(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145546
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】クロムめっき液の精製装置および精製方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/22 20060101AFI20241004BHJP
B01J 39/04 20170101ALI20241004BHJP
B01J 39/18 20170101ALI20241004BHJP
B01J 39/20 20060101ALI20241004BHJP
B01J 47/012 20170101ALI20241004BHJP
B01J 47/02 20170101ALI20241004BHJP
B01J 49/53 20170101ALI20241004BHJP
B01J 49/60 20170101ALI20241004BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
C25D21/22 G
B01J39/04
B01J39/18
B01J39/20
B01J47/012
B01J47/02
B01J49/53
B01J49/60
C02F1/42 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057943
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】591065549
【氏名又は名称】福岡県
(71)【出願人】
【識別番号】523120856
【氏名又は名称】有限会社深田ハードクローム
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】中野 賢三
(72)【発明者】
【氏名】古賀 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】深田 博志
【テーマコード(参考)】
4D025
【Fターム(参考)】
4D025AA10
4D025AB21
4D025AB22
4D025BA08
4D025BA22
4D025BB02
(57)【要約】
【課題】大掛かりな設置スペースや配管工事等が不要で、かつ、多くのクロムめっき液を処理することができる可搬型のクロムめっき液の精製装置を提供する。
【解決手段】不純物金属イオンを含むクロムめっき液を精製する可搬型の精製装置1は、陽イオン交換樹脂が充填された樹脂充填層を備えたイオン交換樹脂塔110と、酸が収容されたタンク40と、クロムめっき液をイオン交換樹脂塔110に供給するめっき液送液経路と、水をイオン交換樹脂塔110に供給する送水経路と、ガスをイオン交換樹脂塔110に供給するガス吹き込み経路と、酸をイオン交換樹脂塔110に供給する酸送液経路と、イオン交換樹脂塔110からクロムめっき液、水、ガスおよび酸を排出する排出経路と、台車120a、120bとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物金属イオンを含むクロムめっき液を精製する可搬型の精製装置であって、
前記精製装置は、
不純物金属イオンを除去するための陽イオン交換樹脂が充填された樹脂充填層を備えたイオン交換樹脂塔と、
前記樹脂充填層を再生するための酸が収容されたタンクと、
クロムめっき浴内の前記クロムめっき液を、前記イオン交換樹脂塔に供給するめっき液送液経路と、
水を、前記イオン交換樹脂塔に供給する送水経路と、
ガスを、前記イオン交換樹脂塔に吹込むガス吹き込み経路と、
前記タンクに収容された前記酸を、前記イオン交換樹脂塔に供給する酸送液経路と、
前記クロムめっき液、前記水、前記ガスおよび前記酸を、前記イオン交換樹脂塔から排出する排出経路と、
前記精製装置を移動させるための台車と、
を有する、精製装置。
【請求項2】
前記ガス吹込み経路が、前記樹脂充填層中にまたは前記樹脂充填層の下方からガスを吹き込む第1のガス吹き込み経路と、前記樹脂充填層の上方からガスを吹き込む第2のガス吹き込み経路とを有し、
前記排出経路が、前記第1のガス吹き込み経路から吹き込まれたガスを、前記樹脂充填層の上方を通して前記イオン交換樹脂塔の外に排出する排出経路と、前記第2のガス吹き込み経路から吹き込まれたガスを、前記樹脂充填層を通して前記イオン交換樹脂塔の外に排出する排出経路とを有する、請求項1に記載の精製装置。
【請求項3】
前記陽イオン交換樹脂の充填量が、45~200Lである、請求項1または2に記載の精製装置。
【請求項4】
前記めっき液送液経路、前記送水経路、前記ガス吹込み経路、前記酸送液経路および前記排出経路にバルブが設けられており、1以上の前記バルブの開閉を自動で制御するための制御ユニットを有する、請求項1または2に記載の精製装置。
【請求項5】
前記タンクの容積は、前記樹脂充填層の体積に対して2倍以上である、請求項1または2に記載の精製装置。
【請求項6】
不純物金属イオンを含むクロムめっき液を精製するクロムめっき液の精製方法であって、
前記クロムめっき液を陽イオン交換樹脂が充填された樹脂充填層を有するイオン交換樹脂塔に通液し、精製したクロムめっき液を得るめっき液精製処理と、前記めっき液精製処理後の前記陽イオン交換樹脂を再生する樹脂再生処理と、を行うものであり、
前記樹脂再生処理が、
前記イオン交換樹脂塔に水を供給した後、撹拌して前記陽イオン交換樹脂を洗浄するバッチ式の水洗工程と、
前記水洗工程後の前記イオン交換樹脂塔に酸を供給した後、撹拌して前記陽イオン交換樹脂を再生するバッチ式の再生工程とを有する、クロムめっき液の精製方法。
【請求項7】
請求項1に記載の精製装置を用いて、不純物金属イオンを含むクロムめっき液を精製するクロムめっき液の精製方法であって、
前記クロムめっき液を前記イオン交換樹脂塔に通液し、精製したクロムめっき液を得るめっき液精製処理と、前記めっき液精製処理後の前記陽イオン交換樹脂を再生する樹脂再生処理とを行うものであり、
前記樹脂再生処理が、
前記イオン交換樹脂塔に水を供給した後、撹拌して前記陽イオン交換樹脂を洗浄するバッチ式の水洗工程と、
前記水洗工程後の前記イオン交換樹脂塔に酸を供給した後、撹拌して前記陽イオン交換樹脂を再生するバッチ式の再生工程とを有する、クロムめっき液の精製方法。
【請求項8】
前記水洗工程における撹拌および前記再生工程における撹拌が、ガスをバブリングさせることで行われる、請求項6または7に記載の精製方法。
【請求項9】
前記再生工程における洗浄時間は、1回あたり5~60分である、請求項6または7に記載の精製方法。
【請求項10】
前記水洗工程および前記再生工程は、それぞれ連続して2回以上行われる、請求項6または7に記載の精製方法。
【請求項11】
前記水洗工程が連続して2回以上行われ、1回目の水洗工程にて排出される廃液を、前記クロムめっき液が収容されたクロムめっき浴に戻す、請求項6または7に記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロムめっき液の精製装置および精製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロムめっき液は、めっき作業を繰り返すに従って、めっきを施される基材から溶出した鉄イオンや銅イオンなどの不純物金属イオンが蓄積していく。不純物金属イオンが管理値以上に蓄積すると、めっきの光沢範囲が狭くなるなどめっき品質に悪影響を及ぼすため、クロムめっき液は、不純物金属イオンの除去が必要となる。
【0003】
