(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145519
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】保冷システム
(51)【国際特許分類】
F25D 3/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F25D3/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057907
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】508297078
【氏名又は名称】アイ・ティ・イー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】パンカジ・ガルグ
【テーマコード(参考)】
3L044
【Fターム(参考)】
3L044AA01
3L044BA02
3L044CA11
3L044DC04
3L044HA06
3L044JA01
3L044KA01
3L044KA03
3L044KA04
(57)【要約】
【課題】収容空間に収容された被保冷物を蓄冷部材で保冷するにあたり、保冷温度を好適に管理するための、保冷システムを提供すること。
【解決手段】保冷システム1は、内部に蓄冷剤22が充填され、収容空間17の温度を所定の保冷温度帯に冷却して保持する蓄冷プレート20を用いて、被保冷物Tが収容される収容空間17を保冷する保冷システム1であって、蓄冷剤22が周囲を冷却するエネルギーである冷却エネルギーの最大値に関する情報である最大エネルギー情報と、収容空間17を有するコンテナ11の断熱効果に関する断熱効果情報と、が記憶される記憶部51と、コンテナ11の外部の温度を取得する第1温度センサ30Aと、最大エネルギー情報と、断熱効果情報と、第1温度センサ30Aの取得結果と、に基づいて、蓄冷剤22の冷却エネルギーTEの残存率Rを推定する推定部551と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に蓄冷剤が充填され、収容空間の温度を所定の保冷温度帯に冷却して保持する蓄冷部材を用いて、被保冷物が収容される前記収容空間を保冷する保冷システムであって、
前記蓄冷剤が周囲を冷却するエネルギーである冷却エネルギーの最大値に関する情報である最大エネルギー情報と、前記収容空間を有する保冷庫の断熱効果に関する断熱効果情報と、が記憶される記憶部と、
前記保冷庫の外部の温度を取得する第1温度取得部と、
前記最大エネルギー情報と、前記断熱効果情報と、前記第1温度取得部の取得結果と、に基づいて、前記蓄冷剤の前記冷却エネルギーの残存量を推定する推定部と、
を備える、保冷システム。
【請求項2】
前記保冷庫の内部の温度を取得する第2温度取得部を備え、
前記推定部は、前記最大エネルギー情報と、前記断熱効果情報と、前記第1温度取得部の取得結果と、前記第2温度取得部の取得結果と、に基づいて、前記蓄冷剤の前記冷却エネルギーの残存量を推定する、請求項1に記載の保冷システム。
【請求項3】
前記推定部により推定された前記残存量を提示する提示部を備える、請求項1又は2に記載の保冷システム。
【請求項4】
前記推定部により推定された前記残存量が、所定の基準残存量以下であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記残存量が前記基準残存量以下であると判定された場合に、報知を行う報知部と、
を備える、請求項1又は2に記載の保冷システム。
【請求項5】
前記蓄冷部材の温度を取得する第3温度取得部を備え、
前記報知部は、前記第3温度取得部により取得された前記蓄冷部材の温度が、所定の基準温度以上である場合に、報知を行う、請求項4に記載の保冷システム。
【請求項6】
前記推定部により推定された前記残存量が、所定の基準残存量以下であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記残存量が所定の基準残存量以下であると判定された場合に、前記蓄冷部材を冷却する冷却装置と、
を備える、請求項1又は2に記載の保冷システム。
【請求項7】
前記蓄冷部材の温度を取得する第3温度取得部と、
前記第3温度取得部により取得された前記蓄冷部材の温度が、所定の基準温度以上である場合に、前記蓄冷部材を冷却する冷却装置と、
を備える、請求項1又は2に記載の保冷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物流サービス事業において、冷蔵又は冷凍して保管する必要がある物品(以下、「被保冷物」という)を保冷して運搬等することが行われている。被保冷物を保冷するための保冷容器として、蓄冷部材を備えた保冷容器が知られている。
【0003】
例えば特許文献1の収容ボックスは、その収容空間の上方側に蓄冷部材が配置される。蓄冷部材には、液状又はゲル状の蓄冷剤が充填されている。蓄冷部材は、予め冷凍されており、蓄冷剤が固体から液体に相変化する際の融解潜熱により、収容空間を冷却して保冷する。これにより、収容空間の温度及び湿度を安定して保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蓄冷部材が収容空間を所望の温度等で保持可能な期間は限られているため、蓄冷部材の再冷却等が必要となる場合がある。このため、被保冷物を保冷する温度(以下、「保冷温度」という)を管理する上で、当該保持可能な期間を予測できると都合がよい。
【0006】
