(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145557
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】皮膚貼付シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241004BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241004BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241004BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20241004BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20241004BHJP
A61F 13/0246 20240101ALI20241004BHJP
A61F 13/02 20240101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
B32B27/00 M
B32B7/022
C09J7/38
C09J175/04
C09J11/00
A61F13/02 310J
A61F13/02 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057962
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野村 彩英子
(72)【発明者】
【氏名】宮内 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳也
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01E
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK42
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4F100JL14
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4F100JL14E
4J004AA14
4J004AB01
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4J004CC02
4J004DB02
4J004FA09
4J040EF001
4J040HB10
4J040KA43
4J040LA06
4J040MB09
4J040NA02
(57)【要約】
【課題】キャリアシートが基材から剥がれやすくなり、かつ、皮膚貼付テープを伸縮させた際に皮膚貼付テープが変形したり、貼付テープを剥がす際に貼付テープがちぎれたりすることが抑えられる皮膚貼付シートを提供する。
【解決手段】貼付テープ13は、キャリアシート11に接する基材層21と、皮膚に対する有効成分22Aと粘着剤22Bとを含む粘着層22と、基材層21と粘着層22との間に位置し、5μm未満の厚さを有したバリア層23とを備える。貼付テープ13は、剥離シート12が粘着層22から剥がされた後に皮膚に貼り付けられる。キャリアシート11と基材層21との間におけるJIS Z 0237:2009に準拠した180°剥離強度が、550mN/25mm以下である。貼付テープ13において、JIS K 7162-1:2014に準拠した引張破断伸度が130%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアシートと、
剥離シートと、
前記キャリアシートと前記剥離シートとの間に位置する貼付テープと、を備え、
前記貼付テープは、
前記キャリアシートに接する基材層と、
皮膚に対する有効成分と粘着剤とを含む粘着層と、
前記基材層と前記粘着層との間に位置し、5μm未満の厚さを有したバリア層と、を備え、
前記貼付テープは、前記剥離シートが前記粘着層から剥がされた後に皮膚に貼り付けられ、
前記キャリアシートと前記基材層との間におけるJIS Z 0237:2009に準拠した180°剥離強度が、550mN/25mm以下であり、
前記貼付テープにおいて、JIS K 7162-1:2014に準拠した引張破断伸度が130%以上である
皮膚貼付シート。
【請求項2】
前記貼付テープにおいて、JIS K 7161-1:2004に準拠した100%伸長を2回連続で行った場合に、1回目の前記100%伸長におけるエネルギーに対する、2回目の前記100%伸長における前記エネルギーの低減率が70%以下であり、
前記エネルギーは、前記100%伸長によって得られた試験力と変位量との積分値である
請求項1に記載の皮膚貼付シート。
【請求項3】
前記有効成分は、親水性を有し、
前記基材層は、前記バリア層に接する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを含み、
JIS R 3257:1999の静滴法に準拠した接触角について、前記第2面に対して水滴を滴下したときの前記接触角に対する、前記水滴を滴下した時点から20秒後における前記接触角の低減率が25%以下である
請求項1または2に記載の皮膚貼付シート。
【請求項4】
前記バリア層は、合成樹脂製である
請求項1または2に記載の皮膚貼付シート。
【請求項5】
前記基材層は、ポリウレタン樹脂を含み、
