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特開2024-145503電磁波吸収部材、電磁波吸収部材の製造方法
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  • 特開-電磁波吸収部材、電磁波吸収部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145503
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電磁波吸収部材、電磁波吸収部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20241004BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H05K9/00 V
H05K9/00 M
H01Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057884
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】関 佑太
(72)【発明者】
【氏名】松下 大雅
【テーマコード(参考)】
5E321
5J020
【Fターム(参考)】
5E321BB21
5E321BB34
5E321BB53
5E321GG05
5E321GG11
5J020EA03
5J020EA04
5J020EA05
5J020EA07
5J020EA08
(57)【要約】
【課題】スペーサ層の厚みにバラつきがあった場合に、そのバラつきによって生じるミリ波吸収特性の不安定さを補正することがきる電磁波吸収部材、および電磁波吸収部材の製造方法を提供する。
【解決手段】抵抗層20と、スペーサ層30と、複合層40と、を有し、抵抗層20と、スペーサ層30と、複合層40とがこの順に積層されており、複合層40は、反射層41と、反射層41を介して積層された第1誘電率調整層42および第2誘電率調整層43と、を有する、電磁波吸収部材10の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗層と、スペーサ層と、複合層と、を有し、
前記抵抗層と、前記スペーサ層と、前記複合層とがこの順に積層されており、
前記複合層は、反射層と、前記反射層を介して積層された第1誘電率調整層および第2誘電率調整層と、を有し、前記スペーサ層の厚みバラツキに応じ、前記第1誘電率調整層側、あるいは前記第2誘電率調整層側のいずれかを前記スペーサ層側と対向させるか選択する、電磁波吸収部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1誘電率調整層と前記第2誘電率調整層は、比誘電率が等しい材料からなり、
前記第1誘電率調整層の厚みと前記第2誘電率調整層の厚みが異なる、請求項1に記載の電磁波吸収部材の製造方法。
【請求項3】
前記第1誘電率調整層と前記第2誘電率調整層は、比誘電率が異なる材料からなり、
前記第1誘電率調整層の厚みと前記第2誘電率調整層の厚みが等しい、請求項1に記載の電磁波吸収部材の製造方法。
【請求項4】
抵抗層と、スペーサ層と、複合層と、を有し、
前記抵抗層と、前記スペーサ層と、前記複合層とがこの順に積層されており、
前記複合層は、反射層と、前記反射層を介して積層された第1誘電率調整層および第2誘電率調整層と、を有し、
前記第1誘電率調整層が式(5)及び式(6)を満たし、
前記第2誘電率調整層が式(7)及び式(8)を満たす、電磁波吸収部材。
1.0λ/4ε 1/2≦h≦1.1λ/4ε 1/2・・・(5)
1.0λε 1/2/4≦hε+hε≦1.1λε 1/2/4・・・(6)
0.8λ/4ε 1/2≦h≦1.0λ/4ε 1/2・・・(7)
0.9λε 1/2/4≦hε+hε≦1.1λε 1/2/4・・・(8)
(h:スペーサ層の厚み、h:第1誘電率調整層の厚み、h:第2誘電率調整層の厚み、ε:スペーサ層と隣接する誘電率調整層の合計の比誘電率、h:第1誘電率調整層の比誘電率、h:第2誘電率調整層の比誘電率、λ:対象電磁波の波長)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収部材、および電磁波吸収部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の周波数の電磁波を選択的に吸収するシート状の電磁波吸収部材が知られている。
【0003】
λ/4型の電磁波吸収部材は、スペーサ層(誘電体層)の厚みがミリ波吸収特性の評価に大きく影響する。そのため、比誘電率が大きなスペーサ層は、厚みに高い精度が求められる。誘電体層の厚みのバラつきが大きい場合、電磁波吸収部材は、安定したミリ波吸収特性を得られないという課題があった。
【0004】
例えば、特許文献1には、λ/4型の電磁波吸収部材において、スペーサ層における反射層の貼合面と反対側の面に厚み調整層を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4176082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、スペーサ層の厚みにバラつきがあった場合に、そのバラつきによって生じるミリ波吸収特性の不安定さを補正することができなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、スペーサ層の厚みにバラつきがあった場合に、そのバラつきによって生じるミリ波吸収特性の不安定さを補正することができる電磁波吸収部材、および電磁波吸収部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の電磁波吸収部材、および電磁波吸収部材の製造方法を提供する。
