(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145497
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】顆粒状茶葉の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/06 20060101AFI20241004BHJP
A23F 3/14 20060101ALI20241004BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20241004BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241004BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
A23F3/06 Z
A23F3/14
A21D13/80
A23L5/00 D
A23L29/00
A23L5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057872
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】303044712
【氏名又は名称】三井農林株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 智洋
(72)【発明者】
【氏名】清水 綾子
【テーマコード(参考)】
4B027
4B032
4B035
【Fターム(参考)】
4B027FB08
4B027FB10
4B027FB11
4B027FB30
4B027FC02
4B027FE03
4B027FE09
4B027FP69
4B027FP90
4B032DB21
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK29
4B032DK45
4B032DK47
4B032DL06
4B032DP12
4B032DP40
4B035LC01
4B035LE01
4B035LG05
4B035LG37
4B035LP21
4B035LP24
(57)【要約】
【課題】食感および風味に優れた、固く崩れにくい顆粒状茶葉を提供すること。
【解決手段】微粉砕茶葉を含む原料粉末を押出造粒により成型する際のバインダー液がエタノール水溶液であり、エタノール水溶液中のエタノール濃度が65~95質量%、微粉砕茶葉に対するエタノール水溶液の比率が70~110質量%であることを特徴とする顆粒状茶葉の製造方法。この製造方法により食感および風味に優れた、固く崩れにくい顆粒状茶葉を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉砕茶葉を含む原料粉末を押出造粒により成型することで得られる顆粒状茶葉の製造方法であって、バインダー液がエタノール水溶液であることを特徴とする、顆粒状茶葉の製造方法。
【請求項2】
エタノール水溶液中のエタノール濃度が65~95質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の顆粒状茶葉の製造方法。
【請求項3】
微粉砕茶葉に対するエタノール水溶液が70~110質量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の顆粒状茶葉の製造方法。
【請求項4】
原料粉末が実質的に茶葉のみからなることを特徴とする、請求項1に記載の顆粒状茶葉の製造方法。
【請求項5】
微粉砕茶葉の平均粒子径が25μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の顆粒状茶葉の製造方法。
【請求項6】
実質的に茶葉のみからなる押出造粒物であって、崩壊性試験における非崩壊率が70%以上であることを特徴とする顆粒状茶葉。
【請求項7】
請求項6に記載の顆粒状茶葉を含む食品。
【請求項8】
ティーバッグまたは製菓である請求項7に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状茶葉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶葉の利用方法は様々であり、飲用として茶葉をティーポットや急須に入れ、熱水、温水または冷水を注いで抽出する方法や、茶葉を封入したティーバッグをカップなどに入れ、熱水、温水または冷水で抽出する方法がある。また、茶葉の抽出液を粉末化し、お湯を注ぐだけで手軽に飲用できるインスタント粉末茶などの形態もある。飲用以外にも、焼き菓子などの製菓や料理に茶葉をそのまま使用し、風味や食感を楽しむ方法などがある。
