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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145533
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】嵌合具及び嵌合具付袋体
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/02 20060101AFI20241004BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A44B19/02
B65D33/25 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057926
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼川 新
(72)【発明者】
【氏名】河田 光平
【テーマコード(参考)】
3B098
3E064
【Fターム(参考)】
3B098AA10
3B098AB07
3B098BB02
3E064AA05
3E064BA24
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA02
3E064HM01
3E064HN13
3E064HP01
3E064HP02
(57)【要約】
【課題】嵌合強度を確保しながら軽量化する。
【解決手段】第1部材10及び第2部材20を備えたジッパーテープ2である。第1部材10は、第1基材11の対向面4に設けられた1つの雄型の第1嵌合部12を有し、第2部材20は、第2基材21の対向面4に設けられて第2嵌合部22に嵌合する1つの雌型の第2嵌合部22を有している。第1嵌合部12及び第2嵌合部22の総重量W1+W2が1.00g/m以下であるとともに、第1嵌合部12及び第2嵌合部22の総横断面積S1+S2が1.10mm以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合する一対の第1部材及び第2部材を備えた嵌合具であって、
前記第1部材は、帯状の第1基材と、長手方向に沿って延びるように前記第1基材の対向面に設けられた1つの雄型の第1嵌合部とを有し、
前記第2部材は、帯状の第2基材と、長手方向に沿って延びるように前記第2基材の対向面に設けられて前記第1嵌合部に対して着脱自在に嵌合する1つの雌型の第2嵌合部とを有し、
前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部の総重量が1.00g/m以下であるとともに、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部の総横断面積が1.10mm以下である嵌合具。
【請求項2】
請求項1に記載の嵌合具において、
前記第1嵌合部は、前記対向面からその法線方向に延びる軸部と、前記軸部の先端部分に設けられた当該軸部よりも巾の大きな掛止部とを有し、
前記第2嵌合部は、前記対向面からその法線方向に延びるとともに前記掛止部よりも巾の小さい受入口を介して対向する、弾性変形可能な一対の湾曲腕部を有し、
前記受入口を通じて前記一対の湾曲腕部の間に前記掛止部が入り込むことにより、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが嵌合するように構成されており、
前記第1嵌合部の前記対向面からの高さA1に対する前記第1嵌合部の先端部分の最大巾B1の比(B1/A1)が0.45~0.65の範囲内に設定されるとともに、前記第2嵌合部の前記対向面からの高さA2に対する前記第2嵌合部の基端部分の巾B2の比(B2/A2)が0.8~1.5の範囲内に設定されている嵌合具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の嵌合具において、
前記第1部材及び前記第2部材は、複数の合成樹脂を含む積層体からなり、
前記第1部材が、前記対向面に面して前記第1基材及び前記第1嵌合部を一体に形成している第1ベース層と、前記対向面の逆側に面した第1シール層とを有するとともに、前記第2部材が、前記対向面に面して前記第2基材及び前記第2嵌合部を一体に形成している第2ベース層と、前記対向面の逆側に面した第2シール層とを有している嵌合具。
【請求項4】
嵌合具を袋体に取り付けることによって開閉自在に構成された開口部を有する嵌合具付袋体であって、
前記開口部の縁に沿って延びるように、請求項1~3のいずれかに記載されている前記嵌合具が前記袋体の内面に溶着されており、