[1]抵抗層と、スペーサ層と、複合層と、を有し、
前記抵抗層と、前記スペーサ層と、前記複合層とがこの順に積層されており、
前記複合層は、反射層と、前記反射層を介して積層された第1誘電率調整層および第2誘電率調整層と、を有し、前記スペーサ層の厚みバラツキに応じ、前記第1誘電率調整層側、あるいは前記第2誘電率調整層側のいずれかを前記スペーサ層側と対向させるか選択する、電磁波吸収部材の製造方法。
[2]前記第1誘電率調整層の厚みと前記第2誘電率調整層の厚みが異なる、[1]に記載の電磁波吸収部材の製造方法。
[3]前記第1誘電率調整層と前記第2誘電率調整層は、比誘電率が異なる材料からなる、[1]に記載の電磁波吸収部材の製造方法。
[4]抵抗層と、スペーサ層と、複合層と、を有し、
前記抵抗層と、前記スペーサ層と、前記複合層とがこの順に積層されており、
前記複合層は、反射層と、前記反射層を介して積層された第1誘電率調整層および第2誘電率調整層と、を有し、
前記第1誘電率調整層が式(5)及び式(6)を満たし、
前記第2誘電率調整層が式(7)及び式(8)を満たす、電磁波吸収部材。
1.0λ/4ε 1/2≦h≦1.1λ/4ε 1/2・・・(5)
1.0λε 1/2/4≦hε+hε≦1.1λε 1/2/4・・・(6)
0.8λ/4ε 1/2≦h≦1.0λ/4ε 1/2・・・(7)
0.9λε 1/2/4≦hε+hε≦1.1λε 1/2/4・・・(8)
(h:スペーサ層の厚み、h:第1誘電率調整層の厚み、h:第2誘電率調整層の厚み、ε:スペーサ層と隣接する誘電率調整層の合計の比誘電率、h:第1誘電率調整層の比誘電率、h:第2誘電率調整層の比誘電率、λ:対象電磁波の波長)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スペーサ層の厚みにバラつきがあった場合に、そのバラつきによって生じるミリ波吸収特性の不安定さを補正することがきる電磁波吸収部材、および電磁波吸収部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収部材の製造方法によって製造される電磁波吸収部材を模式的に示し、厚みに沿う面の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収部材の製造方法によって製造される電磁波吸収部材を構成する抵抗層の一例を示す上面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収部材の製造方法によって製造される電磁波吸収部材を模式的に示し、厚みに沿う面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電磁波吸収部材の製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
本明細書において「導電体パターン」とは、幾何学的な図形である単位の集合体であり、ある周波数の電磁波を選択的に吸収する物体を意味する。「導電体パターン」はいわゆるアンテナと同様の機能を有するともいえる。
本明細書において「ミリ波領域の電磁波」とは、波長が1mm~10mmの電磁波を意味する。「ミリ波領域の電磁波」とは、周波数が30GHz~300GHzである電磁波ともいえる。
本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味し、段階的に記載される場合、それらの下限値及び上限値を自由に選択することができる。
【0013】
[電磁波吸収部材の製造方法]
図1は、本発明の一実施形態に係る電磁波吸収部材の製造方法によって製造される電磁波吸収部材を模式的に示し、厚みに沿う面の断面図である。
図1に示すように、本実施形態の電磁波吸収部材10は、抵抗層20と、スペーサ層30と、複合層40と、を有する。また、抵抗層20と、スペーサ層30と、複合層40とがこの順に積層されている。
【0014】
複合層40は、反射層41と、反射層41を介して積層された第1誘電率調整層42および第2誘電率調整層43と、を有する。複合層40では、第1誘電率調整層42と、反射層41と、第2誘電率調整層43とがこの順に積層されている。
【0015】
抵抗層20は、スペーサ層30の一方の面(表面)30a側に配置される。複合層40は、スペーサ層30の他方の面(裏面)30b側に配置される。スペーサ層30は、抵抗層20と複合層40の間に配置される。すなわち、抵抗層20と複合層40は、スペーサ層30を介して積層されている。
【0016】
抵抗層20は、単層であってもよく、図1に示すように基材21と、基材21上に形成された導電体パターン22とを含んでもよい。
抵抗層20が単層である場合、抵抗層20は後述する導電体パターン22と同様の材料から構成される。
抵抗層20は、第1接着剤層51を介して、スペーサ層30に積層されている。
【0017】
複合層40は、第2接着剤層52を介して、スペーサ層30に積層されていてもよい。
【0018】
「抵抗層」
