(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145543
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】判定プログラム、判定装置及び判定方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/12 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
C25D21/12 D
C25D21/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057940
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 竜一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 眞美
(72)【発明者】
【氏名】森 優太郎
(72)【発明者】
【氏名】漆原 誠
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔一
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮
(57)【要約】
【課題】めっきに関して、より好ましい条件の探索を実現することが可能となる。
【解決手段】本発明の一態様は、めっきの製造条件と、前記製造条件で製造されためっきの状態を示す状態情報と、の組み合わせである既知情報を複数取得し、ベイズ最適化を適用することによって前記既知情報に基づいて新たな製造条件を判定する制御部、としてコンピューターを機能させるための判定プログラムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっきの製造条件と、前記製造条件で製造されためっきの状態を示す状態情報と、の組み合わせである既知情報を複数取得し、ベイズ最適化を適用することによって前記既知情報に基づいて新たな製造条件を判定する制御部、としてコンピューターを機能させるための判定プログラム。
【請求項2】
前記状態情報は、めっきの粗さを示す値である、請求項1に記載の判定プログラム。
【請求項3】
前記状態情報は、前記めっきの複数の測定点で測定された粗さを示す値の統計値である、請求項1に記載の判定プログラム。
【請求項4】
前記状態情報は、前記めっきの複数の測定点で測定された粗さを示す値の常用対数の統計値である、請求項1に記載の判定プログラム。
【請求項5】
前記めっきは銅めっきであり、前記製造条件は少なくとも硫酸銅濃度の値及び硫酸濃度の値を含む、請求項1に記載の判定プログラム。
【請求項6】
めっきの製造条件と、前記製造条件で製造されためっきの状態を示す状態情報と、の組み合わせである既知情報を複数取得し、ベイズ最適化を適用することによって前記既知情報に基づいて新たな製造条件を判定する制御部、を備える判定装置。
【請求項7】
コンピューターが、めっきの製造条件と、前記製造条件で製造されためっきの状態を示す状態情報と、の組み合わせである既知情報を複数取得する取得ステップと、
コンピューターが、ベイズ最適化を適用することによって前記既知情報に基づいて新たな製造条件を判定する判定ステップと、
を有する判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定プログラム、判定装置及び判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅めっきは配線や基盤など多くの用途で用いられている。その平滑性は、めっきの性能としてとても大きな要素となる。しかし、平滑性に影響するめっき条件のパラメータは非常に多い。そのため、平滑性の最適条件の探索には多くの実験が必要になる。
このような問題に対し、機械学習を用いて解決を図ろうとする技術が提案されている。例えば特許文献1には機械学習を用いることによって半導体処理装置に与える条件を探索する探索装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機械学習を用いてより精度の高い条件探索を行うためには多くの教師データを事前に準備する必要がある。このような準備に要する時間や金銭のコストが問題となる可能性がある。このような問題は、銅めっきに限定された問題ではなく、めっき全般に共通する問題である。
【0005】
本発明は、めっきに関して、より好ましい条件の探索を実現する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、めっきの製造条件と、前記製造条件で製造されためっきの状態を示す状態情報と、の組み合わせである既知情報を複数取得し、ベイズ最適化を適用することによって前記既知情報に基づいて新たな製造条件を判定する制御部、としてコンピューターを機能させるための判定プログラムである。