クロムめっき液の精製方法やクロム廃液の処理方法として、主に、隔膜電解法とイオン交換樹脂法が知られている。隔膜電解法は、隔膜電解により陰極槽に集められた不純物金属イオンを陰極のpH上昇により水酸化物として沈殿除去する方法であるが、高濃度クロム酸に耐えうる電解膜が必要であり、また、電流効率が低いため精製に時間がかかるという問題がある。
【0004】
イオン交換樹脂法は、イオン交換樹脂により不純物金属イオンを吸着除去する方法であり、隔膜電解法に比べて処理効率が高い点で有効な方法である。このイオン交換樹脂法を行うイオン交換装置としては、プラント型、ボンベ(カートリッジ)型が知られている。
【0005】
プラント型のイオン交換装置は、大規模工場における大量の廃水処理などのために、工場内に据え付け設置されたイオン交換装置である。プラント型のイオン交換装置は、同じく工場内に設置された配管を通してめっき槽からイオン交換樹脂塔にクロムめっき液を通液して不純物金属イオンを吸着除去することが可能である。また、飽和した樹脂に、同じく工場内に設置された配管を通して酸を通液し、樹脂を再生することが可能である。
【0006】
プラント型のイオン交換装置に関するものとして、例えば、特許文献1には、クロムめっき浴またはクロメート浴中のCr(III)および不純物陽イオンを含有する劣化したクロムめっき液または劣化したクロメート液を精製するクロムめっき液またはクロメート液の精製装置であって、クロムめっき液またはクロメート液を循環可能に貯留する循環槽と、前記クロムめっき液またはクロメート液を循環させる循環手段と、循環される前記クロムめっき液またはクロメート液が脱液状態で通液される陽イオン交換樹脂塔と、陽イオン交換樹脂塔内に残留したクロムめっき液またはクロメート液を塔外に回収する回収手段と、を具備するクロムめっき液またはクロメート液の精製装置が開示されている。
【0007】
ボンベ型(カートリッジ型)のイオン交換装置は、主に低濃度のクロム廃水用として、イオン交換樹脂カートリッジに重金属を含む水を通液して、不純物イオンを吸着除去する方法である。
【0008】
ボンベ型のイオン交換装置を備えたクロムめっき液の処理に関するものとして、特許文献2には、輸送車両上に設けられた複数のイオン交換装置と、地上に設けられた老廃クロム溶液の貯槽と、前記車両上のイオン交換装置と地上の老廃溶液貯槽とを接続するフレキシブルホ-スと、前記車両上の複数のイオン交換装置を接続するフレキシブルホ-スと、前記複数のイオン交換装置に老廃クロム溶液を通液して精製されたクロム溶液を地上にて収容する貯槽と、前記老廃溶液を精製してイオン交換樹脂が飽和した車両上のイオン交換装置を再生する再生専門工場と、を有して成る老廃クロム溶液の精製再利用装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9-228069号公報
【特許文献2】特許第3816547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プラント型のイオン交換装置は、イオン交換装置及び配管の設備が大掛かりとなる。そのため、工場内の装置の設置スペース確保や、配管工事、設備費用の点から、実施条件が限られていた。
【0011】
ボンベ型のイオン交換装置の再生は、飽和したイオン交換装置を再生工場に輸送して行われている。そのため、輸送と処理費用がかかるという問題があった。また、ボンベ型のイオン交換装置は、樹脂容量50L程度と小型であるため、クロムめっき液から不純物をとるためには、ボンベ1本では不十分であった。さらに、イオン交換樹脂も高濃度クロム酸により酸化されやすく、徐々に交換容量が低下するため、クロムめっき液を処理する場合は、クロムめっき液を希釈し重金属除去を行った後に濃縮する方法が一般的であり、濃縮に時間と費用が掛かるという問題があった。
【0012】
特許文献2は、老廃溶液貯槽の老廃クロム溶液を、輸送車両上に搭載された複数のイオン交換装置に通液して精製するものであり、イオン交換装置の工場内への設置は不要である。しかし、複数のイオン交換樹脂塔を使用するため装置が大きく、やはりスペースが必要という問題があった。
【0013】
このように、従来の装置は、大掛かりな設置スペースが必要であったり、複数のイオン装置を備えた大掛かりなものであり、設置が不要で、かつ工場内の様々な場所のめっき浴を処理可能な、小型のものはこれまでになかった。
【0014】
本発明は、上記事情を鑑みてなされてものであり、大掛かりな設置スペースや配管工事等が不要で、かつ、多くのクロムめっき液を処理することができる、可搬型のクロムめっき液の精製装置を提供することを目的とする。また、本発明は、クロムめっき液の精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために、工場内の様々な場所のクロムめっき浴の近くに小型の装置を自由に移動させて処理することを着想した。さらに、多くのクロムめっき液を処理できるように、クロムめっき液の精製処理を行うイオン交換装置と、イオン交換樹脂の再生を行うユニットを組み合わせることを着想した。また、検討の過程で、小型なものとした場合、従来のように、飽和したイオン交換樹脂に酸を通液して樹脂を再生するのでは、樹脂に吸着した不純物の除去が不十分になりやすいということがわかり、これを解決するために、イオン交換樹脂に吸着した不純物を効率的に除去する方法を検討した。その結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0016】
本発明の精製装置は、
不純物金属イオンを含むクロムめっき液を精製する可搬型のクロムめっき液の精製装置であって、
前記クロムめっき液の精製装置は、
不純物金属イオンを除去するための陽イオン交換樹脂が充填された樹脂充填層を備えたイオン交換樹脂塔と、
前記樹脂充填層を再生するための酸が収容されたタンクと、
クロムめっき浴内の前記クロムめっき液を、前記イオン交換樹脂塔に供給するめっき液送液経路と、
水を、前記イオン交換樹脂塔に供給する送水経路と、
ガスを、前記イオン交換樹脂塔に吹込むガス吹込み経路と、
前記タンクに収容された前記酸を、前記イオン交換樹脂塔に供給する酸送液経路と、
前記クロムめっき液、前記水、前記ガスおよび前記酸を、前記イオン交換樹脂塔から排出する排出経路と、
前記精製装置を移動させるための台車と、
を有する。
【0017】
このように、可搬型の精製装置とすることで、工場内の様々な場所のクロムめっき浴の近くまで移動させて、クロムめっき液を処理することができる。
【0018】
また、その場で、イオン交換樹脂によるクロムめっき液の精製と、イオン交換樹脂の水洗と、酸によるイオン交換樹脂の再生を繰り返すことができ、可搬な大きさとしても、効率的にイオン交換樹脂を再生し、多くのクロムめっき液を精製することができる。
【0019】
本発明の精製装置は、ガス吹込み経路が、樹脂充填層中または樹脂充填層の下方からガスを吹き込む第1のガス吹き込み経路と、樹脂充填層の上方からガスを吹き込む第2のガス吹き込み経路とを有し、排出経路が、第1のガス吹き込み経路から吹き込まれたガスを、樹脂充填層の上方を通してイオン交換樹脂塔の外に排出する経路と、第2のガス吹き込み経路から吹き込まれたガスを、樹脂充填層を通してイオン交換樹脂塔の外に排出する経路とを有することが好ましい。
【0020】
