(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145496
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電子部品及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/553 20210101AFI20241004BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241004BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20241004BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20241004BHJP
H01M 50/564 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M50/553
H01G4/30 516
H01G4/30 517
H01G4/30 311E
H01G4/30 201G
H01M50/548 101
H01M50/562
H01M50/564
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057871
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 昌光
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
5H043
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC09
5E001AD04
5E001AF06
5E001AJ01
5E082AB03
5E082GG10
5E082GG11
5H043AA07
5H043AA11
5H043AA19
5H043BA20
5H043CA04
5H043CA13
5H043DA03
5H043DA08
5H043DA11
5H043DA15
5H043DA20
5H043EA32
5H043EA36
5H043EA38
5H043EA60
5H043HA22D
5H043HA23D
5H043HA29D
5H043JA21D
5H043KA15D
5H043KA22D
5H043KA44D
5H043KA45D
(57)【要約】
【課題】水分に対する耐性に優れた電子部品を実現する。
【解決手段】電子部品の一例である固体電池1は、端面10aを有する部品本体10と、部品本体10の端面10aと当該端面10a側のエッジ部10cとを覆う外部電極層30とを含む。外部電極層30は、第1層31と第2層32とを含む。第1層31は、部品本体10の端面10aとエッジ部10cとを覆い、第1導電材料と第1絶縁材料とを含有する。第2層32は、第1層31を覆い、第2導電材料と第2絶縁材料とを含有する。エッジ部10cにおける外部電極層30の厚さT2を厚くし、めっき層40を形成する際のめっき液や外気中に含まれる水蒸気の部品本体10内への浸入経路の形成を抑え、固体電池1の水分に対する耐性を高める。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面を有する部品本体と、
前記部品本体の前記端面と前記端面側のエッジ部とを覆う外部電極層と、
を含み、
前記外部電極層は、
前記端面と前記エッジ部とを覆い、第1導電材料と第1絶縁材料とを含有する第1層と、
前記第1層を覆い、第2導電材料と第2絶縁材料とを含有する第2層と、
を含む、電子部品。
【請求項2】
前記第1絶縁材料及び前記第2絶縁材料はガラスである、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1絶縁材料はガラスであり、前記第2絶縁材料は樹脂である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記外部電極層を覆うめっき層を更に含む、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
端面を有する部品本体を準備する工程と、
前記部品本体の前記端面と前記端面側のエッジ部とを覆う外部電極層を形成する工程と、
を含み、
前記外部電極層を形成する工程は、
前記端面と前記エッジ部とを覆い、第1導電材料と第1絶縁材料とを含有する第1層を形成する工程と、
前記第1層を覆い、第2導電材料と第2絶縁材料とを含有する第2層を形成する工程と、
を含む、電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1層を形成する工程は、熱処理を含み、
前記第2層を形成する工程は、前記熱処理後の前記第1層を覆うように前記第2層を形成する工程を含む、請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電池や積層セラミックコンデンサ等の電子部品に関し、その部品本体の端面に、当該部品本体内の内部電極と接続される外部接続端子を設ける技術が知られている。例えば、電極層が固体電解質層を介して複数積層された積層体の端面に外部電極を形成した全固体二次電池、その外部電極等をダイヤモンドライクカーボンで覆った全固体二次電池が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品本体の端面に外部接続端子を設ける電子部品では、例えば、その部品本体の端面側に外部電極層用ペーストを塗布し、それに所定の熱処理を施すことで、外部接続端子の一部となる外部電極層を形成する方法が採用される。しかし、このような方法が採用されて得られる電子部品では、部品本体の当該端面側のエッジ部における外部電極層の厚さが、他の部分の厚さに比べて薄くなることがある。部品本体の当該エッジ部における外部電極層の厚さが薄くなると、その薄くなった部位が、外部電極層の表面を更にめっき処理する際のめっき液や外気中に含まれる水蒸気等の水分の浸入経路となり、部品本体及びそれを備える電子部品の特性低下を招く恐れがある。
【0005】
1つの側面では、本発明は、水分に対する耐性に優れた電子部品を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、端面を有する部品本体と、前記部品本体の前記端面と前記端面側のエッジ部とを覆う外部電極層と、を含み、前記外部電極層は、前記端面と前記エッジ部とを覆い、第1導電材料と第1絶縁材料とを含有する第1層と、前記第1層を覆い、第2導電材料と第2絶縁材料とを含有する第2層と、を含む、電子部品が提供される。