【0007】
本発明の一態様は、上記判定プログラムであって、前記状態情報は、めっきの粗さを示す値である。
【0008】
本発明の一態様は、上記判定プログラムであって、前記状態情報は、前記めっきの複数の測定点で測定された粗さを示す値の統計値である。
【0009】
本発明の一態様は、上記判定プログラムであって、前記状態情報は、前記めっきの複数の測定点で測定された粗さを示す値の常用対数の統計値である。
【0010】
本発明の一態様は、上記判定プログラムであって、前記めっきは銅めっきであり、前記製造条件は少なくとも硫酸銅濃度の値及び硫酸濃度の値を含む。
【0011】
本発明の一態様は、めっきの製造条件と、前記製造条件で製造されためっきの状態を示す状態情報と、の組み合わせである既知情報を複数取得し、ベイズ最適化を適用することによって前記既知情報に基づいて新たな製造条件を判定する制御部、を備える判定装置である。
【0012】
本発明の一態様は、上記判定プログラムであって、コンピューターが、めっきの製造条件と、前記製造条件で製造されためっきの状態を示す状態情報と、の組み合わせである既知情報を複数取得する取得ステップと、コンピューターが、ベイズ最適化を適用することによって前記既知情報に基づいて新たな製造条件を判定する判定ステップと、を有する判定方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、めっきに関して、より好ましい条件の探索を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】判定装置10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
【
図2】判定装置10の処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図3】硫酸銅めっきの製造装置(実験装置)の具体例を示す図である。
【
図6】全50回の実験において使用された製造条件の具体例を示す図である。
【
図7】本実施形態に適用される情報処理装置90のハードウェア構成例の概略を示す図である。
【
図8】判定システム100の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[概略]
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明に係る判定装置10の概略について説明する。判定装置10は、より好ましいめっきを実現するための製造条件を判定する際に使用される。以下、このような判定を行うための操作をする者をユーザーと呼ぶ。
【0016】
ユーザーは、まず複数の製造条件でめっきを実際に製造する実験(以下「初期実験」という。)を実施し、その実験によって得られためっきの状態を示す情報(以下「状態情報」という。)を取得する。次に、ユーザーは、実験に用いられた製造条件と得られた状態情報との組み合わせ(以下「既知情報」という。)を複数判定装置10に入力する。この場合、製造条件は説明変数であり、状態情報は目的変数である。判定装置10は、入力された既知情報に基づいて、『より好ましいめっきを実現できそう』且つ『まだ探索しきれてなさそう』な製造条件を判定する。このような判定は、例えばベイズ最適化を適用することによって実現されてもよい。
【0017】
ユーザーは、判定装置10によって判定された新たな製造条件に基づいて、めっきを実際に製造する実験(以下「二次実験」という。)を行う。ユーザーは、初期実験の結果と二次実験の結果とに基づいて、めっきの製造条件を決定する。ユーザーは、初期実験の結果と二次実験によって得られた結果とを判定装置10に入力することによって、さらに新たな製造条件を取得してもよい。この場合、ユーザーは、判定装置10によって判定された新たな製造条件に基づいて、めっきを実際に製造する新たな二次実験を行う。ユーザーは、このような判定装置10による判定と二次実験とを複数回繰り返し実施してもよい。
【0018】
このような処理によって製造条件が決定されることによって、より好ましい製造条件を探索することが可能となる。
【0019】
[判定装置の詳細]
次に、判定装置10の詳細について説明する。
図1は、判定装置10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。判定装置10は、例えばスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピューター、ワークステーション、専用機器などの情報機器を用いて構成される。判定装置10は、操作部11、出力部12、記憶部13及び制御部14を備える。
【0020】
