよいし、第1及び第2触覚デバイスが1つの可動部に対して力を出力する構成であってもよい。
【0013】
第1及び第2触覚デバイスの触覚提示のための力の出力形態が異なる場合として、例えば、第1及び第2触覚デバイスの触覚提示のための力を出力する機構が異なる場合が挙げられる。一例として、第1触覚デバイスは、アクチュエータを備え、アクチュエータから出力する力を変化させることにより触覚を制御する触覚デバイス、いわゆるアクティブ触覚デバイスとすることができる。第2触覚デバイスは、例えば、ユーザの動きに対する抵抗を変化させることで触覚を制御する触覚デバイス、いわゆるパッシブ触覚デバイスとすることができる。
【0014】
(構成2)
上記構成1において、前記触覚制御システムは、前記触覚提示機が備える前記ユーザに触覚提示のための力を作用させる可動部に対する前記ユーザの動きを取得する動き取得部をさらに備えてもよい。前記選択部は、前記動き取得部で取得された前記ユーザの動きに応じて前記第1触覚デバイスから前記可動部への力を制御する前記第1触覚制御機能、及び、前記動き取得部で取得された前記ユーザの動きに応じて前記第2触覚デバイスから前記可動部への力を制御する前記第2触覚制御機能のそれぞれの有効又は無効を前記ユーザの指定に基づき選択してもよい。これにより、力の出力形態が異なる2つの触覚デバイスそれぞれのユーザの動きに応じて出力を制御する触覚制御機能の有効又は無効が、ユーザの指定に基づき選択される。
【0015】
(構成3)
上記構成1又は2において、前記触覚制御部は、前記第1触覚デバイスの第1触覚制御機能のための出力パターンと、前記第2触覚デバイスの第2触覚制御機能のための出力パターンを含む制御情報を取得してもよい。前記触覚制御部は、前記第1触覚制御機能及び第2触覚制御機能のうち前記選択部が有効と選択した触覚制御機能のための出力パターンを用いて、前記第1触覚デバイス及び前記第2触覚デバイスの少なくとも1つを制御してもよい。これにより、第1触覚デバイスと第2触覚デバイスのそれぞれの触覚制御機能が有効又は無効を選択された場合の制御を効率よく実行できる。
【0016】
上記構成3において、前記動き取得部は、前記可動部の変位量を、前記ユーザの動きとして取得してもよい。前記制御情報は、第1触覚デバイスの制御値と可動部の変位量との対応を示すデータを前記第1触覚制御機能の出力パターンとして含んでもよい。また、前記制御情報は、第2触覚デバイスの制御値と可動部の変位量との対応を示すデータを前記第2触覚制御機能の出力パターンとして含んでもよい。前記触覚制御部は、前記第1触覚デバイスの制御値と可動部の変位量との対応を示すデータを用いて、前記動き取得部で取得された前記可動部の変位量に応じた制御値を決定し前記第1触覚デバイスに供給することで、前記第1触覚制御機能を実現してもよい。前記触覚制御部は、前記第2触覚デバイスの制御値と可動部の変位量との対応を示すデータを用いて、前記動き取得部で取得された前記可動部の変位量に応じた制御値を決定し前記第2触覚デバイスに供給することで、前記第2触覚制御機能を実現してもよい。
【0017】
可動部の変位量は、可動部の動きによる変化の度合いを示す物理量である。可動部の変位量は、例えば、可動部の基準位置に対する位置、速度、及び加速度の少なくとも1つであってもよい。
【0018】
前記制御情報は、仮想空間で表示されるオブジェクトに対応して予め設定された情報であってもよい。これにより、仮想空間のオブジェクトの触覚を、制御情報により定義できる。オブジェクトの触覚を示すデータ及びその処理が容易になる。
【0019】
(構成4)
上記構成1~3のいずれかにおいて、前記選択部は、前記ユーザからの前記指定がない場合は、前記第1触覚デバイスによる第1触覚制御機能及び前記第2触覚デバイスによる第2触覚制御機能の両方を有効にしてもよい。これにより、ユーザから指定がない場合であっても第1及び第2触覚デバイスによる触覚制御ができる。
【0020】
(構成5)
本発明の実施形態における触覚提示機は、触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイスと、触覚提示のための力の出力形態が前記第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイスと、前記第1触覚デバイス、及び、前記第2触覚デバイスを制御することで、前記ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御部と、前記第1触覚デバイスによる第1触覚制御機能及び前記第2触覚デバイスによる第2触覚制御機能のそれぞれの有効と無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択部と、を備える。
【0021】
(構成6)