【0007】
また、別の態様では、上記のような電子部品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
1つの側面では、水分に対する耐性に優れた電子部品を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】固体電池の外部接続端子の形成において生じ得る現象について説明する図である。
【
図3】実施形態に係る固体電池の一例について説明する図である。
【
図4】実施形態に係る固体電池の変形例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
部品本体の端面に外部接続端子を設ける電子部品として、積層チップコンデンサや積層チップインダクタ、固体電池等の各種電子部品が知られている。以下では、電子部品として、主に固体電池を例にして説明する。
【0011】
図1は固体電池の一例について説明する図である。
図1(A)には、固体電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。
図1(B)には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
図1(B)は、
図1(A)のL1線に沿った要部断面模式図である。
【0012】
図1(A)及び
図1(B)に示す固体電池1Aは、部品本体10と、部品本体10の両端部にそれぞれ設けられた外部接続端子20Aとを備える。部品本体10は、固体電池1Aの「電池要素」、「電池素体」或いは「素体」等とも称される。外部接続端子20Aは、部品本体10の、L1線に沿った方向に対向する端面10a及び端面10b(
図1(B))をそれぞれ覆うように、設けられる。端面10a側及び端面10b側に設けられる外部接続端子20Aはそれぞれ、固体電池1Aの正極端子及び負極端子として機能する。各外部接続端子20Aは、外部電極層30Aと、その表面に設けられるめっき層40Aとを含む。
【0013】
固体電池1Aの部品本体10は、
図1(B)に示すように、正極層11と、それに対向する負極層12と、それらの間に介在される電解質層13とを有する。部品本体10において、正極層11と負極層12とは、電解質層13を挟んで交互に設けられるように、複数層積層される。部品本体10において、正極層11と負極層12とは、電解質層13を介して互いに部分的に重複するように設けられる。正極層11、負極層12及び電解質層13の積層体の表面は、端面10a及び端面10bを除き、カバー層14で覆われる。尚、正極層11及び負極層12の一方又は双方を、「内部電極層」とも言う。
【0014】
部品本体10の電解質層13は、固体電解質を含む。電解質層13の固体電解質には、例えば、酸化物固体電解質が用いられる。電解質層13の酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON(Na super ionic conductor)型(「ナシコン型」とも称される)の酸化物固体電解質の1種であるLAGPが用いられる。LAGPは、一般式Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(0<x≦1)で表される酸化物固体電解質である。このほか、電解質層13の固体電解質には、Li2S(硫化リチウム)-P2S5(五硫化二リン)等の硫化物固体電解質が用いられてもよい。
【0015】
部品本体10の正極層11には、正極活物質、導電助剤及び固体電解質が含まれる。正極層11の固体電解質には、酸化物固体電解質又は硫化物固体電解質、例えば、電解質層13に用いられる固体電解質と同種の材料が用いられる。正極層11の正極活物質には、例えば、Li2CoP2O7(ピロリン酸コバルトリチウム、「LCPO」とも言う)等が用いられる。正極層11の導電助剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブ等のカーボン材料、鉄シリサイド等の導電材料が用いられる。
【0016】
部品本体10の負極層12には、負極活物質、導電助剤及び固体電解質が含まれる。負極層12の固体電解質には、酸化物固体電解質又は硫化物固体電解質、例えば、電解質層13に用いられる固体電解質と同種の材料が用いられる。負極層12の負極活物質には、例えば、TiO2(酸化チタン)、Nb2O5(五酸化ニオブ)等が用いられる。このほか、負極層12の負極活物質には、Li3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)、Li4Ti5O12(チタン酸リチウム)等が用いられてもよい。負極層12の導電助剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブ等のカーボン材料、鉄シリサイド等の導電材料が用いられる。
【0017】
固体電池1Aにおいて、その充電時には、正極層11から電解質層13を介して負極層12にリチウムイオンが伝導して取り込まれ、放電時には、負極層12から電解質層13を介して正極層11にリチウムイオンが伝導して取り込まれる。固体電池1Aでは、部品本体10におけるこのようなリチウムイオン伝導によって充放電動作が実現される。
【0018】
部品本体10のカバー層14には、例えば、固体電解質が用いられる。このほか、カバー層14には、固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁材料が用いられる。例えば、カバー層14には、電解質層13に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁材料が用いられる。或いは、カバー層14には、電解質層13に用いられる固体電解質、内部電極層である正極層11及び負極層12に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁材料が用いられる。尚、カバー層14の絶縁性とは、部品本体10におけるリチウムイオン伝導、電子伝導に対する影響が無いか或いは十分に低い性質を言う。固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁性のカバー層14には、例えば、ガラス又はセラミックスが用いられる。カバー層14は、部品本体10を外力や外気から保護する機能を有する。そのため、カバー層14には、上記のような硬度及び絶縁性を有するほか、水分の透過性、又は、水素や酸素等のガスの透過性が低く、良好な密閉性を実現できるものが用いられる。カバー層14に用いることのできる材料のうち、ガラス又はセラミックスは、これらの性質を併せ持たせることのできる材料の1種であり、カバー層14を形成するための材料として好適である。