抵抗層20は周波数選択表面(FSS:Frequency Selective Surface)からなる。周波数選択表面とは、導電性部材などで波長以下の形状の連続構造を形成することにより、特定の周波数の電磁波のみを遮断または透過することができる面のことである。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係る電磁波吸収部材の製造方法によって製造される電磁波吸収部材を構成する抵抗層の一例を示す上面図である。図2に示すように、抵抗層20は、例えば、平板状である基材21と、基材21の一方の面21aに形成された導電体パターン22とを有する電磁波吸収フィルムである。導電体パターン22は、例えば、第1の導電体パターン101、第2の導電体パターン102および第3の導電体パターン103からなる。
【0020】
(第1の導電体パターン)
図2に示すように第1の導電体パターン101は、複数の第1の単位u1で構成されている。第1の単位u1のそれぞれは、幾何学的な図形である。
すなわち、第1の導電体パターン101は、幾何学的な図形である第1の単位u1の集合体であるともいえる。
第1の単位u1は、それぞれが1つのアンテナとして機能する。第1の導電体パターン101は、例えば、FSS素子の細線パターンでもよい。
【0021】
第1の導電体パターン101においては、複数の第1の単位u1が図2中の両矢印Pで示す方向に沿って配列された第1の配列R1が複数形成されている。第1の導電体パターン101は複数の第1の配列R1を有するともいえる。第1の導電体パターン101は、複数の第1の配列R1を両矢印Pで示す方向に沿って、所定の間隔で基材21上に形成することで構成できる。
複数の第1の配列R1同士の間隔は特に制限されない。第1の配列R1同士の間隔は、規則的でも不規則的でもよい。
【0022】
図2に示すように、第1の単位u1の形状は上下左右対称の十字状である。具体的に第1の単位u1は、1つの十字部分S1と、4つの端部T1とを有する。十字部分S1は、図2中のx軸方向に平行な直線部分とy軸方向に平行な直線部分とで構成される。x軸方向に平行な直線部分の両端とy軸方向に平行な直線部分の両端のそれぞれに、各直線部分と直交するように直線状の各端部T1が接している。
【0023】
第1の単位u1のx軸方向の長さや、4つの端部T1のそれぞれのx軸方向の長さをそれぞれ調整することで、1つのアンテナとして機能する第1の単位u1による電磁波の透過特性を調節できる。y軸方向も同様にして、電磁波の透過特性を調節できる。
【0024】
ただし、第1の単位の形状は十字状に限定されない。第1の単位の形状は、第1の導電体パターン101によって透過される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値が、A[GHz]となる態様であれば、特に限定されない。
例えば、第1の単位である図形の形状としては、円形状、環状、直線状、方形状、多角形状、H字状、Y字状、V字状等が挙げられる。
【0025】
抵抗層20においては、複数の第1の単位u1の形状は互いに同一である。ただし、複数の第1の単位u1の形状は互いに同一の図形でなくてもよい。本発明の他の例においては、複数の第1の単位の形状は、目的とする周波数に透過特性を調整できれば、互いに同一でもよく、異なってもよい。
【0026】
第1の導電体パターン101は、以下の周波数A[GHz]である電磁波の透過性を向上させる。
本実施形態における抵抗層20においては、周波数の値Aは、20GHz~110GHzが好ましく、60GHz~100GHzがより好ましく、70GHz~90GHzが特に好ましい。周波数の値Aが前記数値範囲内であると、得られる電磁波吸収部材10がミリ波領域の電磁波を吸収でき、自動車用部品、道路周辺部材、建築外壁関連材、窓、通信機器、電波望遠鏡等に適用しやすく易くなる。
【0027】
第1の単位u1の材質は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。
第1の単位の材質としては、例えば、金属の細線、導電性薄膜、導電性ペーストの定着物等が挙げられる。
金属の材質としては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金またはこれらの金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、レニウムタングステン等)が挙げられる。
導電性薄膜の材質としては、金属粒子、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー等が挙げられる。
【0028】
第1の単位u1である図形の端部同士の間隔は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。
例えば、第1の単位u1である図形の端部同士の間隔は、全て同一でもよく、互いに異なっていてもよい。ただし、周囲環境の影響を受けにくい抵抗層を設計しやすくなり、透過する電磁波の周波数帯の精度が製造時に向上することから、第1の単位u1である図形の端部同士の間隔は、互いに同一であることが好ましい。
【0029】
(第2の導電体パターン)
図2に示すように、第2の導電体パターン102は、複数の第2の単位u2で構成される。
第2の導電体パターン102は、第1の導電体パターン101と同様に形成されている。
【0030】
第2の導電体パターン102は、周波数が下記式(1)を満たすB[GHz]である電磁波を選択的に透過する。周波数の値B[GHz]は、第2の導電体パターン102を透過する電磁波の透過量が極大値を示すときの周波数の値である。周波数の値B[GHz]は、下記式(1)を満たす。
