(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145526
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 9/00 20060101AFI20241004BHJP
G07D 11/10 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
G07D9/00 Z
G07D11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057917
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅人
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141HA06
3E141HA09
3E141JA02
3E141LA11
3E141LA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬貨を一時保留する機能を、簡単な構成で実現することができる硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係る硬貨処理装置1は、搬送路に沿って硬貨を搬送する搬送部14と、搬送路に硬貨を繰り出す繰出部13と、搬送路の一部であって、搬送された硬貨を繰出部13に戻す戻し通路12と、戻し通路12に設けられている開閉可能なシャッタ121と、を備え、戻し通路12および閉じられた状態のシャッタ121が、硬貨を貯留する貯留部122を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って硬貨を搬送する搬送部と、
前記搬送路に硬貨を繰り出す繰出部と、
前記搬送路の一部であって、搬送された硬貨を前記繰出部に戻す戻し通路と、
前記戻し通路に設けられている開閉可能なシャッタと、
を備え、
前記戻し通路および閉じられた状態の前記シャッタが、硬貨を貯留する貯留部を構成する、
硬貨処理装置。
【請求項2】
前記戻し通路は、前記繰出部より上側に形成されている、
請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記シャッタは、回転可能に支持されており、回転軸に垂直な平面における前記シャッタの断面は円弧形状である、
請求項1または2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記戻し通路は、前記シャッタが設けられている第1通路と、前記シャッタが設けられていない第2通路と、を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記第1通路は、前記第2通路の上側に形成される、
請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記戻し通路は、前記第1通路へ硬貨を搬送する第1入口と前記第2通路へ硬貨を搬送する第2入口のいずれか一方を閉じるとともに他方を開くゲート部材を有する、
請求項4または5に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
外部から硬貨の入金を受け付ける入金部と、
前記入金部から硬貨の入金を受け付ける入金動作において、前記第2入口が開かれるように前記ゲート部材を制御するとともに前記シャッタを閉じるように制御する制御部と、
をさらに備える、請求項6に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記搬送路に沿って搬送される硬貨を識別する識別部と、
外部に硬貨を出金する出金部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記入金動作において、前記識別部により異常と判断された硬貨、または、識別できなかった硬貨を前記出金部に搬送させる、
請求項7に記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記入金動作において、搬送中に異常が生じた硬貨を、前記第2通路を介して前記繰出部に戻した後、再度、繰り出して前記識別部へ搬送させる、
請求項8に記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記貯留部に貯留されている硬貨の少なくとも一部を外部に出金する出金動作において、前記シャッタを開くように制御する、
請求項7に記載の硬貨処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記出金動作において、前記シャッタを開いた後、前記繰出部に投入されて繰り出された硬貨が前記戻し通路に搬送されるより前に、前記シャッタを閉じるように制御する、
請求項10に記載の硬貨処理装置。
【請求項12】
前記搬送路に沿って搬送される硬貨を識別する識別部と、
外部に硬貨を出金する出金部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記出金動作において、前記識別部による前記硬貨の識別結果に基づいて、前記貯留部または前記出金部に選択的に硬貨を搬送させる、
請求項11に記載の硬貨処理装置。
【請求項13】
硬貨を収納する収納部をさらに備え、
前記制御部は、前記収納部に収納されている前記硬貨を前記貯留部に移送する出金準備動作において、前記第1入口が開かれるように前記ゲート部材を制御するとともに前記シャッタを閉じるように制御する、
請求項12に記載の硬貨処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記出金準備動作において、前記貯留部に所定の金種および所定の金種毎の枚数の硬貨が収納されるように、前記収納部から前記貯留部へ硬貨を移送する、