【0019】
部品本体10の一方の端面10aには、正極層11の側面の一部が露出する。部品本体10の他方の端面10bには、負極層12の側面の一部が露出する。端面10aから露出する正極層11の側面の一部と、端面10bから露出する負極層12の側面の一部とは、部品本体10の外部との電気接続に用いられる。ここでは、正極層11が露出する端面10aを、「正極引き出し面」とも言う。負極層12が露出する端面10bを、「負極引き出し面」とも言う。尚、正極引き出し面及び負極引き出し面の一方又は双方を、「電極引き出し面」とも言う。
【0020】
部品本体10の一方の端面10a(正極引き出し面)側には、部品本体10の端面10aと当該端面10a側のエッジ部10cとを覆うように、外部電極層30Aが設けられる。エッジ部10cには、端面10aと、端面10aと連続する部品本体10の外面10eとの境界(稜線部又はコーナー部)が含まれる。端面10a側の外部電極層30Aは、部品本体10の端面10a及びエッジ部10cを覆い、外面10eの一部上に延びるように、設けられる。端面10a側の外部電極層30Aは、例えば、粉末状のAg(銀)等の導電材料を含有した外部電極層30A用ペーストを塗布してそれに熱処理を施すことで、形成される。部品本体10の端面10a側に露出する正極層11は、端面10a側に設けられる外部電極層30Aと接続される。
【0021】
部品本体10の他方の端面10b(負極引き出し面)側には、部品本体10の端面10bと当該端面10b側のエッジ部10dとを覆うように、外部電極層30Aが設けられる。エッジ部10dには、端面10bと、端面10bと連続する部品本体10の外面10eとの境界(稜線部又はコーナー部)が含まれる。端面10b側の外部電極層30Aは、部品本体10の端面10b及びエッジ部10dを覆い、外面10eの一部上に延びるように、設けられる。端面10b側の外部電極層30Aは、例えば、粉末状のAg等の導電材料を含有した外部電極層30A用ペーストを塗布してそれに熱処理を施すことで、形成される。部品本体10の端面10b側に露出する負極層12は、端面10b側に設けられる外部電極層30Aと接続される。
【0022】
部品本体10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ設けられる外部電極層30Aの表面には、各外部電極層30Aを覆うようにめっき層40Aが設けられる。めっき層40Aは、例えば、電解めっき法を用いてNi(ニッケル)やSn(スズ)等の金属を堆積することで、形成される。
【0023】
部品本体10の一方の端面10a側に設けられる外部電極層30Aとその表面のめっき層40Aとが、固体電池1Aの外部接続端子20Aの1つである正極端子として機能する。部品本体10の他方の端面10b側に設けられる外部電極層30Aとその表面のめっき層40Aとが、固体電池1Aの外部接続端子20Aの別の1つである負極端子として機能する。正極端子及び負極端子が用いられ、固体電池1Aの充放電動作が実現される。
【0024】
上記のように、固体電池1Aでは、外部接続端子20Aを形成する際、部品本体10の端面10a側及び端面10b側についてそれぞれ、例えば、外部電極層30A用ペーストがディップ法によって塗布され、それに所定の熱処理が施され、外部電極層30Aが形成される。そして、形成された外部電極層30Aの表面に、電解めっき法によって所定の金属が堆積され、めっき層40Aが形成される。この場合、次の
図2に示すようなことが起こり得る。
【0025】
図2は固体電池の外部接続端子の形成において生じ得る現象について説明する図である。
図2(A)には、外部電極層形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図2(B)には、めっき層形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図2(A)及び
図2(B)は、
図1(B)のP1部の拡大断面模式図である。また、
図2(C)には、不良固体電池の一例の要部斜視図を模式的に示している。
図2(C)では、外部接続端子の一部(めっき層の一部)を除去した図を示している。
【0026】
外部電極層30Aの形成時には、例えば、
図2(A)に示すように、部品本体10の端面10a側にディップ法によって塗布される外部電極層30A用ペーストがエッジ部10cで薄くなり、エッジ部10cに形成される外部電極層30Aの厚さT1が他の部分(端面10a上及び外面10e上)の厚さに比べて薄くなることが起こり得る。尚、
図2(A)及び
図2(B)には、一方の端面10aのエッジ部10cにおける一部分のみを図示するが、端面10aにおけるエッジ部10cの他の部分、他方の端面10bのエッジ部10dの一部又は全部においても同様に、外部電極層30Aが部分的に薄くなることは起こり得る。このように外部電極層30Aが部分的に薄くなると、その薄くなった部位が、部品本体10及びそれを備える固体電池1Aの不良を引き起こす一因となり得る。
【0027】
例えば、
図2(A)に示すように、塗布された外部電極層30A用ペーストがエッジ部10cで薄くなっていると、熱処理後、それによって形成される外部電極層30Aには、
図2(C)に示すように、熱処理に伴う収縮に起因した亀裂101(収縮亀裂)が発生することがある。また、例えば、
図2(B)に示すように、外部電極層30Aの形成後に行われるめっき層40Aの形成時に、そのめっき液が、外部電極層30Aの薄くなった部位又は亀裂101から部品本体10の内部に浸入することが起こり得る。或いは、外気中に含まれる水蒸気が、めっき層40Aの形成前の、外部電極層30Aの薄くなった部位又は亀裂101から部品本体10の内部に浸入することが起こり得る。部品本体10の内部に水分が浸入すると、それを備える固体電池1Aの充放電動作時や実装時等に付与される熱により、部品本体10の内部が水分で膨張し、
図2(C)に示すように、部品本体10に割れ102が発生することがある。
【0028】