【0003】
他方、茶葉にはカテキン類、フラボノイド類をはじめとし、ビタミンE、ビタミンC、葉緑素、食物繊維などの有用な成分が豊富に含有されており、健康に寄与することが知られている。茶葉の栄養成分を丸ごと摂取できる形態として、抹茶などの微粉砕茶葉があるが、微粉砕茶葉は凝集性が高いため、熱水、温水または冷水、その他液体を注ぐとダマになり易く、分散性が悪い。また、粒が細かいことにより粉舞が発生するなど、取り扱いにも問題がある。さらに、ティーバッグの様な包装体へ充填すると、フィルターからの粉漏れや粉噛みといった問題も発生する。
【0004】
また、抹茶のように微粉砕した茶葉を抽出用の茶葉として用いた場合では、内容成分が抽出されやすく、ボディー感のある抽出液が得られる一方で、口の中で茶葉がざらついたり、濁った外観となったりしてしまうことが課題となる。また、茶葉を製菓用に配合する場合では、微粉砕茶葉を用いると茶葉の存在感が得られず、茶葉の存在が感じられるサイズの粉砕品では食感を損なう原因となっていた。これら課題を解決する方法として、微粉砕茶葉を顆粒化することが一つの手段となる。
【0005】
これまで、茶葉の栄養を丸ごと摂取する形態として、粉末化した茶葉を顆粒化する技術が検討されてきた。微粉状の粉体を加工して顆粒化する手段としては、流動層造粒などの造粒があり、分散性向上を目的とした茶葉の顆粒が多く提案されている。例えば、特許文献1には、水に対する分散性に優れた、造粒時のバインダー液が水である粉末茶葉を90質量%以上含有する平均粒子径が80~180μmの造粒茶葉が、特許文献2には、平均粒子径が100~400μm、嵩比重が0.2~0.4g/mlであり、粉末茶葉を80質量%以上含有する、流動層造粒した粉末茶葉が開示されている。他にも、非特許文献1には、造粒による凝集防止、水への分散性向上を目的として、バインダー液に水とエタノールの混合液を使用することで、固い顆粒の生成を抑制した分散性の高い顆粒が得られる緑茶茶葉粉砕物と難消化性デキストリン混合物の顆粒化方法が提案されている。
【0006】
より大きい顆粒を得たい場合には、押出造粒が適している。押出造粒で顆粒化したものとして、特許文献3には、石臼や粉砕機で粉末化し、水をバインダー液として押出造粒したお茶、特許文献4には、製茶工程を簡易化する目的で摘採した茶の生葉を加熱殺菌後に粉末化し、難溶性高分子をバインダー液に配合して造粒して顆粒化することで、水や湯で浸出可能な成分のみを抽出して飲用する崩壊しない顆粒物が提案されている。特許文献5には、特にウーロン茶を比較的短時間に水で抽出することができ、かつ従来用途がなく捨てられていた粒度が60メッシュよりも細かい微粉末茶を、水をバインダー液として顆粒化した製造コストの安い水出し茶の製造方法が開示されている。しかしながら、分散性や溶解性向上が目的の顆粒状茶葉は、崩壊し易いことにより、口に含むと舌や喉にざらつきを強く感じ、好ましくない。また、水中で容易に崩壊することにより沈殿するため、微粉砕茶葉本来の風味がいかしきれない。さらに、ティーバッグへ封入した場合も、崩壊した微粉砕茶葉がフィルターから漏れやすく、粉噛みによる充填不良やライン汚染、歩留り低下に繋がるといった問題がある。そこで、食感および風味に優れた固く崩れにくい顆粒状茶葉が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-041660号公報
【特許文献2】特開2021-000047号公報
【特許文献3】特開平09-028295号公報
【特許文献4】特開昭62-006633号公報
【特許文献5】特開平01-108939号公報
【0008】
【非特許文献1】微粉砕と造粒による緑茶茶葉の粉末素材化、三重県工業研究所研究報告、2016年、No.40、P49-53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の通り、微粉砕茶葉の顆粒化について、いくつかの方法が開示されているが、その多くは分散性や溶解性の改善を目的とし、造粒時のバインダー液は主に水、または水溶性の賦形剤との組合せとなっている。その他、微粉砕茶葉の凝集や結着を防ぐ目的で、バインダー液にエタノール水溶液が使用されている。