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特開2024-145518内燃機関及び内燃機関の故障判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145518
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】内燃機関及び内燃機関の故障判定装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/49 20160101AFI20241004BHJP
   F02M 26/47 20160101ALI20241004BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F02M26/49 321
F02M26/47 B
F02D45/00 345
F02D45/00 360Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057906
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 卓也
(72)【発明者】
【氏名】植松 亨介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和通
【テーマコード(参考)】
3G062
3G384
【Fターム(参考)】
3G062FA18
3G062GA23
3G384BA27
3G384BA35
3G384CA25
3G384DA42
3G384DA46
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で、排気還流装置の差圧センサを装備する配管の外れ故障を含んだ故障判定を実施することができる内燃機関及び内燃機関の故障判定装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1は、吸気通路20と、スロットル弁26と、排気通路30と、吸気通路20のスロットル弁26の上流側と排気通路30とを接続する排気還流通路40,排気還流通路40に設けられた排気還流バルブ42,排気還流通路40における排気還流バルブ42よりも上流側から延びる第一通路50a,排気還流バルブ42よりも下流側から延びる第二通路50b,及び第一通路50aと第二通路50bとの間に設けられる差圧センサ51を有する排気還流装置4と、吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側と第一通路50a又は第二通路50b又は排気還流通路40とを接続する第三通路60と、第三通路60に設けられるバルブ61と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路と、
前記吸気通路に設けられたスロットル弁と、
排気通路と、
前記吸気通路の前記スロットル弁の上流側と前記排気通路とを接続する排気還流通路と、前記排気還流通路に設けられた排気還流バルブと、前記排気還流通路における前記排気還流バルブよりも上流側から延びる第一通路と、前記排気還流バルブよりも下流側から延びる第二通路と、前記第一通路と前記第二通路との間に設けられる差圧センサと、を有する排気還流装置と、
前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側と、前記第一通路又は前記第二通路又は前記排気還流通路とを接続する第三通路と、
前記第三通路に設けられるバルブと、を備える
ことを特徴とする、内燃機関。
【請求項2】
前記排気還流装置は、前記排気還流通路に設けられた排気還流クーラを有し、
前記排気還流バルブは、前記排気還流通路の前記排気還流クーラよりも下流側に設けられ、
前記第一通路は、前記排気還流通路における前記排気還流クーラよりも下流側かつ前記排気還流バルブよりも上流側から延び、
前記第三通路は、前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側と、前記第二通路又は前記排気還流通路における前記排気還流クーラよりも下流側と、を接続する
ことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記第三通路は、前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側と前記第二通路とを接続する
ことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載された内燃機関と、