1.037×A≦B≦1.30×A・・・式(1)
【0031】
上記式(1)に示すように、第2の導電体パターン102は、周波数が1.037×A[GHz]~1.30×A[GHz]である電磁波を透過する。第2の導電体パターン102は、周波数が1.17×A[GHz]~1.30×A[GHz]である電磁波を透過することが好ましい。
第2の導電体パターン102が1.037×A[GHz]以上の周波数の電磁波を透過するため、A[GHz]より高周波数の周波数帯で第2の導電体パターン102による電磁波の透過量のピークと第1の導電体パターン101による電磁波の透過量のピークとが充分に重なりあう。その結果、第1の導電体パターン101を単独で有する場合と比較して、抵抗層20全体で透過可能な電磁波の周波数帯がA[GHz]より高周波数側の周波数帯に拡張される。
第2の導電体パターン102が1.30×A[GHz]以下の周波数の電磁波を透過するため、A[GHz]より高周波数の周波数帯で第2の導電体パターン102による電磁波の透過量のピークと第1の導電体パターン101による電磁波の透過量のピークとの周波数の差が少なくなる。その結果、抵抗層20全体で透過する電磁波の透過量が極大値となる単一のピークが形成される。
以上より、第2の導電体パターン102は周波数が1.037×A[GHz]~1.30×A[GHz]である電磁波を透過するため、電磁波吸収部材10全体で透過する電磁波の透過量が高周波数側の周波数帯に拡張される。
【0032】
第2の導電体パターン102を構成する第2の単位の材質は、B[GHz]の電磁波を透過できる態様であれば、特に限定されず、目的とする周波数に透過特性を調整できれば、特に限定されない。
第2の単位の材質としては、第1の単位u1の材質について説明した内容と同内容である。
【0033】
(第3の導電体パターン)
図2に示すように第3の導電体パターン103は、複数の第3の単位u3で構成される。
第3の導電体パターン103は、第1の導電体パターン101と同様に形成されている。
【0034】
第3の導電体パターン103は、周波数が下記式(2)を満たすC[GHz]である電磁波を選択的に透過する。周波数の値C[GHz]は、第3の導電体パターン103によって透過する電磁波の透過量が極大値を示すときの周波数の値である。周波数の値C[GHz]は、下記式(2)を満たす。
0.60×A≦C≦0.963×A・・・式(2)
【0035】
上記式(2)に示すように、第3の導電体パターン103は、周波数が0.60×A[GHz]~0.963×A[GHz]である電磁波を透過する。第3の導電体パターン103は、周波数が0.60×A[GHz]~0.83×A[GHz]である電磁波を透過することが好ましい。
第3の導電体パターン103が0.60×A[GHz]以上の周波数の電磁波を透過するため、A[GHz]より低周波数の周波数帯で第3の導電体パターン103による電磁波の透過量のピークと第1の導電体パターン101による電磁波の透過量のピークとの周波数の差が少なくなる。その結果、抵抗層20全体で透過する電磁波の透過量が極大値となる単一のピークが形成される。
第3の導電体パターン103が0.963×A[GHz]以下の周波数の電磁波を透過するため、A[GHz]より低周波数の周波数帯で第3の導電体パターン103による電磁波の透過量のピークと第1の導電体パターン101による電磁波の透過量のピークとが充分に重なりあう。その結果、抵抗層20全体で透過可能な電磁波の周波数帯が第1の導電体パターン101を単独で有するフィルムと比較して、A[GHz]より低周波数側の周波数帯に拡張される。
以上より、第3の導電体パターン103は周波数が0.60×A[GHz]~0.963×A[GHz]である電磁波を透過するため、抵抗層20全体で透過する電磁波の透過量が低周波数側の周波数帯に拡張される。
【0036】
第3の導電体パターン103を構成する第3の単位u3の材質は、C[GHz]の電磁波を透過できる態様であれば、特に限定されず、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。
第3の単位u3の材質としては、第1の単位u1の材質について説明した内容と同内容である。
【0037】
図2に示す抵抗層20においては、第1の配列R1と第2の配列R2と第3の配列R3とが互いに隣り合うように両矢印Pで示す方向に沿って配列されている。このように、第1の配列R1と第2の配列R2と第3の配列R3とが互いに隣り合うように基材21に配置されているため、第1の導電体パターン101が選択的に透過する電磁波のピーク位置の周波数の値A[GHz]を基準として、第2の導電体パターン102が選択的に透過する電磁波の周波数帯と、第3の導電体パターン103が選択的に透過する電磁波の周波数帯の両方が重なりあう。その結果、抵抗層20全体で透過する電磁波の帯域が、ピーク位置の周波数の値A[GHz]を基準として、高周波数側と低周波数側との両方に拡張され易くなる。
【0038】
図2に示す、第1の単位u1と第2の単位u2との間隔d1、第2の単位u2と第3の単位u3との間隔d2、第3の単位u3と第1の単位u1との間隔d3は、互いに同一でもよく、異なってもよい。
間隔d1は、例えば、0.2mm~4mmでもよく、0.3mm~2mmでもよく、0.5mm~1mmでもよい。
間隔d2は、例えば、0.2mm~4mmでもよく、0.3mm~2mmでもよく、0.5mm~1mmでもよい。
間隔d3は、例えば、0.2mm~4mmでもよく、0.3mm~2mmでもよく、0.5mm~1mmでもよい。