そこで、本発明は、収容空間に収容された被保冷物を蓄冷部材で保冷するにあたり、保冷温度を好適に管理するための、保冷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の保冷システムは、内部に蓄冷剤が充填され、収容空間の温度を所定の保冷温度帯に冷却して保持する蓄冷部材を用いて、被保冷物が収容される前記収容空間を保冷する保冷システムであって、前記蓄冷剤が周囲を冷却するエネルギーである冷却エネルギーの最大値に関する情報である最大エネルギー情報と、前記収容空間を有する保冷庫の断熱効果に関する断熱効果情報と、が記憶される記憶部と、前記保冷庫の外部の温度を取得する第1温度取得部と、前記最大エネルギー情報と、前記断熱効果情報と、前記第1温度取得部の取得結果と、に基づいて、前記蓄冷剤の前記冷却エネルギーの残存量を推定する推定部と、を備える。
【0008】
第2の発明の保冷システムは、第1の発明において、前記保冷庫の内部の温度を取得する第2温度取得部を備え、前記推定部は、前記最大エネルギー情報と、前記断熱効果情報と、前記第1温度取得部の取得結果と、前記第2温度取得部の取得結果と、に基づいて、前記蓄冷剤の前記冷却エネルギーの残存量を推定する。
【0009】
第3の発明の保冷システムは、第1又は第2の発明において、前記推定部により推定された前記残存量を提示する提示部を備える。
【0010】
第4の発明の保冷システムは、第1~第3のいずれか1の発明において、前記推定部により推定された前記残存量が、所定の基準残存量以下であるか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記残存量が前記基準残存量以下であると判定された場合に、報知を行う報知部と、を備える。
【0011】
第5の発明の保冷システムは、第4の発明において、前記蓄冷部材の温度を取得する第3温度取得部を備え、前記報知部は、前記第3温度取得部により取得された前記蓄冷部材の温度が、所定の基準温度以上である場合に、報知を行う。
【0012】
第6の発明の保冷システムは、第1~第5のいずれか1の発明において、前記推定部により推定された前記残存量が、所定の基準残存量以下であるか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記残存量が所定の基準残存量以下であると判定された場合に、前記蓄冷部材を冷却する冷却装置と、を備える。
【0013】
第7の発明の保冷システムは、第1~第6のいずれか1の発明において、前記蓄冷部材の温度を取得する第3温度取得部と、前記第3温度取得部により取得された前記蓄冷部材の温度が、所定の基準温度以上である場合に、前記蓄冷部材を冷却する冷却装置と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、収容空間に収容された被保冷物を蓄冷部材で保冷するにあたり、保冷温度を好適に管理するための、保冷システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保冷システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】一実施形態の保冷車を車両後方側から見た図である。
【
図3】一実施形態の保冷システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態の管理装置において実行される管理支援処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】一実施形態の管理装置による推定結果と、コンテナの外部の温度と、コンテナの内部の温度と、の経時的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の保冷システム1は、保冷車10で被保冷物Tを保冷しながら運搬するに際して、その保冷温度を所望の温度帯で管理するシステムである。当該保冷温度の管理は、例えば、物流拠点に駐在する管理者により行われる。なお、被保冷物Tとしては、例えば、氷、アイスクリーム、冷凍食品、チルド食品、生鮮食品、医薬品等が想定される。
【0017】
まず、保冷車10の構成について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る保冷システム1の全体構成を示す概略図である。
図2は、本実施形態の保冷車10を車両後方側から見た図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、保冷車10は、例えば牽引自動車であり、保冷庫としてのコンテナ11と、コンテナ11を牽引する牽引車10aと、を有する。コンテナ11は、例えば、20フィートコンテナである。
【0019】
コンテナ11は、コンテナ本体部12と、開閉扉15と、被保冷物T及び蓄冷プレート20が収容される収容空間17と、を有する。なお、蓄冷プレート20は、被保冷物Tを冷却するものであり、蓄冷部材に相当する。
【0020】
コンテナ本体部12は、1面が開口した中空の略直方体状をなし、5つの略矩形状のパネル13を有する。コンテナ本体部12は、保冷車10の車両後方側の1面が開口している。
【0021】
開閉扉15は、例えば観音開き式の扉であり、コンテナ本体部12の開口面に設けられている。
【0022】
収容空間17は、コンテナ本体部12(パネル13)と開閉扉15と、により囲まれて形成されている。開閉扉15が開状態である場合には、収容空間17は開放状態となり、被保冷物Tや蓄冷プレート20の出し入れが可能となる。開閉扉15が閉状態である場合には、収容空間17は密閉状態となる。なお、詳しくは後述するが、蓄冷プレート20は、原則、予め冷凍された状態で使用され、その融解潜熱によりコンテナ11の内部及び被保冷物Tを冷却する。
【0023】
収容空間17には、蓄冷プレート20を保持する保持部18が設けられている。保持部18は、金属製の網棚であり、蓄冷プレート20を固定可能なホルダ18aを有している。保持部18は、収容空間17の上部に設けられている。保冷時には、蓄冷プレート20は、保持部18に固定される。蓄冷プレート20により冷却された気体は、熱対流現象により、収容空間17において上方から下方に向けて落下し、拡散される。これにより、収容空間17は、蓄冷プレート20により好適に冷却される。
【0024】
