(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145517
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ、振動提示装置及び実装構造
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20241004BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
G06F3/041 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057905
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】石谷 智也
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA13
5D107BB08
5D107CC08
5D107CC10
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】装置全体の省スペース化と弾性部のばね長確保とを両立する。
【解決手段】振動アクチュエータは、コイルと、前記コイルが巻回され、両端部が前記コイルから突出するコアと、を有し、前記コイルへの通電により前記両端部に磁力を生じさせる磁力発生部を有する固定部と、前記コイルの巻回軸方向に直交する対向方向で前記両端部に対向するヨークを有する可動部と、両固定端が前記固定部及び前記可動部に夫々固定され、中間のアームが弾性変形可能である弾性部と、を有し、前記両固定端はいずれも前記磁力発生部から間隔を空け且つ互いに間隔を詰めて配置され、前記アームは前記両固定端と前記磁力発生部との間の領域内で湾曲するよう延在し、前記磁力により、前記可動部を、前記固定部に向かう前記対向方向の一方向に吸引して、前記アームの弾性変形により生じる弾性力により、前記可動部を、前記対向方向の双方向に振動させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、前記コイルが巻回され、両端部が前記コイルから突出するコアと、を有し、前記コイルへの通電により前記両端部に磁力を生じさせる磁力発生部を有する固定部と、
前記コイルの巻回軸方向に直交する対向方向で前記両端部に対向するヨークを有する可動部と、
両固定端が前記固定部及び前記可動部に夫々固定され、中間のアームが弾性変形可能である弾性部と、を有し、
前記両固定端はいずれも前記磁力発生部から間隔を空け且つ互いに間隔を詰めて配置され、前記アームは前記両固定端と前記磁力発生部との間の領域内で湾曲するよう延在し、
前記磁力により、前記可動部を、前記固定部に向かう前記対向方向の一方向に吸引して、前記アームの弾性変形により生じる弾性力により、前記可動部を、前記対向方向の双方向に振動させる、
振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記アームは、複数本のアームを含み、前記複数本のアームの各々が、一つのU字形状を有する、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記両固定端は、前記固定部に固定される固定側固定端と、前記可動部に固定される可動側固定端と、を含み、
前記固定部、前記弾性部及び前記可動部は、前記固定部と前記固定側固定端との間及び前記可動部と前記可動側固定部との間に第一スペーサを夫々介在させた状態で、前記対向方向に沿う方向で積み重ねられる、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定部は、前記磁力発生部が固定されるベース部材をさらに有し、
前記ベース部材、前記弾性部、前記ヨーク及び前記第一スペーサはいずれも平板である、
請求項3に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記固定部は、ベース部材と、前記コアを保持する保持部材と、をさらに有し、
前記保持部材は、前記ベース部材に夫々固定される複数の突出部を有し、
前記一つのU字形状は、隣り合う一対の突出部間に配置されるよう傾斜した形状である、
請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記可動部にかかる荷重を検出する荷重センサをさらに有し、
前記コイルは、検出された荷重に応じて通電される、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1に記載の振動アクチュエータを実装した振動提示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の振動アクチュエータを、裏面に雌ねじ部を有する操作パネルに実装する実装構造であって、
前記振動アクチュエータと、前記操作パネルと、第二スペーサと、ねじと、を有し、
前記振動アクチュエータを前記操作パネルの裏面に対向させた状態で前記操作パネルと前記振動アクチュエータとの間に前記第二スペーサを介在させ、前記ねじを前記可動部に設けられた貫通孔及び前記第二スペーサに設けられた貫通孔に挿通して前記雌ねじ部に螺合する、
実装構造。
【請求項9】
請求項1に記載の振動アクチュエータを、底部に雌ねじ部が設けられた凸部を裏面に有する操作パネルに実装する実装構造であって、
前記振動アクチュエータと、前記操作パネルと、ねじと、を有し、
前記振動アクチュエータを前記操作パネルの裏面に対向させた状態で前記操作パネルと前記振動アクチュエータとの間に前記凸部を配置させ、前記ねじを前記可動部に設けられた貫通孔に挿通して、前記ねじを前記雌ねじ部に螺合する、
実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、振動提示装置及び実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等の操作パネル(以下、単に「パネル」ともいう)に接触した操作者の指腹等に対し、触感或いは操作感(以下、これらを纏めて「触感」という)として、電磁的な機構により発生させた振動を付与する、様々な構成が、例えば特許文献1~3により知られている。
【0003】
特許文献1に記載の振動アクチュエータは、パネル面に対して垂直にガイドシャフトを配置し、シャフトの径方向で内側外側に可動マグネットと固定コイルとを配置して、ガイドシャフトに沿って可動マグネットを往復移動させる構成である。よって、この装置自体に一定以上の高さが必要となる。特許文献2に記載の振動アクチュエータ(振動呈示装置)は、パネル面に対して垂直にセンターヨークを配置し、シャフトの径方向で内側外側に可動コイルと固定マグネットとを配置し、その外周を立壁で囲んでパネルを支持する支持部を配置して、支持部の内側でセンターヨークに沿って可動コイルを往復移動させる構成である。よって、この装置自体も一定以上の高さが必要となる。そして、特許文献1、2に記載の振動アクチュエータでは、マグネット(永久磁石)を使用しており、製造コストや製造容易性の点で課題がある。
【0004】
