(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145487
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂配管部材及びその製造方法並びにプレハブ配管
(51)【国際特許分類】
F16L 47/14 20060101AFI20241004BHJP
F16L 23/12 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F16L47/14
F16L23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057862
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391033724
【氏名又は名称】シーケー金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】井関 知美
(72)【発明者】
【氏名】青山 航大
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一善
(72)【発明者】
【氏名】山本 匡秀
(57)【要約】
【課題】従来の樹脂配管部材のフランジ部は、例えば、高温多湿の環境下で使用される場合、風雨にさらされて使用される場合には、フランジ部に強度低下(熱安定性の低下)を生じる、という問題に鑑み、樹脂配管部材の端面の熱安定性を高める。
【解決手段】熱可塑性樹脂の筒状の配管本体10と、前記配管本体10と一体であり、前記配管本体10の一方の端部に位置し、前記配管本体10の開口部2の周縁から外方に張り出すフランジ部20と、を有し、前記フランジ部20の酸化誘導時間が、20分以上であることよりなる。前記フランジ部20が前記配管本体10の端縁に位置することが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の筒状の配管本体と、前記配管本体と一体であり、前記配管本体の一方の端部に位置し、前記配管本体の開口部の周縁から外方に張り出すフランジ部と、を有し、
前記フランジ部の酸化誘導時間が、20分以上である、樹脂配管部材。
【請求項2】
前記フランジ部が前記配管本体の端縁に位置する、請求項1に記載の樹脂配管部材。
【請求項3】
請求項1又は2の記載の樹脂配管部材を有する、プレハブ配管。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂配管部材の製造方法であって、
前記フランジ部の形状に対応するキャビティを有する金型に、熱可塑性樹脂の筒状の素管の端部を挿入し、前記素管の端部を前記熱可塑性樹脂の融点以上で加熱し、前記素管を前記金型への挿入方向に押し付けて、前記フランジ部を形成する工程を有し、
前記金型は、前記キャビティ内の気体を前記キャビティから排出する流路を有する、
樹脂配管部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂配管部材及びその製造方法並びにプレハブ配管に関する。
【背景技術】
【0002】
給水管等の配管や継手として、樹脂製の配管部材(樹脂配管部材)が用いられる。樹脂配管部材は、耐震性に優れるという利点を有する。
例えば、ポリエチレン製の樹脂配管部材は、いわゆる電気融着継手で配管同士を接続する必要がある。しかし、施行現場で電気融着継手による接続処理は、作業が煩雑となる場合がある。
また、樹脂配管部材の接続は、いわゆるバット融着により行われる。バット融着は、一対の樹脂配管の端部を加熱し、その端部を突き合せて融着する。バット融着では、融着部の品質が不安定であり、融着部のバリ除去が必要となる。加えて、施工現場にて、樹脂配管をバット融着機まで持ってくる必要があり、縦管等の配管には適用できない。
さらに、施工現場において、現場の施工作業の簡便化及び施工作業の迅速化(施工性の向上)が求められている。
こうした問題に対し、樹脂管の端部側に溶融成形された接続部(フランジ部)を有し、この接続部を用いて配管接続が可能であることを特徴とする樹脂配管部材が提案されている(特許文献1)。特許文献1の発明では、現場での施工性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発明では、例えば、高温多湿の環境下で使用される場合、風雨にさらされて使用される場合には、フランジ部に強度低下(熱安定性の低下)を生じる、という問題があった。