請求項13に記載の硬貨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬貨に対して種々の処理を行う硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨に対して入金や出金などの種々の処理を行う硬貨処理装置が普及している。
【0003】
例えば特許文献1には、入出金搬送路から分岐する一時保留通路の下部に、硬貨を非整列状態で一括して一時保留するとともに、一時保留した硬貨を入金繰出部に放出可能とする一時保留部が接続されている硬貨処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硬貨処理装置の設置自由度などを向上させるため、硬貨処理装置の小型化が要望されている。小型化を実現する手段として、硬貨処理装置が有する構成の簡略化が考えられる。例えば特許文献1に開示された硬貨処理装置において、繰出部に入る前の硬貨を一時保留する一時保留部の機能を硬貨処理装置の他の構成により代用できれば、構成の簡略化および小型化が実現できる。
【0006】
本開示は、硬貨を一時保留する機能を、簡単な構成で実現することができる硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置は、搬送路に沿って硬貨を搬送する搬送部と、前記搬送路に前記硬貨を繰り出す繰出部と、前記搬送路の一部であって、搬送された前記硬貨を前記繰出部に戻す戻し通路と、前記戻し通路に設けられている開閉可能なシャッタと、を備え、前記戻し通路および閉じられた状態の前記シャッタが、硬貨を貯留する貯留部を構成する。
【0008】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記戻し通路は、前記繰出部より上側に形成されていてもよい。
【0009】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記戻し通路は、前記繰出部より上側に形成されていてもよい。
【0010】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記シャッタは、回転可能に支持されており、回転軸に垂直な平面における前記シャッタの断面は円弧形状であってもよい。
【0011】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記戻し通路は、前記シャッタが設けられている第1通路と、前記シャッタが設けられていない第2通路と、を含んでもよい。
【0012】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記第1通路は、前記第2通路の上側に形成されてもよい。
【0013】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記戻し通路は、前記第1通路へ硬貨を搬送する第1入口と前記第2通路へ硬貨を搬送する第2入口のいずれか一方を閉じるとともに他方を開くゲート部材を有してもよい。
【0014】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、外部から硬貨の入金を受け付ける入金部と、前記入金部から硬貨の入金を受け付ける入金動作において、前記第2入口が開かれるように前記ゲート部材を制御するとともに前記シャッタを閉じるように制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0015】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記搬送路に沿って搬送される硬貨を識別する識別部と、外部に硬貨を出金する出金部と、をさらに備え、前記制御部は、前記入金動作において、前記識別部により異常と判断された硬貨、または、識別できなかった硬貨を前記出金部に搬送させてもよい。
【0016】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記制御部は、前記入金動作において、搬送中に異常が生じた硬貨を、前記第2通路を介して前記繰出部に戻した後、再度、繰り出して前記識別部へ搬送させてもよい。
【0017】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記制御部は、前記貯留部に貯留されている硬貨の少なくとも一部を外部に出金する出金動作において、前記シャッタを開くように制御してもよい。
【0018】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記制御部は、前記出金動作において、前記シャッタを開いた後、前記繰出部に投入されて繰り出された硬貨が前記戻し通路に搬送されるより前に、前記シャッタを閉じるように制御してもよい。
【0019】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記搬送路に沿って搬送される硬貨を識別する識別部と、外部に硬貨を出金する出金部と、をさらに備え、前記制御部は、前記出金動作において、前記識別部による前記硬貨の識別結果に基づいて、前記貯留部または前記出金部に選択的に硬貨を搬送させてもよい。
【0020】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、硬貨を収納する収納部をさらに備え、前記制御部は、前記収納部に収納されている前記硬貨を前記貯留部に移送する出金準備動作において、前記第1入口が開かれるように前記ゲート部材を制御するとともに前記シャッタを閉じるように制御してもよい。
【0021】
本開示の一態様に係る硬貨処理装置によれば、前記制御部は、前記出金準備動作において、前記貯留部に所定の金種および所定の金種毎の枚数の硬貨が収納されるように、前記収納部から前記貯留部へ硬貨を移送してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、硬貨を一時保留する機能を、簡単な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】硬貨収納装置による攪拌動作を説明するための概念図
