(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145521
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援方法、健全性評価システム及び評価方法
(51)【国際特許分類】
G01S 19/51 20100101AFI20241004BHJP
【FI】
G01S19/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057909
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永作 智也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正敦
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB08
5J062CC07
5J062FF01
(57)【要約】
【課題】建物の健全性評価システムの設計を支援することができる設計支援装置、設計支援方法、健全性評価システム及び評価方法を提供する。
【解決手段】建物の健全性評価システムの設計支援装置は、建物の高さが所定の高さよりも低い建物を建物の健全性評価の評価対象から外し、前記所定の高さよりも高い建物を建物の健全性評価の評価対象に含めるように、評価対象候補の建物群のなかから評価対象の建物を抽出する抽出部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の健全性評価システムの設計支援装置であって、
建物の高さが所定の高さよりも低い建物を建物の健全性評価の評価対象から外し、
前記所定の高さよりも高い建物を建物の健全性評価の評価対象に含めるように、評価対象候補の建物群のなかから評価対象の建物を抽出する抽出部
を備える設計支援装置。
【請求項2】
前記評価対象の建物の変位を検出可能な第1GNSSセンサを用いて得られる位置の精度、又は
前記評価対象の建物の基部の変位を検出可能な第2GNSSセンサを用いて得られる位置の精度に基づいて前記所定の高さが決定されている、
請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の設計支援装置によって抽出された建物を評価対象にして、
前記評価対象の建物の屋上に配置された第1GNSSセンサの検出結果と前記評価対象の建物の基部の周囲に配置された第2GNSSセンサの検出結果とを用いて評価対象の建物の健全度を評価する解析処理部
を備える健全性評価システム。
【請求項4】
前記解析処理部は、
前記評価対象の建物の頂部の水平方向の変位量が前記第1GNSSセンサを用いて得られる水平方向の位置の精度よりも大きな地震動があった場合に、前記地震動を受けた当該建物の健全性評価を実施する、
請求項3に記載の健全性評価システム。
【請求項5】
建物の健全性評価システムの設計支援方法であって、
建物の高さが所定の高さよりも低い建物を建物の健全性評価の評価対象から外し、
前記所定の高さよりも高い建物を建物の健全性評価の評価対象に含めるように、評価対象候補の建物群のなかから評価対象の建物を抽出する過程
を含む設計支援方法。
【請求項6】
請求項1に記載の設計支援装置によって抽出された建物を評価対象にして、
前記評価対象の建物の屋上に配置された第1GNSSセンサの検出結果と前記評価対象の建物の基部の周囲に配置された第2GNSSセンサの検出結果とを用いて評価対象の建物の健全度を評価する過程
を含む評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置、設計支援方法、健全性評価システム及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)の検出結果には、誤差が含まれることが知られている。
GNSSを用いて建物の頂部の変位を検出して、この検出結果を補正した結果を用いてその建物の残留変形量を診断する技術が知られている。このような補正後のデータを得るためには、所定の期間のデータを利用する演算処理を行うことがあった。GNSSの測位の結果に基づいて比較的高精度な測位(誤差1-2cm程度)の結果を得る処理(RTK-GPSなど。)にかかる時間は、GNSSの衛星の電波を受信してから数時間から1日以上かかることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、GNSSの衛星の電波を受信してから測位結果を得るまでの時間が長いと、その受信時における即時性を要する用途には適さないことがある。その一方で、比較的高精度な測位の結果を得るまでの処理を行わずに得られる測位の結果には、比較的大きな測定誤差が含まれることがある。このような方法で得られた測位結果に含まれる測定誤差が、地震動による建物の頂部の変位に対して大きくなる状況であると、建物の健全性評価が困難になる場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、建物の健全性評価システムの設計を支援できる設計支援装置、設計支援方法、健全性評価システム及び評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様の建物の健全性評価システムの設計支援装置は、建物の高さが所定の高さよりも低い建物を建物の健全性評価の評価対象から外し、前記所定の高さよりも高い建物を建物の健全性評価の評価対象に含めるように、評価対象候補の建物群のなかから評価対象の建物を抽出する抽出部を備える。