このような構成とすることで、第1のガス吹き込み経路からガスを吹き込むことで樹脂再生時にバブリングによる撹拌が行えるため、効率的に陽イオン交換樹脂を洗浄し、再生することができる。また、第2のガス吹き込み経路からガスを吹き込むことで、樹脂充填層中に残存するクロムめっき液をガスにより押し出すことができるため、樹脂の劣化を抑制することができる。そのため、可搬な大きさの装置としても、めっき液精製処理と樹脂再生処理との繰り返しにより、より多くのクロムめっき液を処理することができる。また、少量の水や酸で、陽イオン交換樹脂を再生できるため、廃液量が少なくなり、環境負荷を低減でき、中小規模の工場であっても、工場内で廃液を処理しやすい。
【0021】
本発明の精製装置は、人力で移動可能であることが好ましい。そのため、陽イオン交換樹脂の充填量が、45~200Lであることが好ましい。陽イオン交換樹脂の充填量が小さすぎると、処理できるクロムめっき液の量が少なくなるため非効率であり、陽イオン交換樹脂の充填量が大きすぎると、人力で移動させることが困難となる。
【0022】
本発明の精製装置は、めっき液送液経路、送水経路、ガス吹込み経路、酸送液経路および排出経路にバルブが設けられており、1以上の前記バルブの開閉を自動で制御するための制御ユニットを有することが好ましい。このようにバルブの開閉を自動で行うことで、クロムめっき液の精製処理の操作と樹脂再生処理の操作とを容易に切り替えることができる。
【0023】
前記タンクの容積は、前記樹脂充填層の体積に対して2倍以上であることが好ましい。このような構成とすることで、酸による再生処理を連続して複数回繰り返すことができ、樹脂の再生率が向上する。
【0024】
本発明の精製方法は、
不純物金属イオンを含むクロムめっき液を精製するクロムめっき液の精製方法であって、
前記クロムめっき液を陽イオン交換樹脂が充填された樹脂充填層を有するイオン交換樹脂塔に通液し、精製したクロムめっき液を得るめっき液精製処理と、前記めっき液精製処理後の前記陽イオン交換樹脂を再生する樹脂再生処理と、を行うものであり、
前記樹脂再生処理が、
前記イオン交換樹脂塔に水を供給した後、撹拌して前記陽イオン交換樹脂を洗浄するバッチ式の水洗工程と、
前記水洗工程後の前記イオン交換樹脂塔に酸を供給した後、撹拌して前記陽イオン交換樹脂を再生するバッチ式の再生工程とを有する。
【0025】
このように、クロムめっき液の精製処理と樹脂再生処理とを行い、かつ、水洗工程および再生工程を、バッチ式で実施することで、クロムめっき液を精製した後、効率的に陽イオン交換樹脂を再生することができる。これにより、少量の水や酸で陽イオン交換樹脂を再生することができ、廃液量が少なくなるので、環境負荷が低減される。さらに、クロムめっき液の精製処理と樹脂再生処理とを交互に繰り返すことで、少量の陽イオン交換樹脂を用いた場合であっても、大量のクロムめっき液を精製することができる。本発明の精製方法によれば、クロムめっき液の精製処理と樹脂再生処理とを交互に繰り返しても、廃液量を低減できるため、中小規模の工場であっても、工場内で廃液を処理しやすい。
【0026】
本発明の精製方法は、可搬な大きさのイオン交換樹脂量を備えた装置であっても実行することができるため、本発明の精製装置は、本発明の精製方法を行う好適な装置である。
【0027】
本発明の精製方法は、水洗工程における撹拌および再生工程における撹拌が、ガスをバブリングさせることで行われることが好ましい。ガスをバブリングし撹拌させることで、精製装置を小型化しやすい。
【0028】
本発明の精製方法は、再生工程における洗浄時間が、1回あたり5~60分であることが好ましい。このような洗浄時間とすることで、イオン交換樹脂の再生効率がより向上し、めっき液精製時のクロムめっき液中の不純物除去の効率がより向上する。
【0029】
本発明の精製方法は、水洗工程および再生工程が、それぞれ連続して2回以上行われることが好ましい。連続して複数回洗浄することで、イオン交換樹脂の再生効率がより向上し、めっき液精製時のクロムめっき液中の不純物除去の効率がより向上する。
【0030】
本発明の精製方法は、水洗工程が連続して2回以上行われ、1回目の水洗工程にて排出される廃液を、クロムめっき液が収容されたクロムめっき浴に戻すことが好ましい。1回目の水洗工程にて排出される廃液は、クロム濃度が高い場合が多い。このクロム濃度が高い廃液をめっき浴に戻すことで、資源を再活用でき、廃水を削減でき、環境負荷が低減できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、大掛かりな設置スペースや配管工事等が不要で、かつ、多くのクロムめっき液を処理することができる、可搬型のクロムめっき液の精製装置が提供される。また、本発明によれば、クロムめっき液の精製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の精製装置の一例である精製装置1の外観写真である。
【
図3】精製装置1のイオン交換樹脂塔110を説明するための模式図である。
【
図5】精製装置1を用いためっき液精製処理P1を説明するための模式図である。
【
図6】めっき液除去工程S10を説明するための模式図である。
【
図7】精製装置1を用いた樹脂再生処理P2の水洗工程S20説明するための模式図であり、(A)は、水供給工程S21の水Wの流れを説明する模式図、(B)は、水撹拌工程S22のガスGの流れを説明する模式図、(C)は、水除去工程S23のガスGの流れを説明する模式図である。
【
図8】精製装置1を用いた樹脂再生処理P2の再生工程S30説明するための模式図であり、(A)は、酸供給工程S31の酸Aの流れを説明する模式図、(B)は、酸撹拌工程S32のガスGの流れを説明する模式図、(C)は、酸除去工程S23のガスGの流れを説明する模式図である。
【
図9】本発明の精製装置の別の形態である精製装置2の外観写真である。
【
図10】精製装置2を説明するための模式図である。
【
図12】参考例1の水洗する過程の洗浄液の様子を示す写真である。
【
図13】参考例1の洗浄液中のクロム濃度と洗浄回数の関係を示す図である
【
図14】その他の使用例2の洗浄回数における洗浄水中のクロム濃度をプロットした図である。
【
図15】その他の使用例3の洗浄回数における酸中のクロム濃度をプロットした図である。
【
図16】その他の使用例4の1回あたりの酸洗浄時間と酸中のクロム濃度との関係をプロットした図である。
【
図17】参考例2の通液時間における処理液中のFe(III)イオン、Cr(III)イオンの濃度をプロットした図である。
【
図18】参考例3の通液時間における処理液中のFe(III)イオン、Cr(III)イオンの濃度をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0034】
以下、
図1~
図10を参照して、本発明の精製装置について詳述する。
【0035】
[実施の形態1]
<クロムめっき液の精製装置>
図1は、精製装置1の外観写真、
図2は、精製装置1を説明するための模式図、
図3は、精製装置1のイオン交換樹脂塔110を説明するための模式図である。
図1、
図2に示す精製装置1は、第1の台車120a上に設けられた第1ユニット100aと、第2の台車120b上に設けられた第2ユニット100bとを有する。
図2に示すように、第1ユニット100aは、クロムめっき液Sを精製するためのイオン交換樹脂塔110と、めっき液送液経路R1と、送水経路R2と、ガス吹込み経路R3a、R3bと、酸送液経路R4aと、排出経路R5a~R5eとを有する。第2ユニット100bは、クロムめっき液Sを通液した後の陽イオン交換樹脂を再生させるための酸Aを収容するタンク40と、酸送液経路R4bとを有する。
【0036】
(イオン交換樹脂塔)
イオン交換樹脂塔110は、クロムめっき液S中の不純物金属イオンを除去するための陽イオン交換樹脂が充填された樹脂充填層111を有する。
