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特開2024-145552学習装置、推定装置、学習方法、推定方法、プログラム及び超硬合金
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145552
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】学習装置、推定装置、学習方法、推定方法、プログラム及び超硬合金
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/42 20060101AFI20241004BHJP
   C22C 1/00 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N3/42 Z
C22C1/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057952
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 誠
(72)【発明者】
【氏名】山口 健志
(72)【発明者】
【氏名】ラムバール ギヨム
(72)【発明者】
【氏名】袖山 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】出村 雅彦
(57)【要約】
【課題】推定対象の硬さの推定の精度を向上させる技術を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様は、推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、を備える学習装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、
を備える学習装置。
【請求項2】
前記物質は、超硬合金である、
請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記超硬合金は、硬質相が炭化タングステンであり、結合相がコバルト、ニッケル又は鉄である、
請求項2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記組織写真は、走査電子顕微鏡によって得られた画像である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の学習装置。
【請求項5】
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、を備える学習装置、によって得られた学習済みの硬さ推定モデルである学習済み硬さ推定モデルを用いて、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する推定部、
を備える推定装置。
【請求項6】
前記推定部は、同一の試料から得られた複数の組織画像データと、各前記組織画像データについて試料上のどの位置を撮影した結果であるかを示す画像位置情報と、に基づき、前記画像位置情報が示す前記試料上の位置ごとに、前記学習済み硬さ推定モデルの実行により推定された硬さを示す硬さ分布情報を取得する、
請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御ステップ、
を有する学習方法。
【請求項8】
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御ステップ、を有する学習方法、によって得られた学習済みの硬さ推定モデルである学習済み硬さ推定モデルを用いて、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する推定ステップ、
を有する推定方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の学習装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項5又は6に記載の推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項11】
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、を備える学習装置、によって得られた学習済みの硬さ推定モデルである学習済み硬さ推定モデルを用いて、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する推定部、を備える推定装置、における前記推定部が実行する処理であって、同一の試料から得られた複数の組織画像データと、各前記組織画像データについて試料上のどの位置を撮影した結果であるかを示す画像位置情報と、に基づき、前記画像位置情報が示す前記試料上の位置ごとに、前記学習済み硬さ推定モデルの実行により推定された硬さを示す硬さ分布情報を取得する分布推定処理、の実行により、所望する硬さの分布であると推定された超硬合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、推定装置、学習方法、推定方法、プログラム及び超硬合金に関する。
【背景技術】
【0002】
WC-Co系硬質材料等の超硬合金は、その優れた硬度と耐摩耗性から、切削工具、鉱山用工具等の機械工具に広く用いられる。例えばWC-Co系硬質材料は、主にCo系結合相とWC系硬質相から構成されており、一般に液相焼結により作製される。WC-Co系硬質材料の硬さは、切削性能に大きな影響を及ぼしており、硬さと靭性のバランスを適切に制御することで、様々な切削領域で高効率な加工を可能としている。
【0003】
WC-Co系硬質材料の機械的特性は、WC結晶粒の大きさ、結合相量、組成、組織状態に強く依存することが知られており、種々の研究が進められている。硬さについては、各相の体積率、粒径、接着量から予測式が提案されており(非特許文献1及び2参照)、広い硬さ範囲である程度妥当であることが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lee, H. C., & Gurland, J. (1978). Hardness and deformation of cemented tungsten carbide. Materials Science and Engineering, 33(1), 125-133
