(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145488
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】保護カバー及び盤間母線接続部
(51)【国際特許分類】
H02B 1/20 20060101AFI20241004BHJP
H02G 15/10 20060101ALI20241004BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02B1/20 E
H02G15/10
H02G1/14
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057863
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】縄 幸太
(72)【発明者】
【氏名】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】李 国紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩正
【テーマコード(参考)】
5G016
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5G016AA09
5G016DA30
5G355AA10
5G355BA11
5G375AA20
5G375BA26
5G375CA19
5G375CB05
5G375DB04
5G375DB16
5G375EA17
(57)【要約】
【課題】作業者によらず、安定した品質で、かつ、短時間で施工できる保護カバー及び盤間母線接続部を提供する。
【解決手段】保護カバーは、2分割構造を構成する第1カバー体及び第2カバー体と、第1カバー体及び第2カバー体を係止する係止部材と、を備える。第1カバー体及び第2カバー体はそれぞれ、長手方向に延在する半筒状のカバー本体部と、カバー本体部の長手方向の両端に設けられ、ブッシングに固定されたケーブル保護金具に取り付けられる接続口カバー部と、長手方向に延在するようにカバー本体部及び/又は接続口カバー部に連設され、長手方向と直交する第1方向に突出する接合フランジ部と、を有する。第1カバー体の接合フランジ部と第2カバー体の接合フランジ部とが当接した状態で、係止部材によって接合される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力機器に設けられたブッシング間を電気的に連絡する盤間母線用の保護カバーであって、
2分割構造を構成する第1カバー体及び第2カバー体と、
前記第1カバー体及び前記第2カバー体を係止する係止部材と、を備え、
前記第1カバー体及び前記第2カバー体はそれぞれ、
長手方向に延在する半筒状のカバー本体部と、
前記カバー本体部の前記長手方向の両端に設けられ、前記ブッシングに固定されたケーブル保護金具に取り付けられる接続口カバー部と、
前記長手方向に延在するように前記カバー本体部及び/又は前記接続口カバー部に連設され、前記長手方向と直交する第1方向に突出する接合フランジ部と、を有し、
前記第1カバー体の前記接合フランジ部と前記第2カバー体の前記接合フランジ部とが当接した状態で、前記係止部材によって接合される、
保護カバー。
【請求項2】
前記第1カバー体及び前記第2カバー体が接合された状態において、前記接続口カバー部における前記第1方向の長さは、前記長手方向及び前記第1方向に直交する第2方向の長さより小さい、
請求項1に記載の保護カバー。
【請求項3】
前記第1カバー体及び前記第2カバー体の前記接合フランジ部の間、並びに、前記接続口カバー部と前記ケーブル保護金具との間に、コーキング材が介在する、
請求項1又は2に記載の保護カバー。
【請求項4】
前記接続口カバー部は、内周面に周方向に沿って形成され前記コーキング材が配置されるコーキング材塗布部を有する、
請求項3に記載の保護カバー。
【請求項5】
前記接合フランジ部は、接合面に、分離用の切欠き部を有する、
請求項1又は2に記載の保護カバー。
【請求項6】
前記接合フランジ部は、接合面に、位置決め用の凹凸構造を有する、
請求項1又は2に記載の保護カバー。
【請求項7】
前記第1カバー体及び前記第2カバー体は、前記カバー本体部と前記接合フランジ部との接続部位に、前記長手方向に離間して配置される、複数の補強リブを有する、
