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  • 特開-移乗訓練装置 図1
  • 特開-移乗訓練装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145489
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】移乗訓練装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/06 20060101AFI20241004BHJP
   B63B 79/20 20200101ALN20241004BHJP
【FI】
G09B9/06 Z
B63B79/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057864
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 慶太朗
(72)【発明者】
【氏名】矢野 翔大
(57)【要約】
【課題】最も重要な上下方向の動揺動作に特化し、比較的小型で、安価な移乗訓練装置を提供する。
【解決手段】訓練者が搭乗するステージユニット2と、ステージユニット2を上下方向に動揺させる駆動装置ユニット3と、訓練者Wが移乗する洋上施設としての洋上施設側ユニット4とを備え、駆動装置ユニット3は、上下に積み重ね可能な駆動側フレーム31と、ステージユニット2を支持する支持体32と、支持体32を上下動させる移動機構33と、を有し、洋上施設側ユニット4は、駆動装置ユニット3と同様に、上下に積み重ね可能な施設側フレームを有し、施設側フレームには移乗しやすい梯子42が設けられ、駆動ユニット3を駆動したときに、ステージユニット2が上下方向に揺動され、ステージユニット2に搭乗した訓練者Wは、洋上での揺動運動を体験し、かつ、洋上施設側ユニット4に移乗することで、模擬訓練を行うようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上において船舶などから洋上施設に移乗するための訓練を行う移乗訓練装置であって、
訓練者が搭乗するステージユニットと、前記ステージユニットを上下方向に動揺させる駆動装置ユニットと、訓練者が移乗する洋上施設としての洋上施設側ユニットとを備え、
前記駆動装置ユニットは、上下に積み重ね可能に構成された駆動側フレームと、前記ステージユニットを支持する支持体と、前記支持体を上下動させる移動機構と、を有し、
前記洋上施設側ユニットは、上下に積み重ね可能に構成された施設側フレームを有し、前記施設側フレームには移乗しやすい補助具が設けられ、前記駆動装置ユニットを駆動したときに、前記ステージユニットが上下方向に揺動され、前記ステージユニットに搭乗した訓練者は、洋上での揺動運動を体験し、かつ、前記洋上施設側ユニットに移乗することで、模擬訓練を行うようにした、
ことを特徴とする移乗訓練装置。
【請求項2】
前記駆動側フレームを上方に重ねたときに前記移動機構の上下移動範囲を大きくした、
ことを特徴とする請求項1に記載の移乗訓練装置。
【請求項3】
前記施設側フレームを上方に重ねたときに前記補助具も上方に伸びるように接続した、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移乗訓練装置。
【請求項4】
前記駆動側フレームを設置面に敷かれたレールに乗せ、訓練者が洋上施設側ユニットに対して離接する方向に移動可能にした、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の移乗訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業員が船舶などから洋上施設へアクセスするための訓練を支援する移乗訓練装置に関する。
【0002】
洋上には風力発電所をはじめ多くの洋上施設が建設されており、保守などのために作業員は船舶などから洋上施設へアクセスする必要がある。船舶は波により動揺しているため、船舶等から洋上施設へ容易には乗り移ることが難しいため、陸上においてある程度訓練する必要がある。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、船舶から洋上施設への移乗訓練、及び、各種装置の性能評価試験を陸上で行うことが可能な移乗訓練装置が記載されている。
【0004】
この移乗訓練装置は、第一模擬構造物(模擬船体部)と第二模擬構造物(模擬洋上構造物)とを備え、これらを相対的に動揺させる。
【0005】