【非特許文献2】M.Pang et al., A simplified hardness model for WC-Co-Cubic cemented carbides Journal of Mining and Metallurgy, (2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで提案されてきた超硬合金の硬さを予測する技術では、10%程度の誤差の範囲内で妥当であるものであった(非特許文献2)。しかしながら、実は、硬さが10%も異なると、超硬合金の用途は大きく変化してしまう。そのため、10%もの誤差を有する従来の技術を工業上利用することは難しかった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、推定対象の硬さの推定の精度を向上させる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、を備える学習装置である。
【0008】
本発明の一態様は、推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、を備える学習装置、によって得られた学習済みの硬さ推定モデルである学習済み硬さ推定モデルを用いて、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する推定部、を備える推定装置である。
【0009】
本発明の一態様は、推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御ステップ、を有する学習方法である。
【0010】
本発明の一態様は、推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御ステップ、を有する学習方法、によって得られた学習済みの硬さ推定モデルである学習済み硬さ推定モデルを用いて、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する推定ステップ、を有する推定方法である。
【0011】
本発明の一態様は、上記の学習装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0012】
本発明の一態様は、上記の推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0013】
本発明の一態様は、推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、を備える学習装置、によって得られた学習済みの硬さ推定モデルである学習済み硬さ推定モデルを用いて、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する推定部、を備える推定装置、における前記推定部が実行する処理であって、同一の試料から得られた複数の組織画像データと、各前記組織画像データについて試料上のどの位置を撮影した結果であるかを示す画像位置情報と、に基づき、前記画像位置情報が示す前記試料上の位置ごとに、前記学習済み硬さ推定モデルの実行により推定された硬さを示す硬さ分布情報を取得する分布推定処理、の実行により、所望する硬さの分布であると推定された超硬合金である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、推定対象の硬さの推定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の推定システムの概要を説明する説明図。
図2】実施形態における学習装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図3】実施形態における学習装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
図4】実施形態における推定装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図5】実施形態における推定装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
図6】実施形態における推定装置を用いた実験結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
図1は、実施形態の推定システム100の概要を説明する説明図である。推定システム100は、学習装置1と、推定装置2と、を備える。学習装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部11を備え、プログラムを実行する。
【0017】
制御部11は、推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習(以下「学習処理」という。)を行う。すなわち、制御部11は、硬さ推定モデルの学習を行う。なお学習は機械学習を意味する。
【0018】
なお、推定対象の物質は、例えば超硬合金である。推定対象の超硬合金は、例えばWC-Co系硬質材料である。WCは炭化タングステンを意味する。推定対象の超硬合金は、例えば硬質相が炭化タングステンであり、結合相がコバルト、ニッケル又は鉄である超硬合金である。
【0019】
制御部11は、学習の終了に関する所定の条件(以下「学習終了条件」という。)が満たされるまで学習を行う。学習終了条件が満たされた時点の硬さ推定モデルが推定装置2によって用いられる。学習終了条件が満たされた時点の数理モデルとは、いわゆる、学習済みの数理モデルである。そこで以下、学習終了条件が満たされた時点の硬さ推定モデルを学習済み硬さ推定モデル、という。
【0020】
学習終了条件は、学習の終了に関する条件であればどのような条件であってもよい。学習終了条件は、例えば、学習による学習対象の更新が所定の回数行われた、という条件である。学習終了条件は、例えば更新による学習対象の変化が所定の変化より小さい、という条件であってもよい。
【0021】
なお数理モデルの更新とは学習対象の数理モデルが有するパラメータの値を更新することを意味する。
【0022】
組織写真は、走査電子顕微鏡によって得られた画像であってもよいし、透過電子顕微鏡によって得られた画像であってもよいし、原子間力顕微鏡によって得られた画像であってもよいし、光学顕微鏡によって得られた画像であってもよい。組織写真のピクセル数は、例えば縦に896であり横に896の896×896画素数である。