請求項1又は2に記載の保護カバー。
【請求項8】
前記第1カバー体及び前記第2カバー体は、同一形状である、
請求項1又は2に記載の保護カバー。
【請求項9】
前記第1カバー体及び前記第2カバー体は、絶縁性材料で形成されている、
請求項1又は2に記載の保護カバー。
【請求項10】
前記係止部材は、前記第1カバー体の前記接合フランジ部と前記第2カバー体の前記接合フランジ部とを貫通して係止するプッシュリベットである、
請求項1又は2に記載の保護カバー。
【請求項11】
電力機器のブッシング間を電気的に連絡する盤間母線接続部であって、
盤間母線と、
前記ブッシングに固定されたケーブル保護金具と、
前記盤間母線の外周に設けられた保護カバーと、を備え、
前記保護カバーは、
2分割構造を構成する第1カバー体及び第2カバー体と、
前記第1カバー体及び前記第2カバー体を係止する係止部材と、を備え、
前記第1カバー体及び前記第2カバー体はそれぞれ、
長手方向に延在する半筒状のカバー本体部と、
前記カバー本体部の長手方向の両端に設けられ、前記ケーブル保護金具に取り付けられる接続口カバー部と、
前記長手方向に延在するように前記カバー本体部及び/又は前記接続口カバー部に連設され、前記長手方向と直交する第1方向に突出する接合フランジ部と、を有し、
前記第1カバー体の前記接合フランジ部と前記第2カバー体の前記接合フランジ部とが当接した状態で、前記係止部材によって接合される、
盤間母線接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置等の電力機器における盤間接続に好適な保護カバー及び盤間母線接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キュービクル形ガス絶縁開閉装置(以下、「C-GIS」と称する。)には、遮断器や断路器等の複数の機器が設けられている。それぞれの機器には、受給電を行うためのブッシングが設けられている。ブッシングは、例えば、機器の回路ユニットに電気的に接続される内部導体と絶縁筒が一体的に形成された構造を有する。ブッシングは、例えば、C-GISの筐体の上面に配置される。
【0003】
ブッシング間は、絶縁母線により相互に連絡される。ブッシング間の接続は「盤間接続」と呼ばれ、盤間接続に用いられる絶縁母線は、「盤間母線」と呼ばれる。盤間母線は、例えば、C-GISの筐体の上面に沿って、筐体の上面から所定の間隙を有するように配置される。
【0004】
短尺(例えば、盤間1000mm未満)の盤間母線には、例えば、66kV級のCVケーブルから外被(ケーブルシースとも呼ばれる)、遮へい層及び外部半導電層を除去し、半導電層を再生したケーブルコアが適用される。盤間母線の外周面は、一方のブッシングに固定されているケーブル保護金具から他方のブッシングに固定されているケーブル保護金具にわたって金属遮へい処理が施され、金属遮へいの外周面に防食層が形成されることにより保護される。
【0005】
盤間母線に使用されるケーブルの半導電層を再生する場合には、例えば、半導電ポリエチレンテープが巻回され、これを加熱モールドすることにより形成される。金属遮へい処理は、半導電層を再生したケーブルを盤間母線としてブッシングに接続した後に、再生した盤間母線の半導電層の外周に当該半導電層に接触するようにらせん状に編組線を巻き回し、編組線の両端を一方と他方それぞれのケーブル保護金具に接続することで行われる。また、金属遮へい処理が行われた後の半導電層の外周面には、自己融着性絶縁テープ及びPVCテープ等を巻き付けることにより、防食層が形成される。
【0006】
特許文献1には、予めケーブルコアからなる短尺の盤間母線を、一対のT型ブッシング間に配置するとともに、2分割構成の保護カバーをケーブル保護金具間に跨がるように配置し、保護カバーの外周にシール体(防食層)を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年では、C-GIS等の電力機器の小型化を図るために、C-GISの筐体上面と盤間母線との間隙も小さくなっている。そのため、防食層を形成する作業が非常に煩雑であり、作業者の熟練度によって防食層の品質にばらつきが生じる虞がある。筐体上面と盤間母線(ケーブルコア)との間隙にロール状に巻かれた絶縁テープをそのまま通すことができない場合、例えば、ある程度の長さで絶縁テープを切断した上で、盤間母線の外周面に巻回して防食層が形成される。
【0009】