(2)上記の設計支援装置において、前記評価対象の建物の変位を検出可能な第1GNSSセンサを用いて得られる位置の精度、又は前記評価対象の建物の基部の変位を検出可能な第2GNSSセンサを用いて得られる位置の精度に基づいて前記所定の高さが決定されている。
(3)本発明の一態様の健全性評価システムは、上記の設計支援装置によって抽出された評価対象の建物において、前記評価対象の建物の屋上に配置された第1GNSSセンサの検出結果と前記評価対象の建物の基部の周囲に配置された第2GNSSセンサの検出結果とを用いて評価対象の建物の健全度を評価する解析処理部を備える健全性評価システムである。
(4)上記の健全性評価システムにおいて、前記解析処理部は、前記評価対象の建物の頂部の水平方向の変位量が前記第1GNSSセンサを用いて得られる水平方向の位置の精度よりも大きな地震動があった場合に、前記地震動を受けた当該建物の健全性評価を実施する。
(5)本発明の一態様の設計支援方法は、建物の健全性評価システムの設計支援方法であって、建物の高さが所定の高さよりも低い建物を建物の健全性評価の評価対象から外し、前記所定の高さよりも高い建物を建物の健全性評価の評価対象に含めるように、評価対象候補の建物群のなかから評価対象の建物を抽出する過程を含む設計支援方法である。
(6)本発明の一態様の評価方法は、請求項1に記載の設計支援装置によって抽出された建物を評価対象にして、前記評価対象の建物の屋上に配置された第1GNSSセンサの検出結果と前記評価対象の建物の基部の周囲に配置された第2GNSSセンサの検出結果とを用いて評価対象の建物の健全度を評価する過程を含む評価方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建物の健全性評価システムの設計を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態による健全性評価システム1を説明するための図である。
【
図1B】実施形態による健全性評価システム1の構成図である。
【
図2】実施形態の地震による「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」の推定値を説明するための図である。
【
図3】第2の実施形態の設計支援装置100の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態による設計支援装置、設計支援方法、健全性評価システム及び評価方法について添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1Aは、実施形態による健全性評価システム1を説明するための図である。
図1Bは、実施形態による健全性評価システム1の構成図である。
健全性評価システム1は、GNSSセンサの検出結果を用いて評価対象の建物の健全度を評価する。評価対象の建物を、建物Aと呼ぶ。
【0011】
(建物Aにおける健全性評価システムの測定系)
建物Aの屋上に第1GNSSセンサ21を配置して、その建物Aの基部の周囲に第2GNSSセンサ22を配置する。第1GNSSセンサ21と第2GNSSセンサ22は、GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)を利用して地震が配置された地点を測位する。例えば、第1GNSSセンサ21と第2GNSSセンサ22は、米国のGPS、日本の準天頂衛星(QZSS)、欧州連合のGalileo、ロシアのGLONASS等の衛星測位システムを利用するものであってよい。
第1GNSSセンサ21と第2GNSSセンサ22は、例えば、それぞれが無線通信機能を有しており、携帯電話などを収容する地上系の無線通信網、無線LANなどを利用して健全性評価システム1と互いに通信が可能なものであってよい。通信回線の種別はこれに制限されることなく、有線通信を利用してそれぞれが通信可能であってもよい。
【0012】
(健全性評価システム)
健全性評価システム1は、取得部11と、解析処理部12と、出力部13とを備える。
取得部11は、第1GNSSセンサ21の検出結果と第2GNSSセンサ22の検出結果を取得する。取得部11は、第1GNSSセンサ21の検出結果と第2GNSSセンサ22つ通信可能なインタフェースを含む。このインタフェースの種別は適宜選択できる。
解析処理部12は、第1GNSSセンサ21の検出結果と第2GNSSセンサ22の検出結果とを用いて建物Aの健全度を評価する。詳しくは後述する。
出力部13は、解析処理部12による評価結果を出力する。
なお、取得部11と、解析処理部12と、出力部13とについて、健全性評価装置10として構成してもよい。健全性評価装置10は、CPU、半導体メモリ、表示装置などを含む所謂コンピュータとして形成され、所定のプログラムの実行により所定の処理を実施する。
【0013】
健全性評価システム1は、このような測定系と評価系を利用して、地震による建物Aの変形を検出する。
【0014】
(変数の定義)
建物Aの変形を解析するにあたり、以下の変数を利用する。
AT:建物A頂部変位(3次元座標系内の位置情報。以下同様。)
ATg:建物A頂部GNSS計測変位 ・・・GNSSの計測周期T1の時刻歴データ
ABg:建物A基部GNSS計測変位 ・・・GNSSの計測周期T1の時刻歴データ
ATg_Δ:建物A頂部の相対変位量
H:建物Aの高さ(地面から第1GNSSセンサ21までの高さに相当)
【0015】
(処理に関する説明)