前記開口部の側から開く時の前記嵌合具の嵌合強度が3~25Nであるとともに前記開口部の逆側から開く時の前記嵌合具の嵌合強度が50~90Nである嵌合具付袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、嵌合具及び嵌合具付袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温暖化対策が重要な課題となっている。そのため、二酸化炭素の排出量の削減などの観点から、環境に配慮した製品が求められている。特に、包装材料は、使い捨て型の製品が多いうえに使用量が膨大なため、リデュース(ゴミ量の削減など)の観点から注目されている。
【0003】
一方、食品、薬品などの包材や一般家庭で利用される保存袋などで、開口部分に嵌合具(ジッパーテープ)を一体に取り付けた袋(ジッパーバック)が広く使用されている。ジッパーバックは、ジッパーテープにより、袋を必要に応じて開閉できるようになるので、利便性に優れる。
【0004】
一般に、ジッパーテープは、袋体の内面に対向した状態で溶着される一対の部材で構成されていて、これら部材の各々には、着脱自在に嵌合する嵌合部が設けられている。雄型と雌型とを嵌合するタイプが多いが、嵌合部の形態は様々である(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかし、ジッパーバックは、ジッパーテープの無い普通の袋に比べると合成樹脂量が増える。ジッパーバック単体であれば微量ではあるが、その総使用量を考慮すると、リデュースの点で改善の余地がある。従って、ジッパーテープのうち、特に樹脂量の多い嵌合部は小さい方が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-57702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、リデュースの観点からは、ジッパーテープの嵌合部を小さくして軽量化するのが好ましい。しかし、嵌合部を小さくすると、嵌合強度が低下して密封性が損なわれるおそれがある。
【0008】
その点、特許文献1には、包装袋の薄型化を目的としたものではあるが、嵌合部の高さを低くしても高い密封性が確保できる技術が開示されている。しかし、その嵌合部の雄側は、鈎突条が1つでなく、2つもあることに加え密封用の突条も含むため、樹脂量としては逆に増加する構造となっており、軽量化はされていない。
【0009】
そこで、開示する技術では、最も構造がシンプルな、突起部分が1つの雄型の嵌合部とそれに対応した1つの雌型の嵌合部の形態を検討して、その剛性と柔軟性のバランスを調整することにより、必要な嵌合強度を確保しながら軽量化することを目指すこととした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示する技術は、互いに嵌合する一対の第1部材及び第2部材を備えた嵌合具に関する。
【0011】
前記第1部材は、帯状の第1基材と、長手方向に沿って延びるように前記第1基材の対向面に設けられた1つの雄型の第1嵌合部とを有し、前記第2部材は、帯状の第2基材と、長手方向に沿って延びるように前記第2基材の対向面に設けられて前記第1嵌合部に対して着脱自在に嵌合する1つの雌型の第2嵌合部とを有している。そして、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部の総重量が1.00g/m以下であるとともに、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部の総横断面積が1.10mm以下である。
【0012】
具体的には、前記第1嵌合部は、前記対向面からその法線方向に延びる軸部と、前記軸部の先端部分に設けられた当該軸部よりも巾の大きな掛止部とを有し、前記第2嵌合部は、前記対向面からその法線方向に延びるとともに前記掛止部よりも巾の小さい受入口を介して対向する、弾性変形可能な一対の湾曲腕部を有し、前記受入口を通じて前記一対の湾曲腕部の間に前記掛止部が入り込むことにより、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが嵌合するように構成されており、前記第1嵌合部の前記対向面からの高さA1に対する前記第1嵌合部の先端部分の最大巾B1の比(B1/A1)が0.45~0.65の範囲内に設定されるとともに、前記第2嵌合部の前記対向面からの高さA2に対する前記第2嵌合部の基端部分の巾B2の比(B2/A2)が0.8~1.5の範囲内に設定されている、とするとよい。
【0013】