前記粘着層は、ポリウレタン樹脂を含み、
請求項4に記載の皮膚貼付シート。
【請求項6】
前記キャリアシートにおいて前記基材層に接する表面は、ポリオレフィン樹脂から形成される
請求項5に記載の皮膚貼付シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮膚貼付シートに関する。
【背景技術】
【0002】
貼付シートの第1例は、柔軟なフィルム、薬剤非吸着層、粘着剤層、および、剥離ライナーを備えている。粘着剤層は、アクリル系粘着剤と有効成分とを含んでいる。有効成分は、エストラジオールおよびエストラジオールの誘導体の少なくとも一方、クロタミトン、および、オレイン酸である。貼付シートにおいて、フィルムと粘着剤層との間に薬剤非吸着層が位置し、これによって、フィルムおよび薬剤非吸着層から構成される支持体に、有効成分が吸着されることが抑えられる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
貼付シートの第2例は、支持フィルム、バリア層、および、粘着剤層を備えている。支持フィルムは、ウレタン系樹脂を含んでいる。バリア層は、エチレン‐ビニルアルコール共重合体を含む。粘着剤層は、油性添加剤を含んでいる。貼付シートでは、支持フィルムと粘着剤層との間にバリア層が位置するから、油性添加剤が支持フィルムに移行することが抑えられ、結果として粘着剤層中における油性添加剤の含有量が維持される(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-075537号公報
【特許文献2】特開2016-013993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、皮膚に貼り付けられる基材層には、皮膚に対する追従性を得ることを目的として、ポリウレタン樹脂が有する引張破断伸度のように高い引張破断伸度が要求される。一方、こうした基材層は、ポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂から形成されるキャリアシートに高い密着性も備えるため、貼付テープとキャリアシートとの積層体が皮膚に貼り付けられた状態からキャリアシートを剥がすことを困難にしている。
【0006】
また、バリア層は基材層よりも高い剛性を有する。そのため、バリア層と基材層との間において剛性に差が生じ、これによって、貼付テープを伸縮させた際に貼付テープが変形したり、貼付テープを皮膚から剥がず際に貼付テープがちぎれたりする場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための皮膚貼付テープは、キャリアシートと、剥離シートと、前記キャリアシートと前記剥離シートとの間に位置する貼付テープと、を備える。前記貼付テープは、前記キャリアシートに接する基材層と、皮膚に対する有効成分と粘着剤とを含む粘着層と、前記基材層と前記粘着層との間に位置し、5μm未満の厚さを有したバリア層と、を備える。前記貼付テープは、前記剥離シートが前記粘着層から剥がされた後に皮膚に貼り付けられる。前記キャリアシートと前記基材層との間におけるJIS Z 0237:2009に準拠した180°剥離強度が、550mN/25mm以下である。前記貼付テープにおいて、JIS K 7162-1:2004に準拠した引張破断伸度が130%以上である。
【0008】
上記皮膚貼付シートによれば、キャリアシートと基材層との間における180°剥離強度が550mN/25mm以下であるから、キャリアシートが基材層から剥がれやすくなる。また、バリア層の厚さが5μm未満であるから、貼付テープを伸縮させた際に貼付テープが変形すること、および、貼付テープを皮膚から剥がす際に貼付テープがちぎれることが抑えられる。
【0009】
上記皮膚貼付シートにおいて、前記貼付テープにおいて、JIS K 7161-1:2004に準拠した100%伸長を2回連続で行った場合に、1回目の前記100%伸長におけるエネルギーに対する、2回目の前記100%伸長における前記エネルギーの低減率が70%以下であり、前記エネルギーは、前記100%伸長によって得られた試験力と変位量との積分値であってよい。
【0010】
上記皮膚貼付シートによれば、1回目の100%伸長におけるエネルギーに対する2回目の100%伸長におけるエネルギーの低減率が70%以下であるから、バリア層を備える皮膚貼付シートであっても伸縮性を維持することが可能である。
【0011】
上記皮膚貼付シートにおいて、前記有効成分は、親水性を有し、前記基材層は、前記バリア層に接する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを含み、JIS R 3257:1999の静滴法に準拠した接触角について、前記第2面に対して水滴を滴下したときの前記接触角に対する、前記水滴を滴下した時点から20秒後における前記接触角の低減率が25%以下であってよい。
【0012】
上記皮膚貼付シートによれば、有効成分が粘着層から基材層に向けて移行することをバリア層が抑え、これによってキャリアシートと基材層との間の密着性が高まることが抑えられる。
【0013】
上記皮膚貼付シートにおいて、前記バリア層は、合成樹脂製であってよい。
上記皮膚貼付シートによれば、バリア層の剛性が高まることが抑えられる。
【0014】
上記皮膚貼付シートにおいて、前記基材層は、ポリウレタン樹脂を含み、前記粘着層は、ポリウレタン樹脂を含んでよい。