そこで、本発明は、熱安定性に優れる樹脂配管部材を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、検討した結果、以下の知見を得た。従来の技術では、樹脂管の端部を金型内で溶融しつつ、フランジ部を成形すると、フランジ部の表面にいわゆる「焼け」が生じる。そして、「焼け」が生じたフランジ部は、熱安定性が低下していた。
フランジ部の「焼け」は、金型内で溶融した樹脂が成形されるとき、金型と樹脂との間に残存していた空気が圧縮されて発熱することで、プラスチックが燃焼することに起因する。
以上の知見に基づき、フランジ部の焼けを抑制することで、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
熱可塑性樹脂の筒状の配管本体と、前記配管本体と一体であり、前記配管本体の一方の端部に位置し、前記配管本体の開口部の周縁から外方に張り出すフランジ部と、を有し、
前記フランジ部の酸化誘導時間が、20分以上である、樹脂配管部材。
<2>
前記フランジ部が前記配管本体の端縁に位置する、請求項1に記載の樹脂配管部材。
【0006】
<3>
<1>又は<2>に記載の樹脂配管部材を有する、プレハブ配管。
【0007】
<4>
<1>又は<2>に記載の樹脂配管部材の製造方法であって、
前記フランジ部の形状に対応するキャビティを有する金型に、熱可塑性樹脂の筒状の素管の端部を挿入し、前記素管の端部を前記熱可塑性樹脂の融点以上で加熱し、前記素管を前記金型への挿入方向に押し付けて、前記フランジ部を形成する工程を有し、
前記金型は、前記キャビティ内の気体を前記キャビティから排出する流路を有する、
樹脂配管部材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂配管部材によれば、熱安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂配管部材の側面視の部分断面図である。
【
図2】本発明に一実施形態に係る樹脂配管部材の正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るプレハブ配管の側面視の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載した数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
(樹脂配管部材)
本発明の樹脂配管部材は、筒状の配管本体と、配管本体の端部に位置するフランジ部とを有する。以下、本発明の樹脂配管部材の一実施形態について、図面を参照して説明する。
樹脂配管部材の用途としては、空調用、給水・給湯用、ガス用、燃料用、工場排水用の配管又は継手が好ましい。
【0012】
図1の樹脂配管部材1は、軸線O1を管軸とする筒状の配管本体10と、配管本体10の軸線O1方向の端部に位置するフランジ部20とを有する。配管本体10とフランジ部20とは、一体となっている。フランジ部20の端面22は、樹脂配管部材1の端面となっている。
配管本体10は、円筒状又は多角筒状のいずれでもよい。但し、樹脂配管部材1を給水管、排水管又はこれらの継手として用いる場合には、通常、配管本体10は円筒状である。
【0013】
配管本体10は、軸線O1方向で、フランジ部20に近づくに従い外径が大きくなる拡径部12を有する。本発明の樹脂配管部材1は、拡径部12を有しなくてもよい。
フランジ部20は、配管本体10の端縁で、開口部2の周縁から外方に張り出している。フランジ部20は、開口部2の周縁を周回している(
図2)。即ち、フランジ部20は、正面視で、軸線O1を中心とする環状となっている。
【0014】
樹脂配管部材1を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリエステル(熱可塑性ポリエチレンテレフタレート等)等を例示できる。中でも、耐震性をより高め、耐久性をより高める観点から、樹脂配管部材1を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
オレフィン系樹脂管は硬質塩化ビニル管に比べてJIS K 6815-1,JIS K 6815-3に従って測定される引張破断伸びが高い。硬質塩化ビニル管の引張破断伸びが50~150%であるのに対して、オレフィン系樹脂管の引張破断伸びは350%以上である。特に、ISO/TR9080に規定する外挿方法で、PE100の高密度ポリエチレンの管は、引張破断伸びが500%以上となるため、地震によって損傷するのをより良好に抑制することができる。
ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリブテン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリαオレフィン等が好適である
【0015】
熱可塑性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、例えば、0.1~25g/10分が好ましく、0.1~10g/10分がより好ましく、0.29~0.45g/10分がさらに好ましくい。MFRが上記下限値以上であると、フランジ部20をより容易に形成できる。MFRが上記上限値以下であると、熱安定性をより高められる。
MFRは、JIS K 7210:1999に従い、試験温度220℃、試験荷重10kgで測定できる。
【0016】
熱可塑性樹脂の比重は、特に限定されないが、例えば、942~953kg/m3である。
熱可塑性樹脂の比熱は、特に限定されないが、例えば、1.9~2.3kJ/kg・[K]である。
熱可塑性樹脂の熱伝導率は、特に限定されないが、例えば、0.46~0.5W/m・Kである。
【0017】
熱可塑性樹脂は、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤等の添加剤を含む組成物でもよい。
【0018】
熱可塑性樹脂の融点(即ち、樹脂配管部材1の溶融温度)は、150~260℃が好ましく、180~240℃がより好ましい。熱可塑性樹脂の融点が上記下限値以上であると、後述する製造方法において、端面22での焼けの発生をより良好に抑制できる。熱安定性をより高められる。熱可塑性樹脂の融点が上記上限値以下であると、後述する製造方法において、フランジ部20をより容易に形成できる。
【0019】
樹脂配管部材1は、外周面及び内周面の少なくとも一方に表層を有する多層構造でもよい。例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を含有する表層を有することで、樹脂配管部材1は、空調用、給湯用、ガス用又は燃料用としてより好適である。エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を含有する表層とすることで、水素や酸素、プロパン、ブタン等のガスや、ガソリンやベンゼン等の炭化水素を透過しにくくなるためである。
表層は、例えば、無機繊維及び有機繊維の少なくとも一方を含んでもよい。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリコン・チタン・炭素複合繊維、ボロン繊維、又は金属繊維等が挙げられる。有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、又はポリアミド繊維等が挙げられる。表層が、これらの繊維を含むと、樹脂配管部材1の引張強度を高め、熱膨張をより抑制できる。また、表層は、フッ素樹脂を含んでもよい。表層がフッ素を含むことで、酸やアルカリ等に対する耐性(耐薬品性)を高められる。
また、上記表層と同様の層を樹脂配管部材1の壁内に設けてもよい。
【0020】
樹脂配管部材1の長さ(一方の端面22から他方の端面までの距離)は、用途に応じて適宜決定する。
【0021】
樹脂配管部材1の配管本体10の太さ(但し、拡径部12を除く)は、用途等に応じて適宜決定される。例えば、配管本体10が給水管又は排水管であれば、JIS規格の規定に準じて、配管本体10の外径(呼び径)R1を決定してもよい。外径R1は、27~216mmが好ましく、45~114mmがより好ましい。
配管本体10の内径r1は、呼び径R1に応じて適宜決定する。
【0022】
フランジ部20の厚さt1は、呼び径R1、フランジ部20に求める強度等を勘案して決定される。厚さt1は、例えば、10~50mmが好ましく、15~30mmがより好ましい。厚さt1が上記下限値以上であると、フランジ部20の強度をより高められる。厚さt1が上記上限値以下であると、フランジ部20を他の部材のフランジ部と突き合せ、これをクランプ等で固定する際に、呼び径R1に応じた汎用のクランプを利用できる。
【0023】