このように、外部電極層30Aの薄くなった部位は、水分の浸入経路となり得る。エッジ部10c等における外部電極層30Aの部分的な薄層化は、外部電極層30Aの亀裂101、水分の浸入、浸入した水分による部品本体10の割れ102等を引き起こし得る。部品本体10への水分の浸入は、割れ102等のほか、部品本体10及びそれを備える固体電池1Aの充放電特性等の特性低下を引き起こす恐れがある。
【0029】
ここでは固体電池1Aを例にしたが、積層チップコンデンサや積層チップインダクタ等、部品本体の端面に外部接続端子を設ける電子部品では、上記固体電池1Aについて述べたのと同様のことが起こり得る。
【0030】
そこで、以下に実施形態として示すような構成を採用し、水分に対する耐性に優れた電子部品を実現する。以下では便宜上、電子部品として固体電池を例にする。
図3は実施形態に係る固体電池の一例について説明する図である。
図3(A)には、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
図3(B)には、
図3(A)のP2部拡大断面図を模式的に示している。
【0031】
図3(A)及び
図3(B)に示す固体電池1は、部品本体10と、部品本体10の両端部にそれぞれ設けられた外部接続端子20とを備える。部品本体10には、上記固体電池1A(
図1(A)及び
図1(B))について述べたのと同様のものが用いられる。即ち、部品本体10は、正極層11(内部電極層)及び負極層12(内部電極層)とそれらの間に介在される電解質層13、並びに、これらの積層体の表面を、対向する端面10a(正極引き出し面)及び端面10b(負極引き出し面)を除いて覆うカバー層14を有する。外部接続端子20は、部品本体10の、対向する端面10a及び端面10bをそれぞれ覆うように、設けられる。端面10a側及び端面10b側に設けられる外部接続端子20はそれぞれ、固体電池1の正極端子及び負極端子として機能する。各外部接続端子20は、外部電極層30と、その表面に設けられるめっき層40とを含む。外部電極層30は、内側に設けられる第1層31と、その外側に設けられる第2層32とを含む。
【0032】
外部電極層30の第1層31は、部品本体10の端面10a側及び端面10b側に、それぞれ設けられる。
端面10a側の第1層31は、部品本体10の端面10aと当該端面10a側のエッジ部10cとを覆うように、設けられる。エッジ部10cには、端面10aと、端面10aと連続する部品本体10の外面10eとの境界(稜線部又はコーナー部)が含まれる。端面10a側の第1層31は、部品本体10の端面10a及びエッジ部10cを覆い、外面10eの一部上に延びるように、設けられる。部品本体10の端面10a側に露出する正極層11は、端面10a側に設けられる第1層31と接続される。
【0033】
端面10b側の第1層31は、部品本体10の端面10bと当該端面10b側のエッジ部10dとを覆うように、設けられる。エッジ部10dには、端面10bと、端面10bと連続する部品本体10の外面10eとの境界(稜線部又はコーナー部)が含まれる。端面10b側の第1層31は、部品本体10の端面10b及びエッジ部10dを覆い、外面10eの一部上に延びるように、設けられる。部品本体10の端面10b側に露出する負極層12は、端面10b側に設けられる第1層31と接続される。
【0034】
部品本体10の端面10a側及び端面10b側の第1層31は、第1層31用ペーストを用いて形成される。第1層31用ペーストには、第1導電材料及び第1絶縁材料が含有される。第1導電材料には、粉末状のAg等の金属が用いられる。第1絶縁材料には、粉末状のガラスが用いられる。第1層31用ペーストには、第1導電材料及び第1絶縁材料のほか、樹脂、溶剤等の有機成分が含有される。
【0035】
第1層31は、部品本体10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ、第1層31用ペーストをディップ法によって塗布し、それを所定の熱処理によって焼き付けることで、形成される。焼き付けのための熱処理により、第1層31用ペーストの有機成分は除去される。これにより、部品本体10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ、第1導電材料である金属と、第1絶縁材料であるガラスとを含有する第1層31が形成される。
【0036】
ここで、第1層31の形成時には、例えば、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、部品本体10の端面10a側にディップ法によって塗布される第1層31用ペーストがエッジ部10cで薄くなり、エッジ部10cに形成される第1層31の厚さが他の部分(端面10a上及び外面10e上)の厚さに比べて薄くなることがある。同様に、部品本体10の端面10b側にディップ法によって塗布される第1層31用ペーストがエッジ部10dで薄くなり、エッジ部10dに形成される第1層31の厚さが他の部分(端面10b上及び外面10e上)の厚さに比べて薄くなることがある。
【0037】
外部電極層30の第2層32は、部品本体10の端面10a側及び端面10b側であって、各々の第1層31の外側にそれぞれ設けられる。端面10a側の第2層32は、例えば、その内側の第1層31を覆うように、設けられる。端面10b側の第2層32は、例えば、その内側の第1層31を覆うように、設けられる。
【0038】
部品本体10の端面10a側及び端面10b側の第2層32は、第2層32用ペーストを用いて形成される。第2層32用ペーストには、第2導電材料及び第2絶縁材料が含有される。第2導電材料には、粉末状のAg等の金属が用いられる。第2絶縁材料には、例えば、粉末状のガラスが用いられる。或いは、第2絶縁材料には、例えば、熱処理によって硬化される熱硬化性の樹脂が用いられる。第2絶縁材料にガラス、熱硬化性の樹脂のいずれの材料が用いられる場合も、第2層32用ペーストには、第2導電材料及び第2絶縁材料のほか、樹脂、溶剤等の有機成分が含有される。
【0039】
第2層32は、例えば、その第2絶縁材料にガラスが用いられる場合には、部品本体10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ、第2層32用ペーストをディップ法によって塗布し、それを所定の熱処理によって焼き付けることで、形成される。焼き付けのための熱処理により、第2層32用ペーストの有機成分は除去される。これにより、部品本体10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ、第2導電材料である金属と、第2絶縁材料であるガラスとを含有する第2層32が形成される。