上記皮膚貼付シートによれば、粘着層に含まれる有効成分の移行を抑え、かつ、皮膚貼付シートの変形や皮膚貼付シートのちぎれを抑える実効性を高めることが可能である。
【0015】
上記皮膚貼付シートにおいて、前記キャリアシートにおいて前記基材層に接する表面は、ポリオレフィン樹脂から形成されてよい。
上記皮膚貼付シートによれば、基材層からキャリアシートが剥がれやすくなることの実効性を高めることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本開示の皮膚貼付テープによれば、キャリアシートが基材から剥がれやすくなり、かつ、皮膚貼付テープを伸縮させた際に皮膚貼付テープが変形したり、貼付テープを剥がす際に貼付テープがちぎれたりすることが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、皮膚貼付シートを示す断面図である。
【
図2】
図2は、皮膚貼付シートの物性値を評価した結果を示す表である。
【
図3】
図3は、比較例1の皮膚貼付シートにおける変位量と試験力との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例1の皮膚貼付シートにおける変位量と試験力との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例2の皮膚貼付シートにおける変位量と試験力との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施例3の皮膚貼付シートにおける変位量と試験力との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、比較例2の皮膚貼付シートにおける変位量と試験力との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例4の皮膚貼付シートにおける変位量と試験力との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例5の皮膚貼付シートにおける変位量と試験力との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施例6の皮膚貼付シートにおける変位量と試験力との関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、皮膚貼付シートの取り扱い性を評価した結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から
図11を参照して、皮膚貼付シートの一実施形態を説明する。
[皮膚貼付シート]
図1が示すように、皮膚貼付シート(以下、貼付シートとも称する)10は、キャリアシート11と、剥離シート12と、キャリアシート11と剥離シート12との間に位置する貼付テープ13とを備えている。貼付テープ13は、基材層21と、粘着層22と、バリア層23とを備えている。基材層21は、キャリアシート11に接している。粘着層22は、皮膚に対する有効成分22Aと粘着剤22Bとを含んでいる。バリア層23は、基材層21と粘着層22との間に位置し、かつ、5μm未満の厚さを有している。貼付テープ13は、剥離シート12が粘着層22から剥がされた後に皮膚に貼り付けられる。この際に、貼付テープ13の粘着層22が皮膚に接する。
【0019】
貼付シート10は、以下の条件1および条件2を満たす。
(条件1)キャリアシート11と基材層21との間におけるJIS Z 0237:2009に準拠した180°剥離強度が、550mN/25mm以下である。
(条件2)貼付テープ13において、JIS K 7162‐1:2014に準拠した引張破断伸度が130%以上である。
【0020】
本開示の貼付シート10によれば、キャリアシート11と基材層21との間における180°剥離強度が550mN/25mm以下であるから、キャリアシート11が基材層21から剥がれやすくなる。また、バリア層23の厚さが5μm未満であるから、貼付テープ13を伸縮させた際に貼付テープ13が変形すること、および、貼付テープ13を皮膚から剥がす際に貼付テープ13がちぎれることが抑えられる。
【0021】
キャリアシート11と基材層21との間における180°剥離強度は、JIS Z 0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠した方法によって測定した値である。貼付シート10は、キャリアシート11と基材層21との間における180°剥離強度が、剥離シート12と粘着層22との間における180°剥離強度よりも高くなるように構成されている。貼付シート10は、貼付テープ13が含む各層間での180°剥離強度が、キャリアシート11と基材層21との間における180°剥離強度よりも高くなるように構成されている。
【0022】
貼付テープ13の引張破断伸度は、JIS K 7161‐1:2014(ISO 527‐1)「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」、および、JIS K 7127:1999(ISO 527‐3)「プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件」に準拠して求めることができる。測定対象物が降伏点を有しない場合には引張破壊ひずみを測定し、降伏点を有する場合には引張破壊時呼びひずみを測定し、これらの測定値を用いて引張破断伸度を求めることができる。
【0023】