前記内燃機関の前記排気還流通路及び前記排気還流通路の付帯部材の故障を判定する故障判定部と、を備えた、内燃機関の故障判定装置であって、
前記故障判定部は、前記内燃機関の燃料カット時に、前記バルブを開放し、当該開放時に前記差圧センサで検出された差圧が予め設定された第一閾値未満の場合に、前記排気還流通路及び前記付帯部材の何れかに故障があると判定する
ことを特徴とする、内燃機関の故障判定装置。
【請求項5】
請求項3に記載された内燃機関と、
前記内燃機関の前記排気還流通路及び前記排気還流通路の付帯部材の故障を判定する故障判定部と、を備えた、内燃機関の故障判定装置であって、
前記故障判定部は、前記内燃機関の燃料カット時に、前記バルブを開放した状態で、前記差圧センサの差圧と、予め設定された第一閾値及び前記第一閾値よりも小さい第二閾値とを比較し、前記差圧が前記第一閾値未満かつ前記第二閾値以上の場合には、前記第一通路と前記第三通路との接続部よりも前記排気還流通路側が故障している可能性があると判定し、
前記差圧が前記第二閾値未満の場合には、前記接続部よりも前記差圧センサ側が故障している可能性があると判定する
ことを特徴とする、内燃機関の故障判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、排気還流装置を備えた内燃機関及びその内燃機関の故障判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、排気中のNOxや煤の排出を低減するためや燃費向上のために、排気還流装置(EGR:Exhaust Gas Recirculation、以下、「EGR装置」ともいう)が装備される。EGR装置には、内燃機関の吸気通路におけるスロットルの上流側と排気通路とを接続する排気還流通路(EGR通路)と、EGR通路に介装された排気還流クーラ(EGRクーラ)と、EGR通路のEGRクーラよりも下流側(吸気通路側)に介装された排気還流バルブ(EGRバルブ)とを備えた、低圧排気還流装置(低圧EGR装置)がある。
【0003】
この低圧EGR装置において、EGR通路におけるEGRクーラよりも下流側であり且つEGRバルブよりも上流側と、EGRバルブよりも下流側とを接続するバイパス通路を設け、このバイパス通路に差圧センサを設けた装置がある。この装置では、例えば、差圧センサで検出したEGRバルブの上下流の差圧に基づいてEGRバルブ等を制御することができる。
【0004】
しかし、バイパス通路に差圧センサを設けた装置において、差圧センサ等に異常(故障)が生じた場合には、適切なエンジン制御を実施しえない。そこで、差圧センサ等の異常検出技術が開発されている。例えば、特許文献1には、EGR弁の上流側と下流側との差圧(差圧算出値)を算出し、この差圧算出値と差圧センサによって検出された差圧(差圧センサ値)との差が、判定閾値以上である場合に、差圧センサが異常であると判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-176565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、差圧センサ等の故障には、差圧センサ等の異常(故障)のほか、バイパス通路を構成する配管とEGR通路を構成する配管との接続部が外れる故障(外れ故障)もある。そこで、できるだけ簡便な構成で、差圧センサを装備する配管の外れ故障について判定することができるようにしたいという要望がある。
【0007】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、簡便な構成で、排気還流装置の差圧センサを装備する配管の外れ故障を含んだ故障判定を実施することができる内燃機関及び内燃機関の故障判定装置を提供すること目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の内燃機関は、以下に開示する態様1(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。また、開示の内燃機関の故障判定装置は、以下に開示する態様4又は5(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。態様2,3の各態様は、何れもが付加的に適宜選択されうる態様であって、何れもが省略可能な態様である。態様2,3の各態様は、何れもが本件にとって必要不可欠な態様や構成を開示するものではない。
【0009】
