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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014556
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】圧力緩衝装置、懸架装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/40 20060101AFI20240125BHJP
   F16F 9/24 20060101ALI20240125BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16F9/40 Z
F16F9/24
F16F9/32 J
F16F9/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117467
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】北條 里実
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC01
3J069CC10
3J069DD33
3J069DD48
3J069EE10
3J069EE62
(57)【要約】
【課題】液溜部の液面の揺れを抑制することができる圧力緩衝装置等を提供する。
【解決手段】圧力緩衝装置1は、オイルを収容するシリンダ11と、シリンダ11内の空間を区画するピストン部30と、シリンダ11の外側に設けられて、シリンダ11内に出入りするオイルが溜まる液溜部Rを形成するダンパケース13と、ダンパケース13の内側に保持される円筒状部61と、円筒状部61から内側に突出する突出部62とを有して、液溜部Rにおけるオイルの液面の揺れを抑制する抑制部材60と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する第1シリンダと、
前記第1シリンダ内の空間を区画するピストン部と、
前記第1シリンダの外側に設けられて、前記第1シリンダ内に出入りする前記液体が溜まる液溜部を形成する第2シリンダと、
前記第2シリンダの内側に保持される筒状部と、前記筒状部から内側に突出する突出部とを有して、前記液溜部における前記液体の液面の揺れを抑制する抑制部材と、
を備える圧力緩衝装置。
【請求項2】
前記抑制部材は、レーザ溶接が施されることにより前記第2シリンダに接合されている、
請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項3】
前記抑制部材は、前記第2シリンダの内側に配置された状態で、前記第2シリンダの外側からレーザ光が照射されることにより前記第2シリンダに接合されている、
請求項2に記載の圧力緩衝装置。
【請求項4】
前記レーザ光は、前記第2シリンダの周方向に沿って照射されている、
請求項3に記載の圧力緩衝装置。
【請求項5】
前記レーザ光は、前記第2シリンダの中心線方向に沿って照射されている、
請求項3に記載の圧力緩衝装置。
【請求項6】
前記レーザ光は、スポット的に照射されている、
請求項3に記載の圧力緩衝装置。
【請求項7】
前記抑制部材は、前記第2シリンダの内側に配置された状態で、前記第2シリンダとの接触部にレーザ光が照射されることにより前記第2シリンダに接合されている、
請求項2に記載の圧力緩衝装置。
【請求項8】
前記第2シリンダの半径方向外側に設けられ、前記第1シリンダから流出した前記液体が流入するとともに、前記液体の流れに抵抗を付与して減衰力を発生させて前記液体を前記液溜部に排出する減衰力発生部をさらに備える、
請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項9】
前記第2シリンダには、前記減衰力発生部から排出される液体を前記液溜部に流入させる流入口が形成され、
前記抑制部材は、前記流入口の前記第2シリンダの中心線方向の両側に設けられている、
請求項8に記載の圧力緩衝装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の圧力緩衝装置と、
前記圧力緩衝装置の周囲に配置されたスプリングと、
を備える懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力緩衝装置および懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力緩衝装置の液体における気泡の混入を抑制する技術が提案されている。