フランジ部20の幅w1は、呼び径R1、フランジ部20に求める強度等を勘案して決定される。幅w1は、例えば、15~90mmが好ましく、20~75mmがより好ましい。幅w1が上記下限値以上であると、引抜応力に対する剛性をより高められる。引抜応力は、接続対象物と接続された状態で、樹脂配管部材1を接続対象物から離れる方向に引っ張った時に生じる応力である。幅w1が上記上限値以下であると、フランジ部20の剛性をより高められる。これは、接続対象物に対して、フランジ部20をボルト等で固定する場合、ボルト同士の間隔が大きくなる。ボルト同士の間隔が大きくなると、ボルトの締め付け力を高める必要が生じ、フランジ部20への負荷が大きくなるためである。加えて、幅w1が上記上限値以下であると、樹脂配管部材1の最大径が過度に大きくならず、よりコンパクトにできる。
幅w1は、正面視で、フランジ部20の内縁23から外縁24までの距離である。
【0024】
フランジ部20の酸化誘導時間(OIT:Oxidation Induction Time)は、20分以上であり、25分以上が好ましく、30分以上がさらに好ましい。フランジ部20のOITが上記下限値以上であると、熱可塑性樹脂の焼けが良好に抑制され、熱安定性を高められる。フランジ部20のOITの上限値は、特に限定されないが、例えば、120分まで測定する。
OITは、後述する製造方法における製造条件、筒状体の熱可塑性樹脂の種類、組成又はこれらの組み合わせで調節できる。
【0025】
次に、OITの測定方法の一例について、説明する。
フランジ部20から切片を得て、測定試料とする。
測定試料の採取位置は特に限定されないが、例えば、
図2に示す位置S1~S5とする。位置S1、位置S2、位置S3は、軸縁O1回りに120°間隔となっている。位置S1、位置S2及び位置S3からは、端面22を含む測定試料を採取する。
位置S4は、軸線O1と位置S2との間のフランジ部20の内側面27に位置する。位置S4からは、内側面27を含む測定試料を採取する。
位置S5は、軸線O1から位置S2に向かう方向で、フランジ部20の外側面25に位置する。位置S5からは、外側面25を含む測定試料を採取する。
【0026】
OITの測定は、例えば、日本水道協会(JWWA)規格JWWA K 144:2009「水道配水用ポリエチレン管」及びJWWA K 145の附属書Bに従って行う。フランジ部20の端面22から、5~30mgの測定試料を切り出す。測定試料をDSC装置のセルに入れ、窒素流を毎分50ml±5mlに設定する。前記セルを毎分20℃の速度で昇温した後、200℃±0.5℃で等温走査し、温度を安定させる。温度安定後、酸素雰囲気下に置き換える。酸化による発熱の最大傾斜点に達するまで、DSC曲線を記録する。最大傾斜点におけるDSC曲線の接線と、ベースラインとの交点からOITを求める。
【0027】
本実施形態の樹脂配管部材1は、開口部2の周縁(即ちフランジ部20の内縁)23の頂角(即ち、内側面27と端面22との交点)が略90°となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、内縁23が面取りされてテーパー状となっていてもよいし、端面22及び内縁23がR面(曲面)であるフィレットとなっていてもよい。
樹脂配管部材1は、フランジ部20の外縁24の頂角(即ち、外側面25と端面22との交点)が略90°となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、外縁24が面取りされて、テーパー状となっていてもよいし、端面22及び外縁24がR面(曲面)であるフィレットとなっていてもよい。
また、樹脂配管部材1は、その端縁にフランジ部20が位置している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、フランジ部が樹脂配管部材1の端縁の近傍に位置していてもよい。
【0028】
(樹脂配管部材の製造方法)
本発明の樹脂配管部材の製造方法は、熱可塑性樹脂の筒状体の端部を金型に挿入し、筒状体の端部を熱可塑性樹脂の融点以上で加熱し、筒状体を金型への挿入方向に押し付けて、接続部を形成する工程(フランジ成形工程)を有する。
以下、樹脂配管部材の製造方法の一例を挙げて説明する。
【0029】
本実施形態の樹脂配管部材の製造方法は、例えば、フランジ成形工程と、脱型工程と、を有する。
フランジ成形工程は、熱可塑性樹脂の筒状体(以下、「素管」ということがある)の端部にフランジ部を形成する工程である。