操作部11は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン、タッチパネル等の既存の入力装置を用いて構成される。操作部11は、ユーザーの指示を判定装置10に入力する際にユーザーによって操作される。操作部11は、入力装置を判定装置10に接続するためのインターフェースであっても良い。この場合、操作部11は、入力装置においてユーザーの入力に応じ生成された入力信号を判定装置10に入力する。操作部11は、マイク及び音声認識装置を用いて構成されてもよい。この場合、操作部11はユーザーによって発話された文言を音声認識し、認識結果の文字列情報を判定装置10に入力する。この場合、操作部11は音声の入力のみを行い、音声認識は制御部14によって実行されてもよい。操作部11は、ユーザーの指示を判定装置10に入力可能な構成であればどのように構成されてもよい。
【0021】
出力部12は、情報をユーザーが認知可能な形で出力する。出力部12は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置であってもよい。出力部12は、画像表示装置を判定装置10に接続するためのインターフェースであっても良い。この場合、出力部12は、画像データを表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。出力部12は、スピーカー等の音響を出力する装置であってもよい。出力部12は、スピーカーやヘッドホン等の音響出力装置を判定装置10に接続するためのインターフェースであってもよい。この場合、出力部12は、音響データを再生するための音響信号を生成し、自身に接続されている音響出力装置に音響信号を出力する。
【0022】
記憶部13は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部13は、制御部14によって使用されるデータを記憶する。記憶部13は、制御部14が処理を行う際に必要となるデータを記憶する。記憶部13は、例えば既知情報記憶部131及び製造条件記憶部132として機能する。
【0023】
既知情報記憶部131は、複数の既知情報を記憶する。既知情報記憶部131が記憶する既知情報は、例えばユーザーによって入力されたものであってもよいし、記憶媒体に記録されている既知情報が制御部14によって読み出されたものであってもよいし、インターネットや構内ネットワーク等の通信路を介して他の装置から受信されたものであってもよい。既知情報記憶部131に記録される既知情報は、どのような経路で取得されたものであってもよい。
製造条件記憶部132は、制御部14によって新たに得られた製造条件を記憶する。
【0024】
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリー(主記憶装置)とを用いて構成される。制御部14は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、既知情報取得部141及び条件判定部142として機能する。なお、制御部14の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0025】
以下、既知情報取得部141及び条件判定部142の処理の具体例について説明する。既知情報取得部141は、初期実験によって得られた既知情報と、二次実験によって得られた既知情報と、を取得する。既知情報取得部141は、例えば操作部11をユーザーが操作することによって判定装置10に入力された既知情報を取得してもよい。既知情報取得部141は、例えば判定装置10に接続された記録媒体から既知情報を読み出すことで既知情報を取得してもよい。既知情報取得部141は、例えば判定装置10と通信可能に接続された他の情報処理装置から既知情報を受信することで既知情報を取得してもよい。既知情報取得部141は、他の手段によって既知情報を取得してもよい。既知情報取得部141は、取得された既知情報を既知情報記憶部131に記録する。
【0026】
条件判定部142は、その時点で得られている既知情報の一部又は全部を用いて判定処理を行うことによって、『より好ましいめっきを実現できそう』且つ『まだ探索しきれてなさそう』な製造条件を判定する。条件判定部142は、例えばベイズ最適化を用いてこのような判定処理を行っても良い。以下、条件判定部142の処理の具体例について説明する。
【0027】
条件判定部142は、最初の判定処理では、初期実験で得られた既知情報を用いてガウス過程回帰を行う。条件判定部142は、ガウス過程回帰に基づいて複数の製造条件を判定結果として取得する。条件判定部142は、取得された判定結果が示す製造条件を、出力部12を介してユーザーに対して出力する。なお、使用される獲得関数はどのようなものであってもよい。例えば、Probability of Improvement(PI)、Expected Improvement(EI)、Lower Confidence Bound(LCB)などが使用されてもよい。