具体的には、第一模擬構造物(模擬船体部)21は、船体側移動機構22として、互いに直交する3つの軸線のうち所定の軸線回りに回転させる回転機構24を備え、ロール、ピッチの回転運動をさせる。
【0006】
第二模擬構造物(模擬洋上構造物)31は、上下移動機構130と6軸モーションベース120とを有する構造物側並進機構33を備え、上下移動機構で大きな上下動を、6軸モーションベース120でロール、ピッチ、ヨーの回転運動をさせるようになっている。
【0007】
特許文献1の記載の移乗訓練装置によれば、移動機構により、第一模擬構造物(模擬船体部)及び第二模擬構造物(模擬洋上構造物)を相対的に移動させることで、海上環境における船舶と洋上構造物との相対的な動揺を再現することができる。
【0008】
これにより、特許文献1に記載の移乗訓練装置にあっては、海上環境における動揺動作を再現することで、作業者の第一模擬構造物から第二模擬構造物への移乗訓練又はその逆の第二模擬構造物から第一模擬構造物への移乗訓練を、陸上で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2022-155741号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載の移乗訓練装置にあっては、第一模擬構造物(模擬船体部21)を移動させる機構として回転機構24を、第二模擬構造物(模擬洋上構造物31)を移動させる機構として上下移動機構130及び6軸モーションベース120を、それぞれ備えるため、より海上環境に近い動揺動作を再現することができるが、装置が大型化し、コスト高になっていた。
【0011】
そこで本発明は、海上環境の動揺動作のうち、最も重要な上下方向の動揺動作に特化し、比較的小型で、安価な移乗訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、洋上において船舶などから洋上施設に移乗するための訓練を行う移乗訓練装置であって、訓練者が搭乗するステージユニットと、前記ステージユニットを上下方向に動揺させる駆動装置ユニットと、訓練者が移乗する洋上施設としての洋上施設側ユニットとを備え、前記駆動装置ユニットは、上下に積み重ね可能に構成された駆動側フレームと、前記ステージユニットを支持する支持体と、前記支持体を上下動させる移動機構と、を有し、洋上施設側ユニットは、上下に積み重ね可能に構成された施設側フレームを有し、前記施設側フレームには移乗しやすい補助具が設けられ、前記駆動装置ユニットを駆動したときに、前記ステージユニットが上下方向に揺動され、ステージユニットに搭乗した訓練者は、洋上での揺動運動を体験し、かつ、洋上施設側ユニットに移乗することで、模擬訓練を行うようにした、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の移乗訓練装置において、前記駆動側フレームを上方に重ねたときに前記移動機構の上下移動範囲を大きくした、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の移乗訓練装置において、前記施設側フレームを上方に重ねたときに前記補助具も上方に伸びるように接続した、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1~請求項3に記載の移乗訓練装置において、前記駆動側フレームを設置面に敷かれたレールに乗せ、訓練者が洋上施設側ユニットに対して離接する方向に移動可能にした、ことを特徴とする。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、洋上における移乗訓練内容として最も危険な上下揺動方向に特化し、しかも、必須な構成要素(駆動装置、ステージ、洋上施設側の補助具)をユニット化することで、装置全体の小型化を図ることができ、狭い場所での設置を可能とし、メンテナンス性を高め、低コスト化を実現することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、前記駆動側フレームを上方に重ねたときに前記移動機構の上下移動範囲を大きくしたので、移乗訓練装置全体の高さを変更したときでも、上下揺動幅を大きくした移乗訓練を可能にでき、設置面積を大きくとらずに、移乗訓練の難易度を上げることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、前記施設側フレームを上方に重ねたときに前記補助具も上方に伸びるように接続したので、上下揺動幅を大きな訓練をした際にもより安全に行うことを可能とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、前記駆動側フレームをレールに乗せ、訓練者が洋上施設側ユニットに対して離接する方向に移動可能にしたので、設置された駆動装置ユニットと洋上施設側ユニットとの位置調整を簡単にできるとともに、ステージユニットと洋上施設側ユニットとの距離を変えることができ、移乗訓練の難易度を変えることができ、初心者や上級者の訓練にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施の形態に係る移乗訓練装置を、ユニットごとに分解した分解斜視図である。