各パネル13と、開閉扉15とは、それぞれ、断熱材(図示略)を有する。このため、各パネル13と、開閉扉15とは、断熱効果を有する。これにより、コンテナ11の外部から収容空間17への熱貫流が抑制されている。
【0025】
また、コンテナ11(パネル13及び開閉扉15)の断熱面積A(m2)と、コンテナ11(パネル13及び開閉扉15)の熱還流率U(W/m2・K)とは、コンテナ11の断熱効果に関する情報であり、断熱効果情報に相当し、以下において、まとめて「断熱効果情報」ということがある。
【0026】
収容空間17は、外部冷凍機80により冷却される。外部冷凍機80は、保冷車10には搭載されておらず、例えば、物流拠点に配備されている。外部冷凍機80は、コンプレッサ(図示略)と、ダクトホース81と、を有する。また、コンテナ11は、ダクトホース81を接続可能なコネクタ(図示略)を有する。ダクトホース81をコンテナ11(コネクタ)に接続するとともに、外部冷凍機80(コンプレッサ)を駆動することで、収容空間17を冷却するとともに、蓄冷プレート20を冷却(冷凍)することができる。このため、保冷車10の走行前に、外部冷凍機80により蓄冷プレート20を予め冷凍することで、保冷車10の走行中に、蓄冷プレート20で収容空間17を保冷することができる。
【0027】
なお、外部冷凍機80による収容空間17の冷却が終了すると、それ以降は、収容空間17は蓄冷プレート20により冷却されることになる。このため、外部冷凍機80による収容空間17の冷却が終了した時点は、蓄冷プレート20による保冷の開始時点となる。なお、蓄冷プレート20による保冷の開始時点の具体的な定め方については後述する。
【0028】
続いて、蓄冷プレート20の構成について説明する。
【0029】
蓄冷プレート20は、中空箱状のケース21と、ケース21に充填された蓄冷剤22と、を有する。
【0030】
ケース21は、例えば、樹脂からなり、矩形板状に形成される。
【0031】
蓄冷剤22は、例えば、融解潜熱の大きい水を主体として、これに寒剤(冷却剤)やゲル化剤を適宜添加し、必要に応じて、核剤、着色剤、防腐剤等を添加することで構成される。蓄冷プレート20(蓄冷剤22)は、使用開始前に、蓄冷剤22の融解温度よりも10℃低い温度に設定された環境で、所定時間、例えば、12時間以上かけて冷凍される。蓄冷剤22は、固体から液体に相変化する際の融解潜熱により、周囲の気体の熱を吸熱する。これにより、蓄冷プレート20は、収容空間17内の空気を冷却することができる。
【0032】
蓄冷プレート20は、蓄冷剤22の融解温度を設定することで、収容空間17の温度帯を異ならせることができる。蓄冷剤22の融解温度(融点)は、寒剤の種類や添加量を調整して適宜設定することができる。蓄冷剤22は、コンテナ11(収容空間17)に収容される被保冷物Tの保管に適した温度帯を保持するように、融解温度を設定して作成される。蓄冷プレート20に充填される蓄冷剤22の融解温度は、例えば、0℃、-16℃、-21℃等に設定される。なお、蓄冷プレート20の温度は、内部に充填された蓄冷剤22の温度と略同一の温度である。
【0033】
また、融解温度が異なる蓄冷プレート20は、保冷時間がそれぞれ異なっている。このため、適切な種類の蓄冷プレート20を選択することで、保冷時間を調整することができる。
【0034】
また、融解温度が異なる蓄冷プレート20は、蓄冷プレート20を冷凍状態にするまでの所要時間がそれぞれ異なっている。このため、適切な種類の蓄冷プレート20を選択することで、例えば、蓄冷プレート20の冷凍のための時間を確保しにくい場合であっても、保冷を行い易くすることができる。
【0035】
本実施形態において、蓄冷プレート20を複数使用した場合には、収容空間17を所望の温度帯で保持可能な時間は、蓄冷プレート20の数の分だけ増加する。例えば、蓄冷プレート20を3つ使用した場合には、収容空間17を所望の温度帯で保持可能な時間は、蓄冷プレート20を1つ使用した場合と比較して、3倍となる。
【0036】
蓄冷プレート20を収容空間17に収容する数は、所望する収容空間17の大きさに応じて、任意とすることができる。また、各蓄冷プレート20の融解温度は、全て同一である必要はなく、互いに異なっていてもよい。異なる融解温度の蓄冷プレート20を組み合わせることにより、保冷温度帯、保冷時間、蓄冷プレート20の冷凍時間をより細かい幅で調節することができる。
【0037】
なお、本実施形態の蓄冷剤22は、高吸水性樹脂から成る一般的な保冷剤と異なり、塩化ナトリウムとゲル化剤とが調合されている。これにより、蓄冷剤22は、適度な粘性を有した安定したゲル状となり、任意の温度帯で一定に保たれ易くなっている。また、本実施形態の蓄冷剤22は、一般的な保冷剤と異なり、コンテナ11内部の温度を長時間保持できる成分により構成されている。このため、本実施形態の蓄冷プレート20は、一般的な保冷剤よりも、温度を長時間保持する恒温機能が優れている。このような蓄冷プレート20として、例えばアイ・ティ・イー株式会社のアイスバッテリー(登録商標)を利用することができる。
【0038】
ここで、蓄冷プレート20(蓄冷剤22)は、その周囲を冷却するエネルギー(以下、「冷却エネルギー」という)を有する。この冷却エネルギーは、蓄冷剤22の融解潜熱に対応する。収容空間17内に存在する蓄冷剤22の冷却エネルギーの総量を「冷却エネルギーTE」とすると、冷却エネルギーTEは、収容空間17内の蓄冷剤22が全て固体となっている場合に最大値をとる。よって、収容空間17内の蓄冷剤22の冷凍が完了した時点(収容空間17内の保冷を開始する時点)における冷却エネルギーを冷却エネルギーTE0とすると、冷却エネルギーTEの最大値は、冷却エネルギーTE0となる。
【0039】
また、コンテナ11(各パネル13及び開閉扉15)は、断熱効果を有しているものの、コンテナ11の外部の温度がコンテナ11の内部の温度よりも高い場合には、コンテナ11の外部から内部へとある程度の熱が貫流する。
【0040】