【
図5】案内部により案内される硬貨が移動する軌跡を説明するための図
【
図6】ベルトの表面に設けられた突起について説明するための図
【
図7】硬貨収納装置の排出部付近の構造を詳細に示す図
【
図10】戻し通路および繰出部の構造を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明等は省略する場合がある。また、各実施の形態において共通する構成については同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。
【0025】
<第1の実施の形態>
[硬貨処理装置1の構成例]
図1は、硬貨処理装置1の構成の一例を示す模式図である。
図1に示すように、硬貨処理装置1は、硬貨収納装置11と、戻し通路12と、繰出部13と、搬送部14と、識別部15と、CPU16と、メモリ17と、これらの各構成を収容する筐体10と、を有する。
【0026】
なお、以下の硬貨処理装置1の説明において、
図1に示す前後方向、および上下方向を用いた説明を行うことがある。
図1に示す前後方向は、硬貨処理装置1の繰出部が配置されている側を前側、硬貨収納装置11が配置されている側を後側とした場合の前後方向である。また、
図1に示す上下方向は、硬貨処理装置1を設置したときの上下方向である。また、後述するように、以下の説明において、左右方向は、硬貨処理装置1を前側から見た場合の左右方向である。
【0027】
なお、
図1に示す前後方向および上下方向、並びに左右方向については、説明のため便宜上定義するものであって、本開示に係る硬貨処理装置の前後方向、上下方向、および左右方向を特定するためのものではない。すなわち、本開示に係る硬貨処理装置は必ずしも
図1に示す前後方向および上下方向の通りに設置される必要はない。左右方向についても同様である。
【0028】
硬貨収納装置11は、CPU16の制御に基づいて、硬貨処理装置1で取り扱う硬貨を収納する。硬貨処理装置1は、例えば複数の金種の硬貨を、混在した状態で収納することができる。また、硬貨収納装置11は、CPU16の制御に基づいて、収納した硬貨を排出する。硬貨収納装置11は、繰出部13と隣接して設けられている。これにより、硬貨収納装置11から排出された硬貨は、繰出部13に投入される。
【0029】
硬貨収納装置11は、例えば硬貨処理装置1から取り外し可能であってもよい。硬貨処理装置1から取り外すときのために、硬貨収納装置11の外側に把持用の取っ手が設けられていてもよい。
【0030】
繰出部13は、硬貨収納装置11または貯留部122から排出された硬貨を、搬送部14に対して1枚ずつ順に繰り出す。繰出部13は、例えば貯留部122の下側に接して設けられている。これにより、硬貨収納装置11または貯留部122から排出された硬貨は、すぐに繰出部13に投入されるので、硬貨収納装置11または貯留部122から搬送部14への繰り出しを素早く行うことができる。
【0031】
搬送部14は、硬貨を搬送するための搬送路を形成する。搬送路は、ループ状に構成された循環搬送路を含み、繰出部13から繰り出された硬貨を、再び繰出部13に投入可能に接続されている。搬送部14は、例えば、複数のプーリーに掛け回されたベルトによって構成される。搬送部14は、繰出部13から繰り出された硬貨を、CPU16の制御に基づいて搬送路に沿って搬送する。
図1では、硬貨処理装置1内における硬貨の移動経路が、矢印で示されている。
【0032】
搬送部14には分岐部141が設けられている。分岐部141は、CPU16の制御に基づいて、繰出部13から繰り出された硬貨を硬貨収納装置11に投入する、または戻し通路12を介して繰出部13に戻す。
【0033】
循環搬送路の一部である地点P1と、繰出部13との間には、硬貨を移送するための戻し通路12が設けられている。戻し通路12は、例えば地点P1と繰出部13とを接続する空間であって、地点P1の下方に、略上下方向に沿って設けられている。循環搬送路の地点P1へ搬送された硬貨は、例えば重力により戻し通路12内を落下することで、繰出部13に戻される。戻し通路12は、搬送部14とともに、搬送路を形成する。
【0034】
戻し通路12には、開閉可能なシャッタ121が設けられている。戻し通路12は、繰出部13の上側に設けられている。シャッタ121は、例えば戻し通路12の終端部であって、戻し通路12と繰出部13との間に設けられている。シャッタ121は、CPU16の制御に基づいて開閉する。
【0035】
シャッタ121が閉じられた状態では、戻し通路12内における硬貨の落下はシャッタ121により遮られる。これにより、戻し通路12内の硬貨は、シャッタ121の上に堆積する。言い換えると、戻し通路12と閉じられた状態のシャッタ121が、繰出部13に入れられる前の硬貨を貯留する貯留部122を構成する。
【0036】
貯留部122は、硬貨処理装置1で取り扱う硬貨を収納する。貯留部122は、例えば複数の金種の硬貨を、混在した状態で収納することができる。貯留部122には、硬貨収納装置11から排出された一部の硬貨が収納される。貯留部122に収納された硬貨は、例えば釣銭準備金として使用される。
【0037】
一方、CPU16の制御に基づいてシャッタ121が開かれると、戻し通路12が繰出部13の上側に設けられているため、シャッタ121上に堆積していた硬貨が、繰出部13の内部に落下する。
【0038】
このような構成により、搬送部14により搬送される硬貨のうち、繰出部13に戻される硬貨は、戻し通路12のシャッタ121が閉じられることにより、戻し通路12およびシャッタ121により構成される貯留部122に貯留される。これにより、硬貨が繰出部13に戻される適切なタイミングまで、貯留部122に硬貨を貯留することができる。硬貨が繰出部13に戻される適切なタイミングが来ると、CPU16によりシャッタ121が開かれることで、シャッタ121上に堆積していた硬貨を繰出部13に戻すことができる。このため、繰出部13に戻すべき硬貨を、簡単な構成および制御により、適切なタイミングで戻すことができる。
【0039】