更には、前記第1部材及び前記第2部材は、複数の合成樹脂を含む積層体からなり、前記第1部材が、前記対向面に面して前記第1基材及び前記第1嵌合部を一体に形成している第1ベース層と、前記対向面の逆側に面した第1シール層とを有するとともに、前記第2部材が、前記対向面に面して前記第2基材及び前記第2嵌合部を一体に形成している第2ベース層と、前記対向面の逆側に面した第2シール層とを有している、としてもよい。
【0014】
これらのように構成することにより、必要な嵌合強度を確保しながら、嵌合部全体を小型化及び軽量化できるようになる。また、剛性と柔軟性のバランスを調整することにより優れた耐久性を有することができるようになる。
【0015】
また、嵌合部を小型化すれば、製袋時に行われるポイントシールに必要な温度、すなわち、嵌合部の袋体の両端に溶着される箇所において、嵌合部の突起を押し潰す温度を低くすることができる。その結果、袋体の両端と嵌合部をサイドシールする際、突起の潰しが不充分なことに起因する皴やピンホール等の外観不良を抑制でき、仕上がりが良くなる点でも有利である。
【0016】
開示する技術はまた、嵌合具を袋体に取り付けることによって開閉自在に構成された開口部を有する嵌合具付袋体に関する。
【0017】
この嵌合具付袋体には、前記開口部の縁に沿って延びるように、上述した前記嵌合具が前記袋体の内面に溶着されている。そして、前記開口部の側から開く時の前記嵌合具の嵌合強度が3~25Nであるとともに前記開口部の逆側から開く時の前記嵌合具の嵌合強度が50~90Nであることを特徴とする。
【0018】
そうすれば、軽量で環境に優しい嵌合具付袋体が提供できるだけでなく、開封性と密封性を両立できるので、高性能でありながら扱い易くできる。
【発明の効果】
【0019】
開示する技術によれば、必要な嵌合強度を確保しながら嵌合具を軽量化できる。従って、環境に配慮した製品を安価で提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ジッパーバックを示す概略図である。
図2】分離した状態のジッパーテープを示す概略斜視図である。
図3図1において矢印Yで示す方向から見た概略断面図である。
図4】実施例の主な要素を比較例1、2とともにまとめた表である。
図5図4に示した各要素を具体的に説明するための図である。
図6】実施例、比較例1、2の各層の原料をまとめた表である。
図7】実施例、比較例1、2の主な性能についてまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、開示する技術について説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0022】
<ジッパーバック>
図1に、開示する技術を適用したジッパーバック1(嵌合具付袋体)を示す。ジッパーバック1は、食品や薬品などを収容するために用いられる。従って、図示は省略するが、使用状態でのジッパーバック1は、その内部に所定量の内容物を収容した状態で密封されている。
【0023】
ジッパーバック1は、一対のフィルム51,51を張り合わすことによって形成される密封可能な袋体50を有している。例示の袋体50は長方形状に形成されていて、その周縁部には、全周にわたって、所定の巾でヒートシール(熱溶着)されたシール帯52が設けられている。
【0024】
袋体50を構成しているフィルム51は、ヒートシール可能であればよく、合成樹脂製の単層フィルム又は合成樹脂製のフィルムを含む積層フィルムを用いることができる。フィルム51には、例えば、シール用のシーラントフィルム及び基材用のベースフィルムを含んだ積層フィルムが好適である。
【0025】
このジッパーバック1では、シーラントフィルム51aとベースフィルム51bとからなる積層フィルム51を例示している(図3参照)。一対の積層フィルム51,51は、シーラントフィルム51aの側を向かい合わせにした状態で張り合わされている。
【0026】
シーラントフィルム51aとしては、ヒートシールに適した低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマーなどが挙げられる。ベースフィルム51bとしては、強度に優れる二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリプロピレン、モノマテリアルを目的としたポリエチレン系樹脂、環境配慮を目的としたセルロースと混合した合成樹脂などが挙げられる。用途に応じて、積層フィルム51に、アルミ蒸着層などの機能層を設けてもよい。各フィルム51の厚みや組み合わせ、袋体50の形状やサイズなどは、仕様に応じて適宜選択できる。
【0027】