保冷を開始してからコンテナ11の外部から収容空間17に貫流した熱量の総量が、冷却エネルギーTE0と等しくなると、冷却エネルギーTEは、0となる。冷却エネルギーTEが0になると、蓄冷剤22は、収容空間17の内部の温度を、当該蓄冷剤22の融点以下の値で保持することができなくなってしまう。
【0041】
そこで、本実施形態の保冷システム1において、保冷車10は、複数の温度センサ30を有する。温度センサ30は、その周囲の温度を取得するものである。温度センサ30は、第1温度センサ30Aと、第2温度センサ30Bと、第3温度センサ30Cと、を有する。
【0042】
第1温度センサ30Aは、保冷車10の外部の温度(外気温)を取得する。第1温度センサ30Aは、例えば、コンテナ11の車両後方側の外面に設けられている。なお、第1温度センサ30Aは、第1温度取得部に相当する。
【0043】
第2温度センサ30Bは、コンテナ11の内部(収容空間17)の温度(内気温)を取得する。第2温度センサ30Bは、収容空間17において、複数設けられている。各第2温度センサ30Bは、例えば、コンテナ11内の前後左右の面及び床面に固定されているものと、収容空間17の中央部付近に位置するようにコンテナ11の天井部から吊り下げられているものと、を含む。なお、第2温度センサ30Bは、第2温度取得部に相当する。
【0044】
第3温度センサ30Cは、蓄冷プレート20の温度を取得する。第3温度センサ30Cは、例えば、蓄冷プレート20のケース21の外面に固定される。複数の蓄冷プレート20を使用する場合には、各蓄冷プレート20に第3温度センサ30Cをそれぞれ設け、蓄冷プレート20毎に温度を取得するようにしてもよいし、1つの第3温度センサ30Cで複数の蓄冷プレート20の温度をまとめて取得するようにしてもよい。なお、第3温度センサ30Cは、第3温度取得部に相当する。
【0045】
なお、温度センサ30は、例えばRFID(radio frequency identifier)を実現するRFタグであり、詳しくは、パッシブタグである。保冷車10には、温度センサ30と無線通信可能なリーダライタ31が設けられている。リーダライタ31は、温度センサ30との間で電波の送受信が可能な位置に設けられており、例えば、保持部18に固定されている。温度センサ30は、リーダライタ31が送出する電波をエネルギー源として温度を測定する。温度センサ30は、測定した温度をリーダライタ31に送信する。また、リーダライタ31は、管理装置50とネットワークNを介して通信可能となっている。リーダライタ31は、温度センサ30による測定結果を、ネットワークNを介して、管理装置50に送信する。
【0046】
また、コンテナ11は、予備冷凍機60を有する。予備冷凍機60は、例えば、収容空間17の上部に設けられている。予備冷凍機60は、コンプレッサと、コンプレッサを駆動するバッテリ(いずれも図示略)を有する。予備冷凍機60は、保冷車10の走行中においても、収容空間17内を冷却することができる。これにより、例えば保冷車10の走行中に蓄冷プレート20を再冷却する必要が生じた場合であっても、保冷車10を走行させつつ蓄冷プレート20を再冷却することができる。なお、予備冷凍機60による収容空間17の冷却が終了すると、それ以降は、収容空間17は蓄冷プレート20により冷却されることになる。このため、予備冷凍機60による冷却を実行した場合、予備冷凍機60による収容空間17の冷却が終了した時点は、蓄冷プレート20による保冷の開始時点となる。また、予備冷凍機60は、冷却装置に相当する。外部冷凍機80と予備冷凍機60とは、併せて「冷凍機60,80」ということがある。
【0047】
冷凍機60,80の駆動は、例えば、収容空間17(蓄冷プレート20)が冷却されていき、蓄冷プレート20の温度が当該蓄冷プレート20の融解温度に達し、更に所定の待機期間(例えば、2時間)が経過した時点以降に停止される。外部冷凍機80又は予備冷凍機60の駆動が停止された時点では、コンテナ11の内部の温度は、蓄冷プレート20の融解温度以下となっていると考えられる。蓄冷プレート20による保冷の開始時点は、例えば、コンテナ11の内部の温度が上昇し、蓄冷プレート20の融解温度に達した時点とすることができる。
【0048】
なお、蓄冷プレート20(蓄冷剤22)の温度は、蓄冷剤22の融解温度に達する直前に、過冷却により一旦大きく低下し、その後、蓄冷剤22の融解温度まで再上昇して当該温度で概ね一定となる。かかる温度変化が生じたことに基づいて、蓄冷プレート20の温度が、その融解温度に達したと判断することができる。
【0049】
また、保冷システム1は、保冷システム1を統括管理する管理装置50を備える。管理装置50は、例えば、サーバコンピュータであり、物流拠点に設けられている。以下、保冷システム1の電気的構成について、
図3に基づき説明する。
図3は、本実施形態の保冷システム1の電気的構成を示すブロック図である。
【0050】
まず、管理者は、通信機能を有する情報端末40を所持している(
図1参照)。情報端末40は、例えばスマートフォンであり、各種情報を表示するディスプレイ41と、音声を発出するスピーカ42と、を有する。管理装置50と、情報端末40とは、ネットワークNを介して通信可能となっている。例えば、管理装置50は、各種情報を、ネットワークNを介して情報端末40に送信可能となっている。また、ディスプレイ41は、管理者が操作する操作部としての機能も有する。管理者は、ディスプレイ41を操作して、管理装置50に所定の制御処理を実行させたり、各種情報を管理装置50に記憶させたりすることができる。
【0051】
図3に示すように、管理装置50は、記憶部51と、通信部52と、タイマ53と、制御部55と、を有する。
【0052】
記憶部51は、各種情報を記憶するための記憶装置であり、例えばHDD(Hard disk drive)である。
【0053】
通信部52は、外部の装置と通信を行うための部分である。通信部52による通信は、無線であってもよいし、有線であってもよい。通信部52は、ネットワークNを介して保冷車10と通信可能であり、例えば、予備冷凍機60及びリーダライタ31と通信可能である。通信部52は、ネットワークNを介して情報端末40と通信可能である。