本実施形態の貼付シート10が備える貼付テープ13では、粘着層22が剥離シート12に接し、かつ、基材層21と粘着層22とがバリア層23に接している。基材層21は、バリア層23に接する第1面21S1と、第1面21S1とは反対側の第2面21S2とを含んでいる。
【0024】
貼付シート10は、以下の条件3および条件4の少なくとも一方を満たすことが好ましい。すなわち、貼付シート10は、条件3および条件4のいずれか一方のみを満たしてもよいし、条件3および条件4の両方を満たしてもよい。
【0025】
(条件3)貼付テープ13において、JIS K 7161‐1:2004に準拠した100%伸長を2回連続で行った場合に、1回目の100%伸長におけるエネルギーに対する、2回目の100%伸長におけるエネルギーの低減率が70%以下である。各エネルギーは、100%伸長によって得られた試験力と変位量との積分値である。
【0026】
(条件4)有効成分22Aが親水性を有し、JIS R 3257:1999の静滴法に準拠した接触角について、第2面21S2に対して水滴を滴下したときの接触角に対する、水滴を滴下した時点から20秒後における接触角の低減率が25%以下である。
【0027】
貼付テープ13の100%伸長は、JIS K 7161‐1:2004に準拠した方法で行われる。この際に、貼付テープ13に印加された試験力と貼付テープ13の伸長量である変位量との関係を示すグラフを得ることができる。なお、対象物の100%伸長は、伸長前の長さを初期長さL1とする場合に、2×L1となるまで対象物を伸長させた状態を意味する。100%伸長におけるエネルギーは、対象物を100%伸長させるまでに対象物に印加された試験力と対象物の変位量との積算値を意味する。すなわち、100%伸長におけるエネルギーは、試験力と変位量との関係を示すグラフにおいて、試験力を縦軸に設定し、かつ、変位量を横軸に設定する場合に、試験力と変位量との関係を示すグラフ、横軸、および、縦軸に平行であって、横軸における100%伸長に相当する長さを通る線分とによって囲まれる面積である。1回目の100%伸長におけるエネルギーに対する、2回目の100%伸長におけるエネルギーの低減率は、以下の式によって算出される。
【0028】
エネルギーの低減率={(E1-E2)/E1}×100
上記式において、E1は1回目の100%伸長におけるエネルギーである。E2は、2回目の100%伸長におけるエネルギーである。
【0029】
基材層21の第2面21S2における接触角は、JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠した方法によって測定された値である。第2面21S2に水滴を滴下したときの接触角に対する、水滴を滴下した時点から20秒後における接触角の低減率は、以下の式によって算出される。
【0030】
接触角の低減率={(C1-C2)/C1}×100
上記式において、C1は第2面21S2に水滴を滴下したときにおける接触角である。C2は、第2面21S2に水滴を滴下した時点から20秒後における接触角である。
【0031】
バリア層23の剛性は、基材層21の剛性よりも高い。言い換えれば、基材層21の引張破断伸度は、バリア層23の引張破断伸度よりも大きい。基材層21は高い引張破断伸度を有するから、基材層21に対して基材層21を引き延ばす力が作用している間は延びる一方で、引き延ばす力が解除された場合には、引き延ばされる前の状態に戻ることが可能である。すなわち、基材層21は高い伸縮性を有する。これに対して、引張破断伸度がより小さいバリア層23は、バリア層23を引き延ばす力が解除されたとしても、引き延ばされる前の状態に戻りにくい。すなわち、バリア層23の伸縮性は基材層21の伸縮性よりも小さい。このように、基材層21の伸縮性とバリア層23の伸縮性とが異なるから、貼付テープ13を引き延ばす力が解除された際に、貼付テープ13の端に反りが生じたり、バリア層23が割れたりする。
【0032】
この点、条件3を満たす貼付シート10によれば、1回目の100%伸長におけるエネルギーに対する2回目の100%伸長におけるエネルギーの低減率が70%以下である。そのため、バリア層23を備える貼付シート10であっても伸縮性を維持することが可能である。これによって、貼付テープ13を引き延ばす力が解除された際に、貼付テープ13の端に反りが生じたり、バリア層23が割れたりすることが抑えられる。
【0033】
親水性を有する有効成分22Aは、粘着層22からキャリアシート11に向かう方向に沿って、基材層21内を移行する。基材層21がポリウレタン樹脂を含み、かつ、キャリアシート11において基材層21と接する面がポリオレフィン樹脂を含む場合には、有効成分22Aは基材層21とキャリアシート11との間に留まる。そのため、基材層21の第2面21S2における親水性を示す第2面21S2の接触角を有効成分22Aが移行した度合いを示す指標として用いることが可能である。
【0034】
条件4を満たす貼付シート10によれば、有効成分22Aが粘着層22から基材層21に向けて移行することをバリア層23が抑え、これによってキャリアシート11と基材層21との間の密着性が高まることが抑えられる。
【0035】