特許文献3に記載の振動アクチュエータは、コイルが巻回されたコアの両端部に板状のヨークを対向配置し、コア組立体が固定された扁平状のベース部と板状のヨークとを板状の弾性部で支持する構成を採る。この振動アクチュエータでは、コイルへの通電によりコアの両端部に生じる磁力により、ヨークをコア組立体に向けて吸引し、ヨークの移動により弾性部に生じる弾性力により、ヨークを対向方向に振動させる。これにより、振動アクチュエータが薄型化され、さらに、マグネットを使用しない電磁的な機構による振動出力・触感付与を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-070729号公報
【特許文献2】特開2016-163854号公報
【特許文献3】特開2020-069447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の振動アクチュエータに対して、さらなる小型化が望まれている。
【0007】
例えば特許文献3に記載の、薄型化を実現した振動アクチュエータにおいて、さらなる省スペース化(面積の小型化)を図る場合には、装置全体の省スペース化と弾性部のばね長確保との両立が課題となる。
【0008】
本発明の目的は、装置全体の省スペース化と弾性部のばね長確保とを両立することができる振動アクチュエータ、振動提示装置及び実装構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る振動アクチュエータの一態様は、
コイルと、前記コイルが巻回され、両端部が前記コイルから突出するコアと、を有し、前記コイルへの通電により前記両端部に磁力を生じさせる磁力発生部を有する固定部と、
前記コイルの巻回軸方向に直交する対向方向で前記両端部に対向するヨークを有する可動部と、
両固定端が前記固定部及び前記可動部に夫々固定され、中間のアームが弾性変形可能である弾性部と、を有し、
前記両固定端はいずれも前記磁力発生部から間隔を空け且つ互いに間隔を詰めて配置され、前記アームは前記両固定端と前記磁力発生部との間の領域内で湾曲するよう延在し、
前記磁力により、前記可動部を、前記固定部に向かう前記対向方向の一方向に吸引して、前記アームの弾性変形により生じる弾性力により、前記可動部を、前記対向方向の双方向に振動させる。
【0010】
本発明に係る振動提示装置の一態様は、
上記の振動アクチュエータを実装した構成を採る。
【0011】
本発明に係る実装構造の一態様は、
上記の振動アクチュエータを、裏面に雌ねじ部を有する操作パネルに実装する実装構造であって、
前記振動アクチュエータと、前記操作パネルと、第二スペーサと、ねじと、を有し、
前記振動アクチュエータを前記操作パネルの裏面に対向させた状態で前記操作パネルと前記振動アクチュエータとの間に前記第二スペーサを介在させ、前記ねじを前記可動部に設けられた貫通孔及び前記第二スペーサに設けられた貫通孔に挿通して前記雌ねじ部に螺合する。
【0012】
本発明に係る実装構造の他の態様は、
上記の振動アクチュエータを、底部に雌ねじ部が設けられた凸部を裏面に有する操作パネルに実装する実装構造であって、
前記振動アクチュエータと、前記操作パネルと、ねじと、を有し、
前記振動アクチュエータを前記操作パネルの裏面に対向させた状態で前記操作パネルと前記振動アクチュエータとの間に前記凸部を配置させ、前記ねじを前記可動部に設けられた貫通孔に挿通して、前記ねじを前記雌ねじ部に螺合する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置全体の省スペース化と弾性部のばね長確保とを両立することができる振動アクチュエータ、振動提示装置及び実装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、実施の形態1に係る振動アクチュエータの構成を斜め上方及び斜め下方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの固定部、弾性部及び可動部の位置関係を説明するための平面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る振動アクチュエータのコア積層構造を説明するための斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの板ばね形状を説明するための平面図である。
【
図6】
図6A、
図6B及び
図6Cは、実施の形態1に係る振動アクチュエータの磁気回路構成を説明するための図であり、
図6Aは、同振動アクチュエータにおいてコイル非通電状態を示す図であり、
図6Bは、同振動アクチュエータにおいてコイル通電時の磁気吸引力を説明するための図であり、
図6Cは、磁気吸引力の作用として生じる磁束の流れを説明するための図である。
【
図7】
図7A、
図7B及び
図7Cは、実施の形態1に係る振動アクチュエータの動作を説明するための図であり、
図7Aは、同振動アクチュエータにおいて、可動部が中立位置又は振動中心位置にある状態を示す図であり、
図7Bは、同アクチュエータにおいて、可動部が振動下限位置にある状態を示す図であり、
図7Cは、同アクチュエータにおいて、可動部が振動上限位置にある状態を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの制御部の回路構成を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの構成の変形例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す変形例に係る振動アクチュエータを備える振動提示装置の制御系を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態1に係る振動アクチュエータを操作パネルに実装する実装構造を示す分解斜視図である。
【
図12】
図12は、実施の形態1に係る振動アクチュエータを操作パネルの実装する実装構造の変形例を示す分解斜視図である。
【
図13】
図13A及び
図13Bは、実施の形態2に係る振動アクチュエータの構成を斜め上方及び斜め下方から見た斜視図である。
【
図14】
図14は、実施の形態2に係る振動アクチュエータの分解斜視図である。
【
図15】
図15は、実施の形態2に係る振動アクチュエータにおける荷重検出部の配置位置を示す図である。
【
図16A】
図16Aは、実施の形態2に係る振動アクチュエータを操作パネルと共にケースに実装する実装構造を説明するための、実装状態を示す斜視図である。
【
図16B】
図16Bは、実施の形態2に係る振動アクチュエータを操作パネルと共にケースに実装する実装構造を示す分解斜視図である。
【
図17】
図17は、実施の形態3に係る振動アクチュエータの分解斜視図である。
【
図18】
図18は、実施の形態3に係る振動アクチュエータにおける荷重検出部の配置位置を示す図である。
【
図19】
図19は、実施の形態3に係る振動アクチュエータを備える振動提示装置の制御系を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る装置について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