【0040】
第2層32は、例えば、その第2絶縁材料に熱硬化性の樹脂が用いられる場合には、部品本体10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ、第2層32用ペーストをディップ法によって塗布し、それに含有される熱硬化性の樹脂を所定の熱処理によって硬化することで、形成される。硬化のための熱処理により、第2層32用ペーストの有機成分の一部は除去され得る。これにより、部品本体10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ、第2導電材料である金属と、第2絶縁材料である樹脂とを含有する第2層32が形成される。
【0041】
第2層32の形成は、例えば、第1層31の形成後、即ち、第1層31用ペーストの塗布及び熱処理による焼き付け後に、行われる。
尚、第2層32用ペーストの第2絶縁材料として熱硬化性の樹脂を用いる場合、その樹脂の硬化温度によっては、第1層31用ペーストを焼き付ける際の熱処理温度よりも低温の条件で第2層32用ペーストを硬化し、第2層32を形成することも可能になる。第2層32の形成温度を低温化することで、外部電極層30の形成に伴う部品本体10への熱ダメージを抑えることが可能になる。また、ここでは第2層32用ペーストの第2絶縁材料として熱硬化性の樹脂を用いる例を示すが、第2絶縁材料としては、熱硬化性の樹脂のほか、光硬化性の樹脂を用いることも可能である。
【0042】
内側の第1層31と、その外側の第2層32とによって、外部電極層30が形成される。ここで、端面10a側の第2層32は、その内側の第1層31の、エッジ部10cにおいて薄くなった部位を覆うように、形成される。同様に、端面10b側の第2層32は、その内側の第1層31の、エッジ部10dにおいて薄くなった部位を覆うように、形成される。これにより、エッジ部10c及びエッジ部10dの各々においては、第1層31の厚さに第2層32の厚さを加えた、一定以上の厚さT2を有する外部電極層30が形成される。
【0043】
部品本体10の端面10a側及び端面10b側に設けられる外部電極層30の表面には、めっき層40が設けられる。めっき層40は、外部電極層30を覆うように、設けられる。めっき層40は、例えば、電解めっき法を用いてNiやSn等の金属を堆積することで、例えば、堆積したNi層上にSn層を堆積して積層することで、形成される。
【0044】
部品本体10の一方の端面10a側に設けられる外部電極層30とその表面のめっき層40とが、固体電池1の外部接続端子20の1つである正極端子として機能する。部品本体10の他方の端面10b側に設けられる外部電極層30とその表面のめっき層40とが、固体電池1の外部接続端子20の別の1つである負極端子として機能する。正極端子及び負極端子が用いられ、固体電池1の充放電動作が実現される。
【0045】
上記のように、実施形態に係る固体電池1では、外部電極層30として、内側に第1層31が設けられ、その外側に第2層32が設けられる。部品本体10のエッジ部10c及びエッジ部10dにおいて、第1層31に薄くなった部位が形成されていたとしても、当該部位が第2層32で覆われる。従って、エッジ部10c及びエッジ部10dにおいては、第1層31の厚さに第2層32の厚さを加えた、一定以上の厚さT2を有する外部電極層30が形成される。これにより、外部電極層30の第1層31を形成して更に第2層32を形成した後に、外部電極層30に亀裂が残ることが抑えられる。更に、外気中に含まれる水蒸気が、めっき層40が形成される前の外部電極層30の薄くなった部位又は亀裂から部品本体10の内部に浸入することが抑えられる。更にまた、めっき層40の形成時に、そのめっき液が、外部電極層30の薄くなった部位又は亀裂から部品本体10の内部に浸入することが抑えられる。外部電極層30を、内側の第1層31とその外側の第2層32とを含む積層構造とすることで、外部電極層30に水分の浸入経路が形成されることが抑えられる。よって、水分に対する耐性に優れた固体電池1が実現される。
【0046】
固体電池1では、部品本体10の内部への水分の浸入が抑えられることで、その充放電動作時や実装時等に付与される熱によって部品本体10の内部が水分で膨張し、部品本体10に割れが発生することが抑えられる。外部電極層30の亀裂、水分の浸入、浸入した水分による部品本体10の割れ等が抑えられることで、部品本体10及びそれを備える固体電池1の充放電特性等の特性低下が抑えられる。
【0047】
図4は実施形態に係る固体電池の変形例について説明する図である。
図4(A)及び
図4(B)にはそれぞれ、固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
図4(A)に示す固体電池1aは、第1層31及び第2層32を含む外部電極層30と、その表面のめっき層40とを有する外部接続端子20を備える。固体電池1aでは、第2層32が、第1層31の一部を覆うように、設けられる。第2層32は、第1層31の一部として、部品本体10のエッジ部10c及びエッジ部10dにおいて薄くなった部位が形成された第1層31の、当該薄くなった部位を覆うように、設けられる。例えば、第1層31は、部品本体10の外面10e上において、エッジ部10c及びエッジ部10dから寸法W1の領域に設けられ、第2層32は、エッジ部10c及びエッジ部10dから寸法W1よりも小さい寸法W2の領域に設けられる。固体電池1aは、このような構成を有する点で、上記固体電池1(
図3(A)及び
図3(B))と相違する。
【0048】
固体電池1aのように、第1層31と第2層32とを含む外部電極層30は、第1層31が単層で存在する領域と、第1層31と第2層32とが積層されて存在する領域とを有してもよい。この場合、第1層31が単層で存在する領域と、第1層31と第2層32とが積層されて存在する領域との間には、段差34が形成される。第2層32は、エッジ部10c及びエッジ部10dにおいて薄くなった第1層31の部位を覆うことができれば、第1層31の全部に限らず、第1層31の一部を覆うように設けられてもよい。
【0049】