キャリアシート11において基材層21に接する表面は、ポリオレフィン樹脂から形成されてよい。これにより、基材層21からキャリアシート11が剥がれやすくなることの実効性を高めることが可能である。ポリオレフィン樹脂は、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂であってよい。キャリアシート11は、樹脂製のフィルムであってもよいし、樹脂フィルムがラミネートされた紙であってもよい。樹脂フィルムは延伸フィルムでもよいし、無延伸フィルムでもよい。キャリアシート11において、基材層21と接する面には、キャリアシート11から基材層21を剥がしやすくするための加工が施されていてもよい。基材層21と接する面に対する加工は、例えばエンボス加工などであってよい。キャリアシート11の厚さは、例えば30μm以上400μm以下であってよい。
【0036】
剥離シート12は、剥離シート12と粘着層22との間の剥離強度が、キャリアシート11と基材層21との間の剥離強度よりも小さくなるように構成されている。剥離シート12は、合成樹脂から形成されている。剥離シート12は、例えば、基材シートと離型層とから形成されている。離型層は、基材シート上に積層されている。剥離シート12が基材シートと離型層とを備える場合には、離型層が貼付テープ13の粘着層22に接している。基材シートは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などから形成されてよい。基材シートは、一軸延伸シート、二軸延伸シート、および、無延伸シートのいずれかであってよい。離型層は、例えばシリコーン樹脂から形成されてよい。
【0037】
剥離シート12は、上述した基材シートのみから構成されてもよい。この場合には、基材シートのうちで、粘着層22と接する接触面に、粘着層22を基材シートから剥離しやすくするための加工が施されていてもよい。基材シートの接触面に対する加工は、例えばエンボス加工などであってよい。剥離シート12の厚さは、例えば12μm以上350μm以下であってよい。
【0038】
基材層21は、合成樹脂から形成されている。基材層21を形成するための合成樹脂は、例えばポリウレタン樹脂であってよい。これにより、貼付適性が高い基材層21を得ることが可能である。基材層21の厚さは、例えば5μm以上30μm以下であってよい。ポリウレタン樹脂製であり、かつ、薄い基材層21は、基材層21を引き延ばすために基材層21に加えられる外力が小さくともよく延びる。そのため、基材層21は、貼付テープ13が貼り付けられる皮膚の形状に対する高い追従性を有し、かつ、皮膚に対する高い密着性を有することが可能である。
【0039】
一方で、皮膚の形状に対する高い追従性を有した基材層21は、基材層21を覆うキャリアシート11に対しても高い追従性を有する。そのため、基材層21からキャリアシート11を剥がすための力がキャリアシート11に作用した場合に、基材層21が、キャリアシート11の変形に追従して変形しやすい。
【0040】
なお、基材層21は、ポリウレタン樹脂以外の合成樹脂から形成されてもよい。ポリウレタン樹脂以外の合成樹脂は、例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、および、ポリエチレンテレフタレート樹脂などであってよい。
【0041】
粘着層22が含む粘着剤22Bは、合成樹脂から形成される。粘着剤22Bを形成するための合成樹脂は、例えばポリウレタン樹脂であってよい。粘着層22の厚さは、例えば5μm以上25μm以下であってよい。
【0042】
有効成分22Aは、例えば化粧成分、美容成分、薬剤成分などであってよい。有効成分22Aは、親水性を有した化合物であってよい。親水性を有した化合物は、例えば、多価アルコールであってよい。多価アルコールは、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの少なくとも1つであってよい。すなわち、粘着層22は親水性を有した化合物のいずれか1つのみを含んでもよいし、2つ以上を含んでもよい。
【0043】
バリア層23は、合成樹脂製である。これにより、バリア層23の剛性が高まることが抑えられる。バリア層23は、例えばポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれかから形成されてよい。なお、基材層21およびバリア層23がともにポリウレタン樹脂から形成される場合には、バリア層23におけるハードセグメントの含有率は、基材層21におけるハードセグメントの含有率よりも高い。バリア層23は、ポリビニルブチラール樹脂から形成されることが好ましい。バリア層23がポリビニルブチラール樹脂から形成されることによって、柔軟性を保ちつつ、有効成分の移行を抑制することが可能である。バリア層23の厚さは、例えば0.1μm以上5μm未満であってよい。バリア層23は単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。
【0044】
[実施例]
図2から
図11を参照して、実施例および比較例を説明する。
[比較例1]
互いに対向する一対の面のうち、一方の面がマット面である二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ化学(株)製、FOR‐MP、厚さ40μm)をキャリアシートとして準備した。エーテル系ポリオールを含む第1水性ポリウレタン(三井化学(株)製、タケラックWS‐6021)とエーテル系ポリオールを含む第2水性ポリウレタン(三井化学(株)製、W‐6020)とを混合することによって、塗液を調整した。この際に、第1水性ポリウレタンと第2水性ポリウレタンとの重量比を以下のように設定した。
【0045】
第1水性ポリウレタン:第2水性ポリウレタン=10:1