図3に示すように、イオン交換樹脂塔110は、円筒部112aを有する筐体112を有する。円筒部112aの底面には支持板113が設けられ、支持板113上に陽イオン交換樹脂が充填され、樹脂充填層111を形成している。また、円筒部112a内の樹脂充填層111の上方には空間114があり、樹脂充填層111にガスGを吹込むことでバブリングできるようになっている。この上方の空間114には、クロムめっき液Sや水W、酸Aの液面の高さを検知するためのレベルセンサー115が取り付けられている。また、円筒部112a内の圧力調整のために、圧力計(図示せず)を取り付けることができる。
【0037】
(陽イオン交換樹脂)
陽イオン交換樹脂は、陽イオンとH+と交換することができる樹脂である。陽イオン交換樹脂としては、スチレン系、アクリル系、ハイドロゲル系の強酸性陽イオン交換樹脂などが挙げられる。また、陽イオン交換樹脂はゲル型であっても、ポーラス型であってもよいが、クロムめっき液中のFe(III)イオンの除去率を高めることができるので、ゲル型の陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。陽イオン交換樹脂の架橋度は、特に限定はないが、高架橋度のものが好ましく、例えば、8~20%や、10~16%、14~16%等が好ましい。陽イオン交換樹脂の粒径は、特に限定はないが、300~800μmが好ましく、300~500μmがより好ましい。
【0038】
陽イオン交換樹脂の充填量(樹脂充填層111の容積)は、45~200Lであることが好ましく、50~100Lであることがより好ましい。充填量が多すぎると、イオン交換樹脂塔が大きくなり、小型化・可搬が難しい。
【0039】
(タンク)
タンク40は、樹脂充填層111(陽イオン交換樹脂)を再生するための酸Aが貯留される容器である。
図2に示すように、精製装置1においては、タンク40は、イオン交換樹脂塔110が搭載された第1の台車120aとは異なる第2の台車120b上に搭載されている。酸は、硫酸または塩酸が用いられる。通常、酸Aは水溶液として用いられ、その濃度は、5~25vol%や、10~20vol%などとすることができる。
【0040】
タンク40の大きさ、小さすぎると、樹脂再生処理の際に、頻繁に補充が必要であり、非効率である。実施例にて後述するように、酸Aによるバッチ式の再生工程を複数回繰り返すことで、交換容量の回復率が高いものとなる。酸Aをタンク40に追加供給せずに、酸Aによるバッチ式の再生工程を複数回繰り返し実施できるため、タンク40の容積は樹脂充填層111の体積に対して2倍以上であることが好ましく、3倍以上がより好ましい。タンク40の大きさの上限は、可搬可能な範囲であればよいが、タンク40が大きすぎると、人力で移動させることが困難になる。そのため、樹脂充填層111に対するタンク40の容積比は、2~6が好ましく、3~5がより好ましい。
【0041】
(配管)
図2に示すように、精製装置1は、複数の配管を有し、これらの配管が、めっき液送液経路R1、送水経路R2、ガス吹込み経路R3a、R3b、酸送液経路R4a、R4bおよび排出経路R5a~R5eを構成する。
図3に示すように、イオン交換樹脂塔110に取り付けられた配管L50、L51およびL52は、それぞれ、筐体112の外部から内側に貫通して設けられている。配管L50は、液体またはガスの供給をするための配管であり、めっき液送液経路R1や、送水経路R2、ガス吹込み経路R3a、酸送液経路R4aの一部として機能する。配管L51は、ガスの供給、ガスの排出または液体の排出をするための配管であり、ガス吹込み経路R3bや排出経路R5aの一部として機能する。配管L52は、液体またはガスの排出をするための配管であり、排出経路R5bとして機能する。
【0042】
配管L50の下流側の端部50aは、樹脂充填層111内の下方に配置され、ノズルが取り付けられている。
図2に示すように、配管L50の上流側(筐体112の外側)は、液体が流れる配管L15と、ガスが通る配管L32に接続されている。配管L15の上流側は、クロムめっき液Sまたは水Wが流れる配管L14と酸Aが流れる配管L46に接続され、配管L14の上流側は、クロムめっき液Sが流れる配管L13と水Wが流れる配管L21に接続され、配管L13は、上流側でポンプP1を介して配管L12に接続されている。配管L46の上流側は、ホースH44と着脱可能であり、ホースH44を介して、第2ユニット100bの配管L42と接続されている。配管L42はポンプP2を介して、タンク40につながっている配管L41と接続されている。
【0043】
図3に示すように、イオン交換樹脂塔110の上部に取り付けられた配管L51は、筐体112の内側で3つに分岐し、それぞれの端部51a、51b、51cにはノズルが取り付けられている。端部51a、51b、51cは、樹脂充填層111から離隔して上方に配置されている。配管L51の筐体112の外側の端部は、
図2に示すように、ガスを供給するための配管L33と、液体またはガスを排出するための配管L53に接続されている。配管L33の上流側は、ガスが通る配管L32の上流側と合流して、配管L31に接続されている。
【0044】
図3に示すように、イオン交換樹脂塔110の下部に取り付けられた配管L52は、上流側が3つに分岐し、それぞれの端部52a、52b、52cが樹脂充填層111内の下方に配置されている。配管L52の下流側は、
図2に示すように、液体またはガスを排出するための配管L53の下流側と、配管L54および配管L61の上流側と接続されている。配管L54の下流側は、配管L71および配管L81と接続されている。
【0045】
(めっき液送液経路)
めっき送液経路は、めっき浴内のクロムめっき液をイオン交換樹脂塔に供給するための経路である。精製装置1において、めっき液送液経路R1は、配管L12、ポンプP1、配管L13、配管L14、配管L15および配管L50によって構成される。配管L12は、上流側の末端に接続部11を有し、ホースH10aを接続できるようになっている。このホースH10aの接続部11と接続されていない側の末端をクロムめっき液S中に配置し、ポンプP1を駆動させることで、クロムめっき液Sを送液できる。配管L13には、バルブV1が設けられており、バルブV1の開閉により、クロムめっき液Sの送液を制御できる。
【0046】
(送水経路)
送水経路は、水をイオン交換樹脂塔に供給するための経路である。精製装置1において、送水経路R2は、配管L21、配管L14、配管L15および配管L50によって構成される。配管L21は、上流側の末端に接続部20を有し、ホースH22を介して施設内の水道等の水供給設備(図示せず)と配管L21を接続し、水供給設備(図示せず)から水Wを送ることで、経路内を水Wが流れる。また、配管L21の経路内にはバルブV2が設けられており、バルブV2の開閉により、送水を制御できる。
【0047】
(ガス吹込み経路)
ガス吹込み経路は、ガスをイオン交換樹脂塔に供給するための経路である。ガスは、空気および/または窒素を用いることができる。精製装置1は、配管L31、配管L32および配管L50によって構成されるガス吹き込み経路R3a(第1のガス吹き込み経路)と、配管L31、配管L33および配管L51によって構成されるガス吹き込み経路R3b(第2のガス吹き込み経路)とを有する。ガス吹き込み経路R3aは、樹脂充填層111内の下方から樹脂充填層111にガスGを吹き込む経路であり、ガス吹き込み経路R3bは、樹脂充填層111の上方からガスGを吹き込む経路である。ガス吹き込み経路R3aとR3bは、上流側が同一の配管L31で構成されている。この配管L31は、上流側の末端に接続部30を有し、ホースH32を介してボンベなどのガス供給設備(図示せず)と配管L31を接続し、ガス供給設備(図示せず)からガスGを送ることで、経路内をガスGが流れる。配管L32、配管L33には、それぞれ、バルブV3a、バルブV3bが設けられており、これらのバルブの開閉により、ガスGの吹き込みを制御できる。