以下説明する各実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。X方向、Y方向及びZ方向の夫々の長さは、振動アクチュエータ及び振動提示装置の幅(左右方向、長手方向)、奥行き(前後方向、短手方向)及び高さ(上下方向)に対応するものとして説明される。ただし、これらの対応関係は、振動アクチュエータ及び振動提示装置の使用態様に応じて異なることは、言うまでもない。Z方向に関して言えば、Z方向プラス側(上側)は、操作者に振動フィードバックを付与する方向であり、Z方向マイナス側(下側)は、操作者が操作する際に押圧する方向である。
【0017】
なお、各実施の形態の説明で用いる形状に関する表現は、内容理解促進のための便宜的な表現であり、また、各実施の形態で採用される形状自体、一例であり、種々変更して実施可能である。
【0018】
(実施の形態1)
図1A及び
図1Bは、実施の形態1に係る振動アクチュエータの構成を斜め上方及び斜め下方から見た斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの分解斜視図である。
図3は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの固定部、弾性部及び可動部の位置関係を説明するための平面図である。
図4は、実施の形態1に係る振動アクチュエータのコア積層構造を説明するための斜視図である。
図5は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの板ばね形状を説明するための平面図である。
図6A、
図6B及び
図6Cは、実施の形態1に係る振動アクチュエータの磁気回路構成を説明するための図である。
図7A、
図7B及び
図7Cは、実施の形態1に係る振動アクチュエータの動作を説明するための図である。
【0019】
本実施の形態に係る振動アクチュエータ100は、固定部110、弾性部120及び可動部130を有する。
【0020】
<固定部110の構成>
固定部110は、ベース部材112及び磁力発生部114を有する。
【0021】
ベース部材112は、振動アクチュエータ100全体を支持して、振動アクチュエータ100を振動提示装置の筐体(図示略)に取り付けるための部材である。本実施の形態では、ベース部材112は、平板状の板金である。ベース部材112は、XY平面に沿って配置される平板であるため、振動アクチュエータ100全体の薄型化に寄与する。
【0022】
また、本実施の形態では、
図3に示すように、ベース部材112は、矩形形状、より具体的には長方形の形状であり、長手方向が左右方向(X方向)に、短手方向が前後方向(Y方向)に、夫々対応している。中央部にはベース開口112aが設けられている。ベース部材112に磁力発生部114が固定されるとき、磁力発生部114のコイル1142及びボビン1146の一部がベース開口112a内に配置される。これにより、磁力発生部114の高さの一部をベース部材112の板厚で吸収することができ、振動アクチュエータ100全体の薄型化に寄与する。
【0023】
矩形形状であるベース部材112の四隅には、振動提示装置の筐体への取付のためベース取付孔112bが設けられている。
【0024】
磁力発生部114は、コイル1142、コア1144、ボビン1146及び接続端子1148を有する。磁力発生部114は、コイル1142がコア1144の周囲に巻回された構成であるため、コイル1142への通電により、コイル1142から突出して位置するコア1144の両端(コア端部144b、144b)がN極及びS極に磁化し、つまり磁力を生じさせる。要するに、磁力発生部114は、通電を受けると磁力を生じさせる電磁石である。
【0025】
本実施の形態では、磁力発生部114は、コイル1142はボビン1146を介してコア1144に巻回され、且つ、コア1144はボビン1146に保持された状態で、ベース部材112に固定される。よって、ボビン1146は、コア1144を保持する保持部材としての機能を有する。また、ボビン1146の底部には、接続端子1148が配置されており、接続端子1148を介して外部からコイル1142への通電を行うことができる。
【0026】
ボビン1146は、コイル巻回軸方向に貫通する貫通開口を有する筒状のコイル巻回部146aを有する。コイル巻回部146aのコイル巻回軸方向の両端には、コイル1142の巻回位置を位置決めするための一対のフランジ146bが設けられている。
【0027】
ボビン1146は、フランジ146bよりもコイル巻回軸方向で外側に張り出すように設けられた張出部146cを有する。張出部146cは、コイル巻回部146aの貫通開口と連通してフランジ146bの外側で上方及び下方に開口するボビン開口146dを有する。コイル巻回部146a内の貫通開口及びボビン開口146dは、Z方向プラス側から見た平面視においてコア1144を囲う形状の開口(以下「コア収容開口」という)となっており、コア1144は、コア収容開口に密着して収容される。
【0028】
これにより、X方向、Y方向及びZ方向のいずれにおいても、コア1144の位置ずれ及び脱落を抑制することができる。特に、コア1144の位置ずれは、微小な位置ずれであっても、薄型及び小型の振動アクチュエータにとっては振動特性に影響するので、好ましくない。この点につき、本実施の形態では、コア1144の位置ずれが発生し難いので、良好な振動特性の確保を容易にすることができる。
【0029】
また、本実施の形態では、ボビン1146は、コア1144と一体的に成形される樹脂成型体である。よって、コア収容開口へのコア1144の密着収容を確実に行うことができる。
【0030】
ボビン1146の張出部146cには、張出部146cの張出方向(本実施の形態ではコイル巻回軸方向及び前後方向と一致)に直交する方向(本実施の形態では左右方向と一致)に突出する突出部146eが、設けられている。本実施の形態では、二対の突出部146eが設けられている。コイル1142をベース開口112aに配置するとき、突出部146eは、ベース開口112aの左右両側でベース部材112に対して上下に重なる。この状態で突出部146eは、例えばリベットである止着部材111により止着され、これにより、磁力発生部114がベース部材112に固定される。
【0031】
また、上述の通り、本実施の形態では、コイル1142が巻回され、コア1144を保持する保持部材としても機能するボビン1146が、ベース部材112への固定に適した形状とされる。成形自由度の高い樹脂製部材であるボビン1146を介して磁力発生部114をベース部材112に固定することができるので、コア1144のような比較的成形自由度の低い部材を直接ベース部材112に固定するよりも、組立を容易に行うことができる。そして、コア1144の形状の複雑化を回避することができる。
【0032】
コア1144は、コイル1142に挿通されて配置される。コア1144は、コイル1142が通電されると、コイル1142から両側に突出するコア端部144bが励磁されて磁力を生じさせる。
【0033】
本実施の形態では、コア1144は、矩形(より具体的には長方形)の平板形状であり、全体としてH字形状であるボビン1146との対比で言えば、コア1144は、I字形状である。このような単純な形状であるため、コア1144の加工が容易である。
【0034】
コア端部144bが磁極として機能するコア1144は、軟磁性材料等(例えば、ケイ素鋼板、パーマロイ、フェライト等)からなる磁性体であり、より具体的には、磁性材料を積層した積層構造を有する部材(積層体)である。コア1144を積層部品とすることで、加工性を確保できると共に、鉄損を抑制することができる。
【0035】