そして、OPPフィルムのマット面に、塗液を塗工した後、塗液を乾燥させることによって前駆層を形成した。次いで、前駆層を常温においてエージングさせることによって、15μmの厚さを有した基材層を得た。
【0046】
PETフィルムと、シリコーン樹脂から形成された離型層とから構成される離型フィルム(東レフィルム加工(株)、セラピールWZ、厚さ75μm)(セラピールは登録商標)を剥離シートとして準備した。次に、主剤であるウレタン系粘着剤(トーヨーケム(株)製、SP-205)と、硬化剤(トーヨーケム(株)製、T-501B)とを準備した。また、皮膚に対する有効成分として、濃グリセリン(関東化学(株)製、17029-08、医薬部外品原料規格)を準備した。主剤に硬化剤と濃グリセリンとを添加した後、主剤、硬化剤、および、濃グリセリンを攪拌することによって、粘着層を形成するための塗液を得た。この際に、グリセリンの重量を主剤の固形分に対する40%に設定した。離型フィルムに対して塗液を塗工し、次いで、塗液を乾燥させることによって、15μmの厚さを有した粘着層を得た。
【0047】
そして、基材と粘着層とを貼り合わせることによって、OPPフィルムと、貼付テープと、離型フィルムとが記載の順に積層された積層体を得た。これによって、比較例1の貼付体を得た。
【0048】
[実施例1]
比較例1の貼付シートにおいて、水性ポリウレタンの前駆層を形成した後に、ポリビニルブチラール樹脂をエタノールに溶解させた塗液(大日精化工業(株)製)を塗工することによって塗膜を形成した後、塗膜を乾燥させることによって0.5μmの厚さを有したバリア層を形成した。それ以外は、比較例1の貼付シートと同様の方法によって、実施例1の貼付シートを得た。
【0049】
[実施例2]
実施例1の貼付シートにおいて、バリア層の厚さを1μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の貼付シートを得た。
【0050】
[実施例3]
実施例1の貼付シートにおいて、バリア層の厚さを3μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の貼付シートを得た。
【0051】
[比較例2]
実施例1の貼付シートにおいて、バリア層の厚さを5μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例2の貼付シートを得た。
【0052】
[実施例4]
実施例2の貼付シートにおいて、ポリビニルブチラール樹脂をエタノールに溶解させた塗液に代えて、水分散ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製、バイロナールMD‐1480)を塗工することによって塗膜を形成した後、塗膜を乾燥させることによって1μmの厚さを有したバリア層を形成した。それ以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例4の貼付シートを得た。
【0053】
[実施例5]
実施例2の貼付シートにおいて、ポリビニルブチラール樹脂をエタノールに溶解させた塗液に代えて、ポリオレフィン水性ディスパージョン(三井化学(株)製、ケミパールS500)を塗工することによって塗膜を形成した後、塗膜を乾燥させることによって1μmの厚さを有したバリア層を形成した。それ以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例5の貼付シートを得た。
【0054】
[実施例6]
実施例2の貼付シートにおいて、ポリビニルブチラール樹脂をエタノールに溶解させた塗液に代えて、ポリウレタン水性ディスパージョン(三井化学(株)製、WPB341)を塗工することによって塗膜を形成した後、塗膜を乾燥させることによって1μmの厚さを有したバリア層を形成した。それ以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例6の貼付シートを得た。
【0055】
[評価方法]
[キャリアシートと基材層との180°剥離強度]
JIS Z 0237:2009の「粘着テープ・粘着シートの試験方法」に準拠する方法によって、キャリアシートに対する基材層の剥離強度を測定した。剥離強度の測定には、万能試験機((株)島津製作所製、オートグラフAGS‐X ロードセル5kN)を用いた。剥離強度を測定する際には、25mmの幅を有した試験片を切り出した。そして、万能試験機に基材層を固定し、キャリアシートを基材に対して180°剥離するときの強度を算出した。
【0056】
[貼付テープの引張破断強度]
JIS K 7127:1999「プラスチック‐引張特性の試験方法‐第3部:フィルム及びシートの試験条件」に準拠する方法によって、各貼付シートが備える貼付テープをダンベル形状(試験片タイプ5)に裁断し、これによって試験片を得た。各試験片について、JIS K 7161‐1:2014に準拠する方法によって、引張破断伸度を測定した。詳細には、万能試験機((株)島津製作所製、オートグラフAGS‐X ロードセル5kN)を用いて、引張破断伸度を測定した。この際に、引張速度を300mm/minに設定し、かつ、標線間距離を25mmに設定した。試験片を引っ張ることによって、試験片が破断した際の伸度を求めた。
【0057】
[貼付テープにおけるエネルギーの低減率]
貼付テープの引張破断伸度を測定する際と同じ方法で、各貼付シートから試験片を作成した。また、貼付テープの引張破断伸度を測定する際と同じ条件で試験片の変位量が25mmになるまで試験片を引っ張った。これにより、1回目の100%伸長を行った。その後、試験片に作用させていた試験力を解除し、続いて2回目の100%伸長を行った。