例えば、特許文献1に記載された圧力緩衝装置は、液体を収容するシリンダ部と、シリンダ部における外側に設けられて、液体が溜まる液溜部と、シリンダ部内において軸方向に移動可能に設けられ、シリンダ部内の空間を、液体を収容する第1油室と第2油室とに区画するピストン部と、を備える。また、特許文献1に記載された圧力緩衝装置は、シリンダ部とは別体であって、液溜部に設けられる本体部および本体部から突出する突出部を有して液溜部における液体の油面の揺れを抑制する抑制部材を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6216899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された圧力緩衝装置においては、液溜部において液面が波立つと液体に気泡が混入し、所定の減衰力が発生し難くなることに鑑み、液溜部にて液面の揺れを抑制する抑制部材を設けている。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、油面の揺れを抑制するという点において改善の余地があった。
本発明は、液溜部の液面の揺れを抑制することができる圧力緩衝装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、液体を収容する第1シリンダと、前記第1シリンダ内の空間を区画するピストン部と、前記第1シリンダの外側に設けられて、前記第1シリンダ内に出入りする前記液体が溜まる液溜部を形成する第2シリンダと、前記第2シリンダの内側に保持される筒状部と、前記筒状部から内側に突出する突出部とを有して、前記液溜部における前記液体の液面の揺れを抑制する抑制部材と、を備える圧力緩衝装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液溜部の液面の揺れを抑制することができる圧力緩衝装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る懸架装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る圧力緩衝装置の概略構成の一例を示す図である。
図3】抑制部材の製造方法の一例を示す図である。
図4】第1実施形態の圧力緩衝装置の伸長行程時及び圧縮行程時におけるオイルの流れの一例を示す図である。
図5】ケースユニットの製造方法の一例を示す図である。
図6】第2実施形態に係る圧力緩衝装置の一例を示す図である。
図7】第3実施形態に係る圧力緩衝装置の一例を示す図である。
図8】第4実施形態に係る圧力緩衝装置の一例を示す図である。
図9】第5実施形態に係る圧力緩衝装置の一例を示す図である。
図10】第6実施形態に係る圧力緩衝装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る懸架装置100の概略構成の一例を示す図である。
図2は、第1実施形態に係る圧力緩衝装置1の概略構成の一例を示す図である。
懸架装置100は、ストラット式サスペンションであり、図1に示すように、圧力緩衝装置1と、圧力緩衝装置1の外側に配置されたコイルスプリング103と、を備える。また、懸架装置100は、コイルスプリング103における、後述するロッド20の軸方向の第1側(図1では下側)の端部を支持する下スプリングシート104と、コイルスプリング103における、ロッド20の軸方向の第2側(図1では上側)の端部を支持する上スプリングシート105と、を備える。
【0009】
懸架装置100は、ロッド20の軸方向の第2側の端部に取り付けられて、この懸架装置100を車両に取り付けるための車体側ブラケット106と、後述するシリンダ部10におけるロッド20の軸方向の第1側の端部に固定されて、懸架装置100を車輪に取り付けるための車輪側ブラケット107と、を備える。また、懸架装置100は、シリンダ部10およびロッド20の少なくとも一部を覆うダストカバー108を備える。車体側ブラケット106は、ロッド20の軸方向の第2側の端部に取り付けられている。
【0010】
(圧力緩衝装置1)