態様1.開示の内燃機関は、吸気通路と、前記吸気通路に設けられたスロットル弁と、排気通路と、前記吸気通路の前記スロットル弁の上流側と前記排気通路とを接続する排気還流通路と、前記排気還流通路に設けられた排気還流バルブと、前記排気還流通路における前記排気還流バルブよりも上流側から延びる第一通路と、前記排気還流バルブよりも下流側から延びる第二通路と、前記第一通路と前記第二通路との間に設けられる差圧センサと、を有する排気還流装置と、前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側と、前記第一通路又は前記第二通路又は前記排気還流通路とを接続する第三通路と、前記第三通路に設けられるバルブと、を備える。
【0010】
態様2.上記の態様1において、前記排気還流装置は、前記排気還流通路に設けられた排気還流クーラを有し、前記排気還流バルブは、前記排気還流通路の前記排気還流クーラよりも下流側に設けられ、前記第一通路は、前記排気還流通路における前記排気還流クーラよりも下流側かつ前記排気還流バルブよりも上流側から延び、前記第三通路は、前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側と、前記第二通路又は前記排気還流通路における前記排気還流クーラよりも下流側と、を接続することが好ましい。
【0011】
態様3.上記の態様1又は2において、前記第三通路は、前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側と前記第二通路とを接続することが好ましい。
【0012】
態様4.開示する内燃機関の故障判定装置は、上記の態様1~3の何れか一つに記載された内燃機関と、前記内燃機関の前記排気還流通路及び前記排気還流通路の付帯部材の故障を判定する故障判定部と、を備えた、内燃機関の故障判定装置である。前記故障判定部は、前記内燃機関の燃料カット時に、前記バルブを開放し、当該開放時に前記差圧センサで検出された差圧が予め設定された第一閾値未満の場合に、前記排気還流通路及び前記付帯部材の何れかに故障があると判定する。
【0013】
態様5.開示するもう一つの内燃機関の故障判定装置は、上記の態様3に記載された内燃機関と、前記内燃機関の前記排気還流通路及び前記排気還流通路の付帯部材の故障を判定する故障判定部と、を備えた、内燃機関の故障判定装置である。前記故障判定部は、前記内燃機関の燃料カット時に、前記バルブを開放した状態で、前記差圧センサの差圧と、予め設定された第一閾値及び前記第一閾値よりも小さい第二閾値とを比較し、前記差圧が前記第一閾値未満かつ前記第二閾値以上の場合には、前記第一通路と前記第三通路との接続部よりも前記排気還流通路側が故障している可能性があると判定し、前記差圧が前記第二閾値未満の場合には、前記接続部よりも前記差圧センサ側が故障している可能性があると判定する。
【発明の効果】
【0014】
開示の内燃機関及び内燃機関の故障判定装置によれば、簡便な構成で、差圧センサを装備する配管の外れ故障を含んだ故障判定を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施形態に係る内燃機関の吸排気系統及び内燃機関の故障判定装置の概略構成図である。
図2図1に示す故障判定装置による故障判定を説明するタイムチャートである。
図3図1に示す故障判定装置による故障判定を説明するフローチャートである。
図4】第二実施形態に係る内燃機関の吸排気系統及び内燃機関の故障判定装置の概略構成図である。
図5】第三実施形態に係る内燃機関の吸排気系統及び内燃機関の故障判定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、実施形態として内燃機関及び内燃機関の故障判定装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0017】
[1.第一実施形態]
[1-1.内燃機関の吸排気系の構成]
まず、図1の概略構成図を参照して、本実施形態に係る内燃機関1の吸排気系の構成を説明する。なお、本実施形態では、内燃機関1は車両に装備されるものとして説明するが、工作機械,船舶,発電機,各種試験装置等に搭載される内燃機関であってもよい。また、本実施形態の内燃機関1はガソリンエンジンである。
【0018】
本件に係る内燃機関1は、インジェクタ(図示略)からの燃料噴射を一時的に停止する燃料カット制御を実施可能なエンジンである。燃料カット制御の実施条件には、例えば以下の条件が含まれ、これらの条件の少なくとも一つ(好ましくは全て)が成立した場合に燃料カット制御が実施される。
・エンジン回転数(回転速度)が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下である。
・スロットル開度が全閉状態(所定開度以下)である。