【0054】
タイマ53は、時間を計測するための部分である。タイマ53は、ある時点からの経過時間を計測し、例えば、計測結果がリセットされた場合には、当該リセット時点からの経過時間を計測する。
【0055】
制御部55は、保冷車10における保冷温度帯の管理を支援する処理(以下、「管理支援処理」ということがある)を実行するための部分である。制御部55の機能は、管理装置50に搭載されたCPU等の演算処理装置が、本実施形態の特有の処理を実行するためソフトウェアをRAM等に展開させながら演算処理を行うことにより実現される。
【0056】
リーダライタ31から送信された温度センサ30による測定結果は、通信部52により受信され、制御部55に入力される。制御部55は、温度センサ30による測定結果が入力されると、当該測定結果を記憶部51に記憶する。制御部55は、各種制御を実行するにあたり、必要な情報を適宜記憶部51から読み出す。
【0057】
制御部55は、推定部551を有する。推定部551は、蓄冷剤22の冷却エネルギーTEの残存量を推定し、詳しくは、冷却エネルギーTEの残存率Rを推定する。残存率Rとは、当該時点における冷却エネルギーTE÷冷却エネルギーTE0×100として得られる値(%)である。推定部551による推定処理について、詳しくは後述する。
【0058】
制御部55は、判定部552を有する。判定部552は、推定部551により推定された冷却エネルギーTEの残存量が所定の閾値以下であるか否かを判定し、詳しくは、推定部551により推定された残存率Rが所定の基準残存率以下であるか否かを判定する。なお、所定の基準残存率の値は、予め記憶部51に記憶されている。また、残存率Rは、特許請求の範囲でいう残存量に相当する。
【0059】
判定部552は、第3温度センサ30Cの取得結果に基づいて、蓄冷プレート20の温度が所定の基準温度以上であるか否かを判定する。所定の基準温度は、例えば、所望する収容空間17内の保冷温度帯付近の温度に設定され、好ましくは、当該保冷温度帯の上限である温度よりも若干低い温度に設定される。なお、所定の基準温度の値は、予め記憶部51に記憶されている。
【0060】
制御部55は、通信部52を通じて情報端末40と通信可能である。例えば、制御部55は、各種情報をディスプレイ41に表示させたり、スピーカ42に所定の音声を発出させたりすることが可能である。
【0061】
制御部55は、通信部52を通じて予備冷凍機60と通信可能である。制御部55は、例えば、判定部552の判定結果や、管理者による情報端末40の操作結果に基づいて、予備冷凍機60の駆動を制御可能である。
【0062】
続いて、蓄冷剤22の冷却エネルギーTEの残存量を推定する方法について説明する。当該推定は、制御部55(推定部551)により行われる。
【0063】
まず、冷却エネルギーTE0は、蓄冷剤22の単位重量当たりの融解潜熱[kcal/キログラム]に対し、収容空間17内に存在する蓄冷剤22の総重量[キログラム]を乗じて求めることができる。また、収容空間17内に存在する蓄冷剤22の総重量[キログラム]は、1つの蓄冷プレート20に充填される蓄冷剤22の重量[キログラム/個]に対して、収容空間17内に収容されている蓄冷プレート20の個数[個]を乗じることで求めることができる。
【0064】
具体例としては、0℃の蓄冷プレート20に充填された蓄冷剤22の単位重量当たりの融解潜熱は、例えば、79kcal/キログラムとする。1つの蓄冷プレート20に充填される蓄冷剤22の重量は、例えば、1.53キログラム/個とする。収容空間17内に収容されている個数は、例えば、235個とする。この場合、冷却エネルギーTE0[kcal]は、79[kcal/キログラム]×1.53[キログラム/個]×235[個]≒32900[kcal]として計算される。
【0065】
なお、冷却エネルギーTE0の算出方法は、上記の方法に限定されない。例えば、冷凍状態の蓄冷プレート20を収容空間17内に配置するとともに、コンテナ11の外部の温度が一定となるようにして、「冷却エネルギーTE0=断熱面積A×熱還流率U×(コンテナ11の外部の温度-コンテナ11の内部の温度)×蓄冷プレート20が融解温度に達するまでの時間」として求めることが可能である。その場合、蓄冷プレート20が融解温度に達したか否かは、第3温度センサ30Cの取得結果に基づき判断する。
【0066】
蓄冷剤22の単位重量当たりの融解潜熱、1つの蓄冷プレート20に充填される蓄冷剤22の重量、収容空間17内に収容されている蓄冷プレート20の個数等の値は、管理装置50の記憶部51に予め記憶させることができる。また、それらの値は、管理者が、情報端末40を操作して、状況に応じたものを管理装置50に入力するようにしてもよい。その場合、推定部551は、推定した冷却エネルギーTE0を、記憶部51に記憶する。また、冷却エネルギーTE0が既知である場合は、その値を予め記憶部51に記憶しておくようにしてもよい。なお、蓄冷剤22の単位重量当たりの融解潜熱、1つの蓄冷プレート20に充填される蓄冷剤22の重量、収容空間17内に収容されている蓄冷プレート20の個数及び冷却エネルギーTE0は、冷却エネルギーTEの最大値に関する情報である最大エネルギー情報に相当し、以下において、まとめて「最大エネルギー情報」ということがある。
【0067】
推定部551は、所定の単位期間が経過する毎に、当該時点における冷却エネルギーTEの値を推定する。例えば、所定の単位期間は、60分間とされ、推定部551は、冷却エネルギーTEの値を60分毎に推定する。n回目の推定時に得られた冷却エネルギーTEを「冷却エネルギーTEn」とすると、冷却エネルギーTEnは、冷却エネルギーTEn―1から、冷却エネルギーTEn―1の測定時から冷却エネルギーTEnの測定時までの期間にコンテナ11の外部から収容空間17に貫流した熱量(以下、「熱貫流量ΔEn」という)を差し引くことで推定(算出)可能である。また、1回目の推定に係る冷却エネルギーTE1は、TE0からΔE1を差し引くことで推定可能である。