圧力緩衝装置1は、オイルを収容するシリンダ部10と、第1側の端部がシリンダ部10から突出して設けられるとともに第2側の端部がシリンダ部10内にスライド可能に挿入されるロッド20と、を備える。また、圧力緩衝装置1は、ロッド20の第1側の端部に設けられるピストン部30と、シリンダ部10の第1側の端部に設けられるボトム部40と、を備える。さらに、圧力緩衝装置1は、シリンダ部10の外部に設けられて減衰力を発生させる減衰力発生部50と、後述する液溜部Rにおけるオイルの液面の揺れを抑制する抑制部材60と、を備える。
【0011】
〔シリンダ部10〕
シリンダ部10は、オイルを収容するシリンダ11と、シリンダ11の外側に設けられる外筒体12と、外筒体12の外側に設けられるダンパケース13と、を有する。また、シリンダ部10は、ロッド20を移動可能に支持するロッドガイド部14と、ダンパケース13における第2側の端部に装着されたバンプストッパキャップ15と、ダンパケース13内のオイルの漏れやダンパケース13内への異物の混入を防ぐオイルシール16と、を備える。
【0012】
なお、以下の説明において、図1に示すシリンダ部10の左右方向は、「半径方向」と称する。そして、半径方向において、シリンダ部10の中心軸側は、「内側」と称し、中心軸から離れる側は、「外側」と称する。
【0013】
シリンダ11は、円筒状に形成され、第2側に内外を連通する貫通孔11Hを有する。
外筒体12は、円筒状に形成されている。そして、外筒体12は、シリンダ11との間に、連絡路Cを形成する。また、外筒体12には、減衰力発生部50との対向位置に、内外を連通する貫通孔12Hが形成されている。外筒体12は、貫通孔12Hの周囲に、オイルの流路を形成するとともに、外側に向けて突出して減衰力発生部50と接続する外側接続部12Jを有する。
【0014】
ダンパケース13は、円筒状の本体131と、本体131における第1側の端部を塞ぐ円盤状の塞ぎ部132とを有する。塞ぎ部132は、本体131に対して、例えば溶接されることにより固定されている。
そして、ダンパケース13は、外筒体12との間においてオイルが溜まる液溜部Rを形成する。液溜部Rは、ロッド20のシリンダ11に対する相対移動に伴って、シリンダ11内のオイルを吸収したり、シリンダ11内にオイルを供給したりする。また、液溜部Rは、減衰力発生部50から流れ出たオイルを溜める。また、ダンパケース13には、減衰力発生部50との対向位置に、内外を連通する貫通孔13Hが形成されている。
シリンダ11、外筒体12及びダンパケース13は、それぞれ鉄製の部材である。
【0015】
〔ロッド20〕
ロッド20は、軸方向に長く延びる棒状の部材である。ロッド20は、第1側にピストン部30を保持する。また、ロッド20は、第2側にて車体側ブラケット106を介して例えば車体に接続する。ロッド20は、内側が空洞になっている中空状、または、内側に空洞を有さない中実状のいずれでも良い。
【0016】
〔ピストン部30〕
ピストン部30は、複数のピストン油路口311を有するピストンボディ31と、ピストン油路口311の第2側を開閉するピストンバルブ32と、ピストンバルブ32とロッド20の第1側の端部との間に設けられるスプリング33とを有する。そして、ピストン部30は、シリンダ11内のオイルを第1油室Y1と第2油室Y2とに区画する。
【0017】
〔ボトム部40〕
ボトム部40は、バルブシート41と、バルブシート41の第1側に設けられるチェックバルブ部42と第2側に設けられるチェックバルブ部43と、を有する。バルブシート41、チェックバルブ部42及びチェックバルブ部43は、ボルト及びナットにて固定されている。そして、ボトム部40は、第1油室Y1と液溜部Rとを区分する。
【0018】
〔減衰力発生部50〕
減衰力発生部50は、ハウジング51と、ソレノイド部52と、接続流路部材53と、ソレノイドバルブ55とを有する。
ハウジング51は、ダンパケース13の外周面から外側に突出する円筒状の部材であり、ダンパケース13に対して例えば溶接されることにより固定されている。
【0019】
ソレノイド部52は、図示しない制御部による制御に基づいて、プランジャ52Pを進退移動させる。
接続流路部材53は、内側に接続流路53Rを有する略円筒状に形成される部材である。
ソレノイドバルブ55は、接続流路部材53に対する位置の移動に応じて、接続流路53Rにおけるオイルの流路断面積を変化させる。そして、ソレノイドバルブ55は、接続流路53Rにおけるオイルの流れを絞る。
【0020】
〔抑制部材60〕
抑制部材60は、円筒状の円筒状部61と、円筒状部61の内周面から内側に突出する突出部62とを有している。本実施形態に係る抑制部材60は、鉄製である。
円筒状部61は、外径がダンパケース13の内径と等しく形成される。また、円筒状部61は、内径が外筒体12の外径よりも大きく形成される。