内容物が収容されていない未使用状態のジッパーバック1では、例えば、袋体50の双方の長辺部分及び一方の短辺部分(開封端53)の三方がヒートシールされていて、袋体50の一方の短辺部分(封止端54)は、ヒートシールされずに開放されている。内容物は、その封止端54の開口を通じて袋体50に充填される。そうした後、封止端54をヒートシールすることで、内容物を収容した状態で袋体50は密封される。
【0028】
袋体50の開封端53には、開封操作を誘導する切り取り構造55が設けられている。切り取り構造55は、シール帯52の内側に沿って延びる所定のカットライン55a(例えば微小な溝で構成)と、カットライン55aの一端に設けられたノッチ55bとで構成されている。ノッチ55bを起点にして袋体50を引き裂くことで、カットライン55aに沿って開封端53の縁部が切り取られ、容易に袋体50を開封できる。なお、図1では開封後の状態を示している。切り取り構造55は、単にカットライン55aを描くだけであってもよい。
【0029】
開封後の開封端53には、開閉自在な開口部56が形成される。すなわち、図1に破線で示すように、カットライン55aの内側に沿って延びるようにジッパーテープ2(嵌合具)が取り付けられている。それにより、開口部56が開閉自在に構成されている。そして、このジッパーテープ2の場合、必要とされる嵌合強度を確保しながら軽量化も図れるように工夫されている。
【0030】
<ジッパーテープ>
図2に、分離した状態でのジッパーテープ2を示す。図3に、図1において矢印Yで示す方向から見た概略断面図を示す。ジッパーテープ2は、開口部56の縁に沿って延びるように、各フィルム51の内面に溶着されている。
【0031】
(ジッパーテープの基本構成)
ジッパーテープ2は、互いに嵌合する一対の部材(第1部材10及び第2部材20)を備えている。具体的には、第1部材10は、所定巾を有する帯状の第1基材11と、長手方向(長さ方向)に沿って延びるように第1基材11の対向面4に設けられた突起部分が1つの雄型の第1嵌合部12とを有している。同様に、第2部材20は、所定巾を有する帯状の第2基材21と、長手方向に沿って延びるように第2基材21の対向面4に設けられた1つの雌型の第2嵌合部22とを有している。第2嵌合部22は、第1嵌合部12に対して着脱自在に嵌合する。
【0032】
第1嵌合部12は、第1基材11の巾方向の中央部分に配置されており、第1基材11は、その第1嵌合部12の基端部分からその両側に沿って延びる一対のフランジ部5,5を有している。同様に、第2嵌合部22は、第2基材21の巾方向の中央部分に配置されており、第2基材21は、その第2嵌合部22の基端部分からその両側に沿って延びる一対のフランジ部5,5を有している。
【0033】
本実施形態のジッパーテープ2の場合、第1基材11と第2基材21の形態は同じである。すなわち、第1基材11及び第2基材21の双方は、所定の厚みを有するフィルム状であり、図2に示すように、細長い帯状に形成されている。
【0034】
第1部材10及び第2部材20は、複数の合成樹脂の積層体からなる。
【0035】
具体的には、第1部材10は、その対向面4に面して第1基材11及び第1嵌合部12を一体に形成している第1ベース層10bと、その対向面4の逆側のシール面3に面した第1シール層10aとを有している。すなわち、第1基材11のうち、対向面4の側に露出している部分には、第1ベース層10bが形成されている。一方、第1基材11のうち、対向面4の逆側に露出している部分には、第1シール層10aが形成されている。そして、第1嵌合部12は、第1基材11と一体に形成されているので、対向面4に面した第1ベース層10bと同じ剛性樹脂で形成されている。また、第1ベース層10bと第1シール層10aの間に、別の層が積層していてもよい。
【0036】
第2部材20は、その対向面4に面して第2基材21及び第2嵌合部22を一体に形成している第2ベース層20bと、そのシール面3に面した第2シール層20aとを有している。すなわち、第2基材21のうち、対向面4の側に露出している部分には、第2ベース層20bが形成されている。一方、第2基材21のうち、対向面4の逆側に露出している部分には、第2シール層20aが形成されている。そして、第2嵌合部22は、第2基材21と一体に形成されているので、対向面4に面した第2ベース層20bと同じ剛性樹脂で形成されている。また、第2ベース層20bと第2シール層20aの間に、別の層が積層していてもよい。
【0037】
第1ベース層10b及び第2ベース層20bの素材としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0038】
特に良好な嵌合強度を有する観点から、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-αオレフィン共重合体、等のオレフィン系樹脂が好ましい。また、複数の種類の樹脂を併用することも可能である。