一方で、崩れにくい顆粒を得るためには、特許文献4のように、難水溶性のアルギン酸ナトリウムやメチルセルロースなどの賦形剤をバインダー液に配合する必要があるが、難水溶性成分により茶葉の風味が抑えられてしまい、食感および風味に優れた固く崩れにくい顆粒状茶葉のニーズには対応できない。したがって、本発明の目的は、食感および風味に優れた固く崩れにくい特徴をもつ実質的に茶葉のみから構成される顆粒茶葉の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、微粉砕茶葉を押出造粒する際のバインダー液にエタノール水溶液を用い、エタノール水溶液中のエタノール濃度を所定の濃度とし、これを所定の比率で微粉砕茶葉と混練することにより、食感および風味に優れた固く崩れにくい特徴をもつ実質的に茶葉のみから構成される顆粒状茶葉が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]微粉砕茶葉を含む原料粉末を押出造粒により成型することで得られる顆粒状茶葉の製造方法であって、バインダー液がエタノール水溶液であることを特徴とする、顆粒状茶葉の製造方法。
[2]エタノール水溶液中のエタノール濃度が65~95質量%であることを特徴とする、[1]に記載の顆粒状茶葉の製造方法。
[3]微粉砕茶葉に対するエタノール水溶液が70~110質量%であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の顆粒状茶葉の製造方法。
[4]原料粉末が実質的に茶葉のみからなることを特徴とする、[1]に記載の顆粒状茶葉の製造方法。
[5]微粉砕茶葉の平均粒子径が25μm以下であることを特徴とする、[1]に記載の顆粒状茶葉の製造方法。
[6]実質的に茶葉のみからなる押出造粒物であって、崩壊性試験における非崩壊率が70%以上であることを特徴とする顆粒状茶葉。
[7][6]に記載の顆粒状茶葉を含む食品。
[8]ティーバッグまたは製菓である[7]に記載の食品。
【0012】
本発明によれば、食感および風味に優れた固く崩れにくい特徴をもつ実質的に茶葉のみからなる顆粒状茶葉を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、特別な記載がない場合、「%」は質量%を示す。また、「下限値~上限値」の数値範囲は、特に他の意味であることを明記しない限り、「下限値以上、上限値以下」の数値範囲を意味する。
【0014】
本発明における茶葉とは、茶樹(Camellia SinensisやCamellia Sinensis var. assamica、またはこれらの雑種)の葉、茎から製造された茶葉(例えば、煎茶、碾茶、玉露、かぶせ茶、番茶、ほうじ茶、茎茶、釜炒緑茶等の不発酵茶、紅茶、烏龍茶、プーアル茶等の発酵茶、ジャスミン茶等の着香茶)であればよく、市販の茶葉を使用してもよい。
【0015】
本発明の顆粒状茶葉は、微粉砕茶葉を含む原料粉末を押出造粒により成型することで得られる。微粉砕茶葉とは上記茶葉を粉砕したものである。微粉砕茶葉の粉砕方法は、所望の粒子径をもった粉末が得られれば特に限定されるものではなく、一般的に知られる粉砕機、例えば気流式粉砕機、機械式粉砕機、ボールミル、石臼等を用いて微粉末化すればよい。微粉砕茶葉の粒子径は特に規定されるものではないが、平均粒子径は25μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは、10μm以下である。
【0016】
本発明の顆粒状茶葉の造粒に使用するバインダー液にはエタノール水溶液を用いる。エタノール水溶液中のエタノール濃度は、茶葉の種類にもよるが、65~95%が好ましく、75~95%がより好ましく、75~90%がさらに好ましい。この範囲とすることで、固く崩れにくい顆粒状茶葉が製造できる。また、エタノールは造粒後の乾燥工程で消失するため、実質的に茶葉のみからなることを特徴とする顆粒状茶葉が得られる。さらに固い顆粒を得たい場合は、他の賦形剤をバインダー液に配合してもよい。
【0017】
粉体を加工して顆粒化する手段として押出造粒、流動層造粒、攪拌造粒などの湿式造粒や乾式造粒、噴霧造粒などがあるが、本発明の造粒方法は、押出造粒とする。押出造粒は、原料となる粉体に水などを加えて混練機で混合・混練した後、圧力を加えて多数の孔をもつスクリーンから押し出し、カッターで一定の長さに切断、粒状に成型後に乾燥することによって顆粒を得る造粒方法である。押出造粒機にはスクリュー式、ロール式などがあるが、本発明では特に制限はない。また、押し出しする際のスクリーンの孔径は使用用途により適宜選択すればよいが、本発明においては好適なスクリーン孔径として1mmφ程度を例示できる。スクリーンを通過させた顆粒は、次いで通常使用される方法で乾燥させる。さらに、目的に応じて整粒機にて所望のサイズとなるように整粒するのが好ましい。微粉砕茶葉量に対するエタノール水溶液量は、70~110%が好ましく、より好ましくは80~100%、さらに好ましくは85~95%である。