本発明の実施形態における触覚制御プログラムは、ユーザに触覚を提示する触覚提示機を制御するプログラムである。前記触覚制御プログラムは、前記触覚提示機が備える、触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイス、及び、触覚提示のための力の出力形態が前記第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイスを制御することで、前記ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御処理と、前記触覚制御処理における、前記第1触覚デバイスに対する第1触覚制御処理及び前記第2触覚デバイスに対する第2触覚制御処理のそれぞれの有効と無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択処理とをコンピュータに実行させる。
【0022】
(構成7)
本発明の実施形態における触覚制御方法は、ユーザに触覚を提示する触覚提示機を制御する方法である。前記触覚制御方法は、前記触覚提示機が備える、触覚提示のための力を出力する第1触覚デバイス、及び、触覚提示のための力の出力形態が前記第1触覚デバイスと異なる第2触覚デバイスを制御することで、前記ユーザに提示する触覚を制御する触覚制御工程と、前記触覚制御工程における、前記第1触覚デバイスに対する第1触覚制御及び前記第2触覚デバイスに対する第2触覚制御のそれぞれの有効と無効を前記ユーザの指定に基づき選択する選択工程とを含む。
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら本実施形態を詳しく説明する。図中、同一又は相当部分には同一参照符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0024】
<実施形態>
図1は、本実施形態における触覚制御システムを含むシステムの構成例を示す機能ブロック図である。触覚制御システム10は、触覚提示機20を制御するシステムである。触覚提示機20は、第1触覚デバイス11、第2触覚デバイス12、センサ13、及び可動部14を備える。第1触覚デバイス11及び第2触覚デバイス12は、いずれも、触覚提示のための力を出力する。第1触覚デバイス11の力の出力形態は、第2触覚デバイス12の力の出力形態と異なる。
【0025】
第1触覚デバイス11と第2触覚デバイス12の組み合わせは、例えば、アクティブ触覚デバイスとパッシブ触覚デバイスの組み合わせであってもよい。アクティブ触覚デバイスは、アクチュエータを備え、アクチュエータから可動部14に出力する力を変化させることにより触覚を制御する構成である。パッシブ触覚デバイスは、例えば、可動部14の動きに対する抵抗を変化させることで触覚を制御する構成である。アクティブ触覚デバイスの例としては、アクチュエータとしてモータ、振動子、リニアアクチュエータ、電気活性ポリマーを利用したアクチュエータ、又は、圧電アクチュエータを有するデバイスが挙げられる。パッシブ触覚デバイスの例としては、機能性流体や機能性ゲルの粘性により抵抗を可変とする機能性流体デバイス、等が挙げられる。なお、第1及び第2触覚デバイスの組み合わせは、アクティブ触覚デバイスとパッシブ触覚デバイスの組に限らず、出力機構が異なる2つのアクティブ触覚デバイス、又は、出力機構が異なる2つのパッシブ触覚デバイスであってもよい。
【0026】
可動部14は、ユーザに触覚提示のための力を作用させる可動な部材である。可動部14は、ユーザが直接又は間接的に接触可能且つ可動に構成される。可動部14は、第1触覚デバイス11及び第2触覚デバイス12から出力される力によって動く。可動部14には、第1及び第2触覚デバイス11、12から出力される力が伝達される。可動部14は、ユーザに力を作用させ、且つ、ユーザの力が可動部14に作用する。可動部14は、力学的なユーザインタフェースである。また、可動部14は、ユーザの動きに応じて動くよう構成されてもよい。例えば、可動部14は、触覚提示機20の本体(図示略)に可動に支持される。
【0027】
可動部14は、第1触覚デバイス11から出力される力と、第2触覚デバイス12から出力される力を合成した力によって動くように構成されてもよい。これにより、出力形態の異なる力の合力による触覚を提示することができる。或いは、可動部14は、第1触覚デバイス11から出力される力によって動く第1可動部と、第2触覚デバイス12から出力される力によって動く第2可動部を有してもよい。この場合、第1可動部と、第2可動部は、互いに独立して可動に構成される。
【0028】
センサ13は、本体に対する可動部14の動きを検出する。センサ13は、例えば、可動部14の動きと連動して回転する部材の回転角度を検出するよう構成されてもよい。センサ13は、例えば、光センサ、磁気センサ、トルクセンサ、ポテンショメータ、加速度センサ、圧力センサ、その他の可動部14の動きの物理量を電気信号に変換する素子を含んでもよい。なお、センサ13は、ユーザの動きを検出するものであってもよい。例えば、光センサ、圧力センサ又は加速度センサにより、ユーザの動きを検出することができる。なお、センサ13は省略されてもよい。