間隔d1、間隔d2、間隔d3がそれぞれ前記数値範囲内であると、抵抗層20全体で透過する電磁波の帯域が、ピーク位置の周波数の値A[GHz]を基準としてさらに拡張されやすくなる。
【0039】
抵抗層20においては、第1の単位u1、第2の単位u2、第3の単位u3の形状は互いに同一である。ただし、第1の単位u1、第2の単位u2、第3の単位u3の形状は互いに同一の図形でなくてもよい。すなわち、本発明の他の例においては、第1の単位u1、第2の単位u2、第3の単位u3の形状は、互いに同一でもよく、異なってもよい。
【0040】
基材21は、平板状であり、かつ、一方の面21aに第1の導電体パターン101、第2の導電体パターン102および第3の導電体パターン103を形成できる形態であれば、特に限定されない。基材21は単層構造でも多層構造でもよい。
【0041】
基材21の厚みは、例えば、5μm~500μmでもよく、15μm~200μmでもよく、25μm~100μmでもよい。
第1の導電体パターン101の厚み、第2の導電体パターン102の厚み、第3の導電体パターン103の厚みは特に限定されない。これらの厚みは所望する特性に応じて任意に変更可能である。また、これら3つの厚みは互いに同一でもよく、異なっていてもよく、生産性を考慮すると、同一であることが好ましい。なお、第1の導電体パターン101、第2の導電体パターン102および第3の導電体パターン103の厚みは、得られる電磁波吸収部材10の電磁波吸収性と経済性の両立の観点から、10nm~300μmであることが好ましく、40nm~10μmであることがより好ましく、80nm~1μmであることが特に好ましい。
【0042】
基材21の材料は、電磁波吸収部材10の用途に応じて適宜選択できる。
例えば、電磁波吸収部材10の透明性の具備を目的として、基材21を透明な材料で構成してもよい。他にも、電磁波吸収部材10の曲面に対する追従性の具備を目的として、基材21を柔軟性のある材料で構成してもよい。電磁波吸収部材10の透明性、三次元成形性の向上を目的として、基材21の表面を平滑にしてもよい。
【0043】
例えば、基材21は樹脂で構成できる。樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。ただし、電磁波吸収部材10の三次元成形性を考慮する場合、基材21は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル-ポリエーテル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂の具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0044】
基材21は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を含んでもよい。任意成分の例としては、例えば、無機充填材、着色剤、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、可塑剤等が挙げられる。
【0045】
電磁波吸収部材10の電磁波の吸収性能のさらなる改良を考慮して、基材21の厚み、誘電率、電気伝導率、透磁率は適宜設定可能である。
吸収対象となる電磁波の電気的特性を考慮する場合、基材21は高誘電率の層であってもよい。基材21が高誘電率の層であると、電磁波吸収部材10の厚みを相対的に薄くできる。
【0046】
抵抗層20は、例えば、下記の方法によって作製できる。
まず、基材21を準備する。次いで、基材21の一方の面21aに第1の導電体パターン101、第2の導電体パターン102および第3の導電体パターン103を形成する。
各導電体パターンを形成する際には、各導電体パターンによって吸収される電磁波の透過量が極大値を示す周波数の値が所定の値[GHz]となるように形成する。
それぞれの導電体パターンを形成する順序は特に限定されない。各導電体パターンは、同一の工程内で形成してもよく、それぞれ別々の工程で形成してもよい。
【0047】
各導電体パターンの形成方法は、所定の周波数を形成できる態様であれば特に限定されない。各導電体パターンの形成方法の例としては、例えば、下記の方法がある。
導電性ペーストを用いて基材21の一方の面21aに各導電体パターンを印刷する印刷方法。
基材21の一方の面21aに各導電体パターンを現像する現像方法。
スパッタ法、真空蒸着または金属箔の積層によって基材21の一方の面21aに金属薄膜を設け、フォトリソグラフィによって金属薄膜のパターンを基材21の一方の面21aに形成する方法。
金属ワイヤーを基材21の一方の面21aに配置する方法。
【0048】
「スペーサ層」
スペーサ層30は、抵抗層20の他方の面20bに設けられている。
スペーサ層30は2つの面30a,30bを有する。スペーサ層30の一方の面30aは、抵抗層20の他方の面20bと対向している。スペーサ層30の他方の面30bには、複合層40が設けられている。
スペーサ層30は、単層構造でも多層構造でもよい。
【0049】
スペーサ層30の材料は、用途に応じて適宜選択でき、プラスチックフィルム、紙、布、不織布、ゴムシート、発泡シート等が挙げられる。これらの中でも、厚みを増加させつつ、軽量化を図ることが容易な観点から、発泡シートが好ましい。
発泡シートとしては、例えば、前記プラスチックフィルムを構成する樹脂を発泡させ、シート状に形成した発泡シートを用いることができる。発泡シートの具体例としては、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム等が挙げられる。