図4(B)に示す固体電池1bは、外部電極層30とめっき層40とを有する外部接続端子20の、当該外部電極層30が、第1層31及び第2層32に加えて、第3層33を更に含む構成を有する。固体電池1bは、このような構成を有する点で、上記固体電池1(
図3(A)及び
図3(B))と相違する。
【0050】
第3層33は、部品本体10の端面10a側及び端面10b側であって、各々の第2層32の外側にそれぞれ設けられる。第3層33は、第3導電材料及び第3絶縁材料が含有される第3層33用ペーストを用いて形成される。第3導電材料には、粉末状のAg等の金属が用いられる。第3絶縁材料には、粉末状のガラス或いは熱硬化性の樹脂が用いられる。第3層33用ペーストには、第3導電材料及び第3絶縁材料のほか、樹脂、溶剤等の有機成分が含有される。第3層33は、部品本体10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ、第3層33用ペーストをディップ法によって塗布し、それを所定の熱処理によって焼き付けるか或いは硬化することで、形成される。熱処理により、第3層33用ペースト中の有機成分が除去され得る。これにより、部品本体10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ、第3導電材料である金属と、第3絶縁材料であるガラス或いは樹脂とを含有する第3層33が形成される。
【0051】
第3層33の形成は、例えば、第2層32の形成後、即ち、第2層32用ペーストの塗布及び熱処理による焼き付け又は硬化後に、行われる。
尚、第3層33用ペーストの第3絶縁材料として熱硬化性の樹脂を用いる場合には、その硬化温度を第1層31用ペースト(或いは第1層31用及び第2層32用ペースト)の焼き付け温度よりも低温化し、部品本体10への熱ダメージを抑えることも可能である。また、第3層33用ペーストの第3絶縁材料として、熱硬化性の樹脂のほか、光硬化性の樹脂を用いることも可能である。
【0052】
固体電池1bのように、第1層31及び第2層32に加え、第3層33を更に設けることで、外部電極層30が薄くなり易いエッジ部10c及びエッジ部10dにおける当該外部電極層30の厚さを更に厚くすることが可能になる。例えば、第1層31の外側に第2層32を設けても、エッジ部10c及びエッジ部10dにおける外部電極層30の厚さが、水分の浸入等を抑えるのに十分でないような場合には、更に第3層33を設け、外部電極層30の厚さを更に厚くし、水分の浸入等が十分に抑えられるようにしてもよい。
【0053】
尚、固体電池1bにおいて、外部接続端子20における外部電極層30の層数は、第1層31、第2層32及び第3層33の3層に限らず、4層以上とされてもよい。この場合、外部電極層30に含まれる各層は、例えば、下地となる層のペーストの塗布及び熱処理後に、形成される。
【0054】
また、固体電池1bにおいて、上記固体電池1a(
図4(A))の例に従い、第2層32は、第1層31の一部を覆うように設けられてもよく、第3層33は、第2層32の一部を覆うように設けられてもよい。外部電極層30を4層以上とする場合も同様である。
【0055】
ここでは固体電池1、1a、1bを例にしたが、積層チップコンデンサや積層チップインダクタ等、部品本体の端面に外部接続端子を設ける各種電子部品の、当該外部接続端子に対し、上記固体電池1、1a、1bの外部接続端子20と同様の構成を採用することが可能である。当該構成を採用することにより、各種電子部品について、上記外部接続端子20について述べたのと同様の効果を得ることが可能である。
【0056】
以下、固体電池の実施例及び比較例並びにそれらの特性について説明する。
(実施例1)
正極層11及び負極層12とそれらの間に介在される電解質層13、並びに、これらの積層体の表面を、対向する端面10a及び端面10bを除いて覆うカバー層14を有する、固体電池1a(
図4(A))の部品本体10を準備した。
【0057】
準備した部品本体10の端面10a側及び端面10b側のうちの一方の端面側に、当該端面から部品本体10の外面10e上における寸法W1が400μmから900μmの範囲における所定の位置までの領域(ドクターブレードギャップが400μmから900μmの範囲における所定の値とも言える)に、Ag及びガラスを含有する第1層31用ペーストをディップ法で塗布し、塗布面が鉛直上方を向く状態にして所定の条件で乾燥した後、300℃から400℃の範囲における所定の温度で、10分から40分の範囲における所定の時間、熱処理を行って焼き付けた。これを部品本体10の端面10a側及び端面10b側の各々について行った。これにより、部品本体10の端面10aと当該端面10a側のエッジ部10cとを覆う第1層31、及び、部品本体10の端面10bと当該端面10b側のエッジ部10dとを覆う第1層31を形成した。
【0058】
次いで、第1層31を形成した部品本体10の端面10a側及び端面10b側のうちの一方の端面側に、当該端面から部品本体10の外面10e上における寸法W2が100μmから600μmの範囲における所定の位置までの領域(ドクターブレードギャップが100μmから600μmの範囲における所定の値とも言える)に、Ag及びガラスを含有する第2層32用ペーストをディップ法で塗布し、塗布面が鉛直上方を向く状態にして所定の条件で乾燥した後、300℃から400℃の範囲における所定の温度で、10分から40分の範囲における所定の時間、熱処理を行って焼き付けた。これを部品本体10の端面10a側及び端面10b側の各々について行った。これにより、端面10a側の第1層31の外側に設けられる第2層32、及び、端面10b側の第1層31の外側に設けられる第2層32を形成した。
【0059】
このようにして、第1層31及び第2層32を含む外部電極層30を形成した。形成した外部電極層30の表面に、電解めっき法を用いてめっき層40を形成した。これにより、実施例1の固体電池として、上記
図4(A)に示したような構成を有する固体電池1aを得た。以下では、この実施例1の固体電池を、「2回焼き付け」の固体電池とも言う。
【0060】
(比較例1)
上記実施例1で述べた第2層32の形成(第2層32用ペーストの塗布、乾燥及び焼き付け)を省略し、第1層31単層の外部電極層30を形成した。それ以外の点は、上記実施例1と同様とした。これにより、比較例1の固体電池を得た。以下では、この比較例1の固体電池を、「リファレンス」の固体電池とも言う。
【0061】
(比較例2)