【0021】
突出部62は、軸方向に直交するように円環状に設けられている。突出部62における軸方向に平行な面にて切断した断面形状は、矩形である。突出部62の内径は、外筒体12の外径よりも若干大きい。従って、オイルは、突出部62と外筒体12との間において軸方向に若干だけ流れることが可能になっている。
【0022】
なお、突出部62の形状は特に限定されない。突出部62は周方向の全周に亘って形成されていなくても良いし、突出部62における軸方向に平行な面にて切断した断面形状は矩形でなくても良い。また、突出部62は、軸方向に傾斜していても良い。
【0023】
突出部62は、軸方向に複数設けられている。複数の突出部62は、軸方向に等間隔に配置されていることを例示することができる。ただし、複数の突出部62は、等間隔に配置されていなくても良い。
【0024】
複数の突出部62の内の最も第2側に位置する突出部62が、圧力緩衝装置1の最圧縮時におけるオイルの液面の位置となるように設けられている。複数の突出部62の内の最も第1側に位置する突出部62が、圧力緩衝装置1の最伸長時におけるオイルの液面の位置となるように設けられている。そして、抑制部材60では、ロッド20の進退に伴うオイルの液面変動時においても、一つ以上の突出部62がオイル内に残るように複数の突出部62を配置している。
【0025】
図3は、抑制部材60の製造方法の一例を示す図である。
以上のように構成された抑制部材60は、図3に示すように、例えば、鉄製の平板600にプレス加工が施されることにより複数の突出部62が成形された後に、複数の突出部62が内側となるように丸められることで製造されている。そして、抑制部材60は、後述するように、レーザ溶接が施されることによりダンパケース13に接合されている。
【0026】
[圧力緩衝装置1の動作]
図4は、第1実施形態の圧力緩衝装置1の伸長行程時及び圧縮行程時におけるオイルの流れの一例を示す図である。
先ず、圧力緩衝装置1の伸長行程時における動作を説明する。
図4に示すように、伸長行程時において、ロッド20は、シリンダ11に対して第2側に移動する。このとき、ピストンバルブ32は、ピストン油路口311を塞いだままである。また、ピストン部30の第2側への移動によって、第2油室Y2の容積は、減少する。そして、第2油室Y2のオイルは、シリンダ11の貫通孔11Hから連絡路Cに流れ出る。
【0027】
さらに、オイルは、連絡路C、貫通孔12Hおよび接続流路53Rを通って、減衰力発生部50に流れ込む。減衰力発生部50において、接続流路53Rのオイルは、ソレノイドバルブ55によって流れが絞られる。このソレノイドバルブ55によってオイルの流れが絞られることによって減衰力が発生する。その後、オイルは、液溜部Rに流れ出る。
また、第1油室Y1の圧力が液溜部Rに対して相対的に低くなる。そのため、液溜部Rのオイルは、ボトム部40におけるバルブシート41に形成される流路を介して、第1油室Y1に流れ込む。
【0028】
次に、圧力緩衝装置1の圧縮行程時における動作を説明する。
図4に示すように、圧縮行程時において、ロッド20は、シリンダ11に対して第1側に相対移動する。ピストン部30においては、第1油室Y1と第2油室Y2との差圧によって、ピストン油路口311を塞ぐピストンバルブ32が開く。そして、第1油室Y1のオイルは、ピストン油路口311を通って第2油室Y2に流れ出る。ここで、第2油室Y2にはロッド20が配置されている。そのため、第1油室Y1から第2油室Y2に流れ込むオイルは、ロッド20の進入体積分だけ過剰になる。従って、このロッド20の進入体積分に相当する量のオイルは、貫通孔11Hから連絡路Cに流出する。
【0029】
さらに、オイルは、連絡路C、貫通孔12Hおよび接続流路53Rを通って、減衰力発生部50に流れ込む。なお、減衰力発生部50におけるオイルの流れは、上述した伸長行程時におけるオイルの流れと同様である。
また、ロッド20がシリンダ11に対して第1側に相対移動することで、第1油室Y1のオイルは、ボトム部40におけるバルブシート41に形成される流路を介して、液溜部Rに流れ出る。
【0030】
なお、減衰力発生部50にて減衰力を調整する場合には、ソレノイド部52によってソレノイドバルブ55(図2参照)を制御する。具体的には、ソレノイド部52によってソレノイドバルブ55と接続流路部材53との距離を変更する。このとき、ソレノイドバルブ55と接続流路部材53との間隔が狭くなれば、オイルの流れの抵抗が大きくなって減衰力は高まる。一方、ソレノイドバルブ55と接続流路部材53との間隔が広がれば、オイルの流れの抵抗が小さくなって、減衰力は低くなる。