【0039】
第1シール層10a及び第2シール層20aは、ヒートシール用であり、基材用の第1ベース層10b及び第2ベース層20bよりも厚みが薄く、シール面3の全域を覆うように形成されている。これらシール層の素材としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0040】
例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、オレフィン系エラストマ、スチレン系エラストマ、酸変性オレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等が挙げられる。
【0041】
第1シール層10aと第2シール層20a、及び、第1ベース層10bと第2ベース層20bとは、それぞれ異なっていてもよいが、通常は同じである。すなわち、詳細は後述するが、第1嵌合部12及び第1基材11は、第2嵌合部22及び第2基材21と同じ素材と構造を有する複数の合成樹脂を積層して構成されている(このジッパーテープ2のこれらの構成については後述)。
【0042】
第1部材10及び第2部材20は、互いに嵌合した状態で、第1シール層10a及び第2シール層20aを各シーラントフィルム51aの内面に溶着することにより、袋体50に取り付けられている。
【0043】
(第1嵌合部)
第1嵌合部12は、図2に示すように、第1基材11の長手方向に沿って延びる細長い部分からなる。第1嵌合部12は、図3に拡大して示すように、横断面形状が第1基材11の対向面4からその法線Nの方向に延びる軸部30と、その軸部30の先端部分に設けられた軸部30よりも巾の大きな掛止部31とを有している。
【0044】
掛止部31は、横断面形状が略三角形の頭頂部31aを有している。頭頂部31aは、その突端に向かうに従って巾が小さくなる曲面で形成されている。掛止部31は、その機能的な構成として、軸部30の一方の側方に臨む弱作用部31bと、軸部30の他方の側方に臨む強作用部31cとを有している。
【0045】
具体的には、弱作用部31bとして、頭頂部31aと軸部30との境界部分に、頭頂部31aから軸部30に向かって下り傾斜した外面を有する低抵抗な形状が設けられている。すなわち、頭頂部31aの突出した基端の横断面における角度が鈍角をなす。強作用部31cとして、頭頂部31aと軸部30との境界部分に、軸部30に対して略垂直な外面ないし頭頂部31aの側に入り込むように逆傾斜した外面を有する高抵抗な形状(返し形状)が設けられている。すなわち、頭頂部31aの突出した基端の横断面における角度が鋭角をなす。
【0046】
第1部材10は、弱作用部31bを開口部56の側に向け、強作用部31cを開口部56の逆側、つまり袋体50の内部側に向けた状態に配置される。
【0047】
(第2嵌合部)
第2嵌合部22もまた、図2に示すように、第2基材21の長手方向に沿って延びる細長い部分からなる。第2嵌合部22は、図3に拡大して示すように、第2基材21の対向面4から巾方向に対向してその法線Nの方向に延びる一対の湾曲腕部40,40を有し、横断面形状がU状に形成されている。
【0048】
各湾曲腕部40の先端には、内側に折り返すように曲がるフック部41が設けられている。そして、これらフック部41,41は、第1嵌合部12よりも巾が小さい受入口42を介して対向している。第1嵌合部12が嵌合していない無負荷の状態では、受入口42の巾は軸部30の巾よりも僅かに小さいが、各湾曲腕部40は弾性変形可能なので、第1嵌合部12が嵌合している状態では、フック部41が軸部30に接触し、受入口42が押し広げられた状態になっている。
【0049】
第1部材10と第2部材20とを嵌合する時には、第1嵌合部12の先端と受入口42とを対向させた状態で、これら10,20の外側から押し込むように、袋体50を介して外力を作用させる。そうすると、各湾曲腕部40が弾性変形し、受入口42を通じて一対の湾曲腕部40,40の間に掛止部31が入り込む。それにより、第1嵌合部12と第2嵌合部22とが嵌合する。その結果、開口部56が閉じて袋体50は密封される。
【0050】
一方、嵌合した第1部材10と第2部材20とを分離させる時には、第1嵌合部12を第2嵌合部22から引き抜くように、袋体50を介して外力を作用させる。そうすると、各湾曲腕部40が弾性変形し、一対の湾曲腕部40,40の間から掛止部31が引き抜かれる。それにより、第1嵌合部12と第2嵌合部22とが分離する。その結果、開口部56が開いて袋体50は開封される。
【0051】