本発明の目的は、作業者の熟練度によらず、安定した品質で、かつ、短時間で施工できる保護カバー及び盤間母線接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る保護カバーは、
電力機器に設けられたブッシング間を電気的に連絡する盤間母線用の保護カバーであって、
2分割構造を構成する第1カバー体及び第2カバー体と、
前記第1カバー体及び前記第2カバー体を係止する係止部材と、を備え、
前記第1カバー体及び前記第2カバー体はそれぞれ、
長手方向に延在する半筒状のカバー本体部と、
前記カバー本体部の前記長手方向の両端に設けられ、前記ブッシングに固定されたケーブル保護金具に取り付けられる接続口カバー部と、
前記長手方向に延在するように前記カバー本体部及び/又は前記接続口カバー部に連設され、前記長手方向と直交する第1方向に突出する接合フランジ部と、を有し、
前記第1カバー体の前記接合フランジ部と前記第2カバー体の前記接合フランジ部とが当接した状態で、前記係止部材によって接合される。
【0011】
本開示に係る盤間母線接続部は、
電力機器のブッシング間を電気的に連絡する盤間母線接続部であって、
盤間母線と、
前記ブッシングに固定されたケーブル保護金具と、
前記盤間母線の外周に設けられた保護カバーと、を備え、
前記保護カバーは、
2分割構造を構成する第1カバー体及び第2カバー体と、
前記第1カバー体及び前記第2カバー体を係止する係止部材と、を備え、
前記第1カバー体及び前記第2カバー体はそれぞれ、
長手方向に延在する半筒状のカバー本体部と、
前記カバー本体部の長手方向の両端に設けられ、前記ケーブル保護金具に取り付けられる接続口カバー部と、
前記長手方向に延在するように前記カバー本体部及び/又は前記接続口カバー部に連設され、前記長手方向と直交する第1方向に突出する接合フランジ部と、を有し、
前記第1カバー体の前記接合フランジ部と前記第2カバー体の前記接合フランジ部とが当接した状態で、前記係止部材によって接合される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業者の熟練度によらず、安定した品質で、かつ、短時間で盤間母線接続部を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る盤間母線接続部を示す側面図である。
【
図2】
図2は、盤間母線接続部を示す斜視図である。
【
図3A】
図3A、盤間母線接続部の内部構造を示す断面図である。
【
図4】
図4は、保護カバーの構造を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、保護カバーの構造を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、保護カバーの構造を示す半断面図である。
【
図7】
図7は、保護カバーの構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る盤間母線接続部1を示す側面図である。
図2は、盤間母線接続部1を示す斜視図である。
図3Aは、盤間母線接続部1の内部構造を示す断面図である。
図3Bは、
図3Bは、
図3Aの一部を拡大した詳細断面図である。
図3Bは、第1ブッシング22A側との接続部分を拡大して示している。
【0016】
盤間母線接続部1は、C-GIS等の電力機器に設けられる複数の機器間(盤間)を電気的に接続する。本実施の形態では、盤間母線接続部1により、機器に設けられた第1ブッシング22Aと第2ブッシング22Bとを接続する場合について説明する。第1ブッシング22A及び第2ブッシング22Bは、電力ケーブルの相ごとに設けられる。第1ブッシング22Aのケーブル接続部には第1ケーブル保護金具21Aが設けられ、第2ブッシング22Bのケーブル接続部には第2ケーブル保護金具21Bが設けられる。
【0017】
以下において、第1ブッシング22Aと第2ブッシング22Bを区別しない場合、「ブッシング22A、22B」と称する。同様に、第1ケーブル保護金具21Aと第2ケーブル保護金具21Bを区別しない場合、「ケーブル保護金具21A、21B」と称する。
【0018】
図1等に示すように、盤間母線接続部1は、盤間母線30(