素管は、一方の端縁から他方の端縁にかけて、略同一の太さの部材である。素管を構成する熱可塑性樹脂は、樹脂配管部材を構成する熱可塑性樹脂である。
【0030】
フランジ成形工程に用いる金型の例について、図面を参照して説明する。
図3の金型50は、ベース型52と開閉型54とを有する。ベース型52と開閉型54とは、内部にキャビティ51を形成している。キャビティ51は、フランジ部20に対応する形状である。開閉型54は、ベース型52に対して、X方向に移動することで、キャビティ51を開閉する。
金型50は挿入口59を有している。ベース型52は、底面57から挿入口59の方向に立ち上がる柱部56を有する。柱部56は円柱状である。
ベース型52と開閉型54とを組み合わせた状態で、金型50は、ベース型52と開閉型54との境界に、流路60を有する。流路60は、キャビティ51と金型50の外部とを連通している。金型50において、ベース型52と開閉型54との境界は、側壁53に位置している。即ち、流路60は、ベース型52の内部の底面57と離間している。
【0031】
流路60は、金型50の内外を連通できればよく、いわゆる貫通孔でもよいし、スリットでもよい。
流路60の形状は、特に限定されず、流路60の両開孔を結ぶ方向に直交する断面(横断面)形状が、矩形等の多角形でもよいし、円形でもよい。
流路60の横断面の大きさは、溶融した熱可塑性樹脂が流路60に侵入しにくく、かつキャビティ51内の気体(例えば、空気)が流路60から金型50外に排出される大きさである。例えば、流路60の開孔の大きさは、0.05~0.4mmが好ましい。開孔の大きさが上記下限値以上であると、ガスヤニによる閉塞を防止できる。開孔の大きさが上記上限値以下であると、フランジ成形工程において、溶融した熱可塑性樹脂が流路60に流入するのを防止できる。流路60の断面が円形であれば、開孔の大きさは、流路60の断面の直径である。流路60の断面が多角形であれば、開孔の大きさは、流路60の断面形状に対する外接円の直径である。流路60がスリットである場合、開孔の大きさは、流路60の幅(開孔面の短手方向)である。
【0032】
まず、素管を得る。素管は、予め成形されたものを用意してもよいし、常法に従って製造してもよい。
【0033】
素管の端部を挿入口59からキャビティ51内に挿入する。この際、柱部56を素管の内部に受け入れつつ、キャビティ51内に素管を挿入する。素管をキャビティ51内に挿入する前に、素管を予め加熱してもよい。
次いで、金型50内で素管の端部を加熱して、溶融させる。素管の端部が溶融した状態で、素管の端部を底面57に押し付ける。即ち、素管を金型50への挿入方向に押し付ける。素管の端部を底面57に押し付けると、溶融した端部の熱可塑性樹脂がキャビティ内に広がり、フランジ部20の形状となる(フランジ成形工程)。この時、キャビティ51内の空気が、流路60内及び金型50の外部へ流れ、キャビティ51内の空気が除去される。キャビティ51内に空気が除去されると、素管と金型との間に存在する空気が過加熱になるのを防止して、焼けを防止する。
こうして、金型50内でフランジ部20を形成して、素管を樹脂配管部材1とする。
なお、底面57に当接した面が、樹脂配管部材1の端面となる。
【0034】
次いで、脱型工程では、樹脂配管部材1を冷却した後、金型50を開いて、樹脂配管部材1を取り出す。
【0035】
フランジ部成形用の金型は上述の形態に限られない。
例えば、
図4の金型50aのように、ベース型52aが流路60を有してもよい。ベース型52aにおいて、流路60は、底面57に接している。即ち、流路60の内面の一部は、底面57と面一となっている。
キャビティ51内において、底面57と側壁53の内面との境界部分には、空気がたまりやすい。流路60が底面57に接していることで、成形工程で、キャビティ51から空気をより容易に除去できる。
【0036】
あるいは、
図5の金型50bのように、ベース型52bが中子58を有してもよい。中子58は、底面57から挿入口59に向かう柱部を有する部材であり、ベース型52bに対して、X方向に移動可能となっている。金型50bの流路60は、開閉型54とベース型52との境界に位置している。
金型50bを用いる場合、脱型工程では、開閉型54をベース型52bから離れる方向に移動させ、かつ中子58を開閉型54から離れる方向に移動して、樹脂配管部材1を取り出す。
フランジ部20の端面22に凹条(例えば、軸線O1回りに周回する凹条)を形成する場合、係る凹条に空気が溜まりやすくなる。このため、中子58をさらに分割して、中子58に流路60と同様の流路を形成してもよい。