【0068】
熱貫流量ΔEnは、コンテナ11のサイズと、コンテナ11の断熱性能と、コンテナ11の内外の温度差と、に基づいて推定(算出)可能である。例えば、熱貫流量ΔEnは、コンテナ11(パネル13及び開閉扉15)の断熱面積A[m2]と、コンテナ11(パネル13及び開閉扉15)の熱還流率U[W/m2・K]と、冷却エネルギーTEn-1の推定時における第1温度センサ30Aの取得結果(温度T1n-1[K])及び第2温度センサ30Bの取得結果(温度T2n-1[K])と、に基づいて、近似的に算出可能であり、詳しくは、熱貫流量ΔEn=断熱面積A×熱還流率U×(温度T2n-1-温度T1n-1)として算出可能である。なお、断熱面積A、熱還流率U等の値は、記憶部51に予め記憶しておくようにする。
【0069】
なお、熱貫流量ΔEnの算出に用いる第1温度センサ30Aの取得結果及び第2温度センサ30Bの取得結果は、冷却エネルギーTEn-1の推定時における取得結果である必要はなく、例えば、冷却エネルギーTEnの推定時における取得結果であってもよいし、それらの平均値であってもよい。また、熱貫流量ΔEnは、冷却エネルギーTEn-1の推定時から冷却エネルギーTEnの推定時までの期間(例えば、60分)を更に短い期間(例えば、10分)に分割し、当該分割された期間ごとの熱貫流量を求めるとともに、それらを積算して求めることも可能である。その場合、より精度よく熱貫流量ΔEnを求めることができる。
【0070】
また、第2温度センサ30Bの取得結果(温度T2n-1[K])は、収容空間17が保冷されている間には、所望の保冷温度帯付近の値で概ね一定となると考えられる。このため、熱貫流量ΔEnを推定するにあたり、第2温度センサ30Bの取得結果に代えて、所望の保冷温度帯付近の値を用いてもよいし、第2温度センサ30Bによる1の取得結果(例えば、初回の取得結果)を用いてもよい。
【0071】
推定部551は、冷却エネルギーTEの残存率Rを推定(算出)する。n回目の推定時における冷却エネルギーTEの残存率を残存率Rnとすると、残存率Rn(%)は、冷却エネルギーTEn÷冷却エネルギーTE0×100として算出可能である。
【0072】
なお、制御部55は、推定部551による各種推定結果を、記憶部51に記憶する。
【0073】
続いて、管理装置50において実行される管理支援処理の流れについて
図4に示すフローチャートに基づき説明する。
図4は、本実施形態の管理装置50により実行される管理支援処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、制御部55により繰り返し実行され、保冷車10において保冷が開始された(すなわち、外部冷凍機80又は予備冷凍機60の駆動が停止された)ことをトリガとして開始される。また、制御部55は、管理支援処理を開始するとともにタイマ53をセットして計時を開始する。
【0074】
図4に示すように、ステップS11では、タイマ53の計時結果に基づいて、残存率Rn-1を推定してから所定の基準期間が経過したか否かを判定する。ただし、n=1である場合には、管理支援処理を開始してから所定の基準期間が経過したか否かを判定する。所定の基準期間が経過した場合には、YES判定し、ステップS12に進む。所定の基準期間が未経過の場合には、NO判定して本処理を終了する。なお、所定の期間の長さは、特に限定されないが、例えば、60分とされる。
【0075】
ステップS12では、タイマ53をリセットする。また、タイマ53をリセットする毎に、タイマ53をリセットした回数を記憶部51に記憶していく。タイマ53をリセットした回数の累計値は、当該時点より前に残存率Rの推定を行った回数に対応する。上述のステップS11においては、タイマ53をリセットした回数の累計値に基づいて、所定の処理を実行する。例えば、タイマ53をリセットした回数の累計値が0である場合には、n=1であるとして所定の処理を実行する。その後ステップS13に進む。
【0076】
ステップS13では、熱貫流量ΔEnを算出して記憶する。具体的には、コンテナ11の断熱面積Aと、コンテナ11の熱還流率Uと、冷却エネルギーTEn-1の推定時における第1温度センサ30Aの取得結果(「温度T1n-1」という)及び第2温度センサ30Bの取得結果(「温度T2n-1」という)と、を記憶部51から読み出すとともに、断熱面積A×熱還流率U×(温度T2n-1-温度T1n-1)として熱貫流量ΔEnを算出する。得られた熱貫流量ΔEnの値を記憶部51に記憶する。その後ステップS14に進む。
【0077】
ステップS14では、冷却エネルギーTEn-1の値を記憶部51から読み出す。n=1の場合には、保冷を開始した時点における冷却エネルギーTE0を記憶部51から読み出す。その後ステップS15に進む。なお、冷却エネルギーTE0は、予め記憶部51に記憶されている必要はなく、本ステップS14の実行時に算出するようにしてもよい。
【0078】
ステップS15では、冷却エネルギーTEnを算出して記憶する。具体的には、冷却エネルギーTEn-1から熱貫流量ΔEn-1を差し引くことで、冷却エネルギーTEnを算出する。得られた冷却エネルギーTEnを記憶部51に記憶する。その後ステップS16に進む。
【0079】
ステップS16では、残存率Rnを算出する。具体的には、残存率Rn=冷却エネルギーTEn÷冷却エネルギーTE0×100として、残存率Rnを算出する。得られた残存率Rnを、ディスプレイ41に表示させる。これにより、当該時点における残存率Rnを推定するとともに、管理者に提示することができる。このため、管理者は、例えば、残存率Rnが少なくなりつつある場合に、保冷車10を近隣の物流拠点に停車させて蓄冷プレート20の再冷却を行う等の対応が可能となるため、好適にコンテナ11内の温度を所望の保冷温度帯で管理することができる。その後ステップS17に進む。なお、ディスプレイ41は、提示部に相当する。
【0080】