図3参照)、ケーブル保護金具21A、21B、及び、保護カバー10等を備える。盤間母線接続部1は、ブッシング22A、22B及びケーブル保護金具21A、21Bに盤間母線30の長手方向両側の端末部が装着され、盤間母線30の外周に保護カバー10が取り付けられることにより、組み立てられる。盤間母線接続部1は、例えば、ブッシング22A、22B間の長さW(盤間長さ)が1000mm未満である短尺の盤間接続用として好適である。
【0019】
ブッシング22A、22Bは、図示を省略するが、例えば、内部導体及び絶縁筒がモールド成型により一体的に形成された構成を有する。内部導体の一端は、C-GISに設けられた機器の回路ユニットに電気的に接続され、他端は、盤間母線30の導体に電気的に接続される。絶縁筒は、例えば、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂や繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)など)で形成される。ブッシング22A、22Bは、例えば、T字形状を有し、C-GISの筐体Cの上面に配置される。
【0020】
ブッシング22A、22BがT字形状の場合は、機器の外側で内部導体が分岐し、一方は盤間母線30の導体に電気的に接続され、他方は盤間母線30を接続後に絶縁栓などで蓋をした状態で使用される。ブッシング22A、22B間の長さWは、第1ブッシング22Aの機器内に配置される内部導体の中心と、第2ブッシング22Bの機器内に配置される内部導体の中心との間の水平方向の距離である。
【0021】
盤間母線30は、例えば、66kV級のCVケーブルから外被(ケーブルシースとも呼ばれる)、遮へい層及び外部半導電層を除去し、半導電層を形成(再生とも呼ばれる)したケーブルコアで構成される。ケーブルコアの外周面には、金属遮へい層が設けられる(図示略)。盤間母線30において再生される半導電層は、例えば、半導電ポリエチレンテープが巻回され、これを加熱モールドすることにより形成される。金属遮へい層は、盤間母線30の半導電層の全長にわたって当該半導電層に接触するように当該半導電層の外周にらせん状に編組線を巻き回すことにより形成され、第1ケーブル保護金具21A及び第2ケーブル保護金具21Bと電気的に接続される。
【0022】
図示を省略するが、盤間母線30の両端には、導体接続端子、ストレスコーン、ストレスコーン圧縮装置等の接続材料が取り付けられる。盤間母線30は、これらの接続材料を介して、ブッシング22A、22Bと接続される。
【0023】
ケーブル保護金具21A、21Bは、例えば、二段円筒形状を有する。具体的には、ケーブル保護金具21A、21Bは、ブッシング22A、22Bに固定される大径部211と、保護カバー10が取り付けられる小径部212と、を有している。小径部212の開口端には、スペーサー213が配置されている。
【0024】
保護カバー10は、従来の防食層に替えて設けられる保護部材であり、盤間母線30のケーブル保護金具間の露出部分の外周を覆うように配置される。保護カバー10は、例えば、樹脂の射出成形により形成される。保護カバー10は、絶縁性の樹脂材料で形成される。保護カバー10の樹脂材料としては、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂又はPVC(ポリ塩化ビニル)などの絶縁樹脂が好適であるが、難燃ABSを用いてもよい。
【0025】
このように、盤間母線接続部1は、C-GIS(電力機器)のブッシング22A、22B間を電気的に連絡する盤間母線接続部であって、盤間母線30と、ブッシング22A、22Bに固定されたケーブル保護金具21A、21Bと、盤間母線30の外周に設けられた保護カバー10と、を備えている。
【0026】
図4、
図5は、保護カバー10の構造を示す斜視図である。
図5では、第1カバー体10A及び第2カバー体10Bを、接合する前の分解した状態で示している。
図6は、保護カバー10の一方の接続口カバー部12の近傍を拡大して示す半断面図である。
図6では、第1カバー体10Aを断面で示している。
図7は、保護カバー10を一方の接続口カバー部12側から見た正面図である。
【0027】
図4~
図7に示すように、保護カバー10は、2分割構造を構成する第1カバー体10A及び第2カバー体10Bを有する。第1カバー体10A及び第2カバー体10Bは、係止部材15によって係止され、固定される。以下において、第1カバー体10Aと第2カバー体10Bを区別しない場合は、「カバー体10A、10B」と称する。
【0028】