建物A頂部GNSS計測変位ATgと、建物A基部GNSS計測変位ABgは、GNSSの計測周期T1の時刻歴データであってよい。
建物A頂部の相対変位量を式(1)のように定義する。
【0016】
ATg_Δ=ATg-ABg (1)
【0017】
例えば、上記の式(1)におけるATgが第1GNSSセンサ21の検出結果であり、ABgが第2GNSSセンサ22の検出結果である。
【0018】
建物Aの変形度を、建物A頂部の相対変位量と建物高さHとを用いて、「建物Aの変形度」を式(2)のように定義する。
【0019】
(建物Aの変形度)=ATg_Δ/H=(ATg-ABg)/H (2)
【0020】
この「建物Aの変形度」を、建物Aの健全度評価に利用する。
【0021】
ところで、GNSSセンサの検出結果には、衛星の位置、受信できる衛星の数、衛星の方向などが関係する測定誤差が含まれる。つまり、上記のATgには第1GNSSセンサ21の検出誤差が含まれる。ABgには第2GNSSセンサ22の検出誤差が含まれる。そのため、上記の「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」は、第1GNSSセンサ21の検出誤差と、第2GNSSセンサ22の検出誤差の影響を受ける。
【0022】
例えば、上記の「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」に5cm程度の誤差が含まれるものとする。「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」の測定値に対する、上記の誤差の大きさが近くなると、検出値の信頼度が下がる。
【0023】
図2は、実施形態の地震による「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」の推定値を説明するための図である。
図2に、評価対象の建物Aの高さHと、地震の規模との関係から、その地震により生じうる「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」の推定値を整理する。
建物Aの高さHを、20m級、50m級、100m級の3段階に分ける。
地震の規模を、小規模、中規模、大規模の3段階に分ける。例えば、建物の設計基準を勘案して、小規模の地震により生じうる変形角として(1/1000)を見込む。中規模の地震により生じうる変形角として(1/500)を見込む。大規模の地震により生じうる変形角として(1/100)を見込む。
【0024】
例えば、高さ20m級の建物A20に、小規模の地震が到来した場合には、建物A20の頂部の相対変位量が、計算上2cm程度になることが見込まれる。
例えば、高さ100m級の建物A100に、同じく小規模の地震が到来した場合には、建物A100の頂部の相対変位量が、計算上10cm程度になることが見込まれる。
【0025】
この2つのケースについて頂部の相対変位量に、5cm程度の誤差が含まれた場合について検討する。
建物A20に、小規模の地震が到来した場合によると、計算上2cmの変位が見込まれるが、測定系に依存する誤差の5cmよりも小さな値になることがわかる。
【0026】
建物A100に、小規模の地震が到来した場合によると、計算上10cmの変位が見込まれるが、測定系に依存する誤差の5cmよりも一応大きな値になるが、計算上の変位の大きさの半分と誤差の大きさが等しくなることがわかる。
【0027】
上記は、小規模の地震の例であるが、この場合の建物Aの変形を正確に評価することは難しい。
【0028】
次に、中規模の地震について同様に評価する。
例えば、高さ20m級の建物A20に、中規模の地震が到来した場合には、建物A20の頂部の相対変位量が、計算上5cm程度になることが見込まれる。
例えば、高さ100m級の建物A100に、同じく中規模の地震が到来した場合には、建物A100の頂部の相対変位量が、計算上20cm程度になることが見込まれる。
【0029】
建物A20に、中規模の地震が到来した場合によると、計算上5cmの変位が見込まれるが、測定系に依存する誤差の5cmに相当する値になることがわかる。
【0030】
建物A100に、中規模の地震が到来した場合によると、計算上20cmの変位が見込まれる。この場合には、測定系に依存する誤差の5cmの4倍程度になることがわかる。この程度の変位があれば、測定系に依存する誤差に影響される範囲外になっていると判断できる。この中規模の地震の場合には、建物Aの高さによる判定条件を追加することで、所定の高さよりも高い建物の範囲を、適用可能な範囲として規定できる。
【0031】
説明を簡略化するが、高さ50m級の建物A50に、中規模の地震が到来した場合によると、計算上10cmの変位が見込まれる。この場合には、測定系に依存する誤差の5cmよりも一応大きな値になるが、計算上の変位の大きさの半分と誤差の大きさが等しくなることがわかる。
【0032】
次に、大規模の地震について同様に評価する。
例えば、高さ20m級の建物A20に、大規模の地震が到来した場合には、建物A20の頂部の相対変位量が、計算上20cm程度になることが見込まれる。
例えば、高さ100m級の建物A100に、同じく大規模の地震が到来した場合には、建物A100の頂部の相対変位量が、計算上100cm程度になることが見込まれる。
【0033】
建物A20に、大規模の地震が到来した場合によると、計算上20cmの変位が見込まれる。この場合には、測定系に依存する誤差の5cmの4倍程度になることから、測定系に依存する誤差の5cmの影響は少なくなることが見込まれる。