・車速が所定の下限車速以上かつ所定の上限車速以下である。
・内燃機関1の温度が所定温度以上である。
・モータの出力により内燃機関1を回転させるモータリングの要求中である。
【0019】
図1に示すように、内燃機関1は、図示しない気筒及びインマニ(インテークマニホールド),エキマニ(エキゾーストマニホールド)等を備えてなるエンジン本体10と、エンジン本体10のインマニに接続された吸気通路20と、エンジン本体10のエキマニに接続された排気通路30とを備える。
【0020】
吸気通路20には、上流側から順に、エアクリーナ21、ターボチャージャ22のコンプレッサ23、インタクーラ25及びスロットル弁26が設けられる。吸気通路20に取り込まれた外気は、エアクリーナ21で浄化され、コンプレッサ23で加圧されて、インタクーラ25で冷却されて、スロットル弁26を通過してインマニからエンジン本体10の気筒内に供給される。
【0021】
排気通路30には、上流側から順に、ターボチャージャ22のタービン24、排気を浄化する三元触媒などから成る排気浄化触媒装置31(単に、「触媒31」という)が設けられる。エンジン本体10から排気通路30に排出された高圧の排気は、タービン24を回転駆動し、触媒31により浄化されて排出される。
【0022】
内燃機関1には、排気還流装置4(以下、「EGR装置4」ともいう)が設けられる。EGR装置4は、吸気通路20のスロットル弁26の上流側(具体的には、エアクリーナ21とコンプレッサ23との間)と、排気通路30における触媒31の下流側とを接続する排気還流通路40(以下、「EGR通路40」ともいう)を備えた低圧排気還流装置(低圧EGR装置)である。EGR通路40には、上流側(排気通路30側)から順に、排気還流クーラ41(以下、「EGRクーラ41」ともいう)及び排気還流バルブ42(以下、「EGRバルブ42」ともいう)が設けられる。
【0023】
内燃機関1には、EGR通路40の付帯部材として、EGR通路40におけるEGRクーラ41よりも下流側かつEGRバルブ42よりも上流側から延びる第一通路50aと、EGRバルブ42よりも下流側から延びる第二通路50bとを有するバイパス通路50と、第一通路50aと第二通路50bとの間に設けられ、第一通路50aと第二通路50bとの間の圧力差、すなわち、EGRバルブ42の上流側と下流側との圧力差(以下、「EGR差圧」、または、単に、「差圧」ともいう)を検出する差圧センサ51とが装備される。差圧センサ51の検出値は、例えば、EGRバルブ42の制御等に用いることができる。
【0024】
さらに、内燃機関1には、EGR通路40の付帯部材として、吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側と、バイパス通路50又はEGR通路40とを接続する第三通路60と、第三通路60に設けられたソレノイドバルブ61(バルブ)とが装備される。本実施形態のようにEGRバルブ42よりも上流側にEGRクーラ41が設けられる場合、第三通路60は、吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側と、バイパス通路50又はEGR通路40におけるEGRクーラ41よりも下流側とを接続する。
【0025】
本実施形態の場合、第三通路60は、吸気通路20のスロットル弁26の直下流部と、第二通路50bとを接続している。なお、図1では、追加した第三通路60にハッチングやドットなどの模様を付している。また、本実施形態では、バルブにソレノイドバルブ61を適用しているが、このバルブは開閉操作できればよく、例えば、バタフライバルブを適用してもよい。
【0026】
[1-2.制御系の概略構成]
本実施形態の車両には、内燃機関1の各部を制御する制御装置7が備えられる。制御装置7の制御対象は、例えば、内燃機関1の吸排気系のスロットル弁26、EGRバルブ42及びソレノイドバルブ61の開閉状態(開度)、図示しないインジェクタからの燃料噴射量や噴射タイミング等が挙げられる。制御装置7には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等を記憶する記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU(電子制御ユニット)が適用されている。
【0027】
制御装置7には、EGR装置4の故障を判定する故障判定部71が設けられる。故障判定部71は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。本実施形態に係る内燃機関1の故障判定装置6は、上記の内燃機関1と、この故障判定部71とを有している。なお、本実施形態では、故障判定部71が、内燃機関1を統合的に制御する制御装置7内の機能要素として設けられているが、制御装置7とは別の(専用の)制御装置(ECU)に故障判定部71が設けられてもよい。