【0048】
(酸送液経路)
酸送液経路は、酸をイオン交換樹脂塔に供給するための経路である。精製装置1は、配管L46、配管L15および配管L50によって構成される酸送液経路R4a(下流側酸送液経路)と、配管L41、ポンプP2および配管L42によって構成される酸送液経路R4b(上流側酸送液経路)とを有する。配管L46は、上流側の末端に接続部45を有し、配管L42は、下流側の末端に接続部43を有し、ホースH44を介して酸送液経路R4aと酸送液経路R4bを接続し、ポンプP2を駆動することで、酸Aを送液できる。また、配管L46に設けられたバルブV4の開閉により、酸Aの送液を制御できる。
【0049】
(排出経路)
排出経路は、イオン交換樹脂塔から液体およびガスを排出するための経路である。すなわち、イオン交換樹脂塔から、クロムめっき液、水、酸およびガスを排出するための経路である。精製装置1において、排出経路は、樹脂充填層111の上方から排出する排出経路R5a(上側排出経路)と、樹脂充填層111の下方から排出する排出経路R5b(下側排出経路)と、めっき浴10に排出するための排出経路R5cと、廃水槽70に排出するための排出経路R5dと、酸廃液槽80に排出するための排出経路R5eとを有する。排出経路R5aは、配管L51および配管L53によって構成され、排出経路R5bは、配管L52によって構成され、排出経路R5cは、配管L61によって構成され、排出経路R5dは、配管L54および配管L71によって構成され、排出経路R5eは、配管L54および配管L81によって構成される。排出経路R5a、R5bの下流側は、排出経路R5c~R5eに接続されている。配管L52、配管L53、配管L61、配管L71および配管L81には、それぞれバルブが設けられている。供給側の経路(すなわち、めっき液送液経路R1、送水経路R2、ガス吹き込み経路R3a、R3b、酸送液経路R4a、R4b)内の流れに応じて、これらのバルブを制御することで、液体およびガスを排出することができる。
【0050】
[クロムめっき液の精製方法]
以下、精製装置1を用いて、不純物金属イオンを含むクロムめっき液を精製する精製方法について説明する。
【0051】
まず、台車120aと台車120bを押して、クロムめっき液Sが収容されためっき浴10の近くまで、第1ユニット100aと第2ユニット100bを移動させる。次に、ホースなどを利用して、第1ユニット100aと、めっき浴10、水供給手段およびガス供給手段とを接続し、第1ユニット100aと、第2ユニット100bと、めっき浴10、廃水槽70および酸廃液槽80とをそれぞれ接続する(
図1参照)。そして、めっき液精製処理と、樹脂再生処理とを交互に繰り返し行う。
【0052】
クロムめっき液Sの処理量は、陽イオン交換樹脂の充填量にもよるが、一般的なクロムめっき液Sでは、陽イオン交換樹脂の充填量の等倍~200倍の量(L)のクロムめっき液Sの処理が可能である。
【0053】
図4に、本発明の精製方法のフロー図を示す。
図4に示す精製方法は、めっき液精製処理P1と、樹脂再生処理P2とを交互に繰り返し行うものである。
【0054】
(めっき液精製処理P1)
めっき液精製処理P1は、クロムめっき液Sを、陽イオン交換樹脂が充填された樹脂充填層111を有するイオン交換樹脂塔110に通液し、精製したクロムめっき液を得る工程である。
【0055】
めっき液精製処理P1に供されるクロムめっき液Sは、不純物金属イオンを含む、無水クロム酸を主成分とするめっき液である。不純物金属イオンは、Fe(III)イオンやCr(III)イオン等である。これらの不純物金属イオンの濃度は特に限定されない。クロムめっき液中のFe(III)イオンとCr(III)イオンの濃度の管理値は、それぞれ10g/Lであり、本発明の精製方法は、クロムめっき液中のFe(III)イオン濃度やCr(III)イオン濃度を管理値以下とするために用いてもよいし、クロムめっき液中のFe(III)イオン濃度やCr(III)イオン濃度を管理値以下に維持するために用いてもよい。例えば、クロムめっき液Sは、Fe(III)イオンやCr(III)イオンが管理値以上の濃度である劣化クロムめっき液であってもよいし、Fe(III)イオンやCr(III)イオンが管理値より低い濃度(例えば、それぞれ1g/L以上10g/L未満など)のクロムめっき液であってもよい。また、クロムめっき液中の無水クロム酸の濃度は、100~400g/Lや、150g/L~300g/Lであり、本発明の精製方法では、このように無水クロム酸の濃度が高いクロムめっき液を希釈せずに、そのまま、クロムめっき液Sとして用いることができる。
【0056】
図5は、精製装置1を用いためっき液精製処理P1を説明するための模式図である。なお、
図5では、精製装置1の第1ユニット100aの水送液経路R2、ガス吹き込み経路R3a、R3b、酸送液経路R4a、排出経路R5b、R5d、R5e、台車120aおよび第2ユニット100bを省略して記載している。
【0057】
図5に示すように、めっき液精製処理P1では、精製装置1のめっき液送液経路R1の配管L12の接続部11にホースH10aが接続され、ホースH10aの接続部11と接続されていない側の末端がクロムめっき浴10内のクロムめっき液S中に配置されている。また、精製装置1の配管L61の下流側の末端の接続部62にホースH10bが接続され、ホースH10bの接続部62と接続されていない側の末端がクロムめっき浴10内のクロムめっき液S中に配置されている。
【0058】
めっき液精製処理P1では、
図5に示すように、バルブV1、V5a、V6のバルブを開き、その他のバルブを閉じ、ポンプP1を駆動することで、クロムめっき液Sを循環させる。クロムめっき液Sは、ホースH10a、めっき液送液経路R1を経てイオン交換樹脂塔110に供給され、イオン交換樹脂塔110内の樹脂充填層111(陽イオン交換樹脂)と接触した後、排出経路R5a、R5cおよびホースH10bを経てクロムめっき浴10に戻される。このように、クロムめっき液Sを循環させることで、クロムめっき液Sが樹脂充填層111と接触するときに、クロムめっき液S中のFe(III)イオンやCr(III)イオンなどの不純物が陽イオン交換樹脂に吸着され、除去されるため、クロムめっき浴10には、Fe(III)イオンやCr(III)イオンの濃度が低減した精製されたクロムめっき液が戻される。
【0059】
1回のめっき液精製処理P1の処理時間(クロムめっき液Sを循環させる時間)は、ポンプ等の送液手段の能力や送液速度にもよるが、0.5時間~3時間が好ましく、0.75~1.5時間がより好ましい。1回の処理時間が長すぎると陽イオン交換樹脂が飽和してしまうため、処理時間を長くしても不純物を除去することができなくなる。一方、1回の処理時間が短すぎると非効率である。また、陽イオン交換樹脂の吸着容量の80~85%の吸着量となった段階で、樹脂再生処理P2を行うことが好ましい。陽イオン交換樹脂の吸着容量の飽和点に達する前に樹脂再生処理P2を行うことで、最終的な吸着量を多くすることができる。
【0060】
送液速度は、クロムめっき液S中の不純物イオン、特にFe(III)イオンの濃度に応じて適宜調整すればよく、100~1000L/hが好ましい。送液速度が速すぎると、陽イオン交換樹脂に不純物が吸着されにくかったり、装置負荷が大きくなるため好ましくない。また、送液速度が低すぎると非効率である。