【0023】
学習処理の実行に際して、制御部11は、推定対象の物質の組織写真の画像データと、推定対象の物質の硬さを示す情報(以下「硬さ情報」という。)との組を学習データとして取得する。以下、組織写真の画像データを組織画像データという。図1の例におけるデータD111は組織写真の一例である。図1におけるデータD110は学習データの一例である。
【0024】
制御部11は学習処理において、学習データの含む組織画像データに対する硬さ推定モデルの実行を行う。硬さ推定モデルの実行により推定対象の硬さが推定される。学習処理では、推定された硬さと学習データの含む硬さ情報の示す硬さとの違いを小さくするように、硬さ推定モデルが更新される。
【0025】
なお、硬さ推定モデルの学習は、例えば、有する全てのハイパーパラメータがユーザによって設定された数理モデルを用いた学習であってもよいし、例えば、ハイパーパラメータの一部が既に学習済みの数理モデルの値であるという条件を満たす数理モデルを用いた学習であってもよい。ハイパーパラメータの一部が既に学習済みの数理モデルの値であるという条件を満たす数理モデルを用いた学習は、例えば転移学習であってもよいし、例えばファインチューニングであってもよい。
【0026】
制御部11は、学習終了条件が満たされた場合に、学習終了条件が満たされた時点の硬さ推定モデルを学習済み硬さ推定モデルとして取得する。
【0027】
推定装置2は、学習装置1の得た学習済み硬さ推定モデルを用いて、自装置に入力された画像データが示す画像に写る物質の硬さを推定する。
【0028】
図2は、実施形態における学習装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。学習装置1は、上述したように、バスで接続されたCPU等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部11を備え、プログラムを実行する。学習装置1は、プログラムの実行によって制御部11、入力部12、通信部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0029】
より具体的には、プロセッサ91が記憶部14に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、学習装置1は、制御部11、入力部12、通信部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0030】
制御部11は、学習装置1が備える各種機能部の動作を制御する。制御部11は、例えば学習処理を実行する。
【0031】
入力部12は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部12は、これらの入力装置を学習装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部12は、学習装置1に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部12には、例えばユーザによる学習処理の開始の指示が入力される。入力部12には、例えば学習データが入力される。
【0032】
通信部13は、学習装置1を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部13は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば学習データの送信元の装置である。通信部13は、学習データの送信元の装置との通信によって、学習データを取得する。通信部13は、例えば制御部11の得た学習済み硬さ推定モデルを推定装置2に送信する。学習済み硬さ推定モデルを推定装置2に送信するとは、学習済み硬さ推定モデルのパラメータ及びハイパーパラメータの値を推定装置2に送信することを意味する。
【0033】
記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置(non-transitory computer-readable recording medium)を用いて構成される。記憶部14は学習装置1に関する各種情報を記憶する。記憶部14は、例えば入力部12又は通信部13を介して入力された情報を記憶する。記憶部14は、例えば学習処理で生じた各種情報を記憶する。記憶部14は、例えば硬さ推定モデルのパラメータの値を記憶する。
【0034】
出力部15は、各種情報を出力する。出力部15は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部15は、これらの表示装置を学習装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部15は、例えば入力部12又は通信部13に入力された情報を出力する。
【0035】
図3は、実施形態における学習装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。入力部12又は通信部13に学習データが入力され、入力された学習データを制御部11が取得する(ステップS101)。次に制御部11は、ステップS101で取得された学習データの含む組織画像データに対して硬さ推定モデルを実行する(ステップS102)。次に制御部11は、硬さ推定モデルによる推定の結果と、学習データの含む硬さ情報が示す硬さとの違いを小さくするように、所定の規則にしたがって、硬さ推定モデルを更新する(ステップS103)。
【0036】
次に制御部11は、学習終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS104)。学習終了条件が満たされない場合(ステップS104:NO)、ステップS101の処理に戻る。一方、学習終了条件が満たされた場合(ステップS104:YES)、処理が終了する。ステップS102~ステップS104の処理が学習処理の一例である。
【0037】
図4は、実施形態における推定装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。推定装置2は、バスで接続されたCPU等のプロセッサ93とメモリ94とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。推定装置2は、プログラムの実行によって制御部21、入力部22、通信部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0038】