コア1144の主面(コア主面)144aは、ボビン1146に保持されるとコイル巻回軸方向と平行な面となる。そして、ボビン1146がベース部材112に固定され、さらに、可動部130(ヨーク132)が弾性部120(板ばね122R、122L)を介してベース部材112に接続されると、両方のコア端部144bに位置するコア主面144aの部分が、コア主面に直交する方向(以下「面直方向」という。「対向方向」と称される場合もある。)でヨーク132の下面(ヨーク下面132b)に対向する(
図6A、
図6B、
図6C、
図7A、
図7B及び
図7Cを参照)。なお、面直方向或いは対向方向とは、換言すれば、上下方向(Z方向)である。
【0036】
このとき、コア主面144aは、XY平面に沿って配置される。後述する通り、対向するヨーク132もXY平面に沿って配置されるので、コア主面144aは、対向するヨーク下面132bに平行となる。コア主面144aとヨーク下面132bとが平行である場合、コア主面144aからヨーク下面132bにかかる磁気吸引力がヨーク下面132bの対向部分に対して均等にかかることになるため、水平な姿勢を保ちながらヨーク132を上下動作させることができ、振動を安定化させることができる。
【0037】
ここで、一般に、互いに対向するコアとヨークとの間に形成されるギャップの寸法管理は、振動アクチュエータの設計上、非常に重要である。コアの製造公差が大きいと、ギャップの大きさに著しい個体差が生じる。例えば、コアが厚すぎてここのギャップが過度に小さくなれば、可動部のストローク確保が難しくなる。可動部のストロークが確保されるとしても、ギャップが著しく狭くなれば、コアとヨークとの間に作用する磁力が著しく強くなって比較的強い振動が出力されやすくなり、逆にギャップが著しく広くなれば、コアとヨークとの間に作用する磁力が著しく弱くなって比較的弱い振動が出力されやすくなる。すなわち、コアの製造公差が大きいと、振動のストローク及び特性の安定確保が難しくなる。この点は、振動アクチュエータのさらなる小型化及び薄型化が求められる状況における、課題のうちの一つである。
【0038】
このような課題に対し、本発明の発明者らは、コア積層体の積層方向に着目した。例えば、面直方向に磁性材料を積層する場合、個々の層の厚み寸法の公差が積層によって積み上がり(積み上げ公差)、完成時点でのコア主面の高さ位置が設計値から大幅にずれて、上記課題につながるおそれがある。
【0039】
この点につき、本実施の形態では、コア1144の積層構造を、面直方向と交差する方向、より具体的には、面直方向に直交する左右方向に、磁性材料を積層する構造とした。このような構成の場合、ヨーク132に対向するコア主面144aが、積層体の加工面となる。
【0040】
積層方向を、面直方向と交差(直交)する方向とした場合、コア主面144aの高さ位置に積み上げ公差が発生するおそれはなく、コア1144の製造公差を小さく抑制することができる。したがって、固定部110(コア1144)と可動部130(ヨーク132)との間に形成されるギャップGの寸法管理が容易となり、振動アクチュエータ100の装置全体の薄さと振動のストローク及び特性の安定確保とを両立させることができる。
【0041】
<可動部130の構成>
可動部130は、固定部110に対して上下方向に移動自在な部材である。可動部130は、ヨーク132を有する。
【0042】
ヨーク132は、固定部110(磁力発生部114)から磁力(磁気吸引力)を受け、また、弾性部120(板ばね122R、122L)から弾性力を受けて、振動運動を行う部材である。ヨーク132は、振動アクチュエータ100が振動提示装置に適用される場合、振動提示部(典型的にはタッチパネルやタッチパッド等の操作パネル)に接触又は接続して配置され、自身の振動を振動提示部に出力する。これにより、振動提示部を操作した操作者に対して触感をフィードバックすることができる。
【0043】
ヨーク132は、磁性材料から構成される。磁性材料としては、例えば、電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)、電磁ステンレス、焼結材、MIM(メタルインジェクションモールド)材、積層鋼板等が挙げられる。また、本実施の形態では、ヨーク132は、XY平面に沿って配置される平板状であり、振動アクチュエータ100全体の薄型化に寄与する。
【0044】
また、本実施の形態では、ヨーク132は、ベース部材112と同様の矩形形状、より具体的には長方形の形状であり、長手方向が左右方向(X方向)に、短手方向が前後方向(Y方向)に、夫々対応している。中央部にはヨーク開口132aが設けられている。ヨーク132が弾性部120を介して固定部110に支持されるとき、磁力発生部114のコイル1142及びボビン1146の一部がヨーク開口132a内に配置される。これにより、コイル1142及びボビン1146と干渉しない高い位置でヨーク132を支持し振動させる必要がなく、ヨーク132を、磁極として機能するコア主面144aに近接した位置に配置させることができ、振動アクチュエータ100全体の薄型化に寄与する。
【0045】
また、ヨーク開口132aを設けることで、コイル1142近傍のヨーク132の面積を減らすことができるので、コイル1142から漏れる漏えい磁束による変換効率の低下を抑制でき、高出力を得ることができる。
【0046】
矩形形状であるヨーク132の四隅には、振動提示部への振動出力のため振動提示部又は他の部材と接続するヨーク取付孔132cが設けられている。外部へのヨーク132の取付については後述する。
【0047】
<弾性部120の構成>
弾性部120は、固定部110と可動部130とに接続する、弾性変形可能な部材である。可動部130は、固定部110から磁力を受けて上下方向に移動するので、弾性部120は、固定部110に対して可動部130を上下方向に移動自在に弾性支持する。弾性部120は、板ばね122R、122Lを有する。板ばね122R、122Lは、平板状の板金である。板ばね122R、122Lは、XY平面に沿って配置される平板であるため、振動アクチュエータ100全体の薄型化に寄与する。
【0048】
板ばね122R、122Lは夫々、固定部110に固定される固定側固定端1221、可動部130に固定される可動側固定端1222、及び中間のアーム1223を有し、中間のアーム1223が弾性変形可能な弾性体である。
【0049】
本実施の形態では、板ばね122R、122Lは、アーム1223を一対ずつ有する。また、本実施の形態では、個々の板ばね122R、122Lの形状が、手前側(Y方向マイナス側)と奥側(Y方向プラス側)とで線対称である。さらに、本実施の形態では、一対の板ばね122R、122Lは、可動部130における左右方向の中心位置を通る中心線(本実施の形態では、固定部110における左右方向の中心位置を通る中心線と一致)に関して、線対称に配置されている。弾性部120が、全体として前後方向及び左右方向に対称であるため、可動部130を安定支持することができる。
【0050】
ここで、本実施の形態における各板ばね122R、122Lの形状について、より詳細に説明する。板ばね122Rと板ばね122Lとは、単体としては同一形状であるため、ここでは、
図5を参照し、板ばね122Lのみに着目して説明する。
【0051】