【0029】
触覚制御システム10は、動き取得部1、触覚制御部2、及び、選択部3を有する。動き取得部1は、可動部14に対するユーザの動きを取得する。例えば、動き取得部1は、センサ13で検出された可動部14の変位量を、ユーザの動きを示す値として取得してもよい。可動部14の変位量は、可動部14の位置、速度、又は加速度であってもよい。
【0030】
触覚制御部2は、第1触覚デバイス及び第2触覚デバイスを制御することで、ユーザに提示する触覚を制御する。触覚制御部2は、第1触覚デバイスから出力される力を制御することでユーザに提示する触覚を制御する第1触覚制御機能と、第2触覚デバイスから出力される力を制御することでユーザに提示する触覚を制御する第2触覚制御機能を有する。
【0031】
図1の例では、触覚制御部2は、動き取得部1で取得されたユーザの動きに応じて第1及び第2触覚デバイスから出力される力を制御する。本例では、第1触覚制御機能は、ユーザの動きに応じて第1触覚デバイスから出力される力を制御する動作で実現され、第1触覚制御機能は、ユーザの動きに応じて第2触覚デバイスから出力される力を制御する動作で実現される。他の例としては、第1触覚制御機能及び第2触覚制御機能の少なくとも1つが、時間経過に応じて出力される力を制御する動作、又は外部システムから指定された出力パターンで出力される力を制御する動作で実現されてもよい。
【0032】
触覚制御部2は、第1及び第2触覚制御機能の動作として、目的の触覚を提示するための出力パターンの力を第1及び第2触覚デバイス11、12に出力させてもよい。出力パターンは、例えば、ユーザの動きに応じて変化する出力パターン、時間経過に応じて変化する出力パターン、又は、外部システムからネットワークを介してリアルタイムで指定される出力パターンであってもよい。触覚制御部2は、第1及び第2触覚制御機能それぞれを実現するための出力パターンを含む制御情報を取得してもよい。触覚制御部2は、制御情報が示す出力パターンを出力するように、第1及び第2触覚デバイスを制御してもよい。
【0033】
選択部3は、触覚制御部2による第1触覚制御機能、及び、第2触覚制御機能のそれぞれの有効又は無効(オン/オフ)をユーザの指定に基づき選択する。選択部3により、触覚制御部2の第1触覚制御機能、及び、第2触覚制御機能のそれぞれの有効及び無効がユーザの指定に応じて切り替えられる。ユーザの指定は、触覚制御システム10でユーザから受け付けてもよいし、触覚制御システム10の外部システム又は機器で受け付けてもよい。選択部3は、ユーザの指定を示す情報を取得して、その情報で示されるユーザの指定に基づき、第1触覚制御機能、及び、第2触覚制御機能のそれぞれの有効又は無効を選択する。
【0034】
図2は、選択部3によって、第1触覚制御機能及び第2触覚制御機能のそれぞれが有効又は無効にされる形態を説明する図である。
図2(a)は、選択部3により第1触覚制御機能及び第2触覚制御機能の両方が有効に選択された場合の状態を示す。この場合、触覚制御システム10の触覚制御部2により、第1触覚デバイス11から出力される力の制御による触覚制御、及び、第2触覚デバイス12から出力される力の制御による触覚制御の両方が実行される。
【0035】
図2(b)は、選択部3により第1触覚制御機能が有効、第2触覚制御機能が無効と選択された場合の状態を示す。この場合、触覚制御システム10の触覚制御部2により、第1触覚デバイス11から出力される力の制御による触覚制御が実行され、及び、第2触覚デバイス12から出力される力の制御による触覚制御は実行されない。
【0036】
図2(c)は、選択部3により第1触覚制御機能が無効、第2触覚制御機能が有効と選択された場合の状態を示す。この場合、触覚制御システム10の触覚制御部2により、第1触覚デバイス11から出力される力の制御による触覚制御は実行されず、及び、第2触覚デバイス12から出力される力の制御による触覚制御が実行される。
【0037】
このように、選択部3によって、第1触覚制御機能の動作及び第2触覚制御機能の動作の両方を実行するモード、第1触覚制御機能の動作を実行して第2触覚制御機能の動作を実行しないモード、及び、第1触覚制御機能の動作を実行せず、第2触覚制御機能の動作を実行するモードが、ユーザの指定に応じて切り替えられる。これにより、第1触覚デバイスによる触覚制御の特性と、第2触覚デバイスによる触覚制御の特性の組み合わせをユーザが選択できる。そのため、ユーザの好みに応じて、触覚提示のモードを選択することができる。
【0038】
図3は、
図1に示すシステムの詳細な構成例を示す機能ブロック図である。
図3の例では、触覚提示機20は、第1触覚デバイスとして、モータ22を備え、第2触覚デバイスとして、機能性流体デバイス29を備える。触覚制御部2は、第1触覚制御機能として、モータ22から可動部14に出力される力を制御することで、ユーザに付与する触覚を制御する。触覚制御部2は、第2触覚制御機能として、機能性流体デバイス29の機能性流体24の粘性により可動部14の抵抗を制御することで、ユーザに付与する触覚を制御する。