【0031】
[抑制部材60の作用]
ダンパケース13の内周面に、内側に突出する突出部62を有する抑制部材60が接合されていることで、液溜部R内のオイルの液面の揺れを抑制することができる。つまり、液溜部R内のオイルは、液溜部Rを形成する外側の壁である、ダンパケース13の内周面に沿って軸方向に移動し易いが、圧力緩衝装置1においては、ダンパケース13の内周面に突出部62を有する抑制部材60が接合されているので、オイルが軸方向に移動し難くなる。その結果、圧力緩衝装置1によれば、例えば液溜部Rを形成する内側の壁である外筒体12の外側に、外側に突出する部位が設けられている構成と比べて、オイルの液面の揺れ及びキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0032】
[製造方法]
以上のように構成された圧力緩衝装置1において、ダンパケース13、抑制部材60及び減衰力発生部50のハウジング51は、例えば溶接にて接合されることにより一体化されて、ケースユニット70(図2参照)を構成している。
【0033】
次に、ケースユニット70の製造方法について説明する。
図5は、ケースユニット70の製造方法の一例を示す図である。
治具501にて支持したダンパケース13の内部に、治具502にて支持した抑制部材60を、予め定められた位置まで挿入し、抑制部材60の円筒状部61とダンパケース13の本体131とを重ね合わせた状態とする(図5の挿入工程参照)。そして、抑制部材60の円筒状部61とダンパケース13の本体131との重ね合わせ部におけるダンパケース13の外周面に対して、レーザ装置150のレーザヘッド151からレーザ光Lを照射する(図5の溶接工程参照)。ダンパケース13の外側からダンパケース13の外周面に対してレーザ光Lを照射することで、重ね合わせ部を構成している、ダンパケース13の本体131と抑制部材60の円筒状部61とが溶融し、その後急速に冷却されて、溶接部71が形成される。レーザ光Lを照射するにあたっては、ダンパケース13の周方向にレーザヘッド151を移動させることで、ダンパケース13の外周面に対して、レーザ光Lを周方向に照射する。これにより、抑制部材60の円筒状部61とダンパケース13の本体131との重ね合わせ部に、抑制部材60とダンパケース13とを接合する周方向の溶接部71が形成される。
【0034】
なお、レーザ光Lを照射する位置、言い換えれば、溶接部71を形成する軸方向の位置は特に限定されない。図5には、抑制部材60における軸方向の第2側の端部に対応する位置に溶接部71を形成する態様を示しているが、例えば、抑制部材60における軸方向の第1側の端部に対応する位置や、軸方向の中央部に対応する位置に溶接部71を形成しても良い。また、軸方向の複数の位置に溶接部71を形成しても良い。例えば、抑制部材60における軸方向の第2側及び第1側の端部に対応する位置、及び、軸方向の中央部に対応する位置に溶接部71を形成しても良い。
【0035】
そして、ダンパケース13に抑制部材60を接合した後に、ダンパケース13に、減衰力発生部50のハウジング51を溶接にて接合する。溶接方法は特に限定されず、アーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接であることを例示することができる。
なお、ダンパケース13と抑制部材60とを接合する前に、ダンパケース13とハウジング51とを接合しても良い。
【0036】
上述した製造方法を用いてケースユニット70を製造することで、ダンパケース13の内周面に抑制部材60を接合することを簡易に実現することができる。つまり、例えば、アーク溶接を用いてダンパケース13の内周面に抑制部材60を接合するためには、スパッタの問題やトーチをダンパケース13内に入れ難い等の問題がある。これに対して、レーザ溶接であればダンパケース13の外側からレーザ光Lを照射することができるので、ダンパケース13の内周面に抑制部材60を接合することを簡易に実現することができる。
【0037】