板ばね122Lにおいては、可動側固定端1222が、固定側固定端1221に比べて相対的に、磁力発生部114に近い位置に配置される。ただし、磁力発生部114と可動側固定端1222との間の領域の間隔W2は広く空けられている。固定側固定端1221から可動側固定端1222へ延在する一対のアーム1223は夫々、固定側固定端1221と可動側固定端1222との間の領域を通ることなく、可動側固定端1222の手前側及び奥側を迂回して、磁力発生部114と可動側固定端1222との間の領域に回り込み、その領域で湾曲して、可動側固定端1222に接続する。
【0052】
そのため、固定側固定端1221と可動側固定端1222との間の領域には、広い間隔を空ける必要がない。結果として、固定側固定端1221と可動側固定端1222との間の領域の間隔W1は、上記の間隔W2よりも、著しく狭小となる(W1<W2)。このように、本実施の形態では、固定側固定端1221と可動側固定端1222とは、いずれも磁力発生部114から間隔を空け、且つ、互いに間隔を詰めて、配置されている。そして、アーム1223は、広い間隔の空いた磁力発生部114と可動側固定端1222との間の領域内で湾曲するように、延在している。
【0053】
板ばね122Lが上記のような形状を採ることにより、振動アクチュエータ100の幅を左右方向に増大させることなく、アーム1223に、曲率半径の大きな円弧の湾曲形状を持たせることができる。もちろん、アーム1223に、より複雑な形状を持たせることもできる。要するに、ばね長を長くすることができる。よって、振動アクチュエータ100全体の小型化(特に左右方向の小型化)と弾性部120のばね長確保とを両立することができる。アーム1223のばね長を従来よりも長く確保できるようにしたことで、ばね定数の設計自由度も従来よりも向上させることができ、さらに、アーム1223にかかる応力の分散を容易にすることもできる。
【0054】
また、各アーム1223の形状は、U字形状を1つ含む形状である。このような形状とすることで、従来に比べて曲率半径の大きな円弧の湾曲形状を採ることができる。
【0055】
なお、本実施の形態において、各アーム1223のU字形状は、ノーマルなU字形状ではなく、傾斜したU字形状であることが、好ましい。本実施の形態では、上述した通り、磁力発生部114のボビン1146が、ベース部材112に固定される突出部146eを複数備えており、これらの突出部146eが、上記の間隔W2を持つ磁力発生部114と可動側固定端1222との間の領域内に進入した形状となっている。これに対し、アーム1223のU字形状は、少なくとも一部分が、隣り合う突出部146e間(本実施の形態では、手前側の突出部146eと奥側の突出部146eとの間)に配置されるように、傾斜したU字形状となっている。これにより、アーム1223とボビン1146とが干渉することがないので、振動アクチュエータ100の特に前後方向のサイズを小型化することができる。
【0056】
ここで、固定部110、弾性部120及び可動部130の位置関係について説明する。
【0057】
上述した通り、弾性部120において、板ばね122Lは、固定部110の磁力発生部114から離間した位置に配置されている。板ばね122Lと板ばね122Rとの位置関係は線対称であるため、板ばね122Rも、固定部110の磁力発生部114から離間した位置に配置されている。そして、板ばね122L及び板ばね122Rの夫々の可動側固定端1222は、左右方向において可動部130の両端部を支持している。すなわち、板ばね122L及び板ばね122Rは、上下方向から見た平面視において、可動部130の中心線に関して線対称に、且つ、当該中心線に直交する方向に離間した位置で夫々、可動部に接続する。よって、弾性部120から可動部130に対して、アーム1223の弾性変形により生じる弾性力が作用する位置は、可動部130の左右方向で大きく離れた位置にある。
【0058】
これに対し、磁力発生部114は、左右方向の中心位置で、コイル巻回軸方向が前後方向と一致するように配置されている。コア1144の長さ方向はコイル巻回軸方向と一致するので、コア1144は、左右方向の中心位置を通る中心線に沿って配置されている。そのため、コア端部144bは、いずれも当該中心線上で、且つ、互いに離間した位置となる。よって、磁力発生部114のコア端部144bから可動部130に対して、磁力(磁気吸引力)が作用する位置は、可動部130の矩形領域の中で最も、弾性力が作用する位置から離れた位置となる。このように、可動部130において、磁力作用位置を弾性力作用位置から離間させることで、磁気吸引による可動部130の移動がばね反力によって抑制されることを回避することができるため、振動出力の低下を抑制しつつ、振動アクチュエータ100全体の省スペース化を図ることができる。
【0059】
<固定側スペーサ121及び可動側スペーサ123の構成>
図2、
図6A及び
図7Aに示されるように、板ばね122R、122Lは、固定側スペーサ121を介してベース部材112に接続され、可動側スペーサ123を介してヨーク132に接続されている。板ばね122R、122L、固定側スペーサ121及びベース部材112は、上下方向で積み重なっており、板ばね122R、122L、可動側スペーサ123及びヨーク132も、上下方向で積み重なっている。
【0060】
可動側スペーサ123及び固定側スペーサ121は夫々、可動側固定端1222及び固定側固定端1221の細長形状に沿って延在する細長形状の、平板状の板金である。可動側スペーサ123及び固定側スペーサ121は、XY平面に沿って配置される平板であるため、振動アクチュエータ100全体の薄型化に寄与することができる。
【0061】
振動アクチュエータ100において、固定部110の主要構成であるベース部材112、可動部130の主要構成であるヨーク132、弾性部120の主要構成である板ばね122R、122L、並びにこれらの間に介在する固定側スペーサ121及び可動側スペーサ123は、いずれも、同一平面(XY平面)に沿って配置される平板である。よって、特に各部品の材料が金属である場合は、例えば曲げ加工なしで打ち抜き加工のみで済む等、夫々の部品の作製が容易となるため、各部品の加工コストが低減する。
【0062】
また、止着部材124(例えばリベット)による、ベース部材112、固定側スペーサ121及び板ばね122R、122Lの止着も、止着部材125(例えばリベット)による、板ばね122R、122L、可動側スペーサ123及びヨーク132も、同一方向(上下方向)での止着作業で済む。そのため、振動アクチュエータ100の組立性が向上し、組立精度が向上する。
【0063】
また、すべて平板であるので、上下動タイプの振動アクチュエータとしては究極的な薄型である。なお、究極的な薄型であっても、ベース部材112と板ばね122R、122Lとの間、及び、板ばね122R、122Lとヨーク132との間には、上下方向で固定側スペーサ121及び可動側スペーサ123が介在している。よって、弾性部120のアーム1223が、固定部110のベース部材112及び可動部130のヨーク132と共に積み重ねられた配置であっても、アーム1223の可動ストロークを上下方向に確保することができ、十分な振動出力を得ることができる。
【0064】
(振動アクチュエータ100の磁気回路と可動部130の挙動)
図6A及び
図7Aに示すように、コイル1142が通電されていない状態(コイル非通電状態)では、可動部130は中立位置にある。このとき、コア主面144aとヨーク下面132bとの間にはギャップGが空いている。なお、可動部130の中立位置は、可動部130の振動動作中の振動中心位置でもある。