図2図3とともに、訓練者Wが移乗訓練装置を使用している状態を示すもので、本図は訓練者がステージユニットに搭乗した状態を示す側面図である。
図3】訓練者がステージユニットから洋上施設側ユニットに移乗した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0022】
図1図3は、この発明の実施の形態を示し、図1は移乗訓練装置1全体をユニットごとに分割して示す分割斜視図である。図2は、訓練者Wがステージユニットに搭乗した状態を示す側面図である。図3は訓練者がステージユニットから洋上施設側ユニットに移乗した状態を示す側面図である。
【0023】
移乗訓練装置1は、船舶と、海上に浮かぶ浮体式の洋上施設(例えば浮体式洋上風車)などと、の間を移乗する(乗り移る)ことを模擬体験するためのもので、訓練者Wが搭乗するステージユニット2とステージユニット2を上下方向に動揺させる駆動装置ユニット3と、訓練者Wが移乗する洋上施設側ユニット4とを備える。すなわち、ステージユニット2及び駆動装置ユニット3が船体を模擬したもので、洋上施設側ユニット4が浮体式洋上風車を模擬したものである。なお、この実施の形態にあっては、洋上施設側ユニット4として、梯子ユニット4を例にして以下説明する。
【0024】
ステージユニット2は、不動時にほぼ水平に保たれた平板状のステージ21と、ステージ21に搭乗した訓練者Wの左右に設けられ、訓練者Wが姿勢を保つために補助する手すり22と、ステージ21の前部にステージ21の左右幅よりも大きなバンパー23とを備える。
【0025】
尚、訓練者Wが乗り移る対象物(梯子42)に対面した方向は前方として説明する。
駆動装置ユニット3は、上下に積み重なった2つ直方体のフレーム31と、前記ステージ21を支持する支持体32と、支持体32を上下動させる移動機構33と、を備える。
【0026】
移動機構33は、下フレーム31dの下部と上フレーム31uの上部にそれぞれ設けられたローラ34と、上下のローラ34に掛け渡されたベルト35と、下部ローラ34dに設けられた駆動モータ36と、から成る。
【0027】
ベルト35は、そのベルト面がステージユニット2に対向するように配され、かつ、内側のベルト35はフレーム31の内側に、外側のベルト35はフレーム31の外側を走行するように設けられている。
【0028】
そして、フレーム31の外側に位置したベルト35に、上記ステージユニット2を支持する支持体32が固定されている。
【0029】
上記駆動モータ36は図示しない制御部に接続されており、制御部には予め記録されたプログラムにより、駆動モータ36を制御し、駆動モータ36の回転により、ステージユニット2を上下方向に揺動させることとなる。
【0030】
制御部には、洋上における船舶と洋上構造物との相対的な動きを再現するようにプログラムが記録されており、リアルな移乗(乗り移り)訓練を行うことができる。
【0031】
そして、移動機構33を動作することで、ステージ21に乗った訓練者Wは駆動モータ36の回転方向に従い、上方又は下方に移動、すなわち上下揺動されることになる。
【0032】
支持体32は、上記ベルト35のベルト面に面接触して固定されたブラケット37と、ブラケット37に取付けられ、ステージユニット2に向かって伸びたフォーク38と、から成り、前記ステージユニット2はフォーク38に載置されるように固定されている。
【0033】
駆動装置ユニット3のフレーム31は、上フレーム31uと下フレーム31dとに分割可能に組み立てられており、また、上フレーム31uの上にさらに別のフレーム31を積み重ねることも可能になっている。
【0034】
フレーム31の分割又は増設した場合、ベルト35は一旦取外し、上ローラ34uを最も上方に位置するフレーム31に取り付け、再度、ベルト35を上ローラ34u及び下ローラ34dに掛け直す。もちろん、ベルト35を掛け直すときは、ステージ2を取外すとともに、ブラケット37も取り外して行う。
【0035】
これにより、駆動装置ユニット3における上下揺動幅を簡単に変更することができる。