【0018】
本発明で得られる顆粒状茶葉の崩れにくさは、崩壊性試験で非崩壊率を求めることにより、評価することができる。崩壊性試験の具体的な方法は、実施例の項に記載する。非崩壊率は、一定量の顆粒状茶葉に一定条件の振動を加えて篩に通し、振動前の顆粒状茶葉の質量に対する振動後に崩れずに篩上に残った顆粒状茶葉の質量の百分率(振動後顆粒状茶葉/振動前顆粒状茶葉×100)を求めることで得られる。非崩壊率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が最も好ましい。
【0019】
本発明の製造方法によれば、微粉砕茶葉を含む原料粉末から効率よく顆粒状茶葉を得ることができる。この効率性は原料として用いた微粉砕茶葉の質量に対する顆粒状茶葉の収量の百分率(顆粒状茶葉/微粉砕茶葉×100)を求めることで把握することができ、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、最も好ましくは80%以上である。
また、押出造粒時の歩留りは、顆粒化率を求めることで把握することができる。顆粒化率は、乾燥後に得られる押出造粒品の質量(押出造粒出来高)に対する顆粒状茶葉の収量の百分率(顆粒状茶葉/押出造粒出来高×100)とし、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、最も好ましくは80%以上である。
【0020】
本発明の顆粒状茶葉は、固く崩れにくい特徴や微粉砕茶葉の有する独特の風味を活用して、各種食品に好適に使用することができる。その中でも特に、ティーバッグや製菓を好ましい形態として例示することができる。
【0021】
本発明の顆粒状茶葉は、ティーバッグにも利用することができる。微粉砕状の茶葉は、ティーバッグのフィルターの詰まりや漏れを発生し易く、抽出不良や、充填時の粉噛みの要因となるが、本発明の顆粒状茶葉を利用することで、このような問題が抑制される。顆粒状茶葉をティーバッグに使用した場合、微粉砕茶葉のボディー感のある風味を享受することができる一方で、清澄な抽出液が得られる特徴がある。ティーバッグに使用する際には、本発明の顆粒状茶葉のみを抽出バッグ内に封入してもよいし、通常用いられる茶葉と併用してもよく、その場合には茶葉全体に対して10~50%を顆粒状茶葉とするのが好ましい。また、茶葉以外にも乳原料、クリーミングパウダー、糖類、乾燥果実、香辛料などの1種または2種類以上組み合わせても良い。本発明の顆粒状茶葉を使用する場合では、通常の茶葉を用いた場合に比べて力強い風味が得られるため、茶葉の風味が相対的に弱くなりやすいミルクティーのティーバッグに好適に利用することができる。
【0022】
本発明の顆粒状茶葉は、クッキーやスコーン、マドレーヌ、パウンドケーキ、マカロン、せんべいなどの焼き菓子の製菓にも使用することができる。本発明の顆粒状茶葉を製菓に使用した場合、通常の茶葉を使用した場合と比較して、食べたときに口残りしにくい。また、本発明の顆粒状茶葉は崩れにくいため、製菓工程を経ても形状を保持しており、食べると茶葉の風味が強く感じられ、ザクザクした食感を付与することができる。製菓は公知の方法であればよく、生地に対して顆粒状茶葉を1~3%配合するのが好ましい。
【実施例0023】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0024】
<崩壊性試験方法>
崩壊性の評価は、押出造粒で得られた顆粒状茶葉(アッサム、ジャスミン、抹茶)5gを、50mlの遠心分離用コニカルチューブ(コーニング社製、Falconチューブ)に入れ、ボルテックスミキサー((株)IKA製、MS1S1)を用いて、回転数2500rpm、時間30秒の条件で振動させた後、16メッシュ(目開き1mmφ)の篩に通し、崩れずにメッシュオンした顆粒状茶葉の質量(振動後顆粒状茶葉)を計量した。非崩壊率は、振動前顆粒状茶葉5gに対する振動後顆粒状茶葉の質量の百分率(振動後顆粒状茶葉/振動前顆粒状茶葉×100)により求めた。
【0025】
<試験例1>