より具体的には、プロセッサ93が記憶部24に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ94に記憶させる。プロセッサ93が、メモリ94に記憶させたプログラムを実行することによって、推定装置2は、制御部21、入力部22、通信部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0039】
制御部21は、推定装置2が備える各種機能部の動作を制御する。制御部21は、例えば学習済み硬さ推定モデルを実行する。
【0040】
入力部22は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部22は、これらの入力装置を推定装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部22は、推定装置2に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部22には、例えばユーザによる学習済み硬さ推定モデルの開始の指示が入力される。入力部22には、例えば学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データが入力される。
【0041】
通信部23は、推定装置2を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部23は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データの送信元の装置である。通信部23は、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データの送信元との通信によって、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データを取得する。外部装置は、例えば学習装置1である。通信部23は、学習装置1との通信によって、学習済み硬さ推定モデルを取得する。
【0042】
記憶部24は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置(non-transitory computer-readable recording medium)を用いて構成される。記憶部24は推定装置2に関する各種情報を記憶する。記憶部24は、例えば入力部22又は通信部23を介して入力された情報を記憶する。記憶部24は、例えば学習済み硬さ推定モデルの実行により生じた各種情報を記憶する。
【0043】
出力部25は、各種情報を出力する。出力部25は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部25は、これらの表示装置を推定装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部25は、例えば入力部22又は通信部23に入力された情報を出力する。
【0044】
図5は、実施形態における推定装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。入力部22又は通信部23に学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データが入力され、入力された画像データを制御部21が取得する(ステップS201)。次に制御部21は、ステップS201で取得された画像データに対して学習済み硬さ推定モデルを実行する(ステップS202)。ステップS202の実行により、ステップS201で得られた画像データが示す画像に写る物質の硬さが推定される。次に制御部21は、出力部25の動作を制御して、出力部25にステップS202で推定された硬さ、を示す情報を出力させる(ステップS203)。
【0045】
このように、制御部21は、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する。
【0046】
<実験結果>
図6は、実施形態における推定装置2を用いた実験結果の一例を示す図である。実験は、複数の試料に対して行われた。試料は超硬合金であった。実験において学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データは走査電子顕微鏡によって得られた画像(すなわちSEM画像)の画像データであった。なお、実験に用いられた学習済み硬さ推定モデルを得るための硬さ推定モデルの学習段階において、学習データの含む画像データはSEM画像の画像データであり、試料は超硬合金であった。また、SEM画像のピクセル数は、縦に896であり横に896の896×896画素数であった。
【0047】
実験では、試料ごとに、HRAの実測が行われた。また実験では、試料ごとに、推定装置2によるHRAの推定が行われた。したがって実験では、試料ごとにHRAの実測値とHRAの推定値とが得られた。推定値は推定装置2によって推定された値である。
【0048】
図6の横軸は実測されたHRAを示す。図6の縦軸は推定装置2によって推定されたHRAを示す。図6は、試料ごとに、HRAの実測値とHRAの推定値との対応関係を、エラーバーとともに示す。図6において直線D210は、HRAの実測値とHRAの推定値とが同一である試料のデータがプロットされる位置を示すグラフである。したがって、直線D210との違いが小さい実験結果ほど、推定装置2による推定の精度が高い結果である。
【0049】
ところで、非特許文献2に記載の技術等の従来の技術では、硬さの推定の精度は10%の誤差を含むものであった。一方、推定装置2の推定の結果は、図6が示すように数パーセント以内の誤差である。したがって、推定装置2による推定は、従来の技術と比較して高い推定の精度を有することを図6は示す。
【0050】
なお、実は、超硬合金の硬さは、数パーセントの違いで用途が大きく異なる。そのため、従来技術の場合には推定結果から超硬合金の用途を判定することは難しかった。一方、推定装置2を用いる場合、用途の決定の困難性が下がる。
【0051】
このように構成された学習装置1は、組織写真の画像データに基づいて硬さを推定する数理モデルの学習を行う。学習済みの数理モデルは、図6の結果が示すように、従来の技術の推定精度の限界であった10%の精度を超える数パーセント以内の誤差で、硬さを推定可能である。そのため、学習装置1は、推定対象の硬さの推定の精度を向上させることができる。