搬送部14の循環搬送路上に、識別部15が設けられている。識別部15は、繰出部13から繰り出された硬貨の金種、真偽、正損などを識別する。識別部15は、搬送部14が搬送する硬貨の数を計数する機能を有していてもよい。
【0040】
CPU(Central Processing Unit)16は、硬貨処理装置1の各部の動作制御を行うプロセッサである。CPU16は、本開示の制御部の一例である。
【0041】
メモリ17は、硬貨処理装置1の各種動作に必要な各種情報を記憶している。
【0042】
[硬貨収納装置11の構成例]
図2は、硬貨収納装置11の構成の一例を示す模式図である。
図2Aは、前後方向および上下方向に平行な平面における硬貨収納装置11の断面模式図である。
図2Bは、
図2AにおけるA-A線断面図であり、左右方向および上下方向に平行な平面における硬貨収納装置11の断面模式図である。
図2BはA-A線断面を硬貨処理装置1の後側から見た図である。
【0043】
図2Aおよび
図2Bに示すように、硬貨収納装置11は、第1搬送部22および第2搬送部23を含む搬送機構21と、互いに対向して配置されている一対の第1側壁24および第2側壁25と、これらの各構成を収容する筐体20と、を備える。なお、
図2Aでは、第1側壁24および第2側壁25の図示を省略している。
【0044】
第1側壁24および第2側壁25、ならびに搬送機構21により、硬貨を収納する収納空間が構成される。
【0045】
図2Bに示す例では、第1側壁24と第2側壁25とは、下方に向かうにつれて互いの距離が近くなるように配置されている。また、第1側壁24と第2側壁25は、前後方向に平行に配置されている。第1側壁24は略垂直に配置されており、第2側壁25は傾斜した状態で配置されている。なお、本開示はこれに限定されず、例えば下方に向かうにつれて互いに近づくように第1側壁と第2側壁がいずれも傾斜した状態で配置されていてもよい。
【0046】
第1側壁24と第2側壁25との間に、搬送機構21が配置される。搬送機構21は、例えば複数のプーリーと、プーリーに掛け回されたベルトと、ベルトを駆動するモータと、などにより構成される。搬送機構21は、収納空間SPに収納されている硬貨を搬送する。
【0047】
第1搬送部22は、収納空間の底部の少なくとも一部を構成する。第1搬送部22は、第1側壁24および第2側壁25と交差しない略水平の搬送方向に向かって硬貨を搬送する。
図2Aに示す例では、搬送方向は硬貨収納装置11の後側から前側に向かう方向である。第2搬送部23は、第1搬送部22から略上方向に向かって硬貨を搬送する。これにより、搬送機構21は、収納空間SP内硬貨のうち第1搬送部22上の硬貨を第2搬送部23側まで搬送した後、第2搬送部23により下側端部から上側端部へ、略上方向に搬送することができる。第2搬送部23の下側端部から上側端部付近まで搬送された硬貨は、図示しない排出部から硬貨収納装置11の外部に排出される。
【0048】
図2Aに示す例では、第1搬送部22による硬貨の搬送方向は、硬貨収納装置11の後側から前側に向かう水平方向であるが、本開示はこれに限定されない。本開示において、第1搬送部による搬送方向は、厳密に水平である必要はなく、水平から若干ずれた方向であってもよい。
【0049】
また、
図2Aに示す例では、第2搬送部23による硬貨の搬送方向は、硬貨収納装置11の下側から上側に向かう鉛直方向であるが、本開示はこれに限定されない。本開示において、第2搬送部による搬送方向は、厳密に鉛直方向である必要はなく、鉛直方向から若干ずれた方向であってもよい。
【0050】
このように、第1の実施の形態において、硬貨収納装置11は、下方に向かうにつれて互いの距離が近くなるように少なくとも一方が傾斜している第1側壁24および第2側壁25の間に搬送機構21が配置されている。第1側壁24および第2側壁25、ならびに搬送機構21により、収納空間SPが構成されている。第1搬送部22は、収納空間SPの底部に配置されている。
【0051】
このような構成により、収納空間SP内に収納される硬貨は、傾斜した状態で配置されている第2側壁25に沿って、自重により第1搬送部22に向かって移動しやすくなる。このため、第2側壁25上や収納空間の底部に硬貨が堆積することなく、収納空間SP内の硬貨が攪拌されやすくなる。
【0052】
傾斜した第2側壁25により第1搬送部22上に案内された硬貨は、第1搬送部22により第2搬送部23まで搬送された後、第2搬送部23により上方向へ搬送される。このとき、
図3に示すように、上方向に搬送される硬貨の一部が収納空間内に落下することで、硬貨に対し、巻き上げて落とすような動き、言い換えると、
図3の矢印に示すような、収納空間SP内で回転させる動きを与えることができる。これにより、収納空間SP内に大量の硬貨が収納されている場合でも、硬貨を搬送しながら内部の硬貨を攪拌することができる。
図3は、硬貨収納装置11による攪拌動作を説明するための概念図である。
【0053】
このように、第1の実施の形態に係る硬貨収納装置11によれば、多くの硬貨を収納することができ、収納する硬貨を搬送しながら攪拌することができる。
【0054】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、硬貨収納装置11の構成について、より詳細に説明する。
図4は、硬貨収納装置11の構成の一例を示す断面図である。
図4Aは、前後方向および上下方向に平行な平面における硬貨収納装置11の断面図である。
図4Bは、
図4AにおけるB-B線断面図であり、左右方向および上下方向に平行な平面における硬貨収納装置11の断面図である。
【0055】
第1の実施の形態にて説明したように、略垂直に配置されている第1側壁24と、傾斜して配置されている第2側壁25との間に、搬送機構21が配置されている。搬送機構21には第1搬送部22と第2搬送部23とが含まれている。第1搬送部22は、略水平の搬送方向に沿って硬貨を搬送する。第2搬送部23は、第1搬送部22から略上方向に硬貨を搬送する。第1側壁24と第2側壁25とが最も近づいた位置における第1側壁24と第2側壁25との距離は、搬送機構21の幅と略等しい。