紅茶葉(アッサム)をジェットミル((株)セイシン企業製)で粉砕後、100メッシュの篩で未粉砕物や異物を除去し、平均粒子径4.5μmの微粉砕紅茶葉(アッサム)を得た。粒子径は、水を分散媒として、レーザー回折散乱式の粒度分布計(LMS-300(株)セイシン企業製)を用いて測定し、体積基準での累積50%径を平均粒子径とした。得られた微粉砕紅茶葉(アッサム)30gを、表1に示した濃度のエタノール水溶液21gで混練し、ステンレス製の1mmφメッシュボールに押し当て、円柱状に押し出した。次いで、75℃に設定した恒温機内で1時間乾燥後、16メッシュ(目開き1mmφ)の篩で顆粒状に整粒した。このようにして得られた16メッシュオンの顆粒状紅茶葉(アッサム)について、上記の試験方法に従い、崩壊性を評価した。また、前述の通り、微粉砕茶葉から押出造粒で顆粒状茶葉を得る際の効率性と歩留りを把握するため、原料として用いた微粉砕茶葉の質量に対する顆粒状茶葉の収量の百分率(顆粒状茶葉/微粉砕茶葉×100)と顆粒化率(顆粒状茶葉/押出造粒出来高×100)を求めた。結果を表1に示した。
【0026】
【0027】
表1に示したとおり、エタノール水溶液をバインダーとした押し出し造粒によって、固く崩れにくい顆粒状紅茶葉が得られることが確認された。特に、エタノール水溶液中のエタノール濃度を65~95%(実施例1-2~1-8)とすることによって、崩壊性試験における非崩壊率が70%以上となることが確認された。他方、エタノール濃度が100%では非崩壊率が低下しており、これは混練時のバインダー液として高濃度のエタノールを投入すると、エタノールが蒸発しやすいことによって、混練が不十分となることが示唆される。一方で、効率性を示す微粉砕茶葉の質量に対する顆粒状茶葉の収量の百分率(顆粒状紅茶葉/微粉砕紅茶葉×100)は、エタノール水溶液中のエタノール濃度が低いと低下する傾向が確認された。また、歩留りを示す顆粒化率(顆粒状茶葉/押出造粒出来高×100)も同様に、エタノール濃度が低いと低下する傾向が確認された。このことは、エタノール水溶液中のエタノール濃度が低いほど、崩れやすい顆粒の生成が促進されやすいことに起因すると推測された。これらの結果から、微粉砕茶葉を押出造粒する際のバインダー液をエタノール水溶液とし、さらに、エタノール水溶液中のエタノール濃度を所定量以上の範囲とすることによって、固く崩れにくい顆粒状茶葉が得られることが確認された。
【0028】
<試験例2>
試験例1において、非崩壊率が最も高かった試験例1-6と同様に、エタノール濃度85%のエタノール水溶液を使用し、微粉砕茶葉量に対するエタノール水溶液量を10~130%の範囲とした以外は試験例1と同様の方法で押出造粒して顆粒状紅茶葉を得た。得られた顆粒状紅茶葉の評価結果を表2に示した。
【0029】
【0030】
表2に示したとおり、微粉砕茶葉量に対するエタノール水溶液量を70~110%(実施例2-4~2-6)とすることによって、非崩壊率が70%以上となり、より固く崩れにくい顆粒状茶葉が得られることが確認された。さらに、微粉砕茶葉量に対するエタノール水溶液量を90%とした実施例2-5では、崩れにくさを示す非崩壊率、効率性を示す微粉砕茶葉の質量に対する顆粒状茶葉の収量の百分率(顆粒状紅茶葉/微粉砕紅茶葉×100)、歩留りを示す顆粒化率(顆粒状茶葉/押出造粒出来高×100)の全てが90%以上となることが確認された。他方、微粉砕茶葉量に対するエタノール水溶液量の割合が高すぎると混練時にスラリー状になるため、押し出しがうまくいかずに乾燥後固着することが確認された。一方で、微粉砕茶葉量に対するエタノール水溶液量の割合が低くなると、脆い顆粒の生成が促進される傾向が確認された。これらの結果から、エタノール濃度が所定量以上のエタノール水溶液を用いることに加えて、微粉砕茶葉とエタノール水溶液を所定の比率で混練することによって、固く崩れにくい顆粒状茶葉が得られることが確認された。
【0031】
<試験例3>
試験例1と同様の方法で、平均粒子径約20μmの微粉砕茶葉(ジャスミン)と平均粒子径約20μmの抹茶を作製し、試験例2の崩壊性試験の評価結果が良好であった試験例2-5と同条件で、顆粒状茶葉(ジャスミン、抹茶)を作製した。得られた顆粒状茶葉(ジャスミン、抹茶)の評価結果を表3に示した。
【0032】
【0033】
表3に示したとおり、顆粒状紅茶葉(アッサム)と同様に、エタノール水溶液中のエタノール濃度が85%、微粉砕茶葉使用量に対するエタノール水溶液使用量が90%の条件での非崩壊率は90%以上となり、固く崩れにくい顆粒状茶葉が得られることが確認された。これらの結果から、異なる茶種においても所定量以上のエタノール濃度且つ所定の比率の微粉砕茶葉量とエタノール水溶液量とすることによって、固く崩れにくい顆粒状茶葉が得られることが確認された。