カバー体10A、10Bは、それぞれ、カバー本体部11、接続口カバー部12、接合フランジ部13、14等を有する。第1カバー体10A及び第2カバー体10Bは、ほぼ同様の構成を有する。カバー体10A、10Bは、比較的に肉薄に形成され、C-GISの筐体Cと盤間母線30との間隙G(
図1参照)に容易に配置できるようになっている。
【0029】
カバー本体部11は、長手方向に延在する半円筒形状を有する。カバー本体部11は、盤間母線30のケーブル保護金具21A、21Bから露出している部分の外周面を覆う。カバー本体部11の内径は、盤間母線30の外径よりも大きければよい。
【0030】
接続口カバー部12は、カバー本体部11の長手方向の両端に設けられる。接続口カバー部12は、カバー本体部11の両端に径方向外側に膨出するように形成される。接続口カバー部12の内径は、カバー本体部11の内径よりも大きく、さらに保護カバー10を取り付けるケーブル保護金具21A、21Bの小径部212の外径よりも大きい。接続口カバー部12は、ケーブル保護金具21A、21Bの小径部212の外周面に嵌着される。
【0031】
接合フランジ部13、14は、カバー体10A、10Bの全長にわたって長手方向に延在して形成される。接合フランジ部13、14は、長手方向と直交する第1方向において互いに離間するように、鍔状に突出する。接合フランジ部13、14には、長手方向に沿って所定の間隔で、ピン挿入孔131、141が形成される。カバー体10A、10Bは、接合フランジ部13、14の接合面同士を当接させた状態で、ピン挿入孔131に係止部材15が挿入されることによって係止され、カバー体10A、10Bが接合される。
【0032】
なお、接合フランジ部13、14は、第1カバー体10Aと第2カバー体10Bにおいて長手方向の同じ位置に設けられていればよく、例えば、カバー本体部11又は接続口カバー部12に部分的に形成されてもよい。
【0033】
係止部材15は、例えば、ピン頭部を押すことで脚部が羽根のように拡がり抜脱困難となる、いわゆるプッシュリベットで構成される。カバー体10A、10Bの接合フランジ部13、14を合わせて接合面同士を当接させた状態で、複数の(実施の形態では合計22個の)係止部材15を実施の形態では上側に配置される第1カバー体10A側より接合フランジ部13,14のピン挿入孔131、141にそれぞれ挿入し、そのまま押し込むという簡単な作業により、カバー体10A、10B同士を接合することができる。
【0034】
係止部材15は、絶縁性の樹脂材料で形成される。係止部材15を金属材料で形成する場合に比較して軽量化を図ることができるとともに、機器内部に落として紛れ込んだ場合に電気的に悪影響が生じるのを防止できる。係止部材15は、例えば、ナイロン樹脂により形成される。
【0035】
第1カバー体10Aの接合フランジ部13、14の接合面には、長手方向に沿って直線状の凹部132、142が形成されている。第2カバー体10Bの接合フランジ部13、14の接合面において、第1カバー体10Aの凹部132、142に対応する部分には、直線状の凸部133、143が形成されている。
【0036】
第1カバー体10Aの凹部132、142に第2カバー体10Bの凸部133、143を嵌め合わせることにより、位置決めが行われる。すなわち、第1カバー体10Aの凹部132、142及び第2カバー体10Bの凸部133、143からなる凹凸構造は、保護カバー10を組み立てるときの位置決め部として機能する。
【0037】
なお、カバー体10A、10Bにおいて、一方の接合フランジ部13の接合面に凹部132が形成され、他方の接合フランジ部14の接合面に凸部143が形成されてもよい。カバー体10A、10Bは、凹部132と凸部143が対応するように配置される。この場合、第1カバー体10A及び第2カバー体10Bの構造が同じとなるので、生産性が向上する。
【0038】
図示を省略するが、第1カバー体10Aの接合フランジ部13、14と第2カバー体10Bの接合フランジ部13、14との間には、例えば、シリコーン樹脂材料からなるコーキング材17(シーリング材とも呼ばれる)が配置される。具体的には、コーキング材17は、第1カバー体10Aの凹部132、142に塗布される。すなわち、第1カバー体10Aの凹部132、142は、位置決め部として機能するとともに、コーキング材17が塗布されるコーキング材塗布部として機能する。
【0039】
なお、第1カバー体10Aの凹部132、142の全長が表示されていない