【0061】
(樹脂再生処理P2)
樹脂再生処理P2は、めっき液精製処理P1後の陽イオン交換樹脂を再生する工程である。
図4に示す樹脂再生処理P2は、めっき液除去工程S10と、水洗工程S20と、再生工程S30とを含む。
【0062】
(めっき液除去工程S10)
めっき液除去工程S10は、めっき液精製処理P1の後に、樹脂充填層111内に残ったクロムめっき液SをガスGによって押し出す工程である。
図6は、めっき液除去工程S10を説明するための模式図である。なお、
図6では、精製装置1の第1ユニット100aのめっき液送液経路R1、水送液経路R2、ガス吹き込み経路R3a、酸送液経路R4a、排出経路R5a、R5d、R5e、台車120aおよび第2ユニット100bを省略して記載している。
【0063】
めっき液除去工程S10では、
図6に示すように、ガス吹き込み経路の配管L31は、ホースH32を介し、ガス供給設備(図示せず)に接続されている。バルブV3b、V5b、V6を開き、その他のバルブを閉じ、ガスGを送る。これにより、ガス吹き込み経路R3bを経てイオン交換樹脂塔110の上方からガスGが吹き込まれ、めっき液精製処理P1の後に樹脂充填層111中に残ったクロムめっき液Sを、樹脂充填層111の下方から排出経路R5b、R5cを経てクロムめっき浴10に押し出すことができる。
【0064】
(水洗工程S20)
水洗工程S20は、イオン交換樹脂塔110に水Wを供給した後、撹拌して陽イオン交換樹脂を洗浄するバッチ式の洗浄工程であり、水供給工程S21と、水撹拌工程S22と、水除去工程S23とを含む。
【0065】
図7は、精製装置1を用いた樹脂再生処理P2の水洗工程S20説明するための模式図であり、(A)は、水供給工程S21の水Wの流れを説明する模式図、(B)は、水撹拌工程S22のガスGの流れを説明する模式図、(C)は、水除去工程S23のガスGの流れを説明する模式図である。なお、
図7では、精製装置1の第1ユニット100aのめっき液送液経路R1、酸送液経路R4a、排出経路R5c、R5e、台車120aおよび第2ユニット100bを省略して記載している。
【0066】
水洗工程S20では、
図7に示すように、精製装置1の送水経路R2は、ホースH22を介して、施設内の水道等の水供給設備(図示せず)に接続されている。また、精製装置1の配管L71の下流側の末端の接続部72にホースH70bが接続され、ホースH70bの接続部72と接続されていない側の末端が廃水槽70に配置されている。また、ガス吹き込み経路の配管L31は、ホースH32を介し、ガス供給設備(図示せず)に接続されている。
【0067】
(水供給工程W21)
水供給工程S21は、イオン交換樹脂塔110に水Wを供給する工程である。水供給工程S21では、
図7(A)に示すように、V2、V5a、V7のバルブを開き、その他のバルブを閉じ、水供給手段(図示せず)から水Wを送る。水Wは、送水経路R2からイオン交換樹脂塔110に供給される。水Wは、樹脂充填層111の容積に対して1倍以上を供給することが好ましく、レベルセンサー115(
図2参照)によって水位を検知し、水面が樹脂充填層111の上面よりも上の所定の高さとなったら水Wの供給を停止する。
【0068】
なお、水Wの供給は、予め時間を決めておいて、所定の時間、水Wを供給するようにしてもよい。
【0069】
(水撹拌工程S22)
水撹拌工程S22は、供給された水Wと陽イオン交換樹脂とを撹拌して陽イオン交換樹脂を洗浄する工程である。水撹拌工程S22では、
図7(B)に示すように、V3a、V5a、V7のバルブを開き、その他のバルブを閉じ、ガスGを送る。ガス吹き込み経路R3aを介して、ガスGをイオン交換樹脂塔110の樹脂充填層111内の下方から吹き込み、バブリングさせることで、樹脂充填層111(陽イオン交換樹脂)と水Wが撹拌され、洗浄される。吹き込まれたガスGは、排出経路R5a、R5dから廃水槽70に排出される。
【0070】
水撹拌工程S22の撹拌時間(ガスGを吹き込みバブリングさせる時間)は、0.5~60分が好ましく、1~20分がより好ましい。水撹拌工程S22の撹拌時間が短すぎると洗浄が不十分となりやすく、長すぎても、その効果は飽和する傾向にある。
【0071】
(水除去工程S23)
水除去工程S23は、樹脂充填層111から洗浄後の水WをガスGによって抜き出す工程である。水除去工程S23では、
図7(C)に示すように、バルブV3b、V5b、V7を開き、その他のバルブを閉じ、ガスGを送る。これにより、ガス吹き込み経路R3bを経てイオン交換樹脂塔110の上方からガスGが吹き込まれ、洗浄後の水Wを、樹脂充填層111の下方から排出経路R5b、R5dを経て廃水槽70に押し出すことができる。
【0072】
(水洗工程S20の回数)
水洗工程S20は、1回でもよいが、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、水供給工程S21、水撹拌工程S22および水除去工程S23を行った後に、再度、水供給工程S21、水撹拌工程S22および水除去工程S23の操作を繰り返すことが好ましい。一方で、回数が多すぎてもその効果は飽和するため、水洗工程S20は、2~5回繰り返すことが好ましく、3~4回繰り返すことがより好ましい。
【0073】
また、水洗工程S20を複数回行う場合、いずれも同じ排出経路としてもよいが、回数に応じて排出経路を切り替えることが好ましい。
【0074】
中でも、1回目の水洗工程S20では、水除去工程S23において除去される水W中のクロム濃度が高い傾向にあるため、1回目の水洗工程S20は、クロムめっき浴10に洗浄後の水Wを排出し、2回目以降の水洗工程S20は、廃水槽70に洗浄後の水Wを排出することが好ましい。このようにすることで、資源の有効活用ができ、廃水の量が削減されるため、環境負荷を低減させることができる。
【0075】
図7は、洗浄後の水Wを廃水槽70に押し出すものであるが、洗浄後の水Wをクロムめっき浴10に押し出す場合、水供給工程S21、水撹拌工程S22および水除去工程S23において、バルブV7を開く代わりにバルブV6を開く(バルブV7は閉じる)ようにすればよい。これにより、ガスGや水Wが、排出経路R5a、R5cおよび排出経路R5b、R5cを介してクロムめっき浴10に排出される。1回目の水洗工程S20でクロムめっき浴10に洗浄後の水Wを排出し、2回目以降の水洗工程S20で廃水槽70に洗浄後の水Wを排出するためには、1回目の水洗工程S20における排出経路は、バルブV6を開き、R5cを通る経路とし、2回目以降の水洗工程S20における排出経路は、バルブV7を開き、排出経路R5dを通る経路とすればよい。
【0076】
(再生工程S30)
再生工程S30は、イオン交換樹脂塔110に酸Aを供給した後、撹拌して陽イオン交換樹脂を再生するバッチ式の再生工程であり、酸供給工程S31と、酸撹拌工程S32と、酸除去工程S33とを含む。
【0077】
図8は、精製装置1を用いた樹脂再生処理P2の再生工程S30説明するための模式図であり、(A)は、酸供給工程S31の酸Aの流れを説明する模式図、(B)は、酸撹拌工程S32のガスGの流れを説明する模式図、(C)は、酸除去工程S33のガスGの流れを説明する模式図である。なお、
図8では、精製装置1の第1ユニット100aのめっき液送液経路R1、送水経路R2、排出経路R5c、R5d、台車120aおよび第2ユニット100bの台車120bを省略して記載している。
【0078】
再生工程S30では、