【0039】
モータ22は、可動部14を動かす動力源となる。モータ22により可動部14が動かされることで、可動部14に触れたユーザに触覚を付与することができる。モータ22の動力は、可動部14に伝達される。触覚提示機20は、モータ22の動力を可動部14に伝達する伝達部材を有する。モータ22は、制御値に基づいてモータを駆動させる駆動回路を有してもよい。モータ22の種類は、特に限定されないが、例えば、DCモータ、ACモータ、又は、サーボモータとすることができる。
【0040】
触覚制御部2は、モータ22へ制御値を供給することで、モータ22を制御することができる。触覚制御部2によるモータ22の制御には、モータ22の回転制御の他、モータ22から可動部14への伝達部材の制御が含まれてもよい。触覚制御部2は、第1触覚制御機能の動作として、モータ22から可動部14への力の出力が、制御情報で示される出力パターンとなるよう制御してもよい。
【0041】
機能性流体デバイス29は、機能性流体24と、機能性流体24に可変な磁場を発生させるコイル25とを備える。機能性流体デバイスの機能性流体は、例えば、磁気粘性流体(Magneto-rheological fluid)又は、電気粘性流体(Electro-rheological fluid)とすることができる。コイル25は、機能性流体24の電場又は磁場を制御する装置の一例である。機能性流体デバイス29は、コイル25(電場又は磁場の制御装置)によって機能性流体24の磁場又は電場(本例では磁場)を可変にすることで、可動部14の動きの抵抗を可変にした構成である。
【0042】
機能性流体24は、可動部14と連動して動く部材(図示略)に接した状態で密封される。機能性流体24は、モータ22と可動部14の間の動力の伝達経路上に設けられてもよい。この場合、モータ22の動力は、機能性流体24を介して可動部14に伝達される。なお、機能性流体24は、上記のモータ22の動力の伝達経路上になくてもよい。
【0043】
機能性流体24は、コイル25を流れる電流により発生する磁場に応じて粘度が変化する。機能性流体24の粘度が変化することで、ユーザによる可動部14の動きの抵抗が変化する。これらにより、ユーザの可動部14に対する触覚が変化する。なお、機能性流体が電気粘性流体の場合、電流により発生する電場に応じて粘度が変化する。
【0044】
触覚制御部2は、機能性流体24の粘度を制御する。本例では、触覚制御部2は、コイル25の電流を制御する。これにより、コイル25によって発生する機能性流体24の磁場が制御され、結果として、機能性流体24の粘度が制御される。機能性流体24の粘度の制御により、可動部14の抵抗が制御される。触覚制御部2は、第2触覚制御機能の動作として、機能性流体24の粘度が、制御情報で示される出力パターンとなるよう制御する。触覚制御部2は、機能性流体デバイス29へ制御値を供給することで、機能性流体24の粘度を制御することができる。
【0045】
図3の例では、選択部3により、第1触覚制御機能及び第2触覚制御機能が有効にされた場合、モータ22から可動部14へ伝達する力と、機能性流体24の粘性による可動部14の抵抗の両方の制御により、ユーザに提示する触覚が制御される。例えば、機能性流体デバイス29の可動部14に対する抵抗力とモータ22の可動部14に対する反発速度の制御により、触覚が制御される。この場合、例えば、複雑でリアルな触覚提示を好むユーザに適した触覚提示が実現できる。
【0046】
選択部3により、第1触覚制御機能が有効、第2触覚制御機能が無効にされた場合、機能性流体24の粘性による可動部14の抵抗の制御により、ユーザに提示する触覚が制御される。例えば、機能性流体デバイス29の抵抗力の制御により、触覚が制御される。この場合、例えば、モータの硬い触感が苦手なユーザに適した触覚提示が実現できる。
【0047】
選択部3により、第1触覚制御機能が無効、第2触覚制御機能が有効にされた場合、モータ22から可動部14へ伝達する力の制御により、触覚が制御される。例えば、モータ22の可動部14に対する反発力の制御により、触覚が制御される。この場合、例えば、機能性流体デバイスによる細かな振動のような感覚が苦手なユーザに適した触覚提示が実現できる。
【0048】
図4は、
図3に示す触覚制御システム10による触覚提示機20の制御に用いられる制御情報の例を示す図である。
図4において、データD1は、触覚制御部2が取得する制御情報のデータ例である。データD1には、モータ22及び機能性流体デバイス29(MRD)の触覚制御動作時の出力パターンが含まれる。出力パターンは、可動部14の変位量(一例として指位置)に対応する第1及び第2触覚デバイスのそれぞれの制御値で示される。