図5においては、便宜上、第2カバー体10Bの凸部133、143上にコーキング材17を塗布した状態を表しているが、コーキング材17は、第1カバー体10Aの凹部132、142と第2カバー体10Bの凸部133、143との接合面に設けられればよいため、
図5のように、第2カバー体10Bの凸部133、143にコーキング材17を塗布してもよい。ただし、後述するように、保護カバー10の組立て時にコーキング材17が周囲に漏れ出すのを抑制する観点から、コーキング材17は、第1カバー体10Aの凹部132、142に塗布する方が好ましい。
【0040】
また、カバー体10A、10Bの接続口カバー部12とケーブル保護金具21A、21Bとの間には、コーキング材18が配置される。具体的には、接続口カバー部12の内周面には、周方向に沿って円環状の2つの凸部121、122が形成されている。コーキング材18は、2つの凸部121、122で挟まれた空間123に塗布される。すなわち、空間123は、コーキング材18が塗布されるコーキング材塗布部として機能する。
【0041】
カバー体10A、10B同士の接合面の間にコーキング材17を介在させるとともに、接続口カバー部12とケーブル保護金具21A、21Bとの間にコーキング材18を介在させることにより、保護カバー10の内部は水密に保持される。
【0042】
また、コーキング剤塗布部として機能する凹部132、142及び空間123にコーキング材17、18を塗布することにより、塗布したコーキング材18が保護カバー10の組立て時に周囲に漏れ出すのを抑制できる。
【0043】
カバー体10A、10Bの接合フランジ部13、14の接合面には、分離用の切欠き部134、144が形成されている。切欠き部134、144は、例えば、カバー体10A、10Bの接合フランジ部13、14を当接させたときに、マイナスドライバー等の分離用治具を差込可能な形状を有する。第1カバー体10Aの接合フランジ部13、14に形成される切欠き部134、144と、第2カバー体10Bの接合フランジ部13、14に形成される切欠き部134、144は、長手方向の同じ位置に形成される。実施の形態では、切欠き部134、144は上から見て四角形、側面から見て横方向が長い長方形に形成されているが、分離用治具を差し込んでカバー体10A、10Bを分離できれば、切欠き部134、144の形状は特に限定されない。
【0044】
なお、切欠き部134、144は、第1カバー体10Aの接合フランジ部13、14及び第2カバー体10Bの接合フランジ部13、14のうちの少なくとも1つに形成されていればよい。
【0045】
カバー体10A、10Bは、カバー本体部11と接合フランジ部13、14との接続部位に、複数(実施の形態では合計20個)の補強リブ16を有する。補強リブ16は、長手方向に離間して配置される、補強リブ16は、例えば、カバー本体部11から接合フランジ部13、14に跨がるように、平板状に形成される。実施の形態では、略三角形の平板状に形成されている。鍔状の接合フランジ部13、14は、補強リブ16により機械的強度が補強されている。
【0046】
また、カバー体10A、10Bを接合した状態において、接続口カバー部12における第1方向の長さL1は、第1方向に直交する第2方向の長さL2より小さくなっている(
図7参照)。すなわち、保護カバー10は、正面から見たときに、長円形状(小判形状)を有している。長円形状とすることで、正面から見た保護カバー10の接合フランジ部13、14が設けられている部分の長さは、保護カバー10を正面から見たときに円形で形成した場合に比較して小さく設定することができ、接合フランジ部13、14を設けることに伴う保護カバー10の大型化が抑制される。これにより、保護カバー10の接合フランジ部13、14が略水平方向になるように盤間母線30の外周に取り付けた場合に、盤間母線接続部1が3相配置された隣の相に形成される盤間母線30の保護カバー10との間で保護カバー10同士が干渉しないように形成することができる。
【0047】
このように、実施の形態に係る保護カバー10及び盤間母線接続部1は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0048】