【0056】
第2側壁25が傾斜していることにより、第2側壁25上の硬貨は、自重により第2側壁25の表面を滑り落ちやすい。このため、収納空間SP内の硬貨が第2側壁25に堆積してしまう事態を回避できる。
【0057】
第2側壁25の傾斜角としては、水平方向に対し、例えば45°以上とすればよい。このような傾斜角により、硬貨が第2側壁25上に堆積しにくい効果を得ることができる。
【0058】
硬貨収納装置11が硬貨を受け入れる受入部Iについて説明する。
図4Bに示すように、第2側壁25の上端部付近に受入部Iが設けられている。受入部Iは、筐体20に設けられた開口であり、
図1に示す搬送部14の分岐部141を介して硬貨収納装置11に搬送された硬貨を受け入れる。より詳細には、分岐部141を介して硬貨収納装置11まで搬送された硬貨は、搬送部14の先端に設けられたシュート142から受入部Iに向かって投出される。
【0059】
硬貨収納装置11の受入部Iの内側には、案内部28が設けられている。案内部28は、シュート142から硬貨収納装置11に投出された硬貨が当たる位置、かつ収納空間SPの上側に設けられている。案内部28は、受入部Iを介して受け入れた硬貨の、硬貨収納装置11の内部における移動を案内する。
【0060】
図5は、案内部28により案内される硬貨が移動する軌跡を説明するための図である。
図5Aに示すように、受入部Iから受け入れられた硬貨は、案内部28に当たって跳ね返ることにより、第1搬送部22に近づくように案内される。これにより、受入部Iから受け入れられた硬貨が、例えば傾斜した第2側壁25の上に堆積してしまい、搬送機構21による硬貨の搬送を行うことができない事態を回避できる。また、これにより、硬貨が第2側壁25の上などに偏って収納されてしまう事態を回避することができ、収納空間SP内に均一に硬貨を収納することができる。これにより、収納空間SP内に収納できる硬貨の量を増大させることができる。
【0061】
案内部28の位置、および設置角度(水平面に対する角度)は、シュート142の位置、シュート142から投出される硬貨の投出角度(水平面に対する角度)、および、案内部28により跳ね返った硬貨が進むべき方向に基づいて設定される。
図5Bは、案内部28の設置角度θの算出方法の一例について説明するための図である。
【0062】
図5Bに示すように、シュート142から投出される硬貨の投出角度をX、案内部28により跳ね返った硬貨が進むべき方向の水平面に対する角度をYとした場合、θは例えば以下の式(1)により算出される。
θ=(X+Y-180)/2 (1)
【0063】
このように案内部28の位置および設置角度を設定することにより、受入部Iから受け入れられた硬貨の落下先を、第1搬送部22に近い方向に案内することができる。これにより、傾斜した第2側壁25の上に硬貨が並んでしまい片寄って堆積してしまうことを低減できるので、実質的に収納空間SPに収納できる硬貨の量を増大させることができる。なお、上述した式(1)は一例であり、本開示では、他の方法で案内部28の設置角度を設定してもよい。
【0064】
次に、第1搬送部22及び第2搬送部23を含む搬送機構21について詳細に説明する。第1搬送部22により搬送された硬貨は、第2搬送部23により上方向に搬送される。
図4Aに示すように、第2搬送部23は、上方向に向かうにつれて第1搬送部22から離れるように、鉛直方向(
図4Aにおける上下方向)から若干傾斜して配置されている。これにより、第2搬送部23により搬送される硬貨が、意図せず落下してしまう事態を低減できる。
【0065】
図4Aに示すように、第1搬送部22の長さは、第2搬送部23より短く形成されている。このように第1搬送部22の長さが比較的短く形成されていることにより、硬貨収納装置11全体を小型化することができる。また、第1搬送部22の長さが比較的短いことにより、第1搬送部22上に堆積した硬貨は、第1搬送部22により搬送されてから短時間で第2搬送部23に到達する。第2搬送部23により上方に移動される硬貨の一部は、第2搬送部23から離れて収納空間SP内に戻ってくる。すなわち、第1搬送部22及び第2搬送部23により、収納空間SP下部の硬貨の一部は、巻き上げられて収納空間SPの上部に戻ってくる。これにより、収納空間SP内の硬貨を効率よく攪拌することができる。
【0066】
第1搬送部22の上流側端部221から下流側端部222までの長さは、例えば、硬貨処理装置1(
図1参照)にて取り扱われる複数金種の硬貨のうち、最も直径が大きい硬貨(以下、最大径硬貨)の直径に基づいて設定されればよい。より具体的には、第1搬送部22の上流側端部221から下流側端部222までの長さは、最大径硬貨の直径の2倍(+所定のマージン長さ)に設定されればよい。所定のマージン長さは、例えば5mm程度に設定されればよい。なお、第1搬送部22の上流側端部221とは、第1搬送部22の、
図4における右側の端部である。第1搬送部22の下流側端部222とは、第1搬送部22の
図4における左側の端部であって、第2搬送部23との接続部分である。
【0067】
図4Aに示すように、搬送機構21はベルト31および複数のプーリー32により構成されている。ベルト31は、搬送時に硬貨を引っ掛けるための突起33が形成された搬送面を有する。
図4Aでは、一部の突起33のみを図示しているが、実際には突起33はベルト31の表面全体に設けられている。
【0068】
図6は、ベルト31の表面に設けられた突起33について説明するための図である。
図6に示すように、突起33は、搬送方向に垂直な方向に2つ並んで設けられている。このような構成により、突起33は、ベルト31表面において硬貨をしっかりと引っ掛けて保持することができる。
【0069】
突起33は、搬送方向に平行な方向に沿って、所定間隔をあけて配置されている。所定間隔は、例えば、最大径硬貨の直径の2倍(+所定のマージン長さ)に設定されればよい。
【0070】