【0058】
次いで、各試験片について得られたグラフに基づいて、試験片の変位量、すなわち伸長量が25mmになるまでに試験片に与えられた試験力と変位量との積分値を算出した。言い換えれば、試験力と変位量との関係を示すグラフ、横軸、および、縦軸に平行であり、かつ、横軸における25mmを通る線分によって囲まれる面積を算出した。これにより、各試験片について、1回目の100%伸長でのエネルギーと、2回目の100%伸長でのエネルギーとを算出した。そして、以下の式を用いてエネルギーの低減率を算出した。
【0059】
エネルギーの低減率={(E1-E2)/E1}×100
上記式において、E1は1回目の100%伸長におけるエネルギーであり、E2は2回目の100%伸長におけるエネルギーである。
【0060】
[基材層における接触角の低減率]
各貼付シートについて、キャリアシートが剥離された基材層の第2面における純水の接触角を測定した。この際に、JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」の静滴法に準拠する方法によって、各貼付シートにおける純水の接触角を接触拡計(共和界面科学(株)製、PCA‐1)を用いて測定した。この際に、各貼付シートにおける互いに異なる5箇所において接触角を測定し、かつ、5箇所において測定した接触角の平均値を各貼付シートでの接触角に設定した。また、基材層の第2面に水滴を滴下した時点から20秒後までの接触角の経時変化を測定した。そして、基材層の第2面に水滴を滴下した時点における接触角に対する、水滴を滴下した時点から20秒後における接触角の低減率を以下の式によって算出した。
【0061】
接触角の低減率={(C1-C2)/C1}×100
上記式において、C1は第2面に水滴を滴下した時点における接触角である。C2は、第2面に水滴を滴下した時点から20秒後における接触角である。接触角の低減率を以下の3段階で評価した。
【0062】
25%未満:○:グリセリンの移行がより抑制できている。
25%以上30%未満:△:グリセリンの移行が抑制できている。
30%以上:×:グリセリンの移行が抑制できていない。
【0063】
[取り扱い性]
[キャリアシートの剥離]
各実施例および各比較例において、貼付シートの形状を一辺の長さが10cmである正方形状に設定した。貼付シートから剥離シートを剥がした後に、粘着層を被検者の皮膚に貼り付けた。次いで、キャリアシートにおける1つの角部を剥がすことによってキャリアシートを基材層から剥がすきっかけを形成した後に、キャリアシートを基材層から剥がした。この際に、キャリアシートの剥がれ方を以下の2段階で評価した。
【0064】
○:キャリアシートを基材層から剥がす際に抵抗を感じなかった。
×:キャリアシートを基材層から剥がす際に抵抗を感じた。
【0065】
[貼付テープの伸縮性]
各貼付シートから、50mmの長さを有し、かつ、10mmの幅を有した試験片を切り出した。そして、各試験片から剥離シートを剥がし、次いで、貼付テープを引き延ばしながら、貼付テープの粘着層を被検者の皮膚に貼り付けた。この際に、貼付テープの伸縮性を以下の2段階で評価した。
【0066】
○:貼付テープの変形の影響を受けることなく、貼付テープにしわが生じない状態で貼付テープを皮膚に貼ることができた。
×:貼付テープの変形のために、皮膚に貼り付けた貼付テープにしわが生じた。
【0067】
[貼付テープのちぎれ]
各貼付シートから、50mmの長さを有し、かつ、10mmの幅を有した試験片を切り出した。そして、各試験片から剥離シートを剥がし、次いで、粘着層を被検者の皮膚に貼り付けた。続いて、キャリアシートを剥がした後に、貼付テープを被検者の皮膚から剥がした。この際に、貼付テープの剥がれ方を以下の2段階で評価した。
【0068】
○:皮膚から剥がす途中で貼付テープがちぎれずに貼付テープを一気に剥がすことができた。
×:皮膚から剥がす途中で貼付テープが1回以上ちぎれた。
【0069】
[評価結果]
180°剥離強度、引張破断強度、エネルギーの低減率、および、接触角の低減率における評価結果は、それぞれ
図2に示される通りであった。
【0070】
図2が示すように、180°剥離強度は、実施例1において230mN/25mmであり、実施例2において220mN/25mmであり、実施例3において210mN/25mmであることが認められた。また、180°剥離強度は、実施例4において320mN/25mmであり、実施例5において350mN/25mmであり、実施例6において280mN/25mmであることが認められた。また、180°剥離強度は、比較例1において600mN/25mmであり、比較例2において190mN/25mmであることが認められた。
【0071】
引張破断伸度は、実施例1において560%であり、実施例2において460%であり、実施例3において220%であることが認められた。また、引張破断伸度は、実施例4において500%であり、実施例5において470%であり、実施例6において500%であることが認められた。また、引張破断伸度は、比較例1において640%であり、比較例2において120%であることが認められた。
【0072】
エネルギーの低減率は、実施例1において24%であり、実施例2において39%であり、実施例3において39%であることが認められた。また、エネルギーの低減率は、実施例4において44%であり、実施例5において46%であり、実施例6において70%であることが認められた。エネルギーの低減率は、比較例1において4%であり、比較例2において81%であることが認められた。