図8に示すように、精製装置1の酸送液経路R4bと酸送液経路R4aはホースH44を介して接続されている。また、精製装置1の配管L81の下流側の末端の接続部82にホースH80bが接続され、ホースH80bの接続部82と接続されていない側の末端が酸廃液槽80に配置されている。また、ガス吹き込み経路の配管L31は、ホースH32を介し、ガス供給設備(図示せず)に接続されている。
【0079】
(酸供給工程S31)
酸供給工程S31では、
図8(A)に示すように、V4、V5a、V8のバルブを開き、その他のバルブを閉じ、P2を起動し、タンク40に収容された酸Aを送る。酸Aは、酸送液経路R4b、ホースH44、酸送液経路R4aを経てイオン交換樹脂塔110に供給される。酸Aは、樹脂充填層111の容積に対して1倍以上を供給することが好ましく、レベルセンサー115(
図2参照)によって液面の高さを検知し、液面が樹脂充填層111の上面よりも上の所定の高さとなったら酸Aの供給を停止する。
【0080】
なお、酸Aの供給は、予め時間を決めておいて、所定の時間、酸Aを供給するようにしてもよい。
【0081】
(酸撹拌工程S32)
酸撹拌工程S32では、
図8(B)に示すように、V3a、V5a、V8のバルブを開き、その他のバルブを閉じ、ガスGを送る。ガス吹き込み経路R3aを介して、ガスGをイオン交換樹脂塔110の樹脂充填層111内の下方から吹き込み、バブリングさせることで、樹脂充填層111と酸Aが撹拌し、陽イオン交換樹脂を再生させる。吹き込まれたガスGは、排出経路R5a、R5eから酸廃液槽80に排出される。
【0082】
酸撹拌工程S32の撹拌時間(ガスGを吹き込みバブリングさせる時間)は、5~60分が好ましく、10~45分がより好ましい。酸撹拌工程S32の撹拌時間が短すぎると、樹脂の回復が不十分になりやすく、長すぎてもその効果は飽和する傾向にある。
【0083】
(酸除去工程S33)
酸除去工程S33は、樹脂充填層111から酸AをガスGによって抜き出す工程である。酸除去工程S33では、
図8(C)に示すように、バルブV3b、V5b、V8を開き、その他のバルブを閉じ、ガスGを送る。これにより、ガス吹き込み経路R3bを経てイオン交換樹脂塔110の上方からガスGが吹き込まれ、酸Aを、樹脂充填層111の下方から排出経路R5b、R5eを経て酸廃液槽80に押し出すことができる。排出された酸Aは、排水処理のpH調整剤として利用すれば、廃液量が減り、環境負荷を低減することができる。
【0084】
(再生工程S30の回数)
再生工程S30は、1回でもよいが、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、酸供給工程S31、酸撹拌洗浄工程S32および酸除去工程S33を行った後に、再度、酸供給工程S31、酸撹拌洗浄工程S32および酸除去工程S33の操作を繰り返すことが好ましい。一方で、回数が多すぎてもその効果は飽和するため、再生工程S30は、2~5回繰り返すことが好ましく、3~4回繰り返すことがより好ましい。
【0085】
また、再生工程S30を複数回行う場合、いずれも同じ排出経路としてもよいが、回数に応じて排出経路を切り替えることが好ましい。例えば、バルブV7とV8の開閉を制御し、1回目の再生工程S30は、廃水槽70に酸Aを排出し、2回目以降の再生工程S30は、酸廃液槽80に酸Aを排出するようにしてもよい。
【0086】
図4に示す精製方法では、上記のめっき液精製処理P1と、上記の樹脂再生処理P2とを1サイクルとして、めっき液精製処理P1と樹脂再生処理P2とが複数回行われる。繰り返し回数は、処理するクロムめっき液Sの量や不純物金属イオンの濃度応じて、適宜設定されるものであり、クロムめっきS中の不純物金属イオンが目的の濃度となるまで、めっき液精製処理P1と樹脂再生処理P2は交互に繰り返し行われる。
【0087】
[実施の形態2]
図9は、本発明の精製装置の別の形態である精製装置2の外観写真であり、
図10は、精製装置2を説明するための模式図である。なお、
図9、10において
図1~
図8と同じ構成部分は、
図1~
図8中の符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0088】
図9、
図10に示す精製装置2は、イオン交換樹脂塔110と、タンク40と、めっき液送液経路R1と、送水経路R2と、ガス吹き込み経路R3a、R3bと、酸送液経路R4と、排出経路R5a~R5eと、制御ユニット130と、台車120とを有する。精製装置1は、タンク40が、イオン交換樹脂塔110が搭載された台車120aと異なる台車120bに搭載されているのに対して、精製装置2は、タンク40が、イオン交換樹脂塔110と同一の台車120に搭載され、さらに、制御ユニット130を有する。
【0089】
精製装置2では、イオン交換樹脂塔110とタンク40とが同一の台車120に搭載されている。イオン交換樹脂塔110とタンク40は、バルブV4が設けられた配管L42bとポンプP2と配管L41とを介して接続され、配管L42b、ポンプP2および配管L41が酸送液経路R4を構成する。その他の経路(R1、R2、R3a、R3b、R5a~R5e)は、精製装置1と同じであり、めっき液送液経路R1と送水経路R2と酸送液経路R4は下流側で合流した後、ガス吹き込み経路R3aの下流側と合流している。排出経路R5aの上流側は、バルブの切り替え等によってガス吹き込み経路R3bの下流側にもなる。
【0090】
制御ユニット130は、各経路(R1、R2、R3a、R3b、R4およびR5a~R5e)内に設けられたバルブ(V1、V2、V3a、V3b、V4、V5a、V5b、V6、V7、V8)を制御するためのユニットであり、入力部131と制御部132とを有する。各経路内のバルブは、制御部132と接続されている。入力部131は、タッチパネルなどであり、入力部131を用いてバルブの開閉の情報を入力するとで、制御部132にこれらの情報が入力される。制御部132は、入力された情報に基づいて、経路内のバルブの開閉を制御する。
【0091】
精製装置2を用いたクロムめっき液Sの精製方法は、精製装置1を用いた精製方法と同様である。例えば、入力部131を用いて、
図4に示すフロー図となるようにめっき液精製処理P1と樹脂再生処理P2のバルブ操作を入力し、入力されたバルブ操作に従って、制御部132によりバルブの開閉を制御することで、クロムめっき液Sの精製を自動で行うことができる。
【0092】
以上、本発明の精製装置について、精製装置1、精製装置2を例として説明したが、本発明の精製装置はこれらに限定されない。例えば、精製装置2と同様に、精製装置1のバルブを制御ユニットにより自動制御してもよい。クロムめっき液Sや水W、酸Aは、樹脂充填層111内の下方に供給し樹脂充填層111の上方から排出する方式に限定されず、樹脂充填層111内の上方から供給し、樹脂充填層111の下方から排出する方式であってもよい。また、経路内に流量計や複数のバルブを設けてもよいし、それぞれの経路を独立した配管で設けてもよい。一方で、精製装置1、精製装置2のように、各経路の一部が同一の配管で構成されている方が、装置を小型化しやすい。また、めっき液送液経路や、送水経路、酸送液経路等の一部を共通の配管で構成し、この共通の配管に設けられたポンプにより、クロムめっき液や、水、酸等をイオン交換樹脂塔に供給してもよい。これにより、1つのポンプで、クロムめっき液や、水、酸等を送液できる。
【実施例0093】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
<実施例1>
図1に示す精製装置を用いて、劣化クロムめっき液(不純物濃度は、Fe(III)イオンが6.3g/L、Cr(III)イオンが1.5g/L)の精製を行った。
【0095】
イオン交換樹脂塔の構成は以下の通りである。