【0028】
なお、上記の内燃機関1が搭載される車両は、駆動源としての内燃機関1が搭載されたエンジン自動車、あるいは、駆動源としての内燃機関1及びモータと発電装置としてのジェネレータと蓄電装置としてのバッテリとが搭載されたハイブリッド自動車またはプラグインハイブリッド自動車である。プラグインハイブリッド自動車とは、バッテリに対する外部充電またはバッテリからの外部給電が可能なハイブリッド自動車を意味する。プラグインハイブリッド自動車と電気自動車とには、外部充電設備からの電力が送給される充電ケーブルを差し込むための充電口(インレット)や外部給電用のコンセント(アウトレット)が設けられる。
【0029】
[1-3.内燃機関の故障判定装置]
次に、内燃機関1のEGR装置4の故障を判定する故障判定装置6について説明する。
故障判定装置6では、EGR装置4に装備された差圧センサ51と、第三通路60及び第三通路60に装備されたソレノイドバルブ61とを用いて故障を判定する。
【0030】
ここで判定する故障形態には、バイパス通路50を構成する配管の異常、例えば、亀裂の発生や、EGR通路40に接続されている配管の接続部の外れ(配管外れ)が挙げられる。また、バイパス通路50に設けられた差圧センサ51の異常(例えば、センサ自体の故障や通信不良等)、第三通路60に設けられたソレノイドバルブ61の異常が含まれる。
【0031】
故障判定部71により行う故障判定は、内燃機関1の燃料カット時に、EGRバルブ42を閉鎖して第三通路60のソレノイドバルブ61を開放し、この開放時に差圧センサ51で検出されるEGR差圧に基づいて行う。具体的には、故障判定部71は、ソレノイドバルブ61の開放時(故障判定時)に、EGR差圧が予め設定された第一閾値以上となれば『正常』あるいは『故障なし』と判定し、EGR差圧が第一閾値未満となる場合には、『異常』あるいは『故障あり』と判定する。
【0032】
この判定原理について、図2を参照して説明する。EGR通路40のEGRバルブ42よりも下流側は、吸気通路20のスロットル弁26よりも上流側と連通しているため、ソレノイドバルブ61が閉鎖状態(第三通路60が設けられていない場合)であれば、この部分(EGRバルブ42よりも下流側)の内部圧力は略大気圧となる。また、EGR通路40のEGRバルブ42よりも上流側の内部圧力は、EGRバルブ42の開閉によらず基本的には常に正圧(略大気圧以上)となる。
【0033】
これに対して、内燃機関1の燃料カット時(アクセルオフ時等)には、EGRバルブ42が閉じられるとともにスロットル弁26が閉じられるため、吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側は圧力が負圧になる。このため、燃料カット開始(時点t1)後にソレノイドバルブ61を開放する(時点t2)と、第三通路60を介して吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側と第二通路50bとが連通し、第二通路50bも負圧となる。したがって、EGR差圧は、図2に実線で示すようにソレノイドバルブ61の閉鎖時に比べて上昇する。なお、故障判定が完了したら、ソレノイドバルブ61を閉鎖する(時点t3)。
【0034】
ただし、例えば、第二通路50bの第三通路60との接続部よりも下流領域A1(図1中にハッチングで示す箇所)に配管外れ等による漏れがあれば、ソレノイドバルブ61を開放した際の差圧センサ51の下流(吸気側)の負圧が減少し、図2中に破線で示すように、EGR差圧も減少する。なお、このEGR差圧の変化は、配管外れによる故障(異常)以外にも、例えば、EGRバルブ42の異常(例えば開固着)によっても生じる可能性がある。
【0035】
また、バイパス通路50の第三通路60との接続部及びこの接続部よりも上流領域A2(図1中に網掛け模様で示す箇所)に配管外れ等による漏れがあれば、ソレノイドバルブ61を開放しても差圧センサ51の下流は大気圧のままとなる。この場合、EGR差圧は、図2中に点線で示すように、略ゼロのままで増大しない。
【0036】
[1-4.フローチャート]
図3は、上記の故障判定を説明するフローチャート例であり、所定の制御周期で繰り返し実施されるものとする。また、ソレノイドバルブ61は通常時(故障判定時以外)は閉鎖状態とされる。
【0037】