掛止部31を一対の湾曲腕部40,40の間から引き抜く時、弱作用部31bの側は、その低抵抗な形状により、相対的に弱い外力で引き抜くことができるのに対し、強作用部31cの側は、その高抵抗な形状により、相対的に強い外力でなければ引き抜くことができない。それにより、開口部56の側と袋体50の内部側とで嵌合強度に差が生じ、袋体50の密封性と易開封性とを両立できるようになっている。
【0052】
(ジッパーテープの細部構成)
このジッパーテープ2は、リデュースの観点から、必要とされる嵌合強度を確保しながら軽量化も図れるように、嵌合部の形態、すなわちその高さや巾がバランスよく調整されている。
【0053】
図4に、開示する技術を適用したジッパーテープ2(実施例)とともに、既存の主なジッパーテープ(比較例1及び比較例2)について、主立った要素についてまとめた表を示す。この図4の表を参照しながら、ジッパーテープ2の細部構成について説明する。
【0054】
なお、第1嵌合部12や第2嵌合部22などのジッパーテープ2の基本的な形態は、比較例1、比較例2のいずれのジッパーテープでも同じである。図4の表に示すように材質や寸法などが異なる。説明に際し、第1部材10と第2部材20の各要素に関して区別の必要がない場合には、第1基材11及び第2基材21は「基材」、第1嵌合部12及び第2嵌合部22は「嵌合部」などと、それぞれ総称する。
【0055】
図5に、図4の表に示した各要素を具体的に説明するための図を示す。例えば、横断面積S1,S2は、図5に示すように、ジッパーテープ2の横断面を拡大した画像を取得して、その画像から対応する部分を切り出し、画像解析することによって算出した値である。爪重量W1,W2は、算出した横断面積とそれぞれの密度とを用いて算出した値である。
【0056】
図4に示すように、実施例及び比較例1のテープの部分、つまりフランジ部5は、積層構造である。対して、比較例2のテープの部分は単層構造である。図6に、その実施例、比較例1、及び、比較例2の各層の原料についてまとめた表を示す。
【0057】
実施例、比較例1、比較例2のいずれにおいても、ベース層は、同じ所定のポリプロピレン(PP)で形成されている。上述したように、嵌合部はベース層と一体に構成されているので、嵌合部もこれらと同じPPで形成されている。すなわち、これらの物性は同じである。
【0058】
例えば、第1ベース層10b及び第2ベース層20bに用いられる樹脂の物性としては、融点が100~135℃、MFRが4.0~10.0g/10min(温度:190℃、荷重:2.16kg)、密度が850~950kg/mのものが好ましい。
【0059】
フランジ部5の巾はいずれも同じ(13.00mm)であり、実施例及び比較例1は厚みも同じ(0.14mm)で、比較例2は厚みが大きい(0.17mm)。実施例と比較例1とでは、シール層の原料及び構成は同じである。すなわち、実施例と比較例1は、嵌合部の形態が異なる点を除けば、原料も構成も同じである。
【0060】
ジッパーテープ2の主な素材は、合成樹脂である。しかし、ジッパーテープ2に使用できる合成樹脂の種類は、溶着性の観点から袋体50を構成するフィルムの種類に応じて選択されることが多い。そのため、軽量化を実現するために、従来、用いてきたジッパーテープの素材を大きく変えることは難しい。従って、ジッパーテープで価値ある軽量化を実現するためには、その寸法を小さくして重量を減らすことが効果的である。そして、その対象部分としては、フランジ部5と嵌合部とが考えられる。
【0061】
しかし、フランジ部5の厚みを薄くすると、嵌合部の支持が不安定になって適切に嵌合できない場合が生じ得る。また、フランジ部5の巾を短くすると、袋体50との溶着面積が減少し適切にシールできない場合が生じ得る。従って、フランジ部5はサイズ変更に適していない。
【0062】
一方、嵌合部を単に小さくするだけでは、嵌合強度が低下して必要な嵌合強度が得られなくなる。そこで、発明者らは、雄型及び雌型のそれぞれの形態に着目し、嵌合部の剛性と柔軟性のバランスを調整することにより、必要な嵌合強度を確保しながら軽量化できないか、検討を行った。その結果、必要な嵌合強度を確保しながら価値のある軽量化も実現できる条件を見出した。
【0063】
具体的には、第1に、第1嵌合部12及び第2嵌合部22の総重量(W1+W2)を1.00g/m以下(実施例では0.78g/m)、かつ、第1嵌合部12及び第2嵌合部22の総横断面積(S1+S2)を1.10mm以下(実施例では0.88mm)にすることが挙げられる。
【0064】
第2に、第1嵌合部12の対向面4からの高さ(爪高さ:A1)に対する第1嵌合部12の先端部分の最大巾(爪巾:B1)の比(B1/A1)を0.45~0.65の範囲内(実施例では0.55)に設定し、かつ、第2嵌合部22の対向面4からの高さ(爪高さ:A2)に対する第2嵌合部22の基端部分の巾(爪巾:B2)の比(B2/A2)を0.8~1.5の範囲内(実施例では1.20)に設定することが挙げられる。