図4の例では、第1触覚デバイスの出力パターンの例として、可動部14の変位量とモータ22のトルク及び速度の対応データ、第2触覚デバイスの出力パターンの例として、可動部14の変位量とMRDのトルクとの対応データが記憶される。この例では、変位量(指位置)は、基準位置に対する可動部14の回転角度で表される。
【0049】
また、データD1には、モータ22及び機能性流体デバイス29のそれぞれの触覚制御機能が有効又は無効の場合に変化させないで一定値を保持する制御値である設定値(モータ設定値、及び、MRD設定値)も含まれる。このように、制御情報には、第1及び第2触覚デバイスのそれぞれの触覚制御機能を有効とした場合及び無効とした場合の制御値が含まれる。
【0050】
図4において、データD2は、選択部3が、モータ22及び機能性流体デバイス29の触覚制御機能を有効(モータon、MRDデバイスon)とした場合に、データD1のうち触覚制御部2が参照するデータである。モータon、MRDデバイスonの場合、触覚制御部2は、可動部14の変位量とモータ22の速度との対応データ、及び変位量と機能性流体デバイス29(MRD)のトルクの値との対応データ、及びモータ設定値であるモータ22のトルクの設定値を参照する。この場合、触覚制御部2は、動き取得部1で取得された可動部14の変位量(指位置)に対応するモータ22の速度、及び、機能性流体デバイス29(MRD)のトルクの値を、データD2の対応データを参照して決定することができる。モータ22の回転は変位量に応じて決定した速度に制御され、機能性流体24は、変位量に応じて決定したトルクの値に対応する粘度に制御される。モータ22のトルクは変位量にかかわらず一定に制御される。これにより、触覚制御部2は、モータ22回転速度及び機能性流体デバイス29の機能性流体24の粘度をユーザの動きに応じた出力パターンに制御することができる。その結果、目的の触覚がユーザに提示される。すなわち、触覚制御部2は、モータ22及び機能性流体デバイス29の両方の触覚制御機能を有効にして触覚を提示する制御ができる。この場合、機能性流体デバイス29による抵抗力及びモータ22の反発速度の制御による触覚提示が可能になる。
【0051】
図4のデータD3は、選択部3が、モータ22の触覚制御機能を無効、且つ、機能性流体デバイス29の触覚制御機能を有効(モータoff、MRDデバイスon)とした場合に、データD1のうち触覚制御部2が参照するデータである。モータoff、MRDデバイスonの場合、触覚制御部2は、可動部14の変位量と機能性流体デバイス29(MRD)のトルクの値との対応データを参照する。この場合、触覚制御部2は、動き取得部1で取得された可動部14の変位量(指位置)に対応する機能性流体デバイス29(MRD)のトルクの値を、データD2の対応データを参照して決定することができる。機能性流体24は、変位量に応じて決定したトルクの値に対応する粘度に制御される。触覚制御部2は、モータ22を停止する。これにより、触覚制御部2は、機能性流体デバイス29の機能性流体24の粘度をユーザの動きに応じた出力パターンに制御することができる。その結果、目的の触覚がユーザに提示される。すなわち、触覚制御部2は、モータ22の触覚制御機能を無効とし、機能性流体デバイス29の触覚制御機能を有効にして触覚を提示する制御ができる。この場合、機能性流体デバイス29の抵抗力の制御による触覚提示が可能になる。
【0052】
図4において、データD4は、選択部3が、モータ22の触覚制御機能を有効、且つ、機能性流体デバイス29の触覚制御機能を無効(モータon、MRDデバイスoff)とした場合に、データD1のうち触覚制御部2が参照するデータである。モータon、MRDデバイスoffの場合、触覚制御部2は、可動部14の変位量とモータ22のトルクとの対応データ、及びモータ22の速度の設定値及び機能性流体デバイス29のトルクの設定値を参照する。この場合、触覚制御部2は、動き取得部1で取得された可動部14の変位量(指位置)に対応するモータ22のトルクの値を、データD2の対応データを参照して決定することができる。モータ22のトルクは変位量に応じて決定したトルクに制御される。モータの速度、及び、機能性流体24の粘度は、設定値が示す一定の値を保持するよう制御される。これにより、触覚制御部2は、モータ22のトルクをユーザの動きに応じた出力パターンに制御することができる。その結果、目的の触覚がユーザに提示される。すなわち、触覚制御部2は、モータ22の触覚制御機能を有効とし、且つ、機能性流体デバイス29の触覚制御機能を無効にして触覚を提示する制御ができる。この場合、モータ22の反発力の制御による触覚提示が可能になる。
【0053】
図4の例では、触覚制御部2は、制御情報として、第1触覚デバイスの触覚制御機能の出力パターンと、第2触覚デバイスの触覚制御機能の出力パターンを含むデータを取得する。触覚制御部2は、選択部3のそれぞれの触覚制御機能の有効又は無効の選択に応じて、取得した制御情報から必要な出力パターンを参照し、第1及び第2触覚デバイスの制御を行う。これにより、選択部3による選択に応じた制御の切り替えを効率よくできる。なお、触覚制御部2の処理は、上記例に限られない。例えば、触覚制御部2は、第1及び第2触覚制御機能のうち有効にする触覚制御機能の出力パターンを含む制御情報を取得してもよい。