【0073】
なお、
図3から
図10は、各貼付テープを100%伸長させる際に得られた試験力と変位量との関係を示すグラフである。
図3は比較例1の貼付シートについて得られたグラフであり、
図4は実施例1の貼付シートについて得られたグラフであり、
図5は実施例2の貼付シートについて得られたグラフである。
図6は実施例3の貼付シートについて得られたグラフであり、
図7は比較例2の貼付シートについて得られたグラフであり、
図8は実施例4の貼付シートについて得られたグラフである。
図9は実施例5の貼付シートについて得られたグラフであり、
図10は実施例6の貼付シートについて得られたグラフである。
図3から
図10において、1回目の100%伸長において得られたグラフが実線で示され、2回目の100%伸長において得られたグラフが破線で示されている。
【0074】
接触角の低減率は、実施例1において21.9%であり、実施例2において21.7%であり、実施例3において18.0%であることが認められた。接触角の低減率は、実施例4において28.8%であり、実施例5において29.0%であり、実施例6において27.5%であることが認められた。接触角の低減率は、比較例1において31.0%であり、比較例2において17.8%であることが認められた。
【0075】
図11が示すように、実施例1から実施例6では、キャリアシートの剥離、貼付テープの伸縮性、貼付テープのちぎれのそれぞれの評価結果が「○」であることが認められた。これに対して、バリア層を有しない比較例1では、キャリアシートの剥離における評価結果が「×」であり、また、厚いバリア層を備える比較例2では、貼付テープの伸縮性、および、貼付テープのちぎれのそれぞれの評価結果が「×」であることが認められた。
【0076】
こうした結果から、キャリアシートと基材層との間の180°剥離強度は550mN/25mm以下であることによって、キャリアシートを基材層から剥離しやすくすることが可能であるといえる。また、キャリアシートを基材層から剥離しやすくする観点では、180°剥離強度は、350mN/25mm以下であることが好ましく、230mN/25mm以下であることがより好ましいといえる。
【0077】
また、貼付テープの引張破断伸度が130%以上であることによって、皮膚に対する追従性を高めることが可能であるといえる。皮膚に対する追従性を高める観点では、引張破断伸度は220%以上であることが好ましく、460%以上であることがより好ましいといえる。
【0078】
また、バリア層の厚さが5μm未満であることによって、貼付テープの伸縮性が高く維持され、また、貼付テープのちぎれが抑えられるといえる。貼付テープの伸縮性を高く維持する観点では、バリア層の厚さは3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましいといえる。
【0079】
実施例1から実施例6では、バリア層を有しない比較例1に対して接触角の低減率が低いから、バリア層によってグリセリンの移行が抑えられているといえる。また、実施例1から実施例3では、グリセリンの移行における評価結果が「○」である一方で、実施例4から実施例6では、グリセリンの移行における評価結果が「△」であることが認められた。こうした結果から、グリセリンの移行を抑える観点では、バリア層を形成する材料は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましいといえる。
【0080】
また、実施例2,4から6では、実施例2においてエネルギー低減率が最も低いことが認められた。こうした結果から、貼付テープの伸縮性を高く維持する観点では、バリア層を形成する材料は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましいといえる。
【0081】
また、貼付テープの伸縮性を高く維持する観点では、エネルギーの低減率は70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましいといえる。
【0082】
以上説明した皮膚貼付シートによれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)キャリアシート11と基材層21との間における180°剥離強度が550mN/25mm以下であるから、キャリアシート11が基材層21から剥がれやすくなる。また、バリア層23の厚さが5μm未満であるから、貼付テープ13を伸縮させた際に貼付テープ13が変形すること、および、貼付テープ13を皮膚から剥がす際に貼付テープ13がちぎれることが抑えられる。
【0083】
(2)1回目の100%伸長におけるエネルギーに対する2回目の100%伸長におけるエネルギーの低減率が70%以下であるから、バリア層23を備える皮膚貼付シート10であっても伸縮性を維持することが可能である。
【0084】
(3)有効成分が粘着層22から基材層21に向けて移行することをバリア層23が抑え、これによってキャリアシート11と基材層21との間の密着性が高まることが抑えられる。
【0085】
(4)バリア層23が合成樹脂製であるから、バリア層23の剛性が高まることが抑えられる。
【符号の説明】
【0086】
10…皮膚貼付シート
11…キャリアシート
12…剥離シート
13…貼付テープ
21…基材層
21S1…第1面
21S2…第2面
22…粘着層
22A…有効成分
22B…粘着剤
23…バリア層