また、ダンパケース13と抑制部材60とを溶接にて接合できるので、例えば、ダンパケース13と抑制部材60とを圧入にて固定するのと比べて、ダンパケース13及び抑制部材60の部品精度を落とすことができる。その結果、ダンパケース13及び抑制部材60の低廉化が図られる。また、ダンパケース13と抑制部材60とを接合してケースユニット70を製造することで、圧力緩衝装置1の組み立ても簡易になる。つまり、圧力緩衝装置1の組み立て工程にケースユニット70を投入することができるので、圧力緩衝装置1の組み立て工程において、ダンパケース13と抑制部材60とを手作業で組み付ける作業が不要となり、組み立て工数も削減される。また、抑制部材60の材料として鉄を用いることができるので、例えば抑制部材60の材料としてPA66(66ナイロン)等の樹脂を用いる場合と比べて、安定的に材料を手に入れることができる。
【0038】
以上、説明したように、圧力緩衝装置1は、オイル(液体の一例)を収容するシリンダ11(第1シリンダの一例)と、シリンダ11内の空間を区画するピストン部30と、シリンダ11の外側に設けられて、シリンダ11内に出入りするオイルが溜まる液溜部Rを形成するダンパケース13(第2シリンダの一例)と、を備える。そして、圧力緩衝装置1は、ダンパケース13の内側に保持される円筒状部61(筒状部の一例)と、円筒状部61から内側に突出する突出部62とを有して、液溜部Rにおけるオイルの液面の揺れを抑制する抑制部材60を備える。
【0039】
圧力緩衝装置1によれば、例えば液溜部Rを形成する内側の壁である外筒体12の外側に、外側に突出する部位が設けられている構成と比べて、オイルの液面の揺れ及びキャビテーションの発生を抑制することができる。また、ダンパケース13の内側に円筒状部61を有する抑制部材60が設けられているので、ダンパケース13の剛性を高めることができ、ダンパケース13の外側に車輪側ブラケット107が接合されているとしてもダンパケース13が変形し難い。
【0040】
そして、抑制部材60は、レーザ溶接が施されることによりダンパケース13に接合されている。レーザ溶接であれば、ダンパケース13の内周面に抑制部材60を接合することを簡易に実現することができる。
【0041】
例えば、抑制部材60は、ダンパケース13の内側に配置された状態で、ダンパケース13の外側からレーザ光Lが照射されることによりダンパケース13に接合されている。レーザ溶接であればダンパケース13の外側からレーザ光Lを照射することができるので、ダンパケース13の内周面に抑制部材60を接合することを簡易に実現することができる。
【0042】
そして、第1実施形態においては、レーザ光Lは、ダンパケース13の周方向に沿って照射されている。これにより、オイルが抑制部材60に対して与える負荷を周方向において偏りなく受けることができるので、耐久性が向上する。
【0043】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る圧力緩衝装置2の一例を示す図である。
第2実施形態に係る圧力緩衝装置2は、第1実施形態に係る圧力緩衝装置1に対して、抑制部材60のダンパケース13への接合方法が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第2実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0044】
第2実施形態に係るレーザ溶接方法においては、レーザ光Lを照射するにあたっては、図6に示すように、ダンパケース13の軸方向にレーザヘッド151を移動させることで、ダンパケース13の外周面に対して、レーザ光Lを軸方向に照射する。また、レーザ光Lを軸方向に照射することを、周方向の複数の箇所(図6においては4箇所)において行っても良い。また、抑制部材60の軸方向の全域に亘ってレーザ光Lを照射しても良いし、抑制部材60の軸方向の一部にのみレーザ光Lを照射しても良い。また、軸方向の一部にのみレーザ光Lを照射する場合には、軸方向の複数の箇所(図6においては2箇所)において行っても良い。
【0045】
上述したレーザ溶接方法を用いてダンパケース13と抑制部材60とを接合することで、ダンパケース13の内周面に抑制部材60を接合することを簡易に実現することができる。
【0046】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係る圧力緩衝装置3の一例を示す図である。
第3実施形態に係る圧力緩衝装置3は、第1実施形態に係る圧力緩衝装置1に対して、抑制部材60のダンパケース13への接合方法が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第3実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0047】