【0034】
<試験例4>
試験例1~3の結果を受け、試験例1で得られた微粉砕紅茶葉(アッサム)を使用し、押出造粒機で顆粒状紅茶葉を作製し、押出機からの押し出しの可不可を評価した。エタノール水溶液中のエタノール濃度は50~95%とし、微粉砕茶葉量に対するエタノール水溶液量は、25~100%とした。また、スクリーンへの押し出し時のメッシュサイズは1.5mmφ、整粒時のメッシュサイズは2.0mmφとした。評価結果を表4に示した。
【0035】
【0036】
表4に示したとおり、押出造粒機において、エタノール水溶液中のエタノール濃度が70%以上、微粉砕茶葉量に対するエタノール水溶液量が70%であれば、押出機からの押し出しが可能であることが確認された。これにより、実機想定でのエタノール水溶液中のエタノール濃度および微粉砕茶葉量とエタノール水溶液量の比率目安が確認された。
【0037】
<試験例5>
試験例1で使用した紅茶葉(アッサム)1.5gと、試験例1で得られた微粉砕紅茶葉(アッサム)0.5g、試験例2の実施例2-5で得られた顆粒紅茶葉(アッサム)0.5g、紅茶葉(アッサム)の熱水抽出液を噴霧乾燥したインスタントティー(三井農林製)0.5gを、其々組み合わせてティーバッグへ封入し、熱水150mlで90秒抽出した抽出液を官能評価に用いた。コントロールには、紅茶葉(アッサム)2gのみを封入したティーバッグ抽出液を用いた(ストレートティー)。また、各ストレートティーに粉末クリーム(森永乳業製クリープ)6gを加え、同様にミルクティーでの以下に示す方法にて官能評価を実施した。評価結果は表6に示した。
【0038】
<官能評価方法>
官能評価の評価者は、風味や異臭についての識別やそれらの濃度識別についてトレーニングされ、日常業務として飲料の開発を担当している専門パネラー5名とした。評価には、紅茶葉と微粉砕紅茶葉、顆粒状紅茶葉、インスタントティー、粉末クリームを組み合わせて封入したティーバッグの抽出液(ストレートティー、ミルクティー)を用いた。評価は、表5に示した評価基準により、紅茶の香りやコク味の強弱、濁りや沈殿の有無を点数化し、同時にコメントを回収した。
【0039】
【0040】
【0041】
表6に示したとおり、ストレートティー(ティーバッグ)に顆粒状紅茶葉を使用すると、紅茶の香りやコク味が付与されることが確認された。また、微粉砕紅茶葉やインスタントティーは、紅茶の香りやコク味よりも渋味が強く出る傾向があるのに対し、顆粒状紅茶葉の渋味は強すぎないことが確認された。さらに、微粉砕紅茶葉やインスタントティーは濁りや沈殿が多いのに対し、顆粒状紅茶葉の抽出液は清澄であった。他方、ミルクティー(ティーバッグ)に顆粒状紅茶葉を使用すると、同様に紅茶の香りやコク味、強すぎない渋味が付与されることが確認された。一方、微粉砕紅茶葉をミルクティーで使用した場合、紅茶の風味が出づらい傾向が確認された。これは微粉砕紅茶葉がティーバッグのフィルターから漏れ出し、沈殿することによるものと示唆された。これらの結果から、本発明の製造方法で得られる顆粒状茶葉をティーバッグへ使用することで、優れた風味を付与できることが確認された。
【0042】
<試験例6>
試験例1で使用した紅茶葉(アッサム)を混ぜて焼いたクッキーをコントロールとして、試験例4―4で得られた顆粒状紅茶葉(アッサム)を混ぜて焼いたクッキーの風味と食感を以下に示す基準で評価した。紅茶葉と顆粒状茶葉の大きさは同程度に揃えた。評価結果は表7に示した。
【0043】
<官能評価方法>
官能評価の評価者は、風味や異臭についての識別やそれらの濃度識別についてトレーニングされ、日常業務として飲料の開発を担当している専門パネラー5名とした。評価には、紅茶葉と顆粒状紅茶葉を其々混ぜて焼いたクッキーを用いた。評価は、表7に示した評価基準により、紅茶の香りやコク味の強弱、食感の良悪を点数化し、同時にコメントを回収した。
【0044】
【0045】
【0046】
表8に示したとおり、顆粒状紅茶葉を混ぜて焼いたクッキーは、紅茶葉を混ぜて焼いたクッキーに比べて、風味や食感に優れることが確認された。具体的には、顆粒状茶葉が固く崩れにくいことによって、生地に顆粒状茶葉を混練する工程やオーブンで焼く工程を経ても、形状を維持することができるため、食べると存在感があり、紅茶の香りとコク味が口に広がり、ザクザクとした食感が感じられることが確認された。これらの結果から、本発明の製造方法で得られる顆粒状茶葉を製菓へ使用することで、優れた風味と食感を付与できることが確認された。