【0054】
なお、制御情報は、
図4の例に限られない。
図4の例では、触覚制御機能の出力パターンとして、可動部14の変位量に応じた出力パターンが制御情報に含まれる。変形例として、例えば、時間経過に応じた出力パターン又は、外部からリアルタイムで受信する出力パターンが、制御情報に含まれてもよい。また、
図4の例では、機能性流体デバイス29の制御値を、トルクで表しているが、機能性流体デバイス29の制御値は、これに限られず、例えば、コイル25の電流値、粘度値、その他、機能性流体24の粘度を示す値であってもよい。また、
図4の例は、モータ22と可動部14の力の伝達経路上に機能性流体24がある構成を前提としている。この構成では、モータ22の力は機能性流体24を介して可動部14に伝達される。そのため、モータon、MRDデバイスoffの場合、モータの回転を可動部に伝達させるため、機能性流体デバイス29の設定値であるトルク(機能性流体24が伝達可能なトルク)を、モータ22のトルクの最大より大きくすることが望ましい。このように、設定値は、第1及び第2触覚デバイスの構成に応じて適宜設定される。
【0055】
図5は、
図3の触覚提示機20の構成例を示す図である。
図6は、
図5に示す機能性流体デバイス29の断面図である。
図7は、
図5に示す触覚提示機20の可動部14の動力伝達機構の例を示す図である。
【0056】
図5に示す例では、触覚提示機20は、本体26を有する。可動部14は、本体26に対して可動に取り付けられる。本体26には、機能性流体デバイス29及びモータ22が取り付けられる。
図6に示す例では、機能性流体デバイス29は、第1回転体29a、第2回転体29b、これらの間に封入された機能性流体24、及びコイル25を有する。第1回転体29aと第2回転体29bは、同軸に配置される。第1回転体29aは、第2回転体29bに対して相対的に回転可能に構成される。第1回転体29aは、可動部14と連動し、第2回転体29bは、モータ22と連動する。具体的には、第1回転体29aは、本体26に対して、ベアリング27を介して回転可能に支持される。第2回転体29bは、第1回転体29aに対してベアリング27aを介して回転可能に支持される。第1回転体29aに、可動部14が結合される。第1回転体29aと可動部14は、リンク14aを介して接続される。可動部14の運動は、第1回転体29aの回転と連動する。第2回転体29bにモータ22の出力軸22aが結合部材92を介して結合される。第2回転体29bは、モータ22の出力軸22aと同軸に配置される。第1回転体29aと第2回転体29bの間に機能性流体24が封入される。第1回転体29aと第2回転体29bの間では、機能性流体24を通じて動力が伝達される。機能性流体デバイス29は、機能性流体24の磁場又は電場を制御することで、機能性流体24の粘度を制御する。これにより、第1回転体29a及び第2回転体29bの回転に対する抵抗が制御される。すなわち、第1回転体29aと第2回転体29bの間の動力伝達の結合度合いが制御される。
【0057】
図6に示す例では、機能性流体デバイス29は、ヨーク25a及びヨーク25aに囲まれたコイル25を備える。第1回転体29aは、非磁性体の筒部と筒部から径方向内側に延びる磁性体で板状のフランジ29a1を有する。第2回転体29bは、モータ22の出力軸22aに結合される回転軸と回転軸から径方向外側に延びる板状のフランジ29b1を有する。第2回転体29bのフランジ29b1の軸方向の一方の面は、第1回転体29aのフランジ29a1と対向し、他方の面は、ヨーク25a及びコイル25に対向する。すなわち、軸方向から見て、第1回転体29aのフランジ29a1及び第2回転体29bのフランジ29b1が重なる領域内にコイル25及びヨーク25aが配置される。フランジ29a1と、フランジ29b1の間には、機能性流体24が封入される。ヨーク25a及びコイル25は、機能性流体24に磁界を発生させるよう配置される。
図6の矢印は、コイル25を流れる電流によって発生する磁界(磁力線)の向きを示している。フランジ29a1は、ヨーク25aと同程度の比透磁率の材料(例えば、鋼)で形成されてもよい。又は、フランジ29a1の機能性流体24に対向する面にヨークが設けられてもよい。
図6の例では、フランジ29a1、29b1及びヨーク25aは、磁性体(強磁性体)で構成され、第1回転体29aの筒部は、強磁性体以外の材料(非磁性体)で形成される。これにより、コイル25による磁束を機能性流体24の領域に集中させ、外周に漏れにくくすることができる。
【0058】
図7に示す例では、可動部14は、回転軸C2軸周りに回転可能に本体26に支持される。回転軸C2は、第1回転体29aの回転軸C1と平行である。回転軸C1及び回転軸C2は、いずれも本体26に支持される。可動部14の回転軸C2から離れた位置には、リンク14aの一方端が回転可能に接続される。リンク14aの他方端は、第1回転体29aの回転部分に回転可能に接続される。これにより、ユーザが可動部14を押すことによる可動部14の動きに連動して、第1回転体29aが回転する。また、モータ22により第1回転体29aが回転すると、可動部14も連動して動く。