【0028】
図2は、判定装置10の処理の具体例を示すフローチャートである。まず、既知情報取得部141は、既知情報を取得する(ステップS101)。条件判定部142は、得られた既知情報に基づいて判定処理を行うことで、1又は複数の新たな製造条件を取得する(ステップS102)。条件判定部142は、取得された新たな製造条件をユーザーに対して出力する(ステップS103)。
【0029】
この後、ユーザーは、出力された新たな製造条件に基づいて二次実験を行うことで新たな既知情報を取得し、判定装置10に入力する。判定装置10は、二次実験で得られた新たな既知情報を取得し(ステップS101)、新たな既知情報を含む既知情報で判定処理を行う(ステップS102)。そして、条件判定部142は、取得された新たな製造条件をユーザーに対して出力する(ステップS103)。このような二次実験に係る処理が1回又は複数回繰り返し実行されることによって、新たな製造条件が得られる。
【0030】
以下、さらに具体的な例について説明する。以下の説明では、めっきの具体例として銅めっきを取り上げる。より具体的には、硫酸銅めっきを取り上げる。なお、銅めっきとして、シアン化銅めっきやシアン化銅ストライクめっきやピロリン酸銅めっき等のように他の態様の銅めっきが用いられても良い。
図3は、硫酸銅めっきの製造装置(実験装置)の具体例を示す図である。製造装置20には、マイナスの電極21と、プラスの電極22と、硫酸銅めっきを施す素地23と、めっき液24とが設けられている。この場合、既知情報取得部141は、説明変数の製造条件として、少なくとも以下の6つの情報を取得する。
・硫酸濃度(g/L)
・硫酸銅濃度(g/L)
・バブリング強度
・平均電流密度(電極21及び電極22に流れる電流の電流密度の平均値)
・電極間距離(電極21と電極22との間の距離)
・温度(めっき液24の温度)
【0031】
また、既知情報取得部141は、目的変数の状態情報として、めっき粗さSaの値を取得する。めっき粗さは、例えばSa以外にも他に粗さを示す指標であるSzやSdrを使用しても良いし、さらに他の指標が用いられてもよい。めっき粗さSaは、例えば得られた銅めっきの複数の測定点において測定された粗さSaの統計値として定義されてもよい。目的変数の状態情報として、Saの常用対数の統計値が用いられても良い。統計値の具体例として、中央値が用いられても良いし、平均値が用いられても良い。複数の測定点は、例えば素地23に対して施された銅めっきにおいて、所定の矩形領域内で、縦方向及び横方向にそれぞれ所定の間隔で設けられてもよい。縦方向における所定の間隔と、横方向における所定の間隔とは、異なる長さであってもよいし同じ長さであってもよい。例えば、縦7cm、横7cmの正方形の領域内で、縦方向及び横方向に同じ間隔で484点の測定点が設けられても良い。
【0032】
上述した具体的な説明変数及び目的変数を用いて、硫酸銅めっきを素地23に施す実験を行った。
図4は初期実験の実験結果を示す図である。ユーザーによって予め設定された35種類の製造条件それぞれについて実際に硫酸銅めっきを施した。そして、その硫酸銅めっきの表面において上記484点の測定点で粗さSaの値を測定し、測定結果の常用対数の中央値を目的変数として取得した。
図4の横軸は実験に付与された識別番号(以下「実験識別番号」という。)を示し、
図4の縦軸はその実験識別番号の実験で得られためっきにおける粗さSaの常用対数の上記中央値を示す。各実験識別番号で示される実験では、異なる製造条件で硫酸銅めっきが施されている。各製造条件は、例えばユーザーの過去の知見に基づいて設定されてもよい。
図4に示される初期実験では、35種類の製造条件で実験が行われた。
【0033】
図5は、二次実験の実験結果を示す図である。二次実験で用いられる製造条件は、いずれも判定装置10の判定結果として得られたものである。実験識別番号36~40における製造条件は、初期実験によって得られた35の既知情報に基づいて判定装置10よって判定された。実験識別番号41~45における製造条件は、初期実験によって得られた35の既知情報と、二次実験(36~40)によって得られた5の既知情報と、を合わせた合計40の既知情報に基づいて判定装置10よって判定された。実験識別番号46~50における製造条件は、初期実験によって得られた35の既知情報と、二次実験(36~45)によって得られた10の既知情報と、を合わせた合計45の既知情報に基づいて判定装置10よって判定された。この一連の実験例では、合計50回の実験が実施され、予備実験の実験識別番号29の実験と、二次実験の実験識別番号40の実験と、において特に良い目的変数が得られている。
【0034】