【0052】
また、このように構成された推定装置2は、学習装置1の得た学習済み硬さ推定モデルを用いて、推定対象の硬さの推定を行う。学習装置1の得た学習済み硬さ推定モデルの推定の精度は、図6の結果が示すように、従来の技術の推定精度の限界であった10%の精度を超える数パーセント以内の誤差で、硬さを推定可能である。そのため、推定装置2は、推定対象の硬さの推定の精度を向上させることができる。
【0053】
また、このように構成された推定システム100は学習装置1と推定装置2とを備える。そのため、推定システム100は、推定対象の硬さの推定の精度を向上させることができる。
【0054】
(適用例)
推定装置2は、例えば、検査対象の試料の硬さを検査する検査装置として用いられてもよい。
【0055】
(変形例)
なお、制御部21は、分布推定処理を実行してもよい。分布推定処理は、同一の試料から得られた複数の組織画像データと、各組織画像データについて試料上のどの位置を撮影した結果であるかを示す情報(以下「画像位置情報」という。)と、が入力された場合、に実行される。分布推定処理では、入力された複数の組織画像データそれぞれに対して、学習済み硬さ推定モデルが実行される。分布推定処理では、画像位置情報と、学習済み硬さ推定モデルの実行により得られた各組織画像データに対する推定結果とに基づき、硬さ分布情報が取得される。
【0056】
硬さ分布情報は、画像位置情報が示す試料上の位置ごとに、学習済み硬さ推定モデルの実行により推定された硬さを示す情報である。このように分布推定処理は、同一の試料から得られた複数の組織画像データと、画像位置情報と、に基づき、画像位置情報が示す試料上の位置ごとに、学習済み硬さ推定モデルの実行により推定された硬さを示す情報である硬さ分布情報を取得する処理、である。
【0057】
なお、ユーザは、分布推定処理の実行により所望する硬さの分布であると推定装置2によって推定された超硬合金を、推定装置2による推定のために生成した際の生成方法によって、さらに生成してもよい。
【0058】
なお、学習装置1及び推定装置2のそれぞれは、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いて実装されてもよい。この場合、制御部11及び制御部21が備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
【0059】
なお、学習装置1及び推定装置2の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0060】
なお制御部21は推定部の一例である。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0062】
(付記1)
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、
を備える学習装置。
【0063】
(付記2)
前記物質は、超硬合金である、
付記1に記載の学習装置。
【0064】
(付記3)
前記超硬合金は、硬質相が炭化タングステンであり、結合相がコバルト、ニッケル又は鉄である、
付記2に記載の学習装置。
【0065】
(付記4)
前記組織写真は、走査電子顕微鏡によって得られた画像である、
付記1~3のいずれか一項に記載の学習装置。
【0066】
(付記5)
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、を備える学習装置、によって得られた学習済みの硬さ推定モデルである学習済み硬さ推定モデルを用いて、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する推定部、
を備える推定装置。
【0067】
(付記6)
前記推定部は、同一の試料から得られた複数の組織画像データと、各前記組織画像データについて試料上のどの位置を撮影した結果であるかを示す画像位置情報と、に基づき、前記画像位置情報が示す前記試料上の位置ごとに、前記学習済み硬さ推定モデルの実行により推定された硬さを示す硬さ分布情報を取得する、
付記5に記載の推定装置。
【0068】
(付記7)
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御ステップ、
を有する学習方法。
【0069】
(付記8)
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御ステップ、を有する学習方法、によって得られた学習済みの硬さ推定モデルである学習済み硬さ推定モデルを用いて、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する推定ステップ、
を有する推定方法。
【0070】
(付記9)
付記1~4のいずれか一項に記載の学習装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【0071】
(付記10)
付記5又は6に記載の推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【0072】
(付記11)
推定対象の物質の組織写真の画像データに基づき、前記推定対象の硬さを推定する数理モデルである硬さ推定モデルを学習対象とする学習を行う制御部、を備える学習装置、によって得られた学習済みの硬さ推定モデルである学習済み硬さ推定モデルを用いて、学習済み硬さ推定モデルの実行対象の画像データとして得た画像データ、が示す画像に写る物質の硬さを推定する推定部、を備える推定装置、における前記推定部が実行する処理であって、同一の試料から得られた複数の組織画像データと、各前記組織画像データについて試料上のどの位置を撮影した結果であるかを示す画像位置情報と、に基づき、前記画像位置情報が示す前記試料上の位置ごとに、前記学習済み硬さ推定モデルの実行により推定された硬さを示す硬さ分布情報を取得する分布推定処理、の実行により、所望する硬さの分布であると推定された超硬合金。
【符号の説明】
【0073】
100…推定システム、 1…学習装置、 2…推定装置、 11…制御部、 12…入力部、 13…通信部、 14…記憶部、 15…出力部、 21…制御部、 22…入力部、 23…通信部、 24…記憶部、 25…出力部、 91…プロセッサ、 92…メモリ、 93…プロセッサ、 94…メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6