【0050】
スペーサ層30による波長短縮効果を考慮する場合、スペーサ層30の厚みは、吸収対象となる電磁波の波長およびスペーサ層30の比誘電率に合わせて適宜変更される。
スペーサ層30による波長短縮効果を考慮する場合、スペーサ層30の厚みは、下記式(3)を満たすことが好ましい。
(スペーサ層30のz軸方向の厚み)=(λ)×(1/4)/(ε)1/2・・・式(3)
上記式(3)中、λは飛来する電磁波の波長であり、εはスペーサ層30の比誘電率である。スペーサ層30の厚みは、吸収特性のために適宜調整してもよい。例えば、上記式(3)で得られるスペーサ層30の厚みの、0.1倍から3.0倍の範囲で変更することができる。
【0051】
スペーサ層30の厚みと波長λとの関係が上記式(3)を満たす場合、電磁波吸収部材10はいわゆるλ/4構造となる。これにより、電磁波吸収部材10による電磁波の吸収量の極大値となる。
スペーサ層30の厚みは、吸収対象となる電磁波の波長λに応じて適宜設定できる。スペーサ層30の厚みは、例えば、25μm~5000μmでもよく、300μm~4000μmでもよく、1000μm~3000μmでもよい。
スペーサ層30は、高誘電率の材質で構成してもよい。スペーサ層30が高誘電率の層であると、スペーサ層30の厚みを相対的に薄くできる。
スペーサ層30の誘電率を考慮する場合、スペーサ層30は、チタン酸バリウム、酸化チタンおよびチタン酸ストロンチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
【0052】
「複合層」
複合層40は2つの面40a,40bを有する。複合層40の一方の面40aは、スペーサ層30の他方の面30bと対向している。
【0053】
(第1形態)
本実施形態における電磁波吸収部材10では、複合層40において、第1誘電率調整層42と第2誘電率調整層43は、比誘電率が等しい材料からなり、第1誘電率調整層42の厚みと第2誘電率調整層43の厚みが異なることが好ましい。第1誘電率調整層42と第2誘電率調整層43がこのような関係にある場合を、第1形態と言う。
【0054】
第1誘電率調整層42および第2誘電率調整層43の材料としてはプラスチックフィルム、紙、布、不織布、ゴムシート、発泡シート、誘電体フィラー含有樹脂材等が挙げられる。
【0055】
第1誘電率調整層42の厚みと第2誘電率調整層43の厚みは、下記のようにして調整することができる。
【0056】
ここで、スペーサ層30の厚みをh、スペーサ層30の比誘電率をε、第1誘電率調整層42の厚みをh、第1誘電率調整層42の比誘電率をε、第2誘電率調整層43の厚みをh、第2誘電率調整層43の比誘電率をεとする。また、スペーサ層30と第1誘電率調整層42が接するように設けられている場合、これら2つの層の厚みの合計をh、これら2つの層全体の比誘電率をεとする。さらに、電磁波吸収部材10に飛来する電磁波の波長をλとする。
【0057】
電磁波吸収部材10において、許容できるスペーサ層30の厚みのバラつきを下記式(4)に基づいて規定することができる。
0.9λε 1/2/4≦hε≦1.1λε 1/2/4・・・(4)
一般的にλ/4型の電磁波吸収体の理想的な厚みhはλ/4である。スペーサ層30中の波長は、スペーサ層30を構成する誘電体の比誘電率εに応じて波長短縮が発生する(元の波長の1/ε1/2倍となる)ため、理想的なスペーサ層30の厚みはh=λ/4ε1/2であることから、上記式(4)において、各項にεを掛けている。理論値から許容できるスペーサ層30の厚みはλ/4ε1/2±10%に設定できる。
【0058】
スペーサ層30の厚みが、目的とする厚みよりも大きい場合、図1に示すように、厚みが小さい第1誘電率調整層42をスペーサ層30側に配置し、厚みが大きい第2誘電率調整層43をスペーサ層30とは反対側に配置する。
このとき、上記厚みh、上記比誘電率ε、上記厚みh、上記比誘電率εが下記式(5)及び下記式(6)の関係を満たすようにする。
1.0λ/4ε 1/2≦h≦1.1λ/4ε 1/2・・・(5)
1.0λε 1/2/4≦hε+hε≦1.1λε 1/2/4・・・(6)
【0059】
スペーサ層30の厚みが、目的とする厚みよりも小さい場合、図3に示すように、厚みが大きい第2誘電率調整層43をスペーサ層30側に配置し、厚みが小さい第1誘電率調整層42をスペーサ層30とは反対側に配置する。
このとき、上記厚みh、上記比誘電率ε、上記厚みh、上記比誘電率をεが下記式(7)及び下記式(8)の関係を満たすようにする。
0.8λ/4ε 1/2≦h≦1.0λ/4ε1/2・・・(7)
0.9λε 1/2/4≦hε+hε≦1.1λε 1/2/4・・・(8)
ここで、厚みhまたはhのいずれかは0、すなわち非存在であってもよい。
なお、上記説明は、理想的な厚み(バラツキの中心値となる厚み)を基準として説明したが、実際の使用では、バラツキの上限値の厚さを基準として設計する方が好ましい。スペーサ層の足りない厚み分を誘電率調整層の厚みで足すことは容易だが、スペーサ層の厚さのみで1/4λε1/2+10%をオーバーする場合、誘電率調整層では調整できないからである。
【0060】
(第2形態)
本実施形態における電磁波吸収部材10では、複合層40において、第1誘電率調整層42と第2誘電率調整層43は、比誘電率が異なる材料からなり、第1誘電率調整層42の厚みと第2誘電率調整層43の厚みが等しいことが好ましい。第1誘電率調整層42と第2誘電率調整層43がこのような関係にある場合を、第2形態と言う。