第3実施形態に係るレーザ溶接方法においては、図7に示すように、レーザ光Lをスポット的に照射する。つまり、レーザ光Lを照射するにあたって、ダンパケース13の周方向及び軸方向にレーザヘッド151を移動させることなく、ダンパケース13の外周面に対して、レーザ光Lをスポット的に照射する。また、レーザ光Lをスポット的に照射することを、周方向及び軸方向の複数の箇所(図7においては周方向の4箇所、軸方向の3箇所)において行っても良い。
【0048】
上述したレーザ溶接方法を用いてダンパケース13と抑制部材60とを接合することで、ダンパケース13の内周面に抑制部材60を接合することを簡易に実現することができる。
【0049】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態に係る圧力緩衝装置4の一例を示す図である。
第4実施形態に係る圧力緩衝装置4は、第1実施形態に係る圧力緩衝装置1に対して、抑制部材60に相当する抑制部材460の材質が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第4実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0050】
第4実施形態に係る抑制部材460は、第1実施形態に係る抑制部材60に対して、材質が異なる。抑制部材460は、樹脂461の中に鉄462が埋め込まれたものであり、鉄462が円筒状部61の少なくとも外周面に露出するように埋め込まれている。
【0051】
そして、第4実施形態に係るレーザ溶接方法においては、図8に示すように、抑制部材460とダンパケース13との重ね合わせ部における、抑制部材460の鉄462が外周面に露出する部位に対応する位置のダンパケース13の外周面に対して、レーザ光Lを照射する。そして、ダンパケース13と抑制部材460の鉄462とを溶融させ、溶接部471を形成させる。
【0052】
このように、抑制部材460が樹脂461の中に鉄462が埋め込まれたものであることで、全て鉄にて製造されている構成と比べて軽量化を図ることができる。
なお、樹脂461の中に鉄462を埋め込む位置や鉄462の形状は特に限定されない。
【0053】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態に係る圧力緩衝装置5の一例を示す図である。
第5実施形態に係る圧力緩衝装置5は、第1実施形態に係る圧力緩衝装置1に対して、抑制部材60のダンパケース13への接合方法が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第5実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0054】
第5実施形態に係るレーザ溶接方法においては、ダンパケース13の内側に抑制部材60を配置した状態で、抑制部材60とダンパケース13との接触部にレーザ光Lを照射する。
【0055】
例えば、図9に示すように、レーザヘッド151をダンパケース13の内側に挿入し、抑制部材60における軸方向の第2側の端部の外周面とダンパケース13の内周面との接触部に対してレーザ光Lを照射する。そして、ダンパケース13の周方向にレーザヘッド151を移動させることで、レーザ光Lを接触部の全周に亘って照射する。これにより、抑制部材60の円筒状部61とダンパケース13の本体131との突き合わせ部に、抑制部材60とダンパケース13とを接合する周方向の溶接部571が形成される。
【0056】
また、抑制部材60における軸方向の第1側の端部の外周面とダンパケース13の内周面との接触部に対してレーザ光Lを照射する。その際、レーザヘッド151をダンパケース13の外側に配置し、ダンパケース13の本体131に形成された貫通孔13Hを通してレーザ光Lを接触部に対してスポット的に照射する。これにより、抑制部材60の円筒状部61とダンパケース13の本体131との突き合わせ部に、抑制部材60とダンパケース13とを接合するスポット的な溶接部572が形成される。
【0057】
上述したレーザ溶接方法を用いてダンパケース13と抑制部材60とを接合することで、ダンパケース13の内周面に抑制部材60を接合することを実現することができる。言い換えれば、抑制部材60は、ダンパケース13の内側に配置された状態で、ダンパケース13との接触部にレーザ光Lが照射されることによりダンパケース13に接合されている。これにより、抑制部材60は、確度高くダンパケース13に接合されることとなる。