図5には、比較対象としてランダムに得られた製造条件を用いて15回の実験を行った実験結果も示されている。ランダムに得られた製造条件に比べて、判定装置10によって得られた製造条件を用いることによって全体としてより良い目的変数が得られていることがわかる。
図5において縦方向に延びる帯状の領域は、回帰予測のうちプラスマイナス1σの分散の値を示している。
【0035】
図6は、上述した全50回の実験において使用された製造条件の具体例を示す図である。
図6の左は硫酸銅濃度を示し、
図6の右は硫酸濃度を示す。それぞれの図において、横軸は濃度を示し、縦軸は目的変数(粗さSaの常用対数の中央値)を示している。一般的に、各めっきの製造条件において推奨される値の範囲がある。例えば硫酸銅濃度であれば50~150g/Lの間に推奨される値の範囲があり、硫酸濃度であれば150~2100g/Lの間に推奨される値の範囲がある。一方で、判定装置10によって出力された製造条件には、
図6からも明らかなようにその推奨される値の範囲からはずれた値も多く含まれている。しかも、これらの値を用いた実験では、良い目的変数が得られたものもある。このように、判定装置10を用いて製造条件を判定することによって、従来の知見(推奨される値の範囲)から外れた製造条件であって、より良い結果(粗さ)が得られる製造条件を取得することができた。従来の知見から外れた製造条件は、通常はユーザーが決定するときに除外してしまう可能性が高い。このような製造条件を得ることができたことも一つの大きな効果である。
【0036】
なお、
図6に示される製造条件の具体例では、各値は予め定められた複数の候補値の中から選択する形で製造条件が定義されている。例えば、製造条件として上記6つの情報の組み合わせとして4320通りの組み合わせを定義し、その中から製造条件を得ている。ただし、製造条件の取得方法はこのような方法に限定される必要はない。このような場合であっても、4320通り全てを実験することなく、例えば上記のように50通りについて実験を行うことによって十分によい結果を得ることができ、効率的に実験条件の傾向をつかむことができた。
【0037】
図7は、本実施形態に適用される情報処理装置90のハードウェア構成例の概略を示す図である。情報処理装置90は、プロセッサー91、主記憶装置92、通信インターフェース93、補助記憶装置94、入出力インターフェース95及び内部バス96を備える。プロセッサー91、主記憶装置92、通信インターフェース93、補助記憶装置94及び入出力インターフェース95は、内部バス96を介して互いに通信可能に接続される。情報処理装置90は、例えば判定装置10に適用されてもよい。この場合、例えば操作部11及び出力部12は入出力インターフェース95を用いて構成されてもよい。例えば記憶部13は補助記憶装置94を用いて構成されてもよい。また、制御部14は、プロセッサー91及び主記憶装置92を用いて構成されてもよい。
【0038】
(変形例)
判定装置10に代えて判定システム100が用いられても良い。
図8は、判定システム100の構成例を示す図である。判定システム100は、端末装置30及び判定装置40を含む。端末装置30と判定装置40とは、ネットワーク70を介して通信可能に接続される。ネットワーク70は、無線通信を用いたネットワークであってもよいし、有線通信を用いたネットワークであってもよい。ネットワーク70は、例えばインターネットを用いて構成されてもよいし、ローカルエリアネットワーク(LAN)を用いて構成されてもよい。ネットワーク70は、複数のネットワークが組み合わされて構成されてもよい。
【0039】
端末装置30は、通信装置及びユーザーインターフェースを有した情報処理装置である。端末装置30は、例えばスマートフォンやタブレットやパーソナルコンピューター等の情報処理装置を用いて構成されてもよい。判定装置40は、上述した判定装置10と同様の構成を有し、さらに通信装置を有する。ユーザーは、上述した操作部11及び出力部12に関しては、端末装置30を用いる。操作部11に入力された既知情報は、ネットワーク70を介して端末装置30から判定装置40へ送信される。判定装置40は、ネットワーク70を介して受信した既知情報を用いて判定処理を行う。判定装置40は、判定結果を示す情報を、ネットワーク70を介して端末装置30へ送信する。端末装置30は、ネットワーク70を介して受信した判定結果をユーザーに提示する。この場合、判定装置40は複数の情報処理装置を用いて実装されてもよい。例えば、判定装置40はクラウドで実装されてもよい。
【0040】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0041】
100…判定システム, 10…判定装置, 11…操作部, 12…出力部, 13…記憶部, 131…既知情報記憶部, 132…製造条件記憶部, 14…制御部, 141…既知情報取得部, 142…条件判定部, 21…マイナス電極, 22…プラス電極, 23…素地, 24…めっき液