このような間隔で突起33を配置することにより、最大径硬貨でも搬送方向に沿って配置された突起33の間に入り込みやすい。このため、搬送機構21は、最大径硬貨を搬送しやすくなる。これにより、突起33間の所定間隔をより大きくした場合に生じうる、第2搬送部23において硬貨を上方向に搬送する際に、硬貨が第2搬送部23から落ちやすくなる事態を防止できる。また、突起33間の所定間隔をより大きくした場合よりも、搬送機構21の1回転あたりで搬送できる硬貨の量を増やすことができる。さらに、より小径の硬貨は、より大きな硬貨よりも突起33の間に入り込みやすいので、搬送機構21により搬送される硬貨の大きさが偏ってしまう可能性があるが、このような構成により、搬送される硬貨の大きさが偏る事態を防止できる。
【0071】
突起33の高さ(ベルト31表面から突出する量)は、例えば硬貨処理装置1において取り扱われる硬貨の厚みに基づいて設定されればよい。例えば、突起33の高さは、最も厚い硬貨2枚分の高さに設定されればよい。
【0072】
次に、第1側壁24と第2側壁25との間に設けられている第3側壁26、および第3側壁26と第1搬送部22との間に設けられている曲面部27について説明する。
【0073】
第1搬送部22の搬送方向における上流側、かつ一対の側壁(第1側壁24及び第2側壁25)の間に、一対の側壁のそれぞれと互いに直交するように第3側壁26が設けられている。第3側壁26は、例えば筐体20の後側の外壁に沿って、筐体20の後側の外壁のすぐ内側に配置されている。第3側壁26は、第1側壁24、第2側壁25、および搬送機構21とともに、収納空間SPを構成する。
【0074】
第3側壁26と、第1搬送部22の搬送方向における上流側端部221との間には、搬送機構21を構成するプーリー32を配置するスペース、およびプーリー32に駆け回されるベルト31が動くことができるスペースを確保するため、隙間が生じる。この隙間に硬貨が入り込まないように、第3側壁26と第1搬送部22の上流側端部221との間に、曲面部27が設けられている。曲面部27は、
図4Aに示すように、上下方向および前後方向に平行な平面における断面において、硬貨収納装置11の外側へ向かって湾曲する曲面形状を有している。
【0075】
曲面部27は、その曲面形状により、例えば第2搬送部23によって巻き上げられた硬貨が収納空間SPに戻ってきたときに第3側壁26に当たって滑り落ちる際、第1搬送部22上に戻りやすくするガイドの役割を果たす。このような構成により、硬貨収納装置11は、収納空間SP内において、効率よく硬貨を攪拌することができる。
【0076】
なお、曲面部27の下端部は、搬送機構21のベルト31の表面形状に合わせて形成されている。具体的には、曲面部27の下端部には、ベルト31表面に設けられた突起33を避ける凹形状が形成されている。これにより、曲面部27の下端部が、第1搬送部22におけるベルト31の表面近くまで配置されうる。このため、曲面部27と第1搬送部22との間に硬貨が入り込んでしまう事態を防止できる。
【0077】
次に、第2搬送部23により上方に搬送された硬貨が硬貨収納装置11の外部に排出される排出部Oについて説明する。
図7は、硬貨収納装置11の排出部O付近の構造を詳細に示す図である。
図7には、第2搬送部23と、第2搬送部23に沿って設けられている排出通路29と、排出部Oに開閉可能に設けられている蓋部210と、が示されている。
【0078】
排出通路29は、第2搬送部23の表面側に設けられた空間である。硬貨の搬送方向に垂直な平面における排出通路29の断面は、例えば四角形状、または円形状となっている。排出通路29の内径は、例えば最大径硬貨の直径より若干大きくなるように形成される。これにより、第2搬送部23により搬送される途中で硬貨が第2搬送部23から離れたとしても、硬貨が排出通路29に詰まってしまう事態を回避できる。
【0079】
搬送方向における排出通路29の下流側端部には、外部に向かって開かれた開口である排出部Oが設けられている。排出部Oの大きさは、例えば最大径硬貨の直径より若干大きくなるように形成される。なお、第1の実施の形態にて説明したように、硬貨収納装置11は繰出部13と隣接して設けられており、排出部Oから排出された硬貨が繰出部13に直接投入されるようになっている。言い換えると、硬貨収納装置11の排出部Oは、繰出部13の内部に接続されている。
【0080】
排出部Oには、開閉可能な蓋部210が設けられている。蓋部210は、CPU16の制御に基づいて開閉する。具体的には、蓋部210は、硬貨収納装置11から硬貨が排出されるとき以外は閉じられており、硬貨が排出部Oから排出されるタイミングで開かれる。これにより、硬貨収納装置11は繰出部13に硬貨を繰り出すことができる。また、硬貨が排出されるとき以外に、例えば入金口から繰出部13に投入された硬貨などが、排出部Oから硬貨収納装置11に入ってしまうことを低減できる。
【0081】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、硬貨処理装置1の構成についてより詳細に説明する。
図8は、硬貨処理装置1の構成の一例を示す模式図である。
【0082】
第3の実施の形態に係る硬貨処理装置1は、第1の実施の形態構成にて説明した各構成(
図1参照)に加えて、入金部41と、出金部42とをさらに備える。
【0083】
入金部41は、硬貨処理装置1の外部からの入金を受け付ける開口部である。入金部41から入金された硬貨は、繰出部13に移動される。
【0084】
出金部42は、硬貨処理装置1の外部へ硬貨を出金する開口部である。
【0085】
次に、硬貨処理装置1の使用態様について具体例を挙げて説明する。
図9は、硬貨処理装置1の使用態様を説明するための図である。
図9Aから
図9Cでは、それぞれ、硬貨処理装置1の異なる動作において、硬貨が硬貨処理装置1内を移動する様子を矢印で示している。なお、
図9では、シャッタ121を含む戻し通路12の一部(
図8参照)、および搬送部14の一部を省略している。
【0086】
図9Aは、硬貨処理装置1の外部から硬貨が入金される入金動作について説明するための図である。
【0087】