【0058】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態に係る圧力緩衝装置6の一例を示す図である。
第6実施形態に係る圧力緩衝装置6は、第5実施形態に係る圧力緩衝装置5に対して、第2抑制部材260を備えている点が異なる。以下、第5実施形態と異なる点について説明する。第5実施形態と第6実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0059】
第2抑制部材260は、円筒状の円筒状部261と、円筒状部261の内周面から内側に突出する突出部262とを有している。円筒状部261、突出部262は、それぞれ、抑制部材60の円筒状部61、突出部62と同様の構成である。
そして、第2抑制部材260は、ダンパケース13の本体131に形成された貫通孔13Hよりも軸方向の第1側に設けられている。
【0060】
第6実施形態に係るレーザ溶接方法においては、ダンパケース13を完成する前、つまり、塞ぎ部132が固定される前の本体131の内側に第2抑制部材260を配置した状態で、第2抑制部材260と本体131との接触部にレーザ光Lを照射する。
【0061】
例えば、図10に示すように、レーザヘッド151を本体131よりも軸方向の第1側に配置し、第2抑制部材260における軸方向の第1側の端部の外周面と本体131の内周面との接触部に対してレーザ光Lを照射する。そして、本体131の周方向にレーザヘッド151を移動させることで、レーザ光Lを接触部の全周に亘って照射する。これにより、第2抑制部材260の円筒状部261とダンパケース13の本体131との突き合わせ部に、第2抑制部材260と本体131とを接合する周方向の溶接部671が形成される。
【0062】
また、第2抑制部材260における軸方向の第2側の端部の外周面とダンパケース13の本体131の内周面との接触部に対してレーザ光Lを照射する。その際、レーザヘッド151を本体131の外側に配置し、ダンパケース13の本体131に形成された貫通孔13Hを通してレーザ光Lを接触部に対してスポット的に照射する。これにより、第2抑制部材260の円筒状部261とダンパケース13の本体131との突き合わせ部に、第2抑制部材260とダンパケース13とを接合するスポット的な溶接部672が形成される。
【0063】
上述したレーザ溶接方法を用いてダンパケース13の本体131と第2抑制部材260とを接合した後に、本体131に塞ぎ部132を固定すれば良い。あるいは、ダンパケース13の本体131に対して、第2抑制部材260と抑制部材60との両方を接合した後に、本体131に塞ぎ部132を固定しても良い。
【0064】
以上のように構成された第6実施形態に係る圧力緩衝装置6は、ダンパケース13の外側に設けられ、シリンダ11から流出したオイルが流入するとともに、オイルの流れに抵抗を付与して減衰力を発生させてオイルを液溜部Rに排出する減衰力発生部50を備える。そして、ダンパケース13には、減衰力発生部50から排出されるオイルを液溜部Rに流入させる貫通孔13H(流入口の一例)が形成され、抑制部材60は、貫通孔13Hの軸方向の第2側に設けられ、第2抑制部材260は、貫通孔13Hの第1側に設けられている。
【0065】
圧力緩衝装置6においては、貫通孔13Hの軸方向の両側に抑制部材60及び第2抑制部材260が設けられているので、さらにオイルの液面の揺れ及びキャビテーションの発生を抑制することができる。また、減衰力発生部50の軸方向の第1側にもダンパケース13の内側に円筒状部261を有する第2抑制部材260が設けられているので、ダンパケース13の剛性を高めることができ、減衰力発生部50の軸方向の第1側に車輪側ブラケット107が接合されているとしてもダンパケース13が変形し難い。
【0066】
なお、第1実施形態に係る圧力緩衝装置1~第4実施形態に係る圧力緩衝装置4に第2抑制部材260を適用しても良い。
【符号の説明】
【0067】
1,2,3,4,5,6,…圧力緩衝装置、10…シリンダ部、11…シリンダ(第1シリンダの一例)、12…外筒体、13…ダンパケース(第2シリンダの一例)、30…ピストン部、50…減衰力発生部、60…抑制部材、61,261…円筒状部(筒状部の一例)、62,262…突出部、100…懸架装置、R…液溜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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