【0034】
建物A100に、大規模の地震が到来した場合によると、計算上100cmの変位が見込まれる。この場合には、測定系に依存する誤差の5cmの20倍程度になることがわかる。この規模の変位量になると、測定系に依存する誤差の5cmの影響は少なくなることが見込まれる。
【0035】
この他の条件についても同様である。
【0036】
上記について整理すると、計算上の変位に対して、誤差の大きさを無視しにくい条件の場合、評価の結果の信頼度が低くなる。例えば、計算上の変位が10cm程度の条件の場合、評価の結果の信頼度が低いと判断してもよい。
【0037】
上記の条件を勘案すると、建物Aの高さHによらずに所望の信頼度で建物Aの健全性を評価できる条件は、大規模の地震の場合に制限することが望ましい。
中規模の場合、建物Aの高さHが100m級であれば適用可能であるが、50m級以下になると適用を見合わせるほうが良い。
小規模の場合、建物Aの高さHによらず、適用を見合わせるほうが良い。
【0038】
本実施形態の健全性評価システム1は、建物の健全度を評価する。健全性評価システム1は、解析処理部を備える。解析処理部12は、設計支援装置によって抽出された建物Aを評価対象に含めてもよい。解析処理部は、評価対象の建物Aの屋上に配置された第1GNSSセンサ21の検出結果と評価対象の建物Aの基部の周囲に配置された第2GNSSセンサ22の検出結果とを用いて評価対象の建物Aの健全度を評価する。これにより、健全性評価システム1は、建物Aの健全性評価の信頼性を高めることができる。
【0039】
なお、解析処理部12は、例えば、評価対象の建物Aの頂部の水平方向の変位量が第1GNSSセンサを用いて得られる水平方向の位置の精度よりも大きな地震動があった場合に、地震動を受けた当該建物Aの健全性評価を実施するとよい。
なお、評価対象の建物Aの変位を検出可能な第1GNSSセンサ21を用いて得られる位置の精度、又は評価対象の建物Aの基部の変位を検出可能な第2GNSSセンサ22を用いて得られる位置の精度に基づいて、適用可能な範囲として規定する所定の高さが決定されているとよい。
【0040】
上記の健全性評価システム1を適用可能な建物を客観的に決定できることが望まれていた。
【0041】
(設計支援装置)
次に、建物の健全度を評価する対象を、客観的に決定するための設計支援装置100について説明する。
【0042】
図3は、実施形態の設計支援装置100の構成図である。
設計支援装置100は、建物Aの健全性を評価する健全性評価システムの設計を支援する。設計支援装置100は、建物Aの健全性評価において所望の信頼度を確保可能な条件を満たすことを、健全性評価システム1を設計する際の必要条件にする。
【0043】
設計支援装置100は、例えば健全性評価システムを適用可能な建物Aを抽出する抽出部110を備える。設計支援装置100は、CPU、半導体メモリ、表示装置などを含む所謂コンピュータとして形成され、所定のプログラムの実行により抽出部110に関する所定の処理を実施する。
抽出部110は、特定の地震強度のもとで、建物の高さが所定の高さよりも低い建物を建物の健全性評価の評価対象から外し、前記所定の高さよりも高い建物を建物の健全性評価の評価対象に含めるように、評価対象候補の建物群のなかから評価対象の建物を抽出する。
【0044】
抽出部110は、前述の
図2に示したテーブルを記憶部に保持させておき、これを用いて、所定の規模の地震による「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」の推定値の大きさに基づいて、適用可能な範囲か否かを決定してもよい。
【0045】
例えば、「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」の推定値の大きさが予め定められた基準値以下になる場合に、健全性評価システム1を適用できない範囲(評価対象外の範囲)とする。例えば上記の基準値を10cmとする。
図2中に網掛けを付けた範囲は、「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」が10cm以下の範囲である。つまり、網掛けを付けた範囲が、健全性評価システム1を適用できない範囲になる。網掛けを付けていない範囲が、健全性評価システム1を適用できる範囲になる。
【0046】
この
図2のなかで、「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」が10cm以下の範囲に健全性評価システム1を適用した場合には、「建物A頂部の相対変位量ATg_Δ」の測定誤差が大きくなるため、抽出部110は、この範囲の建物を対象の建物から除くとよい。
【0047】
上記のように、適用可能な範囲を定める条件を予め設定することで、健全性評価システムは、上記の設計支援装置100によって評価対象の建物を抽出できる。
【0048】
上記の実施形態によれば、建物の健全性評価システムの設計支援装置は、建物の高さが所定の高さよりも低い建物を建物の健全性評価の評価対象から外し、前記所定の高さよりも高い建物を建物の健全性評価の評価対象に含めるように、評価対象候補の建物群のなかから評価対象の建物を抽出する抽出部を備えることにより、建物の健全性評価システムの信頼性を高めるように有効に機能する。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 健全性評価システム
11 取得部
12 解析処理部
13 出力部
21 第1GNSSセンサ
22 第2GNSSセンサ