図3に示すように、故障判定部71は、燃料カットが行われているか否かを判定する(ステップS10)。燃料カットが行われていなければ、今回の制御周期の処理を終了する。一方、ステップS10で燃料カットが行われていると判定されれば、ソレノイドバルブ61を開放する(ステップS20)。なお、燃料カットの開始から終了までの間は、EGRバルブ42は閉鎖状態となっている。そして、EGR差圧を読み込んで(ステップS30)、読み込んだEGR差圧を第一閾値と比較し、EGR差圧が第一閾値未満(差圧<第一閾値)であるか否かを判定する(ステップS40)。
【0038】
ステップS40の判定で、EGR差圧が第一閾値未満であると判定された場合は、バイパス通路50を構成する配管等に故障があると判定する(ステップS50)。一方、EGR差圧が第一閾値未満でない(すなわち、EGR差圧が第一閾値以上である)と判定された場合は、バイパス通路50を構成する配管等は正常である(故障なし)と判定する(ステップS60)。
【0039】
なお、図3のフローには記載しないが、ステップS50で配管等に故障があると判定した場合に、さらに、上記の第一閾値よりも小さい(ゼロに近い微小値である)第二閾値を予め設定しておき、EGR差圧を第二閾値と比較して、配管等の故障をさらに分類してもよい。
【0040】
つまり、EGR差圧が第二閾値以上であれば、バイパス通路50の第三通路60との接続部よりも下流領域A1(図1参照)に配管外れ等による漏れがあるか、または、EGRバルブ42の異常があると判定する。なお、この場合の配管外れには、バイパス通路50のEGRバルブ42よりも下流側への接続部の配管外れが含まれる。
【0041】
一方、EGR差圧が第二閾値未満であれば(EGR差圧がゼロ付近であれば)、バイパス通路50の第三通路60との接続部及びこの接続部よりも上流領域A2(図1参照)に配管外れ等による漏れがあるか、または、ソレノイドバルブ61が閉固着していると判定する。
【0042】
[1-5.作用及び効果]
本実施形態に係る内燃機関1及びその故障判定装置6は、上記のように、吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側と、第一通路50a又は第二通路50b又はEGR通路40とを接続する第三通路60と、第三通路60に設けられたバルブ(ソレノイドバルブ61)とを備える。このため、内燃機関1の燃料カット時に、ソレノイドバルブ61を開放した状態とすることで、スロットル弁26の下流部の負圧が差圧センサ51に作用し、差圧センサ51から得られるEGR差圧に基づいて、故障判定を実施することができる。
【0043】
具体的には、ソレノイドバルブ61の開放状態で得られるEGR差圧を第一閾値と比較して、EGR差圧が第一閾値未満の場合には、EGR通路40及びその付帯部材(バイパス通路50、EGRバルブ42、第三通路60、ソレノイドバルブ61)の何れかに故障があると判定することができる。したがって、簡便な構成で、差圧センサ51を装備するバイパス通路50を構成する配管の外れ故障を含んだ故障判定を実施することができる。
【0044】
本実施形態に係る内燃機関1及びその故障判定装置6では、第三通路60が、吸気通路20のスロットル弁26の直下流部と第二通路50bとを接続するので、差圧センサ51よりも下流側にスロットル弁26の下流部の負圧が作用し、スロットル弁26の上流側と下流部との間に、この負圧の作用に応じた差圧が生じるため、上記の故障判定をより精度よく実施することができる。
【0045】
また、第二閾値をさらに設定し、EGR差圧を第二閾値と比較して、故障形態を分類(判別)することができる。具体的には、ソレノイドバルブ61の開放状態で得られるEGR差圧が第二閾値以上であれば、下流領域A1に配管外れ等による漏れがあると判定することができる。一方、EGR差圧が第二閾値未満であれば、上流領域A2に配管外れ等による漏れがあるか、ソレノイドバルブ61が閉固着していると判定することができる。
【0046】
[2.第二実施形態]
[2-1.構成]
次に、図4の概略構成図を参照して、第二実施形態に係る内燃機関1Aの吸排気系の構成を説明する。本実施形態の内燃機関1Aは、第一実施形態の内燃機関1と比べて、第三通路60Aの接続先が異なり、他の構成は第一実施形態と同様である。以下、第一実施形態と同様の構成については同様の符号を付してその説明を省略する。なお、本実施形態では、第一実施形態と同様に、内燃機関1は車両に装備されるものとする。
【0047】
本実施形態では、第三通路60Aが、吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側と、EGR通路40における第二通路50bが接続される箇所の下流側とに接続されている。また、本実施形態の故障判定装置6Aは、第一実施形態と同様の制御装置7を備え、制御装置7にはEGR装置4の故障を判定する故障判定部71Aが設けられている。すなわち、本実施形態に係る内燃機関1Aの故障判定装置6Aは、内燃機関1Aと故障判定部71Aとを有している。なお、故障判定部71Aには専用の制御装置(ECU)を用いてもよい。