上記実施例1で述べた第1層31用ペーストのディップ法による塗布及び乾燥後、その焼き付け(熱処理)を行うことなく、第2層32用ペーストのディップ法による塗布及び乾燥を行った。その後、第1層31用ペースト及び第2層32用ペーストを同時に、300℃から400℃の範囲における所定の温度で、10分から40分の範囲における所定の時間、熱処理を行って焼き付け、第1層31と第2層32との積層構造の外部電極層30を形成した。それ以外の点は、上記実施例1と同様とした。これにより、比較例2の固体電池を得た。以下では、この比較例2の固体電池を、「2回ディップ」の固体電池とも言う。
【0062】
(比較例3)
上記実施例1で述べた第1層31用ペーストのディップ法による塗布後、塗布面が鉛直下方を向く状態にして乾燥を行い、その後、熱処理を行って焼き付けた。上記実施例1で述べた第2層32の形成(第2層32用ペーストの塗布、乾燥及び焼き付け)は省略し、第1層31単層の外部電極層30を形成した。それ以外の点は、上記実施例1と同様とした。これにより、比較例3の固体電池を得た。以下では、この比較例3の固体電池を、「逆さ乾燥」の固体電池とも言う。
【0063】
(固体電池の特性評価)
実施例1及び比較例1-3の固体電池を、それぞれ複数個作製し、断面観察及び外観観察を行った。更に、複数個作製した実施例1及び比較例1-3の固体電池について、部品本体10の割れ発生率を評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
外観観察より、比較例1のリファレンスの固体電池では、外部電極層30(第1層31単層)の焼き付け後に亀裂(上記
図2(C)で述べたような亀裂101、以下同じ)の発生は認められなかったものの、めっき層40の形成後の部品本体10に割れ(上記
図2(C)で述べたような割れ102、以下同じ)の発生が認められた。表1より、比較例1のリファレンスの固体電池では、めっき層40の形成後における部品本体10の割れ発生率は77.1%であった。
【0066】
断面観察より、比較例2の2回ディップの固体電池では、エッジ部10c及びエッジ部10dにおいて、外部電極層30(第1層31と第2層32との積層構造)が、比較例1のリファレンスの固体電池における外部電極層30(第1層31単層)よりも厚く形成されることが確認された。外観観察より、比較例2の2回ディップの固体電池では、外部電極層30(第1層31と第2層32との積層構造)の焼き付け後に亀裂の発生が認められ、めっき層40の形成後の部品本体10に割れの発生も認められた。表1より、比較例2の2回ディップの固体電池では、めっき層40の形成後における部品本体10の割れ発生率は90.6%であった。
【0067】
断面観察より、比較例3の逆さ乾燥の固体電池では、エッジ部10c及びエッジ部10dにおいて、外部電極層30(第1層31単層)が、比較例1のリファレンスの固体電池における外部電極層30(第1層31単層)と同等若しくはそれよりも若干厚く形成されるが、比較例2の2回ディップの固体電池の外部電極層30(第1層31と第2層32との積層構造)よりは薄く形成されることが確認された。逆さ乾燥によってエッジ部10c及びエッジ部10dにおける外部電極層30の厚さを十分に厚くする効果は認められなかった。外観観察より、比較例3の逆さ乾燥の固体電池では、外部電極層30(第1層31単層)の焼き付け後に亀裂の発生は認められなかったものの、めっき層40の形成後の部品本体10に割れの発生が認められた。また、めっき層40に、その形成時の過電流に起因した焼けのような外観不良も認められた。表1より、比較例3の逆さ乾燥の固体電池では、めっき層40の形成後における部品本体10の割れ発生率は94.1%であった。
【0068】
断面観察より、実施例1の2回焼き付けの固体電池では、エッジ部10c及びエッジ部10dにおいて、外部電極層30(第1層31と第2層32との積層構造)が、比較例2の2回ディップの固体電池の外部電極層30(第1層31と第2層32との積層構造)と同等の厚さで形成されることが確認された。外観観察より、実施例1の2回焼き付けの固体電池では、外部電極層30(第1層31と第2層32との積層構造)の焼き付け後に亀裂の発生は認められず、めっき層40の形成後の部品本体10に割れの発生も認められなかった。表1より、実施例1の2回焼き付けの固体電池では、めっき層40の形成後における部品本体10の割れ発生率は0.0%であった。
【0069】
実施例1の固体電池以外の、比較例1-3の固体電池では、全個数中大多数の部品本体10に割れが発生し、外観で良品を確保できないレベルであった。
比較例1のリファレンスの固体電池及び比較例3の逆さ乾燥の固体電池では、エッジ部10c及びエッジ部10dにおける外部電極層30の厚さが比較的薄く、部品本体10の内部への水分の浸入を十分に抑えることができず、部品本体10に割れが発生し易い傾向があると言うことができる。
【0070】
比較例2の2回ディップの固体電池では、エッジ部10c及びエッジ部10dにおける外部電極層30の厚さは比較的厚くなるものの、焼き付け時に収縮に伴う亀裂(収縮亀裂)が発生し、部品本体10の内部への水分の浸入を十分に抑えることができず、部品本体10に割れが発生し易い傾向があると言うことができる。
【0071】
実施例1の固体電池では、エッジ部10c及びエッジ部10dにおける外部電極層30の厚さが比較的厚くなり、焼き付け時の亀裂の発生も抑えられる。外部電極層30を第1層31及び第2層32の積層構造とする場合、比較例2の2回ディップの固体電池のように、第1層31用ペースト及び第2層32用ペーストを同時に焼き付けるよりも、実施例1の2回焼き付けの固体電池のように、それらを順次別々に焼き付ける方が、亀裂の発生は抑えられる。従って、実施例1の固体電池では、部品本体10の内部への水分の浸入を十分に抑えることが可能になると言うことができる。
【0072】
更に、実施例1及び比較例1-3の固体電池について、インピーダンス特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
表2は、実施例1及び比較例1-3の固体電池の、外部電極層の焼き付け後及びめっき後にそれぞれ、100Hz及び0.1Hzを含む所定の周波数範囲で交流インピーダンス測定を行った結果を示したものである。表2には、複数の固体電池の、外部電極層の焼き付け後における100Hzのインピーダンスの平均値[Ω]、及び、めっき後における100Hzのインピーダンスの平均値[Ω]、並びに、それら平均値間の変化率[%]を示している。表2には更に、複数の固体電池の、外部電極層の焼き付け後における0.1Hzのインピーダンスの平均値[Ω]、及び、めっき後における0.1Hzのインピーダンスの平均値[Ω]、並びに、それら平均値間の変化率[%]を示している。また、表2には、実施例1及び比較例1の複数の固体電池について、温度85℃で湿度85%の高温高湿環境において容量が初期値の60%以下になる固体電池が発生するまでの時間である劣化時間[日]を併せて示している。