【0065】
爪高さは、ジッパーテープ2を袋体50に溶着する工程を考慮すると、あまり小さくすることはできない。すなわち、ジッパーテープ2は、嵌合した状態で所定のヒートシール機を用いて袋体50に溶着される。その際、第1部材10の各フランジ部5と第2部材20の各フランジ部5との間にガイドプレートが配置される。ガイドプレートは、一対のヒートプレートの間に介在し、各ヒートプレートと協働してこれらフランジ部5と袋体50の各フィルムを挟み込んで圧着する。
【0066】
そのため、爪高さはガイドプレートの厚みより大きいことが求められ、それによって爪高さは制限される。また、第1嵌合部12及び第2嵌合部22の各々の爪高さは、これらの嵌合状態を確保するために必要な適切な比率があり、小さくする場合には、その比率を確保する必要がある。
【0067】
一方、爪巾に関しては、雄型と雌型とで小型化と嵌合強度との関係に差があり、軽量化の余地があることが判明した。すなわち、雄側、雌側ともに小さくすれば、嵌合強度も低下するが、雄側は、雌側よりも、小さくすることによる嵌合強度への影響が小さいことが判明した。
【0068】
すなわち、雄型の第1嵌合部12の先端部分の最大巾(爪巾:B1)は雌型の第2嵌合部22の基端部分の巾(爪巾:B2)よりも小さくすることが可能であり、一対の湾曲腕部40のフック部41,41で雄型の軸部30をしっかりと挟み込めば、第1嵌合部12の巾が多少小さくなっても、嵌合強度の低下を抑制することができ、必要な嵌合強度を維持できる。
【0069】
そこで、このジッパーテープ2では、第1嵌合部12及び第2嵌合部22の各々の爪高さを所定の比率で小さくし、これらの爪巾については第2嵌合部22の減少比率よりも第1嵌合部12の減少比率の方がより小さくなるように調整されている。そのため、第1嵌合部12の爪高さに対する爪巾の比(B1/A1)は、第2嵌合部22の爪高さに対する爪巾の比(B2/A2)より小さくなる。
【0070】
具体的には、上述したように、第1嵌合部12及び第2嵌合部22の総重量は1.00g/m以下(実施例では0.78g/m)、かつ、第1嵌合部12及び第2嵌合部22の総横断面積は1.10mm以下(実施例では0.88mm)とされ、第1嵌合部12及び第2嵌合部22の爪高さに対する爪巾の比は上述した範囲内(実施例ではB1/A1=0.55、B2/A2=1.20)に設定されている。
【0071】
尚、フランジ部5はサイズ変更に適していないと上述したが、フランジ部5の厚さは剛性と柔軟性のバランスが良好であることから、0.01mm以上0.4mm以下が好ましく、0.10mm以上0.3mm以下がより好ましい。また、フランジ部5の巾は、袋体に熱溶着したときに充分なシール強度が得られやすいことや取り扱いやすさから、2mm以上30mm以下が好ましく、5mm以上20mm以下がより好ましい。
【0072】
図7に、実施例、比較例1、及び、比較例2の主な性能についてまとめた表を示す。
【0073】
上述したように、このジッパーテープ2の場合、開口側と内部側とで嵌合強度が異なるように構成されている。開口側の嵌合強度は開け易さの観点から低い方が好ましく、例えば、25N以下が好ましい。一方、内部側の嵌合強度は密封性の観点から高い方が好ましく、例えば、50N以上が好ましい。
【0074】
具体的には、実用性を考慮すると、開口側から開く時のジッパーテープ2の嵌合強度は3~25Nであるようにするのが好ましく、さらに8.5~25Nであるようにするのがより好ましい。また、内部側から開く時のジッパーテープ2の嵌合強度は50~90Nであるようにするのが好ましく、さらに65~90Nであるようにするのがより好ましい。
【0075】
それに対し、実施例、比較例1、及び、比較例2のいずれの嵌合強度も、これらの要望を満たしている。それにより、実施例は、実質的に同じ素材及び構造からなる従来品(比較例1)と比較しても、嵌合部全体のサイズ(総横断面積に相当)を小型化することにより、必要な嵌合強度を確保しながら嵌合部全体の重量の約26%の軽量化を実現している。
【0076】
特に、実施例の嵌合強度は、比較例1に比べて、開口側で低く(12.8<14.6)、内部側で高く(75.9>75.3)なっている。実施例は、比較例1に比べて開封性及び密封性も向上しており、軽量化だけでなく機能の点でも改善されている。
【0077】
なお、ここでいう嵌合強度は、第1嵌合部材10及び第2嵌合部材20を長手方向に50mm分切り出した試験片について、引張試験機を用いて第1部材10と第2部材20とを引張速度50mm/分で引っ張ることによって測定される強度の最大値を嵌合強度とした。