すなわち、保護カバー10は、C-GIS(電力機器)に設けられたブッシング22A、22B間を電気的に連絡する盤間母線用の保護カバーであって、2分割構造を構成する第1カバー体10A及び第2カバー体10Bと、第1カバー体10A及び第2カバー体10Bを係止する係止部材15と、を備える。第1カバー体10A及び第2カバー体10Bはそれぞれ、長手方向に延在する半筒状のカバー本体部11と、カバー本体部11の長手方向の両端に設けられ、ブッシング22A、22Bに固定されたケーブル保護金具21A、21Bに取り付けられる接続口カバー部12と、長手方向に延在するようカバー本体部11及び接続口カバー部12に連設され、長手方向と直交する第1方向に突出する接合フランジ部13、14と、を有する。第1カバー体10Aの接合フランジ部13、14と第2カバー体10Bの接合フランジ部13、14とが当接した状態で、係止部材15によって接合される。
保護カバー10の簡単な組立て作業により盤間母線の外周が保護されるので、作業者の熟練度によらず、安定した品質で、かつ、従来の防食層を形成する場合に比較して短時間で盤間母線接続部1を施工することができる。
【0049】
第1カバー体10A及び第2カバー体10Bを接合した状態において、接続口カバー部12における第1方向の長さL1は、第1方向に直交する第2方向の長さL2より小さい。これにより、接合フランジ部13、14を設けることに伴う保護カバー10の大型化が抑制される。したがって、電力ケーブルの各相に対応して複数の盤間母線接続部1を並設する場合に、隣り合う盤間母線接続部1を近づけることができ、小型化を図ることができる。
【0050】
第1カバー体10A及び第2カバー体10Bの接合フランジ部13、14の間、並びに、接続口カバー部12とケーブル保護金具21A、21Bとの間に、コーキング材18が介在する。これにより、保護カバー10の内部を水密に保持することができる。
【0051】
接続口カバー部12は、内周面に周方向に沿って形成されコーキング材18が配置されるコーキング材塗布部123を有する。これにより、塗布したコーキング材18が保護カバー10の組立て時に周囲に漏れ出すのを抑制でき、確実に水密構造を形成することができる。
【0052】
接合フランジ部13、14は、接合面に、分離用の切欠き部134、144を有する。これにより、分離用の治具を切欠き部134、144に差し込んで容易に保護カバー10を解体することができる。
【0053】
接合フランジ部13、14は、接合面に、位置決め用の凹部132、142及び凸部133、143(凹凸構造)を有する。これにより、狭い作業空間でもカバー体10A、10Bを容易に位置決めし、保護カバー10を組み立てることができる。
【0054】
第1カバー体10A及び第2カバー体10Bは、カバー本体部11と接合フランジ部13、14との接続部位に、長手方向に離間して配置される、複数の補強リブ16を有する。これにより、係止部材15を圧入するときの力によって接合フランジ部13、14が破損するのを防止できる。
【0055】
第1カバー体10A及び第2カバー体10Bは、同一形状である。これにより、保護カバー10の生産性が向上し、製造コストを低減することができる。
【0056】
第1カバー体10A及び第2カバー体10Bは、絶縁性材料で形成されている。これにより、金属材料で形成される場合に比較して軽量化を図ることができ、組立作業が容易になる。
【0057】
係止部材15は、第1カバー体10Aの接合フランジ部13、14と第2カバー体10Bの接合フランジ部13、14とを貫通して係止するプッシュリベットである。これにより、係止部材15を押し込むだけで、カバー体10A、10Bを容易に接合し、保護カバー10を組み立てることができる。
【0058】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0059】
例えば、実施の形態では、係止部材15としてプッシュリベットを適用した場合について説明したが、係止部材15としてボルト及びナット等の公知の締結部材を適用してもよい。
【0060】
また、実施の形態では、筐体Cの設置面に対して接合フランジ部13、14が傾斜するように保護カバー10が設けられているが、設置面に対して接合フランジ部13、14が平行となるように保護カバー10が設けられてもよい。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 盤間母線接続部
10 保護カバー
10A 第1カバー体
10B 第2カバー体
11 カバー本体部
12 接続口カバー部
13、14 接合フランジ部
15 係止部材
16 補強リブ
17、18 コーキング材
21A、21B ケーブル保護金具
22A、22B ブッシング
30 盤間母線