図9Aに示すように、入金部41から入金された硬貨は、まず繰出部13に投入される。繰出部13は入金された硬貨を1枚ずつ搬送部14に繰り出す。繰り出された硬貨は、搬送部14上の識別部15によって識別される。
【0088】
識別された硬貨は、搬送部14および分岐部141を介して硬貨収納装置11へ搬送され、収納される。なお、例えば識別部15が硬貨を識別できなかった場合、
図9Aの破線矢印に示すように、硬貨は分岐部141を介して出金部42から装置外部へ排出される。また、搬送中に異常が生じた場合、例えばベルトロックなどの異常により正常に分岐ができなかった場合などには、戻し通路12を通って繰出部13に戻される。繰出部13に戻された硬貨は搬送部14に繰り出され、再度識別部15により識別される。
【0089】
入金動作において、硬貨収納装置11が満杯で収納できなかったり、識別の結果、硬貨収納装置11が扱うことができない硬貨であったりした場合にも、その硬貨は、分岐部141を通じて出金部42へ搬送され、返金されてもよい。
【0090】
次に、
図9Bは、硬貨処理装置1における、貯留部122に貯留されている硬貨を用いて出金する出金動作について説明するための図である。貯留部122には、釣銭準備金など、硬貨処理装置1の外部に出金するための出金用の硬貨が収納されており、硬貨処理装置1は、出金が要求された場合に要求された金額の硬貨を貯留部122から出金する。この出金動作は、例えば硬貨処理装置1に対して釣銭の出金が要求された場合等に行われる。
【0091】
貯留部122には、後述の出金準備動作により、あらかじめ設定された金種の組み合わせの出金用の硬貨が貯留されている。貯留部122に貯留される出金用の硬貨の金種の組み合わせは、例えばすべての金額の釣銭を構成することが可能な組み合わせである。具体例を挙げると、貯留部122には、あらかじめ、1円硬貨が4枚、5円硬貨が1枚、10円硬貨が4枚、50円硬貨が1枚、100円硬貨が4枚、および、500硬貨が1枚貯留されている。このように貯留されている硬貨のうち、金種と枚数とを適切に組み合わせることで、1円から999円までの任意の金額の釣銭を構成することができる。
【0092】
出金動作では、CPU16の制御によりシャッタ121が開かれ、
図9Bに示すように、貯留部122に貯留された全ての硬貨が、繰出部13に排出される。繰出部13は入金された硬貨を1枚ずつ搬送部14に繰り出す。繰り出された硬貨は、搬送部14上の識別部15によって識別される。
【0093】
CPU16は、識別部15による識別結果に基づいて、貯留部122または出金部42へ選択的に硬貨を搬送させる。より詳細には、CPU16は、識別した硬貨を1枚ずつ出金するか否か判断し、出金すると判断した場合には、当該硬貨を搬送部14を介して出金部42へ搬送し、出金する。また、CPU16は、識別した硬貨を出金しないと判断した場合には、
図9Bの破線矢印に示すように、当該硬貨を搬送部14を介して貯留部122へ戻す。この際、CPU16は、硬貨が戻し通路12に搬送されるより前に、シャッタ121を閉じるように制御する。
【0094】
識別した硬貨を出金するか否かの判断方法については、本開示では特に限定しない。例えば、CPU16は、要求された出金金額に基づいて出金すべき金種毎の枚数を決定し、識別部15により新たに識別された硬貨の金種がさらに出金すべき金種の硬貨である場合、当該硬貨を出金すると判断し、すでに出金する必要がない金種の硬貨である場合、当該硬貨を出金しないと判断すればよい。
【0095】
次に、
図9Cは、硬貨収納装置11から貯留部122へ硬貨を補充する出金準備動作について説明するための図である。出金準備動作は、上述した出金動作によって貯留部122から出金された硬貨を補充するための動作である。
【0096】
出金準備動作では、硬貨収納装置11から硬貨が排出される。排出された硬貨のうち、所定の金種および所定の金種毎の枚数の硬貨が、貯留部122へ搬送される。この際、硬貨収納装置11は、例えば、収納する硬貨の中から硬貨をランダムに排出する。すなわち、硬貨収納装置11が排出する硬貨に含まれる金種毎の枚数は、出金準備動作の度に異なることが想定される。
【0097】
硬貨収納装置11から排出された硬貨は、繰出部13に投入される。繰出部13は入金された硬貨を1枚ずつ搬送部14に繰り出す。繰り出された硬貨は、搬送部14上の識別部15によって識別される。
【0098】
CPU16は、識別した硬貨を1枚ずつ貯留部122に収納するか否か判断し、収納すると判断した場合には、当該硬貨を貯留部122へ搬送し、収納する。また、CPU16は、識別した硬貨を貯留部122に収納しないと判断した場合には、
図9Cの破線矢印に示すように、当該硬貨を硬貨収納装置11へ戻す。
【0099】
上述した出金動作において、CPU16は、出金した硬貨の金種と枚数とをメモリ17に記憶させる。出金準備動作では、CPU16は、メモリ17の記憶に基づいて、識別した硬貨を、貯留部122に搬送させるか、硬貨収納装置11に戻すか、を判断すればよい。
【0100】
以上、硬貨処理装置1の動作例について説明した。以下では、硬貨処理装置1の構成のうち、戻し通路12および繰出部13について詳細に説明する。
【0101】
図10は、戻し通路12および繰出部13の構造を説明するための図である。
図10において、搬送部14を構成する循環搬送路は、二点鎖線にて示されている。戻し通路12は、循環搬送路の前側上方の地点P1と、繰出部13との間に配置されている通路である。
【0102】
【0103】
図11に示すように、戻し通路12は、硬貨処理装置1の左右方向において、2つに分岐している。以下の説明では、右側の戻し通路12を第1通路12_1、左側の戻し通路12を第2通路12_2と記載する。第1通路12_1と第2通路12_2とは、互いに平行に配置されている。第1通路12_1は、第2通路12_2の上側の壁の上面に沿って配置されている。すなわち、第1通路12_1は、第2通路12_2の上側に形成されている。第1通路12_1と第2通路12_2との分岐部には、ゲート部材123が設けられている。ゲート部材123は、CPU16の制御に基づいて、第1通路12_1の第1入口E1と第2通路12_2の第2入口E2のいずれか一方を閉じるとともに他方を開く。