【0048】
故障判定装置6Aでは、EGR装置4に装備された差圧センサ51と、第三通路60A及び第三通路60Aに装備されたソレノイドバルブ61とを用いて故障を判定する。ただし、本実施形態では、第三通路60Aの一端側の接続部の位置が第一実施形態と違うので、これに起因して、故障形態の判定にも相違がある。
【0049】
故障判定部71Aにより行う故障判定は、内燃機関1Aの燃料カット時に、第三通路60Aのソレノイドバルブ61を開放し、この開放時に差圧センサ51で検出されるEGR差圧に基づいて行う。つまり、本実施形態においても、故障判定部71Aは、ソレノイドバルブ61の開放時(故障判定時)に、EGR差圧が第一閾値以上となれば『正常』あるいは『故障なし』と判定し、EGR差圧が第一閾値未満となる場合は『異常』あるいは『故障あり』と判定する。なお、判定原理は、第一実施形態と同様である。
【0050】
ただし、第一実施形態では、第二通路50bの中間部に第三通路60Aが接続されているため、第二通路50bの第三通路60Aとの接続部よりも下流領域A1の故障と、上流領域A2の故障とを分類できたが、本実施形態では、第三通路60Aの一端側がEGR通路40における第二通路50bが接続される箇所の下流側に接続されているため、このような分類まではできない。
【0051】
[2-2.作用及び効果]
本実施形態に係る内燃機関1A及びその故障判定装置6Aでは、第三通路60Aの一端側が、EGR通路40における第二通路50bの接続部の下流側に接続されている。このため、ソレノイドバルブ61及びバイパス通路50の何れかに故障があると判定できる。すなわち、バイパス通路50の配管外れを第一実施形態のようには特定できないが、例えば、バイパス通路50に配管外れ等による漏れがあるか、ソレノイドバルブ61が閉固着しているか、または、EGRバルブ42自体の異常がある、という判定をすることができる。したがって、簡便な構成で、差圧センサ51を装備するバイパス通路50を構成する配管の外れ故障を含んだ故障判定を実施することができるようになる。
【0052】
[3.第三実施形態]
[3-1.構成]
最後に、図5の概略構成図を参照して、第三実施形態に係る内燃機関1Bの吸排気系の構成を説明する。本実施形態の内燃機関1Bは、第一実施形態の内燃機関1と比べて、第三通路60Bの接続先が異なり、他の構成は第一実施形態と同様である。以下、第一実施形態と同様の構成については同様の符号を付してその説明を省略する。なお、本実施形態では、第一実施形態と同様に、内燃機関は車両に装備されるものとする。
【0053】
本実施形態では、第三通路60Bが、吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側と第一通路50aとに接続されている。また、本実施形態の故障判定装置6Bは、第一実施形態と同様の制御装置7を備え、制御装置7にはEGR装置4の故障を判定する故障判定部71Bが設けられている。すなわち、本実施形態に係る内燃機関1Bの故障判定装置6Bは、内燃機関1Bと故障判定部71Bとを有している。なお、故障判定部71Bには専用の制御装置(ECU)を用いてもよい。
【0054】
故障判定装置6Bでは、EGR装置4に装備された差圧センサ51と、第三通路60B及び第三通路60Bに装備されたソレノイドバルブ61とを用いて故障を判定する。
ここで判定する故障には、EGR通路40に両端部を接続されたバイパス通路50を構成する配管の接続部の外れや、バイパス通路50に設けられた差圧センサ51の故障等が含まれる。ただし、本実施形態では、第三通路60Bの一端側の接続部が第一及び第二実施形態と違うので、これに起因して、故障形態の判定にも相違がある。
【0055】
故障判定部71Bにより行う故障判定は、内燃機関1Bの燃料カット時に、第三通路60Bのソレノイドバルブ61を開放し、この開放時に差圧センサ51で検出されるEGR差圧に基づいて行う。つまり、本実施形態においても、故障判定部71Bは、ソレノイドバルブ61の開放時(故障判定時)に、EGR差圧が第一閾値以上となれば『正常』あるいは『故障なし』と判定し、EGR差圧が第一閾値未満となる場合は『異常』あるいは『故障あり』と判定する。
【0056】