【0065】
ここで、コイル1142に通電すると、
図6B及び
図6Cに示すように、コア1144が励磁されて磁界が発生して、コア端部144bが磁極となり、コア1142とヨーク132との間には、磁束が流れる磁気回路が形成される。これにより、電磁ソレノイドの原理により、コア端部144bは、ヨーク132を吸引する磁気吸引力を発生する。すると、ヨーク132は、上下方向の一方向つまり下方向へ移動する(
図7B参照)。このとき、板ばね122R、122Lは下方向に撓む。下方向への撓み量が大きくなるほど、上方向に復帰しようとする反力が増大する。
【0066】
なお、ヨーク132の下方移動(下降)は、コア主面144aによって規制される。すなわち、コア主面144aは、ヨーク132の下方移動を規制するハードストップとして機能する。ただし、振動時に、ヨーク132がコア主面144aに当接すると衝突音が発生するので、動作中のヨーク下面132bの下限位置(振動下限位置)は、コア主面144aよりも僅かに上方であることが好ましい。
【0067】
続いて、コイル1142への通電を解除すると、磁界は消滅し、コア端部144bによるヨーク132に対する磁気吸引力もなくなる。すると、ヨーク132は、板ばね122R、122Lの弾性変形により生じている弾性力により付勢されて、上方向に移動する。
図7Cには、ヨーク132が最高位置まで移動してヨーク下面132bが振動上限位置にある状態が示されている。
【0068】
このようなコイル1142に対する通電と通電解除との繰り返し(断続的な通電)により、ヨーク132は、上下方向の双方向に繰り返し移動する振動運動を出力することができる。なお、コイル1142への通電タイミングを調整することで、振動出力の強度や持続時間を調整することができ、振動提示装置においては様々な種類の触感をフィードバックすることが可能となる。また、一度だけでもコイル1142への通電を行なえば、ヨーク132は、板ばね122R、122Lの弾性変形による弾性力により、減衰を伴いながらも振動運動を行うことができるので、断続的な通電は必ずしも必須ではない。
【0069】
なお、本実施の形態では、ヨーク132の上方移動(上昇)に関しては、ヨーク132の下方移動と異なり、ヨーク132の移動を規制可能な部材は設けられていない。これは、電磁的にヨーク132を移動させる方向は下方向だけであり、ばね反力のみによる上方向への移動量は、減衰によって若干抑制されるからである。過度な上方移動を規制することが望まれる場合は、固定部110と可動部130との間に、或いは振動アクチュエータ100の外部に、ヨーク132の上方移動を規制するハードストップを設けてもよい。
【0070】
また、電流パルスを用いて振動アクチュエータに共振現象を発生させて可動部を駆動することについては、例えば特許文献3において、その駆動原理が、運動方程式及び回路方程式を交えて説明されている。この駆動原理は、本実施の形態に適用可能である。
【0071】
<振動アクチュエータ100の駆動回路>
図8は、実施の形態1に係る振動アクチュエータの制御部の回路構成を示す図である。
【0072】
図8に示す駆動回路は、振動アクチュエータ100の制御部に含まれる。駆動回路は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)により構成される電流パルス供給部としてのスイッチング素子152、電圧パルス印加部としての信号発生部(Signal generation)154、抵抗R1、R2、SBD(Schottky Barrier Diodes:ショットキーバリアダイオード)を有する。この駆動回路は、後述するアクチュエータドライバ174の具体的構成の一例である。
【0073】
電源電圧Vccに接続された信号発生部154は、スイッチング素子152のゲートに接続されている。スイッチング素子152は、放電切換スイッチである。スイッチング素子152は、振動アクチュエータ100(
図16では[Actuator]で示す)、特に振動アクチュエータ100の磁力発生部114に接続されている。振動アクチュエータ100には、電源部Vactから電圧が印加されている。よって、信号発生部154によるゲート電圧制御によりスイッチング素子152がオンオフされ、スイッチング素子152がオンされたときに電流が流れて、振動アクチュエータ100において、振動発生部114のコイル1142が通電される。
【0074】
なお、制御部は、振動アクチュエータ100が実装される振動提示装置の装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)等から構成される演算処理装置と、演算処理装置の作業領域として動作する例えばRAM(Random Access Memory)等から構成される主記憶装置と、演算処理装置の動作プログラムを記憶する例えばフラッシュメモリ又はハードディスク等の不揮発性メモリから構成される補助記憶装置と、を有してよい。演算処理装置、主記憶装置及び補助記憶装置を含む構成は、後述するマイコン173の具体的構成の一例である。演算処理装置は、各種制御プログラム及び当該プログラムに付随する各種データ等(以下、各種制御プログラム及び各種データ等を纏めて「プログラム等」という)を、補助記憶装置から読み出して主記憶装置に記憶させ、データ等を使用しつつ制御プログラムを実行して、振動提示装置の各種機能を実現させる。例えば、データは、複数の異なる振動減衰期間や複数の異なる振動強度等を表現する様々なパターンのパルス波形データを含んでよい。各種制御プログラムは、操作者の接触操作を示す情報が入力された際に、その入力情報に対応する振動を発生するアクチュエータ駆動信号を生成するためのパルス波形データを読み出し、読み出したパルス波形データに従ってアクチュエータ駆動信号を生成するプログラムをふくんでよい。
【0075】
なお、補助記憶装置は、振動提示装置に着脱可能な記憶媒体であってもよい。また、制御部を外部と通信可能に構成して、プログラム等が通信ネットワークを介して外部から制御部(の主記憶装置又は補助記憶装置)にダウンロードされるようにしてもよい。
【0076】
上述した主記憶装置及び補助記憶装置は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の一例である。
【0077】
<振動アクチュエータ100の変形例の構成>
図9に示すように、一変形例として、振動アクチュエータ100には、弾性変形するアーム1223の各々に荷重検出部160が設けられてもよい。荷重検出部160は、例えば歪みゲージ等であってよい。荷重検出部160は、可動部130にかかる荷重を検出する荷重センサの一例である。
【0078】
図10は、
図9に示す変形例に係る振動アクチュエータを備える振動提示装置の制御系を模式的に示す図である。
【0079】
図10に示す振動提示装置10Aは、操作パネル11、荷重検出部160、増幅部(アンプ)171、AD変換部(ADC)172、マイコン173、アクチュエータドライバ174、及びアクチュエータ本体101を有する。なお、アクチュエータ本体101とは、振動アクチュエータ100のうち、荷重検出部160を除く部分であるが、振動アクチュエータ100において、機能的に制御系に組み込まれるのは、磁力生成部114のコイル1142である。