【0075】
比較例1のリファレンスの固体電池について得られたナイキストプロットでは、一部において、外部電極層30の焼き付け後に比べて、めっき層40の形成後でインピーダンスの矮小化が認められた。表2より、外部電極層の焼き付け後における100Hzのインピーダンスの平均値は123.5Ω、めっき後における100Hzのインピーダンスの平均値は124.9Ωで、それら平均値間の変化率は1.1%であった。表2より、外部電極層の焼き付け後における0.1Hzのインピーダンスの平均値は1475.9Ω、めっき後における0.1Hzのインピーダンスの平均値は1393.0Ωで、それら平均値間の変化率は-5.6%であった。また、所定の高温高湿環境において容量が初期値の60%以下になる固体電池が発生するまでの劣化時間は12.8日であった。
【0076】
比較例2の2回ディップの固体電池について得られたナイキストプロットでは、外部電極層30の焼き付け後は、比較例1のリファレンスの固体電池における外部電極層30の焼き付け後のインピーダンスと同等であった。比較例2の2回ディップの固体電池について得られたナイキストプロットでは、めっき層40の形成後は、インピーダンスの矮小化が認められた。表2より、外部電極層の焼き付け後における100Hzのインピーダンスの平均値は124.9Ω、めっき後における100Hzのインピーダンスの平均値は85.9Ωで、それら平均値間の変化率は-31.2%であった。表2より、外部電極層の焼き付け後における0.1Hzのインピーダンスの平均値は1363.3Ω、めっき後における0.1Hzのインピーダンスの平均値は226.3Ωで、それら平均値間の変化率は-83.4%であった。
【0077】
比較例3の逆さ乾燥の固体電池について得られたナイキストプロットでは、外部電極層30の焼き付け後は、比較例1のリファレンスの固体電池における外部電極層30の焼き付け後のインピーダンスと同等であった。但し、一部にはショートが認められた。比較例3の逆さ乾燥の固体電池について得られたナイキストプロットでは、めっき層40の形成後は、インピーダンスの矮小化が認められた。表2より、外部電極層の焼き付け後における100Hzのインピーダンスの平均値は123.4Ω、めっき後における100Hzのインピーダンスの平均値は106.8Ωで、それら平均値間の変化率は-13.5%であった。表2より、外部電極層の焼き付け後における0.1Hzのインピーダンスの平均値は1417.8Ω、めっき後における0.1Hzのインピーダンスの平均値は299.4Ωで、それら平均値間の変化率は-78.9%であった。
【0078】
実施例1の2回焼き付けの固体電池について得られたナイキストプロットでは、外部電極層30の焼き付け後は、比較例1のリファレンスの固体電池における外部電極層30の焼き付け後のインピーダンスと同等であった。実施例1の2回焼き付けの固体電池について得られたナイキストプロットでは、めっき層40の形成後も、インピーダンスに変動は認められなかった。表2より、外部電極層の焼き付け後における100Hzのインピーダンスの平均値は126.9Ω、めっき後における100Hzのインピーダンスの平均値は127.2Ωで、それら平均値間の変化率は0.2%であった。表2より、外部電極層の焼き付け後における0.1Hzのインピーダンスの平均値は1366.4Ω、めっき後における0.1Hzのインピーダンスの平均値は1375.7Ωで、それら平均値間の変化率は0.7%であった。また、所定の高温高湿環境において容量が初期値の60%以下になる固体電池が発生するまでの劣化時間は39.4日であった。
【0079】
尚、実施例1の2回焼き付けの固体電池について得られたナイキストプロットでは、導電接着剤を用いて実装した時(導電接着剤実装)及び半田を用いて実装した時(半田実装)のいずれにおいても、めっき層40の形成後に得られたインピーダンスからの有意の変動は認められなかった。
【0080】
実施例1の2回焼き付けの固体電池では、外部電極層30の焼き付け後とめっき層40の形成後でインピーダンスの変動が効果的に抑えられる。更に、実施例1の2回焼き付けの固体電池では、導電接着剤実装と半田実装のいずれの実装形態でもインピーダンスの変動が抑えられる。また、実施例1の2回焼き付けの固体電池では、比較例1のリファレンスの固体電池に比べて、容量が初期値の60%以下になる固体電池が発生するまでの劣化時間が大幅に伸びる。実施例1の2回焼き付けの固体電池では、インピーダンスの増大を抑えつつ、エッジ部10c及びエッジ部10dにおける外部電極層30を亀裂の発生を抑えて厚くし、部品本体10の内部への水分の浸入を十分に抑えて部品本体10の割れの発生を抑えることが可能になると言うことができる。
【0081】
外部電極層30を第1層31及び第2層32を含む構成とすることで、水分に対する耐性に優れた固体電池が実現される。これにより、外観不良の発生が抑えられる。そして、このような優れた特性を有する固体電池が、インピーダンスの増大が抑えられて実現される。
【0082】
実施例1の2回焼き付けの固体電池では、インピーダンスの増大を抑えつつ、エッジ部10c及びエッジ部10dにおける外部電極層30を亀裂の発生を抑えて厚くし、部品本体10の内部への水分の浸入を十分に抑えて部品本体10の割れの発生を抑え、十分な充放電特性を確保することが可能になると言うことができる。外部電極層30を第1層31及び第2層32を含む構成とすることで、水分に対する耐性に優れた固体電池が実現される。これにより、外観不良の発生が抑えられ、且つ、充放電特性に優れた固体電池が実現される。そして、このような優れた特性を有する固体電池が、インピーダンスの増大が抑えられて実現される。
【符号の説明】
【0083】
1、1a、1b、1A 固体電池
10 部品本体
10a、10b 端面
10c、10d エッジ部
10e 外面
11 正極層
12 負極層
13 電解質層
14 カバー層
20、20A 外部接続端子
30、30A 外部電極層
31 第1層
32 第2層
33 第3層
34 段差
40、40A めっき層
101 亀裂
102 割れ
W1、W2 寸法