【0078】
比較例2は、実施例及び比較例1に比べて、内部側の嵌合強度が高く密封性に優れるが、単層構造である。そのため、ヒートシール温度が高く、シール性能の点で課題がある。また、積層構造に比べて柔軟性に欠ける点でも不利がある。
【0079】
それに対し、積層構造を有する実施例及び比較例1は、ヒートシール温度が低く(115℃未満)、シール性能に優れる。更に、耐久性の点でも優れている。積層構造では異なる物性の樹脂層を組み合わせることでヒートシール性や柔軟性を調整することができる。
【0080】
なお、ヒートシール温度は、嵌合具を内面が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である積層フィルムにヒートシールし、その試験片を用いて離強度試験を行い、フィルム51と嵌合具1との剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mmとなる温度とした。
【0081】
剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mm以上であれば、嵌合具1と袋体を構成するフィルム51は充分に溶着されており、嵌合具がフィルムから外れたり、嵌合具とフィルムの間に隙間が生じることがない。剥離強度(ヒートシール強度)は下記の方法で測定した。
【0082】
(製袋条件)
自動製袋機を用いて、ナイロン/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の積層フィルムの、直鎖状低密度ポリエチレンで構成される面に嵌合具をヒートシールした。ヒートシールを温度100℃~160℃において5℃刻みで変化させてそれぞれの温度における嵌合具付きフィルムを得た。
【0083】
(剥離条件)
次に、嵌合具の第1嵌合部材から雄側嵌合部を切除し、第1基材から幅6mmの試料片を切り出し、試験片の第1基材とフィルムを10mm剥離させる。東洋精機製作所製ストログラフ引張試験機を用いて、第1基材とフィルムとの剥離部分をそれぞれチャックに挟み、引張速度200mm/minでT型剥離試験を行った。温度100℃~160℃でそれぞれヒートシールした試験片において、ヒートシール時の温度と剥離強度(ヒートシール強度)のグラフを作成し、剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mmとなる温度をヒートシール温度として算出した。
【0084】
図7に示すように、開閉操作を100回行う耐久性試験を行い、開口側及び内部側の各々から開く場合での嵌合強度の低下に関する変化率を測定した。耐久性試験では、処理前(開閉回数:0)の嵌合強度F0と、処理後(開閉回数:100)の嵌合強度F100とを計測し、式:{(F0ーF100)/F0}*100により、嵌合強度の変化率を求めた。
【0085】
実施例及び比較例1は、比較例2に比べて、嵌合強度は相対的に低いものの、嵌合強度の変化率が低かった。特に、実施例は、比較例1よりも嵌合強度の変化率が低く、耐久性も向上していることが判明した。実施例では、雄型の第1嵌合部12の爪巾が相対的に小さくなっているので、開閉操作を繰り返しても、脱着時に作用する摩擦抵抗が少なくなる分、削れ難くなっていると考えられる。
【0086】
なお、実施例よりも比較例1が若干、嵌合強度の変化率が低かった。これは、第1嵌合部の爪高さに対する爪巾の比(B1/A1)が実施例の方が比較例1に対して小さいことに起因する。これにより第1嵌合部12は第2基材へ安定して支持され、耐久性が向上する。
【0087】
このように、開示する技術を既存のジッパーテープに適用することにより、必要な嵌合強度を確保しながら軽量化が図れるので、環境に優しい製品を提供できるようになる。
【0088】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、ジッパーバックの形態や用途は一例であり、仕様に応じて適宜変更できる。
【符号の説明】
【0089】
1 ジッパーバック(嵌合具付袋体)
2 ジッパーテープ(嵌合具)
3 シール面
4 対向面
5 フランジ部
10 第1部材
10a 第1シール層
10b 第1ベース層
11 第1基材
12 第1嵌合部
20 第2部材
20a 第2シール層
20b 第2ベース層
21 第2基材
22 第2嵌合部
30 軸部
31 掛止部
31a 頭頂部
31b 弱作用部
31c 強作用部
40 湾曲腕部
42 受入口
50 袋体
51 フィルム
56 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7