【0080】
操作パネル11は、操作パネル11上における操作者による接触操作を受け付けて、その接触位置を示す信号(操作位置検出信号)を出力する接触位置検出部(図示省略)を有してよい。この場合、操作パネル11は、操作位置検出信号をマイコン173に出力してよい。荷重検出部160は、操作パネル11の押圧による板ばね122R、122Lの歪みを検出し、その検出結果を示す信号(操作荷重検出信号)を、増幅部171及びADC172を介して、マイコン173に入力する。
【0081】
マイコン173は、操作荷重検出信号に基づき、或いは操作荷重検出信号及び操作位置検出信号に基づき、接触操作に対応する振動が発生するように、アクチュエータドライバ174を制御する。マイコン173の制御の下、アクチュエータドライバ174は、アクチュエータ本体101に、アクチュエータ駆動信号として駆動電流を供給する。
【0082】
アクチュエータドライバ174からの駆動電流を受けたアクチュエータ本体101は、操作パネル11に振動を伝達して振動させることにより、操作パネル11を操作した操作者に触感を付与する。このように、制御系に荷重検出部160を組み込んで、荷重検出部160により検出された荷重に応じてコイル1142への通電を行って可動部130を振動させることにより、スイッチの感触のようなリアルな触感表現を実現することができる。
【0083】
<振動アクチュエータ100の実装構造>
図11は、実施の形態1に係る振動アクチュエータを操作パネルに実装する実装構造を示す分解斜視図である。
【0084】
この実装構造は、操作パネル11の裏面に複数の雌ねじ部11aが設けられていることを前提とする。雌ねじ部11aの位置は、振動アクチュエータ100におけるヨーク取付孔132cの位置に対応する。振動アクチュエータ100は、可動部130のヨーク132を操作パネル11の裏面に対向させた状態で配置される。また、振動アクチュエータ100と操作パネル11との間には、複数の筒状スペーサ12が、ヨーク取付孔132cの位置に対応して配置される。そして、雄ねじ部13aを夫々有する複数のねじ13を用意し、これらのねじ13を、振動アクチュエータ100の固定部110(ベース部材112)の下面側から、貫通孔であるヨーク取付孔132c及び筒状スペーサ12の貫通孔12aに挿通して操作パネル11の雌ねじ部11aに螺合する。筒状スペーサ12は、ねじ13と共に振動アクチュエータ100を上下から挟持して振動アクチュエータ100の高さを確実に位置決めすると共に、振動アクチュエータ100からの振動出力を吸収せずに操作パネル11に伝達可能な、硬さを有することが好ましい。
【0085】
この実装構造では、筒状スペーサ12の寸法により操作パネル11と振動アクチュエータ100との間の間隔を精度良く維持することができる。
【0086】
図12は、実施の形態1に係る振動アクチュエータを操作パネルの実装する実装構造の変形例を示す分解斜視図である。
【0087】
この実装構造は、操作パネル14の裏面に、底部に雌ねじ部14bが設けられた凸部14aが設けられていることを前提とする。雌ねじ部14b付き凸部14aの位置は、振動アクチュエータ100におけるヨーク取付孔132cの位置に対応する。振動アクチュエータ100は、可動部130のヨーク132を操作パネル11の裏面に対向させた状態で配置される。また、振動アクチュエータ100と操作パネル11との間には、複数の凸部14aが、ヨーク取付孔132cの位置に対応して配置される。そして、雄ねじ部15aを夫々有する複数のねじ15を用意し、これらのねじ15を、振動アクチュエータ100の固定部110(ベース部材112)の下面側から、ヨーク取付孔132cに挿通して操作パネル11の凸部14aの雌ねじ部14bに螺合する。凸部14aは、ねじ15と共に振動アクチュエータ100を上下から挟持して振動アクチュエータ100の高さを確実に位置決めすると共に、振動アクチュエータ100からの振動出力を吸収せずに操作パネル11に伝達可能な、硬さを有することが好ましい。
【0088】
この実装構造では、操作パネル11自体が振動アクチュエータ100との間の間隔を規定できるため、実装構造の部品点数を削減することができる。
【0089】
なお、
図11及び
図12を用いて説明した実装構造は、後述する実施の形態3に係る振動アクチュエータにも適用可能である。
【0090】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について説明する。なお、本実施の形態は、実施の形態1と基本的に同様である。よって、本実施の形態において実施の形態1と共通する構成要素については、実施の形態1と同じ参照符号を付与し、その詳細な説明を省略する。本実施の形態は、荷重検出部260が設けられている点で、実施の形態1と相違する。また、本実施の形態は、荷重検出部260の具体的構成において、実施の形態1の変形例1と相違する。よって、本実施の形態の説明では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0091】
図13A及び
図13Bは、実施の形態2に係る振動アクチュエータの構成を斜め上方及び斜め下方から見た斜視図である。
図14は、実施の形態2に係る振動アクチュエータの分解斜視図である。
図15は、実施の形態2に係る振動アクチュエータにおける荷重検出部の配置位置を示す図である。
図16A及び
図16Bは、実施の形態2に係る振動アクチュエータを操作パネルと共にケースに実装する実装構造を説明するための図であり、
図16Aは、実装状態を示す斜視図であり、
図16Bは、実装構造を示す分解斜視図である。
【0092】
図示されているように、本実施の形態に係る振動アクチュエータ200は、実施の形態1で説明した振動アクチュエータ100の構成に、荷重検出部260の構成を加えたものである。
【0093】
荷重検出部260は、起歪体262、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit:FPC)264及び歪みゲージ266を有する。
【0094】
起歪体262は、操作パネル11の押圧操作により外力が加わることで歪みを発生する。起歪体262は、ヨーク132の上面に重ねて配置される。本実施の形態では、起歪体262は、ヨーク132やベース部材112、板ばね122R、122L等と同様、XY平面に沿って配置される平板である。例えば、起歪体262は、平板状の板金である。よって、振動アクチュエータ200の薄型化に寄与することができる。
【0095】
起歪体262の中央部には、ヨーク開口132aと同様、起歪体開口262aが設けられている。よって、起歪体262もヨーク132と同様、コイル1142等と干渉することなく低い位置に配置可能であり、低い位置にて上下動可能である。
【0096】
起歪体262の左右方向両端部には、夫々一対の突出片262bが延在しており、各突出片262bの先端には、起歪体接続孔262cが設けられている。
【0097】
また、各突出片262bの基端には、上面側に、歪みゲージ266が配置される。歪みゲージ266は、FPC264に設けられた端子に結線される。なお、FPC264は、FPC開口264aの囲うようにC字状に形成され、起歪体262の上面を覆うように設けられている。
【0098】
歪みゲージ266によって押圧荷重が検出されると、検出された荷重を示す操作荷重検出信号が、FPC264に設けられた配線を経由し、さらにアンプ171及びADC172を介して、マイコン173に入力される(