【0061】
第1誘電率調整層42及び第2誘電率調整層43の材料としては、プラスチックフィルム、紙、布、不織布、ゴムシート、発泡シート、誘電体フィラー含有樹脂材等が挙げられる。第1誘電率調整層42と第2誘電率調整層43の誘電率の差異を生じさせるためには、誘電率の異なる材料で層を形成したり、誘電体フィラーの含有量を両層で異なるものとしたりすることが考えられる。
【0062】
第1誘電率調整層42の比誘電率と第2誘電率調整層43の比誘電率は、下記のようにして調整することができる。
【0063】
スペーサ層30の厚みが、目的とする厚みよりも大きい場合、上記厚みh、上記比誘電率ε、上記厚みh、上記比誘電率ε、上記厚みh、上記比誘電率をε、上記厚みの合計h、上記比誘電率をεが上記式(5)、上記式(6)の関係を満たすように、第1誘電率調整層42の比誘電率と第2誘電率調整層43の比誘電率を調整する。
【0064】
スペーサ層30の厚みが、目的とする厚みよりも小さい場合、上記厚みh、上記比誘電率ε、上記厚みh、上記比誘電率をε、上記厚みの合計h、上記比誘電率をεが上記式(7)、上記式(8)の関係を満たすように、第1誘電率調整層42の比誘電率と第2誘電率調整層43の比誘電率を調整する。
【0065】
本実施形態における電磁波吸収部材10では、理論値から許容できるスペーサ層30の厚みをλ/4ε1/2±10%としている。この場合、スペーサ層30の厚みバラつきも±10%説明した。しかしながら、以下の通り、スペーサ層30の厚みバラつきは±20%までは許容可能である。
【0066】
例えば、スペーサ層30の厚みバラつきが±20%の場合、許容できるスペーサ層30の厚みが0.9X~1.1X(Xは電磁波吸収部材設計時における狙い厚み)のときに、スペーサ層30の厚みバラつきが0.6X~1.0Xになるように設定できれば、反射層41側に第1の誘電体調整層として0.3Xと第2の誘電体調整層として0.1Xがあれば面を使い分けることで必ず許容範囲に入る(0.6X~0.8Xまで0.3X面(第1の誘電体調整層側)を使用し、0.8X以降は0.1X面(第2の誘電体調整層側)を使用する)。
【0067】
また、スペーサ層30の厚みバラつきが±30%の場合、許容できるスペーサ層30の厚みが0.9X~1.1X(Xは電磁波吸収部材設計時における狙い厚み)のときに、スペーサ層30の厚みバラつきが0.5X~1.1Xになるように設定しても、必要な調整厚みが0.4X(スペーサ層30の厚み0.5X~0.7X)と0.1X(スペーサ層30のみ0.8X以降)が必要になるが、スペーサ層30の厚みバラつきが1.1Xの時に、反射層41側が0.1Xだと合計1.2Xとなり、電磁波吸収部材10のミリ波吸収特性が不安定となる。
【0068】
また、第1の実施形態では誘電率調整層の厚さのみを変化させた場合、第2の実施形態では誘電率調整層の誘電率のみを変化させた場合において説明したが、これに限定されるものではない。第1の誘電率調整層と第2の誘電率調整層において、厚さと誘電率の両方が異なっていてもよい。すなわち、hεとhεとが異なる値となるように設定されていればよい。
【0069】
「反射層」
反射層41は、電磁波吸収部材10の表面に飛来し、電磁波吸収部材10を透過した電磁波を反射できる形態であれば、特に限定されない。電磁波吸収部材10に飛来する電磁波のうち吸収対象の電磁波は、抵抗層20を透過するか、一部が抵抗層20に吸収される。抵抗層20を透過した電磁波は、反射層41で抵抗層20に向けて反射される。
例えば、反射層41の2つの面41a,41bいずれかの面方向において反射層41が導電性を具備する形態であれば、抵抗層20を透過した電磁波を反射できる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムにアルミニウム箔や銅箔等の金属箔や、銅板等の金属板を貼り合わせたものを反射層41として使用してもよい。金属箔や金属板の代わりに、ITO等の透明導電膜、金属ワイヤー等で形成されたメッシュシートを使用してもよい。
【0070】
反射層41の反射特性を考慮して反射層41の他方の面41bに金属ワイヤー、導電性糸、金属ワイヤーおよび導電性糸を含む撚糸、導電性薄膜を設けてもよい。導電性薄膜は、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット方式等の印刷方法;スパッタ法または真空蒸着;フォトリソグラフィによって面41bに設けることができる。
【0071】
反射層41の厚みは、0.01μm以上100μm以下が好ましく、0.05μm以上50μm以下がより好ましく、0.1μm以上5μm以下がさらに好ましい。
【0072】
本実施形態の電磁波吸収部材の製造方法によれば、複合層40が、反射層41と、反射層41を介して積層された第1誘電率調整層42および第2誘電率調整層43と、を有するため、スペーサ層30に対する複合層40の配置を調整することによって、スペーサ層30の厚みにバラつきがあった場合に、そのバラつきによって生じるミリ波吸収特性の不安定さを補正することがきる。
【0073】
[エーミング用パーテーション]
第二の実施形態として、第一の実施形態における電磁波吸収部材10が設けられたエーミング用パーテーションが挙げられる。
本実施形態のエーミング用パーテーションは、台座部と、台座部に設置された支柱部と、支柱部に支えられた吊り下げ部と、を備える。前記吊り下げ部には、電磁波吸収部材10が吊り下げられる。また、前記台座部には、吊り下げられた前記電磁波吸収部材10が揺れるのを防止するため、下端固定部が設けられていてもよい。