本実施形態も、判定原理は第一及び第二実施形態と同様であるが、本実施形態の場合、燃料カット時にソレノイドバルブ61を開放すると、スロットル弁26の下流側と第一通路50aとが連通し、スロットル弁26の下流の負圧は、第一通路50aに導入される。このため、第二通路50bが略大気圧状態であるのに対して、第一通路50aが負圧となり、第一及び第二実施形態とは逆の差圧が発生する。つまり、EGR差圧(=EGRバルブ42の上流側の圧力-EGRバルブ42の下流側の圧力)は負の値となる。
【0057】
[3-2.作用及び効果]
本実施形態に係る内燃機関1B及びその故障判定装置6Bでは、第三通路60Bの一端側が、第一通路50aに接続されている。このため、燃料カット時にソレノイドバルブ61を開放した時に、差圧センサ51の検出値が負の値であれば、『正常』と判定することができる。
【0058】
一方、燃料カット時にソレノイドバルブ61を開放した時に、差圧センサ51の検出値が負の値であるがその絶対値が予め設定された第三閾値よりも小さい場合は、『異常』と判定することができる。第三閾値は、正常時におけるEGR差圧に基づいて予め設定すればよい。
【0059】
異常判定の場合であって、差圧センサ51の検出値が負の値であるがその絶対値が第三閾値よりも小さい場合は、差圧センサ51の上流側に負圧が十分に作用していないことを推測できる。バイパス通路50の配管が、バイパス通路50との接続部(EGR通路40におけるEGRクーラ41よりも下流側かつEGRバルブ42よりも上流側と接続されている部分)において、配管外れが生じている場合を想定できる。また、EGRバルブ42の異常の可能性も考えられる。したがって、簡便な構成で、差圧センサ51を装備するバイパス通路50を構成する配管の外れ故障を含んだ故障判定を実施することができるようになる。
【0060】
特に、本実施形態のようにEGRクーラ41が設けられる場合は、第三通路60Bが、吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側と、バイパス通路50又はEGR通路40におけるEGRクーラ41よりも下流側であって差圧センサ51よりも上流側とを接続する構成にすることで、EGRクーラ41がその下流側空間を仕切る壁として作用するため、差圧センサ51の上流側にスロットル弁26の下流部の負圧が効果的に作用する。このため、故障判定の精度を高めることができる。
【0061】
[4.その他]
上述した内燃機関1,1A,1Bの構成は一例であって、上述したものに限られない。例えば、上記の各実施形態の内燃機関1,1A,1Bは、ターボチャージャ22を備えているがこれは必須ではない。
また、上記の各実施形態のEGR装置4は、EGRクーラ41を備えているがこれも必須ではない。さらに、エアクリーナ21及びインタクーラ25も必須ではない。
【0062】
ただし、第三実施形態のように、EGRクーラ41と差圧センサ51との間の第一通路50aに第三通路60Bの一端側を接続する場合、EGRクーラ41が、負圧が作用する空間を仕切る壁のように作用して、負圧を利用した故障判定の精度を高めることができるため、第三通路60Bの接続態様によっては、EGRクーラ41を装備することが有効となる。
【0063】
また、上記の各実施形態の故障判定装置6,6A,6Bでは、言及していないが、差圧センサ51の異常判定やソレノイドバルブ61の開固着判定を別の手法で実施し、差圧センサ51の異常がないこと及びソレノイドバルブ61の開固着がないことを前提の本故障判定装置6,6A,6Bによる故障判定を行えば、バイパス通路50を構成する配管の外れ故障を高い精度で判定することができる。
【0064】
また、第三通路60,60A,60Bの吸気通路20側の接続部は、吸気通路20のスロットル弁26よりも下流側に限定されるが、第三通路60,60A,60BのEGR通路40側の接続部は、EGRクーラ41がある場合は、その下流であれば何れでもよく、EGRクーラ41がない場合は、EGR通路40におけるEGRバルブ42の上流,下流、及び、第三通路60における差圧センサ51の上流,下流の何れでもよい。
なお、上記の各実施形態で適用可能な内燃機関1,1A,1Bは、ディーゼルエンジンであってもよい。ただし、ディーゼルエンジンの場合も吸気通路にスロットル弁を設ける必要がある。
【符号の説明】
【0065】
1,1A,1B 内燃機関
4 排気還流装置(EGR装置)
6,6A,6B 故障判定装置
7 制御装置
20 吸気通路
26 スロットル弁
30 排気通路
40 排気還流通路(EGR通路)
41 排気還流クーラ(EGRクーラ)
42 排気還流バルブ(EGRバルブ)
50 バイパス通路
50a 第一通路
50b 第二通路
51 差圧センサ
60,60A,60B 第三通路
61 ソレノイドバルブ(バルブ)
71,71A,71B 故障判定部
図1
図2
図3
図4
図5