図10参照)。操作荷重検出信号がマイコン173に入力された後の制御系の動作については、
図10を参照して説明した通りであるので、ここではその説明を省略する。
【0099】
起歪体262の、突出片262bの部分を除く矩形形状領域の四隅には、起歪体取付孔262dが設けられている。
【0100】
本実施の形態では、振動アクチュエータ200は、操作パネル11と共に振動提示装置のケース16に実装される。
【0101】
本実施の形態では、ケース16は、内部に収容部16aを有する箱体である。収容部16aは、外周に設けられた段差部16bにより二段の収容部、すなわち、パネル収容部16a1(上段側)及びアクチュエータ収容部16a2(下段側)に区別される。振動アクチュエータ200は、アクチュエータ収容部16a2に収容される。このとき、振動アクチュエータ200の下面に配置された接続端子1148が、ケース16のケース開口16cから外側(下方)に臨み、外部から接続端子1148を介するコイル1142への接続が可能となる。振動アクチュエータ200は、アクチュエータ収容部16a2において四隅に設けられた雌ねじ部16hの周囲に配置される台座16d上に載置され、雄ねじ部16fをベース取付孔112bに挿通して雌ねじ部16hに螺合することで台座16dに拘束されて、ケース16に固定される。さらに、雄ねじ部16eを振動アクチュエータ200の起歪体接続孔262cに挿通して、操作パネル11の雌ねじ部(図示せず)に螺合することで、起歪体262が操作パネル11に固定される。次いで、操作パネル11がパネル収容部16a1に収容されると、操作パネル11は段差部16b上よりZ方向プラス側に突設される複数の減衰材16gを介して載置される。このようにして、振動アクチュエータ200は、操作パネル11と共にケース16に収容される。操作パネル11が操作を受けて下方に押されると、先端が雄ねじ部16eにて固定されている起歪体262の突出片262bに歪みが生じるため、歪みゲージ266がこの歪みを検出することで、操作パネル11にかかった荷重を検出することができる。
【0102】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について説明する。なお、本実施の形態は、実施の形態1と基本的に同様である。よって、本実施の形態において実施の形態1と共通する構成要素については、実施の形態1と同じ参照符号を付与し、その詳細な説明を省略する。本実施の形態は、荷重検出部360が設けられている点で、実施の形態1と相違する。また、本実施の形態は、荷重検出部360の具体的構成において、実施の形態1の変形例1と相違する。よって、本実施の形態の説明では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0103】
図17は、実施の形態3に係る振動アクチュエータの分解斜視図である。
図18は、実施の形態3に係る振動アクチュエータにおける荷重検出部の配置位置を示す図である。
図19は、実施の形態3に係る振動アクチュエータを備える振動提示装置の制御系を模式的に示す図である。
【0104】
図示されているように、本実施の形態に係る振動アクチュエータ300は、実施の形態1で説明した振動アクチュエータ100の構成に、荷重検出部360の構成を加えたものである。
【0105】
荷重検出部360は、静電容量センサを夫々構成する二対の電極362、364を有する。電極362は、ベース部材112の上面側に、電極364は、ヨーク132の下面側に、互いに対向するように配置される。押圧操作によりヨーク132に荷重がかかり可動部130(ヨーク132、電極364)の移動により電極362、364間の距離が変化することで電極362、364間に蓄積される静電容量に変化が生じるため、静電容量センサである荷重検出部360がこの静電容量変化を検出することで、操作パネル11にかかった荷重を検出することができる。
【0106】
図19に示す振動提示装置10Bは、操作パネル11、荷重検出部360、マイコン173、アクチュエータドライバ174、及びアクチュエータ本体101を有する。すなわち、実施の形態1で説明した振動アクチュエータ100から荷重検出部160が荷重検出部360に入れ替わると共に、アンプ171及びADC172が無くなっている。
【0107】
操作パネル11は、操作パネル11上における操作者による接触操作を受け付けて、その接触位置を示す信号(操作位置検出信号)を出力する接触位置検出部(図示省略)を有してよい。この場合、操作パネル11は、操作位置検出信号をマイコン173に出力してよい。荷重検出部360は、操作パネル11の押圧による板ばね122R、122Lの歪みを検出し、その検出結果を示す信号(操作荷重検出信号)を、マイコン173に入力する。操作荷重検出信号がマイコン173に入力された後の制御系の動作については、
図10を参照して説明した通りであるので、ここではその説明を省略する。
【0108】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述した特定の実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、上記実施の形態に記載された具体例に対する種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る振動アクチュエータ、振動提示装置及び実装構造は、操作パネルが搭載される操作機器類において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0110】
10A、10B 振動提示装置
11、14 操作パネル
11a 雌ねじ部
12 筒状スペーサ(第二スペーサ)
12a 貫通孔
13、15 ねじ
13a、15a 雄ねじ部
14a 凸部
14b 雌ねじ部
16 ケース
16a 収容部
16a1 パネル収容部
16a2 アクチュエータ収容部
16b 段差部
16c ケース開口
16d 台座
16e、16f 雄ねじ部
16g 減衰材
16h 雌ねじ部
100、200 振動アクチュエータ
101 アクチュエータ本体
110 固定部
111、124、125、268 止着部材
112 ベース部材
112a ベース開口
112b ベース取付孔
114 磁力発生部
1142 コイル
1144 コア
1146 ボビン(保持部材)
1148 接続端子
120 弾性部
121 固定側スペーサ(第一スペーサ)
122、122R、122L 板ばね
1221 固定側固定端
1222 可動側固定端
1223 アーム
123 可動側スペーサ(第一スペーサ)
130 可動部
132 ヨーク
132a ヨーク開口
132b ヨーク下面
132c ヨーク取付孔
142a コイル開口
144a コア主面
144b コア端部
146a コイル巻回部
146b フランジ
146c 張出部
146d ボビン開口
146e 突出部
152 スイッチング素子
154 信号発生部
160、260、360 荷重検出部
171 増幅部
172 AC変換部
173 マイコン
174 アクチュエータドライバ
262 起歪体
262a 起歪体開口
262b 突出片
262c 起歪体接続孔
262d 起歪体取付孔
264 FPC
264a FPC開口
266 歪みゲージ
362、364 電極
G ギャップ
W1、W2 間隔