【0074】
電磁波吸収部材10の大きさ(面積)は、エーミングを行う自動車を前面から見た場合の投影面積に応じて適宜調整される。例えば、縦0.5m~5m×横0.5m~5mであることが好ましく、縦1m~3m×横1m~3mであることがより好ましい。大きさが足りない場合、あるいは、前面と側面等、多方面に設置したい場合は、エーミング用パーテーションを複数個並べて使用してもよい。複数個並べて使用する場合は、隙間が空かないように配置する必要がある。
【0075】
本発明を理解し易いよう、第一の実施形態及び第二の実施形態と具体的に記載したが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。例えば、電磁波吸収部材10において、複合層40におけるスペーサ層30と反対側の面には、剥離剤層が設けられていてもよいし、粘着剤層が設けられていてもよい。また、エーミング用パーテーションにおいても粘着剤層付きの貼付板を設け、吊り下げずに貼付して使用することもできる。
【実施例0076】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
[比較例1]
「電磁波吸収部材の作製」
PETフィルム(商品名:PET50A4160、東洋紡株式会社製)からなる基材上に銅を蒸着して銅薄膜を形成した。
その後、フォトリソグラフィにより、銅薄膜を図2に示す導電体パターンにパターニングし、抵抗層を得た。
得られた抵抗層の導電体パターン側の面に以下の粘着剤層を貼付し、スペーサ層として厚み1.80mmの発泡ウレタンシート(株式会社イノアックコーポレーション製)と貼合した。次に、複合層としてのアルミ蒸着PETフィルム(アルミニウム層の厚み0.1μm、PET層の厚み50μm、曲げ剛性:8.33Pa・mm)のアルミニウム層側と前記スペーサ層のもう一方の面を以下の粘着剤層を介して積層した。これにより、比較例1の電磁波吸収部材を作製した。
【0078】
「粘着剤層の作製」
アクリル酸n-ブチル95.5質量%、メタクリル酸メチル2.5質量%、アクリル酸2質量%含有する重量平均分子量100万のアクリルポリマー100質量部(固形分換算値、以下同様とする)に対して、架橋剤としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製、製品名「BHS8515」)0.6質量部、および安定化ロジンエステル(ハリマ化成社製、製品名「ハリタックFK100」)50質量部を配合し、トルエンで希釈混合することにより粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面を剥離処理された剥離シート(リンテック社製、製品名「SP-PET382120」)の剥離処理面にナイフコーターで塗布された後、100℃、4分間乾燥され、その後、23℃、50%RHの環境下、7日間養生され、厚さ25μmの粘着剤層が形成された。
【0079】
[比較例2]
スペーサ層として厚み2.00mmの発泡ウレタンシート(株式会社イノアックコーポレーション製)を用いたこと以外は比較例1と同様にして、比較例2の電磁波吸収部材を作製した。
【0080】
[比較例3]
スペーサ層として厚み2.20mmの発泡ウレタンシート(株式会社イノアックコーポレーション製)を用いたこと以外は比較例1と同様にして、比較例3の電磁波吸収部材を作製した。
【0081】
[実施例1]
複合層として、アルミ蒸着PETフィルム(厚み0.1μmのアルミニウム層と、アルミニウム層の一方の面に設けられた厚み50μmPET層(第1誘電率調整層)を有するフィルム)の第1誘電率調整層をスペーサ層側に配置したこと以外は比較例1と同様にして、実施例1の電磁波吸収部材を作製した。
【0082】
[実施例2]
スペーサ層として厚み2.00mmの発泡ウレタンシート(株式会社イノアックコーポレーション製)を用い、アルミ蒸着PETフィルムのスペーサ層側にアルミニウム層側(第2誘電率調整層=厚さ0μm)を配置した以外は実施例1と同様にして、実施例2の電磁波吸収部材を作製した。
【0083】
[実施例3]
スペーサ層側に第1誘電率調整層を配置した以外は実施例2と同様にして、実施例3の電磁波吸収部材を作製した。
【0084】
[実施例4]
スペーサ層として厚み2.20mmの発泡ウレタンシート(株式会社イノアックコーポレーション製)を用いた以外は実施例2と同様にして、実施例4の電磁波吸収部材を作製した。
【0085】
[評価]
実施例1~4および比較例1~3の電磁波吸収部材について、下記の評価を行った。
フリースペース法を用いて79GHzにおける反射係数測定し、吸収率に変換した。
結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示す結果から、実施例の電磁波吸収部材は、スペーサ層の厚みにバラつきがあっても、ミリ波吸収特性が安定していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の電磁波吸収部材は、自動車等の輸送機器の電磁波吸収用部材に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
10 電磁波吸収部材
20 抵抗層
21 基材
22 導電体パターン
30 スペーサ層
40 複合層
41 反射層
42 第1誘電率調整層
43 第2誘電率調整層
図1
図2
図3