【0059】
なお、触覚提示機20の構成は、
図5~
図7に示す例に限られない。例えば、モータの回転を、可動部14に伝達する機構は、リンクを用いた機構のほか、モータによって可動部に接続されたシリンダを動かす機構であってもよいし、ラックアンドピニオン機構であってもよい。モータ22の動力の伝達経路上には、例えば、可動部14がユーザを押す方向の回転を伝達するワンウェイクラッチが設けられてもよい。モータ22の動力の伝達経路上には、減速機が設けられてもよい。一例として、モータ22は、減速機と一体的に構成されたギヤードモータであってもよい。
【0060】
また、機能性流体デバイス29の構成は、
図5及び
図6の例に限られない。
図6の例では、コイル25及びヨーク25aが第1回転体29aに固定される。コイル25及びヨーク25aは、本体26に固定されてもよい。この場合、第1回転体29aは、コイル25及びヨーク25aに対して回転可能に支持される。又は、第1回転体29a及び第2回転体29bが、それぞれ、ベアリングを介して本体26に対して回転可能に支持されてもよい。また、第1回転体29aは、第2回転体29bと同軸の回転軸と、この回転軸から径方向外側に延びるフランジとを有してもよい。
【0061】
図5に示す例では、機能性流体24が磁気粘性流体である場合の例である。磁気粘性流体は、分散媒と分散媒に分散された磁性粒子を含む。磁性粒子は、磁化可能な金属材料とすることができる。その磁性粒子は、例えば、ナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)とすることが好ましい。磁性粒子の金属材料は、特に制限はないが、軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル及びパーマロイ等の合金が挙げられる。分散媒は、特に限定されるものではないが、一例として疎水性のシリコーンオイルを挙げることができる。
【0062】
機能性流体24として、電気粘性流体が用いられてもよい。この場合、
図5の構成において、コイル25及びヨーク25aの代わりに、機能性流体24に印可する電圧を制御する電圧制御装置(例えば、電圧制御回路)が設けられる。例えば、機能性流体24は、一対の電極の間に封入される。一対の電極間の電圧が電圧制御装置によって制御される。フランジ29a1及びフランジ29b1が、機能性流体24に電圧を印可する電極となるように構成されてもよい。電圧制御装置は、触覚制御部2からの指令に基づく電圧を機能性流体24に印可する。触覚制御部2は、機能性流体24の粘度の制御値として、機能性流体24に印可する電圧値を用いることができる。
【0063】
電気粘性流体は、外部から付与された電界(電圧)に応じて粘性が変化する機能性流体である。電気粘性流体は、基油(ベースオイル)と、基油に分散された微粒子を含んでもよい。基油は、シリコーンオイル等の非導電性オイルとすることができる。微粒子は、例えば、5ミクロン以下の直径を有する粒子であってもよい。微粒子は、例えば、シリカ、ポリスチレン、半導体微粒子、微結晶セルロース、又は双極性分子を有するポリマーで形成されてもよい。又は、電気粘性流体は、液晶などの単一物質からなる均一系電気粘性流体であってもよい。
【0064】
図8は、
図5に示す触覚提示機20の変形例を示す図である。
図8は、モータ22と可動部14の間の動力の伝達経路に機能性流体24が設けられない構成の例である。
図8の例では、機能性流体デバイス29は、第1回転体29aが本体26に固定して支持される。可動部14は、リンク14aを介して、第2回転体29bに接続される。可動部14の動きは、第2回転体29bと連動する。第2回転体29bは、モータ22と連動する。そのため、可動部14の動きは、モータ22の回転に連動する。機能性流体24は、可動部14の動きに対する抵抗となる。
【0065】
上記
図5~
図8の例では、触覚提示機20が、第1及び第2触覚デバイスとして、モータ22と機能性流体デバイス29を備える場合の例である。第1及び第2触覚デバイスの組み合わせはこれに限られない。例えば、触覚提示機20は、第1触覚デバイスとして、モータ22の替わりに、可動部14に振動を付与する振動アクチュエータを備えてもよい。例えば、
図5及び
図8において、モータ22を振動アクチュエータに置き換えてもよい。或いは、触覚提示機20が、第1及び第2触覚デバイスとして、モータ22と振動アクチュエータを備えてもよい。
【0066】