・円筒部112a:φ30cm、H110cm
・空間114:φ30cm、H40cm
・樹脂充填層111:φ30cm、H70cm(49L)
・陽イオン交換樹脂:室町ケミカル株式会社製、Muromac(登録商標)XSC-1628-H(ゲル型、架橋度16%、粒径315μm~1.25mm)
【0096】
300Lの劣化クロムめっき液を500L/hrで60分間循環させた。その後、エアー圧搾で樹脂中の液を除去し、樹脂量と同量の水を供給して1分間バブリングするバッチ式の水洗を3回行った。次いで、エアー圧搾で樹脂中の液を除去し、樹脂量と同量の10%硫酸を供給して15分間バブリングするバッチ式の再生処理(酸洗浄)を3回行った。この劣化クロムめっき液の循環から酸洗浄までの操作を1サイクルとして、3回繰り返した。
【0097】
Fe除去量を求めたところ、めっき液循環1回目のFe除去量は321g、2回目のFe除去量は302g、3回目のFe除去量は304gであり、3回(180分)の合計で927gのFeを除去できた。
【0098】
<その他の使用例1>
図1に示す精製装置と同様の構成の精製装置用いた。樹脂容量は50Lとした。劣化クロムめっき液中の不純物濃度は、Fe(III)イオンが7.5g/L、Cr(III)イオンが1.3g/Lであった。300Lの劣化クロムめっき液を500L/hrで300分間循環させた。
【0099】
Fe除去量を求めたところ、めっき液循環60分時点のFe除去量は561g、120分時点のFe除去量は649g、180分時点のFe除去量は675gであり、300分時点のFe除去量は679gであった。
【0100】
<参考例1>:カラム実験
(カラム実験装置)
供給用チューブの両端(吸込口と吐出口)と、排出用チューブの吸込口に、テフロン(登録商標)メッシュを取り付けた。100mLのポリプロピレン製のガス洗浄瓶にイオン交換樹脂を充填した。送液ポンプを介して供給用チューブをガス洗浄瓶の吸込側に取り付け、排出用チューブをガス洗浄瓶の吐出側に取り付け、ガス洗浄瓶と劣化クロムめっき液を入れた容器と接続し、
図11の実験装置とした。
【0101】
(水洗方法の検討)
容器に500mLの劣化クロムめっき液を入れ、1L/hrで3時間、劣化クロムめっき液を循環させた。次いで、ガス洗浄瓶中の樹脂量の10倍量の水でイオン交換樹脂を洗浄した。水洗方法として、以下の(1)~(3)の方法を行い、水洗方法の違いによる水洗中のクロム濃度を調査した。
・水洗方法(1):洗浄水を単に流し込むフロー洗浄
・水洗方法(2):樹脂中に残っためっき液をエアーで除去し、その後、フロー洗浄。
・水洗方法(3):樹脂塔に残っためっき液をエアーで除去し、その後、バッチ式で洗浄水を充填し、洗浄。
【0102】
図12は、水洗する過程の洗浄液の様子を示す写真を、
図13は、洗浄液中のクロム濃度と洗浄回数の関係を示す図である。
図13に示すように、洗浄液中のクロム濃度が1000ppmを下回るまでの洗浄回数は、洗浄方法(1)が10回、洗浄方法(2)が5回、洗浄方法(3)が2回であり、洗浄方法(3)の洗浄効果が高かった。
【0103】
<その他の使用例2>
実施例1と同じ精製装置を用いて実験を行った。300Lの劣化クロムめっき液を450L/hrで1時間循環させた。次いで、エアー圧搾で樹脂中の液を除去し、樹脂量と同量の水を供給して5分間バブリングするバッチ式の水洗を1~3回行った。
【0104】
図14は、洗浄回数における洗浄水中のクロム濃度をプロットした図である。
図14に示すように、水洗を複数回繰り返すことで、樹脂中のクロムを大幅に低減できることがわかった。3回の洗浄で、全クロム濃度は、1000ppm以下となった。
【0105】
<その他の使用例3>
実施例1と同じ精製装置を用いて実験を行った。300Lの劣化クロムめっき液を450L/hrで1時間循環させた。その後、エアー圧搾で樹脂中の液を除去し、樹脂量と同量の水を供給して5分間バブリングするバッチ式の水洗を3回行った。次いで、エアー圧搾で樹脂中の液を除去し、樹脂量と同量の10%硫酸を供給して5分間バブリングするバッチ式の再生処理(酸洗浄)を1~5回行った。
【0106】
図15は、洗浄回数における酸中のクロム濃度をプロットした図である。
図15に示すように、酸洗浄により、樹脂中のFe(III)イオン、クロム(III)イオンを低減でき、3回の再生処理で、Fe(III)327.0gを除去できた。初期Fe吸着量は679gであったので、約50%の樹脂再生であった。3回の洗浄で、全クロム濃度は、1000ppm以下となった。
【0107】
<その他の使用例4>
実施例1と同じ精製装置を用いて実験を行った。300Lの劣化クロムめっき液を500L/hrで1時間循環させた。その後、エアー圧搾で樹脂中の液を除去し、樹脂量と同量の水を供給して1分間バブリングするバッチ式の水洗を3回行った。次いで、エアー圧搾で樹脂中の液を除去し、樹脂量と同量の10%硫酸を供給して5~15分間バブリングするバッチ式の再生処理(酸洗浄)を3回行った。
【0108】
図16は、1回あたりの酸洗浄時間と酸中のクロム濃度との関係をプロットした図である。1回あたり15分の酸洗浄処理では、約80%の樹脂再生ができた。
【0109】
<参考例2>
陽イオン交換樹脂(室町ケミカル株式会社製、Muromac(登録商標)XSC-1628-H)50Lを充填したカラムに、めっき槽内の劣化クロムめっき液(Fe(III)イオンが6.8g/dm
3、Cr(III)イオンが1.9g/dm
3)300Lを送液速度500L/hrでポンプにより強制循環させ、所定の時間にめっき槽のクロムめっき液をサンプリングし、液中のFeイオン、Cr(III)イオンの濃度を求めた。
図17に、通液時間における処理液中のFe(III)イオン、Cr(III)イオンの濃度をプロットした図を示す。
【0110】
<参考例3>
陽イオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製、DIAION(登録商標)PK228LH、ポーラス型、架橋度14%、粒径平均740μm)50Lを充填したカラムに、めっき槽内の劣化クロムめっき液(Fe(III)イオンが7.6g/dm
3、Cr(III)イオンが1.3g/dm
3)300Lを送液速度500L/hrでポンプにより強制循環させ、所定の時間にめっき槽のクロムめっき液をサンプリングし、液中のFeイオン、Cr(III)イオンの濃度を求めた。
図18に、通液時間における処理液中のFe(III)イオン、Cr(III)イオンの濃度をプロットした図を示す。
本発明の精製装置によれば、不純物金属イオンが蓄積したクロムめっき液を簡単に精製し、繰り返し使用することができるため、クロムめっきを行う産業分野において有効である。
前記ガス吹込み経路が、前記樹脂充填層中にまたは前記樹脂充填層の下方からガスを吹き込む第1のガス吹き込み経路と、前記樹脂充填層の上方からガスを吹き込む第2のガス吹き込み経路とを有し、
前記排出経路が、前記第1のガス吹き込み経路から吹き込まれたガスを、前記樹脂充填層の上方を通して前記イオン交換樹脂塔の外に排出する排出経路と、前記第2のガス吹き込み経路から吹き込まれたガスを、前記樹脂充填層を通して前記イオン交換樹脂塔の外に排出する排出経路とを有する、請求項1に記載の精製装置。
前記めっき液送液経路、前記送水経路、前記ガス吹込み経路、前記酸送液経路および前記排出経路にバルブが設けられており、1以上の前記バルブの開閉を自動で制御するための制御ユニットを有する、請求項1または2に記載の精製装置。
前記水洗工程が連続して2回以上行われ、1回目の水洗工程にて排出される廃液を、前記クロムめっき液が収容されたクロムめっき浴に戻す、請求項6または7に記載の精製方法。