ステップS17では、蓄冷プレート20の冷却エネルギーTEが十分に残存しているか否かを判定する。ステップS16で得られた残存率Rnが、所定の基準残存率以下であるか否かを判定する。残存率Rnが所定の基準残存率以下である場合には、YES判定してステップS18に進む。所定の基準残存率以下であるか否かを判定する。残存率Rnが所定の基準残存率より大きい場合には、ステップS19に進む。
【0081】
ステップS18では、スピーカ42に、残存率が少なくなった旨の音声を出力させる。これにより、管理者に冷却エネルギーの残量が少なくなっている旨を報知することができる。このため、管理者は、より確実にコンテナ11内の温度を所望の保冷温度帯で管理することができる。その後ステップS19に進む。なお、スピーカ42は、報知部に相当する。また、本ステップS18では、ディスプレイ41に、残存率が少なくなった旨の表示を実行させるようにしてもよく、その場合、ディスプレイ41が報知部に相当する。
【0082】
ステップS19では、第3温度センサ30Cの取得結果に基づいて、蓄冷プレート20が保冷に適した温度であるか否かを判定する。第3温度センサ30Cにより取得された蓄冷プレート20の温度が、所定の基準温度以上である場合には、蓄冷プレート20は適温でないとして、YES判定してステップS20に進む。第3温度センサ30Cにより取得された蓄冷プレート20の温度が、所定の基準温度より小さい場合には、蓄冷プレート20は適温であるとして、NO判定して本処理を終了する。
【0083】
ステップS20では、スピーカ42に、蓄冷プレート20の温度が高くなっている旨の音声を出力させて、蓄冷プレート20の温度が高くなっている旨を管理者に報知することができる。これにより、管理者は、情報端末40を操作して予備冷凍機60を駆動状態にする等の対応をとることができるため、万が一、冷却エネルギーTEの推定において誤差が生じた場合であっても、より確実にコンテナ11内の温度を所望の保冷温度帯で管理することができる。その後ステップS21に進む。
【0084】
ステップS21では、予備冷凍機60を駆動状態とする。これにより、蓄冷プレート20が保冷に適した温度でなくなった場合に、管理者の対応を待つことなく、蓄冷プレート20を再冷却することができるため、より確実にコンテナ11内の温度を所望の保冷温度帯で管理することができる。その後本処理を終了する。
【0085】
続いて、コンテナ11の外部の温度と、コンテナ11の内部の温度と、保冷システム1により推定された残存率Rと、の経時的変化について、
図5に基づき説明する。
図5において、横軸は、外部冷凍機80によりコンテナ11の内部の冷却が開始された時点(以下、「スタート時」という)からの経過時間(時間)を示している。左縦軸は、コンテナ11の内外の温度(℃)を示している。右縦軸は、残存率(%)を示している。
図5では、コンテナ11の内部の温度を2℃付近の温度帯に保冷すべく、融解温度が0℃の蓄冷プレート20を用いて保冷を行った場合について示している。なお、当該保冷時のコンテナ11の内部の温度の上限値は、4℃とする。
【0086】
まず、外部冷凍機80を駆動させ、コンテナ11の内部の冷却が開始される。当該時点をt0とする。t0において、コンテナ11の内部の温度は、約25℃となっている。t0において、コンテナ11の外部の温度は、約26℃となっている。
【0087】
スタート時から3時間が経過した時点(t1)で、コンテナ11の内部の温度は、-15℃まで冷却される。その後、コンテナ11の内部の温度が-15℃以下に保たれた状態で、所定の期間(例えば、12時間)待機する。なお、図示していないが、当該待機期間中に、蓄冷プレート20の温度は、その融解温度になっている。
【0088】
スタート時から15時間が経過した時点(t2)で、外部冷凍機80の駆動を停止させる。その後、コンテナ11の内部の温度は上昇していく。
【0089】
外部冷凍機80の停止から約5時間後の時点(すなわち、スタート時から20時間が経過した時点)で、コンテナ11の内部の温度は、蓄冷プレート20の融解温度(詳しくは、0℃)に達する。このため、スタート時から20時間が経過した時点(t3)が、蓄冷プレート20による保冷の開始時点となる。t3において、蓄冷プレート20の残存率は、100%となっている。蓄冷プレート20の残存率は、t3以降、徐々に減少していく。
【0090】
スタート時から130時間が経過した時点(t4)で、蓄冷プレート20の残存率は、0%となる。t2~t4の間、コンテナ11の内部の温度は、4℃以下で保持されており、詳しくは、0℃~2℃の温度で概ね一定に保持されている。蓄冷プレート20の残存率は、コンテナ11の内外の温度差が大きいほど、大きく減少している。なお、t4では、コンテナ11の内部の温度は、2.6℃となっており、コンテナ11の内部の保冷は、継続している。また、t4において、保冷システム1は、所定の報知を実行可能である。
【0091】
その後、コンテナ11の内部の温度は、上昇していき、スタート時から134時間が経過した時点(t5)で、4℃に達する。蓄冷プレート20によるコンテナ11の保冷は、t5をもって終了したことになる。蓄冷プレート20によるコンテナ11の保冷は、t2~t5の間の期間継続され、具体的には、114時間継続されたことになる。なお、t0~t5の間、コンテナ11の外部の温度は、8℃~26℃の範囲で変動している。また、t5において、保冷システム1は、所定の報知を実行したり、予備冷凍機60の駆動を実行したりすることが可能である。
【0092】
以上のように、保冷システム1により蓄冷プレート20の残存量が0%と推定された時点(t4)は、コンテナ11の内部の温度が所望の保冷温度帯の上限値を超過した時点(t5)とおおむね一致し、詳しくは、t5よりも若干早い時点となっている。したがって、保冷システム1は、蓄冷プレート20の残存率を好適に推定可能ということができる。
【0093】
以上、詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0094】