振動アクチュエータは、例えば、形状記憶合金を利用するSIA(Shape memory alloy Impact Actuator)又はピエゾ素子を利用した圧電アクチュエータ、偏心モータを利用するERM(Eccentric Rotating Mass)型アクチュエータ、又は、磁界中のコイルに交流電流を流して可動子を振動させるリニア共振型アクチュエータ(LRA:Linear Resonant Actuator)等であってもよい。
【0067】
図9は、
図1に示すシステム、及びその上位システムを含むシステム構成の例を示す機能ブロック図である。
図9の例では、上位システム30は、触覚制御システム10と通信可能である。上位システム30は、制御部31及び触覚情報送信部32を有する。上位システム30は、ユーザとのインタフェースとなる入出力装置40を有する。入出力装置40は、例えば、タッチパネル、ディスプレイ、スピーカ、キーボード、マウス、又は、コントローラの入出力デバイスである。上位システム30は、記憶部50にアクセス可能である。
【0068】
制御部31は、ユーザからの入力に応じて、ユーザに対して、視覚、聴覚、及び触覚の情報を出力する。これらの情報は、記憶部50に記録される(一例として、視覚DB、聴覚DB、及び触覚DB)。触覚DBには、触覚提示機20で出力可能な触覚を表すデータが触覚情報として含まれる。触覚情報は、例えば、
図4に示したような、触覚デバイスにおける触覚制御の出力パターンを示すデータセットを含んでもよい。制御部31は、触覚提示機20における第1及び第2触覚制御機能それぞれの有効又は無効についてのユーザの指定を、ユーザから受け付けてもよい。受け付けたユーザからの指定を示す情報(以下、ユーザ指定情報と称する)は、記憶部50に記録されてもよい。記憶部50において、出力パターンを示すデータセットは、仮想空間で表示されるオブジェクトに対応づけられて記録されてもよい。ユーザ指定情報は、オブジェクトに対応付けられてもよいし、ユーザデータに対応付けられてもよい。
【0069】
図10は、ユーザから、触覚提示機20の第1及び第2触覚制御機能それぞれの有効又は無効についての指定を受け付ける画面の例を示す図である。上位システム30は、
図10(a)に示すように、触覚提示機20を備える第1及び第2触覚デバイスのそれぞれに対する選択をユーザから受け付けてもよい。或いは、
図10(b)に示すように、第1及び第2触覚デバイスの触覚制御機能それぞれの有効又は無効の切り替えパターンによって実現される動作モードの選択を受け付けてもよい。
【0070】
なお、
図9の例では、上位システム30が、ユーザから指定を受け付ける形態であるが、触覚制御システム10が、第1及び第2触覚デバイスの触覚制御機能それぞれの有効又は無効について、ユーザからの指定を受け付けてもよい。また、ユーザからの指定を受け付ける形態は、画面への入力を受け付ける形態に限られない。例えば、触覚提示機20が備えるスイッチ又はボタン等の入力装置を介して、ユーザからの指定を受け付けることもできる。
【0071】
触覚情報送信部32は、制御部31からの指示に従って、触覚情報及びユーザ指定情報を触覚制御システム10に送信する。触覚制御システム10は、触覚情報送信部32から受信した触覚情報及びユーザ指定情報を用いて、触覚提示機20を制御する。触覚情報は、例えば、
図4のデータD1に例示される制御情報そのものであってもよい。又は、触覚制御システム10において、上位システム30から提供された触覚情報を基に、制御情報が生成されてもよい。
【0072】
触覚制御システム10は、動き取得部1が取得したユーザの動きを上位システム30に送信してもよい。この場合、上位システム30の制御部31は、ユーザの動きに応じて変形するオブジェクトの画像を、入出力装置40のディスプレイに表示させてもよい。また、制御部31は、ユーザの動きに応じて、変形するオブジェクトの画像の表示と同期して、オブジェクトに対応する音を出力してもよい。これにより、触覚制御システム10による触覚提示と、画像表示及び音出力を同期させることができる。
【0073】
上記の実施形態における触覚制御システムは、プロセッサ及びメモリを備えるコンピュータで実装することができる。動き取得部1、触覚制御部2、選択部3の各部の機能は、プロセッサがメモリのプログラムを実行することで実現できる。触覚制御システムは、複数のコンピュータで構成されてもよい。触覚制御システムを構成するコンピュータは、例えば、ICで構成されてもよい。触覚制御システム及び触覚提示機は、例えば、1つのユニットとして形成されてもよい。このユニットは、例えば、バッテリを備え、上位システムを構成するコンピュータ(スマートホン、PC又はサーバ等)と通信可能に構成されてもよい。又は、触覚制御システムの少なくとも一部が、触覚提示機と通信可能なコンピュータで構成されてもよい。例えば、触覚制御システムは、上位システムと同じコンピュータ(例えば、スマートホン)に実装されてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1:動き取得部、2:触覚制御部、3:選択部、10:触覚制御システム、20:触覚提示機、11:第1触覚デバイス、12:第2触覚デバイス、14:可動部