図11Aおよび
図11Cには、ゲート部材123が第1入口E1を開き第2入口E2を閉じている様子が示されている。
図11Bには、ゲート部材123が第2入口E2を開き第1入口E1を閉じている様子が示されている。
【0104】
第1通路12_1には、シャッタ121が設けられている。シャッタ121および第1通路12_1は、貯留部122を構成する。すなわち、搬送部14から戻し通路12に投入された硬貨は、ゲート部材123が第1入口E1を開いている場合、第1通路12_1に進入し、貯留部122に貯留される。
【0105】
シャッタ121は、所定の回転軸を中心として回転可能な状態で支持されている。
図11Aから
図11Cに示す例では、シャッタ121は、回転軸Arを中心として回転可能な状態で支持されている。シャッタ121は、当該回転軸に対して垂直な平面における断面が円弧形状となるように形成されている。
図11Aから
図11Cに示す例では、シャッタ121は、左右方向および上下方向に平行な平面における断面が円弧形状となるように形成されている。シャッタ121は、CPU16の制御に基づく回転によって、貯留部122と繰出部13との間を開閉可能となっている。
図11Aおよび
図11Bには、シャッタ121が閉じられた状態が示されている。
図11Cには、シャッタ121が開かれた状態が示されている。
【0106】
一方で、第2通路12_2にはシャッタは設けられておらず、搬送部14から戻し通路12に投入された硬貨は、第2通路12_2を通って繰出部13に直接戻される。
【0107】
CPU16は、例えば入金動作(
図9A参照)において、ゲート部材123を制御して、第2入口E2を開き、第1入口E1を閉じる。これにより、搬送中に異常が生じた場合、例えばベルトロックなどの異常により正常に分岐ができなかった場合などには、搬送部14から戻し通路12に投入された硬貨は、第2通路12_2を通り、貯留部122に貯留されることなく、直接繰出部13に戻される。このため、正常に搬送できなかった硬貨を速やかに識別部15に送ることができ、素早く再度の識別を行うことができる。
【0108】
CPU16は、例えば出金準備動作(
図9C参照)において、硬貨を貯留部122に補充する際、ゲート部材123を制御して、第1入口E1を開き、第2入口E2を閉じる。この時、CPU16は、貯留部122を構成するシャッタ121を閉じるように制御している。これにより、硬貨を貯留部122に補充することができる。
【0109】
このように、貯留部122は、戻し通路12の第1通路12_1と、シャッタ121とによって構成される。言い換えると、貯留部122は、戻し通路12の一角をシャッタ121により塞ぐことで構成されている。すなわち、硬貨処理装置1では、貯留部122のために専用の構成を設ける必要がない。このため、硬貨処理装置1では、省スペース、かつ低コストで貯留部122を設けることが可能となっている。
【0110】
なお、
図9Bと関連付けて説明したように、貯留部122は、出金動作において、貯留している硬貨を繰出部13にすべて排出する。貯留部122による硬貨の排出は、CPU16の制御に基づいて、シャッタ121が開かれることにより実行される。
【0111】
シャッタ121の開閉は、上述したように、回転軸Arを中心に断面円弧形状のシャッタ121が回転運動をすることによって行われる。
図11Cの矢印は、シャッタ121が閉じられた状態から開かれる際のシャッタ121の動きを示している。このように、シャッタ121は回転運動によって開閉されるため、シャッタ121が開かれる際にシャッタ121が退避するスペースを極小に抑えることができる。これにより、シャッタ121により構成される貯留部122全体のサイズを小型化することができ、ひいては硬貨処理装置1のサイズを小型化することができる。
【0112】
なお、
図11Aから
図11Cに示すように、戻し通路12の全体は、鉛直方向に対して所定角度で傾斜して配置されている。これにより、搬送部14から戻し通路12に投入された硬貨は戻し通路12を構成する壁面に接触した状態で、重力に従って下方に滑り落ちていくことになる。仮に戻し通路12が水平方向に対し垂直に設置されていた場合、搬送部14から戻し通路12に投入された硬貨が自由落下することがあり、この場合、ゲート部材123やシャッタ121、繰出部13の底面部などに自由落下速度で衝突してこれらを傷つけてしまうことがある。戻し通路12の全体が傾斜していることにより、硬貨が滑り落ちる速度を自由落下速度より抑えることができるので、ゲート部材123やシャッタ121、繰出部13の底面部などが硬貨により傷つけられる事態を防止できる。
【0113】
図10に示すように、繰出部13は、例えば表面に突起を有する円盤を備える。当該円盤は、戻し通路12と同様に、鉛直方向に対して所定角度で傾斜して配置されており、傾斜した状態のままモータなどにより回転する。繰出部13に硬貨が入ってくると、当該硬貨は円盤の下部に貯留するが、円盤の回転とともに硬貨は1枚ずつ突起に引っ掛けられて上側に移動する。突起に引っ掛けられて上側に移動させられた硬貨は、繰出部13における円盤より外周部に設けられた穴部から繰り出される。当該穴部は搬送部14を構成する搬送部14に接続されている。このような構成により、繰出部13は、硬貨を1枚ずつ搬送部14に繰り出すことができる。
【符号の説明】
【0114】
1 硬貨処理装置
10 筐体
12 戻し通路
12_1 第1通路
12_2 第2通路
121 シャッタ
122 貯留部
123 ゲート部材
13 繰出部
14 搬送部
141 分岐部
142 シュート
15 識別部
16 CPU
17 メモリ
11 硬貨収納装置
20 筐体
21 搬送機構
22 第1搬送部
23 第2搬送部
24 第1側壁
25 第2側壁
26 第3側壁
27 曲面部
28 案内部
29 排出通路
31 ベルト
32 プーリー
33 突起
41 入金部
42 出金部
210 蓋部
221 上流側端部
222 下流側端部
Ar 回転軸
E1 第1入口
E2 第2入口
I 受入部
O 排出部
SP 収納空間