【0036】
梯子ユニット4は、駆動装置ユニット3と同様に、上下に積み重なった2つ直方体のフレーム41と、フレーム41の前面中央部に取付けられた補助具である梯子42と、梯子42を左右から挟むように設けられたボートランディング43と、から成る。
【0037】
梯子ユニット4のフレーム41は、上フレーム41uと下フレーム41dとに分割可能に組み立てられており、また、上フレーム41uの上にさらに別のフレーム41を積み重ねることも可能になっている。
【0038】
また、梯子42は、フレーム41毎にそれぞれ設けられており、フレーム41の分割又は増設した場合、梯子42においても分割又は増設することになり、上下方向に連続した梯子42を組み立てることができる。
【0039】
このような梯子ユニット4は、そのフレーム41が設置面Gに固定されており、訓練者Wがステージ2から梯子42に乗り移った際に動かないようになっている。
【0040】
そして、駆動装置ユニット3のフレーム31高さと梯子ユニット4のフレーム41高さを同じにし、両者の高さの整合性を取ることで、適正な高さ位置での移乗訓練を可能とすることができる。
【0041】
また、このような駆動装置ユニット3は、設置面Gに敷かれたレールRの上に置かれ、前後方向、すなわち、訓練者Wが乗り移り対象(梯子42)に対して離接する方向に移動可能になっている。
【0042】
これにより、設置された駆動装置ユニット3と洋上施設側ユニット4との位置調整を簡単にできるとともに、ステージユニット2と梯子42との距離を変えることができ、移乗訓練の難易度を変えることができ、初心者や上級者の訓練にも適用することができる。もちろん、駆動装置ユニット3の前後方向への移動を行った際には、駆動装置ユニット3の設置面Gに対する固定を行う。
【0043】
しかして、上記実施の形態に係る移乗訓練装置1により訓練者Wが訓練する場合には、まず、図示しない乗り込み階段などでステージ21に搭乗し、駆動装置ユニット3の駆動モータ36を駆動させる。
【0044】
前述したように駆動モータ36は制御部に記録されたプログラムに従い正回転、逆回転を行い、これに伴いステージ2が洋上における船舶と洋上構造物との相対的な動きを再現される。この状態で、訓練者Wはタイミングを計り、ステージ21から梯子ユニット4の梯子42に乗り移る。このタイミングを計ること及び身体の移動が訓練され、現場(洋上)での洋上施設への移乗を容易に行うことができるようになる。
【0045】
このように、この実施の形態の移乗訓練装置1によれば、移乗訓練内容として最も危険な上下揺動方向に特化し、しかも、必須な構成要素(駆動装置3、ステージ2、梯子4)をユニット化することで、装置全体の小型化を図ることができ、狭い場所での設置を可能とし、メンテナンス性を高め、低コスト化を実現することができる。
【0046】
また、駆動装置ユニット3及び梯子ユニット4をそれぞれ複数のフレームの組み合わせにすることで、移乗訓練装置1全体の高さを容易に変更でき、上下揺動幅を大きくした移乗訓練を可能にし、移乗訓練の難易度を上げることができる。
【0047】
尚、上記実施の形態においては、駆動装置側ユニット3及び洋上施設側ユニット4で説明したフレーム31、41はいずれも直方体形状のものを2つ積み重ねたものであったが、本発明はこれに限らず、円筒形状のフレームであってもよく、また、積み重ねる員数も2つに限らず、3つ以上でもあっても良い。
【0048】
また逆に、比較的大きなフレームとするならば、積み重ねることなく1つのフレームで構成することもできる。
【0049】
さらに、上記実施の形態にあっては、施設側フレームに設けた移乗しやすい補助具として梯子を例にしてあげたが、本発明はこれに限らず、手すりであったり、ハンドルであってもよい。要は、洋上施設で実際に用いられているものがリアルな体験に近くなるので好ましい。
【0050】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、移動機構として駆動モータによるベルト駆動機構を用いて説明したが、本発明はこれに限らず、比較的大きな往復運動を実現することができる、チェーン駆動装置、油圧などであっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 移乗訓練装置
2 ステージユニット
3 駆動装置ユニット
4 洋上施設側ユニット(梯子ユニット)
W 訓練者
G 設置面
R レール
31 駆動側フレーム
31u 上フレーム
31d 下フレーム
32 支持体
33 移動機構
41 施設側フレーム
41u 上フレーム
41d 下フレーム
42 梯子
43 ボートライディング
図1
図2
図3