本実施形態に係る保冷システム1は、内部に蓄冷剤22が充填され、収容空間17の温度を所定の保冷温度帯に冷却して保持する蓄冷プレート20を用いて、被保冷物Tが収容される収容空間17を保冷する保冷システム1であって、蓄冷剤22が周囲を冷却するエネルギーである冷却エネルギーの最大値に関する情報である最大エネルギー情報と、収容空間17を有するコンテナ11の断熱効果に関する断熱効果情報と、が記憶される記憶部51と、コンテナ11の外部の温度を取得する第1温度センサ30Aと、最大エネルギー情報と、断熱効果情報と、第1温度センサ30Aの取得結果と、に基づいて、蓄冷剤22の冷却エネルギーTEの残存率Rを推定する推定部551と、を備える。
【0095】
本実施形態によれば、最大エネルギー情報と、断熱効果情報と、コンテナ11の外部の温度と、に基づいて、蓄冷プレート20の冷却エネルギーTEの残存率Rを推定することができる。これにより、例えば、蓄冷プレート20の再冷却等のスケジュール管理を行い易くできるため、コンテナ11内の温度を好適に保冷温度帯で管理することができる。
【0096】
本実施形態に係る保冷システム1は、コンテナ11の内部の温度を取得する第2温度センサ30Bを備え、推定部551は、最大エネルギー情報と、断熱効果情報と、第1温度センサ30Aの取得結果と、第2温度センサ20Bの取得結果と、に基づいて、蓄冷剤22の冷却エネルギーTEの残存率Rを推定する。
【0097】
コンテナ11の内部の温度は、保冷中においても若干変化する。しかし、本実施形態によれば、コンテナ11の内部における温度変化を反映させつつ、冷却エネルギーTEの残存率Rを推定することができる。これにより、冷却エネルギーTEの残存率Rをより好適に推定することができる。
【0098】
本実施形態に係る保冷システム1は、推定部551により推定された残存率Rnを提示するディスプレイ41を備える。
【0099】
本実施形態によれば、管理者は、保冷中に残存率Rをモニタリングできる。これにより、保冷温度を好適に管理することができる。
【0100】
本実施形態に係る保冷システム1は、推定部551により推定された残存率Rが、所定の基準残存率以下であるか否かを判定する判定部552と、判定部552により残存率Rが基準残存量以下であると判定された場合に、報知を行うスピーカ42と、を備える。
【0101】
本実施形態によれば、残存率Rが少なくなったことを管理者に報知することができる。これにより、コンテナ11の内部の温度を保冷温度帯で好適に管理することができる。
【0102】
本実施形態に係る保冷システム1は、蓄冷プレート20の温度を取得する第3温度センサ30Cを備え、スピーカ42は、第3温度センサ30Cにより取得された蓄冷プレート20の温度が、所定の基準温度以上である場合に、報知を行う。
【0103】
本実施形態によれば、万が一、推定部551による推定結果に誤差が生じた場合であっても、コンテナ11の内部の温度が高くなりすぎる前に報知を行うことができる。これにより、コンテナ11の内部の温度を保冷温度帯でより確実に管理することができる。
【0104】
本実施形態に係る保冷システム1は、第3温度センサ30Cにより取得された蓄冷プレート20の温度が、所定の基準温度以上である場合に、蓄冷プレート20を冷却する予備冷凍機60を備える。
【0105】
本実施形態によれば、蓄冷プレート20が保冷に適した温度でなくなった場合に、管理者の対応を待つことなく、蓄冷プレート20を再冷却することができるため、より確実にコンテナ11内の温度を所望の保冷温度帯で管理することができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、保冷庫は、保冷車に設けられたコンテナ等の移動式のものに限定されず、物流拠点に設置された倉庫等の固定式のものであってもよい。
【0107】
管理装置50は、物流拠点に設けられている必要はなく、例えば保冷車10に設けられていてもよい。保冷システム1の管理者は、保冷車10に乗っていてもよい。
【0108】
管理装置50と情報端末40との通信は、ネットワークNを介したものである必要はなく、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信によるものであってもよい。
【0109】
情報端末40は、必須の構成ではない。例えば、管理装置50が、提示部としてのモニタや報知部としてのスピーカを有するようにしてもよい。
【0110】
上記実施形態では、予備冷凍機60は、第3温度センサ30Cにより取得された蓄冷プレート20の温度が、所定の基準温度以上である場合に蓄冷プレート20を冷却するようになっていたが、予備冷凍機60は、推定部551により推定された残存率Rが、所定の基準残存率以下であるか否かを判定する判定部552と、判定部552により残存量Rが所定の基準残存量以下であると判定された場合に、蓄冷プレート20を冷却してもよい。かかる構成によっても、収容空間17の温度を保冷温度帯で好適に管理することができる。
【0111】
上記実施形態では、蓄冷プレート20の冷却エネルギーTEの残存率Rに基づいて各種制御が実行されていたが、冷却エネルギーTEの残存量の値に基づいて、各種制御が実行されるようにしてもよい。例えば、判定部552は、推定部551により推定された冷却エネルギーTEnを冷却エネルギーTE0から差し引いて得られた値が、所定の基準値以下であるか否かを判定し、制御部55は、その判定結果に基づいて各種制御を実行するようにしてもよい。その場合、冷却エネルギーTE0から冷却エネルギーTEnを差し引いて得られた値が、特許請求の範囲でいう残存量に相当する。
【符号の説明】
【0112】
1 保冷システム
11 コンテナ(保冷庫)
20 蓄冷プレート(蓄冷部材)
22 蓄冷剤
30A 第1温度センサ(第1温度取得部)
30B 第2温度センサ(第2温度取得部)
30C 第3温度センサ(第3温度取得部)
41 ディスプレイ(提示部)
42 スピーカ(報知部)
51 記憶部
60 予備冷凍機(冷却装置)
551 推定部
552 判定部