【0037】
(プレハブ配管)
本発明のプレハブ配管は、本発明の樹脂配管部材を有する。
プレハブ配管の一例について、図面を参照して説明する。
図6のプレハブ配管100は、樹脂配管部材101と、受口部121と、ベント部122と、配管123と、を有する。ベント部122は、樹脂配管部材101と配管123とを接続している。受口部121は、配管123の端部に位置している。
【0038】
受口部121は、いわゆる電気融着継手であり、内部に電熱線を有している。受口部121は、電熱線と接続された端子124を有する。受口部121は、配管123と融着している。
ベント部122は、配管123及び樹脂配管部材101と融着している。
樹脂配管部材101は、端縁にフランジ部20を有している。
【0039】
図に示すプレハブ配管100は一例であり、継手として公知の種々の構成を採用することができる。また、フランジ部20には、配管に接続される公知の構成が接続されていてもよい。
【0040】
本実施形態のプレハブ配管によれば、本発明の樹脂配管部材のフランジ部と、他の設備(例えば、ポンプ、給湯器、他のプレハブ配管等)のフランジ部と、を突き合せ、これをクランプで固定することで、施工現場で容易に配管作業を行える。
加えて、施工現場にてフランジ部を作製する必要がないため、施工現場でのバット溶接を不要にできる。このため、プレハブ配管のフランジ部近傍には、バット溶接に伴うビードが形成されない。
【0041】
なお、本実施形態のプレハブ配管100において、受口部121と、ベント部122と、配管123と、樹脂配管部材101とは、互いに融着している。即ち、受口部121と、ベント部122と、配管123と、樹脂配管部材101は、いずれも樹脂材料で形成されているが、本発明はこれに限らない。受口部121、ベント部122及び配管123のいずれかが金属材料で形成された部材であり、異種接続される構成であってもよい。
【0042】
上記金属材料としては、例えば、鉄、真鍮(黄銅)、銅、ステンレス、アルミニウム、チタン、銀合金等が挙げられる。また、金属管の内面は、フッ素樹脂などの樹脂材料によりライニング加工されていてもよい。
【実施例0043】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0044】
(使用原料)
・熱可塑性樹脂A:ポリエチレン(MFR=0.41g/10分)。
【0045】
(実施例1)
熱可塑性樹脂Aを溶融し、押し出して、100A(呼び径=114mm)の素管を得た。
図3の金型50と同様の金型Aを用い、素管を金型に挿入した。金型内で素管を220℃に加熱して、素管を溶融しつつ、素管をベース金型の底面に押し付けて、フランジ部20(幅w1=28.4m、厚さt1=25mm)を形成して、本例の樹脂配管部材を得た。
得られた樹脂配管部材のフランジ部から測定資料を採取し(
図2参照)、フランジ部のOITを測定した。また、樹脂配管部材のフランジ部の端面を目視で観察した。これらの結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2)
金型を
図4の金型50aと同様の金型Bとした以外は、実施例1と同様にして本例の樹脂配管部材を得た。
得られた樹脂配管部材のフランジ部のOITを測定した。また、樹脂配管部材のフランジ部の端面を目視で観察した。これらの結果を表1に示す。
【0047】
(実施例3)
金型を
図5の金型50bと同様の金型Cとした以外は、実施例1と同様にして本例の樹脂配管部材を得た。
得られた樹脂配管部材のフランジ部のOITを測定した。また、樹脂配管部材のフランジ部の端面を目視で観察した。これらの結果を表1に示す。
【0048】
(比較例1)
図3の金型50の流路60を塞いだ金型Dを用いた以外は、実施例1と同様にして本例の樹脂配管部材を得た。
得られた樹脂配管部材のフランジ部のOITを測定した。また、樹脂配管部材のフランジ部の端面を目視で観察した。これらの結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
表1に示すように、実施例1~3は、いずれも5つの測定試料のOITが20分以上であり、フランジ部の端面に焼けを生じていなかった。
フランジ部の端面のOITが15分である比較例1は、焼けが発生していた。
これらの結果から、本発明を適用することで、焼けの発生を抑制し、熱安定性を高められることを確認できた。